(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060767
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】全固体電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20240425BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20240425BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20240425BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20240425BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240425BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M4/66 A
H01M4/134
H01M10/052
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168258
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田口 海志
【テーマコード(参考)】
5H017
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA04
5H017AS02
5H017CC01
5H017DD05
5H017HH03
5H017HH05
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM12
5H029DJ07
5H029HJ04
5H029HJ12
5H050AA19
5H050BA16
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA03
5H050DA04
5H050FA02
5H050HA04
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、発電要素に十分な圧力を加えることができる全固体電池を提供すること。
【解決手段】全固体電池1は、発電要素2と、発電要素2を挟むように配置された第1集電箔6及び第2集電箔7とを備える。第1集電箔6における発電要素2の反対側には、拘束治具11が配置される。第1集電箔6は、発電要素2側を向く第1面13-1と、その反対側を向く第2面13-2とを有する。第1面13-1は、第1電極接触領域15と、第1絶縁層形成領域14とを有する。第1絶縁層形成領域14と第1電極接触領域15とは離れている。第2面13-2は、第1電極重複領域17と、第2絶縁層形成領域16とを有する。第2絶縁層形成領域16と第1電極重複領域17とは離れている。第1絶縁層12-1の厚みと第2絶縁層12-2の厚みとの和は、第1電極層4の厚みよりも小さい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極層、固体電解質層、及び第2電極層が順に積層された発電要素と、
前記発電要素を挟むように配置された第1集電箔及び第2集電箔であって、前記第1集電箔が前記第1電極層に接続され、前記第2集電箔が前記第2電極層に接続された、前記第1集電箔及び第2集電箔と、
を備え、
前記第1集電箔における前記発電要素の反対側には、前記第1集電箔を介して前記発電要素を加圧する拘束治具が配置され、
積層方向に沿って見た場合に、前記固体電解質層の外周端及び前記第1集電箔の外周端は、いずれも、前記第1電極層の外周端よりも外側に位置しており、
前記第1集電箔は、
前記発電要素側を向く第1面と、
前記発電要素の反対側を向く第2面とを有し、
前記第1面は、
前記第1電極層に接触する領域である第1電極接触領域と、
積層方向に沿って見た場合に前記第1電極接触領域よりも外側に設けられ、第1絶縁層が設けられた領域である、第1絶縁層形成領域とを有し、
前記第1絶縁層形成領域と前記第1電極接触領域とは離れており、
前記第2面は、
積層方向に沿って見た場合に前記第1電極層に重なる領域である第1電極重複領域と、
積層方向に沿って見た場合に前記第1電極重複領域よりも外側に設けられ、第2絶縁層が設けられた領域である、第2絶縁層形成領域とを有し、
前記第2絶縁層形成領域と前記第1電極重複領域とは離れており、
前記第1絶縁層の厚みと前記第2絶縁層の厚みとの和は、前記第1電極層の厚みよりも小さい、
全固体電池。
【請求項2】
請求項1に記載の全固体電池であって、
前記第1電極層は、負極層であり、
前記第2電極層は、正極層であり、
前記発電要素は、充電時に、前記負極層にアルカリ金属が析出するように構成されており、
前記負極層は、前記析出するアルカリ金属が前記固体電解質層に直接接することを防止する負極中間層を有しており、
前記第1絶縁層の厚みと前記第2絶縁層の厚みとの和は、前記負極中間層の厚みよりも小さい、
全固体電池。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の全固体電池であって、
前記第1絶縁層の端部は、前記第1電極層から離れている、
全固体電池。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の全固体電池であって、
前記第1絶縁層の厚みと前記第2絶縁層の厚みが等しい、
全固体電池。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の全固体電池であって、
前記第1絶縁層は、前記第1集電箔の端部にまで設けられている、
