(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060776
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】タイヤの変形の観察方法
(51)【国際特許分類】
B60C 19/00 20060101AFI20240425BHJP
【FI】
B60C19/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168270
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小池 明大
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131LA21
(57)【要約】
【課題】完成品を含む様々なタイヤに被検出部を正確に配置したうえで、タイヤの変形を観察できる方法を提供する。
【解決手段】タイヤ30に被検出部31を設ける設置ステップと、与えられた条件下でタイヤ30における被検出部31を検出する検出ステップとを含むタイヤ30の変形の観察方法において、前記設置ステップにおいて、被検出部31としての金属含有部分が設けられたシート32をタイヤ30に貼り付け、前記検出ステップにおいて、X線CT装置にて金属とゴムのX線透過率の違いを利用して被検出部31を検出することを特徴とする、タイヤ30の変形の観察方法。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤに被検出部を設ける設置ステップと、与えられた条件下で前記タイヤにおける前記被検出部を検出する検出ステップとを含むタイヤの変形の観察方法において、
前記設置ステップにおいて、前記被検出部としての金属含有部分が設けられたシートをタイヤに貼り付け、
前記検出ステップにおいて、X線CT装置にて金属とゴムのX線透過率の違いを利用して前記被検出部を検出することを特徴とする、タイヤの変形の観察方法。
【請求項2】
前記金属含有部分を、金属粉と接着剤を含む混合物を前記シートに塗布して形成する、請求項1に記載のタイヤの変形の観察方法。
【請求項3】
前記金属含有部分を、金属粉と接着剤と水を含む混合物を前記シートに塗布して形成する、請求項2に記載のタイヤの変形の観察方法。
【請求項4】
前記設置ステップにおいて、複数枚のシートをタイヤに貼り付ける、請求項1又は2に記載のタイヤの変形の観察方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤの変形の観察方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のように、X線CT装置を使用してタイヤの歪みを検出する方法が知られている。具体的には、あらかじめタイヤ部品に金属製の被検出部が設けられ、そのタイヤ部品を含む形でタイヤが製造される。そのタイヤに荷重が付与された状態でX線が照射され、被検出部が検出される。その被検出部の位置からタイヤの歪みを検出する。
【0003】
また、特許文献2に記載のように、タイヤ内面であるインナーライナー表面に塗装により被検出部を設ける方法も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-196911号公報
【特許文献2】特開2019-196025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、あらかじめタイヤ部品に金属製の被検出部を設けておく方法は、タイヤの製造段階で被検出部を設ける方法であるため、市販されているような完成品としてのタイヤには適用できない。また、タイヤ内面等のタイヤ表面は曲面であるため、タイヤ表面に塗装によって被検出部を設ける方法では、被検出部を正確に配置することが難しい。
【0006】
そこで本発明は、完成品を含む様々なタイヤに被検出部を正確に配置したうえで、タイヤの変形を観察できる方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下に示される実施形態を含む。
【0008】
[1]タイヤに被検出部を設ける設置ステップと、与えられた条件下で前記タイヤにおける前記被検出部を検出する検出ステップとを含むタイヤの変形の観察方法において、前記設置ステップにおいて、前記被検出部としての金属含有部分が設けられたシートをタイヤに貼り付け、前記検出ステップにおいて、X線CT装置にて金属とゴムのX線透過率の違いを利用して前記被検出部を検出することを特徴とする、タイヤの変形の観察方法。
