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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060814
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20240425BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20240425BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240425BHJP
   C08L 1/00 20060101ALI20240425BHJP
   C08L 25/08 20060101ALI20240425BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240425BHJP
   B60C 13/00 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
C08L21/00
C08L9/00
C08K3/013
C08L1/00
C08L25/08
B60C1/00 Z
B60C1/00 B
B60C13/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168334
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 澄子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大輔
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA01
3D131AA06
3D131BA03
3D131BA05
3D131BA20
3D131BB01
3D131BB03
3D131BB06
3D131BB09
3D131BB11
3D131BC01
3D131BC02
3D131BC13
4J002AB01X
4J002AC01W
4J002AC03W
4J002BH01Y
4J002DA036
4J002DJ016
4J002FA04X
4J002FD016
4J002FD01X
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】高速走行時の操縦安定性及び低燃費性の総合性能に優れたタイヤを提供する。
【解決手段】有機繊維と、芳香族ビニル化合物と不飽和カルボン酸との共重合体、及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種と、充填剤とを含むゴム組成物、で構成されたタイヤ用部材を有するタイヤ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機繊維と、芳香族ビニル化合物と不飽和カルボン酸との共重合体、及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種と、充填剤とを含むゴム組成物、で構成されたタイヤ用部材を有するタイヤ。
【請求項2】
前記タイヤ用部材は、タイヤ周方向の30℃における複素弾性率(30℃E*a(MPa))及びタイヤ周方向の30℃における損失正接(30℃tanδa)が下記式を満たす請求項1記載のタイヤ。
30℃E*a/30℃tanδa≧35
【請求項3】
前記タイヤ用部材は、タイヤ周方向の30℃における複素弾性率(30℃E*a(MPa))及びタイヤ周方向の30℃における損失正接(30℃tanδa)が下記式を満たす請求項1記載のタイヤ。
30℃E*a/30℃tanδa≧45
【請求項4】
前記タイヤ用部材は、タイヤ周方向の30℃における複素弾性率(30℃E*a(MPa))及びタイヤ周方向の30℃における損失正接(30℃tanδa)が下記式を満たす請求項1記載のタイヤ。
30℃E*a/30℃tanδa≦72
【請求項5】
前記タイヤ用部材は、タイヤ周方向の30℃における複素弾性率(30℃E*a(MPa))及びタイヤ周方向の30℃における損失正接(30℃tanδa)が下記式を満たす請求項1記載のタイヤ。
30℃E*a/30℃tanδa≦65
【請求項6】
前記芳香族ビニル化合物がスチレンである請求項1記載のタイヤ。
【請求項7】
前記共重合体及びその誘導体が、マレイン酸、無水マレイン酸及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物由来の構成単位を有する請求項1記載のタイヤ。
【請求項8】
前記タイヤ用部材は、タイヤ周方向の30℃における損失正接(30℃tanδa)及びタイヤ半径方向の30℃における損失正接(30℃tanδb)が下記式を満たす請求項1記載のタイヤ。
30℃tanδa/30℃tanδb≧1.00
【請求項9】
前記有機繊維がバイオマス由来の有機繊維である請求項1記載のタイヤ。
【請求項10】
前記有機繊維が、セルロースナノファイバー及びセルロースナノクリスタルからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1記載のタイヤ。
【請求項11】
前記共重合体及びその誘導体が、エステル基及び/又はアニオン性基を有する請求項1記載のタイヤ。
【請求項12】
前記ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対する前記充填剤の含有量が10~55質量部である請求項1記載のタイヤ。
【請求項13】
前記共重合体及びその誘導体が、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸のエステル及び不飽和カルボン酸の金属塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物由来の構成単位を有する請求項1記載のタイヤ。
【請求項14】
前記ゴム組成物が、平均粒子径が18nm以下のシリカを含む請求項1記載のタイヤ。
【請求項15】
前記ゴム組成物が、ブタジエンゴムを含む請求項1記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤには種々の性能が求められ、例えば、低燃費性、操縦安定性などが挙げられるが、近年、特に高速走行時の操縦安定性と低燃費性を両立することが望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、前記課題を解決し、高速走行時の操縦安定性及び低燃費性の総合性能に優れたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、有機繊維と、芳香族ビニル化合物と不飽和カルボン酸との共重合体、及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種と、充填剤とを含むゴム組成物、で構成されたタイヤ用部材を有するタイヤに関する。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、有機繊維と、芳香族ビニル化合物と不飽和カルボン酸との共重合体、及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種と、充填剤とを含むゴム組成物、で構成されたタイヤ用部材を有するタイヤであるので、高速走行時の操縦安定性及び低燃費性の総合性能に優れたタイヤを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0006】
〔タイヤ〕
本発明は、有機繊維と、芳香族ビニル化合物と不飽和カルボン酸との共重合体、及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種と、充填剤とを含むゴム組成物、で構成されたタイヤ用部材を有するタイヤである。
【0007】
前記作用効果が得られるメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。
芳香族ビニル化合物と不飽和カルボン酸との共重合体、及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種のポリマーを配合すると、該ポリマー中の芳香族ビニル化合物側がゴム、不飽和カルボン酸側が有機繊維(例えば、有機繊維中のOH基)と相互作用が生じ、それによりゴム中での有機繊維の分散性が向上し、補強性が向上する。更に、ゴムと有機繊維の結合が強固になり、ゴムの弾性が高まることで、発熱も抑制される。
従って、本発明により、高速走行時の操縦安定性及び低燃費性の総合性能が向上すると推察される。
【0008】
(有機繊維)
前記ゴム組成物は、有機繊維を含む。
本発明において、有機繊維とは、有機物を主成分とする繊維状の材料である。有機繊維は、1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0009】
有機繊維としては、例えば、フィブリル化した有機繊維、短繊維状セルロース、ゲル状化合物などの難分散性フィラーが挙げられる。
【0010】
フィブリル化した有機繊維とは、有機繊維がフィブリル状に解離したものである。
このような有機繊維として、例えば、バイオマス由来の有機繊維などを好適に使用でき、具体的には、ナノセルロース、キチンナノファイバー、キトサンナノファイバーなどが挙げられる。
【0011】
有機繊維のアスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)は、0.1以上が好ましく、0.3以上がより好ましく、0.5以上が更に好ましい。上限は特に限定されないが、1000以下が好ましく、700以下がより好ましく、500以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0012】
ナノセルロースは、その繊維径(直径)がナノサイズであるセルロース繊維であり、セルロース繊維を含む材料(木材パルプ等)をその繊維をナノサイズレベルまで解きほぐして(解繊処理して)得られるセルロースである。ナノセルロースは、セルロース分子が複数本集まって、ナノサイズの径の繊維を形成しており、セルロース分子間は水素結合により連結されている。植物の細胞壁の中では、幅4nm程のセルロースミクロフィブリル(シングルセルロースナノファイバー)が最小単位として存在し、植物の基本骨格物質であるが、ナノセルロースは、セルロースミクロフィブリル又はセルロースミクロフィブリルが複数凝集して形成されるナノサイズのセルロースである。
