(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060812
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】液封入式防振装置
(51)【国際特許分類】
F16F 13/10 20060101AFI20240425BHJP
【FI】
F16F13/10 J
F16F13/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168332
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】増田 辰典
【テーマコード(参考)】
3J047
【Fターム(参考)】
3J047AA03
3J047CA04
3J047CB06
3J047DA01
3J047FA02
(57)【要約】
【課題】可動板と格子との接触時の異音を抑制できる液封入式防振装置を提供すること。
【解決手段】可動板40が、第1筒壁23a及び第2筒壁26aを貫通する連結部36でバルブ30と連結される。そのため、外側空間29bの内部において、可動板40の周方向の回転や径方向の移動が規制される。これにより、可動板40から突出して互いに周方向に離隔した複数の第1突起45や第2突起46が、可動板40の回転や径方向の移動に伴って第1格子23bや第2格子26bに対しずれ難くなる。第1格子23bや第2格子26bに接触する突起を環状にしなくて良いため、可動板40を軽くできる。その結果、第1格子23bや第2格子26bと可動板40との接触による打音の発生エネルギーを小さくでき、その打音に基づく異音を抑制できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材および筒状の第2部材と、
前記第1部材と前記第2部材とを連結する弾性体製の防振基体と、
前記第2部材に取り付けられて前記防振基体との間に液体が封入された液室を形成する弾性体製のダイヤフラムと、
前記液室を第1液室と第2液室とに仕切る仕切体と、
前記第1液室と前記第2液室とを連通するオリフィスと、を備え、
前記仕切体は、前記第1液室に面する第1仕切板と、
前記第2液室に面する第2仕切板と、
前記第1仕切板および前記第2仕切板の間を内側空間と環状の外側空間とに径方向に区画する筒壁と、
前記内側空間に収容されて前記筒壁の軸方向に変位可能な弾性体製のバルブと、
前記外側空間に収容されて前記軸方向に変位可能な弾性体製の環状の可動板と、
前記バルブと前記可動板とを連結して前記筒壁を貫通する連結部と、を備え、
前記バルブは、前記第1仕切板および前記第2仕切板へ向かってそれぞれ突出し、無荷重状態で前記第1仕切板および前記第2仕切板にそれぞれ接触する筒弁部を備え、
前記第1仕切板は、前記筒弁部よりも前記径方向の外側および前記筒壁よりも前記径方向の内側で前記軸方向に貫通する第1バルブ孔と、
前記筒壁よりも前記径方向の外側で前記軸方向に貫通して前記筒壁の周方向に並んだ複数の第1貫通孔と、
複数の前記第1貫通孔の間により形成される複数の第1格子と、を備え、
前記第2仕切板は、前記筒弁部よりも前記径方向の内側で前記軸方向に貫通する第2バルブ孔と、
前記筒壁よりも前記径方向の外側で前記軸方向に貫通して前記周方向に並んだ複数の第2貫通孔と、
複数の前記第2貫通孔の間により形成される複数の第2格子と、を備え、
前記可動板は、複数の前記第1格子および複数の前記第2格子の少なくとも一方へ向かって突出して互いに前記周方向に離隔した複数の突起を備えていることを特徴とする液封入式防振装置。
【請求項2】
複数の前記突起は、複数の前記第1格子に向かって突出する複数の第1突起と、
複数の前記第2格子に向かって突出する複数の第2突起と、を備えていることを特徴とする請求項1記載の液封入式防振装置。
【請求項3】
前記筒壁は、前記第1仕切板から前記軸方向に突出した第1筒壁と、前記第2仕切板から前記軸方向に突出した第2筒壁との先端同士を接合して形成され、
前記第1筒壁および前記第2筒壁の少なくとも一方の先端には、前記連結部が嵌まる溝が前記径方向に貫通形成され、
前記溝に嵌まった前記連結部は、前記第1筒壁と前記第2筒壁との間で挟まれて前記軸方向に圧縮されることを特徴とする請求項1又は2に記載の液封入式防振装置。
【請求項4】
前記溝の前記周方向の幅は、前記連結部の前記周方向の自由長よりも小さく、
前記第1筒壁と前記第2筒壁との間で前記軸方向に圧縮された前記連結部が、前記溝の前記周方向の両側の壁面にそれぞれ密着することを特徴とする請求項3記載の液封入式防振装置。
【請求項5】
前記連結部は、前記バルブから前記径方向のうち互いに交差する2方向以上に延びて複数設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の液封入式防振装置。
【請求項6】
前記筒壁を貫通した前記連結部は、前記周方向の寸法よりも前記軸方向の寸法が小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の液封入式防振装置。
【請求項7】
前記連結部には、前記筒壁を貫通する部位に対し前記軸方向および前記周方向の寸法を大きくしたブロックが、前記バルブと前記筒壁との間に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液封入式防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液封入式防振装置に関し、特に可動板と格子との接触時の異音を抑制できる液封入式防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジン等の振動源を車体(支持側)に支持する防振装置として、例えば特許文献1に開示される液封入式防振装置が知られている。特許文献1に開示される液封入式防振装置は、内部に形成された液室が仕切体により第1液室と第2液室とに仕切られている。仕切体は、第1液室に面する第1仕切板と、第2液室に面する第2仕切板と、第1仕切板と第2仕切板との間に配置されて円板状の弾性体から構成される可動板と、を備えている。
【0003】