全固体電池。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の全固体電池であって、
前記第1面における前記第1電極接触領域と前記第1絶縁層形成領域との間の距離は、積層方向に沿って見た場合における前記第1電極層の端部と前記固体電解質層の端部との間の距離よりも小さい、
全固体電池。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の全固体電池であって、
前記第1面における前記第1電極接触領域の端部から前記第1集電箔の外側端部までの距離は、積層方向に沿って見た場合における前記第1電極層の端部と前記固体電解質層の端部との間の距離よりも小さい、
全固体電池。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の全固体電池であって、
積層方向に沿って見た場合に、前記第2集電箔の外周端は、前記固体電解質層、前記第1電極層、及び前記第2電極層の外周端よりも外側に位置しており、
前記第2集電箔上には、前記第2電極層の外側に、第2電極端部絶縁層が設けられており、
積層方向に沿って見た場合に、前記第2電極端部絶縁層の内側端部は、前記固体電解質層の端部よりも内側に位置しており、
前記第1面における前記第1電極接触領域と前記第1絶縁層形成領域との間の距離は、積層方向に沿って見た場合における前記第1電極層の端部から前記第2電極端部絶縁層の外側端部までの間の距離よりも小さい、
全固体電池。
【請求項9】
請求項8に記載の全固体電池であって、
前記第1面における前記第1電極接触領域の端部から前記第1集電箔の外側端部までの距離が、積層方向に沿って見た場合における前記第1電極層の端部から前記第2電極端部絶縁層の外側端部までの間の距離よりも小さい、
全固体電池。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の全固体電池であって、
前記第1絶縁層において、内側側面と上面とによって形成される角部は、丸められている、
全固体電池。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の全固体電池であって、
前記第2絶縁層において、内側側面と上面とによって形成される角部は、丸められている、
全固体電池。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の全固体電池であって、
前記第1電極層及び前記第2電極層の一方は、負極層を含み、
前記負極層は、アルカリ金属を含む、
全固体電池。
【請求項13】
請求項12に記載の全固体電池であって、
前記アルカリ金属が、リチウム金属を含む、
全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体電池に関する。
【背景技術】
【0002】
全固体電池は、固体材料により構成される二次電池である。全固体電池は、通常、発電要素として、固体電解質層、正極層、及び負極層を有する。これらは、正極層及び負極層が固体電解質層を挟むように積層される。また、発電要素を外部の装置と電気的に接続するため、発電要素を挟むように、正極集電箔及び負極集電箔が設けられる。
【0003】
全固体電池において所望の電池特性(電池容量)を得るためには、正極層及び負極層が強固に固体電解質層に接合されている必要がある。そのため、通常、拘束治具によって、発電要素が加圧される(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、各集電箔には、絶縁防止等を目的として、絶縁層が設けられることがある。絶縁層は、通常、積層方向に沿って見た場合に各電極層を取り囲むような位置に配置される。このような構成を有する全固体電池において、拘束治具を配置して発電要素を積層方向に沿って加圧しようとすると、電極層の周囲に位置する絶縁層が拘束治具と干渉してしまい、発電要素に十分な圧力が加わらない場合がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、発電要素に十分な圧力を加えることができる全固体電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様において、本発明に係る全固体電池は、第1電極層、固体電解質層、及び第2電極層が順に積層された発電要素と、発電要素を挟むように配置された第1集電箔及び第2集電箔であって、第1集電箔が第1電極層に接続され、第2集電箔が前記第2電極層に接続された、第1集電箔及び第2集電箔と、を備える。第1集電箔における発電要素の反対側には、第1集電箔を介して発電要素を加圧する拘束治具が配置される。積層方向に沿って見た場合に、固体電解質層の外周端及び第1集電箔の外周端は、いずれも、第1電極層の外周端よりも外側に位置している。第1集電箔は、発電要素側を向く第1面と、発電要素の反対側を向く第2面とを有する。第1面は、第1電極層に接触する領域である第1電極接触領域と、積層方向に沿って見た場合に第1電極接触領域よりも外側に設けられ、第1絶縁層が設けられた領域である、第1絶縁層形成領域とを有する。第1絶縁層形成領域と第1電極接触領域とは離れている。第2面は、積層方向に沿って見た場合に第1電極層に重なる領域である第1電極重複領域と、積層方向に沿って見た場合に第1電極重複領域よりも外側に設けられ、第2絶縁層が設けられた領域である、第2絶縁層形成領域とを有する。第2絶縁層形成領域と第1電極重複領域とは離れている。第1絶縁層の厚みと第2絶縁層の厚みとの和は、第1電極層の厚みよりも小さい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、発電要素に十分な圧力を加えることができる全固体電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る全固体電池の全体的な構成を示す概略断面図である。