【0013】
ナノセルロースとしては、例えば、ミクロフィブリルセルロース(セルロースナノファイバー(CNF))、セルロースナノクリスタル(CNC)を好適に使用できる。ナノセルロースは、1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
CNFは、セルロース繊維を機械的解繊等の処理を施すことで得られる繊維である。
植物繊維を解繊し、CNFを調製する方法としては、パルプ等のセルロース繊維含有材料を解繊する方法が挙げられる。解繊方法としては、例えば、セルロース繊維含有材料の水懸濁液又はスラリーを、リファイナー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、一軸又は多軸混練機(好ましくは二軸混練機)、ビーズミル等による機械的な摩砕、叩解することにより解繊する方法が使用できる。
【0015】
CNFの平均繊維径は、マトリックス中での分散性等の観点から、10μm以下が好ましい。該平均繊維径は、500nm以下がより好ましく、100nm以下が更に好ましく、50nm以下が特に好ましい。また、該平均繊維径の下限は特に制限されないが、1nm以上が好ましく、2nm以上がより好ましく、3nm以上が更に好ましい。
【0016】
CNFの平均繊維長は、100nm以上が好ましく、300nm以上がより好ましく、500nm以上が更に好ましい。また、上限は、50μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。
【0017】
CNFのアスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)は、10以上が好ましく、15以上がより好ましく、20以上が更に好ましい。上限は特に限定されないが、1000以下が好ましく、700以下がより好ましく、500以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0018】
CNCは、セルロース繊維を酸加水分解等の化学的処理を施すことで得られる結晶である。
植物繊維を解繊し、CNCを調製する方法としては、公知の方法が採用できる。例えば、前記セルロース繊維含有材料の水懸濁液又はスラリーに、硫酸、塩酸、臭化水素酸等による酸加水分解等処理を施す化学的手法が使用できる。
【0019】
CNCの平均繊維径は、マトリックス中での分散性等の観点から、10μm以下が好ましい。該平均繊維径は、500nm以下がより好ましく、100nm以下が更に好ましく、50nm以下が特に好ましい。また、該平均繊維径の下限は特に制限されないが、1nm以上が好ましく、2nm以上がより好ましく、3nm以上が更に好ましい。
【0020】
CNCの平均繊維長は、50nm以上が好ましく、80nm以上がより好ましく、100nm以上が更に好ましい。また、上限は、下限は、800nm以下が好ましく、500nm以下がより好ましく、300nm以下が更に好ましい。
【0021】
CNCのアスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)は、0.1以上が好ましく、0.3以上がより好ましく、0.5以上が更に好ましい。上限は特に限定されないが、500以下が好ましく、200以下がより好ましく、100以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0022】
本明細書において、ナノセルロースの平均繊維径及び平均繊維長は、走査型電子顕微鏡写真による画像解析、透過型電子顕微鏡写真による画像解析、原子間力顕微鏡写真による画像解析、X線散乱データの解析、細孔電気抵抗法(コールター原理法)等によって測定できる。なお、本明細書において、ナノセルロース(セルロース繊維)の平均繊維径、平均繊維長は、典型的には、セルロース分子の集合により形成されているセルロース繊維の集合体の平均繊維径、平均繊維長である。
【0023】
CNFの結晶化度は、通常、90%以下であり、80%以下や70%以下でもよい。該結晶化度の下限は、ゴムマトリックス中での分散性等の観点から、30%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、60%以上が更に好ましい。
【0024】
CNCの結晶化度は、ゴムマトリックス中での分散性等の観点から、70%以上が好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましい。該結晶化度の上限は特に限定されず、100%でもよい。
【0025】
本明細書において、ナノセルロースの結晶化度は、X線回折法による回折強度値からSegal法により算出したセルロースI型結晶化度であり、下記式により定義される。
セルロースI型結晶化度(%)=[(I22.6-I18.5)/I22.6]×100
〔式中、I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す〕
【0026】
ナノセルロースの原料(セルロース)としては、針葉樹クラフトパルプ、広葉樹クラフトパルプ、マニラ麻パルプ、サイザル麻パルプ、竹パルプ、エスパルトパルプ、コットンパルプなどから得られる植物由来セルロース、低酸溶紡糸による高重合度の再生セルロース(ポリノジックレーヨン)、アミン・オキサイド系有機溶剤を用いた溶剤紡糸レーヨンなどの再生セルロース、バクテリア産生セルロース、ホヤなどの動物由来セルロース、電界紡糸法によるナノセルロースなどが挙げられる。
【0027】
植物由来セルロースからナノセルロースを製造する方法として、物理的方法と化学的方法がある。物理的方法(解繊)としては、高圧ホモジナイザー法、マイクロフリュイダイザー法、ボールミル粉砕法、グラインドミル粉砕法などが挙げられる。化学的方法としては、TEMPO酸化法などが挙げられる。
【0028】
ナノセルロースとしては、リグニンやヘミセルロースが一部残存しているもの、表面を化学修飾処理したもの(修飾パルプ)なども使用できる。修飾パルプとしては、例えば、セルロース繊維の水酸基がエステル化及びエーテル化から選ばれる少なくとも1種の方法により修飾されたもの等が挙げられる。また、ナノセルロースの断面形状は、異方形状(扁平など)、等方形状(真円、正多角形など)のいずれでよい。
【0029】
上記短繊維状セルロースとは、有機繊維をカットした短繊維(カットファイバー)である。短繊維状セルロースは、ゴム中での分散性が良好なことから、エラストマーの破壊強度を損なうことなく、維持又は改善でき、エラストマー物性が良好になる。
【0030】
短繊維状セルロースの繊維幅は、3~200μmであることが好ましい。通常、熱可塑性エラストマー複合体に配合される繊維状のフィラーは、繊維幅が小さいほどエラストマーの補強性の面で好ましいが、一方で繊維幅の小さい繊維状フィラーは配向しにくい傾向があるところ、エラストマーの補強性と繊維の配向性のバランスの観点、更にはエラストマー中での分散性の観点から、当該繊維幅としては、10μm以上が好ましく、15μm以上がより好ましく、20μm以上が更に好ましい。また、120μm以下が好ましく、80μm以下がより好ましく、50μm以下が更に好ましい。
【0031】
短繊維状セルロースの繊維長は、20~1000μmであることが好ましい。繊維幅同様に、エラストマーの補強性と繊維の配向性のバランスの観点、更にはエラストマー中での分散性の観点から、当該繊維長としては、50μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましく、200μm以上が更に好ましい。また、700μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましい。
【0032】
短繊維状セルロースは、繊維幅と繊維長との比(繊維長/繊維幅)が5~1000であることが好ましい。繊維幅同様に、エラストマーの補強性と繊維の配向性のバランスの観点から、当該繊維幅と繊維長との比としては、6以上が好ましく、10以上がより好ましい。また、800以下が好ましく、500以下がより好ましく、400以下が更に好ましく、300以下が特に好ましい。
【0033】
短繊維状セルロースの繊維幅及び繊維長は、走査型原子間力顕微鏡写真の画像解析、走査型電子顕微鏡写真の画像解析、透過型顕微鏡写真の画像解析、X線散乱データの解析、細孔電気抵抗法(コールター原理法)等によって測定できる。
【0034】
上記ゲル状化合物とは、ミクロフィブリル化植物繊維や短繊維状セルロースをゲル化させて得られる物質である。このようなゲル化物を用いた場合にも、該ゲル状化合物を良好に分散できる。ゲル化の方法としては特に限定されず、超高圧ホモジナイザー等を用いて撹拌する方法等が挙げられる。
【0035】
前記ゴム組成物において、有機繊維の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上、特に好ましくは15質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。なお、ナノセルロースの含有量、CNFの含有量、CNCの含有量、CNF及びCNCの合計含有量のそれぞれについても、同様の範囲が望ましい。
【0036】
(芳香族ビニル化合物と不飽和カルボン酸との共重合体、及びその誘導体)
芳香族ビニル化合物と不飽和カルボン酸との共重合体、及びその誘導体としては、芳香族ビニル化合物単位(芳香族ビニル化合物由来の構成単位)と、不飽和カルボン酸単位(不飽和カルボン酸由来の構成単位)とからなる共重合体、及びその誘導体などが挙げられる。具体的には、芳香族ビニル化合物と不飽和カルボン酸との共重合体、芳香族ビニル化合物と不飽和カルボン酸との共重合体の誘導体でかつエステル基及び/又はアニオン性基を有するもの(例えば、芳香族ビニル化合物と不飽和カルボン酸塩との共重合体、芳香族ビニル化合物と不飽和カルボン酸エステルとの共重合体など)などを好適に使用できる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0037】