【0009】
[2]前記金属含有部分を、金属粉と接着剤を含む混合物を前記シートに塗布して形成する、[1]に記載のタイヤの変形の観察方法。
【0010】
[3]前記金属含有部分を、金属粉と接着剤と水を含む混合物を前記シートに塗布して形成する、[2]に記載のタイヤの変形の観察方法。
【0011】
[4]前記設置ステップにおいて、複数枚のシートをタイヤに貼り付ける、[1]~[3]のいずれかに記載のタイヤの変形の観察方法。
【発明の効果】
【0012】
上記の方法によれば、完成品を含む様々なタイヤに被検出部を正確に配置したうえで、タイヤの変形を観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】(a)は未加硫ゴムシートに金属含有剤を塗布する様子を示す図。(b)は完成した検出用シートの平面図。
【
図4】検出用シートが張り付けられたタイヤの内面を示す斜視図。
【
図5】(a)は下方向への荷重のみ付与されたときの、タイヤの断面画像。(b)は下方向及び右方向への荷重が付与されたときの、タイヤの断面画像。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施形態について図面に基づき説明する。なお、以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更されたものについては、本発明の範囲に含まれるものとする。
【0015】
図1に本実施形態の試験機であるX線CT装置10を示す。X線CT装置10は、X線を利用するCT(Computed Tomography)装置である。X線CT装置10は、X線照射装置11と、X線検出装置12と、X線照射装置11とX線検出装置12との間に配置されたタイヤ保持装置13と、解析装置14を有している。
【0016】
X線照射装置11は、X線検出装置12の方向へX線を照射する装置である。X線検出装置12からのX線の照射の開始と終了は、X線CT装置10が備える不図示の制御部により行われる。X線検出装置12は、X線照射装置11から照射され空気入りタイヤ(以下「タイヤ」とする)30を透過したX線を検出する装置である。
【0017】
タイヤ保持装置13は、タイヤ支持台20と、タイヤ支持台20より下のターンテーブル21と、タイヤ支持台20とターンテーブル21との間のロードセル22とを備えている。さらに、タイヤ保持装置13は、タイヤ支持台20より上において水平に延びる支持棒23と、支持棒23の長手方向両側においてそれぞれ支持棒23とタイヤ支持台20とに連結された縦荷重付与部材24と、支持棒23の長手方向中央から水平方向に対して傾斜して延びてタイヤ支持台20に連結された横荷重付与部材25とを備えている。
【0018】
タイヤ支持台20の上面は、タイヤ30が載る水平面である。タイヤ支持台20の下のロードセル22は、タイヤ支持台20に作用する荷重を測定する機器である。ターンテーブル21は、水平面上で回転するテーブルである。支持台20にタイヤ30が載った状態でターンテーブル21が回転することにより、支持台20やタイヤ30等のターンテーブル21より上にある物が一体となって回転する。ターンテーブル21の回転は、前記の制御部により制御される。
【0019】
支持棒23にはタイヤ30が取り付けられる。詳細には、タイヤ30が装着されたホイール43(
図5参照)の中心孔に支持棒23が通されることにより、タイヤ30が取り付けられる。
【0020】
縦荷重付与部材24は上下方向に伸縮可能な部材である。支持棒23の長手方向両側の縦荷重付与部材24が同時に伸縮することにより、支持棒23が水平を保ったまま上下動する。支持棒23が上下動することによりタイヤ30に付与される上下方向の荷重の大きさが調整される。縦荷重付与部材24による荷重の調整は、前記の制御部により行われる。
【0021】
横荷重付与部材25は、支持棒23からタイヤ支持台20までの部分(「連結部分25a」とする)が伸縮可能な部材である。横荷重付与部材25の連結部分25aが伸び縮みすることにより、支持棒23が横方向(水平方向)へ移動する。支持棒23が横方向へ移動することにより、タイヤ30に付与される横方向の荷重の大きさが調整される。横荷重付与部材25による荷重の調整は、前記の制御部により行われる。
