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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060787
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】電力需給調整システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 3/14 20060101AFI20240425BHJP
   F24F 6/00 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
F24F3/14
F24F6/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168296
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 深雪
(72)【発明者】
【氏名】張本 和芳
【テーマコード(参考)】
3L053
3L055
【Fターム(参考)】
3L053BC01
3L053BC05
3L055DA02
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で電力需給調整を実現する電力需給調整システムを提案する。
【解決手段】本発明の電力需給調整システム100は、調湿液を用いて除湿及び加湿をする除加湿機器1と、調湿液を再生する再生機器2と、調湿液の温度を調整する調温機構(冷却装置3、加熱装置5、第1熱交換器4,第2熱交換器6)と、調湿液を、濃い調湿液及び薄い調湿液として貯める調湿液タンク7と、を備える。電力余剰時では、調湿液タンク7に調湿液を分岐して貯めたり、調湿液タンク7に貯められている調湿液を供給したりする。電力不足時では、再生機器2及び調温機構を停止し、調湿液タンク7に調湿液を利用して除湿及び加湿をする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調湿液を用いて除湿及び加湿をする除加湿機器と、
前記調湿液を再生する再生機器と、
前記調湿液の温度を調整する調温機構と、
前記調湿液を、濃度が第1閾値より大きい第1調湿液、及び濃度が第1閾値以下の第2調湿液として貯める調湿液タンクと、を備える電力需給調整システム。
【請求項2】
除湿する場合において、電力余剰時では、前記再生機器で再生された前記調湿液の一部を前記第1調湿液として前記調湿液タンクに貯め、前記調湿液タンクに貯められている前記第2調湿液を前記再生機器に供給する請求項1に記載の電力需給調整システム。
【請求項3】
除湿する場合において、電力不足時では、前記再生機器及び前記調温機構を停止するとともに、前記除加湿機器で使用された前記調湿液を前記第2調湿液として前記調湿液タンクに貯め、前記調湿液タンクに貯められている前記第1調湿液を前記除加湿機器に供給する請求項1に記載の電力需給調整システム。
【請求項4】
加湿する場合において、電力余剰時では、前記再生機器で再生された前記調湿液の一部を前記第2調湿液として前記調湿液タンクに貯め、前記調湿液タンクに貯められている前記第1調湿液を前記再生機器に供給する請求項1に記載の電力需給調整システム。
【請求項5】
加湿する場合において、電力不足時では、前記再生機器及び前記調温機構を停止するとともに、前記除加湿機器で使用された前記調湿液を前記第1調湿液として前記調湿液タンクに貯め、前記調湿液タンクに貯められている前記第2調湿液を前記除加湿機器に供給する請求項1に記載の電力需給調整システム。
【請求項6】
前記調湿液タンクに貯められている調湿液に水を加えて前記第2調湿液を供給する請求項5に記載の電力需給調整システム。
【請求項7】
電力余剰時でも電力不足時でもないとき、前記調湿液タンクを停止する請求項1に記載の電力需給調整システム。
【請求項8】
前記調湿液タンクは、前記第2調湿液が前記第1調湿液よりも上に層を形成する濃度成層タンクである請求項1から請求項7の何れかに記載の電力需給調整システム。
【請求項9】
前記調湿液タンクは、前記第1調湿液及び前記第2調湿液が異なる槽に貯められる2槽タンクである請求項1から請求項7の何れかに記載の電力需給調整システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力需給調整システムに関する。
【背景技術】
【0002】
