(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060834
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】無菌コネクタ
(51)【国際特許分類】
A61M 39/10 20060101AFI20240425BHJP
F16L 37/098 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
A61M39/10 120
F16L37/098
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168378
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005175
【氏名又は名称】藤倉コンポジット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100189289
【弁理士】
【氏名又は名称】北尾 拓洋
(72)【発明者】
【氏名】武石 大一
(72)【発明者】
【氏名】北▲詰▼ 哲也
【テーマコード(参考)】
3J106
4C066
【Fターム(参考)】
3J106BA01
3J106BB01
3J106BC04
3J106BD01
3J106BE14
3J106EA03
3J106EB11
3J106EC01
3J106EC06
3J106ED06
3J106ED41
3J106EE02
4C066JJ02
4C066JJ04
4C066JJ07
4C066JJ10
(57)【要約】
【課題】簡単な構成でありながら誤操作を十分に防止する無菌コネクタを実現する。
【解決手段】各コネクタ部10が、結合時に結合相手のコネクタ部10に対向する対向面11に開口部13aを持つ流体の流路13を有するコネクタ本体1と、結合前には、開口部13aを塞ぐ態様で対向面11上に一端部が接着され残りの部分が折り返された折り返し状態で配置される膜部材2と、を備え、コネクタ本体1が、対向面11から突出した突起部14であって、膜部材2の残りの部分が折り返されることなく一端部からそのまま延びて膜部材2が対向面11に沿って平坦に延びている一重状態に向かって折り返し状態の膜部材2の残りの部分がその折り返しを解消するように折り返し状態から回転した場合に、膜部材2が一重状態に到達することを妨げるように、回転する残りの部分が通る経路上に延びる突起部14を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流路をそれぞれ有する2つのコネクタ部で構成され、外部からの雑菌の侵入を抑制しつつ、前記2つのコネクタ部が結合して該2つのコネクタ部の前記流路が連通することで、該2つのコネクタ部の間の流体の流通が実現する無菌コネクタにおいて、
前記2つのコネクタ部のそれぞれが、
前記2つのコネクタ部の結合時に結合相手のコネクタ部に対向する対向面において結合相手のコネクタ部に結合するための結合機構を有するとともに、前記対向面に開口部を持つ流体の流路を有するコネクタ本体と、
帯形状を有する膜部材であって、前記2つのコネクタ部の結合前には、前記コネクタ本体の前記開口部を塞ぐ態様で前記対向面上に一端部が接着されるとともに該一端部以外の残りの部分の一部が前記一端部に重なる態様で前記残りの部分が折り返された折り返し状態で配置され、前記2つのコネクタ部の結合後には、折り返された前記残りの部分の延びる方向に前記一端部とは反対側の他端部が引かれて前記一端部が前記対向面から剥がされることで前記開口部を開放して前記2つのコネクタ部の前記流路を連通させる膜部材と、を備え、
前記コネクタ本体が、前記対向面から突出した突起部であって、前記膜部材の前記残りの部分が折り返されることなく前記一端部からそのまま延びて前記膜部材が前記対向面に沿って平坦に延びている一重状態に向かって前記折り返し状態の前記膜部材の前記残りの部分がその折り返しを解消するように前記折り返し状態から回転した場合に、前記膜部材が前記一重状態に到達することを妨げるように、回転する前記残りの部分が通る経路上に延びる突起部を有するものである無菌コネクタ。
【請求項2】
前記2つのコネクタ部の結合時には、前記2つのコネクタ部の前記対向面は、前記2つのコネクタ部の2枚の前記折り返し状態の前記膜部材を間に置いて前記対向面における前記開口部を互いに対向させた状態で互いに当接した当接状態になるものであり、
前記2つのコネクタ部の結合時には、前記2つのコネクタ部それぞれの前記突起部は、前記結合相手のコネクタ部の前記対向面から外れた、前記当接状態の実現を妨げない所定位置に配置されるものである請求項1に記載の無菌コネクタ。
【請求項3】
前記突起部は、前記対向面から立設し前記対向面に沿って壁状に広がって延びるものであって、前記壁状のうちの前記対向面側の下側部分が欠けた切り欠け部を有するものであり、前記突起部は、前記膜部材の前記残りの部分が、前記折り返し状態から回転して前記一重状態に到達することは妨げつつ、前記膜部材の前記残りの部分が前記切り欠け部と前記対向面の間を通って前記膜部材が前記一重状態になることは許すものである請求項2に記載の無菌コネクタ。