【0022】
タイヤ支持台20にタイヤ30が載せられ、縦荷重付与部材24及び横荷重付与部材25によりタイヤ30に荷重が付与された状態で、ターンテーブル21が回転する。ターンテーブル21の回転中、X線照射装置11からX線が照射される。X線は、タイヤ30を透過してX線検出装置12において検出される。
【0023】
解析装置14は、X線検出装置12の検出に基づき、タイヤ30の3次元構造のデータを生成する。また、解析装置14は、3次元構造のデータを基に、タイヤ30の指定された位置での断面画像を生成する。また、解析装置14は、断面画像等に基づき各種の解析を行う。
【0024】
以上の構成のX線CT装置10により、タイヤ30の変形が観察される。
図2に示すように、タイヤ30の変形の観察は、被検出部31(
図3(b)、
図4参照)を有する検出用シート32(
図3(b)、
図4参照)を作製するシート作製ステップST1と、検出用シート32をタイヤ30の内面42(
図4、
図5参照)に貼り付ける設置ステップST2と、所定条件下のタイヤ30の断面画像をX線CT装置10で取得しその画像中の被検出部31を検出する検出ステップST3とを含む。
【0025】
シート作製ステップST1においては、作業者が、未加硫ゴムシート33に金属含有剤34を塗布することにより、被検出部31を有する検出用シート32を作製する。
図3(a)に、作業者が未加硫ゴムシート33に金属含有剤34を塗布しているときの様子を示す。
【0026】
未加硫ゴムシート33は、ブチルゴムのような延性の良いゴムでできたシートである。未加硫ゴムシート33のモジュラスは1.5MPa以下である。ここで、モジュラスとは、JIS K6251:2010の「3.7 所定伸び引張り応力(stress at a given elongation),S」に準拠して測定された、23℃の雰囲気下における100%伸長モジュラス(M100)のことである。未加硫ゴムシート33の厚みは0.5mm以上1.5mm以下が好ましい。また、未加硫ゴムシート33は平面視で長方形である。
【0027】
未加硫ゴムシート33の短辺38の長さは、短辺38がタイヤ外周面のタイヤ軸方向中央位置においてタイヤ周方向に対して平行に配置されたときに、タイヤ30の回転軸を中心とする角度にして5°以上10°以下の範囲に短辺38が収まる長さであることが好ましい。一例としては、タイヤサイズが205/55R16(外径632mm、周長1985mm)の場合、短辺38の長さが50mmの未加硫ゴムシート33を使用する。この場合の短辺38の長さはタイヤ30の角度にして9°に相当する。
【0028】
また、未加硫ゴムシート33の長辺39の長さは、後述するようにタイヤ30の内面42に貼り付けられたときに、タイヤ30の内面42に沿ってタイヤ30の一方のビード部40から他方のビード部41(
図4、
図5参照)までをカバーする長さである。ここでビード部40、41とは、タイヤ30の径方向内側端でもある。
【0029】
未加硫ゴムシート33に塗布される金属含有剤34は、金属粉と、接着剤としての液体糊との混合物である。金属粉としては、様々な金属の粉体が使用できるが、銅又は銅に近い密度(例えば6g/cm3以上10g/cm3以下)の金属(例えば鉄)の粉体が特に好ましい。また、金属粉は、例えば100~400メッシュのものが好ましい。また、液体糊としては、市販の液体糊が使用でき、例えばポリビニルアルコールを主成分とする液体糊(例えば、ヤマト社製のゾルヤマト)が使用できる。金属粉と液体糊との混合比率は、金属粉1gに対して液体糊0.5g以上1.7g以下が好ましい。
【0030】
作業者は、
図3(a)に示すように、このような金属含有剤34を未加硫ゴムシート33に塗布する。塗布には、軟質樹脂からなるチューブ状の容器35と、容器35の先端に取り付けられた蓋36とからなる押し出し機が使用される。蓋36の先端には複数の孔37が等間隔で開いている。作業者は、金属含有剤34が充填された容器35を押すことにより全ての孔37から金属含有剤34を押し出して未加硫ゴムシート33に直線状に塗布する。塗布された金属含有剤34が乾燥して固まったものが被検出部31である。
【0031】
また、未加硫ゴムシート33の上で金属含有剤34が固まり被検出部31となったものが、
図3(b)に示す検出用シート32である。検出用シート32においても、もとの未加硫ゴムシート33の部分は未加硫のゴムのままである。
