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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060815
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】レバー式コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/631 20060101AFI20240425BHJP
【FI】
H01R13/631
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168343
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 寿紘
(72)【発明者】
【氏名】間瀬 強
(72)【発明者】
【氏名】菊池 孝洋
(72)【発明者】
【氏名】高木 耀一
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA05
5E021FA09
5E021FA14
5E021FA16
5E021FB02
5E021FB07
5E021FC38
5E021FC40
5E021HB02
5E021HB04
5E021HB05
(57)【要約】
【課題】レバーの誤回転を単一のリブで防止することで、レバー式コネクタの省スペース化を実現する。
【解決手段】本開示のレバー式コネクタ10は、ハウジング20と、ハウジング20に回転可能に取り付けられたレバー40と、ハウジング20の背面側に取り付けられたカバー30と、を備え、レバー40は、嵌合開始位置と嵌合完了位置の間を回転可能とされ、嵌合開始位置から嵌合完了位置に移動すると相手側コネクタ50に向けて嵌合し、嵌合完了位置から嵌合開始位置に移動すると相手側コネクタ50から離脱し、カバー30は、嵌合開始位置にあるレバー40が嵌合完了位置とは反対側に誤回転することを抑制する第1受け部36Aと、嵌合完了位置にあるレバー40が嵌合開始位置とは反対側に誤回転することを抑制する第2受け部36Bと、を備え、第1受け部36Aと第2受け部36Bは単一のリブ36で構成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手側コネクタに嵌合可能なレバー式コネクタであって、
ハウジングと、
前記ハウジングに回転可能に取り付けられたレバーと、
前記ハウジングの背面側に取り付けられたカバーと、を備え、
前記レバーは、嵌合開始位置と嵌合完了位置の間を回転可能とされ、前記嵌合開始位置から前記嵌合完了位置に移動すると前記相手側コネクタに向けて嵌合し、前記嵌合完了位置から前記嵌合開始位置に移動すると前記相手側コネクタから離脱し、
前記カバーは、前記嵌合開始位置にある前記レバーが前記嵌合完了位置とは反対側に誤回転することを抑制する第1受け部と、前記嵌合完了位置にある前記レバーが前記嵌合開始位置とは反対側に誤回転することを抑制する第2受け部と、を備え、
前記第1受け部と前記第2受け部は単一のリブで構成されている、レバー式コネクタ。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記レバーを回転可能に支持する軸部を有し、
前記レバーは、前記嵌合開始位置で前記第1受け部に当接する第1当接部と、前記嵌合完了位置で前記第2受け部に当接する第2当接部と、を備え、
前記相手側コネクタとの嵌合方向と交差する方向において、前記第1当接部は前記軸部の一方側に配され、前記第2当接部は前記軸部の他方側に配されている、請求項1に記載のレバー式コネクタ。
【請求項3】
前記カバーは、前記ハウジングの背面から引き出された電線をその引き出し方向とは異なる方向に導出させる導出口を有し、
前記リブは、前記カバーにおける前記導出口とは反対側の壁部に設けられている、請求項1または請求項2に記載のレバー式コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レバー式コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