【
図3】
図3は、参考例に係る全固体電池の最外部の構成を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る全固体電池において、拘束治具により発電要素が加圧された状態を示す図である。
【
図5】
図5は、第2の実施形態に係る全固体電池の最外部における構成を示す図である。
【
図6】
図6は、第4の実施形態に係る全固体電池の一例を示す模式図である。
【
図7】
図7は、第4の実施形態に係る全固体電池の他の一例を示す模式図である。
【
図8】
図8は、第4の実施形態に係る全固体電池の更なる他の一例を示す模式図である。
【
図9】
図9は、第5の実施形態に係る全固体電池の最外部における構成を示す図である。
【
図10】
図10は、第6の実施形態に係る全固体電池の最外部における構成を示す図である。
【
図11】
図11は、第7の実施形態に係る全固体電池の最外部における構成を示す図である。
【
図12】
図12は、第8の実施形態に係る全固体電池の最外部における構成を示す図である。
【
図13】
図13は、第9の実施形態に係る全固体電池の最外部における構成を示す図である。
【
図14】
図14は、第10の実施形態に係る全固体電池の最外部における構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
【0011】
1:第1の実施形態
図1は、第1の実施形態に係る全固体電池1の全体的な構成を示す概略断面図である。
図1に示されるように、全固体電池1は、複数の発電要素2、複数の負極集電箔20、複数の正極集電箔21、外装材8、一対の拘束治具11、負極タブ9、及び正極タブ10を有している。
【0012】
複数の発電要素2、複数の負極集電箔20及び複数の正極集電箔21は、外装材8内に収容されている。外装材8は、例えばアルミニウムフィルムなどにより構成されている。
【0013】
複数の発電要素2は、複数の負極集電箔20及び複数の正極集電箔21を介して積層されている。具体的には、複数の負極集電箔20と複数の正極集電箔21とは、積層方向において交互になるように配置されている。各発電要素2は、積層方向において隣り合う負極集電箔20と正極集電箔21との間に配置されている。
【0014】
複数の負極集電箔20は、複数の発電要素2が積層された領域から側方に向かって延びており、その先端で1つにまとめられて負極タブ9に接続されている。複数の正極集電箔21も、同様に、複数の発電要素2が積層された領域から側方に向かって延びており、その先端で1つにまとめられて正極タブ10に接続されている。
【0015】
負極タブ9及び正極タブ10は、複数の発電要素2を外部に電気的に接続するために設けられている。各タブ(9、10)の一端は外装材8の内部に位置しており、他端は外装材8の外部に位置している。
【0016】
一対の拘束治具11は、外装材8の外側に設けられている。一対の拘束治具11は、積層方向において外装材8を介して複数の発電要素2を挟むように配置されている。一対の拘束治具11は、例えばゴムバンド等によって結束されており、複数の発電要素2を拘束(加圧)している。
【0017】
ここで、各負極集電箔20及び各正極集電箔21のうちの一方には、短絡防止のため、絶縁層12が設けられている。また、複数の負極集電箔20及び複数の正極集電箔21のうち、積層方向に沿う両最外部の少なくとも一方は、絶縁層12が設けられた集電箔となっている。なお、
図1に示す例では、一例として、各負極集電箔20に絶縁層12が設けられており、積層方向における両最外部に位置する集電箔が、いずれも負極集電箔20である場合の例が示されている。ただし、最外部に位置する集電箔が正極集電箔21であってもよい。また、両最外部に位置する集電箔のうち、一方の集電箔のみが絶縁層12が設けられた集電箔であってもよい。
【0018】
絶縁層12は、発電要素2を取り囲むような位置に設けられている。絶縁層12は、集電箔の両面に設けられている。
【0019】
以上が、全固体電池1の概略的な構成である。ここで、本実施形態においては、最外部に位置する集電箔であって、絶縁層12が設けられた集電箔の構成が工夫されている。そこで、以下において、全固体電池1における最外部の構成に着目して、詳細な構成を説明する。
【0020】
図2は、
図1に記載の全固体電池1における領域Aの拡大図であり、最外部に位置する発電要素2と、その端部近傍の断面を示す概略図である。なお、説明の便宜上、
図2においては、拘束治具11により拘束されていない状態の構成が示されている。また、
図1においては、最外部に位置する集電箔が負極集電箔20である場合の例を示したが、既述のように、最外部の集電箔は正極集電箔21であってもよい。そこで、以下の説明においては、両者を区別せず、第1集電箔及び第2集電箔との用語を用いる。具体的には、最外部に位置する集電箔であって、絶縁層12が設けられた集電箔を、第1集電箔6と定義する。そして、発電要素2を介して第1集電箔と対向する他方の集電箔を、第2集電箔7と定義する。
【0021】
すなわち、
図2に示されるように、発電要素2は、積層方向において、第1集電箔6及び第2集電箔7によって挟まれている。発電要素2は、固体電解質層3、第1電極層4、及び第2電極層5を有している。これらは、第1電極層4及び第2電極層5によって固体電解質層3が挟まれるように、積層されている。第1電極層4及び第2電極層5のうちの一方は正極層であり、他方は負極層である。第1電極層4は第1集電箔6に接続されており、第2電極層5は第2集電箔7に接続されている。
