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特開2024-60827レンズユニット、レンズユニットの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060827
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】レンズユニット、レンズユニットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20240425BHJP
   G03B 30/00 20210101ALI20240425BHJP
【FI】
G02B7/02 A
G02B7/02 C
G03B30/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168364
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194283
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 大勇
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 敏男
【テーマコード(参考)】
2H044
【Fターム(参考)】
2H044AA02
2H044AA04
2H044AA15
2H044AA16
2H044AA18
2H044AC01
(57)【要約】
【課題】ガラスレンズが樹脂材料製のレンズホルダに固定されて鏡筒に組み込まれた構成を具備するレンズユニットにおいて、レンズホルダに対するガラスレンズの位置の微調整を可能とする。
【解決手段】レンズホルダ51のレンズ収容孔に対して、第5レンズL5が上側から収容される。この状態で、板バネ52がレンズホルダ51に対して装着される。この状態では、第5レンズL5は、板バネ52における板バネ突出部52Aによって上側から下向きに付勢され、下側で第5レンズ係止部で係止される。板バネ突出部52Aは周方向の3箇所で離間して設けられ、各箇所において第5レンズL5は下向きに付勢される。このため、これにより、第5レンズL5はレンズホルダ51に対して仮固定され、この状態においては、第5レンズL5のレンズ収容孔内における位置、姿勢の微調整が可能である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸方向に配された複数のレンズと、
複数の前記レンズを前記光軸からみた外側で保持する鏡筒と、
を備えるレンズユニットであって、
前記レンズのうちの一つはガラス製であるガラスレンズであり、
当該ガラスレンズは、前記光軸からみた外側を樹脂材料製のレンズホルダに支持され、当該レンズホルダが前記鏡筒に形成された空洞であるレンズ収容部に固定されることによって前記鏡筒に対して固定され、
前記レンズホルダは、
遊嵌された状態で前記ガラスレンズを収容するレンズ収容孔と、
前記レンズ収容孔に収容された前記ガラスレンズを前記光軸方向に沿った一方の側で支持するガラスレンズ係止部と、
を具備し、
前記レンズホルダにおける前記光軸に沿った他方の側に、弾性材料で構成され、前記ガラスレンズを前記一方の側に向けて付勢するレンズ付勢部材が装着され、
前記レンズ収容孔の内面と前記ガラスレンズの外周部とが、接着剤で接合されたことを特徴とするレンズユニット。
【請求項2】
前記ガラスレンズ係止部は、前記レンズ収容孔の前記一方の側において前記光軸側に向けて一様に突出するように環状に形成されたことを特徴とする請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項3】
前記ガラスレンズ係止部は、前記光軸に垂直な平面上において前記他方の側に向けて局所的に突出するように離間して3つ以上形成された凸部を具備することを特徴とする請求項2に記載のレンズユニット。
【請求項4】
前記レンズホルダには、前記レンズホルダにおける前記他方の側の面が局所的に前記一方の側に向けて掘下げられた接着剤収容溝が前記レンズ収容孔と連結するように形成され、
前記レンズ付勢部材は、前記レンズ収容孔を囲むように環状に形成され、
前記他方の側からみて前記接着剤収容溝を露出させる切り欠き部と、
前記光軸側に向けて局所的に突出して前記ガラスレンズにおける前記他方の側の面と当接し、前記光軸の周りの周方向において設けられた複数の突出部と、
を具備することを特徴とする請求項2又は3に記載のレンズユニット。
【請求項5】
前記ガラスレンズ係止部は、前記レンズ収容孔の前記一方の側において前記光軸側に向けて突出するように周方向における3箇所以上で離間して形成されたことを特徴とする請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項6】
前記レンズホルダには、前記レンズホルダにおける前記一方の側の面が局所的に前記他方の側に向けて掘下げられた接着剤収容溝が前記レンズ収容孔と連結するように形成され、
前記一方の側からみて、前記ガラスレンズ係止部は、前記接着剤収容溝と重複しないように形成されたことを特徴とする請求項5に記載のレンズユニット。
【請求項7】
請求項2に記載のレンズユニットの製造方法であって、
前記レンズ収容孔に対して前記ガラスレンズを前記他方の側から前記一方の側に向けて挿入するレンズ収容工程と、
前記ガラスレンズが前記レンズ収容孔に収容された状態で、前記レンズ付勢部材を前記レンズホルダに固定することにより前記ガラスレンズを前記レンズホルダに対して仮固定するレンズ付勢部材固定工程と、
仮固定された前記ガラスレンズに力を加えることによって前記ガラスレンズの前記レンズ収容孔内の位置あるいは姿勢を調整する調整工程と、
を具備することを特徴とするレンズユニットの製造方法。
【請求項8】
請求項5に記載のレンズユニットの製造方法であって、
前記ガラスレンズ係止部は、初期状態では前記レンズ収容孔に収容された前記ガラスレンズと当接しない形状に形成され、
前記ガラスレンズが前記レンズ収容孔に収容されない状態で、前記レンズ付勢部材を前記レンズホルダに固定するレンズ付勢部材固定工程と、
前記レンズ付勢部材が固定された状態の前記レンズホルダにおける前記レンズ収容孔に対して、前記ガラスレンズを前記一方の側から前記他方の側に向けて挿入するレンズ収容工程と、
前記ガラスレンズが前記レンズ収容孔に収容された状態で、前記ガラスレンズ係止部を曲げ加工して前記ガラスレンズ係止部に前記ガラスレンズを係止させることにより前記ガラスレンズを前記レンズホルダに対して仮固定するガラスレンズ係止部加工工程と、
仮固定された前記ガラスレンズに力を加えることによって前記ガラスレンズの前記レンズ収容孔内の位置あるいは姿勢を調整する調整工程と、
を具備することを特徴とするレンズユニットの製造方法。
【請求項9】
前記調整工程後における前記ガラスレンズと前記レンズ収容孔の内面との間を接着剤で固定する固定工程を具備することを特徴とする請求項7又は8に記載のレンズユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス製のレンズがレンズホルダに装着されて鏡筒に収容、固定されるレンズユニット、このレンズユニットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車、監視カメラ等に搭載される撮像装置において使用される光学系として、物体側から像側(撮像素子側)に至るまでの間に複数のレンズを光軸(撮像装置の光軸)方向に配したレンズユニットが使用されている。このレンズユニットは可視光による物体の画像を撮像素子上に良好に結像させるように設計される。このため、各レンズ間の位置関係、各レンズと鏡筒間、このレンズユニットと撮像素子間の位置関係が高い精度で固定され、かつ各レンズに大きな負荷が加わらないことが要求される。
【0003】
一般的に、鏡筒は樹脂材料製とされるのに対して、使用されるレンズの材質としては、樹脂材料とガラスの2種類がある。前者は機械的強度は低いが安価であるのに対し、後者は機械的強度が高いが高価である。また、例えばレンズの形状を非球面形状とする場合には、特に前者は後者と比べて安価となる。また、熱膨張係数は後者の方が小さいため、熱膨張が特に光学的に悪影響を及ぼすレンズの場合には、後者が好ましい。また、温度変化に際してレンズや鏡筒に歪やレンズの鏡筒に対する位置精度を劣化させないという観点からは、鏡筒の熱膨張係数とレンズの熱膨張係数が近いことが好ましいため、樹脂材料製レンズが好ましい。こうした点が考慮され、複数のレンズのうち、どれをガラス製とするか、樹脂材料製とするかが定められる。
【0004】
このように樹脂材料製のレンズとガラス製のレンズが混合されて使用されたレンズユニットについては、例えば特許文献1に記載されている。このレンズユニットにおいては、物体側から像側に向けて複数のレンズが使用され、そのうちの中央にありかつ絞りに近いレンズには高い位置精度が要求されるため、このレンズがガラス製とされる。一方、このレンズと物体側、像側で隣接するレンズは樹脂材料製とされる。ただし、このガラス製のレンズ(ガラスレンズ)は、樹脂材料製のレンズホルダに固定された形で、隣接する樹脂材料製のレンズと共に、鏡筒内に固定される。これによって、このガラスレンズと鏡筒等との間の熱膨張差の影響も低減される。