レバーによる倍力効果を利用して相手側コネクタとの嵌合および離脱を行うコネクタとして、例えば特開2009-266383号公報(下記特許文献1)に記載のレバー式コネクタが知られている。このレバー式コネクタは、ハウジングと、ハウジングに対して回転させることが可能なレバーと、ハウジングの背面側に取り付けられ、ハウジングから導出された電線を収容するワイヤカバーと、を備えている。レバーは、嵌合開始位置と嵌合完了位置との間を回転させることが可能となっている。
【0003】
ワイヤカバーの左側には、第一抑止部が設けられている。また、ワイヤカバーの右側には、第二抑止部が設けられている。第一抑止部は、嵌合開始位置に配置されたレバーがそれ以上左側(嵌合完了位置とは反対側)に誤回転されることを抑制する。第二抑止部は、嵌合完了位置に配置されたレバーがそれ以上右側(嵌合開始位置とは反対側)に誤回転されることを抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-266383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のレバー式コネクタでは、誤回転を抑制するための第一抑止部と第二抑止部がワイヤカバーの異なる箇所にそれぞれ設けられているため、ワイヤカバーが大型化し、レバー式コネクタ全体の省スペース化には不利である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のレバー式コネクタは、相手側コネクタに嵌合可能なレバー式コネクタであって、ハウジングと、前記ハウジングに回転可能に取り付けられたレバーと、前記ハウジングの背面側に取り付けられたカバーと、を備え、前記レバーは、嵌合開始位置と嵌合完了位置の間を回転可能とされ、前記嵌合開始位置から前記嵌合完了位置に移動すると前記相手側コネクタに向けて嵌合し、前記嵌合完了位置から前記嵌合開始位置に移動すると前記相手側コネクタから離脱し、前記カバーは、前記嵌合開始位置にある前記レバーが前記嵌合完了位置とは反対側に誤回転することを抑制する第1受け部と、前記嵌合完了位置にある前記レバーが前記嵌合開始位置とは反対側に誤回転することを抑制する第2受け部と、を備え、前記第1受け部と前記第2受け部は単一のリブで構成されている、レバー式コネクタである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、レバーの誤回転を単一のリブで防止することで、レバー式コネクタの省スペース化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態1においてレバー式コネクタを右斜め後方から見た斜視図である。
図2図2は、レバー式コネクタを左斜め後方から見た斜視図である。
図3図3は、レバーが嵌合開始位置にあるレバー式コネクタの右側面図である。
図4図4は、レバーが嵌合完了位置にあるレバー式コネクタの右側面図である。
図5図5は、レバー式コネクタがコネクタアセンブリ工程からハーネス製造工程に出荷されるコネクタ出荷状態を示す斜視図である。
図6図6は、ハウジングの背面側にカバーを右側方から取り付ける様子を示す斜視図である。
図7図7は、図6の状態からハウジングの背面側にカバーを取り付けた状態を示す斜視図である。
図8図8は、図7の状態のレバーを嵌合完了位置から嵌合開始位置に移動させた状態を示す斜視図である。
図9図9は、車両組付工程においてレバー式コネクタが相手側コネクタの嵌合凹部に嵌合したコネクタ嵌合状態を示す斜視図である。
図10図10は、レバーが嵌合開始位置にあるレバー式コネクタの断面図である。
図11図11は、レバーが嵌合完了位置にあるレバー式コネクタの断面図である。
図12図12は、実施形態1のレバー式コネクタの左出し用カバーを右出し用カバーに変えたレバー式コネクタを左斜め後方から見た斜視図である。
図13図13は、実施形態2のレバー式コネクタにおいて、相手側コネクタに嵌合した様子を示す平面図である。
