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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060793
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】IPMモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/276 20220101AFI20240425BHJP
   H02K 1/2791 20220101ALI20240425BHJP
【FI】
H02K1/276
H02K1/2791
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168302
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】小久江 幸二
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622CA02
5H622CA07
5H622CB03
5H622CB05
5H622PP03
(57)【要約】
【課題】ロータの強度を向上させることができるIPMモータを得る。
【解決手段】このIPMモータは、ステータ1と、ロータ2と、を備え、ロータ2は、ロータコア201と、複数の永久磁石202と、を有し、複数の永久磁石202には、周方向D3に並んで配置され、一対の磁極が径方向D2に互いに隣り合うように着磁された複数の主磁石203と、周方向D3に並んだ複数の主磁石203のそれぞれの間に1つずつ配置され、一対の磁極が周方向D3に互いに隣り合うように着磁された複数の補助磁石204と、が含まれ、ロータコア201には、複数の主磁石203が1つずつ挿入された複数の主磁石用挿入穴217が形成され、複数の主磁石用挿入穴217のそれぞれには、フラックスバリアになる空隙がロータコア201に形成されることなく、複数の主磁石203における対応する主磁石203が挿入されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ(1)と、
前記ステータ(1)に対向して設けられたロータ(2)と、
を備え、
前記ロータ(2)は、ロータコア(201)と、前記ロータコア(201)に設けられた複数の永久磁石(202)と、を有し、
前記複数の永久磁石(202)には、
前記ロータ(2)の周方向に並んで配置され、一対の磁極が前記ロータ(2)の径方向に互いに隣り合うように着磁された複数の主磁石(203)と、
前記周方向に並んだ前記複数の主磁石(203)のそれぞれの間に1つずつ配置され、一対の磁極が前記周方向に互いに隣り合うように着磁された複数の補助磁石(204)と、
が含まれており、
前記ロータコア(201)には、前記複数の主磁石(203)が1つずつ挿入された複数の主磁石用挿入穴(217)が形成されており、
前記複数の主磁石用挿入穴(217)のそれぞれには、フラックスバリアになる空隙が前記ロータコア(201)に形成されることなく、前記複数の主磁石(203)における対応する主磁石(203)が挿入されているIPMモータ。
【請求項2】
前記ロータ(2)の軸方向に見た場合に、前記複数の主磁石(203)のそれぞれの形状は、前記周方向の中央部分の位置が前記周方向の両端部分を結ぶ直線よりも前記径方向において外側にあるように湾曲した形状になっている請求項1に記載のIPMモータ。
【請求項3】
前記ロータ(2)の軸方向に見た場合に、前記複数の主磁石(203)のそれぞれの形状は、前記周方向の中央部分を通り前記径方向に延びた直線に対して垂直な方向である接線方向に沿って延びた形状になっている請求項1に記載のIPMモータ。
【請求項4】
前記複数の主磁石(203)のそれぞれは、前記複数の補助磁石(204)のうちの前記周方向に隣り合う補助磁石(204)に対向する主磁石周方向外側面(211)を有しており、
前記複数の補助磁石(204)のそれぞれは、前記複数の主磁石(203)のうちの前記周方向に隣り合う主磁石(203)に対向する補助磁石周方向外側面(212)を有しており、
互いに対向する前記主磁石周方向外側面(211)および前記補助磁石周方向外側面(212)は、互いに平行している請求項1から請求項3までの何れか一項に記載のIPMモータ。
【請求項5】
前記径方向における前記ステータ(1)とは反対側を向く前記複数の補助磁石(204)のそれぞれの面は、前記径方向における前記ステータ(1)とは反対側を向く前記複数の主磁石(203)のそれぞれの面よりも前記ステータ(1)の近くにある請求項1から請求項3までの何れか一項に記載のIPMモータ。
