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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060826
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】移載装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20240425BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20240425BHJP
   H01L 21/50 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
H01L21/60 311T
G09F9/00 338
H01L21/50 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168363
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯野 大樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 一幸
(72)【発明者】
【氏名】浅田 圭介
(72)【発明者】
【氏名】武政 健一
【テーマコード(参考)】
5F044
5G435
【Fターム(参考)】
5F044KK02
5F044KK06
5F044KK18
5F044LL05
5F044PP15
5F044PP16
5F044PP19
5F044QQ03
5F044RR10
5G435AA17
5G435BB04
5G435CC09
5G435GG44
5G435KK05
5G435KK10
(57)【要約】
【課題】発光素子の移載精度を向上可能な移載装置を提供する。
【解決手段】キャリア基板80から配線基板90への発光素子8の移載に用いられる移載装置1であって、発光素子8を駆動する画素回路が設けられた配線基板90を載置する第1主面と、第1主面と反対側の第2主面とを有するステージ20と、発光素子8にレーザー光を照射するレーザー照射部30と、レーザー光を透過し、キャリア基板80の表面に接着された発光素子8を配線基板90に押圧する押圧治具11と、ステージ20を構成するヒートシンク22と、を有する、移載装置1を用いる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板から配線基板への発光素子の移載に用いられる移載装置であって、
発光素子を駆動する画素回路が設けられた前記配線基板を載置する第1主面と、前記第1主面と反対側の第2主面とを有するステージと、
前記発光素子にレーザー光を照射するレーザー照射部と、
レーザー光を透過し、前記第1基板の表面に接着された前記発光素子を前記配線基板に押圧する押圧治具と、
前記ステージを構成する冷却部と、
を有する、移載装置。
【請求項2】
請求項1記載の移載装置において、
前記ステージは、前記第1主面と、前記第1主面の反対側の第3主面とを備えた板状部材と、
前記板状部材の前記第3主面に接して設けられた前記冷却部と、
を有する、移載装置。
【請求項3】
請求項2記載の移載装置において、
前記冷却部は、平面視において前記板状部材の前記第3主面の中央部を囲む周辺部に設けられている、移載装置。
【請求項4】
請求項2記載の移載装置において、
前記冷却部は、平面視において前記板状部材の前記第3主面を、前記第3主面の中央部から周辺部に亘って連続的に覆っている、移載装置。
【請求項5】
請求項2記載の移載装置において、
前記冷却部は、前記板状部材の前記第3主面に沿って延在する平板状の突起を複数有する、移載装置。
【請求項6】
請求項1記載の移載装置において、
前記冷却部の内部には、液体が供給される流路が設けられている、移載装置。
【請求項7】
請求項1記載の移載装置において、
前記ステージは、金属からなる、移載装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子の接合に用いられる移載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