芳香族ビニル化合物単位を構成する化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,6-ジメチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、α-メチル-o-メチルスチレン、α-メチル-m-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン、β-メチル-o-メチルスチレン、β-メチル-m-メチルスチレン、β-メチル-p-メチルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、α-メチル-2,6-ジメチルスチレン、α-メチル-2,4-ジメチルスチレン、β-メチル-2,6-ジメチルスチレン、β-メチル-2,4-ジメチルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン、2,6-ジクロロスチレン、2,4-ジクロロスチレン、α-クロロ-o-クロロスチレン、α-クロロ-m-クロロスチレン、α-クロロ-p-クロロスチレン、β-クロロ-o-クロロスチレン、β-クロロ-m-クロロスチレン、β-クロロ-p-クロロスチレン、2,4,6-トリクロロスチレン、α-クロロ-2,6-ジクロロスチレン、α-クロロ-2,4-ジクロロスチレン、β-クロロ-2,6-ジクロロスチレン、β-クロロ-2,4-ジクロロスチレン、o-t-ブチルスチレン、m-t-ブチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、o-メトキシスチレン、m-メトキシスチレン、p-メトキシスチレン、o-クロロメチルスチレン、m-クロロメチルスチレン、p-クロロメチルスチレン、o-ブロモメチルスチレン、m-ブロモメチルスチレン、p-ブロモメチルスチレン、シリル基で置換されたスチレン誘導体、インデン、ビニルナフタレン等が挙げられる。芳香族ビニル化合物単位を構成する化合物は、単独又は2種以上を用いることができる。なかでも、より効果が得られる観点から、スチレン、α-メチルスチレン、及びこれらの混合物が好ましく、スチレンがより好ましい。
【0038】
不飽和カルボン酸単位を構成する化合物としては、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸のエステル、不飽和カルボン酸の塩などが挙げられる。
具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸などのα,β-不飽和カルボン酸、及びこれらα,β-不飽和カルボン酸のエステル及び金属塩;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クルトン酸、メチルマレイン酸、メチルフマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、テトラヒドロフタル酸、エンドピシクロ-(2,2,1)-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸、メチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸などのα,β-不飽和ジカルボン酸、及びこれらα,β-不飽和ジカルボン酸の塩;マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、クロトン酸モノメチル、クロトン酸モノエチル、メチルマレイン酸モノメチル、メチルフマル酸モノメチル、メサコン酸モノメチル、シトラコン酸モノメチル、グルタコン酸モノメチル、テトラヒドロフタル酸モノメチルなどのα,β-不飽和ジカルボン酸モノアルキルエステル、及びこれらの塩;α,β-不飽和ジカルボン酸モノアルケニルエステル、及びこれらの塩;α,β-不飽和ジカルボン酸モノアリールエステル、及びこれらの塩;α,β-不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル、及びこれらの塩;などが挙げられる。なお、不飽和カルボン酸の塩としては、アンモニウム塩、金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩などアルカリ金属塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩、亜鉛塩などの他の金属の塩)などが例示される。また、不飽和カルボン酸単位を構成する化合物が不飽和カルボン酸の塩である場合、化合物中に塩の構造を少なくとも1つ有する化合物であればよい。
【0039】
不飽和カルボン酸単位は、不飽和カルボン酸が脱水縮合された不飽和カルボン酸無水物単位でもよい。このような不飽和カルボン酸無水物単位を構成する化合物としては、α,β-不飽和ジカルボン酸無水物などが挙げられ、具体的には、無水マレイン酸、無水フマル酸、無水イタコン酸、無水クロトン酸、メチル無水マレイン酸、メチル無水フマル酸、無水メサコン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、1,2-ジメチル無水マレイン酸、フェニル無水マレイン酸、エンドビシクロ-(2,2,1)-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸無水物、メチル-1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物などが例示される。不飽和カルボン酸単位を構成する化合物は、単独又は2種以上を用いることができる。
【0040】
なかでも、より効果が得られる観点から、α,β-不飽和ジカルボン酸、α,β-不飽和ジカルボン酸無水物、及びこれらの誘導体(エステル基及び/又はアニオン性基を有する化合物など)が好ましく、マレイン酸、無水マレイン酸、及びこれらの誘導体がより好ましい(すなわち、前記共重合体及びその誘導体が、マレイン酸、無水マレイン酸、及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種由来の構成単位を有するもの)。
【0041】
前記共重合体及びその誘導体は、芳香族ビニル化合物単位(芳香族ビニル化合物由来の構成単位)及び芳香族ビニル化合物誘導体単位(芳香族ビニル化合物の誘導体由来の構成単位)の合計含有率が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、また、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、スチレン含有量などの芳香族ビニル化合物単位、芳香族ビニル化合物誘導体単位の含有率は、H-NMR法を用いて測定でき、例えば、スチレン含有率は、25℃にてJEOL JNM-A 400NMR装置を用いてH-NMRを測定し、そのスペクトルより求める6.5~7.2ppmのスチレン単位に基づくフェニルプロトンと4.9~5.4ppmのブタジエン単位に基づくビニルプロトンの比からスチレン含有率を決定できる。
【0042】
前記共重合体及びその誘導体は、不飽和カルボン酸単位(不飽和カルボン酸由来の構成単位)及び不飽和カルボン酸誘導体単位(不飽和カルボン酸の誘導体由来の構成単位)の合計含有率が、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは50質量%未満、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、不飽和カルボン酸単位、不飽和カルボン酸誘導体単位の含有率は、H-NMR法を用いて測定できる。
【0043】
前記ゴム組成物において、前記共重合体及びその誘導体の合計含有量(前記共重合体及びその誘導体の総量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上、更に好ましくは2.4質量部以上、特に好ましくは2.9質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0044】
(充填剤)
前記ゴム組成物は、充填剤を含む。
なお、本発明において、「充填剤」は、前述の「有機繊維」を含まない概念とする。
【0045】
前記ゴム組成物において、充填剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは30質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは70質量部以下、更に好ましくは55質量部以下、特に好ましくは50質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0046】
充填剤としては、ゴム分野で公知の材料を使用でき、例えば、シリカ、カーボンブラック、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレイ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、マイカなどの無機フィラー、バイオ炭(BIO CHAR)などが挙げられる。なかでも、効果がより良好に得られる観点から、カーボンブラック、シリカが好ましく、カーボンブラックがより好ましい。
【0047】
カーボンブラックとしては、特に限定されないが、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。市販品としては、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱ケミカル(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。また、上記の鉱油等を原料としたカーボンブラック以外にリグニンなどのバイオマス材料を原料としたカーボンブラックを用いても良い。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、30m/g以上が好ましく、35m/g以上がより好ましく、40m/g以上が更に好ましい。また、上記NSAは、100m/g以下が好ましく、80m/g以下がより好ましく、60m/g以下が更に好ましく、50m/g以下が特に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0049】
前記ゴム組成物において、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは30質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは70質量部以下、より好ましくは55質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0050】