【請求項6】
前記ロータ(2)は、前記径方向において前記ステータ(1)の外側に配置されている請求項1から請求項3までの何れか一項に記載のIPMモータ。
【請求項7】
前記ロータ(2)は、前記径方向において前記ステータ(1)の内側に配置されている請求項1から請求項3までの何れか一項に記載のIPMモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、IPMモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステータと、ステータに対向して設けられたロータと、を備えているIPM(Interior Permanent Magnet)モータが知られている。ロータは、径方向においてステータの外側に配置されている。ロータは、ロータコアと、ロータコアに設けられた複数の永久磁石と、を有している。複数の永久磁石には、複数のV字型配置主磁石体と、複数の補助磁石と、が含まれている。複数のV字型配置主磁石体は、周方向に並んで配置されている。複数の補助磁石は、周方向に並んだ複数のV字型配置主磁石体のそれぞれの間に1つずつ配置されている。周方向に互いに隣り合う一対のV字型配置主磁石体の間に補助磁石が配置されることによって、周方向に互いに隣り合う一対のV字型配置主磁石体の間を通ってロータ内を磁束がループすることが抑制されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-41331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、V字型配置主磁石体は、一対の主磁石から構成されている。ステータコアには、一対の主磁石のそれぞれが1つずつ挿入される一対の主磁石用挿入穴が形成されている。軸方向に見た場合に、一対の主磁石のそれぞれの形状は、四角形になっている。一対の主磁石の間を通ってロータ内を磁束がループすることを抑制するために、一対の主磁石用挿入穴のそれぞれの一部には、対応する主磁石が配置されていない領域が、フラックスバリアになる空隙として含まれている。フラックスバリアになる空隙が主磁石用挿入穴に含まれることによって、ロータの強度が低下してしまうという問題点があった。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ロータの強度を向上させることができるIPMモータを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るIPMモータは、ステータと、ステータに対向して設けられたロータと、を備え、ロータは、ロータコアと、ロータコアに設けられた複数の永久磁石と、を有し、複数の永久磁石には、ロータの周方向に並んで配置され、一対の磁極がロータの径方向に互いに隣り合うように着磁された複数の主磁石と、周方向に並んだ複数の主磁石のそれぞれの間に1つずつ配置され、一対の磁極が周方向に互いに隣り合うように着磁された複数の補助磁石と、が含まれており、ロータコアには、複数の主磁石が1つずつ挿入された複数の主磁石用挿入穴が形成されており、複数の主磁石用挿入穴のそれぞれには、フラックスバリアになる空隙がロータコアに形成されることなく、複数の主磁石における対応する主磁石が挿入されている。
また、この発明に係るIPMモータでは、ロータの軸方向に見た場合に、複数の主磁石のそれぞれの形状は、周方向の中央部分の位置が周方向の両端部分を結ぶ直線よりも径方向において外側にあるように湾曲した形状である。
また、この発明に係るIPMモータでは、ロータの軸方向に見た場合に、複数の主磁石のそれぞれの形状は、周方向の中央部分を通り径方向に延びた直線に対して垂直な方向である接線方向に沿って延びた形状である。
また、この発明に係るIPMモータでは、複数の主磁石のそれぞれは、複数の補助磁石のうちの周方向に隣り合う補助磁石に対向する主磁石周方向外側面を有しており、複数の補助磁石のそれぞれは、複数の主磁石のうちの周方向に隣り合う主磁石に対向する補助磁石周方向外側面を有しており、互いに対向する主磁石周方向外側面および補助磁石周方向外側面は、互いに平行している。
また、この発明に係るIPMモータでは、径方向におけるステータとは反対側を向く複数の補助磁石のそれぞれの面は、径方向におけるステータとは反対側を向く複数の主磁石のそれぞれの面よりもステータの近くにある。
また、この発明に係るIPMモータでは、ロータは、径方向においてステータの外側に配置されている。