この第1仕切板および第2仕切板には、板厚方向に貫通する複数の貫通孔が周方向に並んで形成され、複数の貫通孔の間により格子が形成される。第1液室および第2液室の液圧が貫通孔を介して可動板に付与され、可動板が変形または変位することにより、液封入式防振装置に入力された振動エネルギーが消費される。更に、この可動板の変形または変位が、可動板から突出した突起を第1仕切板や第2仕切板の格子に当てることで規制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、第1仕切板および第2仕切板への可動板の組付時や使用中に、円板状の可動板が周方向に回転する可能性があるので、格子に当てるための突起を円環状に形成する必要がある。このように、格子に当たらず貫通孔に相対する部分にも突起が設けられるため、可動板の重量が増加する。その結果、可動板と格子との接触による打音を発生させるためのエネルギーが大きくなり、異音性能が悪化するおそれがある。
【0006】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、可動板と格子との接触時の異音を抑制できる液封入式防振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために本発明の液封入式防振装置は、第1部材および筒状の第2部材と、前記第1部材と前記第2部材とを連結する弾性体製の防振基体と、前記第2部材に取り付けられて前記防振基体との間に液体が封入された液室を形成する弾性体製のダイヤフラムと、前記液室を第1液室と第2液室とに仕切る仕切体と、前記第1液室と前記第2液室とを連通するオリフィスと、を備え、前記仕切体は、前記第1液室に面する第1仕切板と、前記第2液室に面する第2仕切板と、前記第1仕切板および前記第2仕切板の間を内側空間と環状の外側空間とに径方向に区画する筒壁と、前記内側空間に収容されて前記筒壁の軸方向に変位可能な弾性体製のバルブと、前記外側空間に収容されて前記軸方向に変位可能な弾性体製の環状の可動板と、前記バルブと前記可動板とを連結して前記筒壁を貫通する連結部と、を備え、前記バルブは、前記第1仕切板および前記第2仕切板へ向かってそれぞれ突出し、無荷重状態で前記第1仕切板および前記第2仕切板にそれぞれ接触する筒弁部を備え、前記第1仕切板は、前記筒弁部よりも前記径方向の外側および前記筒壁よりも前記径方向の内側で前記軸方向に貫通する第1バルブ孔と、前記筒壁よりも前記径方向の外側で前記軸方向に貫通して前記筒壁の周方向に並んだ複数の第1貫通孔と、複数の前記第1貫通孔の間により形成される複数の第1格子と、を備え、前記第2仕切板は、前記筒弁部よりも前記径方向の内側で前記軸方向に貫通する第2バルブ孔と、前記筒壁よりも前記径方向の外側で前記軸方向に貫通して前記周方向に並んだ複数の第2貫通孔と、複数の前記第2貫通孔の間により形成される複数の第2格子と、を備え、前記可動板は、複数の前記第1格子および複数の前記第2格子の少なくとも一方へ向かって突出して互いに前記周方向に離隔した複数の突起を備えている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の液封入式防振装置によれば、第1仕切板と第2仕切板との間であって筒壁で区画された内側空間には、バルブ、第1バルブ孔および第2バルブ孔が設けられ、いわゆるキャビテーションバルブとして機能する。その機能は具体的に、防振基体の変形に伴って第2液室に対し第1液室が過度に負圧となった場合、バルブが第1液室側へ変位してバルブの筒弁部が第2仕切板から離れる。これにより、第2液室から第2バルブ孔、内側空間および第1バルブ孔を通って第1液室へ液体が流入し、第1液室の過度な負圧を解消でき、その負圧に伴うキャビテーションを抑制できる。
【0009】
一方、筒壁で区画された環状の外側空間には、環状の可動板が収容される。この可動板が、筒壁を貫通する連結部でバルブと連結される。そのため、外側空間の内部において、可動板の周方向の回転や径方向の移動が規制される。これにより、可動板から複数の第1格子および複数の第2格子の少なくとも一方(以下「複数の対象格子」と称す)へ向かって突出して互いに周方向に離隔した複数の突起が、可動板の回転や径方向の移動に伴って複数の対象格子に対しずれ難くなる。そのため、複数の対象格子へ可動板が変形または変位するとき、可動板から突出する突起を環状にしなくても、複数の突起を複数の対象格子に接触させて可動板の変形または変位を規制できる。よって、この規制のために可動板に設けられる突起が、周方向に連続した環状である場合と比べて、周方向に離隔した複数にされることで可動板を軽くできる。その結果、複数の対象格子と可動板との接触による打音の発生エネルギーを小さくでき、その打音に基づく異音を抑制できる。
【0010】
請求項2記載の液封入式防振装置によれば、請求項1記載の液封入式防振装置が奏する効果に加え、次の効果を奏する。複数の突起は、複数の第1格子に向かって突出する複数の第1突起と、複数の第2格子に向かって突出する複数の第2突起と、を備えている。即ち、複数の対象格子が、複数の第1格子および複数の第2格子の両方となる。よって、複数の第1格子および複数の第2格子それぞれと可動板との接触による打音の発生エネルギーをいずれも小さくでき、その打音に基づく異音を抑制できる。
【0011】
請求項3記載の液封入式防振装置によれば、請求項1又は2に記載の液封入式防振装置が奏する効果に加え、次の効果を奏する。筒壁は、第1仕切板から軸方向に突出した第1筒壁と、第2仕切板から軸方向に突出した第2筒壁との先端同士を接合して形成される。この第1筒壁および第2筒壁の少なくとも一方の先端には溝が径方向に貫通形成される。溝に嵌まった連結部は、第1筒壁と第2筒壁との間で挟まれて軸方向に圧縮される。これにより、連結部に連結されたバルブ及び可動板を、第1仕切板および第2仕切板に対して径方向にずれ難くできる。よって、複数の対象格子と複数の突起とがずれることを抑制できる。
【0012】
請求項4記載の液封入式防振装置によれば、請求項3記載の液封入式防振装置が奏する効果に加え、次の効果を奏する。溝の周方向の幅は、連結部の周方向の自由長よりも小さいので、溝に連結部を挿入し易くできる。更に、第1筒壁と第2筒壁との間で軸方向に圧縮された連結部が、溝の周方向の両側の壁面にそれぞれ密着する。これにより、溝と連結部との隙間を介して内側空間と外側空間との間で液体をリークさせ難くできる。
【0013】
請求項5記載の液封入式防振装置によれば、請求項1又は2に記載の液封入式防振装置が奏する効果に加え、次の効果を奏する。連結部は、バルブから径方向のうち互いに交差する2方向以上に延びて複数設けられる。これにより、連結部に連結されたバルブ及び可動板を、第1仕切板および第2仕切板に対して径方向にずれ難くできる。よって、複数の対象格子と複数の突起とのずれを抑制できる。
【0014】