【0032】
金属含有剤34の塗布方向(この方向は検出用シート32における被検出部31の延長方向と同じである)は、最終的に観察しようとする面に直交する方向になるように決定される。本実施形態においてはタイヤ30の軸方向断面すなわちタイヤ周方向に対して直交する断面を観察しようとしており、後述するように検出用シート32の短辺38がタイヤ周方向に対して平行になる。そのため、作業者は、検出用シート32の短辺38と平行に、金属含有剤34を塗布する。
【0033】
作業者は、未加硫ゴムシート33の全体に、金属含有剤34を等間隔かつ平行になるように塗布する。その結果、完成する検出用シート32には、直線状の複数の被検出部31が等間隔かつ平行に形成される。
【0034】
被検出部31の幅は0.5mm以上3.0mm以下が好ましい。また、被検出部31の間隔(すなわち2本の被検出部31の間の被検出部31のない領域の幅)は5mm以上15mm以下が好ましい。
【0035】
設置ステップST2においては、作業者が、完成した検出用シート32をタイヤ30の内面42に貼り付ける。詳細には、作業者は、タイヤ30の内面42に沿ってタイヤ30の一方のビード部40から他方のビード部41までをカバーするように、検出用シート32を貼り付ける。このとき、作業者は、検出用シート32の短辺38がビード部40、41に沿ってタイヤ周方向に延び、検出用シート32の長辺39がタイヤ子午線方向に延びるように、検出用シート32を貼り付ける。
【0036】
また、作業者は、検出用シート32の全体をタイヤ30の内面42に密着させる。検出用シート32とタイヤ30の内面42との間に空気が入る場合は、作業者はピンで検出用シート32に孔を開けて空気を抜きつつ検出用シート32を貼り付ける。
【0037】
また、作業者は、1枚又は複数枚の検出用シート32をタイヤ30の内面42に貼り付ける。貼り付ける検出用シート32の枚数は、被検出部31を設けた範囲に、X線CT装置10を用いて観察しようとする範囲が確実に含まれるように、作業者が決定する。例えば、タイヤ周方向の近接する複数個所において断面を観察しようとする場合は、観察しようとする断面の数以上の検出用シート32をタイヤ周方向に並べて貼り付けることが好ましい。
【0038】
複数枚の検出用シート32を並べて貼り付ける場合、作業者は、それらの検出用シート32が隙間を空けずに接触し、それぞれの検出用シート32の被検出部31の延長方向が同じ方向となり、隣り合う検出用シート32の被検出部31同士が一致するようにすることが好ましい。その結果として、複数枚の検出用シート32が貼り付けられた領域全体において、被検出部31が等間隔かつ互いに平行に配置される。そのように検出用シート32が貼り付けられた様子を
図4に示す。
図4には5枚の検出用シート32がタイヤ周方向に並べて貼り付けられている。
【0039】
検出ステップST3においては、作業者が、X線CT装置10を使用してタイヤ30の断面画像を取得する。詳細には、まず、作業者が、検出用シート32を貼り付けたタイヤ30にホイール43を装着すると共に、タイヤ30に所定の内圧を付与する。次に、作業者は、そのタイヤ30を支持棒23に取り付けると共にタイヤ支持台20に載せることにより、タイヤ30をX線CT装置10に設置する。次に、作業者が、前記の制御部に指示することにより縦荷重付与部材24及び横荷重付与部材25を制御し、タイヤ30に所定の荷重を付与する。付与される荷重はロードセル22により測定される。
【0040】
次に、作業者が、前記の制御部に指示することによりタイヤ30の撮影を行う。タイヤ30の撮影は、X線照射装置11からX線を照射しながらターンテーブル21を回転させ、回転するタイヤ30を透過したX線をX線検出装置12で検出することにより行われる。次に、解析装置14が、作業者により指定された断面の画像を生成し出力する。本実施形態においては、タイヤ30の軸方向断面すなわちタイヤ周方向に対して直交する断面の画像が出力される。
【0041】
作業者は、タイヤ30に付与される条件を変えて、検出ステップST3を複数回実施する。
図5に出力された断面画像を示す。
図5(a)は、接地時のタイヤ30を再現するために、下方向への荷重のみ付与されたときの断面画像である。また、
図5(b)は、接地しさらに旋回等により横変形したときのタイヤ30を再現するために、下方向及び右方向への荷重が付与されたときの断面画像である。