また、この発明に係るIPMモータでは、ロータは、径方向においてステータの内側に配置されている。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係るIPMモータによれば、ロータの強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係るIPMモータを示す平面図である。
図2図1のIPMモータの要部を示す拡大図である。
図3】実施の形態2に係るIPMモータの要部を示す平面図である。
図4】実施の形態3に係るIPMモータを示す平面図である。
図5図4のIPMモータの要部を示す拡大図である。
図6】実施の形態4に係るIPMモータの要部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るIPMモータを示す平面図である。図2は、図1のIPMモータの要部を示す拡大図である。実施の形態1に係るIPMモータは、ハルバッハ配列のモータになっている。また、実施の形態1に係るIPMモータは、アウターロータ型モータになっている。
【0010】
実施の形態1に係るIPMモータは、ステータ1と、ロータ2と、を備えている。ステータ1は、ステータコア101と、複数のコイル102と、を有している。
【0011】
ステータコア101は、円環形状のバックヨーク103と、バックヨーク103に一体に形成された複数のティース104と、を有している。複数のティース104は、バックヨーク103に沿って等間隔に並べて配置されている。複数のティース104のそれぞれは、バックヨーク103からロータ2に向かって突出している。
【0012】
複数のコイル102は、複数のティース104のそれぞれに1つずつ巻かれている。複数のコイル102のそれぞれには、図示しない電源装置から電流が供給される。電源装置から複数のコイル102のそれぞれに電流が供給されることによって、複数のコイル102のそれぞれには、磁界が発生する。
【0013】
ロータ2は、図示しない回転軸を中心に回転する。ロータ2の軸線に沿った方向を軸方向D1とする。ロータ2の軸線に直交する平面においてロータ2の軸線を中心とする円の半径に沿った方向を径方向D2とする。ロータ2の軸線に直交する平面においてロータ2の軸線を中心とする円の円周に沿った方向を周方向D3とする。
【0014】
ロータ2は、径方向D2においてステータ1に対向して設けられている。ロータ2は、径方向D2においてステータ1の外側に配置されている。ロータ2は、ロータコア201と、ロータコア201に設けられた複数の永久磁石202と、を有している。
【0015】
複数の永久磁石202には、複数の主磁石203と、複数の補助磁石204と、が含まれている。主磁石203の数と補助磁石204の数とは、互いに同一になっている。
【0016】
複数の主磁石203は、周方向D3に1つずつ並んで配置されている。複数の主磁石203のそれぞれは、一対の磁極が径方向D2に互いに隣り合うように着磁されている。具体的には、複数の主磁石203のそれぞれは、周方向D3の全域に渡って径方向D2に着磁されている。
【0017】
軸方向D1に見た場合に、複数の主磁石203のそれぞれの形状は、周方向D3の中央部分の位置が周方向D3の両端部分を結ぶ直線よりも径方向D2において外側にあるように湾曲した形状になっている。具体的には、複数の主磁石203のそれぞれの形状は、周方向D3に沿った形状になっている。
【0018】
複数の主磁石203のそれぞれは、円環形状に形成された永久磁石を周方向D3に複数に分割することによって製造されている。したがって、複数の主磁石203のそれぞれは、容易に製造することが可能である。
【0019】
複数の主磁石203には、複数の第1主磁石205と、複数の第2主磁石206と、が含まれている。第1主磁石205の数と第2主磁石206の数とは、互いに同一になっている。複数の第1主磁石205および複数の第2主磁石206は、周方向D3に1つずつ交互に並んで配置されている。
【0020】
複数の第1主磁石205のそれぞれは、ステータ1を向く面である径方向第1面207と、ステータ1とは反対側を向く面である径方向第2面208と、を有している。第1主磁石205の径方向第1面207の磁極がN極になっており、第1主磁石205の径方向第2面208の磁極がS極になっている。径方向第1面207の面積は、径方向第2面208の面積よりも小さくなっている。
【0021】
複数の第2主磁石206のそれぞれは、ステータ1を向く面である径方向第1面209と、ステータ1とは反対側を向く面である径方向第2面210と、を有している。第2主磁石206の径方向第1面209の磁極がS極になっており、第2主磁石206の径方向第2面210の磁極がN極になっている。径方向第1面209の面積は、径方向第2面210の面積よりも小さくなっている。