【0005】
特許文献2には、このようなガラスレンズをレンズホルダに固定する手法が記載されている。レンズホルダは、レンズホルダに設けられたレンズ収容孔の内面に圧入されて固定される。この際、レンズ収容孔の内面とガラスレンズの外周とが実際に当接するのは周方向で離間した3箇所とされ、他の部分ではこれらの間に空隙が形成される。ガラスレンズが圧入されて位置関係が固定された後でこの空隙に接着剤が導入されることによって、ガラスレンズがレンズホルダに対して強固に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-54922号公報
【特許文献2】特開2021-56385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このようにガラスレンズが樹脂材料製のレンズホルダに固定されて用いられるレンズユニットにおいては、レンズホルダとガラスレンズとの間の位置関係を精密に定めることが要求される。これに対して、特許文献2に記載の技術では、この位置は、レンズホルダの形状と圧入の状況によって定まる。
【0008】
しかしながら、実際には、レンズホルダの形状精度、圧入時の位置精度等に起因し、この場合においても、レンズホルダに対するガラスレンズの位置関係にはばらつきが存在する。このようにばらつきが存在する場合には、レンズホルダにガラスレンズを装着した後で、ガラスレンズの位置の微調整ができることが求められた。これに対して、ガラスレンズを圧入によって固定する場合には、例えばガラスレンズのレンズホルダに対する光軸方向に沿った位置(高さ)は圧入の度合いによって調整可能であるが、ガラスレンズの径方向における位置、光軸に対する角度に対しては、このような微調整を行うことは困難であった。
【0009】
このため、ガラスレンズが樹脂材料製のレンズホルダに固定されて鏡筒に組み込まれた構成を具備するレンズユニットにおいて、レンズホルダに対するガラスレンズの位置の微調整が行えることが望まれた。
【0010】
本発明は、このような状況に鑑みなされたもので、ガラスレンズが樹脂材料製のレンズホルダに固定されて鏡筒に組み込まれた構成を具備するレンズユニットにおいて、レンズホルダに対するガラスレンズの位置の微調整を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るレンズユニットは、光軸方向に配された複数のレンズと、複数の前記レンズを前記光軸からみた外側で保持する鏡筒と、を備えるレンズユニットであって、前記レンズのうちの一つはガラス製であるガラスレンズであり、当該ガラスレンズは、前記光軸からみた外側を樹脂材料製のレンズホルダに支持され、当該レンズホルダが前記鏡筒に形成された空洞であるレンズ収容部に固定されることによって前記鏡筒に対して固定され、前記レンズホルダは、遊嵌された状態で前記ガラスレンズを収容するレンズ収容孔と、前記レンズ収容孔に収容された前記ガラスレンズを前記光軸方向に沿った一方の側で支持するガラスレンズ係止部と、を具備し、前記レンズホルダにおける前記光軸に沿った他方の側に、弾性材料で構成され、前記ガラスレンズを前記一方の側に向けて付勢するレンズ付勢部材が装着され、前記レンズ収容孔の内面と前記ガラスレンズの外周部とが、接着剤で接合されたことを特徴とする。
【0012】
この構成においては、接着剤で固定される前の状態において、ガラスレンズが、レンズホルダに対してレンズ付勢部材とガラスレンズ係止部との間で仮固定され、この仮固定の状態で、ガラスレンズのレンズホルダに対する位置、姿勢の微調整が可能となる。この微調整の後でこれらが接着剤を用いて固定されるため、このレンズユニットにおいては、高い結像特性が得られる。
【0013】
前記ガラスレンズ係止部は、前記レンズ収容孔の前記一方の側において前記光軸側に向けて一様に突出するように環状に形成されていてもよい。
この構成においては、このような形状のガラスレンズ係止部を、高い位置精度、形状精度でレンズホルダの成形時に予め形成しておくことが特に容易である。
この際、前記ガラスレンズ係止部は、前記光軸に垂直な平面上において前記他方の側に向けて局所的に突出するように離間して3つ以上形成された凸部を具備してもよい。
このようにガラスレンズ係止部が直接ガラスレンズと当接する部分を特定することによって、ガラスレンズとガラスレンズ係止部との間の位置関係を高精度に保つことが特に容易となる。
【0014】
また、前記レンズホルダには、前記レンズホルダにおける前記他方の側の面が局所的に前記一方の側に向けて掘下げられた接着剤収容溝が前記レンズ収容孔と連結するように形成され、前記レンズ付勢部材は、前記レンズ収容孔を囲むように環状に形成され、前記他方の側からみて前記接着剤収容溝を露出させる切り欠き部と、前記光軸側に向けて局所的に突出して前記ガラスレンズにおける前記他方の側の面と当接し、前記光軸の周りの周方向において設けられた複数の突出部と、を具備してもよい。
この構成においては、接着剤収容溝から、レンズ収容孔の内面とガラスレンズの外周との間の空隙に固化前の接着剤を容易に流し込むことができ、これによって、ガラスレンズをレンズホルダに対して接着剤で強固に固定することが容易となる。一方、レンズ付勢部材は、この工程を容易に行うことができると共に、適正にガラスレンズを付勢することができる形状とされる。
【0015】
また、前記ガラスレンズ係止部は、前記レンズ収容孔の前記一方の側において前記光軸側に向けて突出するように周方向における3箇所以上で離間して形成されていてもよい。
この構成においては、初期状態において、ガラスレンズ係止部を、ガラスレンズをレンズ収容孔に収容する際の障害とならないような形状とし、ガラスレンズを収容した後で、ガラスレンズ係止部を、ガラスレンズを係止するような形状に加工することができる。このため、ガラスレンズ係止部がある側からガラスレンズをレンズホルダに装着することができる。
【0016】
また、前記レンズホルダには、前記レンズホルダにおける前記一方の側の面が局所的に前記他方の側に向けて掘下げられた接着剤収容溝が前記レンズ収容孔と連結するように形成され、前記一方の側からみて、前記ガラスレンズ係止部は、前記接着剤収容溝と重複しないように形成されていてもよい。
この構成においては、ガラスレンズをレンズホルダに装着する側にガラスレンズ係止部を設けた場合でも、接着剤収容溝をこちらの側に設け、これを用いてガラスレンズをレンズホルダに対して接着剤で強固に固定することが容易となる。
【0017】
本発明のレンズユニットの製造方法は、前記レンズ収容孔に対して前記ガラスレンズを前記他方の側から前記一方の側に向けて挿入するレンズ収容工程と、前記ガラスレンズが前記レンズ収容孔に収容された状態で、前記レンズ付勢部材を前記レンズホルダに固定することにより前記ガラスレンズを前記レンズホルダに対して仮固定するレンズ付勢部材固定工程と、仮固定された前記ガラスレンズに力を加えることによって前記ガラスレンズの前記レンズ収容孔内の位置あるいは姿勢を調整する調整工程と、を具備する。
この製造方法においては、ガラスレンズが収容される側にレンズ付勢部材が、ガラスレンズが収容される側と反対側にガラスレンズ係止部が、それぞれ設けられ、レンズ収容工程の後でレンズ付勢部材固定工程が行われた後に、調整工程が行われる。この場合、ガラスレンズ係止部は、レンズホルダの製造時においてレンズホルダに形成されたままの状態で用いられ、ガラスレンズとガラスレンズ係止部との間の位置関係を高精度に保つことが特に容易となる。この状態で、ガラスレンズの位置、姿勢の微調整を容易に行うことができる。
【0018】
本発明のレンズユニットの製造方法において、前記ガラスレンズ係止部は、初期状態では前記レンズ収容孔に収容された前記ガラスレンズと当接しない形状に形成され、前記ガラスレンズが前記レンズ収容孔に収容されない状態で、前記レンズ付勢部材を前記レンズホルダに固定するレンズ付勢部材固定工程と、前記レンズ付勢部材が固定された状態の前記レンズホルダにおける前記レンズ収容孔に対して、前記ガラスレンズを前記一方の側から前記他方の側に向けて挿入するレンズ収容工程と、前記ガラスレンズが前記レンズ収容孔に収容された状態で、前記ガラスレンズ係止部を曲げ加工して前記ガラスレンズ係止部に前記ガラスレンズを係止させることにより前記ガラスレンズを前記レンズホルダに対して仮固定するガラスレンズ係止部加工工程と、仮固定された前記ガラスレンズに力を加えることによって前記ガラスレンズの前記レンズ収容孔内の位置あるいは姿勢を調整する調整工程と、を具備する。