【請求項4】
前記一重状態にある前記膜部材は、前記結合相手のコネクタ部の前記突起部が前記2つのコネクタ部の結合時に位置する前記所定位置に重なるものであり、前記一重状態にある前記膜部材が存在することで前記所定位置へ配置不能となった前記結合相手のコネクタ部の前記突起部によって、前記一重状態にある前記膜部材を有する前記2つのコネクタ部同士の結合が阻止される請求項3に記載の無菌コネクタ。
【請求項5】
前記2つのコネクタ部は同一形状を有するものであって、前記2つのコネクタ部それぞれの、前記折り返し状態にある前記膜部材が互いに重なり合う態様で前記2つのコネクタ部が結合し、重なり合った2枚の前記膜部材の前記他端部が同時に引っ張られて前記一端部が前記対向面から剥がされることで前記2つのコネクタ部の前記流路が連通するものであり、
2枚の前記膜部材の前記他端部には、該他端部を同時に引っ張るためのリング状の穴が2枚の前記膜部材の同一位置に形成されている請求項1~4のいずれか一項に記載の無菌コネクタ。
【請求項6】
前記膜部材は、前記リング状の穴が形成された前記他端部を含め全体が同一の材料により一体的に形成されたものである請求項5に記載の無菌コネクタ。
【請求項7】
前記膜部材は、帯形状を有する膜本体の端部に、前記他端部として、前記膜本体とは異なる材料で形成されたリング状部材を接着することで形成されたものである請求項5に記載の無菌コネクタ。
【請求項8】
前記コネクタ本体が、前記結合機構として、前記対向面から突出したラチェット爪と、前記対向面から凹んだラチェット爪受入部とを有するものであり、該ラチェット爪および該ラチェット爪受入部は、前記結合相手のコネクタ部の前記ラチェット爪受入部および前記ラチェット爪とそれぞれ係合するものであって、該係合により前記2つのコネクタ部が結合して該2つのコネクタ部の前記対向面の前記当接状態が実現するものである請求項2~4のいずれか一項に記載の無菌コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つのコネクタ部で構成され、外部からの雑菌の侵入を抑制しつつこれら2つのコネクタ部が結合することでこれら2つのコネクタ部の間における流体の流通を実現する無菌コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
医療機器の分野では、薬液等の流体が流れる管や、こうした流体を含む容器や、こうした流体を処理する医療用装置などを互いに接続しこれらの間で流体を流通させるための医療用コネクタが従来から知られている。こうした医療用コネクタは、2つのコネクタ部で構成されており、これら2つのコネクタ部が結合することでこれら2つのコネクタ部の間における流体の流通が実現する。
【0003】
こうした医療用コネクタの中には、外部からの雑菌の侵入を抑制しつつこれら2つのコネクタ部の結合が行われるものがあり、無菌コネクタと呼ばれている。無菌コネクタの中には、各コネクタ部内の流体の流路の開口部が膜(フィルム)で覆われた状態で2つのコネクタ部同士を結合させ、これらコネクタ部の2枚の膜を同時に引き抜くことによって流体の流通が実現する、いわゆるフィルム式の無菌コネクタが知られている(たとえば特許文献1~3参照)。このタイプの無菌コネクタでは、結合した状態であっても2枚の膜を引き抜くまでは流体の流路は外部から遮断されているため、雑菌が流体の流路に入り込むリスクがきわめて低くなっている。
【0004】
こうしたフィルム式の無菌コネクタの結合前のコネクタ部では、流体の流路の開口部に膜の一方の端部が接着された後に膜の残りの部分が折り返されて、接着された膜の端部の上に膜の残りの部分の一部が重なる態様で膜が配置されていることが多い(たとえば、特許文献1の
図4Aの符号400および特許文献3の
図1の符号9を参照)。このように膜を配置すると、コネクタ部同士を結合して膜を引き抜く際に、開口部に接着された膜の端部のうち、引き抜く方向の上流側の部分から少しずつ膜が開口部から剥がれていくこととなる。このため、膜を開口部に接着してから膜を折り返すことなく一重の状態のままで膜を引き抜く場合に比べると、膜の接着箇所への衝撃が小さく膜の引き抜きがスムーズに行われることとなり、膜の引き抜き時における無菌コネクタの結合状態の安定性が高くなる。また、このような膜の配置では、露出しているために汚染されているおそれがある膜の外側の面が開口部に触れにくくなるので、衛生面の観点からも好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第10307583号明細書
【特許文献2】特許第6535902号公報
【特許文献3】特表2017-505408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、無菌コネクタのユーザの中には、そのような膜の折り返しの理由を知らずに無菌コネクタを使用するユーザもあり、そうしたユーザが、誤って膜の折り返しを解消して一重の状態にしてから膜を引き抜こうとする可能性がある。そこで、こうした誤操作を防止する工夫が望まれる。
【0007】