微細な発光ダイオードを複数並べて構成される発光装置(発光装置)であるマイクロLEDディスプレイの製造工程として、キャリア基板の表面に配列された複数の発光ダイオード(以下、発光素子と呼ぶ)を、移載装置のステージ上に載置された配線基板の表面に移載する場合がある。配線基板側の金属と発光素子側の金属とを接合する方法として、特許文献1(特開2021-157112号公報)には、発光素子が配線基板の表面に接する状態でレーザー照射を行い、これにより接合用導電体を溶融させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-157112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発光素子と配線基板上の電極とを接合させるためにレーザー照射を繰り返すと、配線基板および発光素子に熱が蓄積し、発光素子および配線基板に設けられたトランジスタがダメージを受ける課題がある。また、繰り返されるレーザー照射により、発光素子と配線基板との接合部分が何度も加熱されると、当該部分の接合の品質が低下する課題がある。
【0005】
本発明の目的は、発光素子の移載精度を向上可能な移載装置を提供することにある。
【0006】
その他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願において開示される実施の形態のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0008】
一実施の形態である移載装置は、第1基板から配線基板への発光素子の移載に用いられる移載装置であって、発光素子を駆動する画素回路が設けられた前記配線基板を載置する第1主面と、前記第1主面と反対側の第2主面とを有するステージと、前記発光素子にレーザー光を照射するレーザー照射部と、レーザー光を透過し、前記第1基板の表面に接着された前記発光素子を前記配線基板に押圧する押圧治具と、前記ステージを構成する冷却部と、を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係る移載装置を示す模式図である。
図2】実施の形態に係る移載装置のステージを示す斜視図である。
図3】実施の形態に係る移載装置のステージを示す平面図である。
図4】実施の形態に係る移載装置を用いた発光素子の移載方法を示すフローである。
図5】実施の形態に係る移載装置を用いた発光素子の移載方法を示す断面図である。
図6図5に続く発光装置の製造方法を示す断面図である。
図7図6に続く発光装置の製造方法を示す断面図である。
図8図7に続く発光装置の製造方法を示す断面図である。
図9図8に続く発光装置の製造方法を示す断面図である。
図10】実施の形態に係る移載装置を利用して製造される発光装置の構成の概略を示す平面図である。
図11】実施の形態に係る移載装置を利用して製造される発光装置の回路構成を示すブロック図である。
図12】実施の形態に係る移載装置を利用して製造される発光装置の画素回路の構成を示す回路図である。
図13】実施の形態に係る移載装置を利用して製造される発光装置の画素の構成を示す断面図である。
図14】実施の形態の変形例1に係る移載装置のステージを示す斜視図である。
図15】実施の形態の変形例2に係る移載装置のステージを示す斜視図である。
図16図15のA-A線における断面図である。
図17】実施の形態の変形例3に係る移載装置のステージを示す斜視図である。
図18】実施の形態の変形例3に係る移載装置のステージを示す平面図である。
図19図18のB-B線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一または関連する符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0011】
本願でいう平面形状とは、平面視における対象物の形状を指す。ここでいう平面視とは、対象物の特に大きい面である主面(上面または下面)に対し垂直な方向から対象物を観察する視点を指す。
【0012】
また、ある要素について、RGBの各色に区別して説明する必要がある場合は、その要素を示す符号の後に、R、GまたはBの記号を付して区別する。ただし、その要素について、RGBの各色に区別して説明する必要がない場合は、その要素を示す符号のみを用いて説明する。
【0013】
(実施の形態)
<移載装置の構成>
図1図3を参照して、本実施の形態に係る移載装置1について説明する。図1は、本実施の形態に係る移載装置を示す模式図である。また、図2および図3は、それぞれ、本実施の形態に係る移載装置1の押圧治具11を示す斜視図および平面図である。
【0014】