この製造方法においては、ガラスレンズが収容される側にガラスレンズ係止部が、ガラスレンズが収容される側と反対側にレンズ付勢部材が、それぞれ設けられ、レンズ付勢部材固定工程が行われた後に、レンズ収容工程、ガラスレンズ係止部加工工程、調整工程が順次行われる。この場合、レンズ付勢部材をフリーの状態でレンズホルダに装着することができるため、レンズ付勢部材の装着が容易である。また、レンズ収容工程において、ガラスレンズ係止部が障害となることもない。その後、ガラスレンズの位置、姿勢の微調整を容易に行うことができる。
【0019】
前記調整工程後における前記ガラスレンズと前記レンズ収容孔の内面との間を接着剤で固定する固定工程を具備してもよい。
この構成においては、ガラスレンズとレンズ収容孔の内面との間を接着剤で固定することによって、ガラスレンズが固定される。この際、接着剤収容溝を用いることもできる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ガラスレンズが樹脂材料製のレンズホルダに固定されて鏡筒に組み込まれた構成を具備するレンズユニットにおいて、レンズホルダに対するガラスレンズの位置の微調整が行えるため、良好な結像特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態に係るレンズユニットの断面図である。
図2】実施形態に係るレンズユニットで用いられる鏡筒の断面図(a)、斜視図(b)である。
図3】実施形態に係るレンズユニットの分解組立図である。
図4】実施形態に係るレンズユニットにおける、第5レンズ体の物体側(a)、像側(b)からみた斜視図である。
図5】実施形態に係るレンズユニットにおける、第5レンズ体の物体側からみた平面図である。
図6】実施形態に係るレンズユニットにおける、レンズホルダにガラスレンズが装着されレンズ付勢部材が装着されない状態の物体側からみた斜視図である。
図7】実施形態に係るレンズユニットにおける、レンズホルダの物体側(a)、像側(b)からみた平面図である。
図8】実施形態に係るレンズユニットにおける、レンズホルダの物体側からみた斜視図である。
図9】実施形態に係るレンズユニットにおけるレンズ付勢部材の平面図である。
図10】実施形態に係るレンズユニットにおける第5レンズ体の製造方法を示す工程断面図である。
図11】実施形態に係るレンズユニットの変形例における、第5レンズ体の物体側(a)、像側(b)からみた斜視図である。
図12】実施形態に係るレンズユニットの変形例における、第5レンズ体の物体側(a)、像側(b)からみた平面図である。
図13】実施形態に係るレンズユニットの変形例における、レンズホルダにレンズ付勢部材が装着されガラスレンズが装着されない状態の物体側からみた斜視図である。
図14】実施形態に係るレンズユニットの変形例における、レンズホルダの物体側(a)、像側(b)からみた平面図である。
図15】実施形態に係るレンズユニットにおける、レンズホルダの像側からみた斜視図である。
図16】実施形態に係るレンズユニットの変形例におけるレンズ付勢部材の平面図である。
図17】実施形態に係るレンズユニットの変形例における第5レンズ体の製造方法を示す工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は本実施形態に係るレンズユニット1の、光軸Aに沿った断面図である。ここでは、物体(Ob)側は図中上側、像(Im)側は図中下側であり、撮像素子100は図中最下部に位置する。レンズL1~L7の各々は、鏡筒10に対して直接あるいは間接的に固定される。図1においては、主に各レンズ、あるいは各レンズと鏡筒10の間を固定するための構成が主に記載されている。実際には撮像素子100と鏡筒10の位置関係を固定するための構造も設けられているが、その記載は省略されている。
【0023】
撮像素子100は2次元CMOSイメージセンサであり、各画素は光軸Aと垂直な面内で2次元に配列されている。図1において、第1レンズL1から第7レンズL7を備えるレンズユニット1が構成される。レンズユニット1は、撮像対象の可視光の画像を所望の視野、所望の形態で撮像素子100上(像面)に結像させるように構成される。
【0024】
図1において、最も物体側(図中上側)に設けられた第1レンズL1は、魚眼レンズであり、主にこれによって、撮像装置の視野等が定まる。これよりも撮像素子100側(像側)に、第2レンズL2、第3レンズL3、第4レンズL4、第5レンズL5、第6レンズL6、第7レンズL7が順次配置されている。各レンズは、光軸Aの周りで略対称な形状を具備する。また、光束を制限するための絞り20が第4レンズL4と第5レンズL5の間に設けられている。また、不要な光を除去するための薄膜状の遮光板も第2レンズL2と第3レンズL3の間に適宜設けられるが、その記載は図1では省略されている。
【0025】
また、図2(a)は、鏡筒10のみの光軸Aに沿った断面図、図2(b)は、鏡筒10を図1における斜め上側(物体側)からみた斜視図であり、図3は、図3は、このレンズユニット1の分解斜視図である。この鏡筒10の物体側(図中上側)に、内周面が略円筒形状の空洞部である第1収容部10Aが設けられ、第1収容部10Aの像側の底面は第1レンズL1と当接する第1載置部11である。光軸Aからみた第1載置部11の外側には、像側に向けて掘り下げられOリング30が収容される円環状の溝であるOリング収容溝11Aが形成されている。
【0026】
また、第1載置部11よりも像側(図中下側)には、第1収容部10Aと同軸とされ、第1収容部10Aより小径とされた略円筒形状の空洞部である第2収容部(レンズ収容部)10Bが設けられ、第2収容部10Bの像側の底面は接合レンズL60(後述する像側レンズ)と当接する第2載置部(載置面)12である。第1収容部10A、第2収容部10Bの中心軸は共通とされ、光軸Aと等しい。また、図2(a)に示されるように、実際には第2収容部10Bの内周面は物体側から像側に向かって徐々に小さくされる。このため、図3に示されるように、物体側から各レンズ等を順次鏡筒10に対して組み込んで固定することができる。
【0027】
また、図2(b)に示されるように、第2収容部10Bの内周面においては、光軸Aに沿って延伸し局所的に光軸A側に向かって突出するレンズ固定用リブ10B1が、周方向において等間隔で12個(図2(b)においてはそのうち5個のみが表示されている)形成されている。このため、各レンズが鏡筒10に固定される際には、各レンズ等と鏡筒10が実際に当接する部分はこのレンズ固定用リブ10B1となり、各レンズの光軸Aと垂直な方向(径方向)における位置は、レンズ固定用リブ10B1で制限される。
【0028】
図1において、各レンズにおける物体側、像側のレンズ面(画像を形成する光が通過する面)は、レンズユニット1が所望の結像特性をもたらすように、適宜曲面(凸曲面、凹曲面)加工されている。以下では、各レンズにおける物体側のレンズ面を第1表面R1、像側のレンズ面を第2表面R2と呼称する。また、レンズ面の形状(凸曲面又は凹曲面)としては、第1表面R1の形状については物体側からみた形状、第2表面R2の形状については像側からみた形状を、それぞれ意味するものとする。
【0029】
一般的に、このような小型の撮像装置におけるレンズを構成する材料としては、ガラスと樹脂材料の2種類がある。前者は機械的強度が高いが高価であり、後者は機械的強度は低いが安価である。また、ガラスの熱膨張係数は樹脂材料より小さいため、高温時における熱膨張に起因する形状や位置の微細な変化が結像特性(焦点位置の変化等)に与える影響が大きくなるレンズは、ガラス製のレンズとすることが好ましい。このため、レンズユニット1を高性能かつ安価とするためには、ガラス製のものが好ましいレンズのみガラス製とし、他のレンズを樹脂材料製とすることが好ましい。
【0030】
この観点において、本実施の形態では、最も物体側に配置された第1レンズL1は撮像装置の最表面に位置するために、傷が付きにくいガラス製とされる。また、絞り20と隣接するレンズ(第4レンズL4及び第5レンズL5)は、温度変化に起因する焦点距離の変化が顕著に表れるため、いずれか一方(本実施の形態では第5レンズL5)がガラス製とされる。他のレンズとしては、安価な樹脂材料製のものが用いられる。
【0031】
鏡筒10の材料としては、対候性に優れた結晶性プラスチック(ポリエチレン、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン)が好ましく用いられる。一方、第2レンズL2、第3レンズL3、第4レンズL4、第6レンズL6、第7レンズL7は、レンズとしての性能(光透過性や成形性)に優れる非晶性プラスチック(ポリカーボネート等)で構成される。また、レンズホルダ51は第4レンズL4等と同じ非晶性プラスチックで構成されるため、第5レンズ体L50は、全体としては第4レンズL4等と同様のプラスチックレンズとして取り扱うことができる。前記の通り、第1レンズL1、第5レンズL5はガラス製とされる。
【0032】