このような誤操作防止の手法としては、たとえば、膜を引き抜く際のつまみ(タブ)となる部材を膜に取り付けてさらにその部材に特殊な構造を持たせることで膜の折り返しの誤操作をしにくくすることが考えられる(たとえば、特許文献1の
図1~
図4の符号300を参照)。しかしながら、このような特殊な構造を持つ部材の採用は無菌コネクタ全体の構造の複雑化を招くこととなり、無菌コネクタ製造の生産性の低下を招くおそれがある。
【0008】
特に近年では、細胞培養等を目的とする医療システムにおいて、培養液等の少流量の流体の流通のための無菌コネクタの需要が高まっており、生産性を向上させることで、より安価な無菌コネクタを提供することが望まれている。このため、少流量の流体の流通のための無菌コネクタでは、簡単な構成で誤操作を防止する工夫の必要性が特に高い。
【0009】
上記の事情を鑑み、本発明は、簡単な構成でありながら誤操作を十分に防止する無菌コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するため、本発明は、以下の無菌コネクタを提供する。
【0011】
[1] 流体の流路をそれぞれ有する2つのコネクタ部で構成され、外部からの雑菌の侵入を抑制しつつ、前記2つのコネクタ部が結合して該2つのコネクタ部の前記流路が連通することで、該2つのコネクタ部の間の流体の流通が実現する無菌コネクタにおいて、前記2つのコネクタ部のそれぞれが、前記2つのコネクタ部の結合時に結合相手のコネクタ部に対向する対向面において結合相手のコネクタ部に結合するための結合機構を有するとともに、前記対向面に開口部を持つ流体の流路を有するコネクタ本体と、帯形状を有する膜部材であって、前記2つのコネクタ部の結合前には、前記コネクタ本体の前記開口部を塞ぐ態様で前記対向面上に一端部が接着されるとともに該一端部以外の残りの部分の一部が前記一端部に重なる態様で前記残りの部分が折り返された折り返し状態で配置され、前記2つのコネクタ部の結合後には、折り返された前記残りの部分の延びる方向に前記一端部とは反対側の他端部が引かれて前記一端部が前記対向面から剥がされることで前記開口部を開放して前記2つのコネクタ部の前記流路を連通させる膜部材と、を備え、前記コネクタ本体が、前記対向面から突出した突起部であって、前記膜部材の前記残りの部分が折り返されることなく前記一端部からそのまま延びて前記膜部材が前記対向面に沿って平坦に延びている一重状態に向かって前記折り返し状態の前記膜部材の前記残りの部分がその折り返しを解消するように前記折り返し状態から回転した場合に、前記膜部材が前記一重状態に到達することを妨げるように、回転する前記残りの部分が通る経路上に延びる突起部を有するものである無菌コネクタ。
【0012】
[2] 前記2つのコネクタ部の結合時には、前記2つのコネクタ部の前記対向面は、前記2つのコネクタ部の2枚の前記折り返し状態の前記膜部材を間に置いて前記対向面における前記開口部を互いに対向させた状態で互いに当接した当接状態になるものであり、
前記2つのコネクタ部の結合時には、前記2つのコネクタ部それぞれの前記突起部は、前記結合相手のコネクタ部の前記対向面から外れた、前記当接状態の実現を妨げない所定位置に配置されるものである[1]に記載の無菌コネクタ。
【0013】
[3] 前記突起部は、前記対向面から立設し前記対向面に沿って壁状に広がって延びるものであって、前記壁状のうちの前記対向面側の下側部分が欠けた切り欠け部を有するものであり、前記突起部は、前記膜部材の前記残りの部分が、前記折り返し状態から回転して前記一重状態に到達することは妨げつつ、前記膜部材の前記残りの部分が前記切り欠け部と前記対向面の間を通って前記膜部材が前記一重状態になることは許すものである[2]に記載の無菌コネクタ。
【0014】
[4] 前記一重状態にある前記膜部材は、前記結合相手のコネクタ部の前記突起部が前記2つのコネクタ部の結合時に位置する前記所定位置に重なるものであり、前記一重状態にある前記膜部材が存在することで前記所定位置へ配置不能となった前記結合相手のコネクタ部の前記突起部によって、前記一重状態にある前記膜部材を有する前記2つのコネクタ部同士の結合が阻止される[3]に記載の無菌コネクタ。
【0015】
[5] 前記2つのコネクタ部は同一形状を有するものであって、前記2つのコネクタ部それぞれの、前記折り返し状態にある前記膜部材が互いに重なり合う態様で前記2つのコネクタ部が結合し、重なり合った2枚の前記膜部材の前記他端部が同時に引っ張られて前記一端部が前記対向面から剥がされることで前記2つのコネクタ部の前記流路が連通するものであり、2枚の前記膜部材の前記他端部には、該他端部を同時に引っ張るためのリング状の穴が2枚の前記膜部材の同一位置に形成されている[1]~[4]のいずれかに記載の無菌コネクタ。
【0016】
[6] 前記膜部材は、前記リング状の穴が形成された前記他端部を含め全体が同一の材料により一体的に形成されたものである[5]に記載の無菌コネクタ。
【0017】
[7] 前記膜部材は、帯形状を有する膜本体の端部に、前記他端部として、前記膜本体とは異なる材料で形成されたリング状部材を接着することで形成されたものである[5]に記載の無菌コネクタ。