図14図14は、実施形態3のレバー式コネクタにおいて、相手側コネクタに嵌合する途中の様子を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示のレバー式コネクタは、相手側コネクタに嵌合可能なレバー式コネクタであって、ハウジングと、前記ハウジングに回転可能に取り付けられたレバーと、前記ハウジングの背面側に取り付けられたカバーと、を備え、前記レバーは、嵌合開始位置と嵌合完了位置の間を回転可能とされ、前記嵌合開始位置から前記嵌合完了位置に移動すると前記相手側コネクタに向けて嵌合し、前記嵌合完了位置から前記嵌合開始位置に移動すると前記相手側コネクタから離脱し、前記カバーは、前記嵌合開始位置にある前記レバーが前記嵌合完了位置とは反対側に誤回転することを抑制する第1受け部と、前記嵌合完了位置にある前記レバーが前記嵌合開始位置とは反対側に誤回転することを抑制する第2受け部と、を備え、前記第1受け部と前記第2受け部は単一のリブで構成されている、レバー式コネクタである。
【0010】
上記のレバー式コネクタは、レバーを嵌合開始位置から嵌合完了位置に移動させることで相手側コネクタに向けて嵌合し、レバーを嵌合完了位置から嵌合開始位置に移動させることで相手側コネクタから離脱する。ここで、嵌合開始位置にあるレバーが嵌合完了位置とは反対側に誤回転しようとした場合、第1受け部によって誤回転が抑制される。また、嵌合完了位置にあるレバーが嵌合開始位置とは反対側に誤回転しようとした場合、第2受け部によって誤回転が抑制される。
【0011】
ここで、第1受け部と第2受け部は単一のリブで構成されているから、第1受け部と第2受け部がカバーの異なる箇所に別々に設けられている場合と比較して、カバーを省スペース化でき、レバー式コネクタ全体としても省スペース化できる。したがって、レバーの誤回転を単一のリブで防止することで、レバー式コネクタの省スペース化を実現できる。
【0012】
(2)前記ハウジングは、前記レバーを回転可能に支持する軸部を有し、前記レバーは、前記嵌合開始位置で前記第1受け部に当接する第1当接部と、前記嵌合完了位置で前記第2受け部に当接する第2当接部と、を備え、前記相手側コネクタとの嵌合方向と交差する方向において、前記第1当接部は前記軸部の一方側に配され、前記第2当接部は前記軸部の他方側に配されていることが好ましい。
第1当接部は軸部の一方側に配され、第2当接部は軸部の他方側に配されているから、第1当接部がリブの第1受け部から離れる方向に移動すると、第2当接部がリブの第2受け部に近づく方向に移動する。これとは逆に、第2当接部がリブの第2受け部から離れる方向に移動すると、第1当接部がリブの第1受け部に近づく方向に移動する。したがって、単一のリブによってレバーの誤回転を抑制できる。
【0013】
(3)前記カバーは、前記ハウジングの背面から引き出された電線をその引き出し方向とは異なる方向に導出させる導出口を有し、前記リブは、前記カバーにおける前記導出口とは反対側の壁部に設けられていることが好ましい。
カバーに導出口を設けると、導出口の周辺部では強度が低下することが想定される。その点、リブはカバーにおける導出口とは反対側の壁部に設けられているから、強度低下の影響を受けにくくなり、レバーの誤回転を確実に抑制できる。
【0014】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のレバー式コネクタ10の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0015】
<実施形態1>
実施形態1を図1から図11の図面を参照しながら説明する。レバー式コネクタ10が嵌合可能な相手側コネクタ50は、回路基板(図示せず)に取り付けられた基板用コネクタとされている。本実施形態では1つの相手側コネクタ50に対して複数のレバー式コネクタ10が嵌合可能とされている。図1等においては、3つのレバー式コネクタ10が相手側コネクタ50に嵌合可能な場合を例示している。
【0016】
[相手側コネクタ]
相手側コネクタ50は、図9に示すように、相手側ハウジング51と、相手側ハウジング51に保持された複数の相手側端子52と、を備えている。相手側ハウジング51は合成樹脂製で、全体として横長の矩形状とされている。相手側ハウジング51は、レバー式コネクタ10が内部に嵌合可能な複数の嵌合凹部53を備えている。