【0022】
既述のように、第1集電箔6は、積層方向における最外部に位置する。すなわち、
図2には示されていないが、第1集電箔6における発電要素2の反対側には、外装材8を介して拘束治具11が配置される。
【0023】
積層方向に沿って見た場合に、固体電解質層3の外周端及び第1集電箔6の外周端は、いずれも、第1電極層4の外周端よりも外側に位置している。また、第2電極層5の外周端は、積層方向に沿って見た場合に、固体電解質層3の外周端及び第1集電箔6の外周端よりも内側に位置している。第2電極層5の側部には、第2電極層5の端部保護のため、第2電極端部絶縁層18が設けられている。
【0024】
第1集電箔6上には、既述のように、絶縁層12が設けられている。具体的には、絶縁層12として、第1絶縁層12-1と、第2絶縁層12-2とが設けられている。詳細には、第1集電箔6のうち、発電要素2側を向く面が第1面13-1として定義される。また、第1集電箔6のうち、発電要素2の反対側を向く面(すなわち拘束治具11側を向く面)が第2面13-2として定義される。そして、第1絶縁層12-1は第1面13-1上に設けられており、第2絶縁層12-2は第2面13-2上に設けられている。
【0025】
第1面13-1上において、第1絶縁層12-1は、第1電極層4から離れている。具体的には、第1面13-1における領域であって、第1電極層4に接触する領域が第1電極接触領域15として定義される。また、第1面13-1における領域であって、第1絶縁層12-1が設けられた領域が、第1絶縁層形成領域14として定義される。そして、第1絶縁層形成領域14と第1電極接触領域15とは、離れている。
【0026】
また、積層方向に沿って見た場合に、第2絶縁層12-2も、第1電極層4から離れている。具体的には、第2面13-2における領域であって、第2絶縁層12-2が設けられた領域が、第2絶縁層形成領域16として定義される。第2面13-2における領域であって、積層方向に沿って見た場合に第1電極層4に重なる領域が、第1電極重複領域17として定義される。第2絶縁層形成領域16と第1電極重複領域17とは、離れている。
【0027】
積層方向に沿って見た場合に、第1絶縁層形成領域14の内周端及び第2絶縁層形成領域16の内周端は、いずれも、固体電解質層3の外周端よりも内側に位置している。言い換えれば、第1絶縁層12-1及び第2絶縁層12-2は、少なくとも一部で、固体電解質層3に重なっている。また、第1絶縁層形成領域14と、第2絶縁層形成領域16とは、概ね重なっている。
【0028】
ここで、第1絶縁層12-1の厚み(図中t1)と、第2絶縁層12-2の厚み(図中t2)との和は、第1電極層4の厚み(図中t3)よりも小さい。
【0029】
上述のような構成を採用することにより、拘束治具11による加圧が絶縁層12によって妨げられず、発電要素2に十分な圧力を加えることができる。この点について、参考例と対比させつつ、以下に説明する。
【0030】
図3は、参考例に係る全固体電池の最外部の構成を模式的に示す断面図である。この参考例においては、第1絶縁層12-1と第2絶縁層12-2の厚みの和が、第1電極層4の厚みよりも大きい。このような全固体電池において、拘束治具11の加圧面が一部で第2絶縁層12-2と重なっていると、第2絶縁層12-2が外装材8を介して拘束治具11と干渉してしまい、発電要素2に対して十分な圧力が伝わらない。
【0031】
一方、
図4は、本実施形態に係る全固体電池1の最外部の構成を示す図であり、拘束治具11により発電要素2が加圧された状態を示す図である。
図4に示されるように、本実施形態においては、第1絶縁層形成領域14と第1電極接触領域15とが離れているから、第1集電箔6は、第1電極層4の外周端部において発電要素2側に折れ曲がる。そして、第1絶縁層12-1の厚みと第2絶縁層12-2の厚みとの和が第1電極層4の厚みよりも小さいから、第2絶縁層12-2の表面の高さは、第1電極層4上における第1集電箔6の表面の高さと同じになる。従って、拘束治具11の加圧面が一部で第2絶縁層12-2と重なっていたとしても、第2絶縁層12-2によって拘束治具11の加圧が妨げられることはない。その結果、発電要素2に対して十分な圧力を加えることができる。
【0032】
なお、拘束治具11と絶縁層12との干渉を防ぐために、第1集電箔6については、発電要素2側の面(すなわち第1面13-1)にのみ絶縁層12を配置することも考えられる。しかしながら、このような構成を採用すると、複数の集電箔のうち、最外部に配置される第1集電箔6だけを特別に用意する必要がある。すなわち、最外部に配置される第1集電箔6については片面のみに絶縁層12を形成し、その他の集電箔については両面に絶縁層12を形成する必要がある。その結果、製造時における集電箔の管理等が複雑になり、不利となる。これに対して、本実施形態によれば、最外部の第1集電箔6を他の集電箔と区別する必要がない。製造管理を複雑化させることなく、所望の圧力を発電要素2に加えることができる全固体電池1が提供される。
【0033】
なお、全固体電池としては、充放電に伴って電極層の厚みが変化するものも知られている。本実施形態における第1電極層4は、このように充放電に伴い厚みが変化するように構成されたものであってもよい。この場合、第1絶縁層12-1の厚みと第2絶縁層12-2の厚みとの和は、最も薄い場合の第1電極層4の厚みよりも小さいことが好ましい。このような構成を採用すれば、充放電に伴い第1電極層4の厚みが変化した場合であっても、常に発電要素2に対して十分に圧力を加えることができる。
【0034】