【0018】
[8] 前記コネクタ本体が、前記結合機構として、前記対向面から突出したラチェット爪と、前記対向面から凹んだラチェット爪受入部とを有するものであり、該ラチェット爪および該ラチェット爪受入部は、前記結合相手のコネクタ部の前記ラチェット爪受入部および前記ラチェット爪とそれぞれ係合するものであって、該係合により前記2つのコネクタ部が結合して該2つのコネクタ部の前記対向面の前記当接状態が実現するものである[2]~[4]のいずれかに記載の無菌コネクタ。
【発明の効果】
【0019】
本発明の無菌コネクタでは、膜部材の折り返しを解消するように、折り返された部分(残りの部分)を回転させて膜部材を一重状態にすることが、対向面から突出した突起部により妨げられている。このような突起部を設けるだけで、ユーザが誤って膜部材の折り返しを解消して一重状態にしてから膜部材を引き抜くといった誤操作が阻止されるため、本発明では、簡単な構成でありながら誤操作を十分に防止する無菌コネクタが実現している。このような効果は、需要が高まっている、少流量の流体の流通のための無菌コネクタに対しては特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態の無菌コネクタの構成要素であるコネクタ部の外観斜視図である。
【
図2】
図1のコネクタ部を
図1のV方向から見た上面図である。
【
図3】
図1のコネクタ部を
図1のS
1方向から見た側面図である。
【
図4】
図1のコネクタ部を
図1のS
2方向から見た側面図である。
【
図5】
図3および
図4の膜部材の残りの部分がさらに折り畳まれている様子を表す外観斜視図である。
【
図6】2つのコネクタ部10が結合する直前の本実施形態の無菌コネクタの側面図である。
【
図7】
図6の2つのコネクタ部が結合した直後の無菌コネクタの側面図である。
【
図9】
図7の2つのコネクタ部から膜部材が引き抜かれて流路が連通した時の無菌コネクタの外観斜視図である。
【
図11】膜部材の残りの部分が切り欠け部と対向面の間を通ることで一重状態となった膜部材を表した側面図である。
【
図12】突起部において切り欠け部を有する部分が
図1とは異なる形状をしているコネクタ部の外観斜視図である。
【
図13】突起部において切り欠け部を有する部分が
図1とは異なる形状をしているコネクタ部の外観斜視図である。
【
図14】突起部において切り欠け部を有する部分が
図1とは異なる形状をしているコネクタ部の外観斜視図である。
【
図15】突起部において切り欠け部を有する部分が
図1とは異なる形状をしているコネクタ部の外観斜視図である。
【
図16】突起部において切り欠け部を有する部分が
図1とは異なる形状をしているコネクタ部の外観斜視図である。
【
図17】帯形状を有する膜本体の端部に、他端部として、膜本体とは異なる材料で形成されたリング状部材を接着することで形成された膜部材を備えたコネクタ部の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0022】
本実施形態の無菌コネクタは、流体の流路をそれぞれ有する2つのコネクタ部で構成されている。本実施形態の無菌コネクタでは、外部からの雑菌の侵入を抑制しつつ、これら2つのコネクタ部が結合しその流路が連通することで、これら2つのコネクタ部の間の流体の流通が実現する。これら2つのコネクタ部は同一の構成を有しており、以下では、まず、これら2つのコネクタ部のうちの1つである単体のコネクタ部について説明する。
【0023】
図1は、本実施形態の無菌コネクタの構成要素であるコネクタ部10の外観斜視図であり、
図2は、
図1のコネクタ部10を
図1のV方向から見た上面図である。また、
図3は、
図1のコネクタ部10を
図1のS
1方向から見た側面図であり、
図4は、
図1のコネクタ部10を
図1のS
2方向から見た側面図である。
【0024】
コネクタ部10は、コネクタ本体1と膜部材2とを備えている。
【0025】
コネクタ本体1は、2つのコネクタ部10の結合時に結合相手のコネクタ部10に対向する対向面11において結合相手のコネクタ部10に結合するための結合機構12を有している。コネクタ本体1はさらに、対向面11に開口部13aを持つ流体の流路13を有している。なお、流路13やその開口部13aは外部からは見えないため、
図1および
図2では点線で示されている。ここで、流路13の、開口部13aとは反対側には、取付部131が形成されており(
図1参照)、この取付部131には本実施形態の無菌コネクタの外部の医療用の管等が取り付けられて外部からの流体の流入・外部への流体の流出が行われる。また、コネクタ本体1は、対向面11から突出した突起部14を有している。後述するように突起部14は、ユーザの誤操作を防止するための部位であり、突起部14については、後で詳しく説明する。
【0026】
膜部材2は、帯形状を有する部材である。2つのコネクタ部10の結合前には、膜部材2は、コネクタ本体1の開口部13aを塞ぐ態様で対向面11上に一端部21が接着されているとともに一端部21以外の残りの部分22の一部が一端部21に重なる態様で残りの部分22が折り返された状態で配置されている(