【0017】
嵌合凹部53の左右両側を構成する両側壁53Aには一対のカムピン54が設けられている。一対のカムピン54は各側壁53Aに1つずつ突出して設けられ、左右対称となるように配されている。カムピン54は円柱状に形成されている。
【0018】
相手側端子52は金属製の針状端子によって構成され、嵌合凹部53を構成する奥壁53Bを前後方向に貫通する態様で奥壁53Bに保持されている。相手側端子52の一端は奥壁53Bから前方に突出し、相手側端子52の他端は奥壁53Bから後方に突出した後、下方に向けて屈曲されている。相手側端子52の他端は回路基板のスルーホール内に挿入されて回路基板に固定されるプレスフィット端子とされている。
【0019】
[レバー式コネクタ]
レバー式コネクタ10は、図8に示すように、ハウジング20と、カバー30と、レバー40と、を備えている。レバー40は、図8に示す嵌合開始位置と図7に示す嵌合完了位置との間を回転可能とされている。レバー40が嵌合開始位置から嵌合完了位置に移動するとレバー式コネクタ10が相手側コネクタ50に向けて嵌合し、逆にレバー40が嵌合完了位置から嵌合開始位置に移動するとレバー式コネクタ10が相手側コネクタ50から離脱する。
【0020】
レバー40の後述する操作レバー42は、図4に示すように、嵌合開始位置ではカバー30の上方に位置している。レバー40の操作レバー42は、図3に示すように、嵌合完了位置ではハウジング20の後端部の上方に位置している。すなわち、嵌合完了位置ではカバー30がレバー40から後方に突出した姿勢で配される。ハウジング20の背面側(後側)には複数の電線(図示せず)を束ねて構成された電線束Wが後方に引き出されている。
【0021】
[ハウジング]
ハウジング20は合成樹脂製で、図6に示すように、略方形のブロック状に形成されている。ハウジング20は、前後方向に貫通する複数のキャビティ21を有している。キャビティ21には端子(図示せず)が収容されており、端子には電線の端末が接続されている。このような電線が各キャビティ21から後方に引き出されており、複数の電線の束である電線束Wが構成されている。電線束Wは、図面の簡略化のため、二点鎖線を用いた1本の太い線として描かれている。
【0022】
ハウジング20には、リテーナ22が下方から装着されている。リテーナ22は、図示はしないものの、各キャビティ21と対応する位置に開口した格子状に形成されている。リテーナ22は仮係止位置(図5に示す位置)と本係止位置(図6に示す位置)との間を移動可能とされている。リテーナ22が仮係止位置にあるときには端子の挿抜を許容し、リテーナ22が本係止位置にあるときには端子の抜止を行うようになっている。
【0023】
ハウジング20の両側面23には一対の軸部24が突出して設けられている。一対の軸部24は各側面23に1つずつ設けられ、左右対称となるように配されている。軸部24の先端には下方に張り出す規制片25が設けられている。図10に示すように、ハウジング20の両側面23において軸部24の上方には、円錐台形状をなす一対のレバー保持ロック26が設けられている。一対のレバー保持ロック26は各側面23に1つずつ設けられ、左右対称となるように配されている。
【0024】
[カバー]
カバー30は合成樹脂製で、図6に示すように、上壁31と、上壁31の下方に対向して配された下壁32と、上壁31の右側縁と下壁32の右側縁とを連結する右側壁33と、を備えている。上壁31の左側縁と下壁32の左側縁との間は、電線束Wを導出する導出口34とされている。
【0025】
上壁31の前縁と下壁32の前縁とには、上下一対の取付リブ35が左右方向にのびて設けられている。一方、ハウジング20の後端部には、図7に示すように、上下一対の取付リブ35を受け入れる上下一対の被取付部27が設けられている。各取付リブ35を各被取付部27に挿入していくと、各取付リブ35の端部に形成されたカバーロック35Aがハウジング20側のロック受け部(図示せず)に係止することでカバー30がハウジング20に保持される。
【0026】