【0042】
ここで、X線検出装置12で撮影された断面画像においては、X線が吸収されやすい部分ほど明るく写り、X線が透過されやすい部分ほど暗く写る。そのため、タイヤ30におけるビードコアやリム等の金属部分、ホイール43、及び、検出用シート32における金属含有部分である被検出部31は、明るく写る。一方、タイヤ30におけるゴム製の部分が暗く写る。また、何もない所は黒又は非常に暗い色になる。
【0043】
図5(a)に矢印で所々に示した白い点が、被検出部31である。被検出部31の配置から、タイヤ30の内面42の形状を明確に観察することができる。また、
図5(a)からは、下方向への荷重のみ付与されたときのタイヤ30の内面42の変形を観察することができる。また、
図5(a)と
図5(b)との比較からわかる被検出部31の配置の変化から、タイヤ30に付与される条件が変わったことによる、タイヤ30の内面42の変形を観察することができる。
【0044】
また、
図5(a)と
図5(b)との比較からわかる被検出部31の間隔の変化から、タイヤ30に付与される条件が変わったことによるインナーライナー(タイヤ30の内面42を構成するゴム部材)の伸び方を観察することができ、その伸び方に基づき歪について判断することができる。例えば、隣り合う被検出部31の間隔が広がった部分は、インナーライナーが伸びた部分であると言える。そのような部分では引張歪が発生したと判断することができる。また、隣り合う被検出部31の間隔が狭まった部分は、インナーライナーが縮んだ部分であると言える。そのような部分では圧縮歪が発生したと判断することができる。
【0045】
以上のように本実施形態では、作業者が、金属含有部分である被検出部31が設けられた検出用シート32を作製し、その検出用シート32をタイヤ30に貼り付ける。そして、X線CT装置10にて、金属とゴムのX線透過率の違いを利用して、金属含有部分である被検出部31を検出する。
【0046】
この方法によれば、タイヤ30が完成品であっても、検出用シート32を貼り付けることにより被検出部31を設けることができる。また、被検出部31が設けられた検出用シート32を先に作製するため、検出用シート32に対して被検出部31を正確に配置することができる。そしてその検出用シート32をタイヤ30に貼り付けるため、タイヤ30に対して被検出部31を正確に配置することができる。その被検出部31をX線CT装置10にて検出することにより、タイヤ30の変形を観察することができる。
【0047】
また、検出用シート32の作製時に作業者が金属含有剤34の塗布位置を間違えたり金属含有剤34が垂れたりした場合は、その検出用シート32を破棄すれば良く、タイヤ30への影響がない。また、作業者が検出用シート32をタイヤ30に貼り付けた後に被検出部31の配置を変更したくなったとき等は、検出用シート32を貼り替えるだけで容易に変更することができる。
【0048】
また、タイヤ30の内面42は、曲面であるうえ作業者の手が入りにくいため、液体の金属含有剤34等を直接塗布しようとしても、作業者の意図通りに塗布するのが難しい。しかし本実施形態のように被検出部31が設けられた検出用シート32を内面42に貼り付けることにより、金属含有部分である被検出部31を作業者の意図通りに配置することが容易になる。
【0049】
また、被検出部31が、金属粉と液体糊との混合物である金属含有剤34からなるため、金属線等と比べてタイヤ30の剛性に影響しにくく、タイヤ30の変形にも追従しやすい。また、作業者が、そのような金属含有剤34を未加硫ゴムシート33に塗布することにより被検出部31を形成するため、被検出部31の形成が容易である。
【0050】
ここで、金属含有剤34における金属粉と液体糊との混合比率が金属粉1gに対して液体糊0.5g以上であれば、金属含有剤34が乾燥してできる被検出部31が脆くなりにくく剥がれにくい。また、金属粉と液体糊との混合比率が金属粉1gに対して液体糊1.7g以下であれば、被検出部31における金属含有率が低くなり過ぎず断面画像の中に被検出部31が明確に現れる。
【0051】
また、被検出部31の幅が0.5mm以上であれば、断面画像の中に被検出部31が明確に現れやすい。また、被検出部31の幅が3.0mm以下であれば、断面画像の中で被検出部31が大きくなり過ぎず被検出部31の位置を特定するときに誤差が生じにくい。