シリカとしては、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられる。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。市販品としては、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。また、シリカとして、もみ殻などのバイオマス材料を原料としたものも使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは50m/g以上、より好ましくは100m/g以上、更に好ましくは150m/g以上、特に好ましくは170m/g以上である。また、シリカのNSAの上限は特に限定されないが、好ましくは350m/g以下、より好ましくは300m/g以下、更に好ましくは250m/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される値である。
【0052】
シリカの平均粒子径は、好ましくは24nm以下、より好ましくは20nm以下、更に好ましくは18nm以下であり、また、好ましくは6nm以上、より好ましくは9nm以上、更に好ましくは12nm以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0053】
なお、本明細書において、シリカの平均粒子径の測定方法は、透過型電子顕微鏡(TEM)観察が用いられる。具体的には、シリカ粒子を透過型電子顕微鏡で写真撮影し、粒子の形状が球形の場合には球の直径を粒子径とし、針状又は棒状の場合には短径を粒子径とし、不定型の場合には中心部からの平均粒径を粒子径とし、微粒子100個の粒径の平均値を平均粒子径とする。
【0054】
前記ゴム組成物がシリカを含む場合、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは30質量部以上、更に好ましくは50質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは120質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは80質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0055】
(シランカップリング剤)
前記ゴム組成物がシリカを含む場合、更にシランカップリング剤を含むことが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、ゴム分野で公知のものが使用可能であり、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT-Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。市販品としては、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
前記ゴム組成物において、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上、特に好ましくは7質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下、特に好ましくは10質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0057】
(ゴム成分)
前記ゴム組成物は、ゴム成分を含む。
ゴム成分の重量平均分子量は、好ましくは5万以上、より好ましくは15万以上、更に好ましくは20万以上であり、また、好ましくは200万以下、より好ましくは150万以下、更に好ましくは100万以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0058】
なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0059】
ゴム成分としては特に限定されず、タイヤ分野で公知のものを使用できる。例えば、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンスブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合ゴム(SIBR)等のジエン系ゴムが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、効果がより良好に得られる観点から、イソプレン系ゴム、BR、SBRのいずれかを用いることが好ましく、イソプレン系ゴムを用いることがより好ましい。
【0060】
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、NRが好ましい。
【0061】
前記ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中、イソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上であり、100質量%でもよい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0062】
BRとしては特に限定されず、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR150B、LG Chem社製のBR1280等の高シス含有量のBR、宇部興産(株)製のVCR412、VCR617等の1,2-シンジオタクチックポリブタジエン結晶(SPB)を含むBR、希土類元素系触媒を用いて合成されたブタジエンゴム(希土類系BR)等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0063】
BRのシス量(シス含量)は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、また、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下、更に好ましくは97質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、BRのシス量は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0064】
前記ゴム組成物がBRを含む場合、ゴム成分100質量%中、BRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0065】
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等を使用できる。市販品としては、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品が挙げられる。
【0066】
SBRのスチレン含量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上である。該スチレン含量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、SBRのスチレン含量は、H-NMR測定により算出される。
【0067】
SBRのビニル含量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。該ビニル含量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、SBRのビニル含量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0068】
前記ゴム組成物がSBRを含む場合、ゴム成分100質量%中、SBRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0069】
ゴム成分は、オイル、樹脂、液状ゴムなどの可塑剤成分により伸展された伸展ゴムでもよい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。伸展ゴムに使用される可塑剤は、後述で説明するものと同様のものが挙げられる。また、伸展ゴム中の可塑剤分は特に限定されないが、通常、ゴム固形分100質量部に対して10~50質量部程度である。
【0070】
ゴム成分は、変性により、シリカ等の充填材と相互作用する官能基が導入されていてもよい。
上記官能基としては、例えば、ケイ素含有基(-SiR(Rは、同一又は異なって、水素、水酸基、炭化水素基、アルコキシ基など)、アミノ基、アミド基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、ケイ素含有基が好ましく、-SiR(Rは、同一又は異なって、水素、水酸基、炭化水素基(好ましくは炭素数1~6の炭化水素基(より好ましくは炭素数1~6のアルキル基))又はアルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基))であり、Rの少なくとも一つが水酸基)がより好ましい。
【0071】
上記官能基を導入する化合物(変性剤)の具体例としては、2-ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0072】
(可塑剤)
前記ゴム組成物は、可塑剤を含んでもよい。
ここで、可塑剤とは、ゴム成分に可塑性を付与する材料であり、例えば、液体可塑剤(常温(25℃)で液体状態の可塑剤)、樹脂(常温(25℃)で固体状態の樹脂)等が挙げられる。
【0073】
前記ゴム組成物において、可塑剤の含有量(可塑剤の総量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは8質量部以上、更に好ましくは10質量部以上であり、また、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。なお、伸展ゴムに用いられた可塑剤成分量も、これらの可塑剤の含有量に含まれる。
【0074】