図4参照)。以下、この状態を折り返し状態と呼ぶ。後述するように2つのコネクタ部10の結合後には、折り返された残りの部分22の延びる方向(
図3および
図4の矢印方向)に一端部21とは反対側の他端部23が引かれて一端部21が対向面11から剥がされる。このようにして膜部材2は、開口部13aを開放して2つのコネクタ部10の流路を連通させる。
【0027】
図3および
図4では、折り返し状態における膜部材2の残りの部分22は、折り返しの箇所から一方向にまっすぐに延びるものとしては図示されているが、コネクタ部10をコンパクトにする観点から残りの部分22をさらに折り畳んでもよい。
【0028】
図5は、
図3および
図4の膜部材2の残りの部分22がさらに折り畳まれている様子を表す外観斜視図である。
【0029】
図5のように膜部材2がさらに折り畳まれているとコネクタ部10がコンパクトになるため、使用前の状態としては好ましい。このような
図5の状態から矢印A
1方向に、そのさらに折り畳まれた部分の膜部材2を回転させれば
図1の状態となる。
【0030】
以上では、コネクタ部10の構成要素としてコネクタ本体1と膜部材2とについて説明したが、コネクタ部10には、他の構成要素として、対向面11において開口部13aの周囲に配置された不図示の環状シール部材も備えられている。環状シール部材は、2つの結合時および結合後における流路13のシール性を保持するための、弾性材からなる部材である。このような環状シール部材は、従来のもの(たとえば特許文献2の符号230や特許文献3の符号6参照)と同様であり、環状シール部材についてのこれ以上の詳しい説明は省略する。
【0031】
次に、本実施形態における2つのコネクタ部10の結合とその流路13の連通について説明する。なお、以下では、
図1の取付部131に取り付けられる外部の医療用の管等の図示は省略した状態で流路13の連通について説明を行う。
【0032】
図6は、2つのコネクタ部10が結合する直前の本実施形態の無菌コネクタ100の側面図、
図7は、
図6の2つのコネクタ部10が結合した直後の無菌コネクタ100の側面図である。また、
図8は、
図7の無菌コネクタ100の外観斜視図、
図9は、
図7の2つのコネクタ部10から膜部材2が引き抜かれて流路が連通した時の無菌コネクタ100の外観斜視図である。
【0033】
2つのコネクタ部10の結合直前の本実施形態の無菌コネクタ100では、各コネクタ部10の対向面11が互いに対向し、かつ、2つのコネクタ部10それぞれの流路13が互いの延長上に位置する(
図6の一点鎖線参照)ように2つのコネクタ部10が配置される。この状態で2つのコネクタ部10は、
図6の太線矢印で示すように相対的に互いに接近し、
図1および
図2の結合機構12により結合して
図7および
図8に示す状態となる。このとき、2つのコネクタ部10それぞれの折り返し状態(
図4の膜部材2の状態参照)にある膜部材2は互いに重なり合っており、2枚の折り返し状態の膜部材2を間に置いて開口部13aを互いに対向させた状態で対向面11が互いに当接した当接状態が実現する。なお、当接状態では、2つのコネクタ部10の2枚の膜部材2は互いに重なっているため、
図7では一本の太い線として図示されており、
図8ではあたかも1枚の膜部材2のように図示されている。
【0034】
ここで、結合機構12としては、たとえば、
図1および
図2に示すように、対向面11から突出したラチェット爪121と、対向面11から凹んだラチェット爪受入部122とを有するものを採用することができる。ラチェット爪121およびラチェット爪受入部122は、
図6の状態において、これらがそれぞれ対向する、結合相手のコネクタ部10のラチェット爪受入部122およびラチェット爪121とそれぞれ係合するものである。より詳しく説明すると、ラチェット爪121の先端の鉤状部分がラチェット爪受入部122内の引っ掛かり部に引っ掛かってラチェット爪受入部122内に嵌まり込むことでラチェット爪受入部122およびラチェット爪121とが係合する。この係合により2つのコネクタ部10が結合し上述した対向面11の当接状態が実現する。
【0035】
このようにラチェット爪121およびラチェット爪受入部122を用いた結合機構12では、ラチェット爪121をラチェット爪受入部122に差し込むだけで2つのコネクタ部10が結合する。このため、回転操作や別途の固定手段等は不要であり2つのコネクタ部10を結合させるのがきわめて容易である。ただし、本発明では、結合機構としては、上述したようなラチェット方式以外の結合手段を採用してもよい。たとえば、ネジで2つのコネクタ部10を固定する方式が採用されてもよい。
【0036】
2つのコネクタ部10の結合とその流路13の連通について説明を続ける。
【0037】
図7および
図8に示すように、2つのコネクタ部10が結合し対向面11の当接状態が実現した後、次に、重なり合った2枚の膜部材2の他端部23が
図8の矢印A
2方向に同時に引っ張られる。これにより、それぞれの膜部材2の一端部21(
図8では不図示・
図3および
図4参照)が対向面11から剥がされて2枚の膜部材2が引き抜かれ(
図9参照)、2つのコネクタ部10の流路13(