好ましい一態様において、第1電極層4は負極層であり、第2電極層5は正極層である。そして、発電要素2は、充電時に、負極層(第1電極層4)にアルカリ金属(好ましくは金属リチウム)が析出するように構成されている。更に、負極層(第1電極層4)は、負極中間層を有している。負極中間層は、充電時に析出するアルカリ金属が固体電解質層3に直接接することを防止するために設けられた構造である。そして、第1絶縁層12-1の厚みと第2絶縁層12-2の厚みとの和は、負極中間層の厚みよりも小さい。このような構成を有する全固体電池1においては、充電時に、アルカリ金属の析出によって負極層(第1電極層4)の厚みが大きくなる。一方、放電時には、析出したアルカリ金属が正極層(第2電極層5)に吸蔵されるから、負極層(第1電極層4)の厚みが減る。完全放電時には、負極層(第1電極層4)からアルカリ金属が完全に消失し得る。すなわち、負極層の厚みは、負極中間層の厚みにまで減る場合がある。ここで、第1絶縁層12-1の厚みと第2絶縁層12-2の厚みとの和が、負極中間層の厚みよりも小さければ、負極層(第1電極層4)の厚みが最小になった場合(負極中間層の厚みにまで減った場合)であっても、拘束治具11と第2絶縁層12-2とが干渉せず、発電要素2に対して十分な圧力を加えることができる。すなわち、充放電状態にかかわらず、常に発電要素2に十分な圧力を加えることができる。
【0035】
なお、本実施形態においては、全固体電池1が複数の発電要素2を有する場合について説明した。しかし、全固体電池1は必ずしも複数の発電要素2を有している必要はない。すなわち、全固体電池1は、単一の発電要素2が、一対の集電箔(第1集電箔6及び第2集電箔7)により挟まれた構成を有していてもよい。
【0036】
続いて、全固体電池1を構成する各部材の材質などについて詳細に説明する。
【0037】
(正極層)
既述の通り、第1電極層4及び第2電極層5のうちの一方は正極層であり、他方は負極層である。正極層は、充電時にリチウムイオンを放出し、放電時にリチウムイオンを吸蔵することができる材料により形成されていればよい。正極層は、例えば、樹脂バインダと、樹脂バインダ中に分散した正極活物質とを含む材料により形成される。正極活物質としては、例えば、リチウム金属複合酸化物などを用いることができる。リチウム金属複合酸化物としては、例えば、LiCoO2、LiMnO2、LiNiO2、LiVO2、及びLi(Ni-Mn-Co)O2等の層状岩塩型化合物、LiMn2O4、及びLiNi0.5Mn1.5O4等のスピネル型化合物、LiFePO4、及びLiMnPO4等のオリビン型化合物、あるいは、Li2FeSiO4、及びLi2MnSiO4等のSi含有化合物等が挙げられる。また、Li4Ti5O12なども用いることができる。
【0038】
正極層の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば10~500μm、好ましくは50~200μmである。
【0039】
(負極層)
負極層は、充電時にアルカリ金属(好ましくはリチウム)を析出させる層、あるいは、充電時にアルカリ金属を吸蔵する層であればよい。
【0040】
例えば、負極層は、樹脂バインダと、樹脂バインダに分散させた負極活物質とを含む材料により、形成することができる。負極活物質としては、例えば、リチウム金属、ケイ素材料(シリコン)、スズ材料、ケイ素やスズを含む化合物(酸化物、窒化物、他の金属との合金)、および炭素材料(グラファイト等)等を用いることができる。
【0041】
また、負極層は、既述の通り、負極中間層を有していてもよい。負極中間層は、充電時に負極側に生じるアルカリ金属から固体電解質層3を保護する機能を有していればよい。すなわち、負極層は、充電時に負極中間層と集電箔との間にアルカリ金属が析出し、放電時にこのアルカリ金属が消失するように構成されていてもよい。このような負極中間層は、例えば、リチウム反応性材料を含有する層により実現できる。リチウム反応性材料としては、充電時にリチウムイオンを吸蔵放出可能な材料や、充電時にリチウムと合金化可能な金属が挙げられる。
【0042】
リチウムイオンを吸蔵放出可能な材料としては、特に制限されないが、炭素材料が好ましい。炭素材料の具体例としては、カーボンブラック(具体的には、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)、カーボンナノチューブ(CNT)、グラファイト、ハードカーボン等が挙げられる。中でも、カーボンブラックが好ましく、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラック、チャンネルブラックおよびサーマルランプブラックからなる群から選択させる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0043】
リチウムと合金化可能な金属としては、例えば、In、Al、Si、Sn、Mg、Au、Ag、Znなどが挙げられる。中でも、In、Si、Sn、Agが好ましく、Agがより好ましい。
【0044】
負極中間層は、リチウム反応性材料のみで自立膜を作製可能であれば、リチウム反応性材料のみからなるものであってもよいが、必要に応じてバインダを含んでもよい。バインダの種類は、特に制限されず、本技術分野で公知のものを適宜採用することができる。一例としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)(水素原子が他のハロゲン元素にて置換された化合物を含む)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロースが挙げられる。
【0045】
好ましい一態様において、負極中間層は、カーボン粒子(カーボンブラック等)と、金属粒子(銀粒子等)と、バインダ(樹脂バインダ)とを含む。
【0046】