液体可塑剤(常温(25℃)で液体状態の可塑剤)としては特に限定されず、オイル、液状ポリマー(液状樹脂、液状ジエン系ポリマー、液状ファルネセン系ポリマーなど)などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0075】
前記ゴム組成物において、液体可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは8質量部以上、更に好ましくは10質量部以上であり、また、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。なお、液体可塑剤の含有量には、油展ゴムに含まれるオイルの量も含まれる。また、オイルの含有量も同様の範囲が好適である。
【0076】
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。植物油としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。市販品としては、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)、日清オイリオグループ(株)等の製品を使用できる。なかでも、プロセスオイル(パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル等)、植物油が好ましい。なお、これらのプロセスオイル及び植物油は、ライフサイクルアセスメントの観点から、ゴム混合用ミキサーやエンジンなどの潤滑油として用いられた後のオイルや廃食油などを適宜用いても良い。
【0077】
液状樹脂としては、テルペン系樹脂(テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂を含む)、ロジン樹脂、スチレン系樹脂、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂、クマロンインデン系樹脂(クマロン、インデン単体樹脂を含む)、フェノール樹脂、オレフィン系樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。また、これらの水素添加物も使用可能である。
【0078】
液状ジエン系ポリマーとしては、25℃で液体状態の液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)、液状スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(液状SBSブロックポリマー)、液状スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(液状SISブロックポリマー)等が挙げられる。これらは、末端や主鎖が極性基で変性されていても構わない。また、これらの水素添加物も使用可能である。
【0079】
液状ファルネセン系ポリマーとしては、25℃で液体状態の液状ファルネセン重合体、液状ファルネセンブタジエン共重合体等が挙げられる。これらは、末端や主鎖が極性基で変性されていても構わない。また、これらの水素添加物も使用可能である。
【0080】
前記樹脂(常温(25℃)で固体状態の樹脂)としては、例えば、常温(25℃)で固体状態の芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、テルペン系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。また、樹脂は、水添されていてもよい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、芳香族ビニル重合体、石油樹脂、テルペン系樹脂が好ましい。
【0081】
前記ゴム組成物において、前記樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは8質量部以上、更に好ましくは10質量部以上であり、また、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0082】
前記樹脂の軟化点は、50℃以上が好ましく、55℃以上がより好ましく、60℃以上が更に好ましい。上限は、160℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、145℃以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記樹脂の軟化点は、JIS K6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
なお、前記樹脂の軟化点は、通常、樹脂成分のガラス転移温度の50℃±5℃程度の値である。
【0083】
前記芳香族ビニル重合体は、芳香族ビニルモノマーを構成単位として含むポリマーである。例えば、α-メチルスチレン及び/又はスチレンを重合して得られる樹脂が挙げられ、具体的には、スチレンの単独重合体(スチレン樹脂)、α-メチルスチレンの単独重合体(α-メチルスチレン樹脂)、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体、スチレンと他のモノマーの共重合体などが挙げられる。
【0084】
前記クマロンインデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロン及びインデンを含む樹脂である。クマロン、インデン以外に骨格に含まれるモノマー成分としては、スチレン、α-メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
【0085】
前記クマロン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロンを含む樹脂である。
【0086】
前記インデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、インデンを含む樹脂である。
【0087】
前記フェノール樹脂としては、例えば、フェノールと、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラールなどのアルデヒド類とを酸又はアルカリ触媒で反応させることにより得られるポリマー等の公知のものを使用できる。なかでも、酸触媒で反応させることにより得られるもの(ノボラック型フェノール樹脂など)が好ましい。
【0088】
前記ロジン樹脂としては、天然ロジン、重合ロジン、変性ロジン、これらのエステル化合物、これらの水素添加物に代表されるロジン系樹脂等が挙げられる。
【0089】
前記石油樹脂としては、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂、これらの水素添加物などが挙げられる。なかでも、DCPD樹脂、水添DCPD樹脂が好ましい。
【0090】
前記テルペン系樹脂は、テルペンを構成単位として含むポリマーであり。例えば、テルペン化合物を重合して得られるポリテルペン樹脂、テルペン化合物と芳香族化合物とを重合して得られる芳香族変性テルペン樹脂などが挙げられる。芳香族変性テルペン樹脂としては、テルペン化合物及びフェノール系化合物を原料とするテルペンフェノール樹脂や、テルペン化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンスチレン樹脂、テルペン化合物、フェノール系化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンフェノールスチレン樹脂も使用できる。なお、テルペン化合物としては、α-ピネン、β-ピネンなど、フェノール系化合物としては、フェノール、ビスフェノールAなど、芳香族化合物としては、スチレン系化合物(スチレン、α-メチルスチレンなど)が挙げられる。
【0091】
前記アクリル系樹脂は、アクリル系モノマーを構成単位として含むポリマーである。例えば、カルボキシル基を有し、芳香族ビニルモノマー成分とアクリル系モノマー成分とを共重合して得られる、スチレンアクリル樹脂等のスチレンアクリル系樹脂などが挙げられる。なかでも、無溶剤型カルボキシル基含有スチレンアクリル系樹脂を好適に使用できる。
【0092】
可塑剤としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、RutgersChemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、ENEOS(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0093】
(他の成分)
前記ゴム組成物は、老化防止剤を含有してもよい。
老化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤等が挙げられる。市販品としては、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0094】
前記ゴム組成物において、老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは6質量部以下、更に好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0095】
前記ゴム組成物は、ワックスを含有してもよい。
ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックス等が挙げられる。市販品としては、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0096】
前記ゴム組成物において、ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは6質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0097】
前記ゴム組成物は、ステアリン酸を含有してもよい。
ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、市販品としては、日油(株)、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0098】
前記ゴム組成物において、ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは6質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0099】