【0022】
複数の主磁石203のそれぞれは、複数の補助磁石204のうちの周方向D3の両方向に隣り合う一対の補助磁石204のそれぞれに1つずつ対向する一対の主磁石周方向外側面211を有している。
【0023】
複数の補助磁石204は、周方向D3に並んだ複数の主磁石203のそれぞれの間に1つずつ配置されている。複数の補助磁石204のそれぞれは、一対の磁極が周方向D3に互いに隣り合うように着磁されている。
【0024】
軸方向D1に見た場合に、複数の補助磁石204のそれぞれの形状は、四角形になっている。したがって、複数の補助磁石204のそれぞれは、容易に製造することが可能である。
【0025】
複数の補助磁石204のそれぞれは、複数の主磁石203のうちの周方向D3の両方向に隣り合う一対の主磁石203のそれぞれに1つずつ対向する一対の補助磁石周方向外側面212を有している。一対の補助磁石周方向外側面212のうち、周方向D3に隣り合う第1主磁石205を向く面を周方向第1面213とし、周方向D3に隣り合う第2主磁石206を向く面を周方向第2面214とする。補助磁石204の周方向第1面213の磁極がN極になっており、補助磁石204の周方向第2面214の磁極がS極になっている。
【0026】
互いに対向する主磁石周方向外側面211および補助磁石周方向外側面212は、互いに平行している。
【0027】
複数の補助磁石204のそれぞれは、ステータ1を向く面である径方向第1面215と、ステータ1とは反対側を向く面である径方向第2面216と、を有している。
【0028】
複数の補助磁石204のそれぞれの径方向第2面216は、複数の第2主磁石206のそれぞれの径方向第2面210および複数の第1主磁石205のそれぞれの径方向第2面208よりもステータ1の近くにある。
【0029】
ロータコア201には、複数の主磁石203が1つずつ挿入された複数の主磁石用挿入穴217と、複数の補助磁石204が1つずつ挿入された複数の補助磁石用挿入穴218と、が形成されている。
【0030】
複数の主磁石用挿入穴217のそれぞれには、フラックスバリアになる空隙がロータコア201に形成されることなく、複数の主磁石203における対応する主磁石203が挿入されている。
【0031】
なお、主磁石用挿入穴217に主磁石203がスムーズに挿入可能になるために、複数の主磁石用挿入穴217のそれぞれの外形は、対応する主磁石203の外形よりも僅かに大きく形成される場合がある。この場合に、複数の主磁石用挿入穴217には、対応する主磁石203が挿入されていない空隙が形成される。しかしながら、主磁石203がスムーズに挿入可能になるために主磁石用挿入穴217に形成された空隙は、フラックスバリアになる空隙とは異なる。主磁石203がスムーズに挿入可能になるために主磁石用挿入穴217に形成された空隙は、ロータ2の強度に影響しない。
【0032】
複数の補助磁石用挿入穴218のそれぞれには、フラックスバリアになる空隙がロータコア201に形成されることなく、複数の補助磁石204における対応する補助磁石204が挿入されている。
【0033】
なお、補助磁石用挿入穴218に補助磁石204がスムーズに挿入可能になるために、複数の補助磁石用挿入穴218のそれぞれの外形は、対応する補助磁石204の外形よりも僅かに大きく形成される場合がある。この場合に、複数の補助磁石用挿入穴218には、対応する補助磁石204が挿入されていない空隙が形成される。しかしながら、補助磁石204がスムーズに挿入可能になるために補助磁石用挿入穴218に形成された空隙は、フラックスバリアになる空隙とは異なる。補助磁石204がスムーズに挿入可能になるために補助磁石用挿入穴218に形成された空隙は、ロータ2の強度に影響しない。
【0034】
次に、実施の形態1に係るIPMモータにおける磁束の流れについて説明する。第1主磁石205からステータ1に向かって磁束が流れ、ステータ1から第2主磁石206に向かって磁束が流れ、第2主磁石206から周方向D3に隣り合う第1主磁石205に向かって磁束が流れる。
【0035】
周方向D3に互いに隣り合う第1主磁石205と第2主磁石206との間に、N極が第1主磁石205を向き、S極が第2主磁石206を向く補助磁石204が配置されている。これにより、第1主磁石205のN極から第1主磁石205の主磁石周方向外側面211の近くを通って第1主磁石205のS極に磁束が流れることが抑制されている。また、第2主磁石206のN極から主磁石周方向外側面211の近くを通って第2主磁石206のS極に磁束が流れることが抑制されている。言い換えれば、主磁石203から出た磁束がロータ2内をループすることが抑制されている。したがって、補助磁石204は、補助磁石204に対して周方向D3に隣り合う主磁石203に対するフラックスバリアの機能を有している。