図1に示すように、移載装置1は、ステージ20、押圧治具(ガラス基板)11およびレーザー照射部30を含む。押圧治具11は、ステージ20の上方に配置されている。また、レーザー照射部30は、押圧治具11の上方に配置されている。ただし、レーザー照射部30の配置はこれに限られない。レーザー照射部30は、押圧治具11の上方からレーザー光を照射できる構成であればよい。ここでは図示していないが、ステージ20と押圧治具11との間に遮光マスクが配置されていてもよい。
【0015】
ステージ20は、第1主面と、第1主面の反対側の第2主面とを有している。ステージ20は、発光素子8を駆動する画素回路が設けられた配線基板(回路基板)90を第1主面上にて支持する。よって、ステージ20は配線基板90を載置するため、その第1主面は平坦面である。例えば、配線基板90は、ガラス基板または可撓性を有する樹脂基板である。ガラス基板または樹脂基板上には複数のTFT(Thin Film Transistor、薄膜トランジスタ)によって画素回路が形成されている。配線基板90は、TFT基板、アレイ基板またはバックプレーン基板と言い換えてもよい。詳細は後述するが、発光素子8を移載するときには、配線基板90上に、発光素子8が設けられたキャリア基板80が載置される。図1に示す配線基板90、キャリア基板80および発光素子8は、移載装置1に含まれない。発光素子8は、例えば、ミニLEDまたはマイクロLEDなどと呼ばれる、極めて微小なサイズの発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)である。
【0016】
押圧治具11は、キャリア基板80の発光素子8がステージ20上の配線基板90と密着するように、キャリア基板80を押圧する。例えば、押圧治具11は、外力が加えられることによってキャリア基板80を押圧するものである。押圧治具11には、例えば、石英ガラスなどを用いることができる。また、押圧治具11は、押圧力を検出することができるように、圧力センサを具備していてもよい。
【0017】
図2および図3に示すように、ステージ20は、板状部材21およびヒートシンク22を含む。板状部材21は、配線基板90が載置される第1主面と、第1主面の反対側の第3主面とを有している。ここでは、第2主面の一部の面と第3主面の一部の面とは共通している。ヒートシンク22は、板状部材21の第3主面側に設けられている。言い換えれば、ヒートシンク22は、板状部材21に対し第2主面側に設けられている。
【0018】
ヒートシンク22は、板状部材21の周辺部において、板状部材21の第3主面と接して設けられている。つまり、ヒートシンク22は、平面視において、板状部材21の中央部を囲むように設けられている。ヒートシンク22が板状部材21の第3主面の中央部を露出していることで、板状部材21の第3主面の中央部を支持材(図示しない)により支持することが容易となる。
【0019】
ヒートシンク22は、板状部材21の熱を吸収し、または放熱することができる。すなわち、ヒートシンク22は、板状部材21を冷却する冷却部として機能することができる。板状部材21およびヒートシンク22として、例えば、アルミニウム、鉄、もしくは銅などの金属材料、またはこれらの金属材料を含む合金材料など、熱伝導率の高い金属材料を用いることができる。
【0020】
ヒートシンク22は、複数の突起(フィン)を有する。図2に示すヒートシンク22の当該突起の形状は平板状であるが、突起の形状はこれに限られない。複数の突起は、ヒートシンク22の表面積が大きくなる形状であればよい。例えば、突起の形状は、剣山状または蛇腹状であってもよい。
【0021】
ヒートシンク22には、ファンが設置されていてもよい。ファンを回転させてヒートシンク22の周囲の空気を対流させることにより、ヒートシンク22の放熱の効率が向上する。
【0022】
レーザー照射部30は、押圧治具11を介して発光素子8にレーザー光を照射する。詳細は後述するが、レーザー照射部30は、例えば、赤外領域または近赤外領域に波長を有するレーザー光を照射できる。レーザー光の光源として、YAGレーザーまたはYVO4レーザーなどの固体レーザーを用いることができる。レーザー照射部30を用いた一回のレーザー照射により全ての発光素子8に対しレーザー光を照射することは困難であるため、ここでは複数回のレーザー照射が必要となる。
【0023】
上述した遮光マスクは、レーザー光を透過する領域(例えば、開口部)とレーザー光を遮光する領域とを含む。そのため、遮光マスクにより、キャリア基板80の所定の発光素子のみにレーザー光が照射されるように調整することができる。
【0024】
なお、図示しないが、移載装置1は、キャリア基板80または配線基板90をステージ20上に搬送する搬送部を含んでいてもよい。また、移載装置1は、キャリア基板80と配線基板90との位置を調整するアライメント部を含んでいてもよい。