請求項6記載の液封入式防振装置によれば、請求項1又は2に記載の液封入式防振装置が奏する効果に加え、次の効果を奏する。筒壁を貫通した連結部は、周方向の寸法よりも軸方向の寸法が小さい。これにより、可動板の軸方向の変形または変位を連結部で阻害し難くできる。
【0015】
請求項7記載の液封入式防振装置によれば、請求項1又は2に記載の液封入式防振装置が奏する効果に加え、次の効果を奏する。連結部には、筒壁を貫通する部位に対し軸方向および周方向の寸法を大きくしたブロックが、バルブと筒壁との間に形成されている。このブロックによって、バルブ及び可動板を第1仕切板および第2仕切板に対して径方向にずれ難くできる。よって、複数の対象格子と複数の突起とのずれを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態における液封入式防振装置の断面図である。
【
図4】
図2のIV-IV線における仕切体の断面図である。
【
図5】
図2のV-V線における仕切体の断面図である。
【
図6】第2実施形態における仕切体の断面図である。
【
図7】第3実施形態における第1仕切板を外した仕切体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は、第1実施形態における液封入式防振装置10の断面図である。なお、
図1には、液封入式防振装置10に振動(荷重)が入力されていない無荷重状態を示している。特に指定が無い限り、液封入式防振装置10の各部について無荷重状態を説明する。また、以下の説明では、
図1の紙面上側を液封入式防振装置10の上側などとして説明するが、この液封入式防振装置10の上下と、液封入式防振装置10が取り付けられる車両の上下とは必ずしも一致しない。
【0018】
液封入式防振装置10は、自動車のエンジンを弾性支持するエンジンマウントである。液封入式防振装置10は、振動源であるエンジン側に取り付けられる第1部材11と、支持側の車体に取り付けられる筒状の第2部材12と、第1部材11と第2部材12とを連結する弾性体から構成される防振基体13と、を主に備える。なお、
図1の液封入式防振装置10の断面図は、筒状の第2部材12の軸心Cを含む軸方向断面図である。軸心C方向(軸方向)は、液封入式防振装置10の上下方向である。
【0019】
第1部材11は、第2部材12の上方に位置するように軸心C上に配置されたボス金具であり、鉄鋼やアルミニウム合金などの金属により形成される。第1部材11の上端面にはボルト孔が形成されている。第1部材11は、ボルト孔に取り付けられるボルトを介してエンジン側に取り付けられる。
【0020】
第2部材12は、軸心Cを中心とした円筒状の部材であり、主に鉄鋼などの金属により形成される。第2部材12は、上端側の大径部12aと、大径部12aの下端に連なり下方へ向かって徐々に内外径が小さくなる縮径部12bと、縮径部12bの下端に連なり大径部12aよりも内外径が小さい小径部12cと、を備える。例えば、車体側に設けた筒状のブラケットに第2部材12が挿入されることで、第2部材12が車体側に取り付けられる。
【0021】
防振基体13は、略傘状に形成されるゴムや熱可塑性エラストマ等の弾性体製の部材である。防振基体13は、第1部材11の下部と、大径部12a及び縮径部12bの内周面とにそれぞれ加硫接着され、これらを連結する。防振基体13の下端部には、小径部12cの内周面を覆うゴム膜状の膜部14が連なる。この膜部14は第2部材12の一部である。
【0022】
第2部材12には、小径部12cの下端開口部を塞ぐようにダイヤフラム15が取付部16を介して取り付けられる。ダイヤフラム15は、ゴム等の弾性体製の膜である。取付部16は、鉄鋼などの金属製の環状部材である。取付部16の内周部に全周に亘ってダイヤフラム15の外周部が加硫接着される。
【0023】
防振基体13、第2部材12及びダイヤフラム15により区画される密閉空間によって液室が形成される。液室には、エチレングリコール等の不凍性の液体(図示せず)が封入される。液室は、仕切体20により、防振基体13が室壁の一部を構成する第1液室17と、ダイヤフラム15が室壁の一部を構成する第2液室18とに仕切られる。
【0024】
なお、ダイヤフラム15及び仕切体20を第2部材12に取り付けるには、まず、膜部14の上端から径方向の内側へ段差状に張り出す防振基体13の段差13aに当たるまで、第2部材12の小径部12cに仕切体20を挿入する。次いで、ダイヤフラム15が一体化された取付部16を小径部12cに挿入した後、小径部12c(第2部材12)を絞り加工により縮径させて、仕切体20及び取付部16の外周部を膜部14で保持する。これにより、ダイヤフラム15及び仕切体20が第2部材12に取り付けられる。
【0025】
図1に加え
図2から
図5を参照しながら仕切体20を説明する。
図2は、仕切体20の平面図である。
図2のI-I線における仕切体20の断面が
図1に示されている。
図3は、第1仕切板23を外した仕切体20の平面図である。
図4は、
図2のIV-IV線における仕切体20の断面図である。
図5は、
図2のV-V線における仕切体20の断面図である。
【0026】
図1,2に示すように、仕切体20は、膜部14の内側に保持される筒部材21と、筒部材21の内周側を上下に仕切る平板状の第1仕切板23及び第2仕切板26と、第1仕切板23と第2仕切板26との間に配置されるバルブ30及び可動板40と、を備える。第1液室17に面する第1仕切板23と、第2液室18に面する第2仕切板26とは、互いに上下に重ねられて溶着や接着、圧入により接合される。
【0027】
筒部材21は、金属や合成樹脂製の円筒状の部位である。筒部材21の外周面は、全周に亘り膜部14を介して第2部材12の小径部12cに押し付けられる。筒部材21の外周面には略2周の長さの外周溝22が形成される。この外周溝22と膜部14との間によって第1オリフィス19が形成される。
【0028】
外周溝22の一端が、第1仕切板23よりも上方で筒部材21の内周面に開口したり筒部材21の上端に開口したりすることによって、第1オリフィス19が第1液室17に連通する。外周溝22の他端が、第2仕切板26よりも下方で筒部材21の内周面に開口したり筒部材21の下端に開口したりすることによって、第1オリフィス19が第2液室18に連通する。
【0029】
このように、第1オリフィス19は、第1液室17と第2液室18とを連通する流路である。第1オリフィス19は、例えば車両走行時のシェイク振動を減衰するため、大振幅のシェイク振動の入力時にシェイク振動に対応した周波数帯(例えば5~15Hz程度)で減衰係数が大きくなるよう、第1オリフィス19の流路断面積、長さ、断面周長などが設定される。