図7参照)が連通する。
【0038】
以上が、本実施形態の無菌コネクタ100における2つのコネクタ部10の結合とその流路13の連通についての説明である。
【0039】
本実施形態の無菌コネクタ100では、
図3および
図4に示すように、流体の流路13の開口部13aに膜部材2の一端部21が接着された後に残りの部分22が折り返されて、残りの部分22の一部が一端部21の上に重なる態様で膜部材2が配置される。このような配置では、2つのコネクタ部10同士を結合して
図8のように膜部材2を引き抜く際に、接着された膜部材2の一端部21のうち、引き抜く方向(
図8の矢印A
2方向)の上流側の部分から少しずつ膜が開口部13aから剥がれていくこととなる。このため、仮に膜部材2を開口部13aに接着してから膜部材2の残りの部分22を折り返すことなく一重状態のままで膜部材2を引き抜くとした場合に比べると、膜部材2の接着箇所への衝撃が小さく膜の引き抜きがスムーズに行われる。この結果、膜部材2の引き抜き時における無菌コネクタ100の結合状態の安定性が高くなる。
【0040】
しかしながら、無菌コネクタ100のユーザの中には、そのような膜部材2の折り返しの理由を知らずに無菌コネクタ100を使用するユーザもある。そうしたユーザが、誤って、
図3および
図4に示すような膜部材2の折り返しを解消して一重状態にしてから2つのコネクタ部10を結合して膜部材2を引き抜こうとすることは十分に考えられる。本実施形態の無菌コネクタ100では、こうした誤操作を防止するために、
図1~
図4に示す、コネクタ本体1の対向面11から突出した突起部14が備えられており、以下では、突起部14による誤操作防止について説明する。
【0041】
【0042】
仮にユーザが誤って、
図3および
図4の折り返し状態の膜部材2における残りの部分22を、その折り返しを解消するように折り返し状態から一重状態に向かって
図10のA
3方向に回転したとする。ここで、一重状態とは、
図3および
図4の膜部材2の残りの部分22が
図3および
図4のように折り返されることなく一端部21からそのまま延びて膜部材3全体が対向面11に沿って平坦に延びている状態を指している(なお後述の
図11も合わせて参照)。
【0043】
図10に示すように、突起部14は、
図10のA
3方向に回転する膜部材2の残りの部分22が通る経路上に延びており、この突起部14の存在のため、膜部材2が上述の一重状態に到達することが妨げられる。なお、突起部14が膜部材2の残りの部分22の回転経路上に存在することは、コネクタ本体1を上側から(
図1のV方向から)見たときの図である
図2において、突起部14の一部が、残りの部分22の延長線である2本の一点鎖線の間に存在することからもわかる。
【0044】
このように、本実施形態の無菌コネクタ100では、膜部材2の折り返しを解消するように、折り返された部分(残りの部分22)を回転させて膜部材2を一重状態にすることが、対向面11から突出した突起部14により妨げられている。このような突起部14を設けるだけで、ユーザが誤って膜部材2の折り返しを解消して一重状態にしてから膜部材2を引き抜くといった誤操作が阻止されるため、本実施形態では、簡単な構成でありながら誤操作を十分に防止する無菌コネクタが実現している。このような効果は、需要が高まっている、少流量の流体の流通のための無菌コネクタに対しては特に有用である。
【0045】
ここで、2つのコネクタ部10の結合時には、2つのコネクタ部それぞれの突起部14は、結合相手のコネクタ部10の対向面11から外れた、
図7および
図8の当接状態の実現を妨げない所定位置に配置される。この所定位置について
図8を用いてもう少し詳しく説明する。結合相手のコネクタ部10(
図8では上側のコネクタ部10)には、流路13(
図7参照)を中心としたときのコネクタ部10の周縁部において、内側(つまり
図7の流路13の側)に凹んだ凹部17が形成されている。2つのコネクタ部10の結合時には、
図8の下側のコネクタ部10の突起部14は、この結合相手のコネクタ部10の凹部17に配置され、
図6の状態から
図7の状態に至るまでの結合操作の間に結合相手のコネクタ部10の対向面11にぶつかることはない。この凹部17が上述の所定位置であり、突起部14は、結合相手のコネクタ部10の対向面11にぶつかることなく凹部17内に入るため、突起部14が存在しても
図7および
図8の当接状態の実現は妨げられないこととなる。
【0046】
なお、本実施形態では、対向面11から外れた、当接状態の実現を妨げない所定位置とは、コネクタ部10の周縁部における凹部17であったが、本発明では、上記の所定位置として他の位置が採用されてもよい。たとえば、対向面11に開口するスリット状の溝部に対向面11に突起部14が結合時に収容されるものであってもよい。この場合、突起部14を収容するスリット状の溝部が所定位置となる。
【0047】
突起部14の説明を続ける。
【0048】
突起部14は、対向面11から立設し対向面11に沿って壁状に広がって延びるものである。たとえば
図1では、突起部14は、対向面11の周縁部において対向面11から立設し対向面11の周縁部に沿って壁状に広がって延びている。ここで突起部14は、