【0025】
<移載装置による発光素子の移載方法>
図4図9を参照して、本実施の形態に係る移載装置1を用いた発光素子の移載方法について説明する。図4は、本実施の形態に係る移載装置1を用いた発光素子の移載方法を示すフローである。図5図9は、本実施の形態に係る移載装置1を用いた発光素子の移載方法を示す断面図である。
【0026】
図4のステップS1では、配線基板90が、ステージ20上に載置される(図5参照)。配線基板90は、絶縁表面を有する支持基板91上に、各々が発光素子を駆動する複数の画素回路92および画素回路92に接続された接続電極93が形成されている。支持基板91として、ガラス基板、樹脂基板、セラミックス基板、または金属基板などを用いることができる。画素回路92は、支持基板上に形成されたTFTから形成される。接続電極93は、実装される発光素子の構造に対応して形成されている。接続電極93として、錫(Sn)などの導電性を有する金属材料を用いることができる。なお、配線基板90の構造および画素回路92の詳細については、後述する。
【0027】
図4のステップS2では、キャリア基板80が、配線基板90の接続電極93とキャリア基板80の発光素子8R、8Gおよび8Bとが対向するように、配線基板90上に載置される(図6参照)。キャリア基板80は、配線基板90と対向する面に、発光素子8R、8Gおよび8Bがそれぞれ複数設けられた基板である。キャリア基板80は、例えば樹脂からなる。発光素子8R、8Gおよび8Bは、キャリア基板80の表面に、例えば粘着樹脂層などを介して接着されている。発光素子8Rは赤色に発光するLEDであり、発光素子8Gは緑色に発光するLEDであり、発光素子8Bは青色に発光するLEDである。発光素子8R、8Gおよび8Bのそれぞれは、サファイア基板上に成長させた窒化ガリウムなどの半導体材料を含む。半導体材料は、発光色に応じて適宜決定すればよい。
【0028】
発光素子8R、8Gおよび8Bのそれぞれの端子電極8tは、複数の接続電極93のうち、赤色に対応する画素の接続電極93と重畳している。このとき、各接続電極93と各端子電極8tとの間に、接着層(図示しない)を設けることにより、キャリア基板80を仮に固定してもよい。
【0029】
図4のステップS3では、押圧治具11が、キャリア基板80上に配置され、キャリア基板80を押圧する(図7参照)。これにより、発光素子8R、8Gおよび8Bのそれぞれの端子電極8tと接続電極93とを確実に密着させることができる。つまり、発光素子8R、8Gおよび8Bを介して、キャリア基板80と配線基板90とが密着する。また、押圧治具11の押圧により、押圧治具11とキャリア基板80とが密着する。また、配線基板90とステージ20とが密着する。このように押圧を行うことで、発光素子8R、8Gおよび8Bと、配線基板90との間で位置ずれが起こることを防ぐ。
【0030】
図4のステップS4では、レーザー照射部30が、レーザー光31を発光素子8に照射し、接続電極93と発光素子8R、8Gまたは8Bとを接合する(図8参照)。このプロセスは、レーザー光31の照射により、接続電極93と端子電極8tとを溶融接合させるプロセスである。なお、レーザー光31は、押圧治具11を透過し、発光素子8の端子電極8tに照射される。レーザー光31を照射できる範囲は限られているため、複数回レーザー照射を行うことで、キャリア基板80および配線基板90に接する全ての発光素子8R、8Gおよび8Bを配線基板90側に接合する。
【0031】
レーザー光31は、赤外領域または近赤外領域に波長を有し、端子電極8tまたは接続電極93で吸収される。レーザー光31の照射により、接続電極93と端子電極8tとの間に共晶合金で構成される合金層98が形成される。上述したとおり、接続電極93は、錫(Sn)で構成される。他方、端子電極8tは、金(Au)で構成される。すなわち、合金層98として、Sn-Au共晶合金で構成された層が形成される。ただし、接続電極93および端子電極8tとしては、互いに共晶合金を形成し得る材料であれば、他の金属材料を用いてもよい。
【0032】
接続電極93と端子電極8tとの間に共晶合金で構成された合金層98が形成されることにより、接続電極93と端子電極8tとが合金層98を介して接合される。その結果、接続電極93に対して、強固に発光素子8R、8Gおよび8Bを実装できる。
【0033】
その後、キャリア基板80を配線基板90から剥離する。このとき、発光素子8R、8Gおよび8Bと配線基板90との接合強度は、キャリア基板80と発光素子8R、8Gおよび8Bとの間の接着強度より大きい。このため、発光素子8R、8Gおよび8Bは、キャリア基板80側ではなく配線基板90側に残る。