2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、2030年度の温暖化ガスの削減目標が2013年度比-46%に設定された。これに伴い、省エネ技術の導入が求められており、空調分野においても相応の発明が公開されている。例えば、特許文献1には、空調空間の除湿が必要になった時に、熱量が生成されていない場合であっても、直ちに空調空間を除湿することができるコージェネレーションシステムが開示されている。特許文献1のコージェネレーションシステムによれば、除湿に必要な熱量が不足すると除湿需要判断部が判定した場合に、デシカント空調装置は、予めデシカント剤を除湿しておく。また、デシカント空調装置は、燃料電池によって作られた熱を用いて除湿を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-10264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、電力余剰時に余剰電力を蓄電池等に蓄えておき、電力不足時には蓄えた余剰電力を活用することで、系統電力の電力需給の調整が行われる。しかし、余剰分を電力として蓄えておく対策は、エネルギーロスが大きくなったり、蓄電池等を備えるための設備が大規模になったりするため、省エネ対策としては限界がある。特許文献1のコージェネレーションシステムは、燃料電池を組み込んだ空調システムに相当し、燃料電池が生成する熱量を用いて系統電力の電力需給の調整を行う。しかし、特許文献1のコージェネレーションシステムは、燃料電池が生成する熱量を処理するためにシステム構成が複雑になる問題がある。また、除湿に必要な熱量の不足等を判定しデシカント材を除湿するなど、除湿に関する制御ロジックが複雑になる問題がある。
【0005】
このような観点から、本発明は、簡易な構成で電力需給調整を実現する電力需給調整システムを提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する本発明は、調湿液を用いて除湿及び加湿をする除加湿機器と、前記調湿液を再生する再生機器と、前記調湿液の温度を調整する調温機構と、前記調湿液を、濃度が第1閾値より大きい第1調湿液、及び濃度が第1閾値以下の第2調湿液として貯める調湿液タンクと、を備える電力需給調整システムである。
【0007】
本発明によれば、蓄電池等に余剰電力を蓄えることに代えて、濃度を調整した調湿液を調湿液タンクに貯めることができる。電力需給状況に応じて、調湿液タンクから調湿液を供給することで、除加湿機器による除湿及び加湿を継続することができる。つまり、再生機器及び調温機構を稼働させる必要がなくなり、省エネを実現できる。調湿液の蓄積は、電力の蓄積よりも容易であるとともに、時間経過によるエネルギーロスが小さい。また、調湿液タンクは、第1調湿液及び第2調湿液を貯めることができればよいため、蓄電池等を備えるための設備より規模を小さくすることができる。したがって、簡易な構成で電力需給調整を実現することができる。
【0008】
また、除湿する場合において、電力余剰時では、前記再生機器で再生された前記調湿液の一部を前記第1調湿液として前記調湿液タンクに貯め、前記調湿液タンクに貯められている前記第2調湿液を前記再生機器に供給することが好ましい。
【0009】
これにより、余剰電力を用いて再生機器及び調温機構をより稼動させることができ、安価な余剰電力を積極的に活用することができる。つまり、除加湿機器の除湿により生成された第2調湿液や、調湿液タンクから供給された第2調湿液からより多くの第1調湿液が再生される。また、電力通常時の運転を行いつつ、再生された第1調湿液の一部を調湿液タンクに貯めるため、除湿に必要となる量の第1調湿液を除加湿機器に確実に供給しつつ、第1調湿液のロスを防止することができる。
【0010】
また、除湿する場合において、電力不足時では、前記再生機器及び前記調温機構を停止するとともに、前記除加湿機器で使用された前記調湿液を前記第2調湿液として前記調湿液タンクに貯め、前記調湿液タンクに貯められている前記第1調湿液を前記除加湿機器に供給することが好ましい。
【0011】
これにより、調湿液タンクから第1調湿液を供給することで、除加湿機器の稼動を継続することができる。また、除加湿機器の除湿により生成された第2調湿液を調湿液タンクに回収するため、第2調湿液を再生するために再生機器及び調温機構を稼動させる必要がない。よって、調湿液の再生に必要となる電力を不要とし、電力不足時の高価な電力の使用を抑制することで、電力不足時の省エネを実現できる。具体的には、電力需給調整システムが備えるすべての機器が稼働したときの約80%程度の電力で済み、約20%程度の省エネを実現できる。
【0012】
また、加湿する場合において、電力余剰時では、前記再生機器で再生された前記調湿液の一部を前記第2調湿液として前記調湿液タンクに貯め、前記調湿液タンクに貯められている前記第1調湿液を前記再生機器に供給することが好ましい。
【0013】
これにより、余剰電力を用いて再生機器及び調温機構をより稼動させることができ、安価な余剰電力を積極的に活用することができる。つまり、除加湿機器の加湿により生成された第1調湿液や、調湿液タンクから供給された第1調湿液からより多くの第2調湿液が再生される。また、電力通常時の運転を行いつつ、再生された第2調湿液の一部を調湿液タンクに貯めるため、加湿に必要となる量の第2調湿液を除加湿機器に確実に供給しつつ、第2調湿液のロスを防止することができる。
【0014】
また、加湿する場合において、電力不足時では、前記再生機器及び前記調温機構を停止するとともに、前記除加湿機器で使用された前記調湿液を前記第1調湿液として前記調湿液タンクに貯め、前記調湿液タンクに貯められている前記第2調湿液を前記除加湿機器に供給することが好ましい。