【0030】
第1仕切板23は、金属や合成樹脂製の部位であり、軸心Cと垂直な円板状に形成される。第1仕切板23の下面からは、軸心Cを中心とした円筒状の第1筒壁23aが下方(第2仕切板26側)へ突出する。なお、本実施形態では、第1筒壁23aの周方向および径方向を、単に周方向および径方向と省略して説明する。
【0031】
第1仕切板23には、板厚方向(上下方向)に複数の孔が貫通形成されている。その複数の孔には、第1筒壁23aよりも径方向の内側であって軸心C上に設けられる1つの中央孔24aと、第1筒壁23aよりも径方向の内側であって中央孔24aのまわりに設けられる複数の第1バルブ孔24bと、第1筒壁23aよりも径方向の外側に設けられる複数の第1貫通孔24cとがある。
【0032】
複数の第1バルブ孔24b及び複数の第1貫通孔24cは、周方向に並んで配置される。第1仕切板23には、複数の第1貫通孔24cの間によって複数の第1格子23bが形成される。第1格子23bは、軸心Cを中心とした放射状に略一定の幅(周方向寸法)で延びている。
【0033】
第1仕切板23は、第1格子23bから径方向の内側に延びて周方向に連続した内環状部23cと、第1格子23bから径方向の外側に延びて周方向に連続した外環状部23dと、を備える。内環状部23cは、第1格子23bと第1筒壁23aとを径方向に繋ぐ部位である。外環状部23dは、筒部材21の内周面まで延びる。
【0034】
外環状部23dから上方へ円筒部23eが延び、円筒部23eの上端縁から径方向の外側へフランジ23fが延びる。フランジ23fが筒部材21の上端に接触するまで、円筒部23eを筒部材21の内周側に嵌めることで、第1仕切板23が筒部材21に取り付けられる。筒部材21の上端に接触したフランジ23fが防振基体13の段差13aに接触する。また、円筒部23e及びフランジ23fは、外周溝22の第1液室17側の開口を塞がないように、周方向の一部が省略されている。
【0035】
第2仕切板26は、筒部材21と一体成形される部位であり、軸心Cと垂直な円板状に形成される。第2仕切板26の外周縁が全周に亘って筒部材21の内周面に接続され、筒部材21に取り付けられた第1仕切板23と第2仕切板26との間には収容空間が形成される。
【0036】
第2仕切板26の下面であって第1筒壁23aと対向する位置からは、軸心Cを中心とした円筒状の第2筒壁26aが上方(第1仕切板23側)へ突出する。この第2筒壁26aは、第1筒壁23aと内外径が同一である。第1筒壁23aと第2筒壁26aとの先端同士が溶着などにより接合され、上記収容空間を径方向に区画する筒壁が形成される。
【0037】
第1筒壁23a及び第2筒壁26a(筒壁)の径方向の内側には、円柱状の内側空間29aが形成される。一方、第1筒壁23a及び第2筒壁26aの径方向の外側には、円環状の外側空間29bが形成される。
【0038】
第2仕切板26には、板厚方向(上下方向)に複数の孔が貫通形成されている。その複数の孔には、第2筒壁26aよりも径方向の内側であって軸心C上に設けられる1つの第2バルブ孔27aと、第2筒壁26aよりも径方向の外側に設けられる複数の第2貫通孔27bとがある。
【0039】
複数の第2貫通孔27bは、周方向に並んで配置される。第2仕切板26には、複数の第2貫通孔27bの間によって複数の第2格子26bが形成される。第2格子26bは、軸心Cを中心とした放射状に略一定の幅(周方向寸法)で延びている。
【0040】
図1,5に示すように、第2貫通孔27b及び第2格子26bは、第1仕切板23の第1貫通孔24c及び第1格子23bそれぞれと対称(鏡映)に形状、位置および寸法が設定されている。
【0041】
第2仕切板26は、第2格子26bから径方向の内側に延びて周方向に連続した内環状部26cと、第2格子26bから径方向の外側に延びて周方向に連続した外環状部26dと、を備える。内環状部26cは、第2格子26bと第2筒壁26aとを径方向に繋ぐ部位である。外環状部26dは、筒部材21の内周面まで延びる。
【0042】
図1,3に示すように、バルブ30は、ゴムや熱可塑性エラストマ等の弾性体から構成される部材であり、軸心Cを中心とした円板状に形成される。バルブ30は、第1仕切板23と第2仕切板26との間の内側空間29aに収容され、第1筒壁23a及び第2筒壁26aから全周に亘って離れている。
【0043】
バルブ30は、上面から第1仕切板23へ向かって上方へ突出する筒弁部31と、下面から第2仕切板26へ向かって下方へ突出する筒弁部32と、筒弁部31,32を補強する複数のリブ33と、を備える。
【0044】
筒弁部31,32は、軸心Cを中心とした円筒状に形成される。筒弁部31,32の外周面は、先端へ向かうにつれて縮径するテーパ状に形成されている。筒弁部31と筒弁部32とは、上下対称に配置されている。
【0045】
液封入式防振装置10の無荷重状態において、第1仕切板23のうち中央孔24aよりも径方向の外側であって複数の第1バルブ孔24bの径方向の内側に、筒弁部31が全周に亘って接触する。また、無荷重状態において、第2仕切板26のうち第2バルブ孔27aよりも径方向の外側に、筒弁部32が全周に亘って接触する。このように、無荷重状態では、バルブ30によって、内側空間29aを介した第1液室17と第2液室18との間の液体の移動が遮断される。
【0046】
一方、液封入式防振装置10に大荷重(大振幅の振動)が入力され、防振基体13の変形に伴って第1液室17が過度に負圧化された場合には、バルブ30が第1仕切板23側へ変位し、筒弁部31が潰れる。これにより、筒弁部32と第2仕切板26との間が離れる。その結果、第2液室18から第2バルブ孔27a、内側空間29a、第1バルブ孔24bを通って第1液室17へ液体が流入する。よって、第1液室17の過度な負圧を解消でき、その負圧に伴うキャビテーションを抑制できる。このように機能する部位をキャビテーションバルブと言う。
【0047】
なお、第1液室17の正圧時には、筒弁部32を第2仕切板26に押し付ける力が強くなるだけなので、無荷重状態と同様に、バルブ30によって内側空間29aを介した液体の移動が遮断される。更に、第1液室17からの液圧が中央孔24aを介してバルブ30の中央に付与されるため、筒弁部32と第2仕切板26との隙間を介して液体をリークさせ難くできる。
【0048】
リブ33は、筒弁部31,32の径方向の内側でバルブ30の上下両面から突出する。更にリブ33は、軸心Cから放射状に延びて筒弁部31,32の内周面に連結される。このリブ33によって筒弁部31,32を径方向へ倒れ難くできる。その結果、筒弁部31,32の倒れに起因して筒弁部32と第2仕切板26との隙間を介して液体がリークすることを抑制できる。