【0034】
以上のプロセスを経て、図9に示すように、配線基板90上に、発光素子8R、8Gおよび8Bを実装することができる。
【0035】
<本実施の形態の効果>
発光素子と配線基板とを接合させるために行うレーザー照射は、パルス照射である。このため、複数回のレーザー照射により、キャリア基板、発光素子および配線基板の全体の熱が高まっていく。過度に熱が高まると、発光素子または配線基板がダメージを受ける。配線基板においては、例えば内部に形成され、発光素子のオン・オフを制御するスイッチング素子であるTFTがダメージを受ける。
【0036】
また、発光素子の端子と配線基板の電極(接続電極)との接続部に何度も熱が入ると、相互間の接合の品質が低下する。すなわち、当該レーザー照射は、発光素子の端子(金(Au))と配線基板の電極側金属(錫(Sn))との金属結合を形成することが目的である。ここでの金属結合は加熱・加圧保持により、接合面を横切って接合界面の原子を拡散させ、金属学的に接合部を得るものである。しかし、何度も加熱が行われると、金属原子の拡散が過度に進み、接合強度が低くなる。
【0037】
レーザー光は配線基板の主面全体を一括で加熱できるものではなく、照射可能な範囲は限られている。このため、すべての発光素子を接合させるためには、照射領域を変更しながら複数回レーザー照射を行う必要がある。このような照射の繰り返しにより、発光素子および配線基板を含め全体的に熱が蓄積されていき、上記問題が生じる。
【0038】
これに対し、本実施の形態では、ステージ20に冷却部(ヒートシンク22)が設けられている。このため、押圧によって押圧治具11、キャリア基板80、発光素子8、配線基板90およびステージ20が密着されていることにより、発光素子8の熱がステージ20に伝導され、ヒートシンク22がステージ20に伝導された熱を吸収し、または放熱することができる。よって、ヒートシンク22を備えたステージ20は、キャリア基板80、発光素子8および配線基板90の温度上昇を抑制できる。
【0039】
このように、ステージ20を含む移載装置1では、キャリア基板80、発光素子8および配線基板90の温度上昇を抑制できるため、発光素子8、配線基板90およびそれらの相互間の接合部への熱によるダメージを軽減することができる。よって、発光素子8の移載の精度が向上する。
【0040】
<発光装置の構成>
図10図13を参照して、本実施の形態に係る移載装置1を利用して製造される発光装置(表示装置)2について説明する。
【0041】
図10は、本実施の形態に係る移載装置1を利用して製造される発光装置2の構成の概略を示す平面図である。図10に示すように、発光装置2は、配線基板90、フレキシブルプリント回路基板101、およびICチップ102を有する。また、発光装置2は、表示領域2a、周辺領域2b、および端子領域2cに区分される。
【0042】
表示領域2aは、発光素子8を含む複数の画素が行方向(X方向)および列方向(Y方向)に配置された領域である。具体的には、表示領域2aには、発光素子8Rを含む画素95R、発光素子8Gを含む画素95G、および発光素子8Bを含む画素95Bが配置されている。表示領域2aは、映像信号に応じた画像を表示する領域として機能する。
【0043】
周辺領域2bは、表示領域2aの周囲の領域である。周辺領域2bには、各画素95に設けられた画素回路92を制御するためのドライバ回路(図11に示すデータドライバ回路103およびゲートドライバ回路104)が設けられた領域である。
【0044】
端子領域2cは、ドライバ回路に接続された複数の配線が集約された領域である。フレキシブルプリント回路基板101は、端子領域2cにおいて複数の配線に電気的に接続される。外部装置(図示しない)から出力された映像信号(データ信号)または制御信号は、フレキシブルプリント回路基板101に設けられた配線(図示しない)を介して、ICチップ102に入力される。ICチップ102は、映像信号に対して信号処理を行い、または表示制御に必要な制御信号を生成する。ICチップ102から出力された映像信号および制御信号は、フレキシブルプリント回路基板101を介して、発光装置2に入力される。
【0045】
図11は、本実施の形態に係る移載装置1を利用して製造される発光装置2の回路構成を示すブロック図である。図11に示すように、表示領域2aには、各画素95に対応して、複数の画素回路92が行方向(X方向)および列方向(Y方向)に設けられている。すなわち、画素95R、画素95G、および画素95Bに対応して、それぞれ画素回路92R、画素回路92Gおよび画素回路92Bが設けられている。