【0015】
これにより、調湿液タンクから第2調湿液を供給することで、除加湿機器の稼動を継続することができる。また、除加湿機器の加湿により生成された第1調湿液を調湿液タンクに回収するため、第1調湿液を再生するために再生機器及び調温機構を稼動させる必要がない。よって、調湿液の再生に必要となる電力を不要とし、電力不足時の高価な電力の使用を抑制することで、電力不足時の省エネを実現できる。具体的には、電力需給調整システムが備えるすべての機器が稼働したときの約80%程度の電力で済み、約20%程度の省エネを実現できる。
【0016】
また、前記調湿液タンクに貯められている調湿液に水を加えて前記第2調湿液を供給することが好ましい。
【0017】
これにより、調湿液タンクに第1調湿液しか貯められていない状況であっても、第2調湿液を貯めることができるので、第2調湿液を確実に供給することができる。
【0018】
また、電力余剰時でも電力不足時でもないとき、前記調湿液タンクを停止することが好ましい。
【0019】
これにより、電力余剰時でも電力不足時でもないとき(電力通常時)の省エネを実現できる。
【0020】
また、前記調湿液タンクは、前記第2調湿液が前記第1調湿液よりも上に層を形成する濃度成層タンクであることが好ましい。
【0021】
これにより、第1調湿液が第2調湿液よりも密度が大きい性質を利用して、同じ槽に第1調湿液及び第2調湿液を併存して貯めることができ、調湿液タンクを小型化することができる。
【0022】
また、前記調湿液タンクは、前記第1調湿液及び前記第2調湿液が異なる槽に貯められる2槽タンクであることが好ましい。
【0023】
これにより、第1調湿液の濃度及び第2調湿液の濃度を確実に保持することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、簡易な構成で電力需給調整を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本実施形態の電力需給調整システムの概略図であり、夏期における除湿サイクルの電力通常時の説明図である。
図2】夏期における除湿サイクルの電力余剰時の説明図である。
図3】夏期における除湿サイクルの電力不足時の説明図である。
図4】冬期における加湿サイクルの電力通常時の説明図である。
図5】冬期における加湿サイクルの電力余剰時の説明図である。
図6】冬期における加湿サイクルの電力不足時の説明図である。
図7】電力需給状況に応じた運転パターンを示す表である。
図8】夏期における除湿サイクルのフローチャートである。
図9】冬期における加湿サイクルのフローチャートである。
図10】調湿液タンクが2槽であるときの説明図であり、(a)が夏期における除湿サイクルの電力余剰時の場合、(b)が夏期における除湿サイクルの電力不足時の場合、(c)が冬期における加湿サイクルの電力余剰時の場合、(d)が冬期における加湿サイクルの電力不足時の場合である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施をするための形態を、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるもではない。なお、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0027】
[構成]
図1は、本実施形態の電力需給調整システムの概略図であり、夏期における除湿サイクルの電力通常時の説明図である。電力需給調整システム100は、建物に供給される系統電力の電力需給調整を行うシステムであり、建物での電力の需要予測や発電予測の変化があった場合、予測変化に応じた計画変更(需給調整)を行う。より詳細には、電力需給調整システム100は、建物の空調システムが備える除加湿機能を制御して電力需給調整を行うことができる。電力需給調整システム100は、除加湿機器1と、再生機器2と、冷却装置3と、第1熱交換器4と、加熱装置5と、第2熱交換器6と、調湿液タンク7と、ポンプ8と、第1熱交換器4第2熱交換器6配管9とを備える。配管9は、調湿液の流通経路となる。配管9は、除加湿機器1、再生機器2、第1熱交換器4及び第2熱交換器6を繋いでいる。調湿液(デシカント液)は、例えば、塩化リチウム水溶液とすることができるが、これに限定されない。また、配管9の適所には、仕切弁91,92、開閉弁93~96、及びその他の弁(図示略)が配置されている。電力需給調整システム100はこれらの弁を開閉することにより、調湿液は、電力需給調整システム100の構成要素(除加湿機器1と、再生機器2と、冷却装置3と、第1熱交換器4と、加熱装置5と、第2熱交換器6と、調湿液タンク7と、ポンプ8)を経由したり、当該構成要素に到達したりすることができる。
【0028】
除加湿機器1は、建物の室内を除湿したり加湿したりする機器である。除加湿機器1は、複数の中空糸膜から構成される中空糸ユニット11を備えている。除加湿機器1は、中空糸ユニット11を介して空気と調湿液とを接触させることで除湿したり加湿したりすることができる。除加湿機器1が除湿する(空気中の水分を調湿液に取り込む)と、調湿液の濃度が下がり、除加湿機器1が加湿する(調湿液の水分を空気中に供給する)と、調湿液の濃度が上がる。