前記ゴム組成物は、硫黄を含有してもよい。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に架橋剤として用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄等が挙げられる。市販品としては、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0100】
前記ゴム組成物において、硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは1.5質量部以上であり、また、好ましくは3.5質量部以下、より好ましくは2.8質量部以下、更に好ましくは2.5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0101】
前記ゴム組成物は、加硫促進剤を含有してもよい。
加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N′-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。市販品としては、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0102】
前記ゴム組成物において、加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上、更に好ましくは1.0質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは7質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0103】
前記ゴム組成物には、上記成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤、例えば、有機過酸化物等を更に配合してもよい。これらの添加剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1~200質量部が好ましい。
【0104】
前記ゴム組成物は、公知の方法を用いて製造でき、例えば、前述の各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法などにより製造できる。
【0105】
なかでも、効果がより得られる観点から、前記ゴム組成物は、前記有機繊維と、前記芳香族ビニル化合物と不飽和カルボン酸との共重合体、及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種とを混合し、混合物を作製する工程(工程1)、得られた混合物とゴムラテックスとを混合し、配合ラテックスを作製する工程(工程2)、並びに、得られた配合ラテックスを凝固させる工程(工程3)を含む製造方法により作製することが望ましい。なお、該製造方法は、上記工程を含む限り、その他の工程を含んでいてもよく、また、上記工程をそれぞれ、1回行ってもよいし、複数回繰り返し行ってもよい。
【0106】
工程1において、前記有機繊維と、前記共重合体及びその誘導体とを混合し、混合物を作製する方法としては、例えば、高速ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミル、ブレンダ―ミルなどの公知の撹拌装置を用いて、前記有機繊維の分散液と、前記共重合体及びその誘導体とを混合する方法などが挙げられる。混合物を作製する際の温度や時間は、各成分が十分に混合するまで、適宜設定でき、例えば、10~40℃で3~120分が好ましく、15~30℃で5~90分がより好ましい。
【0107】
前記有機繊維の分散液は、公知の方法で製造でき、例えば、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミルなどの混合機を用いて有機繊維を水中に分散させることで調製できる。調製の際の温度や時間は、分散状態を考慮し、適宜設定できる。ここで、分散液中の有機繊維の含有量(固形分)は特に限定されないが、分散液(100質量%)中での均一分散性の点から、0.1~20質量%、好ましくは0.2~10質量%、より好ましくは0.3~5質量%である。
【0108】
工程2は、工程1で得られた前記有機繊維と前記共重合体及びその誘導体とを含む混合物と、ゴムラテックスとを混合し、配合ラテックスを作製する工程であるが、使用可能なゴムラテックスとしては、例えば、天然ゴムラテックス、合成ジエン系ゴムラテックス(ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、イソプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレン酢酸ビニルゴム、クロロプレンゴム、ビニルピリジンゴム、ブチルゴムなどのラテックス)などのジエン系ゴムラテックスが好適に使用できる。これらゴムラテックスは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、天然ゴムラテックス、SBRラテックス、BRラテックス、イソプレンゴムラテックスがより好ましく、天然ゴムラテックスが更に好ましい。
【0109】
ゴムラテックスのpHは、好ましくは8.5以上、より好ましくは9.5以上である。該pHが8.5未満では、ゴムラテックスが不安定となり、凝固しやすい傾向がある。ゴムラテックスのpHは、好ましくは12以下、より好ましくは11以下である。該pHが12を超えると、ゴムラテックスが劣化するおそれがある。
【0110】
ゴムラテックスは、従来公知の製法で調製でき、各種市販品も使用できる。なお、ゴムラテックスとしては、ゴム固形分が10~80質量%のものを使用することが好ましい。より好ましくは20~60質量%である。
【0111】
工程2の混合では、前記混合物とゴムラテックスとを混合し、均一な分散液になるまで充分に攪拌することで、配合ラテックスを調製できる。混合方法としては、ブレンダーミルなどの公知の攪拌装置にゴムラテックスを入れ、撹拌しながら、前記混合物を滴下する方法や、前記混合物を撹拌しながら、これにゴムラテックスを滴下する方法などが挙げられる。
【0112】
作製される配合ラテックスのpHは、好ましくは9.0以上、より好ましくは9.5以上である。該pHが9.0未満では、配合ラテックスが不安定になる傾向がある。配合ラテックスのpHは、好ましくは12以下、より好ましくは11.5以下である。該pHが12を超えると、配合ラテックスが劣化するおそれがある。
【0113】
工程2では、有機繊維の分散性の観点から、ゴムラテックスのゴム固形分100質量部に対する有機繊維の含有量が1~150質量部となるように前記混合物を混合することが望ましい。該有機繊維の含有量は、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上であり、また、好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。
【0114】
工程2における混合温度及び混合時間は、均一な配合ラテックスが調製できる点から、好ましくは10~40℃で3~120分、より好ましくは15~30℃で5~90分である。
【0115】
工程3では、工程2で得られた配合ラテックスを凝固させるが、例えば、配合ラテックスのpHを3~5(好ましくは3~4)に調整することで、凝固させることができる。pH調整し、配合ラテックスを凝固させる方法としては、通常、酸が使用され、これを配合ラテックスに添加することで凝固される。凝固させるための酸としては、硫酸、塩酸、ギ酸、酢酸などが挙げられる。凝固工程の温度は、10~40℃で行うことが好ましい。
【0116】
また、凝固の状態(凝固した凝集粒子の大きさ)を制御する目的で、凝集剤を添加しても良い。凝集剤として、カチオン性高分子などを用いることができる。
【0117】
得られた凝固物(凝集ゴム及びナノセルロースを含む凝集物)を公知の方法でろ過、乾燥させ、更に乾燥後、2軸ロール、バンバリーなどでゴム練りを行うことで、有機繊維がゴムマトリックスに均一に分散した複合体を得ることができる。
【0118】
なお、前記複合体は、効果を阻害しない範囲で他の成分を含んでもよく、効果がより得られる観点から、例えば、前記可塑剤を含むことが好ましく、液体可塑剤を含むことがより好ましく、オイルを含むことが更に好ましい。
【0119】
前記複合体が前記可塑剤を含む場合、例えば、工程1、2の少なくともいずれかの工程で更に可塑剤を混合することで、可塑剤を含む複合体を作製できる。この場合、ゴムラテックスのゴム固形分100質量部に対する可塑剤の含有量が1~100質量部となるように可塑剤を混合することが望ましい。該可塑剤の含有量は、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上であり、また、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。なかでも、工程1で可塑剤を更に混合することが望ましい。なお、液体可塑剤、オイルの含有量も同様の範囲が望ましい。
【0120】
上記複合体は、マスターバッチとして使用でき、例えば、上記複合体、それ以外の材料をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法など、公知の方法により、ゴム組成物を製造できる。
【0121】
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常50~200℃、好ましくは80~190℃であり、混練時間は、通常30秒~30分、好ましくは1分~30分である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常100℃以下、好ましくは室温~80℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫などの加硫処理が施される。加硫温度としては、通常120~200℃、好ましくは140~180℃である。
【0122】
前記ゴム組成物は、タイヤ用部材として使用される。
本発明のタイヤにおいて、効果がより得られる観点から、前記ゴム組成物で構成されたタイヤ用部材は、タイヤ周方向の30℃における複素弾性率(30℃E*a(MPa))及びタイヤ周方向の30℃における損失正接(30℃tanδa)が、下記式を満たすことが望ましい。