負極中間層の厚さは、特に制限されないが、1~50μmであることが好ましく、5~40μmであることがより好ましく、10~30μmであることがさらに好ましい。負極中間層の厚さが1μm以上であると、負極中間層が有する機能を充分に発揮できる。負極中間層の厚さが50μm以下であると、エネルギー密度の低下を抑制できる。
【0047】
(固体電解質層)
固体電解質層3は、固体であり、二次電池における電解質層として機能するものであればよく、その材質は特に限定されない。例えば、固体電解質層3は、硫化物や酸化物により形成することができる。好ましくは、固体電解質層3は、硫化物固体電解質を含む。硫化物固体電解質としては、例えばLPS系(例えばアルジロダイト(Li6PS5Cl))、およびLGPS系(例えばLi10GeP2S12)の材料が挙げられる。固体電解質層3の厚みは、特に限定されないが、例えば5~100μm、好ましくは20~60μmである。
【0048】
(負極集電箔及び正極集電箔)
既述のように、第1集電箔6及び第2集電箔7の一方は負極集電箔であり、他方は正極集電箔である。負極集電箔としては、例えば、銅、銅合金、ニッケル、及びニッケル合金等の薄膜が用いられる。正極集電箔としては、例えば、アルミニウム箔などを用いることができる。
【0049】
(絶縁層)
絶縁層12は、絶縁性を有する材料により形成されていればよい。例えば、絶縁層12は、アルミナ、シリカ、ゼオライト、LPS、LGPS及びエポキシ樹脂等により構成することができる。絶縁層12の作製方法も特には限定されない。例えば、絶縁層の構成材料を、溶媒、及び、必要に応じてバインダー(SBR,PVDF等)と混合する。そして、混合物を集電箔上に塗工し、ロールプレス等を行う。これにより、絶縁層12を形成することができる。なお、溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、o-、m-、p-キシレン、メシチレン、ヘミテリメン、シュードクメン、及びN-メチルピロリドンなどを用いることができる。塗工は、例えばアプリケータ、ダイコータ、及びディスペンサ等を用いて行うことができる。
【0050】
以上、第1の実施形態について説明した。以下に、本実施形態に係る全固体電池の構成と作用効果の関係について、代表的なものを要約する。
【0051】
本実施形態に係る全固体電池1は、第1電極層4、固体電解質層3、及び第2電極層5が順に積層された発電要素2と、発電要素2を挟むように配置された第1集電箔6及び第2集電箔7であって、第1集電箔6が第1電極層4に接続され、第2集電箔7が第2電極層5に接続された、第1集電箔6及び第2集電箔7とを有する。第1集電箔6における発電要素2の反対側には、第1集電箔6を介して発電要素2を加圧する拘束治具11が配置される。積層方向に沿って見た場合に、固体電解質層3の外周端及び第1集電箔6の外周端は、いずれも、第1電極層4の外周端よりも外側に位置している。第1集電箔6は、発電要素2側を向く第1面13-1と、発電要素2の反対側を向く第2面13-2とを有する。第1面13-1は、第1電極層4に接触する領域である第1電極接触領域15と、積層方向に沿って見た場合に第1電極接触領域15よりも外側に設けられ、第1絶縁層12-1が設けられた領域である、第1絶縁層形成領域14とを有する。第1絶縁層形成領域14と第1電極接触領域15とは離れている。第2面13-2は、積層方向に沿って見た場合に第1電極層4に重なる領域である第1電極重複領域17と、積層方向に沿って見た場合に第1電極重複領域17よりも外側に設けられ、第2絶縁層12-2が設けられた領域である、第2絶縁層形成領域16とを有する。第2絶縁層形成領域16と第1電極重複領域17とは離れている。第1絶縁層12-1の厚みと第2絶縁層12-2の厚みとの和は、第1電極層4の厚みよりも小さい。
【0052】
上述のような構成によれば、第2絶縁層12-2と拘束治具11とが干渉しないから、発電要素2に十分な圧力を加えることができる。
【0053】
好ましい一態様において、第1電極層4は、負極層であり、第2電極層5は、正極層である。発電要素2は、充電時に、負極層にアルカリ金属が析出するように構成されている。負極層は、析出するアルカリ金属が前記固体電解質層に直接接することを防止する負極中間層を有している。第1絶縁層12-1の厚みと第2絶縁層12-2の厚みとの和は、負極中間層の厚みよりも小さい。このような構成によれば、第1電極層4の厚みが放電時に減少したとしても、第1絶縁層12-1の厚みと第2絶縁層12-2の厚みは、常に、第1電極層4の厚みよりも小さくなる。従って、拘束治具11と第2絶縁層12-2との干渉を常に防ぐことができ、常に発電要素2に対して十分な圧力を加えることができる。
【0054】
2:第2の実施形態
続いて、第2の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成を採用することができる点については、詳細な説明を省略する。
【0055】
図5は、第2の実施形態に係る全固体電池1の最外部における構成を示す図であり、拘束治具11により加圧された状態を示す図である。
図5に示されるように、本実施形態においては、第1絶縁層12-1の端部(内周端)が、第1電極層4の端部(外周端)から離れている。
【0056】
第1の実施形態では、第1絶縁層12-1と第1電極層4とが、第1面13-1上において離れている場合について説明した。しかしながら、第1集電箔6は、第1電極層4の外周端部において折れ曲がる。従って、第1面13-1上において第1絶縁層12-1と第1電極層4とが離れていたとしても、第1絶縁層12-1の端部が第1電極層4の端部に接触する可能性がある。第1絶縁層12-1の端部が第1電極層4の端部に接触すると、第1電極層4が損傷する可能性がある。これに対して、本実施形態によれば、第1絶縁層12-1の端部(内周端)が、第1電極層4の端部(外周端)から離れているため、第1電極層4の損傷が防止される。