【0046】
図12は、本実施の形態に係る移載装置1を利用して製造される発光装置2の画素回路92の構成を示す回路図である。画素回路92は、データ線92a、ゲート線92b、アノード電源線92cおよびカソード電源線92dに接続されている。画素回路92は、選択トランジスタQ1、駆動トランジスタQ2、保持容量C1および発光素子8を含む。画素回路92のうち、発光素子8以外の回路要素は、配線基板90に設けられている。すなわち、配線基板90に発光素子8が実装されることにより画素回路92が完成する。ここでは、発光素子8を含まない回路構成を、便宜上、画素回路92として説明する場合がある。
【0047】
図12に示すように、選択トランジスタQ1のソース電極、ゲート電極およびドレイン電極は、それぞれデータ線92a、ゲート線92b、および駆動トランジスタQ2のゲート電極に接続される。駆動トランジスタQ2のソース電極、ゲート電極およびドレイン電極は、それぞれアノード電源線92c、選択トランジスタQ1のドレイン電極および発光素子8に接続される。
【0048】
駆動トランジスタQ2のゲート電極とドレイン電極との間には保持容量C1が接続される。すなわち、保持容量C1は、選択トランジスタQ1のドレイン電極に接続される。発光素子8は、アノードおよびカソードが、それぞれ駆動トランジスタQ2のドレイン電極およびカソード電源線92dに接続される。
【0049】
データ線92aには、発光素子8の発光強度を決める階調信号が供給される。ゲート線92bには、階調信号を書き込む選択トランジスタQ1を選択するためのゲート信号が供給される。選択トランジスタQ1がオン状態になると、階調信号が保持容量C1に蓄積される。その後、駆動トランジスタQ2がオン状態になると、階調信号に応じた駆動電流が駆動トランジスタQ2を流れる。駆動トランジスタQ2から出力された駆動電流が発光素子8に入力されると、発光素子8が階調信号に応じた発光強度で発光する。
【0050】
再び図11を参照すると、表示領域2aに対して列方向(Y方向)に隣接する位置には、データドライバ回路103が配置される。また、表示領域2aに対して行方向(X方向)に隣接する位置には、ゲートドライバ回路104が配置される。なお、図11では、表示領域2aを両側に、2つのゲートドライバ回路104が設けられているが、いずれか一方の側のみであってもよい。
【0051】
データドライバ回路103およびゲートドライバ回路104は、いずれも周辺領域2bに配置されている。ただし、データドライバ回路103を配置する領域は周辺領域2bに限られない。例えば、データドライバ回路103は、フレキシブルプリント回路基板101に配置されていてもよい。
【0052】
図12に示したデータ線92aは、データドライバ回路103からY方向に延在し、各画素回路92における選択トランジスタQ1のソース電極に接続される。ゲート線92bは、ゲートドライバ回路104からX方向に延在し、各画素回路92における選択トランジスタQ1のゲート電極に接続される。
【0053】
端子領域2cには、端子部105が配置されている。端子部105は、接続配線105aを介してデータドライバ回路103と接続される。同様に、端子部105は、接続配線105bを介してゲートドライバ回路104と接続される。さらに、端子部105は、フレキシブルプリント回路基板101と接続される。
【0054】
図13は、本実施の形態に係る移載装置1を利用して製造される発光装置2の画素95の構成を示す断面図である。画素95は、支持基板91上に設けられた駆動トランジスタQ2を有する。
【0055】
図13に示すように、駆動トランジスタQ2は、半導体層9a、ゲート絶縁層9b、およびゲート電極9cを含む。半導体層9aには、絶縁層9dを介してソース電極9eおよびドレイン電極9fが接続される。図示しないが、ゲート電極9cは、図12に示した選択トランジスタQ1のドレイン電極に接続される。
【0056】
ソース電極9eおよびドレイン電極9fと同一の層には、配線94aが設けられている。配線94aは、図12に示したアノード電源線92cとして機能する。そのため、ソース電極9eおよび配線94aは、平坦化層94bの上に設けられた接続配線95aによって電気的に接続される。平坦化層94bは、ポリイミドまたはアクリルなどの樹脂材料を用いた透明な樹脂層である。接続配線95aは、ITOなどの金属酸化物材料を用いた透明導電層である。ただし、この例に限らず、接続配線95aとして、その他の金属材料を用いることもできる。
【0057】