図1および図2に示すように、電線束Wは、ハウジング20から後方に引き出された後、右側壁33に干渉することで左斜め後方に向きを変え、導出口34を通ってカバー30の外部に導出されている。
【0027】
[レバー]
レバー40は合成樹脂製で、一対のカム板41と、一対のカム板41を連結する門形の操作レバー42と、を備えている。カム板41は、軸部24が嵌合する丸孔状の軸受け部47と、規制片25が嵌合する扇形状の規制受け部43と、を有している。軸部24が軸受け部47内に収容されることでレバー40が回転可能に支持される。また、レバー40が嵌合開始位置にあるときに規制受け部43の一端が規制片25に当接することで嵌合完了位置と反対側への誤回転を抑制するとともに、レバー40が嵌合完了位置にあるときに規制受け部43の他端が規制片25に当接することで嵌合開始位置と反対側への誤回転を抑制する。
【0028】
カム板41は、図10に示すように、カムピン54が進入する軌道44を有している。軌道44は、カム板41の外縁において軸受け部47と反対側に開口する入口44Aを有し、入口44Aから終端44Bに向かうにつれて軸受け部47に近づくように形成されている。レバー40が嵌合開始位置にあるときに両コネクタ10、50を浅く嵌合させると、カムピン54が軌道44の入口44Aに進入する。
【0029】
レバー40を嵌合開始位置から嵌合完了位置に移動させると、カムピン54が軌道44の内壁に係合することで両コネクタ10、50の嵌合が進行する。これとは逆に、レバー40を嵌合完了位置から嵌合開始位置に移動させると、カムピン54が軌道44の内壁に係合することで両コネクタ10、50の離脱が進行する。
【0030】
操作レバー42は、カム板41の外縁に連結された一対のアーム部45と、一対のアーム部45の先端部45Aを連結する操作部46と、を備えている。図10に示す嵌合開始位置ではレバー保持ロック26がアーム部45の基端部45Bにセミロック状態で係止することでレバー40が嵌合開始位置から嵌合完了位置に移動することが抑制される。図11に示す嵌合完了位置ではレバー保持ロック26がカム板41の外縁とアーム部45の基端部45Bとの間に形成された空間に収容されることで、レバー40と干渉しないようになっている。
【0031】
[レバーの誤回転抑制機構]
上述したように、レバー式コネクタ10は、嵌合開始位置と嵌合完了位置におけるレバー40の誤回転を抑制する機構として、ハウジング20の規制片25とレバー40の規制受け部43とによる係止構造を備えている。しかしながら、規制片25と規制受け部43の係止構造は軸部24に近い位置にあるため、レバー40に大きな力が作用した場合に、誤回転を抑制できないおそれがある。
【0032】
そこで、本開示のレバー式コネクタ10は、レバー40に大きな力が作用した場合でも誤回転を抑制できる機構として、リブ36がカバー30に設けられている。リブ36は、図10に示すように、カバー30における導出口34と反対側の壁部である右側壁33の前端部に配されている。リブ36は、図10に示す嵌合開始位置でカム板41の外縁に当接する第1受け部36Aと、図11に示す嵌合完了位置でカム板41の外縁に当接する第2受け部36Bと、第1受け部36Aおよび第2受け部36Bに連なるL字状の補強部36Cと、を備えている。
【0033】
第1受け部36Aは前方に向かうほど下方に向かう傾斜面を有し、第2受け部36Bは上下方向にのびる垂直面を有している。第1受け部36Aの前端(下端)と第2受け部36Bの上端とが連結されている。第1受け部36Aの後端(上端)と補強部36Cの上端とが連結されている。第2受け部36Bの下端と補強部36Cの前端とが連結されている。これにより、リブ36は、第1受け部36Aを斜辺とする直角台形状とされている。第2受け部36Bの垂直面は右側壁33の前端と揃うように配されている。
【0034】
一方、カム板41の外縁は、図10に示す嵌合開始位置で第1受け部36Aに当接する第1当接部41Aと、図11に示す嵌合完了位置で第2受け部36Bに当接する第2当接部41Bと、を備えている。図11に示すように、相手側コネクタ50との嵌合方向と直交する上下方向において、第1当接部41Aは軸部24の上側に配され、第2当接部41Bは軸部24の下側に配されている。第1当接部41Aと第2当接部41Bは直線状に連続している。したがって、第1当接部41Aが第1受け部36Aから遠ざかると、第2当接部41Bが第2受け部36Bに近づくようになっている。これとは逆に、第2当接部41Bが第2受け部36Bから遠ざかると、第1当接部41Aが第1受け部36Aに近づくようになっている。