30℃E*a/30℃tanδa≧35
30℃E*a/30℃tanδaは、好ましくは40以上、より好ましくは45以上、更に好ましくは50以上、特に好ましくは55以上である。
【0123】
効果がより得られる観点から、前記ゴム組成物で構成されたタイヤ用部材は、タイヤ周方向の30℃における複素弾性率(30℃E*a(MPa))及びタイヤ周方向の30℃における損失正接(30℃tanδa)が、下記式を満たすことが望ましい。
30℃E*a/30℃tanδa≦75
30℃E*a/30℃tanδaは、好ましくは72以下、より好ましくは70以下、更に好ましくは65以下、特に好ましくは60以下である。
【0124】
本発明のタイヤにおいて、前記ゴム組成物で構成されたタイヤ用部材が前記式を満たす場合、高速走行時の操縦安定性及び低燃費性の総合性能がより向上する。
このような作用効果が得られるメカニズムは明らかではないが、タイヤ周方向の30℃E*を高くすることでタイヤ周方向の剛性を向上しつつ、タイヤ周方向の30℃tanδaを低くすることで転がり抵抗が低下し、更に30℃E*a/30℃tanδaを所定以下に調整することで、高速走行時の操縦安定性、低燃費性のバランスも確保される。従って、高速走行時の操縦安定性及び低燃費性の総合性能が向上すると推察される。
【0125】
効果がより得られる観点から、前記ゴム組成物で構成されたタイヤ用部材は、タイヤ周方向の30℃における損失正接(30℃tanδa)及びタイヤ半径方向の30℃における損失正接(30℃tanδb)が下記式を満たすことが望ましい。
30℃tanδa/30℃tanδb≧1.00
30℃tanδa/30℃tanδbは、好ましくは1.01以上、より好ましくは1.02以上、更に好ましくは1.03以上、特に好ましくは1.05以上である。上限は特に限定されないが、好ましくは1.20以下、より好ましくは1.15以下である。
【0126】
本発明のタイヤにおいて、前記ゴム組成物で構成されたタイヤ用部材が前記式を満たす場合、高速走行時の操縦安定性及び低燃費性の総合性能がより向上する。
このような作用効果が得られるメカニズムは明らかではないが、タイヤ周方向の30℃tanδaを低くすることで、転がり抵抗が低下し発熱が抑えられる。その結果、高速走行時の操縦安定性及び低燃費性の総合性能が向上すると推察される。
【0127】
効果がより得られる観点から、前記ゴム組成物で構成されたタイヤ用部材は、タイヤ周方向の30℃における複素弾性率(30℃E*a(MPa))が、下記式を満たすことが望ましい。
30℃E*a≧5.0MPa
30℃E*aは、好ましくは5.7MPa以上、より好ましくは9.0MPa以上、更に好ましくは9.7MPa以上、特に好ましくは10.7MPa以上である。上限は特に限定されないが、好ましくは15.0MPa以下、より好ましくは14.0MPa以下、更に好ましくは13.0MPa以下である。
【0128】
本発明のタイヤにおいて、前記ゴム組成物で構成されたタイヤ用部材が前記式を満たす場合、高速走行時の操縦安定性及び低燃費性の総合性能がより向上する。
このような作用効果が得られるメカニズムは明らかではないが、タイヤ周方向の30℃E*を高くすることでタイヤ周方向の剛性が向上し、その結果、高速走行時の操縦安定性及び低燃費性の総合性能が向上すると推察される。
【0129】
効果がより得られる観点から、前記ゴム組成物で構成されたタイヤ用部材は、タイヤ周方向の30℃における損失正接(30℃tanδa)が、下記式を満たすことが望ましい。
30℃tanδa≧0.120
30℃tanδaは、好ましくは0.140以上、より好ましくは0.160以上、更に好ましくは0.180以上、特に好ましくは0.190以上である。上限は特に限定されないが、好ましくは0.500以下、より好ましくは0.400以下、更に好ましくは0.300以下、特に好ましくは0.210以下である。
【0130】
本発明のタイヤにおいて、前記ゴム組成物で構成されたタイヤ用部材が前記式を満たす場合、高速走行時の操縦安定性及び低燃費性の総合性能がより向上する。
このような作用効果が得られるメカニズムは明らかではないが、タイヤ周方向の30℃tanδaを低くすることで発熱が抑えられる。その結果、高速走行時の操縦安定性及び低燃費性の総合性能が向上すると推察される。
【0131】
このように、前記タイヤは、式「30℃E*a/30℃tanδa≧35」、「30℃E*a/30℃tanδa≧45」、「30℃E*a/30℃tanδa≦72」、「30℃E*a/30℃tanδa≦65」、「30℃E*a≧5.0MPa」、「30℃tanδa≧0.120」の少なくとも1つを満たすタイヤ用部材を備える構成にすることにより、高速走行時の操縦安定性及び低燃費性の総合性能を向上するという課題(目的)をより解決できるものである。すなわち、これらの式は課題(目的)を規定したものではなく、本願の課題は、高速走行時の操縦安定性及び低燃費性の総合性能を向上することであり、そのための解決手段として当該パラメーターを満たすような構成にすることが望ましいものである。
【0132】
なお、本明細書において、「30℃E*」、「30℃tanδ」は、温度30℃、初期歪5%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モードの条件下で測定した複素弾性率、損失正接である。そして、ゴム組成物で構成されたタイヤ用部材の「30℃E*」、「30℃tanδ」は、加硫後のゴム組成物(タイヤ用部材)の30℃におけるE*、30℃におけるtanδを意味し、加硫後のゴム組成物(タイヤ用部材)に対し、粘弾性試験を実施することで得られる値である。
【0133】
30℃tanδは、ゴム組成物に配合される薬品(特に、有機繊維、芳香族ビニル化合物と不飽和カルボン酸との共重合体及びその誘導体、充填剤、ゴム成分、オイルや樹脂などの可塑剤、硫黄、加硫促進剤、シランカップリング剤)の種類や量によって調整することが可能である。具体的には、有機繊維、前記共重合体及びその誘導体を使用したり、ゴム成分とこれらの成分を含む混合物(マスターバッチ)を使用したり、充填剤量を増量したり、オイル量を増量したり、硫黄量を減量したり、加硫促進剤量を減量したり、シランカップリング剤量を減量したりすることにより、30℃tanδは大きくなる傾向がある。
【0134】
30℃E*は、ゴム組成物に配合される薬品(特に、有機繊維、芳香族ビニル化合物と不飽和カルボン酸との共重合体及びその誘導体、ゴム成分、充填剤、オイルや樹脂などの可塑剤)の種類や量によって調整することが可能である。具体的には、有機繊維、前記共重合体及びその誘導体を使用したり、ゴム成分とこれらの成分を含む混合物(マスターバッチ)を使用したり、軟化剤の量を減量したり、充填剤の量を増量したり、硫黄量を増量したり、加硫促進剤を増量することにより、30℃E*は大きくなる傾向がある。
【0135】
また、前記のとおり、前記ゴム組成物で構成されたタイヤ用部材は、例えば、タイヤ周方向の30℃における損失正接(30℃tanδa)及びタイヤ半径方向の30℃における損失正接(30℃tanδb)が「30℃tanδa/30℃tanδb≧1.00」を満たすもの、すなわち、本発明のタイヤは、タイヤ周方向とタイヤ半径方向とで異なる物性を有するタイヤ用部材を備えたものであることが望ましいが、このようなタイヤ用部材は、例えば、各成分を含むゴム組成物を押出成形して有機繊維が押出方向に配向したものを作製し、タイヤに適用することで、物性の異方性を持つタイヤを製造できる。
【0136】
なお、本発明において、「タイヤ周方向」とは、タイヤの回転方向であり、「タイヤ半径方向」とは、タイヤ周方向に直交する方向である。
【0137】
タイヤ用部材としては特に限定されず、トレッド(キャップトレッド)、サイドウォール、ベーストレッド、ビードエイペックス、クリンチエイペックス、インナーライナー、アンダートレッド、ブレーカートッピング、プライトッピング等、任意のタイヤの各部材が挙げられる。なかでも、効果がより得られる観点から、サイドウォール、トレッドに適用することが好ましく、サイドウォールに適用することがより好ましい。
【0138】
上記タイヤ用部材を備えたタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法により製造される。すなわち、例えば、上記複合体、それ以外の材料を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤ用部材の形状に合わせて押し出し加工し、他のタイヤ用部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造できる。
【0139】
タイヤとしては、空気入りタイヤ、非空気入りタイヤなどが挙げられる。なかでも、空気入りタイヤが好ましい。例えば、夏用タイヤ(サマータイヤ)、冬用タイヤ(スタッドレスタイヤ、スノータイヤ、スタッドタイヤなど)として好適に使用できる。タイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック、バスなどの重荷重用タイヤ、ライトトラック用タイヤ、二輪自動車用タイヤ、レース用タイヤ(高性能タイヤ)などに使用可能である。
【実施例0140】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0141】
以下、ミクロフィブリル化植物繊維分散液(CNF水分散液)の調製、CNF含有混合物の調製、CNF含有複合体の調製で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
ミクロフィブリル化植物繊維:(株)スギノマシン製のバイオマスナノファイバー(製品名「BiNFi-s セルロース」、固形分2質量%、水分98質量%、平均繊維径20~50nm、平均繊維長500~1000nm、結晶化度70%)
TEMPO:2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル
臭化ナトリウム:富士フイルム和光純薬(株)製
次亜塩素酸ナトリウム:東京化成工業(株)製
NaOH:富士フイルム和光純薬(株)製のNaOH
スチレンマレイン酸共重合体1:第一工業製薬社製のDKSディスコートN-10(下記式で示されるポリマーを含む組成物、下記式で示されるポリマーの含有率:約30%)
【化1】