第1レンズL1は、その物体側のレンズ面L1R1が凸曲面、その像側のレンズ面L1R2が凹曲面とされた負レンズである。第1レンズL1の上面側では、レンズ面L1R1がほぼ全体を占めている。第1レンズL1の下面側(像側)において、レンズ面L2R2の外側には、光軸Aと垂直な平面で構成された第1レンズ下面L1Aが設けられる。また、第1レンズL1の最外周部は、光軸Aを中心軸とする円筒形状の第1レンズ外周面L1Bを構成する。これらの面のうち、光学的に使用されるのは、レンズ面L1R1、L1R2であり、他の面は、第1レンズL1を鏡筒10に対して固定するために用いられる。
【0033】
図1において、鏡筒10の上端側は、第1レンズL1の物体側への移動を規制するように光軸A(中心)側に向かって屈曲した第1レンズ係止部13となっている。また、第1レンズ下面L1Aは、鏡筒10の第1載置部11と当接する。このため、第1レンズL1の鏡筒10に対する光軸A方向における位置関係は、物体側(図中上側)では第1レンズ係止部13によって定まり、像側(図中下側)では第1載置部11により定まる。この際、第1レンズ下面L1Aの像側には前記のようにOリング30が設けられているため、これによって第1レンズL1と鏡筒10の間は密封される。なお、上記のような第1レンズ係止部13の形状は、第1レンズl1を鏡筒10に固定するために加工した後の形状であり、固定前における鏡筒10の上端部側の形状は、図2(a)に示されるように、上側から第1レンズL1を図1に示されるように鏡筒10内に挿入可能な形状とされる。
【0034】
また、第1レンズ外周面L1Bは、鏡筒10における第1収容部10Aの内周面と当接する。これによって、第1レンズL1と鏡筒10の光軸Aと垂直な方向における位置関係が定まる。すなわち、上記の構成により、第1レンズL1は鏡筒10に対して固定される。
【0035】
第2レンズL2は、その物体側のレンズ面L2R1が凸曲面、その像側のレンズ面L2R2が凹曲面とされた負レンズである。第2レンズL2の物体側(図1における上側)において、レンズ面L2R1の外側には、光軸Aと垂直でありレンズ面L2R1よりも像側(図1における下側)に位置する平面である第2レンズ上面L2Aが設けられ、第2レンズL2の像側(図1における下側)において、レンズ面L2R2よりも外側には、光軸Aと垂直な略平面である第2レンズ下面L2Bが設けられている。第2レンズL2の最外周を構成する第2レンズ外周面L2Cは、第2収容部10Bの内周面(正確には前記のレンズ固定用リブ10B1)と当接する。
【0036】
前記の第1レンズL1と鏡筒10における第1レンズ係止部13の関係と同様に、第2レンズL2の光軸A方向の物体側における位置は、第2レンズ上面L2Aが、鏡筒10側に設けられた第2レンズ係止部14に係止されることによって定まる。
【0037】
第3レンズL3は、その物体側のレンズ面L3R1が凹曲面、その像側のレンズ面L3R2が凸曲面とされた正レンズである。第3レンズL3の物体側(図中における上側)において、レンズ面L3R1の外側には、光軸Aと垂直でありレンズ面L3R1よりも物体側(図1における上側)に位置する略平面である第3レンズ上面L3Aが設けられ、第3レンズL3の像側(図1における下側)において、レンズ面L3R2よりも外側には、光軸Aと垂直な略平面である第3レンズ下面L3Bが設けられている。第3レンズL3の最外周を構成する第3レンズ外周面L3Cは、第2収容部10Bの内周面(正確には前記のレンズ固定用リブ10B1)と当接する。
【0038】
図1においては記載が省略されているが、図3に示されるように、遮光板21は、第2レンズL2と第3レンズL3の間に設置される。この際、環状の遮光板21は、第2レンズL2の第2レンズ下面L2Bと第3レンズL3の第3レンズ上面L3Aで挟持される。
【0039】
第4レンズL4は、その物体側の面L4R1が凸曲面、その像側の面L4R2が凸曲面とされた正レンズである。第4レンズL4の物体側(図中上側)において、レンズ面L4R1の外側には、光軸Aと垂直でありレンズ面L4R1よりも物体側(図1における上側)に位置する略平面である第4レンズ上面L4Aが設けられ、第4レンズL4の像側(図1における下側)において、レンズ面L4R2よりも外側には、光軸Aと垂直な略平面である第4レンズ下面L4Bが設けられている。第4レンズL4の最外周を構成する第4レンズ外周面L4Cは、第2収容部10Bの内周面(正確には前記のレンズ固定用リブ10B1)と当接する。
【0040】
上記の例では、第2レンズL2における第2レンズ下面L2Bと第3レンズにおける第3レンズ上面L3Aが当接することによって第2レンズL2と第3レンズL3の光軸A方向に沿った位置関係が、第3レンズL3における第3レンズ下面L3Bと第4レンズL4における第4レンズ上面L4Aが当接することによって、第3レンズL3と第4レンズL4の光軸A方向に沿った位置関係が、それぞれ定まる。この際、これらの面を平面とせずに、互いの面同士を係合させるための微細な凹凸構造(係合構造)を適宜設けてもよい。この場合、この係合構造によって隣接するレンズ同士の径方向における位置関係を固定することもでき、この場合には、前記のように第2レンズL2~第4レンズL4の全ての外周面と固定用リブ10B1とが当接する必要はない。
【0041】
前記の通り、第5レンズ(ガラスレンズ)L5はガラス製であり、その物体側の面L5R1が凸曲面、その像側の面L5R2が凸曲面とされた正レンズである。ただし、第5レンズL5は、他のレンズとは異なり、樹脂材料製のレンズホルダ51に圧入固定されて一体化された第5レンズ体(ガラスレンズ体)L50とされた状態で鏡筒10に収容される。すなわち、第5レンズL5は、第5レンズ体L50となった状態で、樹脂材料製である第3レンズL3、第4レンズL4と同様にレンズとして扱われる。
【0042】
第5レンズ体L50の物体側(図中上側)において、第5レンズL5の外側のレンズホルダ51には、第4レンズL4における第4レンズ下面L4B側(物体側)に突出する物体側凸部L50Aが設けられる。また、第5レンズ体L50の像側(図中下側)において、第5レンズL5よりも外側のレンズホルダ51には、像側に向けて突出し、第6レンズL6と当接する像側凸部L50Bが設けられる。実際には物体側凸部L50A、像側凸部L50Bは、それぞれ周方向で複数形成され、これらの構成については後述する。物体側凸部L50Aによって第5レンズ体L50と第4レンズL4の光軸A方向における位置関係が、像側凸部L50Bによって第5レンズ体L50と第6レンズL6の光軸A方向における位置関係が、それぞれ定まる。
【0043】
また、第5レンズ体L50の最外周を構成する面である第5レンズ体外周面(外周面)L50Cは、第2収容部10Bの内周面(正確には前記のレンズ固定用リブ10B1)と当接する。これにより、第5レンズ体L50(第5レンズL5)と鏡筒10の光軸Aと垂直な方向における位置関係は定まる。
【0044】
絞り20は、第4レンズL4と第5レンズ体L50の間に設置される。この際、環状の絞り20は、第4レンズL4の第4レンズ下面L4Bと第5レンズ体L50の物体側凸部L50Aで挟持される。
【0045】
第6レンズL6は、その物体側の面L6R1が凹曲面、その像側の面L6R2が凹曲面とされた負レンズである。第7レンズL7は、外径が第6レンズL6よりも小さく、その物体側の面L7R1が凸曲面、その像側の面L7R2が凸曲面とされた正レンズである。また、第6レンズL6、第7レンズL7は対向するレンズ面が嵌合して薄い接着剤層で接合されることにより、最も像側にある接合レンズ(像側レンズ)L60を構成するように設定される。つまり、実質的に最も像側のレンズとなる像側レンズは、第6レンズL6の像側のレンズ面L6R2と第7レンズL7の物体側のレンズ面L7R1とが嵌合して接合された接合レンズL60となる。
【0046】
接合レンズL60(第6レンズL6)の物体側(図中上側)において、レンズ面L6R1の外側においては、第5レンズ体L50における像側凸部L50Bと当接する平面である接合レンズ上面L6Aが設けられる。また、接合レンズL60(第6レンズL6)の像側(図中下側)において、レンズ面L7R2よりも外側には、光軸Aと垂直な平面である接合レンズ下面L6Bが設けられる。接合レンズ下面L6Bは、第2載置部(載置面)12と当接する。また、接合レンズ下面L6Bにおける第2載置部12よりも内側には、物体側に向けて凹形状とされた段差部(係合構造)L6Cが設けられる。これに対応して、第7レンズL7には物体側に凸形状とされた段差部(係合構造)L7Aが設けられ、段差部L6Cと段差部L7Aとが係合する。すなわち、接合レンズL60においては、第6レンズL6のレンズ面L6R2、段差部L6Cと第7レンズL7のレンズ面L7R1、段差部L7Aがそれぞれ嵌合した状態で固定され固定されることによって、第6レンズL6、第7レンズL7の光軸A方向及びこれと垂直な方向における位置関係が定まる。
【0047】
また、接合レンズL60(第6レンズL6)の最外周を構成する面である第6レンズ外周面L6Dは第2収容部10Bの内周面(正確には前記のレンズ固定用リブ10B1)と当接する。第6レンズ外周面L6Dは、その光軸A周りの内径が像側に向かって徐々に小さくなるような略円錐面形状に形成されている。このため、接合レンズL60の光軸Aに沿った方向における位置は、像側では鏡筒10(第2載置部12)によって制限される。