【0057】
具体的には、以下に説明するような構成を採用すれば、第1絶縁層12-1の端部(内周端)が、第1電極層4の端部(外周端)から離れた構造を得ることができる。すなわち、第1面13-1における第1電極接触領域15と第1絶縁層形成領域14との間の距離を、距離aと定義する。第1絶縁層12-1の厚みを、厚みbと定義する。第2面13-2における第1電極重複領域17と第2絶縁層形成領域16との間の距離を、距離cと定義する。第2絶縁層12-2の厚みを厚みdと定義する。この場合に、距離aを厚みbよりも大きく設定する。また、距離cを、厚みdの1.01倍よりも大きく設定する。このような構成を採用することにより、第1絶縁層12-1の端部を、第1電極層4の端部から離すことができる。
【0058】
あるいは、第1電極層4の端面と、第1集電箔6の第1面13-1とがなす角度(図中、φ)を調節することにより、第1絶縁層12-1の端部を第1電極層4の端部から離すこともできる。好ましい一態様において、角度φは、45°超である。
【0059】
3:第3の実施形態
続いて、第3の実施形態について説明する。なお、既述の実施形態と同様の構成を採用することができる点については、詳細な説明を省略する。
【0060】
本実施形態においては、第1絶縁層12-1の厚みと、第2絶縁層12-2の厚みが等しい。このような構成を採用すれば第1集電箔6における両面の区別をなくすことができる。従って、製造時における第1集電箔6の管理がより容易になり、製造工程を簡素化することができる。
【0061】
4:第4の実施形態
続いて、第4の実施形態について説明する。なお、既述の実施形態と同様の構成を採用することができる点については、詳細な説明を省略する。
【0062】
図6は、本実施形態に係る全固体電池の最外部の構成を示す模式図である。本実施形態においては、第1絶縁層12-1が、第1集電箔6の端部にまで設けられている。このような構成を採用することにより、第1集電箔6と第2集電箔7とが接触し難くなり、短絡が抑制される。特に、製造初期における短絡が防止され、歩留まりを向上させることができる。
【0063】
なお、「第1絶縁層12-1が第1集電箔6の端部にまで設けられている」とは、第1絶縁層12-1が、その内周端から、第1集電箔6の外周端部のうちの少なくとも一部に至るまで設けられていることをいう。なお、
図1に示したように、各集電箔は、一端でタブ(9又は10)に接続されている。従って、当然ではあるが、第1集電箔6とタブとの接続部分にまで第1絶縁層12-1が設けられている必要はない。
【0064】
なお、
図6に示す例においては、第1絶縁層12-1の端部が、第1集電箔6の端部に揃っている。また、第1絶縁層12-1だけでなく、第2絶縁層12-2も第1集電箔6の端部にまで設けられている。ただし、第1集電箔6の端部における構成は、例えば以下のように変形可能である。
【0065】
図7は、本実施形態に係る全固体電池1の他の一例を示す模式図である。この例では、第1絶縁層12-1の外周端が、第1集電箔6の端部よりも外側に位置している。同様に、第2絶縁層12-2も、その外周端が第1集電箔6の端部よりも外側に位置するように設けられている。
【0066】
図8は、本実施形態に係る全固体電池1の更なる他の一例を示す模式図である。この例では、第1集電箔6の端面を覆うように、第1絶縁層12-1及び第2絶縁層12-2が設けられている。
【0067】
5:第5の実施形態
続いて、第5の実施形態について説明する。なお、既述の実施形態と同様の構成を採用することができる点については、詳細な説明を省略する。
【0068】
図9は、第5の実施形態に係る全固体電池1の最外部における構成を示す図であり、拘束治具11により加圧された状態を示す図である。
【0069】
本実施形態においては、第1絶縁層12-1の配置が工夫されている。具体的には、第1面13-1における第1電極接触領域15と第1絶縁層形成領域14との間の距離が、距離aとして定義される。また、積層方向に沿って見た場合における第1電極層4の端部と固体電解質層3の端部との間の距離が、距離eとして定義される。この場合において、距離aは、距離eよりも小さい。
【0070】
本実施形態によれば、距離aが距離eよりも小さいから、第2集電箔7が第1集電箔6と短絡し難い。従って、集電箔同士の接触による短絡が防ぎやすくなる。
【0071】
なお、本実施形態における距離aと距離eとの関係は、少なくとも一部において成立していればよい。すなわち、
図1に示したように、各集電箔は、発電要素2が積層された部分から側方に伸び、タブ(9又は10)に接続されている。従って、第1集電箔6がタブ(9又は10)に向かって延びている部分については、距離aを距離eよりも小さくすることができない。しかし、その他の部分において距離aが距離eよりも小さければ、集電箔同士の短絡が起こり難くなるから、一定の効果を奏する。
【0072】
6:第6の実施形態
続いて、第6の実施形態について説明する。なお、既述の実施形態と同様の構成を採用することができる点については、詳細な説明を省略する。
【0073】
図10は、第6の実施形態に係る全固体電池1の最外部における構成を示す図であり、拘束治具11により加圧された状態を示す図である。
【0074】
本実施形態においては、第1集電箔6の端部の位置が工夫されている。具体的には、第1面13-1における第1電極接触領域15の端部から第1集電箔6の外側端部までの距離が、距離fとして定義される。また、第5の実施形態と同様に、積層方向に沿って見た場合における第1電極層4の端部と固体電解質層3の端部との間の距離が、距離eとして定義される。この場合に、距離fは、距離eよりも小さい。