【0036】
また、周方向D3に互いに隣り合う第1主磁石205と第2主磁石206との間に、N極が第1主磁石205を向き、S極が第2主磁石206を向く補助磁石204が配置されている。これにより、補助磁石204のN極から補助磁石204の径方向第1面215の近くを通って補助磁石204のS極に磁束が流れることが抑制されている。また、補助磁石204のN極から補助磁石204の径方向第2面216の近くを通って補助磁石204のS極に磁束が流れることが抑制されている。言い換えれば、補助磁石204から出た磁束がロータ2内をループすることが抑制されている。したがって、主磁石203は、主磁石203に対して周方向D3に隣り合う補助磁石204に対するフラックスバリアの機能を有している。
【0037】
以上説明したように、実施の形態1に係るIPMモータは、ステータ1と、ステータ1に対向して設けられたロータ2と、を備えている。ロータ2は、ロータコア201と、ロータコア201に設けられた複数の永久磁石202と、を有している。複数の永久磁石202には、複数の主磁石203と、複数の補助磁石204と、が含まれている。複数の主磁石203は、周方向D3に並んで配置されており、一対の磁極が径方向D2に互いに隣り合うように着磁されている。複数の補助磁石204は、周方向D3に並んだ複数の主磁石203のそれぞれの間に1つずつ配置されており、一対の磁極が周方向D3に互いに隣り合うように着磁されている。ロータコア201には、複数の主磁石203が1つずつ挿入された複数の主磁石用挿入穴217が形成されている。複数の主磁石用挿入穴217のそれぞれには、フラックスバリアになる空隙がロータコア201に形成されることなく、複数の主磁石203における対応する主磁石203が挿入されている。この構成によれば、主磁石用挿入穴217には、フラックスバリアになる空隙が含まれていない。これにより、ロータ2の強度を向上させることができる。
【0038】
また、実施の形態1に係るIPMモータでは、軸方向D1に見た場合に、複数の主磁石203のそれぞれの形状は、周方向D3の中央部分の位置が周方向D3の両端部分を結ぶ直線よりも径方向D2において外側にあるように湾曲した形状である。この構成によれば、複数の主磁石203のそれぞれを容易に製造することができる。
【0039】
また、実施の形態1に係るIPMモータでは、複数の主磁石203のそれぞれは、複数の補助磁石204のうちの周方向D3に隣り合う補助磁石204に対向する主磁石周方向外側面211を有している。複数の補助磁石204のそれぞれは、複数の主磁石203のうちの周方向D3に隣り合う主磁石203に対向する補助磁石周方向外側面212を有している。互いに対向する主磁石周方向外側面211および補助磁石周方向外側面212は、互いに平行している。この構成によれば、互いに対向する主磁石周方向外側面211と補助磁石周方向外側面212とによって挟まれる領域の面積を小さくすることができる。これにより、主磁石203から出た磁束が、互いに対向する主磁石周方向外側面211と補助磁石周方向外側面212とによって挟まれる領域を通って、ロータ2内をループすることをより効果的に抑制することができる。
【0040】
また、実施の形態1に係るIPMモータでは、複数の補助磁石204のそれぞれの径方向第2面216は、複数の第1主磁石205のそれぞれの径方向第2面208および複数の第2主磁石206のそれぞれの径方向第2面210よりもステータ1の近くにある。この構成によれば、ロータコア201における径方向D2において補助磁石204よりもステータ1から離れた領域をより大きくすることができる。これにより、第2主磁石206のN極から出た磁束を、ロータコア201における径方向D2において補助磁石204よりもステータ1から離れた領域を通って第1主磁石205のS極に効果的に流すことができる。
【0041】
また、実施の形態1に係るIPMモータでは、ロータ2は、径方向D2においてステータ1の外側に配置されている。この構成によれば、インナーロータ型モータと比較して、ギャップ半径を径方向D2の外側に配置することができる。これにより、IPMモータの出力を大きくすることができる。
【0042】
なお、実施の形態1に係るIPMモータでは、主磁石203の形状が周方向D3に沿った形状になっている構成について説明した。しかしながら、主磁石203の形状は、周方向D3に沿った形状に限らず、主磁石203に対して周方向D3に隣り合う補助磁石204に対するフラックスバリアの機能を有するような形状であればよい。
【0043】
実施の形態2.