【0048】
この場合、第5レンズ体L50(像側凸部L50B)は像側で接合レンズL60に係止されるため、第5レンズ体L50の光軸Aに沿った方向における位置は、像側では接合レンズL60を介して第2載置部12(鏡筒10)によって制限される。第4レンズL4における第4レンズ下面L4Bと第5レンズ体L50(レンズホルダ51)における物体側凸部L50Aとが当接するため、第4レンズL4の光軸A方向に沿った方向における位置も、像側では第2載置部12によって制限され、結局、第2レンズL2~第4レンズL4、レンズホルダ51、接合レンズL60の光軸A方向に沿った方向における位置は、像側では第2載置部12によって制限される。一方、前記のように、第2レンズL2の光軸A方向の物体側における位置は、第2レンズ上面L2Aが、鏡筒10側に設けられた第2レンズ係止部14に係止されることによって定まる。このため、結局、上記の構造によって、第2レンズL2~第4レンズL4、レンズホルダ51、接合レンズL60の光軸A方向に沿った方向における位置が定まる。
【0049】
また、図1、3に示されるように、鏡筒10における最も像側には、板状の光学フィルター22が装着される。光学フィルター22は、前記の第1レンズ係止部13、第2レンズ係止部14と同様の形態をもつがこれらとは逆向きに像側に向けて突出するように形成された光学フィルター係止部15によって、鏡筒10に対して固定される。
【0050】
上記の構造においては、第5レンズL5と鏡筒10あるいは他のレンズとの間の位置関係は、レンズホルダ51を介して定まるため、第5レンズL5とレンズホルダ51の間の位置関係が精密に定まることが要求される。後述するように、第5レンズL5はレンズホルダ51におけるレンズ収容孔51A内に収容されて固定されるが、このレンズホルダ51においては、この固定の際に、第5レンズL5の位置の微調整が可能とされる。以下に、このためのレンズホルダ51の構造について具体的に説明する。以下では、光軸A方向の物体側を上側、像側を下側とする。
【0051】
図4は、第5レンズ体L50の上側(a)、下側(b)からみた斜視図であり、図5は、この第5レンズ体L50の上面図である。後述するように、この第5レンズ体L50には、板バネ(レンズ付勢部材)52が用いられており、図6は、この第5レンズ体L50における板バネ52がない状態の上側からみた斜視図を示す。図7は、板バネ52及び第5レンズL5がない状態でのレンズホルダ51の上面図(a)、下面図(b)であり、図8はこの状態における上側からみた斜視図である。図4(a)、図5においては、便宜上第5レンズL5の物体側のレンズ面L5R1と板バネ52がハッチングされて示され、板バネ52は、レンズホルダ51に対して第5レンズL5が装着された状態で上側からレンズホルダ51に対して固定される。ここで、前記のように第5レンズL5はガラス製であるのに対して、レンズホルダ51は樹脂材料製であるため成形加工が容易である。このため、このような固定を行わせるための各種の構造は、主にレンズホルダ51側に形成され、第5レンズL5は主に光学的な機能を有する比較的単純な形状とされる。
【0052】
図4(a)、図6図8において、前記のように、レンズホルダ51における上側には、局所的に上側に向けて突出して第4レンズL4の第4レンズ下面L4Bと当接する物体側凸部L50Aが、周方向において等間隔で8箇所に設けられる。また、図4(b)において、レンズホルダ51における下側にも、局所的に下側に向けて突出する像側凸部L50Bが、径方向における異なる位置に3つずつ設けられる。このうち、径方向における外側の3つの像側凸部L50Bは、図1において接合レンズL60の接合レンズ上面L6Aと当接することによって、第5レンズL5と接合レンズL60の光軸A方向における位置関係を定める。また、内側の3つの像側凸部L50Bは、第5レンズL5をレンズホルダ51に物体側から組み込む際に、レンズホルダ51をステージに固定する際の脚部として用いられる。
【0053】
また、図8に示されるように、レンズホルダ51における物体側凸部L50Aよりも径方向内側は、物体側凸部L50Aが形成された面よりも更に段階的に像側に向けて掘り下げられており、最も径方向内側における光軸Aの周囲には、光軸Aに沿ってこれを貫通し第5レンズL5を収容するように設けられたレンズ収容孔51Aが形成される。図6図7(a)、図8に示されるように、径方向における物体側凸部L50Aが形成された箇所とレンズ収容孔51Aの間には、局所的に物体側に向けて突出する円形の板バネ固定部51Bが周方向に等間隔(位相差60°)で6つ形成されている。また、レンズ収容孔51Aの周囲において、レンズホルダ51の物体側(図中上側)の表面には、レンズ収容孔51Aと連結するように像側に向けて掘下げられた溝である接着剤収容溝51Cが周方向に6つ等間隔(位相差60°)で形成されている。図6図8に示されるように、隣接する板バネ固定部51Bの間の領域における接着剤収容溝51C以外の領域は、共通の水平面を構成するように形成されている。
【0054】
図9は、ここで用いられる板バネ52の光軸A方向物体側からみた平面図である。板バネ52は、弾性のある薄い板状の金属材料、例えばステンレス鋼やリン青銅で構成される。板バネ52の径方向内側においては、光軸A(図中中心)側に向けて局所的に突出する板バネ突出部(突出部)52Aが周方向で等間隔(位相差120°)で形成されている。板バネ52の径方向内側において、板バネ突出部52Aの周方向両側には、それぞれ板バネ突出部52Aよりも径方向外側に向けて局所的に後退した切り欠き部である接着剤収容溝用切り欠き部52Bが設けられる。接着剤収容溝用切り欠き部52Bはレンズホルダ51における接着剤収容溝51Cの各々に対応して形成され、図5に示されるように、板バネ52がレンズホルダ51に装着された際に、板バネ52に接着剤収容溝用切り欠き部52Bが設けられているため、6つの接着剤収容溝51Cは、それぞれ上面側で露出する。
【0055】
また、図9において、板バネ52の径方向外側において、光軸A側に向けて局所的に後退した切り欠き部である固定用切り欠き部52Cが、周方向で等間隔(位相差60°)で形成されている。固定用切り欠き部52Cはレンズホルダ51における板バネ固定部51Bに対応して形成され、図5に示されるように、6つの板バネ固定部51Bの各々を各固定用切り欠き部52Cに係止させることによって、板バネ52がレンズホルダ51に装着される。
【0056】
後述するように、第5レンズL5は、レンズ収容孔51Aに対して遊嵌の状態で収容される。すなわち、第5レンズL5は、レンズ収容孔51Aを構成する光軸Aと略平行な内面とは直接当接しない、あるいは部分的においてのみ当接し、少なくともこの内面と当接することのみによっては第5レンズL5のレンズホルダ51に対する位置は固定されない。このため、このレンズホルダ51におけるレンズ収容孔51A内に第5レンズL5を収容した後で、第5レンズL5の位置、あるいは第5レンズL5の姿勢(光軸A方向からの角度)の微調整が可能となる。
【0057】
ここで、前記のように、レンズホルダ51における上側には、板バネ52が装着される一方で、図7(a)、図8に示されるように、レンズ収容孔51Aにおける下側(板バネ52がある側と反対側:一方の側)には、第5レンズL5の像側の面L5R2と当接するようにレンズ収容孔51Aの内面から内側に向けて突出する第5レンズ係止部(ガラスレンズ係止部)51Dが周方向にわたり形成されている。この構成により、第5レンズL5は、レンズ収容孔51A内において、上側(他方の側)に設けられた板バネ52により物体側の面L5R1が下側に向けて付勢されると共に、像側の面L5R2が第5レンズ係止部51Dで係止されることによって、固定される。ただし、この固定は、板バネ52の弾性力のみによるものであるため、このように固定された状態においては、第5レンズL5の光軸Aからみた径方向における位置、あるいは第5レンズL5の光軸A方向からの角度は、微調整が可能である。
【0058】
図10は、このように第5レンズL5をレンズホルダ51に対して固定する際の形態を示す工程断面図である。図10(a)~(e)の断面は、図5におけるA-A方向(周方向において板バネ突出部52Aがある箇所)の断面に対応し、図10(f)のみは図5におけるB-B方向の断面(周方向において接着剤収容溝51Cがある箇所)に対応する。前記の通り、ここでは、第5レンズL5をレンズ収容孔51Aに収容した状態において、第5レンズL5の外周面(図中左右)と、これに対向するレンズ収容孔51Aの内面との間に空隙が形成されている。ただし、この空隙は図10においては強調されて記載されており、実際にはこの空隙はより小さい。
【0059】
まず、図10(a)に示されるように、板バネ52がまだレンズホルダ51に対して装着されていない状態のレンズホルダ51のレンズ収容孔51Aに対して、第5レンズL5が上側(像側:他方の側)から収容される(レンズ収容工程)。第5レンズL5の自重により、図10(b)に示されるように、第5レンズL5の像側(下側:一方の側)の面L5R2が第5レンズ係止部51Dで係止された状態で載置される。図6は、この状態における上側からみた斜視図となっている。