【0075】
本実施形態によれば、第1集電箔6の端部が第2集電箔7と接触し難くなる。従って、短絡が発生し難くなる。
【0076】
なお、本実施形態における距離fと距離eとの関係も、第5の実施形態における距離aと距離eとの関係と同様に、少なくとも一部において成立していればよい。
【0077】
7:第7の実施形態
続いて、第7の実施形態について説明する。なお、既述の実施形態と同様の構成を採用することができる点については、詳細な説明を省略する。
【0078】
図11は、第7の実施形態に係る全固体電池1の最外部における構成を示す図であり、拘束治具11により加圧された状態を示す図である。
【0079】
図11に示されるように、積層方向に沿って見た場合に、第2集電箔7の外周端は、固体電解質層3、第1電極層4、及び第2電極層5の外周端よりも外側に位置している。第2集電箔7上には、第2電極層5の外側に、第2電極端部絶縁層18が設けられている。積層方向に沿って見た場合に、第2電極端部絶縁層18の内側端部は、固体電解質層3の端部よりも内側に位置している。
【0080】
ここで、第1面13-1における第1電極接触領域15と第1絶縁層形成領域14との間の距離が、距離aとして定義される。また、積層方向に沿って見た場合における第1電極層4の端部から第2電極端部絶縁層18の外側端部までの距離が、距離gとして定義される。この場合に、距離aは、距離gよりも小さい。
【0081】
本実施形態によれば、第2集電箔7が第1集電箔6側に回り込み難くなる。その結果、集電箔同士の接触による短絡が抑制される。
【0082】
なお、本実施形態における距離aと距離gとの関係も、第5の実施形態における距離aと距離eとの関係と同様に、少なくとも一部において成立していればよい。
【0083】
8:第8の実施形態
続いて、第8の実施形態について説明する。なお、既述の実施形態と同様の構成を採用することができる点については、詳細な説明を省略する。
【0084】
図12は、第8の実施形態に係る全固体電池1の最外部における構成を示す図であり、拘束治具11により加圧された状態を示す図である。本実施形態においては、第7の実施形態と同様に、積層方向に沿って見た場合に、第2集電箔7の外周端が、固体電解質層3、第1電極層4、及び第2電極層5の外周端よりも外側に位置している。第2集電箔7上には、第2電極層5の外側に、第2電極端部絶縁層18が設けられている。積層方向に沿って見た場合に、第2電極端部絶縁層18の内側端部は、固体電解質層3の端部よりも内側に位置している。
【0085】
第1面13-1における第1電極接触領域15の端部から第1集電箔6の外側端部までの距離が、距離fとして定義される。また、積層方向に沿って見た場合における第1電極層4の端部から第2電極端部絶縁層18の外側端部までの間の距離が、距離gとして定義される。そして、距離fは、距離gよりも小さい、
【0086】
本実施形態によれば、第1集電箔6の端部が第2集電箔7と接触し難くなる。従って、短絡が発生し難くなる。
【0087】
なお、本実施形態における距離fと距離gとの関係も、第5の実施形態における距離aと距離eとの関係と同様に、少なくとも一部において成立していればよい。
【0088】
9:第9の実施形態
続いて、第9の実施形態について説明する。なお、既述の実施形態と同様の構成を採用することができる点については、詳細な説明を省略する。
【0089】
図13は、第9の実施形態に係る全固体電池1の最外部における構成を示す図であり、拘束治具11により加圧された状態を示す図である。
【0090】
本実施形態においては、第1絶縁層12-1の端部の構成が工夫されている。具体的には、第1絶縁層12-1において、内側側面と上面とによって形成される角部(図中R1)が、丸められている。このような構成を採用すれば、第1絶縁層12-1の端部が第1電極層4に接触したとしても、第1電極層4の破損が防止される。
【0091】
なお、丸められた角部は、例えば、製造時に、液状の第1絶縁層形成用の材料を塗布することにより、自ずと形成することができる。
【0092】
10:第10の実施形態
続いて、第10の実施形態について説明する。なお、既述の実施形態と同様の構成を採用することができる点については、詳細な説明を省略する。
【0093】
図14は、第10の実施形態に係る全固体電池1の最外部における構成を示す図であり、拘束治具11により加圧された状態を示す図である。
【0094】
本実施形態においては、第2絶縁層12-2の端部の構成が工夫されている。具体的には、第2絶縁層12-2において、内側側面と上面とによって形成される角部(図中R2)が、丸められている。このような構成を採用すれば、第2絶縁層12-2の端部と外装材8との接触による外装材8の損傷が防止される。
【0095】
なお、本実施形態において、丸められた角部は、第9の実施形態と同様に、液状の第2絶縁層形成用の材料を塗布することにより、自ずと形成することができる。
【0096】
また、本実施形態においても、第9の実施形態と同様に、第1絶縁層12-1における内側側面と上面とによって形成される角部(図中R1)が、丸められていてもよい。
【0097】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0098】
1:全固体電池、2:発電要素、3:固体電解質層、4:第1電極層、5:第2電極層、6:第1集電箔、7:第2集電箔、8:外装材、9:負極タブ、10:正極タブ、11:拘束治具、12:絶縁層、12-1:第1絶縁層、12-2:第2絶縁層、13-1:第1面、13-2:第2面、14:第1絶縁層形成領域、15:第1電極接触領域、16:第2絶縁層形成領域、17:第1電極重複領域、18:第2電極端部絶縁層、20:負極集電箔、21:正極集電箔