【0052】
また、検出用シート32のもととなる未加硫ゴムシート33がブチルゴム製であるため、タイヤ30の内面42に貼り付きやすい。また、未加硫ゴムシート33のモジュラスが1.5MPa以下であるため、タイヤ30の剛性に影響しにくい。また、未加硫ゴムシート33は、厚みが0.5mm以上であれば破けにくく、厚みが1.5mm以下であればタイヤ30の剛性に特に影響しにくい。
【0053】
また、大きい1枚の検出用シート32をタイヤ30の広範囲に貼り付けようとすると、タイヤ30の曲面に検出用シート32がうまく沿わず皺等ができてしまう。しかし、本実施形態のようにタイヤ30に複数枚の検出用シート32を貼り付けることにより、皺等を生じさせずに広範囲に検出用シート32を貼り付けることができる。
【0054】
また、未加硫ゴムシート33の短辺38の長さが、短辺38がタイヤ外周面のタイヤ軸方向中央位置においてタイヤ周方向に対して平行に配置されたときに、タイヤ30の回転軸を中心とする角度にして5°以上に相当する長さであれば、検出用シート32に皺が生じにくい。また、短辺38の長さがタイヤ30の回転軸を中心とする角度にして10°以下に相当する長さであれば、広範囲に検出用シート32を貼り付けるときに検出用シート32の枚数が増えすぎず作業性が落ちない。
【0055】
以上の実施形態に対して様々な変更を行うことができる。以下で説明する変更例のいずれか1つを上記実施形態に適用しても良いし、いずれか2つ以上を組み合わせて上記実施形態に適用しても良い。
【0056】
<変更例1>
金属含有剤34には、金属粉と液体糊にさらに別のものが加わっても良い。例えば、金属含有剤34は、金属粉、液体糊及び水からなるものでも良い。水が混ざることにより、金属含有剤34が流動しやすくなり、金属含有剤34の塗布作業が容易になる。特に、押し出し機の孔37から金属含有剤34を押し出しにくい場合には、水を混ぜることにより押し出しやすくなる。ただし、水の量は、質量にして糊の1/3以下が好ましい。また、混合比率は、金属粉1gに対し、液体糊と水とを足した質量が0.5g以上1.7g以下であることが好ましい。
【0057】
<変更例2>
金属含有剤34には、液体糊の代わりに別の接着剤が使用されても良い。ただし、接着剤は、金属粉を未加硫ゴムシートに接着する機能を有することが必要であり、また、適度な流動性を有することが好ましい。
【0058】
<変更例3>
被検出部31の延長方向は、観察しようとする面次第で変更される。具体的には、観察される断面が、被検出部31の延長方向に直交する面となり、断面画像の中に被検出部31が点として現れるように、被検出部31の延長方向が決定される。
【0059】
例えば、タイヤ30の周方向や前後方向の変形を見るためにタイヤ軸方向に対して直交する断面の観察を行う場合は、被検出部31がタイヤ30の内面42に沿ってタイヤ子午線方向に延びていれば、観察される断面に被検出部31が点状に現れ、その被検出部31に基づき解析を行うことができる。また、タイヤ周方向に直交する断面と、タイヤ軸方向に直交する断面との両方の観察を行う場合は、複数の被検出部31が格子状に設けられても良い。
【0060】
<変更例4>
検出用シート32はタイヤ30の外面に貼り付けられても良い。ここで、タイヤ30の外面とは、一方のビード部から他方のビード部までの、トレッド表面及びサイドウォール表面を含む面のことである。この変更例の場合、タイヤ30の外面の変形を観察することができる。
【0061】
<変更例5>
図5(a)と
図5(b)の比較は横方向への荷重の有無によるタイヤ30の変形の比較だが、検出用シート32とX線CT装置10を利用した観察方法により、他にも様々な条件の違いによるタイヤ30の変形の比較を行うことができる。条件の違いとして、例えば、荷重を付与した状態と付与しない状態の違い、荷重の大きさの違い、インフレート前後の違い等が挙げられる。
【符号の説明】
【0062】
10…X線CT装置、11…X線照射装置、12…X線検出装置、13…タイヤ保持装置、14…解析装置、20…タイヤ支持台、21…ターンテーブル、22…ロードセル、23…支持棒、24…縦荷重付与部材、25…横荷重付与部材、25a…連結部分、30…タイヤ、31…被検出部、32…検出用シート、33…未加硫ゴムシート、34…金属含有剤、35…容器、36…蓋、37…孔、38…短辺、39…長辺、40…ビード部、41…ビード部、42…内面、43…ホイール