図3は、実施の形態2に係るIPMモータの要部を示す平面図である。実施の形態2に係るIPMモータでは、軸方向D1に見た場合に、複数の主磁石203のそれぞれの形状は、周方向D3の中央部分を通り径方向D2に延びた直線に対して垂直な方向である接線方向に沿って延びた形状になっている。
【0044】
複数の主磁石203のそれぞれは、一対の磁極が径方向D2に互いに隣り合うように着磁されている。具体的には、複数の主磁石203のそれぞれは、周方向D3の中央部分が径方向D2に着磁されている。また、複数の主磁石203のそれぞれは、周方向D3の中央部分を除く部分の磁束が周方向D3の中央部分の磁束と平行するように着磁されている。言い換えれば、複数の主磁石203のそれぞれは、周方向D3の全域に渡って互いに平行に着磁されている。
【0045】
軸方向D1に見た場合に、複数の主磁石203のそれぞれの形状は、台形形状になっている。軸方向D1に見た場合に、第1主磁石205の径方向第1面207および第2主磁石206の径方向第1面209のそれぞれは、台形形状における互いに平行する一対の辺のうちの短辺に対応する。軸方向D1に見た場合に、第1主磁石205の径方向第2面208および第2主磁石206の径方向第2面210のそれぞれは、台形形状における互いに平行する一対の辺のうちの長辺に対応する。
【0046】
複数の主磁石203のそれぞれは、棒形状に形成された永久磁石を長手方向に複数に分割することによって製造されている。したがって、複数の主磁石203のそれぞれは、容易に製造することが可能である。
【0047】
実施の形態2に係るIPMモータにおけるその他の構成は、実施の形態1に係るIPMモータの構成と同様である。
【0048】
以上説明したように、実施の形態2に係るIPMモータでは、軸方向D1に見た場合に、複数の主磁石203のそれぞれの形状は、周方向D3の中央部分を通り径方向D2に延びた直線に対して垂直な方向である接線方向に沿って延びた形状である。この構成によれば、複数の主磁石203のそれぞれを容易に製造することができる。
【0049】
なお、実施の形態2に係るIPMモータでは、軸方向D1に見た場合に主磁石203の形状が台形形状になっている構成について説明した。しかしながら、主磁石203の形状は、台形形状に限らず、主磁石203に対して周方向D3に隣り合う補助磁石204に対するフラックスバリアの機能を有するような形状であればよい。
【0050】
実施の形態3.
図4は、実施の形態3に係るIPMモータを示す平面図である。図5は、図4のIPMモータの要部を示す拡大図である。実施の形態3に係るIPMモータは、インナーロータ型モータになっている。
【0051】
径方向第1面207の面積は、径方向第2面208の面積よりも大きくなっている。径方向第1面209の面積は、径方向第2面210の面積よりも大きくなっている。
【0052】
実施の形態3に係るIPMモータでは、ロータ2は、径方向D2においてステータ1の内側に配置されている。実施の形態3に係るIPMモータにおけるその他の構成は、実施の形態1に係るIPMモータと同様である。
【0053】
以上説明したように、実施の形態3に係るIPMモータでは、ロータ2は、径方向D2においてステータ1の内側に配置されている。この構成によれば、アウターロータ型モータと比較して、ステータ1のコイル102を径方向D2においてロータ2の外側に配置することができる。これにより、コイル102を容易に冷却することができる。また、アウターロータ型モータと比較して、周方向D3に互いに隣り合う一対のティース104の先端部の間の距離を小さくすることができる。これにより、ロータ2に発生した磁束をステータ1に対してより多く鎖交させることができる。
【0054】
なお、実施の形態3に係るIPMモータでは、主磁石203の形状が周方向D3に沿った形状になっている構成について説明した。しかしながら、主磁石203の形状は、周方向D3に沿った形状に限らず、主磁石203に対して周方向D3に隣り合う補助磁石204に対するフラックスバリアの機能を有するような形状であればよい。
【0055】
実施の形態4.