【0049】
バルブ30からは、径方向の外側へ向かって2本の連結部36が延びる。2本の連結部36は、軸心Cに関し対称に配置される。連結部36は、筒壁(第1筒壁23a及び第2筒壁26a)を貫通して可動板40に連結される。
【0050】
図3,4に示すように、第2筒壁26aの先端には、溝26eが径方向に貫通形成されており、この溝26eに連結部36が嵌められる。
図4には、連結部36の自由長の状態(全く荷重が付与されていない状態)が二点鎖線で図示されている。
【0051】
溝26eの上下方向の深さは、連結部36の上下方向の自由長よりも小さい。そのため、溝26eに嵌まった連結部36は、第1筒壁23aと第2筒壁26aとの間で上下方向に圧縮される。これにより、第1仕切板23及び第2仕切板26に対しバルブ30を径方向にずれ難くできる。その結果、溝26eの壁面と連結部36との擦れによる異音の発生を抑制できる。
【0052】
仮に、第1仕切板23及び第2仕切板26に対するバルブ30のずれが生じると、バルブ30で第1バルブ孔24bや第2バルブ孔27aが塞がれて、バルブ30によるキャビテーションの抑制効果が低減するおそれがある。加えて、筒弁部32の径方向の外側に第2バルブ孔27aが位置してしまい、内側空間29aを介して第1液室17と第2液室18との間を液体が常時移動し、バルブ30がキャビテーションバルブとして機能しなくなるおそれがある。よって、第1仕切板23及び第2仕切板26に対しバルブ30を径方向にずれ難くすることで、バルブ30によるキャビテーションバルブの機能を発揮させ易くでき、キャビテーションの抑制効果が低減することを抑制できる。
【0053】
また、溝26eの周方向(
図4の左右方向)の幅は、連結部36の周方向の自由長よりも大きいので、溝26eに連結部36を挿入し易くできる。この挿入後、第1筒壁23aの先端を第2筒壁26aの先端に押し付けて、第1筒壁23aと第2筒壁26aとの間で上下方向に連結部36を圧縮すると、連結部36が溝26eの周方向両側の壁面にそれぞれ密着する。これにより、溝26eと連結部36との隙間を介して内側空間29aと外側空間29bとの間で液体をリークさせ難くできる。
【0054】
更に、
図4に示す周方向に沿った断面において、溝26eによって第1仕切板23と第2仕切板26との間に形成された空間の断面積は、自由長における連結部36の断面積以下であることが好ましい。この場合、溝26eに連結部36を嵌めたときに、溝26e内の略全体が連結部36で埋まる。その結果、溝26eと連結部36との隙間を介して内側空間29aと外側空間29bとの間で液体をよりリークさせ難くできる。
【0055】
図3に示すように、連結部36には、溝26eに嵌まる部位に対し上下方向および周方向の寸法を大きくしたブロック34が、バルブ30と第2筒壁26aとの間に形成されている。このブロック34によって、第1仕切板23及び第2仕切板26に対しバルブ30を径方向にずれ難くできる。その結果、バルブ30によるキャビテーションバルブの機能を発揮させ易くでき、キャビテーションの抑制効果が低減することを抑制できる。
【0056】
更に、溝26eと連結部36との隙間を液体が通ろうとする場合、その流動抵抗をブロック34によって増加できる。これにより、その隙間を介して内側空間29aと外側空間29bとの間で液体を更にリークさせ難くできる。
【0057】
図1,3に示すように、可動板40は、ゴムや熱可塑性エラストマ等の弾性体から構成される部材であり、軸心Cを中心とした円環板状に形成される。可動板40の内周縁に連結部36が連結される。可動板40と連結部36とバルブ30とは、金型によって一体成形される。よって、これらを別々に成形した後で一体化する場合と比べ、可動板40、連結部36及びバルブ30の生産性を向上できる。
【0058】
可動板40は、第1筒壁23a及び第2筒壁26aを囲み、第1仕切板23と第2仕切板26との間の外側空間29bに配置される。第1仕切板23及び第2仕切板26にそれぞれ形成された第1貫通孔24c及び第2貫通孔27bを介して、第1液室17及び第2液室18の液圧が外側空間29b内の可動板40に付与される。この液圧によって可動板40が変形または変位することにより、液封入式防振装置10に入力された振動エネルギーが消費され、液封入式防振装置10によって振動を減衰できる。
【0059】
可動板40は、内環状部23cに向かって突出する環状突起41と、外環状部23dに向かって突出する環状突起42と、内環状部26cに向かって突出する環状突起43と、外環状部26dに向かって突出する環状突起44と、複数の第1格子23bへ向かって突出する複数の第1突起45と、複数の第2格子26bへ向かって突出する第2突起46と、を備える。
【0060】
環状突起41~44はいずれも、全周に亘って連続した円環状の部位であり、軸心Cを中心とした同心円上に2つずつ配置されている。また、環状突起41と環状突起43とは、上下両面で互い違いに配置されている。同様に、環状突起42と環状突起44とは、上下両面で互い違いに配置されている。これにより、各突起を上下両面で同じ位置に配置した場合と比べ、可動板40の厚い部分と薄い部分との剛性の差を小さくできる。その結果、可動板40の薄い部分を起点に亀裂が生じ易くなることを抑制でき、可動板40の耐久性を向上できる。
【0061】
また、環状突起41~44の高さH2はいずれも同一であり、可動板40の全体の厚さ(上下両側の環状突起41~44の先端間の上下方向の距離)よりも外側空間29bの上下方向の寸法が大きい。更に、可動板40の内径よりも外側空間29bの内径(第1筒壁23a及び第2筒壁26aの外径)が小さく、可動板40の外径よりも外側空間29bの外径(筒部材21の内径)が大きい。よって、可動板40が外側空間29bの中央に位置する(外側空間29bの各壁面に非接触である)場合には、外側空間29bの各壁面と可動板40との隙間、第1貫通孔24c及び第2貫通孔27bによって、第1液室17と第2液室18とを連通する第2オリフィスが形成される。
【0062】
この第2オリフィスは、例えばアイドル時(車両停止時)のアイドル振動を低減するため、小振幅のアイドル振動の入力時にアイドル振動に対応した周波数帯(例えば15~50Hz程度)で減衰係数が大きくなるよう、第2オリフィスの流路断面積、長さ、断面周長などが設定される。
【0063】