【0060】
この状態で、図10(c)に示されるように、板バネ52がレンズホルダ51に対して装着される(レンズ付勢部材固定工程)。この際、図5に示されるように、板バネ52に形成された6つの固定用切り欠き部52Cの各々にそれぞれ板バネ固定部51Bを係止させることで、板バネ52のレンズホルダ51に対する位置が固定される。その後、上側に突出した板バネ固定部51Bを熱で溶着することによって、板バネ52がレンズホルダ51に対して固定される。この固定方法では、板バネ52のレンズホルダ51に対する固定の位置精度は、例えば第5レンズL5の固定の位置精度に比べて大きく劣るが、板バネ52は第5レンズL5を付勢するためのみに用いられるため、高い位置精度は不要である。この状態では、第5レンズL5は、板バネ52における板バネ突出部52A(図中右側)によって上側から下向きに付勢され、下側で第5レンズ係止部51Dで係止される。図10(c)においては第5レンズL5は右側の1箇所のみで板バネ突出部52Aと当接しているが、図5に示されるように、実際には板バネ突出部52Aは周方向の3箇所で離間して設けられ、各箇所において第5レンズL5は下向きに付勢される。このため、これにより、第5レンズL5はレンズホルダ51に対して仮固定される。
【0061】
このように第5レンズL5が仮固定された状態においては、第5レンズL5のレンズ収容孔51A内における位置、姿勢(光軸Aに対する傾斜角)の微調整が可能である。すなわち、図10(d)に示されるように、2本の微調整用棒200を第5レンズL5と当接させて圧力を加えることにより、第5レンズL5の主に図中左右方向における位置、姿勢を調整することができる(調整工程)。この作業(光軸調整)の際には、図10(d)の状態とされたレンズホルダ51を治具に固定し、例えば光軸A上にスポット状のレーザー光を第5レンズL5に入射させ、透過後のレーザー光の位置をモニターしながら、この微調整を行うことによって第5レンズL5の左右方向における位置、姿勢を最適化することができる。なお、図5に示されるように、板バネ52においては、周方向で3箇所のみにおいて板バネ突出部52Aが設けられ、周方向における板バネ突出部52A以外の箇所は径方向において第5レンズL5よりも外側に位置する。このため、図10(d)に示されるように、2本の微調整用棒200を用いた調整作業を、板バネ突出部52A以外の箇所において容易に行うことができる。これにより、図10(e)に示されるように、第5レンズL5の位置が適正に微調整された状態で、第5レンズL5がレンズホルダ51に対して仮固定される。図示されるように、この状態では、第5レンズL5の外周面とレンズ収容孔51Aの内面には空隙が形成されている。
【0062】
その後、図10(f)に示されるように、接着剤収容溝51Cに固化前の接着剤を投入することにより、接着剤収容溝51C側から、第5レンズL5の外周面とレンズ収容孔51Aの内面との間の空隙を含んで接着剤層Sを形成することができ、接着剤の固化後にレンズホルダ51に対して第5レンズL5を強固に接合させることができる(固定工程)。この際、このような局所的な凹部である接着剤収容溝51Cを用いることにより、固化前の接着剤が第5レンズL5のレンズ面であるL5R1、L5R2に付着することも抑制される。
【0063】
図10(f)において、接着剤収容溝51Cはその周囲よりも下側に向けて掘り下げられて形成されているが、接着剤収容溝51Cの底面には、光軸A側(第5レンズL5がある側)に向けて更に掘り下げられた接着剤収容溝段部51C1が形成されている。これによって、接着剤を前記の空隙に流し込むことが更に容易となる。
【0064】
以上により、この第5レンズ体L50を製造する際には、レンズホルダ51に対する第5レンズL5の位置の微調整(調整工程)が可能であり、かつこの微調整の終了後に第5レンズL5を接着剤でレンズホルダ51に対して強固に接合すること(固定工程)ができる。
【0065】
上記の構成において、板バネ52は実際には製造工程においてのみ機能し、第5レンズL5の固定(図10(f))後には不要である。しかしながら、板バネ52が固定された図4図5の状態において板バネ52の板バネ突出部52Aが光路にに入らないように板バネ突出部52Aの突出量を調整すれば、板バネ52がレンズユニット1の光学特性に影響を及ぼすことはない。また、板バネ52は前記の通り薄い金属で構成されるため、軽量である。このため、板バネ52がレンズホルダ51に固定された状態でこの第5レンズ体L50を用いることができる。
【0066】
このような形状の第5レンズ係止部51Dは、レンズホルダ51の成形時において、高い位置精度、形状精度で容易に予め形成しておくことができる。ここで、図8に示されるように、前記のレンズホルダ51においては、レンズ収容孔51A内の下側において、第5レンズ係止部51Dは、円環形状の平面状に形成された。しかしながら、前記の鏡筒10におけるレンズ固定用リブ10B1と同様に、この平面に凸部を周方向において3つ以上分散して設け、この凸部を実質的な第5レンズ係止部として用いてもよい。第5レンズL5の特に光軸A方向の位置は第5レンズ係止部によって定まるところ、平面状の第5レンズ係止部51Dを用いた場合には、この位置精度はこの平面全体の精度で定まる。これに対して、このような凸部を設けた場合には、この凸部のみによってのみこの位置精度が定まるため、この位置精度を高めることが容易である。
【0067】
上記の例では、第5レンズL5は物体側(上側)からレンズホルダ51に対して装着され、レンズホルダ51において第5レンズ係止部51Dが像側(下側)に設けられ、板バネ52が第5レンズL5のレンズ収容孔51Aへの収容(レンズ収容工程)後にレンズホルダ51の物体側(上側)に対して固定された(レンズ付勢部材固定工程)。これらの上下関係(物体側・像側の関係)を全て逆転させてもよいことは明らかである。
【0068】
次に、上記の第5レンズ体L50の変形例について説明する。この変形例となる第5レンズ体L80においては、図10の場合と第5レンズL5を収容する向きは同様であるが、前記の第5レンズ体L50と比べて、板バネと第5レンズ係止部の位置が上下方向で逆転している。これに伴って、これらの形態及びレンズホルダの形態、第5レンズ体の製造方法が異なる。
【0069】
図11は、第5レンズ体L80の上側(a)、下側(b)からみた斜視図であり、図12は、この第5レンズ体L80の上面図(a)、下面図(b)である。図13は、この第5レンズ体L80における板バネ82が装着されているが第5レンズL5が装着されていない状態の上側からみた斜視図を示す。図14は、板バネ82及び第5レンズL5がない状態でのレンズホルダ81の上面図(a)、下面図(b)であり、図15はこの状態における下側からみた斜視図である。図11(b)、図12(b)、図13においては、便宜上第5レンズL5の像側のレンズ面L5R2と板バネ82がハッチングされて示されている。後述するように、板バネ82は、レンズホルダ81に対して第5レンズL5が装着される前に下側からレンズホルダ81に対して固定される。
【0070】
図11(a)、図12(a)、図13において、レンズホルダ81の上側に形成された物体側凸部L50Aについては、前記のレンズホルダ51におけるものと同様である。また、図11(b)、図12(b)、図14(b)において、レンズホルダ81の下側に形成された3つの像側凸部L50Bは、レンズホルダ51における下側の外側における3つの像側凸部L50Bと同様である。
【0071】
また、図13に示されるように、レンズホルダ81における物体側凸部L50Aよりも径方向内側は段階的に像側に向けて掘り下げられており、最も径方向内側には、第5レンズL5を収容するように設けられたレンズ収容孔81Aが形成される点についても同様である。レンズ収容孔81Aの周囲において接着剤収容溝81Cが周方向に6つ等間隔で形成されている点についても同様である。
【0072】
この第5レンズ体L80においては、板バネ82は、レンズホルダ81に対して下側から装着される。このため、第5レンズ体L50における板バネ固定部51Bに対応する板バネ固定部81Bは、図14(b)、図15に示されるように、レンズホルダ81の下側でレンズ収容孔81Aの外側において周方向に等間隔で3つ形成されている。各板バネ固定部81Bの周りの領域は、共通の水平面を構成するように形成されている。
【0073】
図16は、ここで用いられる板バネ82の光軸A方向像側からみた平面図である。板バネ82の径方向内側においては、第5レンズL5の像側の面L5R2を露出させる板バネ開口82Aが形成される。ただし、板バネ開口82Aの開口径は面L5R2よりも小さく設定されるため、板バネ82は第5レンズL5と当接し、第5レンズL5を物体側(上側)に付勢することができる。板バネ開口82Aの外側には、前記の板バネ固定部81Bに対応して形成された3つの固定用開口82Bが形成されており、各固定用開口82Bに各板バネ固定部81Bを係止することによって、板バネ82をレンズホルダ81に固定することができる。