再生機器2は、除加湿機器1が使用した調湿液を再生する。再生機器2は、複数の中空糸膜から構成される中空糸ユニット21を備えている。再生機器2は、中空糸ユニット21を介して空気(外気)と調湿液とを接触させることで除湿したり加湿したりすることができる。除加湿機器1が除湿したことにより調湿液の濃度が下がった場合、調湿液の再生とは、調湿液の濃度を上げることをいう。また、除加湿機器1が加湿したことにより調湿液の濃度が上がった場合、調湿液の再生とは、調湿液の濃度を下げることをいう。
【0029】
冷却装置3は、第1熱交換器4を用いて調湿液を冷やす機器である。
第1熱交換器4は、調湿液の熱エネルギー、及び冷却装置3が保有する流体(高温冷水)の熱エネルギーを交換する機器である。例えば、冷却装置3が保有する流体の温度を25℃~28℃とし、第1熱交換器4を経由する調湿液の温度を25℃~28℃にすることができる。
加熱装置5は、第2熱交換器6を用いて調湿液を温める機器である。
第2熱交換器6は、調湿液の熱エネルギー、及び加熱装置5が保有する流体(低温温水)の熱エネルギーを交換する機器である。例えば、加熱装置5が保有する流体の温度を40℃~50℃とし、第2熱交換器6を経由する調湿液の温度を40℃~50℃にすることができる。
冷却装置3、第1熱交換器4、加熱装置5、及び第2熱交換器6により、調湿液の温度を調整する「調温機構」が構成される。
【0030】
調湿液タンク7は、調湿液を貯めるタンクである。調湿液タンク7は1槽の濃度成層タンクであり、密度の大きい濃い(高濃度)調湿液を下部に貯めることができ、密度の小さい薄い(低濃度)調湿液を上部に貯めることができる。調湿液タンク7の内部は、調湿液の分子が熱交換せず、濃度が均一にならず、濃い調湿液及び薄い調湿液が併存可能となるように断熱されている。調湿液タンク7に電力が供給されず、停止していても断熱の効果は継続する。調湿液タンク7の下部は、除加湿機器1と第1熱交換器4とを繋ぐ配管9に接続されており、濃い調湿液が流通可能になっている。また、調湿液タンク7の上部は、除加湿機器1と第2熱交換器6とを繋ぐ配管9に接続されており、薄い調湿液が流通可能になっている。
なお、本実施形態では、調湿液の濃度に関する第1閾値を用意し、第1閾値より大きい濃度の調湿液を濃い調湿液(第1調湿液)とし、第1閾値以下の濃度の調湿液を薄い調湿液(第2調湿液)とする。濃い調湿液の濃度は、例えば、30~36%程度であり、薄い調湿液の濃度は、例えば、20~26%程度とすることができるが、これらに限定されない。
ポンプ8は、配管9を流通する調湿液を送り出す機器である。
【0031】
電力需給調整システム100に対して、建物の電力需給を判定する計算機(図示せず)が用意されている。計算機は、建物での電力の需要予測や発電予測の変化を監視し、電力需給調整の判断を行うことができる。電力需給調整がない場合、計算機は、電力通常時の電力で電力需給調整システム100を動作させる。電力需給調整がある場合、電力余剰時又は電力不足時の電力で電力需給調整システム100を動作させる。
【0032】
[動作]
[夏期 除湿サイクル 電力通常時]
図1を参照して、夏期における除湿サイクルの電力通常時での電力需給調整システム100の動作について説明する。除湿サイクルは、建物の室内に低湿の空気を送り出すように調湿液を循環させる仕組みである。電力通常時では、除加湿機器1と、再生機器2と、冷却装置3と、第1熱交換器4と、加熱装置5と、第2熱交換器6を稼動させる一方、調湿液タンク7を停止(調湿液タンク7への調湿液の出入りを停止)し、空調を行う。なお、ポンプ8は、電力通常時、電力余剰時、及び電力不足時の何れであっても稼動しており、ポンプ8の稼働状態については以降説明を省略する。
【0033】
除加湿機器1は、中空糸ユニット11を具備しており、中空糸ユニット11を介して濃い調湿液と高湿な空気とを接触させることで、濃い調湿液(濃度が高い調湿液=水分が少ない調湿液)が高湿な空気から水分を吸収する。そして、除加湿機器1は、高湿な空気を除湿して低湿な空気を室内に送ることができる。なお、濃い調湿液は冷却装置3により冷やされているため、調湿液による水分吸収を効果的に行うことができる。その結果、水分を吸収して薄くなった除湿液が除加湿機器1から排出される。排出された薄い調湿液(濃度が低い調湿液=水分が多い調湿液)は、配管9を流通して第2熱交換器6を経由することで温められる。温められた薄い調湿液は、開いた仕切弁91を介して配管9を流通して再生機器2に供給される。再生機器2は、中空糸ユニット21を具備しており、中空糸ユニット21を介して薄い調湿液と外気とを接触させることで、薄い調湿液が外気に水分を放出して除去し、外気は放出された水分を含んで排気される。なお、薄い調湿液は温められているため、調湿液の水分除去を効果的に行うことができる。その結果、水分が除去されて濃くなった調湿液が再生機器2から排出される。排出された濃い調湿液は、開いた仕切弁92を介して配管9を流通して第1熱交換器4を経由することで冷やされる。冷やされた調湿液は、開いた開閉弁95を介して配管9を流通して除加湿機器1に供給される。以上の説明のように、調湿液が循環しつつ除湿及び再生が繰り返される。