第1貫通孔24c及び第2貫通孔27bを介した可動板40への液圧の付与により可動板40が上下方向に変位すると、第2オリフィスが遮断されることがある。具体的に、環状突起41,42がそれぞれ第1仕切板23の内環状部23c及び外環状部23dに全周に亘って押し付けられたときに、第2オリフィスが遮断される。また、環状突起43,44がそれぞれ第2仕切板26の内環状部26c及び外環状部26dに全周に亘って押し付けられたときに、第2オリフィスが遮断される。
【0064】
なお、第2オリフィスが遮断された場合は、第1オリフィス19による減衰特性が主に発揮される。この遮断された状態でも、環状突起41,42間および環状突起43,44間の可動板40は、第1貫通孔24c及び第2貫通孔27bを介した液圧の付与によって、上下方向に変形する。
【0065】
複数の第1突起45及び複数の第2突起46は、この可動板40の変形や変位を規制するためのものである。複数の第1突起45は、可動板40の上面の径方向の中央から上方へ突出する。複数の第1突起45は、互いに周方向に離隔して配置され、その間隔は複数の第1格子23bの間隔と略同一である。
【0066】
複数の第2突起46は、可動板40の下面の径方向の中央から下方へ突出する。複数の第2突起46は、互いに周方向に離隔して配置され、その間隔は複数の第2格子26bの間隔と略同一である。
【0067】
図1,5に示すように、複数の第1突起45と複数の第2突起46とは、それぞれ対称(鏡映)に形状、位置および寸法(高さH1等)が設定されている。可動板40は、連結部36を第2筒壁26aの溝26eに嵌めた状態で、複数の第1突起45と複数の第1格子23bとがそれぞれ対向し、複数の第2突起46と複数の第2格子26bとがそれぞれ対向する。
【0068】
また、バルブ30と同様に、連結部36が溝26eに嵌まることで、外側空間29bの内部での可動板40の回転や径方向の移動が規制される。これにより、互いに対向した複数の第1突起45と複数の第1格子23bとがずれ難くなり、同様に複数の第2突起46と複数の第2格子26bとがずれ難くなる。
【0069】
そのため、第1仕切板23へ可動板40が変形または変位するとき、可動板40の上面から突出する突起を環状にしなくても、複数の第1突起45を複数の第1格子23bに接触させて可動板40の変形または変位を規制できる。同様に、第2仕切板26へ可動板40が変形または変位するとき、可動板40の下面から突出する突起を環状にしなくても、複数の第2突起46を複数の第2格子26bに接触させて可動板40の変形または変位を規制できる。
【0070】
よって、この規制のために可動板40に設けられる突起が、周方向に連続した環状である場合と比べて、周方向に離隔した複数にされることで可動板40を軽くできる。その結果、複数の第1格子23b及び第2格子26bそれぞれと可動板40との接触による打音の発生エネルギーをいずれも小さくでき、その打音に基づく異音を抑制できる。
【0071】
なお、第1突起45及び第2突起46の高さH1は、環状突起41~44の高さH2よりも低い。そのため、環状突起41,42が内環状部23c及び外環状部23dに接触した状態でも、第1格子23bへ向かって可動板40を撓ませることができ、この撓みによる減衰性能を確保できる。同様に、環状突起43,44が内環状部26c及び外環状部26dに接触した状態でも、第2格子26bへ向かって可動板40を撓ませることができ、この撓みによる減衰性能を確保できる。
【0072】
また、バルブ30の場合と同様に、連結部36と溝26eとの寸法関係やブロック34によって、第1仕切板23や第2仕切板26に対して可動板40も径方向にずれ難くできる。これにより、複数の第1格子23b及び第2格子26bと、複数の第1突起45及び複数の第2突起46とのずれをそれぞれ抑制できる。
【0073】
図4に示すように、可動板40の回転などを規制するために溝26eに嵌まった連結部36は、周方向の寸法よりも上下方向の寸法が小さい。これにより、可動板40の上下方向の変形または変位を連結部36で阻害し難くできる。
【0074】
なお、
図1に示すように、連結部36の近傍の可動板40は、環状突起41~44によって上下方向に大きく変形または変位しないので、連結部36の上下方向の寸法が小さくても連結部36の耐久性を確保できる。
【0075】
次に
図6を参照して第2実施形態について説明する。第1実施形態では、第1格子23bと第2格子26bとが向かい合い、第1突起45及び第2突起46の高さH1が全て同一である場合について説明した。これに対し第2実施形態では、複数の第1格子23bと複数の第2格子26bとが互いに周方向にずれ、第1突起45,51,52及び第2突起46,53の高さが互いに異なる場合を説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0076】
図6は、第2実施形態における液封入式防振装置の仕切体50の断面図である。この
図6には、
図5と同じ位置の断面が示されている。仕切体50では、第1仕切板23の複数の第1格子23bと第2仕切板26の複数の第2格子26bとが、互いに周方向にずれている。
【0077】
仕切体50の可動板40の上面から突出する複数の第1突起45,51,52は、複数の第1格子23bとそれぞれ対向する。仕切体50の可動板40の下面から突出する複数の第2突起46,53は、複数の第2格子26bとそれぞれ対向する。そのため、複数の第1突起45,51,52と複数の第2突起46,53とが互いに周方向にずれている。
【0078】
これにより、第1突起45,51,52と第1格子23bとの接触時や、第2突起46,53と第2格子26bとの接触時における可動板40の歪みが周方向の一部に集中することを抑制できる。その結果、可動板40の耐久性を向上できる。
【0079】
更に、隣り合う第1格子23b及び第1突起45,51,52の中間位置に第2格子26b及び第2突起46,53が位置し、隣り合う第2格子26b及び第2突起46,53の中間位置に第1格子23b及び第1突起45,51,52が位置する。これにより、第1突起45,51,52と第1格子23bとの接触時や、第2突起46,53と第2格子26bとの接触時における可動板40の歪みをより周方向に分散し易くできる。その結果、可動板40の耐久性をより向上できる。
【0080】
複数の第1突起45,51,52は、互いに高さが異なる。第1突起45の高さH1よりも第1突起51の高さH3が小さく、その第1突起51の高さH3よりも第1突起52の高さH4が小さい。
【0081】