【0035】
図10に示すように、第1受け部36Aは第2受け部36Bよりも長く形成され、第1受け部36Aの傾斜面は、第2受け部36Bの垂直面の約4倍程度の長さを有している。嵌合開始位置ではカム板41の第1当接部41Aが第1受け部36Aの傾斜面に当接することで、嵌合開始位置にあるレバー40が嵌合完了位置とは反対側に誤回転することが抑制されている。また、図11に示す嵌合完了位置ではカム板41の第2当接部41Bが第2受け部36Bの垂直面に当接することで、嵌合完了位置にあるレバー40が嵌合開始位置とは反対側に誤回転することが抑制されている。なお、嵌合完了位置では操作レバー42が相手側ハウジング51の嵌合凹部53の天井壁53Cに前方から当接しているため、これによってもレバー40の誤回転が抑制されている。
【0036】
リブ36は、軸部24の後方に位置する単一のリブ36であって、第1受け部36Aと第2受け部36Bが一体に形成されたリブ36であるため、第1受け部と第2受け部を別々に形成する場合に比べてカバー30の小型化が実現されている。カバー30は導出口34を有しているため、強度低下が懸念されるものの、上下一対の取付リブ35が被取付部27によって強固に保持されているため、カバー30が容易に変形したりすることを回避できるようになっている。このため、レバー40の誤回転によってリブ36が強い力を受けたとしても、レバー40の誤回転を確実に抑制できるようになっている。
【0037】
[レバー式コネクタの取り扱い]
次に、レバー式コネクタの取り扱いについて説明する。図5は、レバー式コネクタ10がコネクタアセンブリ工程からハーネス製造工程に出荷されるコネクタ出荷状態を示している。コネクタ出荷状態ではレバー40は嵌合完了位置にセットされ、リテーナ22は仮係止位置にセットされている。次に、ハーネス製造工程で電線の端末に接続された端子がキャビティ21に後方から挿入される。このとき、レバー40が嵌合完了位置にあるため、端子はレバー40と干渉することなくキャビティ21に挿入できるようになっている。全ての端子がキャビティ21に挿入された後、リテーナ22を仮係止位置から本係止位置に押し込む。これにより、端子がハウジング20に保持される。全ての端子は電線の端末に接続されているため、ハウジング20の背面には電線束Wが後方に引き出されている。
【0038】
図6は、ハウジング20の背面側にカバー30を右側方から取り付ける様子を示している。この状態ではレバー40が嵌合完了位置にセットされたままであるため、カバー30はレバー40と干渉することなくハウジング20の背面側に取り付けできるようになっている。その際、カバー30に導出口34が設けられているため、カバー30は電線束Wと干渉しないようになっている。
【0039】
図7は、図6の状態からハウジング20の背面側にカバー30を取り付けた状態を示している。カバー30の一対の取付リブ35がハウジング20の一対の被取付部27に嵌合して強固に保持されているため、カバー30を取り付ける際に右側壁33が電線束Wに干渉してもカバー30がハウジング20から外れることなく、電線束Wの向きを後方から左斜め後方に屈曲させ、導出口34から電線束Wを外部に導出できる。
【0040】
図8は、図7の状態のレバー40を嵌合完了位置から嵌合開始位置に移動させた状態を示している。この状態では、図10に示すように、レバー保持ロック26がレバー40に干渉しているため、レバー40が嵌合開始位置に保持されている。レバー式コネクタ10は、図8の状態でハーネス製造工程から車両組付工程に出荷される。
【0041】