図1に示すように、この壁状のうちの対向面11側の下側部分が欠けた切り欠け部15を有している。
図10で上述したように、突起部14は、膜部材2の残りの部分22(
図3参照)が、
図1~
図4に示す折り返し状態から回転して一重状態に到達することを妨げるものである。ただし、突起部14は、膜部材2の残りの部分22が切り欠け部15と対向面11の間を通って膜部材2が一重状態になることは許している。
【0049】
図11は、膜部材2の残りの部分22が切り欠け部15と対向面11の間を通ることで一重状態となった膜部材2を表した側面図である。
【0050】
膜部材2の残りの部分22を回転して一重状態を実現することは不可能であっても、膜部材2の残りの部分22をねじりながら突起部14を迂回し切り欠け部15と対向面11の間(
図11の領域P参照)に残りの部分22を通すことで、
図11の一重状態を実現することは可能である。実際には、ユーザは、膜部材2の残りの部分22を回転しても
図10で上述したように突起部14の存在のため一重状態にすることができないことがわかった時点で自分が誤操作をしていることに気づく。仮にユーザが、突起部14を迂回して膜部材2を無理に、
図11の示す一重状態を実現したとしても、後述するようにこの状態では2つのコネクタ部10を結合することができないため、結合の段階で自分が誤操作をしていることに気づく。いずれにせよ、ユーザの誤操作を防ぐ突起部14の効果が、切り欠け部15の存在により減じることはない。それならばなぜ切り欠け部15をわざわざ設けるかというと、それは、以下に説明するように製造上の理由によるものである。
【0051】
膜部材2の一端部21を対向面11に接着する際には、一端部21に対し熱処理等の温度制御が行われることが多い。このような場合、膜部材2の残りの部分22に対し温度制御の影響が及ぶのを防ぐ観点から、
図11の一重状態で膜部材2の一端部21を対向面11に接着するのが好ましい。突起部14に切り欠け部15が存在すると、一重状態で膜部材2の一端部21を対向面11に接着した後で、突起部14を迂回しつつ切り欠け部15と対向面11の間に膜部材2の残りの部分22を通すことで、
図1~
図4の折り返し状態を実現できる。すなわち、切り欠け部15の存在により折り返し状態の膜部材2が一重状態になることを許すという突起部14の特徴は、製造段階において、膜部材2の一端部21が接着された一重状態の膜部材2を折り返し状態に変形できることを保証するものである。
【0052】
以下、膜部材2が
図11の一重状態となっている2つのコネクタ部10を結合できないことについて説明する。
【0053】
図11の一重状態にある膜部材2は、
図11のコネクタ部10の結合相手となるコネクタ部10の突起部14が2つのコネクタ部の結合時に位置することになる所定位置に重なっている。実際、
図11の一重状態にある膜部材2は、
図2で言えば、
図2の2本の一点鎖線で示す帯状の領域に延びており、
図8で説明した所定位置を与える凹部17は、
図2に示されているように2本の一点鎖線の間に存在する。このように一重状態にある膜部材2が存在することで、結合相手のコネクタ部10の突起部14を所定位置(
図8の凹部17参照)に配置することが不可能となり、この結果、
図11の状態の2つのコネクタ部10の結合が阻止される。このようにユーザが、突起部14を迂回して膜部材2を
図11の一重状態にしたとしても、この状態で2つのコネクタ部10を結合するという誤操作は、突起部14の存在により十分に防止されている。
【0054】
以上の説明では、突起部14は、切り欠け部15を有する部分が、先の尖った三角形状をしていたが、本発明では、切り欠け部を有する部分の形状として、他の形状が採用されてもよい。以下では、突起部において切り欠け部を有する部分が
図1とは異なる形状をしているコネクタ部のバリエーションについて説明する。
【0055】
図12~
図16は、突起部において切り欠け部を有する部分が
図1とは異なる形状をしているコネクタ部の外観斜視図である。
【0056】
図12~
図16において、
図1と同じ構成要素については同一の符号を付すこととし、その重複説明は省略する。
図12~
図16のコネクタ部が
図1のコネクタ部10と異なるのは、突起部において切り欠け部を有する部分が
図1とは異なる形状をしている点のみである。そこで、以下では、この相違点についてのみ説明することとし、この相違点以外の点についてのコネクタ部の説明は、
図1のコネクタ部10の説明を参照するものとする。
【0057】
図12のコネクタ部10Aのコネクタ本体1Aにおける突起部14Aでは、切り欠け部15Aを有する部分が、
図1ほど先が尖っていない三角形状をしている。このような突起部14Aであっても、
図1の突起部14と同様の役割を果たすことができる。
【0058】
図13~
図16のコネクタ部10B,10C,10D,10Eのコネクタ本体1B,1C,1D,1Eにおける突起部14B、14C,14D,14Eでは、切り欠け部15B,15C,15D,15Eをそれぞれ有する部分が、
図1のような三角形ではなく四角形となっている。ただし、