これにより、可動板40が第1仕切板23側へ変形または変位するとき、第1仕切板23の第1格子23bに第1突起45,51,52の順に接触し、その変形または変位が規制される。このように、第1仕切板23に接触する複数の第1突起45,51,52が徐々に増えることで、第1実施形態のように略同一のタイミングで第1突起45の全てが第1仕切板23に接触する場合と比べ、第1突起45,51,52と可動板40との接触時の異音を抑制できる。
【0082】
第1突起45,51,52は、周方向に(
図4紙面右側に向かうにつれて)高さH1,H3,H4の順で周期的に並んでいる。その結果、第1突起45,51,52が第1仕切板23に接触したときの可動板40の変形の仕方をコントロールし易くでき、その接触時における可動板40の特性をコントロールし易くできる。
【0083】
複数の第2突起46,53も互いに高さが異なる。第2突起46の高さH1よりも第2突起53の高さH4が小さい。これにより、可動板40が第2仕切板26側へ変形または変位するとき、第2仕切板26の第2格子26bに第2突起46,53の順に接触する。その結果、第1突起45,51,52と同様に、第2突起46,53と可動板40との接触時の異音を抑制できる。
【0084】
なお図示しないが、
図6の第2突起46の右側に、高さH3の第2突起(以下「第2突起H3」と称す)を突出させても良い。この場合、第1突起45,51,52と同様に、第2突起46,53,H3を周方向に(
図4紙面右側に向かうにつれて)高さH1,H3,H4の順で周期的に並べても良い。その結果、第2突起46,53,H3が第2仕切板26に接触したときの可動板40の変形の仕方をコントロールし易くでき、その接触時における可動板40の特性をコントロールし易くできる。
【0085】
更に、互い違いに配置された第1突起45,51,52と第2突起46,53,H3とは、周方向に(
図4紙面右側に向かうにつれて)高さH1,H4,H3の順に周期的に並んでいる。即ち例えば、高さH1の第1突起45と、高さH3の第1突起51との間に、高さH4の第2突起53が位置する。これにより、上下に振動した可動板40の第1突起45,51,52及び第2突起46,53,H3が第1仕切板23及び第2仕切板26それぞれに接触する場合において、その可動板40の変形の仕方をコントロールし易くできる。よって、その接触時における可動板40の特性をコントロールし易くできる。
【0086】
次に
図7を参照して第3実施形態について説明する。第1実施形態では、バルブ30と可動板40とが2本の連結部36で連結され、全ての第1突起45が可動板40の径方向の中央に配置される場合について説明した。これに対し第3実施形態では、バルブ30と可動板40とが3本の連結部36で連結され、複数の第1突起45,61,62が径方向にずれて配置される場合を説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0087】
図7は、第3実施形態における液封入式防振装置の仕切体60の平面図であり、第1仕切板23(
図1参照)を外した状態が示されている。仕切体60の可動板40の上面から突出する複数の第1突起45,61,62は、複数の第1格子23b(
図1参照)と対向する。
【0088】
第1突起45は、可動板40の径方向の中央から突出している。第1突起61は、可動板40の径方向の外側(環状突起42側)から突出している。第1突起62は、可動板40の径方向の内側(環状突起41側)から突出している。これにより、第1仕切板23側への可動板40の変形または変位の仕方に応じて、第1仕切板23の第1格子23bに接触する複数の第1突起45,61,62が徐々に増え、その変形または変位が規制されることがある。
【0089】
具体的に本実施形態では、可動板40の径方向の内側および外側に環状突起41,42が設けられているため、それらが第1仕切板23に接触すると、環状突起41,42の間で可動板40が第1仕切板23へ向かって変形する。この変形量は、環状突起41,42から離れる程に大きくなる。更に、可動板40の内縁が連結部36に連結されているため、可動板40の上下方向の変形量または変位量は、外縁側(環状突起42側)で大きくなる。これらの結果、第1仕切板23へ向かって変形または変位する可動板40は、第1突起45,61,62の順で第1仕切板23に接触する。これにより、第1実施形態のように略同一のタイミングで第1突起45の全てが第1仕切板23に接触する場合と比べ、第1突起45,61,62と第1仕切板23との接触時の異音を抑制できる。
【0090】
第1突起45,61,62は、周方向に時計回りに径方向の中央、外側、内側の順に周期的に並んでいる。これにより、第1突起45,61,62が第1仕切板23に接触したときの可動板40の変形の仕方をコントロールし易くでき、その接触時における可動板40の特性をコントロールし易くできる。
【0091】
仕切体60では、バルブ30と可動板40とが3本の連結部36で連結されている。3本の連結部36は、バルブ30からそれぞれ径方向のうち異なる3方向へ向かって延びている。具体的に、軸心Cまわりに120度ずつ異なって互いに交差する3方向へ3本の連結部36がそれぞれ延びている。これにより、バルブ30、連結部36及び可動板40を金型で一体成形する場合に、金型からの空気抜き性を向上できる。
【0092】
第2筒壁26aには、これら3本の連結部36が嵌まる位置に3つの溝26eがそれぞれ形成される。3本の連結部36を3つの溝26eに嵌めると、第1仕切板23及び第2仕切板26に対しバルブ30及び可動板40を径方向に更にずれ難くできる。その結果、上述した通り、バルブ30によるキャビテーションの抑制効果が低減することを抑制できる。加えて、複数の第1突起45,61,62及び複数の第2突起46と、複数の第1格子23b及び複数の第2格子26bとのずれを抑制できる。
【0093】
また、可動板40の内縁のうち、隣り合う連結部36の中間位置から径方向の内側へ向かって計3つの凸部65が突出している。この凸部65は、第2筒壁26aの外周面に形成された凹部66にそれぞれ嵌まる。これにより、第1仕切板23及び第2仕切板26に対し径方向にバルブ30及び可動板40をより一層ずれ難くできる。
【0094】
更に、仮に連結部36が破断した場合でも、凸部65が凹部66に嵌まっていることで、第1仕切板23及び第2仕切板26に対し可動板40を周方向に回転させ難くできる。その結果、複数の第1突起45,61,62及び複数の第2突起46と、複数の第1格子23b及び複数の第2格子26bとのずれを抑制できる。
【0095】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、軸心Cから径方向へオフセットした位置に第1部材11を配置しても良い。また、第2部材12の軸心Cと、第1筒壁23aや第2筒壁26a、バルブ30、可動板40の軸心Cとをオフセットしても良い。