【0034】
[夏期 除湿サイクル 電力余剰時]
図2は、夏期における除湿サイクルの電力余剰時の説明図である。図2を参照して、夏期における除湿サイクルの電力余剰時での電力需給調整システム100の動作について説明する。電力余剰時では、除加湿機器1と、再生機器2と、冷却装置3と、第1熱交換器4と、加熱装置5と、第2熱交換器6を稼動させ、空調を行う。また、余剰電力を利用して調湿液タンク7を稼動させる(調湿液タンク7へ調湿液を出入りさせる)。除加湿機器1→第2熱交換器6→再生機器2→第1熱交換器4→除加湿機器1の順で循環する調湿液の説明は、「夏期 除湿サイクル 電力通常時」と同様なので説明を省略する。
【0035】
冷却装置3により冷やされた濃い調湿液は、開いた開閉弁96によって分岐され、配管9を流通して調湿液タンク7の下部に供給され、貯められる(再生機器2で再生された調湿液の一部が調湿液タンク7に貯められる)。また、調湿液タンク7の上部に貯められた薄い調湿液は、除湿サイクルに供給される(再生機器2に供給される)。具体的には、調湿液タンク7の上部に貯められた薄い調湿液は、開いた開閉弁94を介して配管9を流通し、除加湿機器1とポンプ8との間を流れる薄い調湿液に合流する。結果的に、調湿液タンク7に貯められていた薄い調湿液は、再生機器2により再生される。また、再生された濃い調湿液は、除加湿機器1によって除湿に利用される、又は調湿液タンク7に貯められる。
【0036】
[夏期 除湿サイクル 電力不足時]
図3は、夏期における除湿サイクルの電力不足時の説明図である。図3を参照して、夏期における除湿サイクルの電力不足時での電力需給調整システム100の動作について説明する。電力不足時では、除加湿機器1に調湿液を供給するとともに、調湿液タンク7を稼動させる(調湿液タンク7へ調湿液を出入りさせる)一方、再生機器2と、冷却装置3と、第1熱交換器4と、加熱装置5と、第2熱交換器6を停止し、空調を行う。すなわち、電力不足時では、除加湿機器1及び調湿液タンク7に調湿液を通流させる閉じた循環ループを形成する。
【0037】
調湿液タンク7の下部に貯められた濃い調湿液(水分が少ない調湿液)は、開いた開閉弁95,96を介して配管9を流通し、除加湿機器1に供給される。除加湿機器1は、中空糸ユニット11を介して濃い調湿液と高湿な空気とを接触させることで、濃い調湿液が高湿な空気から水分を吸収する。そして、除加湿機器1は、高湿な空気を除湿して低湿な空気を室内に送ることができる。その結果、水分を吸収して薄くなった除湿液が除加湿機器1から排出される。排出された薄い調湿液は、閉じた開閉弁94によって配管9を流通してポンプ8から送り出された後、開いた開閉弁93を介して配管9を流通して調湿液タンク7の上部に供給され、貯められる。このとき、調湿液タンク7内部の濃度調整された調湿液をかき乱さないように供給することが好ましい。
【0038】
[冬期 加湿サイクル 電力通常時]
図4は、冬期における加湿サイクルの電力通常時の説明図である。図4を参照して、冬期における加湿サイクルの電力通常時での電力需給調整システム100の動作について説明する。加湿サイクルは、建物の室内に高湿の空気を送り出すように調湿液を循環させる仕組みである。電力通常時では、除加湿機器1と、再生機器2と、冷却装置3と、第1熱交換器4と、加熱装置5と、第2熱交換器6を稼動させる一方、調湿液タンク7を停止し、空調を行う。
【0039】
除加湿機器1は、中空糸ユニット11を介して薄い調湿液(水分が多い調湿液)と低湿な空気とを接触させることで、薄い調湿液が低湿な空気に水分を放出して除去する。そして、除加湿機器1は、放出された水分を含んだ高湿な空気を室内に送ることができる。なお、濃い調湿液は加熱装置5により温められているため、調湿液からの水分除去を効果的に行うことができる。その結果、水分を除去して濃くなった除湿液が除加湿機器1から排出される。排出された薄い調湿液は、開いた仕切弁92を介して配管9を流通して第1熱交換器4を経由することで冷やされる。冷やされた濃い調湿液は、開いた開閉弁95を介して配管9を流通して再生機器2に供給される。再生機器2は、中空糸ユニット21を介して濃い調湿液と外気とを接触させることで、濃い調湿液が外気から水分を吸収し、外気は除湿されて排気される。なお、濃い調湿液は冷やされているため、調湿液の水分吸収を効果的に行うことができる。その結果、水分を吸収して薄くなった調湿液が再生機器2から排出される。排出された薄い調湿液は、ポンプ8によって送り出された後、配管9を流通して第2熱交換器6を経由することで温められる。温められた調湿液は、開いた仕切弁91を介して配管9を流通して除加湿機器1に供給される。以上の説明のように、調湿液が循環しつつ加湿及び再生が繰り返される。
【0040】
[冬期 加湿サイクル 電力余剰時]