図9は、車両組付工程においてレバー式コネクタ10が相手側コネクタ50の嵌合凹部53に嵌合したコネクタ嵌合状態を示している。車両組付工程ではレバー式コネクタ10を嵌合凹部53に浅く嵌合させた後、レバー40を嵌合開始位置から嵌合完了位置に移動させることで嵌合操作が行われる。図10に示すように、両コネクタ10、50を手差しによって浅く嵌合させた状態(嵌合仮セット状態)では、カム板41が相手側ハウジング51の天井壁53Cに当接するようになっているため、手差しによってレバー40が嵌合開始位置から嵌合完了位置に向けて勝手に回らないようになっている。手差しからレバー操作へ手を持ち帰ると、両コネクタ10、50間のクリアランスによって天井壁53Cとの当接が解除され、レバー40の回転が許容され、カムピン54が軌道44に引き込まれるようになっている。その後、全てのレバー式コネクタ10が相手側コネクタ50の全ての嵌合凹部53に嵌合することで車両組付工程におけるレバー式コネクタ10の取り付けが完了する。
【0042】
[実施形態1の作用効果]
本開示のレバー式コネクタ10は、相手側コネクタ50に嵌合可能なレバー式コネクタ10であって、ハウジング20と、ハウジング20に回転可能に取り付けられたレバー40と、ハウジング20の背面側に取り付けられたカバー30と、を備え、レバー40は、嵌合開始位置と嵌合完了位置の間を回転可能とされ、嵌合開始位置から嵌合完了位置に移動すると相手側コネクタ50に向けて嵌合し、逆に嵌合完了位置から嵌合開始位置に移動すると相手側コネクタ50から離脱し、カバー30は、嵌合開始位置にあるレバー40が嵌合完了位置とは反対側に誤回転することを抑制する第1受け部36Aと、嵌合完了位置にあるレバー40が嵌合開始位置とは反対側に誤回転することを抑制する第2受け部36Bと、を備え、第1受け部36Aと第2受け部36Bは単一のリブ36で構成されている、レバー式コネクタ10である。
【0043】
上記のレバー式コネクタ10は、レバー40を嵌合開始位置から嵌合完了位置に移動させることで相手側コネクタ50に向けて嵌合し、レバー40を嵌合完了位置から嵌合開始位置に移動させることで相手側コネクタ50から離脱する。ここで、嵌合開始位置にあるレバー40が嵌合完了位置とは反対側に誤回転しようとした場合、第1受け部36Aによって誤回転が抑制される。また、嵌合完了位置にあるレバー40が嵌合開始位置とは反対側に誤回転しようとした場合、第2受け部36Bによって誤回転が抑制される。
【0044】
ここで、第1受け部36Aと第2受け部36Bは単一のリブ36で構成されているから、第1受け部36Aと第2受け部36Bがカバー30の異なる箇所に別々に設けられている場合と比較して、カバー30を省スペース化でき、レバー式コネクタ10全体としても省スペース化できる。したがって、レバー40の誤回転を単一のリブ36で防止することで、レバー式コネクタ10の省スペース化を実現できる。
【0045】
ハウジング20は、レバー40を回転可能に支持する軸部24を有し、レバー40は、嵌合開始位置で第1受け部36Aに当接する第1当接部41Aと、嵌合完了位置で第2受け部36Bに当接する第2当接部41Bと、を備え、相手側コネクタ50との嵌合方向と交差する上下方向において、第1当接部41Aは軸部24の一方側に配され、第2当接部41Bは軸部24の他方側に配されていることが好ましい。
第1当接部41Aは軸部24の一方側に配され、第2当接部41Bは軸部24の他方側に配されているから、第1当接部41Aがリブ36の第1受け部36Aから離れる方向に移動すると、第2当接部41Bがリブ36の第2受け部36Bに近づく方向に移動する。これとは逆に、第2当接部41Bがリブ36の第2受け部36Bから離れる方向に移動すると、第1当接部41Aがリブ36の第1受け部36Aに近づく方向に移動する。したがって、単一のリブ36によってレバー40の誤回転を抑制できる。また、第1当接部41Aと第2当接部41Bはいずれもレバー40の肉厚となった部分に設けられているため、ハウジング20の規制片25のように肉薄の箇所で誤回転を抑制するよりも強固に誤回転を抑制できる。
【0046】
カバー30は、ハウジング20の背面から引き出された電線束Wをその引き出し方向とは異なる方向に導出させる導出口34を有し、リブ36は、カバー30における導出口34とは反対側の右側壁33に設けられていることが好ましい。