【0096】
また、第1オリフィス19の形成位置や長さ等を適宜変更しても良い。第1液室17及び第2液室18とは別の液室を仕切体20内などに形成しても良い。第1オリフィス19とは別のオリフィスで2液室間を連通しても良い。
【0097】
また、ダイヤフラム15の下部(第1液室17及び第2液室18とは反対側)にカップ形状のキャップ金具を設け、そのキャップ金具の内面とダイヤフラム15とによって空気室を形成しても良い。この空気室を密閉空間としてエアスプリング効果を持たせても良い。キャップ金具の一部に貫通孔を設けて空気室を大気開放し、貫通孔を通る空気による減衰効果を付加しても良い。
【0098】
上記実施形態では、液封入式防振装置10の適用対象として、エンジンマウントを例示したが、その適用対象は任意である。他の適用対象としては、例えばモーターマウント、メンバーマウント、デフマウントが例示される。また、エンジンなどの振動源側に第1部材11を取り付け、車体などの振動受側に第2部材12を取り付ける場合に限らず、振動源側に第2部材12を取り付けて振動受側に第1部材11を取り付けても良い。
【0099】
上記実施形態の一部を省略しても良い。例えば、第1仕切板23の円筒部23e及びフランジ23fを省略しても良い。膜部14を省略して第2部材12の内周面に仕切体20,50,60及びダイヤフラム15を取り付けても良い。環状突起41~44の少なくとも1つを省略しても良い。
【0100】
上記各実施形態の一部を他の実施形態の一部と組み合わせても良い。例えば、第2実施形態における高さH1,H3,H4を異ならせた第1突起45,51,52が突出する位置を、第3実施形態のように径方向にずらしても良い。また、第3実施形態の第1突起45,61,62のように、第1,2実施形態における複数の第2突起46,53が突出する位置を径方向にずらしても良い。
【0101】
また、複数の第1突起および第2突起の高さを異ならせる場合、3種類の高さH1,H3,H4だけでなく、その高さを2種類や4種類以上にしても良い。更に、複数の第1突起および第2突起を高さ順に周方向に並べる場合に限らず、それらを不規則に並べても良い。
【0102】
また、複数の第1突起および第2突起を径方向にずらす場合、径方向の外側、中央、内側の3か所だけでなく、その位置を2か所や4か所以上にしても良い。複数の第1突起および第2突起の位置を1か所にする場合、径方向の中央に限らなくても良い。更に、複数の第1突起および第2突起を、径方向の中央、外側、内側の順で周方向に並べる場合に限らず、それらを不規則に並べても良い。
【0103】
上記実施形態では、周方向に並んだ第1貫通孔24cや第2貫通孔27bが1列のみである場合を説明したが、それらを径方向に2列以上並べても良い。この場合、径方向の内側の第1貫通孔24cや第2貫通孔27bと、径方向の外側の第1貫通孔24cや第2貫通孔27bとで数や寸法、形状を変更しても良い。
【0104】
上記実施形態では、1つの第1格子23bと、1つの第1突起45,51,52,61,62とが対向する場合を説明したが、これに限られない。例えば、1つの第1格子23bと、2つ以上の第1突起45,51,52,61,62とを対向させても良い。また、1つの第2格子26bと、2つ以上の第2突起46,53とを対向させても良い。複数の第1格子23bや第2格子26bに対し、部分的に第1突起45,51,52,61,62や第2突起46,53を対向させなくても良い。
【0105】
上記実施形態では、可動板40と外側空間29bとの隙間を介して第1液室17と第2液室18との間で液体を移動可能な場合を説明したが、これに限られない。例えば、可動板40で外側空間29bを上下に区画し、外側空間29bを通して第1液室17と第2液室18との間で液体を移動できなくしても良い。
【0106】
上記実施形態では、環状突起41~44が周方向に連続したものである場合を説明したが、これに限られない。例えば、環状突起41~44の周方向の一部にスリットを設けても良い。また、複数の環状突起41~44には、高さが異なるものがあっても良い。複数の環状突起41~44が同心円上に配置される場合に限らず、それらの中心同士をオフセットしても良い。
【0107】
上記実施形態では、環状突起41~44の高さH2よりも第1突起45,51,52,61,62や第2突起46,53の高さH1,H3,H4が低い場合を説明したが、これに限られない。環状突起41~44よりも第1突起45,51,52,61,62や第2突起46,53を高くしても良い。
【0108】
また、第1突起45,51,52,61,62や第2突起46,53と対向する位置の第1格子23bの下面や第2格子26bの上面を凹ませ、それらに無荷重状態で接触しない程度に第1突起45,51,52,61,62や第2突起46,53を高くしても良い。弾性体製の第1突起45,51,52,61,62や第2突起46,53が高い程、それらと第1仕切板23や第2仕切板26との接触時における異音を抑制できる。
【0109】
上記実施形態では、2又は3本の連結部36でバルブ30と可動板40とを連結する場合を説明したが、これに限られない。例えば、連結部36を1本または4本以上としても良い。
【0110】
上記実施形態では、連結部36が嵌まる溝26eを第2筒壁26aの先端に形成する場合を説明したが、これに限られない。第1筒壁23aの先端に溝26eを形成しても良く、第1筒壁23a及び第2筒壁26aの両方に溝26eを形成しても良い。また、第1筒壁23aまたは第2筒壁26aを径方向に貫通した孔に連結部36を嵌めても良い。この場合、その孔に連結部36を通した後、バルブ30又は可動板40に連結部36を連結すれば良い。また、第1筒壁23aまたは第2筒壁26aの一方を省略して他方を延長しても良い。
【符号の説明】
【0111】
10 液封入式防振装置
11 第1部材
12 第2部材
13 防振基体
15 ダイヤフラム
17 第1液室
18 第2液室
19 第1オリフィス(オリフィス)
20,50,60 仕切体
23 第1仕切板
23a 第1筒壁(筒壁の一部)
23b 第1格子
24b 第1バルブ孔
24c 第1貫通孔
26 第2仕切板
26a 第2筒壁(筒壁の一部)
26b 第2格子
26e 溝
27a 第2バルブ孔
27b 第2貫通孔
29a 内側空間
29b 外側空間
30 バルブ
31,32 筒弁部
34 ブロック
36 連結部
40 可動板
45,51,52,61,62 第1突起(突起)
46,53 第2突起(突起)