接続配線95aの上には、窒化シリコン等で構成された絶縁層95bが設けられる。絶縁層95bの上には、アノード電極95cおよびカソード電極95dが設けられる。本実施の形態において、アノード電極95cおよびカソード電極95dは、例えば金属材料であり、ITOなどの金属酸化物材料を用いた透明導電層であってもよい。アノード電極95cは、平坦化層94bおよび絶縁層95bに設けられた開口を介してドレイン電極9fに接続される。
【0058】
アノード電極95cおよびカソード電極95dは、それぞれ平坦化層95eのコンタクトホールを介して実装パッド96aおよび96bに接続される。実装パッド96aおよび96bは、例えば、タンタル(Ta)、タングステン(W)またはアルミニウム(Al)などの金属材料で構成される。実装パッド96aおよび96bの上には、それぞれ接続電極93aおよび93bが設けられる。接続電極93aおよび93bは、図5に示した接続電極93に対応する。すなわち、接続電極93aおよび93bとして、錫(Sn)で構成される電極を配置する。
【0059】
接続電極93aおよび93bには、それぞれ、発光素子8の端子電極8aおよび8bが接合されている。端子電極8aおよび8bは、端子電極8tに対応する。上述したように、端子電極8aおよび8bは、金(Au)で構成される電極である。また、図8を参照して説明したとおり、接続電極93aと端子電極8aとの間には、図示しない合金層(図8に示した合金層98)が存在する。
【0060】
図13に示すように、発光素子8の端子電極8aは、駆動トランジスタQ2のドレイン電極9fに接続されたアノード電極95cに接続される。発光素子8の端子電極8bは、カソード電極95dに接続される。カソード電極95dは、図12に示したカソード電源線92dと電気的に接続される。
【0061】
本実施の形態に係る移載装置1を利用して製造される発光装置2は、押圧治具11の押圧によって発光素子8が強固に実装されるとともに、ステージ20の冷却によって発光素子8または配線基板90の熱ダメージが軽減される。
【0062】
<変形例1>
図14を参照して、図1に示す移載装置1とは異なる冷却部を備えたステージ20aについて説明する。図14は、本変形例に係る移載装置のステージ20aを示す斜視図である。
【0063】
図14に示すように、本変形例のステージ20aは、板状部材21に対し第2主面側に設けられ、板状部材21に接するヒートシンク22aを有している。図2を用いて説明した構造と異なり、ヒートシンク22aは板状部材21の第3主面の全面を覆うように形成されている。すなわち、ヒートシンク22aは平面視において、板状部材21の第3主面を、中央部から周辺部に亘って連続的に覆っている。
【0064】
ヒートシンク22aは、複数の突起(フィン)を有する。例えば、当該突起の形状は平板状であり、複数の突起はいずれも第3主面および第2主面に沿う同一の方向に延在している。本変形例では、ヒートシンク22aがステージ20aの第2主面の全面に形成されていることで、ステージ20aの冷却効率を高めることができる。よって、発光素子8または配線基板90の熱ダメージをより軽減可能である。
【0065】
<変形例2>
図15および図16を参照して、図1に示す移載装置1とは異なる冷却部を備えたステージ20bについて説明する。図15および図16は、それぞれ、本変形例に係るステージ20bを示す斜視図および断面図である。より具体的には、図16は、図15に示すA-A線に沿って切断されたステージ20bの断面図である。
【0066】
図15に示すように、ステージ20bは、板状部材21およびヒートシンク23を含む。ヒートシンク23は、板状部材21の周辺部において、板状部材21の第3主面と接して設けられている。また、ヒートシンク23は、液体が供給される入口孔23aおよび液体が排出される出口孔23bを含む。ヒートシンク22が空冷式であるのに対し、ヒートシンク23は水冷式である。すなわち、ステージ20bでは、図16に示すように、ヒートシンク23内に流路24が設けられおり、入口孔23aから供給された液体は、流路24を流れ、出口孔23bから排出される。
【0067】
なお、ヒートシンク23に供給される液体は、例えば、水であるが、これに限られない。ヒートシンク23に供給される液体は、フッ素系の冷媒であってもよい。また、ヒートシンク23に供給される液体は、チラーまたはポンプを用いて循環されていてもよい。
【0068】