図5は、冬期における加湿サイクルの電力余剰時の説明図である。図5を参照して、冬期における加湿サイクルの電力余剰時での電力需給調整システム100の動作について説明する。電力余剰時では、除加湿機器1と、再生機器2と、冷却装置3と、第1熱交換器4と、加熱装置5と、第2熱交換器6を稼動させ、空調を行う。また、余剰電力を利用して調湿液タンク7を稼動させる。除加湿機器1→第1熱交換器4→再生機器2→第2熱交換器6→除加湿機器1の順で循環する調湿液の説明は、「冬期 加湿サイクル 電力通常時」と同様なので説明を省略する。
【0041】
加熱装置5により温められた薄い調湿液(水分が多い調湿液)は、開いた開閉弁94によって分岐され、配管9を流通して調湿液タンク7の上部に供給され、貯められる(再生機器2で再生された調湿液の一部が調湿液タンク7に貯められる)。また、調湿液タンク7の下部に貯められた濃い調湿液(水分が少ない調湿液)は、加湿サイクルに供給される(再生機器2に供給される)。具体的には、調湿液タンク7の下部に貯められた濃い調湿液は、開いた開閉弁96を介して配管9を流通し、第1熱交換器4と除加湿機器1との間を流れる濃い調湿液に合流する。結果的に、調湿液タンク7に貯められていた濃い調湿液は、再生機器2により再生される。また、再生された薄い調湿液は、除加湿機器1によって加湿に利用される、又は調湿液タンク7に貯められる。
【0042】
[冬期 加湿サイクル 電力不足時]
図6は、冬期における加湿サイクルの電力不足時の説明図である。図6を参照して、冬期における加湿サイクルの電力不足時での電力需給調整システム100の動作について説明する。電力不足時では、除加湿機器1と、調湿液タンク7を稼動させる一方、再生機器2と、冷却装置3と、第1熱交換器4と、加熱装置5と、第2熱交換器6を停止し、空調を行う。図6によれば、電力不足時では、停止している第1熱交換器4及び第2熱交換器6を経由した態様で、除加湿機器1及び調湿液タンク7に調湿液を通流させる閉じた循環ループを形成する。なお、停止している第1熱交換器4及び第2熱交換器6は調湿液の熱交換をしないが、配管3の経路は開となっており、調湿液が第1熱交換器4及び第2熱交換器の内部を通過する状態で上記の閉じた循環ループを形成することができる。
【0043】
調湿液タンク7の上部に貯められた薄い調湿液(水分が多い調湿液)は、開いた開閉弁94、ポンプ8、開いた仕切弁91を介して、かつ、閉じた開閉弁93によって配管9を流通し、除加湿機器1に供給される。除加湿機器1は、中空糸ユニット11を介して薄い調湿液と低湿な空気とを接触させることで、薄い調湿液が低湿な空気に水分を放出して除去する。そして、除加湿機器1は、放出された水分を含んだ高湿な空気を室内に送ることができる。その結果、水分を除去して濃くなった除湿液が除加湿機器1から排出される。排出された濃い調湿液は、開いた仕切弁92、開いた開閉弁96を介して、かつ、閉じた開閉弁95によって配管9を流通して調湿液タンク7の下部に供給され、貯められる。このとき、調湿液タンク7内部の濃度調整された調湿液をかき乱さないように供給することが好ましい。また、除加湿機器1に供給する薄い調湿液が調湿液タンク7に十分に貯められていない場合、調湿液タンク7に貯められている調湿液を水で薄めることが好ましい。これにより、調湿液タンク7に貯められている濃い調湿液を薄い調湿液にすることができ、除加湿機器1に対して十分な量の薄い調湿液を供給することができる。
【0044】
[電力需給状況に応じた運転パターン]
図7は、電力需給状況に応じた運転パターンを示す表である。図1を参照して説明したとおり、「夏期 除湿サイクル 電力通常時」では、除加湿機器1と、再生機器2と、冷却装置3(図7の説明において、第1熱交換器4も含む)と、加熱装置5(図7の説明において、第2熱交換器6も含む)を稼動する(〇印)。また、調湿液タンク7を停止する(無印)。また、調湿液タンク7に貯められている調湿液を水で薄めることはしない(「水」の欄で無印)。
次に、図2を参照して説明したとおり、「夏期 除湿サイクル 電力余剰時」では、除加湿機器1と、冷却装置3と、調湿液タンク7を稼動し(〇印)、再生機器2と、加熱装置5を余剰電力によってより大きな出力で稼働する(◎印)。これにより除加湿機器1から排出された薄い調湿液をより多く再生させることができる(処理量増)。また、調湿液タンク7に貯められている調湿液を水で薄めることはしない(「水」の欄で無印)。
次に、図3を参照して説明したとおり、「夏期 除湿サイクル 電力不足時」では、除加湿機器1と、調湿液タンク7を稼動する(〇印)。また、再生機器2と、冷却装置3と、加熱装置5を停止する(無印)。また、調湿液タンク7に貯められている調湿液を水で薄めることはしない(「水」の欄で無印)。
【0045】
次に、図4を参照して説明したとおり、「冬期 加湿サイクル 電力通常時」では、除加湿機器1と、再生機器2と、冷却装置3と、加熱装置5を稼動する(〇印)。また、調湿液タンク7を停止する(無印)。また、調湿液タンク7に貯められている調湿液を水で薄めることはしない(「水」の欄で無印)。
次に、図5を参照して説明したとおり、「冬期 加湿サイクル 電力余剰時」では、除加湿機器1と、調湿液タンク7を稼動し(〇印)、再生機器2と、冷却装置3と、加熱装置5を余剰電力によってより大きな出力で稼働する(◎印)。これにより除加湿機器1から排出された濃い調湿液をより多く再生させることができる(処理量増)。図5を参照した説明では、調湿液タンク7に貯められている調湿液を水で薄めることはしない(「水」の欄で無印)。