図14の切り欠け部15Cを有する部分は、
図13に比べると、先端方向に向かって幅は同程度であるが長さの短い四角形である。一方、
図15の切り欠け部15Dを有する部分は、
図13に比べると、幅は狭く長さが同程度の四角形である。また、
図16の切り欠け部15Eを有する部分は、
図13に比べると、幅が狭く長さも短い四角形である。このような切り欠け部を有する部分が四角形の突起部であっても、
図1の突起部14と同様の役割を果たすことができる。
【0059】
以下では、突起部以外の特徴的な事項について説明する。まず、膜部材の特徴的な事項について説明する。
【0060】
図1および
図2に示すように膜部材2の他端部(
図3も合わせて参照)には、2つのコネクタ部10の結合時に、重なり合った2枚の膜部材2を同時に引っ張るためのリング状の穴が形成されている。このリング状の穴は、結合する2つのコネクタ部10の2枚の膜部材2の同一位置に形成されており、2つのコネクタ部10の結合時に2枚の膜部材2が重なり合うときには、
図8に示すように、2つのリング状の穴も重なりあたかも1つのリング状の穴のようになる。
【0061】
このようなリング状の穴が形成されていることで2枚の膜部材2を同時に引っ張るのがきわめて容易になる。さらには、リング状の穴を指標として2枚の膜部材2の位置合わせを容易に行うことができる。
【0062】
ここで、
図1のコネクタ部10の膜部材2は、リング状の穴が形成された他端部23を含め全体が同一の材料により一体的に形成されたものであってもよい。
【0063】
このような形態によれば、部品点数を増やすことなく、リング状の穴が形成された膜部材2を製造でき、無菌コネクタ製造の生産性が高い。
【0064】
ただし、本発明では、膜部材は、帯形状を有する膜本体の端部に、他端部として、膜本体とは異なる材料で形成されたリング状部材を接着することで形成されたものであってもよい。以下、このような実施形態について説明する。
【0065】
図17は、帯形状を有する膜本体24Xの端部に、他端部23Xとして、膜本体24Xとは異なる材料で形成されたリング状部材を接着することで形成された膜部材2Xを備えたコネクタ部10Xの外観斜視図である。
【0066】
図17において、
図1と同じ構成要素については同一の符号を付すこととし、その重複説明は省略する。
図17のコネクタ部10Xが
図1のコネクタ部10と異なるのは、膜部材2Xの他端部23Xが、膜本体24Xとは異なる材料で形成されたリング状部材を接着することで形成されている点のみである。そこで、以下では、この相違点についてのみ説明することとし、この相違点以外の点についてのコネクタ部10Xの説明は、
図1のコネクタ部10の説明を参照するものとする。
【0067】
このような形態では、膜部材2Xの他端部23Xが膜本体24Xとは異なる材料で形成されているため、
図1のコネクタ部10と比べると、多少、部品点数が増える。しかしながら、他端部23Xが膜本体24Xとは異なる材料、たとえば、膜本体24Xよりも丈夫で耐久性のある材料、あるいは、指で引っ張るのに膜本体24Xよりも触感の良い材料、を用いることができ、操作性を向上させることができる。
【0068】
次に、コネクタ本体(ただし突起部以外)の特徴的な事項について説明する。
【0069】
図1,
図3および
図4に示すように、流路13(
図1参照)を取り巻くコネクタ本体1の側面の両側(
図3および
図4参照)には、溝部16が形成されている。無菌コネクタの分野では、近い将来、無菌コネクタの接続操作を人間ではなくロボット等の機械が行う可能性が示唆されており、溝部16のような構造は、ロボット等の機械による無菌コネクタの接続操作の際のコネクタ本体1の把持に適している。実際、コネクタ本体1の側面の両側の溝部16のそれぞれに棒状の部材を差し込んでコネクタ本体1を挟むだけで簡単にコネクタ本体1を把持できる。
【0070】
以上が本発明の実施形態の説明である。
【0071】
以上の説明では、いずれのコネクタ本体も、取付部131を有し流路13の周りに筒状に延びる筒状部分と、対向面11を有し流路13の周りに円盤状に広がった円盤状部分とがつながった形状をしていた。しかしながら、本発明では、こうした形状は本質的ではなく、筒状部分の代わりに中空の角柱状部分と、円盤状部分の代わりに矩形の平板状部分とがつながった形状をしていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、簡単な構成でありながら誤操作を十分に防止する無菌コネクタの実現に有用である。
【符号の説明】
【0073】
1,1A,1B,1C,1D,1E:コネクタ本体、
2,2X:膜部材、
10,10A,10B,10C,10D,10E,10X:コネクタ部、
11:対向面、
12:結合機構、
13:流路、
13a:開口部、
14,14A,14B,14C,14D,14E:突起部、
15,15A,15B,15C,15D,15E:切り欠け部、
16:溝部、
17:凹部、
21:一端部、
22:残りの部分
23,23X:他端部、
24X:膜本体、
100:無菌コネクタ、
121:ラチェット爪、
122:ラチェット爪受入部、
131:取付部、
P:領域。