ステージ20bでは、ヒートシンク23内を流れる液体が、ヒートシンク23と接する板状部材21の熱を吸収することができる。すなわち、本変形例では、ステージ20bに冷却部(ヒートシンク23)が設けられていることにより、レーザー光の照射によってキャリア基板80、発光素子8および配線基板90で生じた熱が板状部材21に伝導され、ヒートシンク23が板状部材21に伝導された熱を吸収し、放熱できる。そのため、ステージ20bは、キャリア基板80、発光素子8および配線基板90の温度上昇を抑制できる。したがって、ステージ20bを用いてキャリア基板80から配線基板90に発光素子8を移載すれば、キャリア基板80、発光素子8および配線基板90の温度上昇を抑制することができるため、発光素子8の移載の精度が向上する。また、発光素子8または配線基板90への熱によるダメージを軽減することができる。また、水冷式のヒートシンク23を用いることで、空冷式に比べ、ステージ20bの温度を制御することも可能となる。
【0069】
<変形例3>
図17図19を参照して、別のステージ20cについて説明する。図17は、本変形例に係るステージ20cを示す斜視図である。図18は、本変形例に係るステージ20cを示す平面図である。図19は、本変形例に係るステージ20cを示す断面図である。より具体的には、図19は、図18に示すB-B線における断面図である。図18では、ヒートシンク25の内部の流路24を透過して示している。
【0070】
図17に示すように、ステージ20cは、板状部材21およびヒートシンク25を含む。ヒートシンク25は、板状部材21の第3主面の全体(全面)を覆うように、板状部材21の第3主面に接して形成されている。ヒートシンク25は水冷式の冷却部であり、液体が供給される入口孔23aおよび液体が排出される出口孔23bを含む。図18および図19に示すように、ヒートシンク25内に流路24が設けられおり、入口孔23aから供給された液体は、流路24を流れ、出口孔23bから排出される。
【0071】
流路24は、例えば平面視において蛇行して配置されており、これにより平面視におけるステージ20cの全体を冷却可能としている。このため変形例2に比べ、ステージ20bの冷却能力を高められる。また、水冷式のヒートシンク25は突起(フィン)からなる空冷式のヒートシンクに比べて強度が高いため、ステージ20cの第2主面の全体にヒートシンク25が形成されていても、ステージ20cの第2主面を支持体により支持することが容易である。
【0072】
以上、変形例および代表的な変形例について説明したが、上記した技術は、例示した変形例以外の種々の変形例に適用可能である。例えば、上記した変形例同士を組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態およびその変形例では、ステージを構成する板状部材とヒートシンクとが互いに接する場合について説明したが、板状部材とヒートシンクとは一体になっていてもよい。
【0073】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例および修正例に想到し得るものであり、それら変更例および修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。例えば、前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、発光装置の製造に利用可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 移載装置
2 発光装置
2a 表示領域
2b 周辺領域
2c 端子領域
8、8B、8G、8R 発光素子
8a、8b、8t 端子電極
9a 半導体層
9b ゲート絶縁層
9c ゲート電極
9d、95b 絶縁層
9e ソース電極
9f ドレイン電極
11 押圧治具
20、20a、20b、20c ステージ
21 板状部材
22、22a、23、25 ヒートシンク
23a 入口孔
23b 出口孔
24 流路
30 レーザー照射部
31 レーザー光
80 キャリア基板
90 配線基板
91 支持基板
92、92B、92G、92R 画素回路
92a データ線
92b ゲート線
92c アノード電源線
92d カソード電源線
93 接続電極
93a、93b 接続電極
94a 配線
94b、95e 平坦化層
95、95B、95G、95R 画素
95a 接続配線
95c アノード電極
95d カソード電極
96a、96b 実装パッド
98 合金層
101 フレキシブルプリント回路基板
102 ICチップ
103 データドライバ回路
104 ゲートドライバ回路
105 端子部
105a、105b 接続配線
C1 保持容量
Q1 選択トランジスタ
Q2 駆動トランジスタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19