【0074】
また、前記の第5レンズ体L50と同様に、第5レンズL5は、遊嵌された状態でレンズ収容孔81A内に収容される。このため、レンズ収容孔81A内に第5レンズL5を収容した後で、光軸Aからみた径方向の第5レンズL5の位置、あるいは第5レンズL5の姿勢の微調整が可能となる。
【0075】
ここで、前記のレンズホルダ51においては、第5レンズL5を下側で支持する第5レンズ係止部51Dが下側で周方向にわたり形成されていたのに対し、図11(a)、図12(a)、図13図14(a)に示されるように、第5レンズL5を上側で支持する第5レンズ係止部81Dが、レンズ収容孔81Aの外側の周方向における等間隔(120°)で3箇所に離間して形成される。また、後述するように、この第5レンズ係止部81Dは、カシメ加工(曲げ加工)によって第5レンズL5を上側で支持するような形状とされ、このカシメ加工前の初期状態においては第5レンズL5とは当接しないような形状とされる。
【0076】
図17は、このように第5レンズL5をレンズホルダ81に対して固定する際の形態を示す工程断面図である。図17(a)~(g)の断面は、図12(a)におけるC-C方向(周方向において第5レンズ係止部81Dがある箇所)の断面に対応し、図17(h)のみは図12(a)におけるD-D方向の断面(周方向において接着剤収容溝81Cがある箇所)に対応する。図10と同様に、ここでは、第5レンズL5をレンズ収容孔81Aに収容した状態において、第5レンズL5の外周面(図中左右)と、これに対向するレンズ収容孔81Aの内面との間に空隙が形成され、この空隙が強調されて示されている。
【0077】
まず、図17(a)に示されるように、板バネ82がレンズホルダ81に対して下側から装着されて固定される(レンズ付勢部材固定工程)。この際、図11(b)、図12(b)に示されるように、板バネ82に形成された3つの固定用開口82Bの各々にそれぞれ板バネ固定部81Bを係止させることで、板バネ82のレンズホルダ81に対する位置が固定され、下側に突出した板バネ固定部81Bを熱で溶着することによって、板バネ82がレンズホルダ81に対して固定される。この手法は図10(c)の場合とほぼ同様であり、板バネ82が下側に装着されることと、この場合には第5レンズL5がないことが異なる。図13は、この状態を上側からみた斜視図となっている。板バネ82のレンズホルダ81に対する高い位置精度は不要である点についても、前記の第5レンズ体L50と同様である。
【0078】
また、この状態において、第5レンズ係止部81Dは、カシメ加工が施される前の初期状態とされる。この初期状態においては、図示されるように、第5レンズ係止部81Dの先端は上側に向かってのみ突出し径方向内側には突出しない形状とされる。
【0079】
図10の製造方法においては、板バネ52が第5レンズL5と当接した状態で板バネ52をレンズホルダ51に固定する(図10(c))ことが必要であったのに対し、この場合においては、板バネ82はフリーの状態でレンズホルダ81に装着される。このため、板バネ52を特に容易にレンズホルダ81に対して装着することができる。
【0080】
次に、図17(b)に示されるように、この状態で、レンズホルダ81のレンズ収容孔81Aに対して、第5レンズL5が上側(像側)から収容される(レンズ収容工程)。前記のように、この状態では第5レンズ係止部81Dの先端は径方向内側には突出しないため、第5レンズ係止部81Dが第5レンズL5をレンズ収容孔81Aに収用する際の障害となることはない。これによって、第5レンズL5の自重により、図17(c)に示されるように、第5レンズL5の像側(下側)の面L5R2が板バネ82で係止された状態で載置される。
【0081】
次に、図17(d)に示されるように、この状態で、第5レンズ係止部81Dの先端を径方向内側(図中左側)に屈曲させるようにカシメ加工が行われる(ガラスレンズ係止部加工工程)。これによって、第5レンズL5の物体側の面L5R1と第5レンズ係止部81Dが当接する。図17(d)では一つの第5レンズ係止部81Dに係る構造が示されているが、前記の通り、第5レンズ係止部81Dは周方向で3箇所に設けられ、各箇所で同様の加工が行われる。このため、これにより、第5レンズL5は、上側(一方の側)で3つの第5レンズ係止部81Dで係止され、下側(他方の側)で板バネ82に係止された、図10(c)と同様の仮固定の状態となる。
【0082】
このため、図17(e)に示されるように、図10(d)と同様に、微調整用棒200を用いて、第5レンズL5の図中左右方向における位置、姿勢を調整することができる(調整工程)。ただし、図10(d)の場合とは異なり、この場合には、微調整用棒200を用いた調整が行われる側には、板バネ82は存在しないため、この作業は特に容易である。これによって、図17(f)に示されるように、レンズホルダ81に対して、第5レンズL5の位置、姿勢を微調整した状態で、第5レンズL5を仮固定することができる。
【0083】
その後、図17(g)に示されるように、図10(f)と同様に、接着剤収容溝81Cに固化前の接着剤を投入することにより、第5レンズL5の外周面とレンズ収容孔81Aの内面との間の空隙を含んで接着剤層Sを形成することができ、第5レンズL5がレンズホルダ81に対して強固に接合される(固定工程)。この際、接着剤収容溝81Cの底面の光軸A側(第5レンズL5がある側)に接着剤収容溝段部(段部)81C1が形成され、これによってこの工程を更に容易かつ確実に行うことができることも同様である。また、図10(f)の場合とは異なり、板バネ82は、接着剤収容溝81Cが設けられた側(上側)と反対側(下側)に設けられている。このため、図9に示された板バネ52と比べて、ここで用いられる板バネ82は、図16に示されるような、単純な円環形状とすることができる。ただし、板バネ82の特に径方向内側の形状は適宜設定することができ、前記の板バネ52(図9)と同様に、局所的に径方向内側に突出して局所的に第5レンズL5と当接する突出部を設けてもよい。
【0084】
この第5レンズ体L80を製造する際にも、レンズホルダ81に対する第5レンズL5の位置の微調整(調整工程)が可能であり、かつこの微調整の終了後に第5レンズL5を接着剤でレンズホルダ81に対して強固に接合すること(固定工程)ができる。この際、板バネ82は実際には製造工程においてのみ必要であるが、その後にこれを除去することは不要である点についても、前記の第5レンズ体L50の場合と同様である。また、第5レンズ体L80の構造及び製造工程における上下関係を全て逆転させてもよいことも同様である。
【0085】
図10の製造方法においては、第5レンズL5は板バネ52が装着される側(第5レンズ係止部51Dがある側と反対側)からレンズ収容孔51Aに収容された(レンズ収容工程)のに対し、図17の製造方法においては、第5レンズL5は第5レンズ係止部81Dがある側(板バネ82がある側と反対側)からレンズ収容孔51Aに収容された(レンズ収容工程)。このため、図17の製造方法においては、第5レンズL5をレンズ収容孔81Aに収容する前に予め板バネ82をレンズホルダ81に固定すること(レンズ付勢部材固定工程)ができる。一方、第5レンズL5をレンズ収容孔81Aに収容した後に、第5レンズ係止部81Dの曲げ加工を行うこと(ガラスレンズ係止部加工工程)が必要となる。
【0086】
上記の第5レンズ体L50(レンズホルダ51)、第5レンズ体L80(レンズホルダ81)のどちらを用いるかは、上記に説明された以外の観点から要求されるレンズホルダの形態等に基づき、より製造が容易な側を適宜定めることができる。
【0087】
なお、上記の例では、接着剤収容溝あるいは接着剤収容溝段部は、第5レンズL5が組み込まれる側(上側)に形成されたが、これらを組み込まれる側と反対側(下側)に設けてもよい。この場合、前記の第5レンズ体L80の場合には、板バネ82も、板バネ52(図9)と同様に、接着剤収容溝を露出させるような構造とすることができる。
【0088】
(本形態の主な特徴)
本実施形態の特徴を簡単に纏めると次の通りである。
(1)このレンズユニット1は、光軸A方向に配された複数のレンズ(L1~L7)と、複数のレンズを光軸Aからみた外側で保持する鏡筒10と、を備える。レンズのうちの一つはガラス製であるガラスレンズL5であり、ガラスレンズL5は、光軸Aからみた外側を樹脂材料製のレンズホルダ51又は81に支持され、レンズホルダ51又は81が鏡筒10に形成された空洞であるレンズ収容部10Bに固定されることによって鏡筒10に対して固定される。レンズホルダ51又は81は、遊嵌された状態でガラスレンズL5を収容するレンズ収容孔51A又は81Aと、レンズ収容孔51A又は81Aに収容されたガラスレンズL5を光軸方向に沿った一方の側(像(Im)側又は物体(Ob)側)で支持するガラスレンズ係止部51D又は81Dと、を具備し、レンズホルダ51又は81における光軸Aに沿った他方の側(物体(Ob)側又は像(Im)側)に、弾性材料で構成され、前記ガラスレンズを一方の側(像(Im)側又は物体(Ob)側)に向けて付勢するレンズ付勢部材52又は82が装着され、レンズ収容孔51A又は81Aの内面とガラスレンズL5の外周部とが、接着剤で接合されている。