カバー30に導出口34を設けると、導出口34の周辺部では強度が低下することが想定される。その点、リブ36はカバー30における導出口34とは反対側の右側壁33に設けられているから、強度低下の影響を受けにくくなり、レバー40の誤回転を確実に抑制できる。
【0047】
<実施形態2>
実施形態2を図13の図面を参照しながら説明する。実施形態1では3つのレバー式コネクタ10の電線束Wがいずれも左斜め後方に導出されているものを例示したが、実施形態2では一番左側のレバー式コネクタ10Rの電線束Wのみが右斜め後方に導出されている点で実施形態1と異なる。左から二番目と三番目のレバー式コネクタ10Lは実施形態1のレバー式コネクタ10と同一である。
【0048】
レバー式コネクタ10Rは、右斜め後方に電線束Wを導出させる右出し用カバー30Rを備え、レバー式コネクタ10Lは、左斜め後方に電線束Wを導出させる左出し用カバー30Lを備えている。右出し用カバー30Rと左出し用カバー30Lは左右対称の形状とされ、左出し用カバー30Lは実施形態1のカバー30と同一である。レバー式コネクタ10Rにおいて右出し用カバー30R以外の構成は実施形態1のレバー式コネクタ10と同一である。
【0049】
実施形態2では1つの右出し用カバー30Rと2つの左出し用カバー30Lとを例示しているが、これらの組み合わせは実施形態2の組み合わせに限られず、例えば、2つの右出し用カバー30Rと1つの左出し用カバー30Lとしてもよい。また、各レバー式コネクタ10L、10Rの配置は実施形態2の配置に限られず、例えば、左から二番目にレバー式コネクタ10Rを配置してもよい。いずれの組み合わせ、配置にしても電線束W同士は干渉せず、各レバー式コネクタ10L、10Rを相手側コネクタ50に取り付け可能となっている。したがって、電線束Wの配線の自由度を確保できるようになっている。
【0050】
<実施形態3>
実施形態3を図14の図面を参照しながら説明する。実施形態3は相手側コネクタ50に対する嵌合順序に規制がないことを説明している。実施形態3では左から二番目のレバー式コネクタ10を最初に嵌合し、左から三番目のレバー式コネクタ10を次に嵌合し、一番左側のレバー式コネクタ10を最後に嵌合する様子を例示している。嵌合順序は実施形態3の順序に限られず、例えば、左から三番目のレバー式コネクタ10を最初に嵌合してもよい。したがって、嵌合順序の自由度を確保できるようになっている。
【0051】
<他の実施形態>
(1)上記実施形態1から3では第1当接部41Aが軸部24の上側に配され、第2当接部41Bが軸部24の下側に配されているものを例示したが、第1当接部と第2当接部のいずれもが軸部24の上側に配されているものとしてもよい。
【0052】
(2)上記実施形態1から3では導出口34と反対側の壁部にリブ36が設けられているものを例示したが、導出口が設けられている壁部にリブを設けてもよい。
【0053】
(3)上記実施形態1では、図1に示すように、左出し用カバー30Lを備えている3つのレバー式コネクタ10Lを例示したが、図12に示すように、右出し用カバー30Rを備えている3つのレバー式コネクタ10Rとしてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10、10L、10R:レバー式コネクタ
20:ハウジング 21:キャビティ 22:リテーナ 23:側面 24:軸部 25:規制片 26:レバー保持ロック 27:被取付部
30:カバー 30L:左出し用カバー 30R:右出し用カバー 31:上壁 32:下壁 33:右側壁(壁部) 34:導出口 35:取付リブ 35A:カバーロック 36:リブ 36A:第1受け部 36B:第2受け部 36C:補強部
40:レバー 41:カム板 41A:第1当接部 41B:第2当接部 42:操作レバー 43:規制受け部 44:軌道 44A:入口 44B:終端 45:アーム部 45A:先端部 45B:基端部 46:操作部 47:軸受け部
50:相手側コネクタ 51:相手側ハウジング 52:相手側端子 53:嵌合凹部 53A:側壁 53B:奥壁 53C:天井壁 54:カムピン
W:電線束(電線)
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