図6は、実施の形態4に係るIPMモータの要部を示す平面図である。実施の形態4に係るIPMモータは、インナーロータ型モータになっている。
【0056】
実施の形態4に係るIPMモータでは、軸方向D1に見た場合に、複数の主磁石203のそれぞれの形状は、周方向D3の中央部分を通り径方向D2に延びた直線に対して垂直な方向である接線方向に沿って延びた形状になっている。
【0057】
複数の主磁石203のそれぞれは、一対の磁極が径方向D2に互いに隣り合うように着磁されている。具体的には、複数の主磁石203のそれぞれは、周方向D3の中央部分が径方向D2に着磁されている。また、複数の主磁石203のそれぞれは、周方向D3の中央部分を除く部分の磁束が周方向D3の中央部分の磁束と平行するように着磁されている。言い換えれば、複数の主磁石203のそれぞれは、周方向D3の全域に渡って互いに平行に着磁されている。
【0058】
軸方向D1に見た場合に、複数の主磁石203のそれぞれの形状は、台形形状になっている。軸方向D1に見た場合に、第1主磁石205の径方向第1面207および第2主磁石206の径方向第1面209のそれぞれは、台形形状における互いに平行する一対の辺のうちの長辺に対応する。軸方向D1に見た場合に、第1主磁石205の径方向第2面208および第2主磁石206の径方向第2面210のそれぞれは、台形形状における互いに平行する一対の辺のうちの短辺に対応する。
【0059】
複数の主磁石203のそれぞれは、棒形状に形成された永久磁石を長手方向に複数に分割することによって製造されている。したがって、複数の主磁石203のそれぞれは、容易に製造することが可能である。
【0060】
径方向第1面207の面積は、径方向第2面208の面積よりも大きくなっている。径方向第1面209の面積は、径方向第2面210の面積よりも大きくなっている。
【0061】
実施の形態4に係るIPMモータでは、ロータ2は、径方向D2においてステータ1の内側に配置されている。実施の形態4に係るIPMモータにおけるその他の構成は、実施の形態1に係るIPMモータと同様である。
【0062】
以上説明したように、実施の形態4に係るIPMモータでは、軸方向D1に見た場合に、複数の主磁石203のそれぞれの形状は、周方向D3の中央部分を通り径方向D2に延びた直線に対して垂直な方向である接線方向に沿って延びた形状である。この構成によれば、実施の形態2に係るIPMモータと同様に、複数の主磁石203のそれぞれを容易に製造することができる。
【0063】
また、実施の形態4に係るIPMモータでは、ロータ2は、径方向D2においてステータ1の内側に配置されている。この構成によれば、実施の形態3に係るIPMモータと同様に、アウターロータ型モータと比較して、ステータ1のコイル102を径方向D2においてロータ2の外側に配置することができる。これにより、コイル102を容易に冷却することができる。また、実施の形態3に係るIPMモータと同様に、アウターロータ型モータと比較して、周方向D3に互いに隣り合う一対のティース104の先端部の間の距離を小さくすることができる。これにより、ロータ2に発生した磁束をステータ1に対してより多く鎖交させることができる。
【0064】
なお、実施の形態4に係るIPMモータでは、軸方向D1に見た場合に主磁石203の形状が台形形状になっている構成について説明した。しかしながら、主磁石203の形状は、台形形状に限らず、主磁石203に対して周方向D3に隣り合う補助磁石204に対するフラックスバリアの機能を有するような形状であればよい。
【0065】
また、各実施の形態に係るIPMモータでは、1つの永久磁石片から構成されている主磁石203について説明した。しかしながら、複数の永久磁石片から構成されている主磁石203であってもよい。この場合には、1つの主磁石203を構成する複数の永久磁石片の全てが互いに同一方向に着磁されていなくてもよい。複数の永久磁石片から構成された1つの主磁石203において、全体として一対の磁極が径方向D2に互いに隣り合うように着磁されていればよい。主磁石203が複数の永久磁石片から構成されている場合には、IPMモータを容易に大型化することができる。
【0066】
また、各実施の形態に係るIPMモータでは、1つの永久磁石片から構成されている補助磁石204について説明した。しかしながら、複数の永久磁石片から構成されている補助磁石204であってもよい。この場合には、1つの補助磁石204を構成する複数の永久磁石片の全てが互いに同一方向に着磁されていなくてもよい。複数の永久磁石片から構成された1つの補助磁石204において、全体として一対の磁極が周方向D3に互いに隣り合うように着磁されていればよい。補助磁石204が複数の永久磁石片から構成されている場合には、IPMモータを容易に大型化することができる。
【0067】
以上、好ましい各実施の形態に係るIPMモータについて説明したが、上述した各実施の形態に係るIPMモータに制限されることはない。特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した各実施の形態に係るIPMモータに種々の変形および変換を加えることができる。
【符号の説明】
【0068】
1 ステータ、2 ロータ、101 ステータコア、102 コイル、103 バックヨーク、104 ティース、201 ロータコア、202 永久磁石、203 主磁石、204 補助磁石、205 第1主磁石、206 第2主磁石、207 径方向第1面、208 径方向第2面、209 径方向第1面、210 径方向第2面、211 主磁石周方向外側面、212 補助磁石周方向外側面、213 周方向第1面、214 周方向第2面、215 径方向第1面、216 径方向第2面、217 主磁石用挿入穴、218 補助磁石用挿入穴。
図1
図2
図3
図4
図5
図6