次に、図6を参照して説明したとおり、「冬期 加湿サイクル 電力不足時」では、除加湿機器1と、調湿液タンク7を稼動する(〇印)。また、再生機器2と、冷却装置3と、加熱装置5を停止する(無印)。また、調湿液タンク7に貯められている調湿液を水で薄める(「水」の欄で〇印)。
【0046】
[処理]
次に、電力需給状況に応じた、除湿及び加湿に関する処理について説明する。図8は、夏期における除湿サイクルのフローチャートである。図9は、冬期における加湿サイクルのフローチャートである。図8及び図9の処理は、電力需給調整システム100に対して、建物の電力需給を判定するために用意されている(すでに説明した)計算機が実行する。
【0047】
図8を参照して、除湿サイクルを行う場合、計算機は、建物での電力の需要予測や発電予測の変化を監視し、電力需給調整判断の有無が必要であるか否かを判定する(ステップA1)。必要でない場合(ステップA1でNo)、計算機は、電力需給調整システム100に対して、通常時運転モードを実行するように指示する(ステップA4)。通常時運転モードは、図1に示す「夏期 除湿サイクル 電力通常時」を実現する運転モードである。一方、必要である場合(ステップA1でYes)、計算機は、建物の電力需給が電力余剰であるか否かを判定する(ステップA2)。電力余剰である場合(ステップA2でYes)、計算機は、電力需給調整システム100に対して、電力余剰時運転モードを実行するように指示する(ステップA5)。電力余剰時運転モードは、図2に示す「夏期 除湿サイクル 電力余剰時」を実現する運転モードである。一方、電力余剰でない場合(ステップA2でNo)、計算機は、電力不足であると判定し(ステップA3)、電力需給調整システム100に対して、電力不足時運転モードを実行するように指示する(ステップA6)。電力不足時運転モードは、図3に示す「夏期 除湿サイクル 電力不足時」を実現する運転モードである。各種モード(ステップA4~A6)の後、除湿された空調空気が室内に供給される(ステップA7)。図8の処理は、リアルタイムで繰り返される。
【0048】
なお、通常時運転モードでは、例えば、除加湿機器1、再生機器2、補器類(冷却装置3や加熱装置5等の調温機構等)を稼動させる。また、電力余剰時運転モードでは、例えば、除加湿機器1、再生機器2、補器類を稼動させたり、再生機器2からの調湿液を分岐して調湿液タンク7に貯めたりする。また、電力不足時運転モードでは、例えば、除加湿機器1、再生機器2、補器類を停止させたり、電力余剰時運転モードで調湿液タンク7に貯めた調湿液を用いて運転したりする。
【0049】
図9を参照して、ステップB1~B6は、図8のステップA1~A6と同じなので説明を省略する。各種モード(ステップB4~B6)の後、加湿された空調空気が室内に供給される(ステップB7)。図9の処理は、リアルタイムで繰り返される。ステップB6の電力不足時運転モードでは、ステップA6の電力不足時運転モードと比較して、必要に応じて、調湿液タンク7に貯めた調湿液を水で薄めたものを用いて運転することが追加される。
【0050】
[調湿液タンクの他の例]
調湿液タンク7を1槽の濃度成層タンクでなく、濃度別に貯める2槽のタンクとして構成することができる。図10は、調湿液タンクが2槽であるときの説明図であり、(a)が夏期における除湿サイクルの電力余剰時の場合、(b)が夏期における除湿サイクルの電力不足時の場合、(c)が冬期における加湿サイクルの電力余剰時の場合、(d)が冬期における加湿サイクルの電力不足時の場合である。調湿液タンク7Aは、濃い調湿液を貯める高濃度槽71と、薄い調湿液を貯める低濃度槽72とを備える。高濃度槽71及び低濃度槽72のサイズ、形状、位置関係などは適宜設計できる。また、高濃度槽71及び低濃度槽72の各々は、断熱されている。
【0051】
図10(a)に示すように、「夏期 除湿サイクル 電力余剰時」では、再生機器2からの濃い調湿液は、開いた開閉弁96によって分岐され、配管9を流通して調湿液タンク7の高濃度槽71に供給され、貯められる。また、調湿液タンク7の低濃度槽72に貯められた薄い調湿液は、除湿サイクルに供給される。具体的には、調湿液タンク7の低濃度槽72に貯められた薄い調湿液は、開いた開閉弁94を介して配管9を流通し、除加湿機器1からの薄い調湿液に合流する。濃い調湿液及び薄い調湿液の流路は、図2に示すものと略同等である。
また、図10(b)に示すように、「夏期 除湿サイクル 電力不足時」では、調湿液タンク7の高濃度槽71に貯められた濃い調湿液は、開いた開閉弁96等を介して配管9を流通し、除加湿機器1に供給される。また、除加湿機器1からの薄い調湿液は、開いた開閉弁93を介して配管9を流通して調湿液タンク7の低濃度槽72に供給され、貯められる。濃い調湿液及び薄い調湿液の流路は、図3に示すものと略同等である。