【0089】
この構成においては、接着剤で固定される前の状態において、ガラスレンズL5が、レンズホルダ51又は81に対してレンズ付勢部材52又は82とガラスレンズ係止部51D又は81Dとの間で仮固定され、この仮固定の状態で、ガラスレンズL5のレンズホルダ51又は81に対する位置、姿勢の微調整が可能となる。この微調整の後でこれらが接着剤を用いて固定されるため、このレンズユニット1においては、高い結像特性が得られる。
【0090】
(2)また、ガラスレンズ係止部51Dは、レンズ収容孔51Aの像(Im)側において光軸A側に向けて一様に突出するように環状に形成されている。
この構成においては、このような形状のガラスレンズ係止部51Dを、高い位置精度、形状精度でレンズホルダ51の成形時に予め形成しておくことが特に容易である。
(3)ガラスレンズ係止部51Dは、光軸Aに垂直な平面上において物体(Ob)側に向けて局所的に突出するように離間して3つ以上形成された凸部を具備する。
このようにガラスレンズ係止部51Dが直接ガラスレンズL5と当接する部分を特定することによって、ガラスレンズL5とガラスレンズ係止部51Dとの間の位置関係を高精度に保つことが特に容易となる。
【0091】
(4)レンズホルダ51には、レンズホルダ51における物体(Ob)側の面が局所的に像(Im)側に向けて掘下げられた接着剤収容溝51Cがレンズ収容孔51Aと連結するように形成され、レンズ付勢部材52は、レンズ収容孔51Aを囲むように環状に形成され、物体(Ob)側からみて接着剤収容溝51Cを露出させる切り欠き部52Bと、光軸A側に向けて局所的に突出してガラスレンズL5における物体(Ob)側の面L5R1と当接し、光軸Aの周りの周方向において設けられた複数の突出部52Aと、を具備する。
この構成においては、接着剤収容溝51Cから、レンズ収容孔51Aの内面とガラスレンズL5の外周との間の空隙に固化前の接着剤を容易に流し込むことができ、これによって、ガラスレンズL5をレンズホルダ51に対して接着剤で強固に固定することが容易となる。一方、レンズ付勢部材52は、この工程を容易に行うことができると共に、適正にガラスレンズL5を付勢することができる形状とされる。
【0092】
(5)ガラスレンズ係止部81Dは、レンズ収容孔81Aの物体(Ob)側において光軸A側に向けて突出するように周方向における3箇所以上で離間して形成されている。
この構成においては、初期状態において、ガラスレンズ係止部81Dを、ガラスレンズL5をレンズ収容孔81Aに収容する際の障害とならないような形状とし、ガラスレンズL5を収容した後で、ガラスレンズ係止部81Dを、ガラスレンズL5を係止するような形状に加工することができる。このため、ガラスレンズ係止部81Dがある側からガラスレンズL5をレンズホルダ81に装着することができる。
【0093】
(6)レンズホルダ81には、レンズホルダ81における物体(Ob)側の面が局所的に像(Im)側に向けて掘下げられた接着剤収容溝81Cがレンズ収容孔81Aと連結するように形成され、物体(Ob)側からみて、ガラスレンズ係止部81Dは、前記接着剤収容溝と重複しないように形成されていてもよい。
この構成においては、ガラスレンズL5をレンズホルダ81に装着する側にガラスレンズ係止部81Dを設けた場合でも、接着剤収容溝81Cをこちらの側に設け、これを用いてガラスレンズL5をレンズホルダ81に対して接着剤で強固に固定することが容易となる。
【0094】
(7)このレンズユニット1の製造方法においては、レンズ収容孔51Aに対してガラスレンズL5を物体(Ob)側から像(Im)側に向けて挿入するレンズ収容工程と、ガラスレンズL5がレンズ収容孔51Aに収容された状態で、レンズ付勢部材52をレンズホルダ51に固定することによりガラスレンズL5をレンズホルダ51に対して仮固定するレンズ付勢部材固定工程と、仮固定されたガラスレンズL5に力を加えることによってガラスレンズL5のレンズ収容孔51A内の位置あるいは姿勢を調整する調整工程と、を具備する。
この製造方法においては、ガラスレンズL5が収容される側にレンズ付勢部材51が、ガラスレンズL5が収容される側と反対側にガラスレンズ係止部51Dが、それぞれ設けられ、レンズ収容工程の後でレンズ付勢部材固定工程が行われた後に、調整工程が行われる。この場合、ガラスレンズ係止部51Dは、レンズホルダ51の製造時においてレンズホルダ51に形成されたままの状態で用いられ、ガラスレンズL5とガラスレンズ係止部51Dとの間の位置関係を高精度に保つことが特に容易となる。この状態で、ガラスレンズL5の位置、姿勢の微調整を容易に行うことができる。
【0095】
(8)このレンズユニット1の製造方法において、ガラスレンズ係止部81Dは、初期状態ではレンズ収容孔81Aに収容されたガラスレンズL5と当接しない形状に形成され、ガラスレンズL5がレンズ収容孔81Aに収容されない状態で、レンズ付勢部材82をレンズホルダ81に固定するレンズ付勢部材固定工程と、レンズ付勢部材82が固定された状態のレンズホルダ81におけるレンズ収容孔81Aに対して、ガラスレンズL5を物体(Ob)側から像(Im)側に向けて挿入するレンズ収容工程と、ガラスレンズL5がレンズ収容孔81Aに収容された状態で、ガラスレンズ係止部81Dを曲げ加工してガラスレンズ係止部81DにガラスレンズL5を係止させることによりガラスレンズL5をレンズホルダ81に対して仮固定するガラスレンズ係止部加工工程と、仮固定されたガラスレンズL5に力を加えることによってガラスレンズL5のレンズ収容孔81A内の位置あるいは姿勢を調整する調整工程と、を具備する。
この製造方法においては、ガラスレンズL5が収容される側にガラスレンズ係止部81Dが、ガラスレンズL5が収容される側と反対側にレンズ付勢部材82が、それぞれ設けられ、レンズ付勢部材固定工程が行われた後に、レンズ収容工程、ガラスレンズ係止部加工工程、調整工程が順次行われる。この場合、レンズ付勢部材82をフリーの状態でレンズホルダ81に装着することができるため、レンズ付勢部材82の装着が容易である。また、レンズ収容工程において、ガラスレンズ係止部81Dが障害となることもない。その後、ガラスレンズL5の位置、姿勢の微調整を容易に行うことができる。
【0096】
(9)調整工程後におけるガラスレンズL5とレンズ収容孔51A又は81Aの内面との間を接着剤で固定する固定工程を具備する。
この構成においては、ガラスレンズL5とレンズ収容孔51A又は81Aの内面との間を接着剤で固定することによって、ガラスレンズL5が固定される。この際、接着剤収容溝51C又は81Cを用いることもできる。
【0097】
なお、レンズ系における上記のようなガラスレンズ(ガラスレンズ体)、あるいはこれと隣接する他のレンズ以外のレンズの数、構成は任意である。
【0098】
本発明を、実施形態及びその変形例をもとに説明したが、この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせ等にいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0099】
1 レンズユニット
10 鏡筒
10A 第1収容部
10B 第2収容部
10B1 レンズ固定用リブ
11 第1載置部
11A Oリング収容溝
12 第2載置部
13 第1レンズ係止部
14 第2レンズ係止部
15 光学フィルター係止部
20 絞り
21 遮光板
22 光学フィルター
30 Oリング
51、81 レンズホルダ
51A、81A レンズ収容孔
51B、81B 板バネ固定部
51C、81C 接着剤収容溝
51C1、81C1 接着剤収容溝段部
51D、81D 第5レンズ係止部(ガラスレンズ係止部)
52、82 板バネ(レンズ付勢部材)
52A 板バネ突出部(突出部)
52B 接着剤収容溝用切り欠き部(切り欠き部)
52C 固定用切り欠き部
82A 板バネ開口
82B 固定用開口
100 撮像素子
200 微調整用棒
A 光軸
Im 像(側)
L1 第1レンズ
L1A 第1レンズ下面
L1B 第1レンズ外周面
L2 第2レンズ
L2A 第2レンズ上面
L2B 第2レンズ下面
L2C 第2レンズ外周面
L3 第3レンズ
L3A 第3レンズ上面
L3B 第3レンズ下面
L3C 第3レンズ外周面
L4 第4レンズ
L4A 第4レンズ上面
L4B 第4レンズ下面
L4C 第4レンズ外周面
L5 第5レンズ(ガラスレンズ)
L6 第6レンズ
L6A 接合レンズ上面
L6B 接合レンズ下面
L6C、L7A 段差部(係合構造)
L6D 第6レンズ外周面
L7 第7レンズ
L50、L80 第5レンズ体(ガラスレンズ体)
L50A 物体側凸部
L50B 像側凸部
L50C 第5レンズ体外周面
L60 接合レンズ
Ob 物体(側)
R1 第1表面
R2 第2表面
S 接着剤層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17