スチレンマレイン酸共重合体2:第一工業製薬社製のDKSディスコートN-15(下記式で示されるポリマーを含む組成物、下記式で示されるポリマーの含有率:約29%)
【化2】
(R:アルキル基)
オイル:日清オイリオ(株)製キャノーラ油
天然ゴムラテックス:Muhibbah LATEKS社から入手したフィールドラテックス
BRラテックス:下記方法で調製
【0142】
なお、BRラテックスは以下の方法で調製した。使用した薬品を以下に示す。
水:蒸留水
乳化剤(1):ハリマ化成(株)製のロジン酸石鹸
乳化剤(2):和光純薬工業(株)製の脂肪酸石鹸
電解質:和光純薬工業(株)製のリン酸ナトリウム
ブタジエン:高千穂化学工業(株)製の1,3-ブタジエン
分子量調整剤:和光純薬工業(株)製のtert-ドデシルメルカプタン
ラジカル開始剤:日油(株)製のパラメンタンヒドロペルオキシド
SFS:和光純薬工業(株)製のソディウム・ホルムアルデヒド・スルホキシレート
EDTA:和光純薬工業(株)製のエチレンジアミン四酢酸ナトリウム
触媒:和光純薬工業(株)製の硫酸第二鉄
重合停止剤:和光純薬工業(株)製のN,N’-ジメチルジチオカルバメート
【0143】
(ブタジエンゴムラテックスの調製)
表1の仕込み組成に従い、撹拌機付き耐圧反応器に水、乳化剤(1)、乳化剤(2)、電解質、ブタジエン及び分子量調整剤を仕込んだ。反応器温度を5℃とし、ラジカル開始剤及びSFSを溶解した水溶液と、EDTA及び触媒を溶解した水溶液とを反応器に添加して重合を開始した。重合開始から5時間後、重合停止剤を添加して反応を停止させ、ブタジエンゴムラテックスを得た。
【0144】
(ミクロフィブリル化植物繊維分散液(CNF水分散液)の調製)
ミクロフィブリル化植物繊維10g、TEMPO150mg、臭化ナトリウム1000mgを水1000mlに分散させた後、15質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、1gのミクロフィブリル化植物繊維(絶乾)に対して次亜塩素酸ナトリウムの量が5mmolとなるように加えて反応を開始した。反応中は3MのNaOH水溶液を滴下してpHを10.0に保った。pHに変化が見られなくなった時点で反応終了とみなし、反応物をガラスフィルターにてろ過した後、十分な量の水による水洗、ろ過を5回繰り返し、固形分量15質量%の水を含浸させた反応物繊維を得た。更にそれを希釈して1質量%のCNF水分散液を得た。
【0145】
(CNF含有混合物の調製)
調製した1質量%のCNF水分散液に、表2の配合処方に従ってスチレンマレイン酸共重合体1又は2、オイルを所定量添加し、高速ホモジナイザーを用いて室温(20~30℃)で5分間攪拌して、CNF含有混合物(混合液)を得た。
【0146】
(CNF含有複合体の調製)
得られたCNF含有混合物と、天然ゴムラテックス(NRラテックス)、ブタジエンゴムラテックス(BRラテックス)とを、表3の配合処方(ゴム固形分100質量部に対してCNF(固形分)10質量部)に従って混合し、高速ホモジナイザーを用いて室温で5分攪拌し、pH10.2の配合ラテックスを得た。次いで、室温下で2質量%ギ酸水溶液を加え、pH3~4に調整し、凝固物を得た。得られた凝固物をろ過し、乾燥してCNF含有複合体(マスターバッチ)を得た。
なお、表2で作製したCNF含有混合物1、2、3、4、5、6、7、8を、それぞれ表3の実施例1、2、3、4、5、6、7、比較例1においてマスターバッチ(MB1、2、3、4、5、6、7、8)の作製に用いた。
【0147】
以下、試験用タイヤの製造で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
各CNF含有複合体(MB1~MB8):前記CNF含有複合体の調製で製造
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN550(NSA:42m/g)
シリカ:エボニックデグッサ社製のUltrasil VN3(NSA:175m/g、平均粒子径:18nm)
シランカップリング剤:エボニックデグッサ社製のSi69(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
老化防止剤:精工化学(株)製のオゾノン6C(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
【0148】
<試験用タイヤの製造>
表3に示す配合内容に従い、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物をサイドウォールの形状に成形し、他のタイヤ用部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、150℃の条件下で12分間プレス加硫し、試験用タイヤ(サイズ:175/60R18)を製造した。
【0149】
得られた試験用タイヤを用いて下記評価を行い、結果を表3に示した。
なお、基準比較例は、比較例1とした。
【0150】
<粘弾性試験>
各試験用タイヤのサイドウォールのゴム層内部からタイヤ周方向及びタイヤ半径方向が長辺となる様に長さ40mm×幅3mm×厚さ0.5mmの粘弾性測定サンプルをそれぞれ採取し、各サンプルの30℃tanδa(タイヤ周方向)及び30℃E*a(タイヤ周方向)、30℃tanδb(タイヤ半径方向)を、TAインスツルメント社製のRSAシリーズを用いて、温度30℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モードの条件下で測定した。
【0151】
<高速走行時の操縦安定性>
上記試験用タイヤを全輪に装着した車両で、ドライ路面のテストコースを走行するタイムアタックを5回行い、ベストタイムを測定した。測定値から、市販のタイヤを用いた場合のタイム(最も遅いタイム)に対する短縮時間を算出し、基準比較例を100として指数表示した。指数が大きいほど、短縮時間が大きく(ベストタイムが短く)、高速走行時の操縦安定性(ドライ操縦安定性)に優れることを示す。
【0152】
<低燃費性>
転がり抵抗試験機を用い、各試験用タイヤを時速80kmで走行させたときの転がり抵抗を測定し、基準比較例を100として指数表示した。指数が大きいほど、転がり抵抗が小さく、低燃費性が良好であることを示す。
【0153】
<総合性能>
前記高速走行時の操縦安定性の評価、前記低燃費性の評価で得られる2つの指数の合計により、高速走行時の操縦安定性及び低燃費性の総合性能を評価した。数値が大きいほど、総合性能が良好である。
【0154】
【表1】
【0155】
【表2】
【0156】
【表3】
【0157】
本発明(1)は、有機繊維と、芳香族ビニル化合物と不飽和カルボン酸との共重合体、及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種と、充填剤とを含むゴム組成物、で構成されたタイヤ用部材を有するタイヤである。
【0158】
本発明(2)は、前記タイヤ用部材のタイヤ周方向の30℃における複素弾性率(30℃E*a(MPa))及びタイヤ周方向の30℃における損失正接(30℃tanδa)が下記式を満たす本発明(1)記載のタイヤである。
30℃E*a/30℃tanδa≧35
【0159】
本発明(3)は、前記タイヤ用部材のタイヤ周方向の30℃における複素弾性率(30℃E*a(MPa))及びタイヤ周方向の30℃における損失正接(30℃tanδa)が下記式を満たす本発明(1)又は(2)記載のタイヤである。
30℃E*a/30℃tanδa≧45
【0160】
本発明(4)は、前記タイヤ用部材のタイヤ周方向の30℃における複素弾性率(30℃E*a(MPa))及びタイヤ周方向の30℃における損失正接(30℃tanδa)が下記式を満たす本発明(1)~(3)のいずれかに記載のタイヤである。
30℃E*a/30℃tanδa≦72
【0161】
本発明(5)は、前記タイヤ用部材のタイヤ周方向の30℃における複素弾性率(30℃E*a(MPa))及びタイヤ周方向の30℃における損失正接(30℃tanδa)が下記式を満たす本発明(1)~(4)のいずれかに記載のタイヤである。
30℃E*a/30℃tanδa≦65
【0162】
本発明(6)は、前記芳香族ビニル化合物がスチレンである本発明(1)~(5)のいずれかに記載のタイヤである。
【0163】
本発明(7)は、前記共重合体及びその誘導体が、マレイン酸、無水マレイン酸及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物由来の構成単位を有する本発明(1)~(6)のいずれかに記載のタイヤである。
【0164】
本発明(8)は、前記タイヤ用部材のタイヤ周方向の30℃における損失正接(30℃tanδa)及びタイヤ半径方向の30℃における損失正接(30℃tanδb)が下記式を満たす本発明(1)~(7)のいずれかに記載のタイヤである。
30℃tanδa/30℃tanδb≧1.00
【0165】
本発明(9)は、前記有機繊維がバイオマス由来の有機繊維である本発明(1)~(8)のいずれかに記載のタイヤである。
【0166】
本発明(10)は、前記有機繊維が、セルロースナノファイバー及びセルロースナノクリスタルからなる群より選択される少なくとも1種である本発明(1)~(9)のいずれかに記載のタイヤである。
【0167】
本発明(11)は、前記共重合体及びその誘導体が、エステル基及び/又はアニオン性基を有する本発明(1)~(10)のいずれかに記載のタイヤである。
【0168】
本発明(12)は、前記ゴム組成物におけるゴム成分100質量部に対する前記充填剤の含有量が10~55質量部である本発明(1)~(11)のいずれかに記載のタイヤである。
【0169】
本発明(13)は、前記共重合体及びその誘導体が、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸のエステル及び不飽和カルボン酸の金属塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物由来の構成単位を有する本発明(1)~(12)のいずれかに記載のタイヤである。
【0170】
本発明(14)は、前記ゴム組成物が、平均粒子径が18nm以下のシリカを含む本発明(1)~(13)のいずれかに記載のタイヤである。
【0171】
本発明(15)は、前記ゴム組成物が、ブタジエンゴムを含む本発明(1)~(14)のいずれかに記載のタイヤである。