また、図10(c)に示すように、「冬期 加湿サイクル 電力余剰時」では、再生機器2からの薄い調湿液は、開いた開閉弁94によって分岐され、配管9を流通して調湿液タンク7の低濃度槽72に供給され、貯められる。また、調湿液タンク7の高濃度槽71に貯められた濃い調湿液は、加湿サイクルに供給される。具体的には、調湿液タンク7の高濃度槽71に貯められた濃い調湿液は、開いた開閉弁96を介して配管9を流通し、除加湿機器1からの濃い調湿液に合流する。濃い調湿液及び薄い調湿液の流路は、図5に示すものと略同等である。
また、図10(d)に示すように、「冬期 加湿サイクル 電力不足時」では、調湿液タンク7の低濃度槽72に貯められた薄い調湿液は、開いた開閉弁94等を介して配管9を流通し、除加湿機器1に供給される。また、除加湿機器1からの濃い調湿液は、開いた開閉弁96等を介して配管9を流通して調湿液タンク7の高濃度槽71に供給され、貯められる。濃い調湿液及び薄い調湿液の流路は、図3に示すものと略同等である。
【0052】
[まとめ]
本実施形態によれば、蓄電池等に余剰電力を蓄えることに代えて、濃度を調整した調湿液を調湿液タンク7に貯めることができる。電力需給状況に応じて、調湿液タンク7から調湿液を供給することで、除加湿機器1による除湿及び加湿を継続することができる。つまり、再生機器2及び調温機構(冷却装置3、加熱装置5、第1熱交換器4、第2熱交換器6)を稼働させる必要がなくなり、省エネを実現できる。調湿液の蓄積は、電力の蓄積よりも容易であるとともに、時間経過によるエネルギーロスが小さい。また、調湿液タンク7は、濃い調湿液及び薄い調湿液を貯めることができればよいため、蓄電池等を備えるための設備より規模を小さくすることができる。したがって、簡易な構成で電力需給調整を実現することができる。具体的には、1日単位の電力需給に対応可能となる。
【0053】
特に、電力余剰時では、余剰電力を用いて再生機器2及び調温機構をより稼動させることができ、安価な余剰電力を積極的に活用することができる。つまり、除加湿機器1の除湿及び加湿により生成された調湿液や、調湿液タンク7から供給された調湿液からより多くの調湿液が再生される。また、電力通常時の運転を行いつつ、再生された調湿液の一部を調湿液タンク7に貯めるため、除湿及び加湿に必要となる量の調湿液を除加湿機器1に確実に供給しつつ、調湿液のロスを防止することができる。
また、電力不足時では、調湿液タンク7から調湿液を供給することで、除加湿機器1の稼動を継続することができる。また、除加湿機器1の除湿及び加湿により生成された調湿液を調湿液タンク7に回収するため、調湿液を再生するために再生機器2及び調温機構を稼動させる必要がない。よって、調湿液の再生に必要となる電力を不要とし、電力不足時の高価な電力の使用を抑制することで、電力不足時の省エネを実現できる。具体的には、電力需給調整システム100が備えるすべての機器が稼働したときの約80%程度の電力で済み、約20%程度の省エネを実現できる。
また、「冬期 加湿サイクル 電力不足時」において、調湿液タンク7に貯められている調湿液に水を加えて薄い調湿液を供給することで、調湿液タンクに濃い調湿液しか貯められていない状況であっても、薄い調湿液を貯めることができるので、薄い調湿液を確実に供給することができる。
また、電力余剰時でも電力不足時でもないとき、調湿液タンク7を停止することで、電力通常時の省エネを実現できる。
また、調湿液タンク7を濃度成層タンクとすることで、濃い調湿液が薄い調湿液よりも密度が大きい性質を利用して、同じ槽に濃い調湿液及び薄い調湿液を併存して貯めることができ、調湿液タンク7を小型化することができる。
また、調湿液タンク7Aを、濃い調湿液及び薄い調湿液が異なる槽に貯められる2槽タンクにすることで、濃い調湿液の濃度及び薄い調湿液の濃度を確実に保持することができる。
【0054】
[変形例]
(a):本実施形態では、夏期に除湿サイクルを行い、冬期に加湿サイクルを行う場合について説明したが、夏期に加湿サイクルを行ったり、冬期に除湿サイクルを行ったりする場合も本発明を適用することが可能である。
(b):配管9の適所に配置されている弁は、仕切弁91,92や開閉弁93~96に限らず、ボール弁、ニードル弁、バタフライ弁、逆止弁、ダイヤフラム弁、三方弁等、さまざまな種類の弁を使用することができる。
(c):電力需給調整システム100が備えるポンプ8は、本実施形態のように1つでもよいが、2以上備えていてもよい。例えば、濃い調湿液を循環させるためのポンプと、薄い調湿液を循環させるためのポンプを用意するように設計することができる。
(d):本実施形態では、冷却装置3及び加熱装置5を別々の機器として電力需給調整システムに備えるようにした。しかし、例えば、ヒートポンプチラー等、冷却装置3及び加熱装置5の双方の機能を備えた1つの機器を電力需給調整システムに備えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
100 電力需給調整システム
1 除加湿機器
2 再生機器
3 冷却装置
4 第1熱交換器
5 加熱装置
6 第2熱交換器
7,7A 調湿液タンク
71 高濃度槽
72 低濃度槽
8 ポンプ
9 配管
91,92 仕切弁
93~96 開閉弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10