(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060835
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】再生樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29B 17/02 20060101AFI20240425BHJP
B05D 3/10 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
B29B17/02 ZAB
B05D3/10 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168379
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000238005
【氏名又は名称】株式会社フジシールインターナショナル
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平戸 勇馬
【テーマコード(参考)】
4D075
4F401
【Fターム(参考)】
4D075BB01Z
4D075BB20Z
4D075BB21Z
4D075BB77Z
4D075BB79Z
4D075DA04
4D075DB35
4D075DB36
4D075DB37
4D075DB38
4D075DB48
4D075DC41
4F401AA09
4F401AA10
4F401AA13
4F401AA22
4F401AD01
4F401CA32
4F401CA91
4F401CB01
4F401EA07
4F401EA08
4F401EA34
4F401EA45
4F401EA46
(57)【要約】
【課題】インキ層を備えた熱収縮性積層体から効率的にインキ層を除去することが可能な再生樹脂の製造方法を提供する。
【解決手段】再生樹脂の製造方法は、インキ層を備えた熱収縮性積層体を準備する工程と、熱収縮性積層体に折り目を形成する工程と、折り目を形成する工程後に熱収縮性積層体を熱収縮させる工程と、熱収縮させる工程後にインキ除去液によって熱収縮性積層体からインキ層を除去する工程とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキ層を備えた熱収縮性積層体を準備する工程と、
前記熱収縮性積層体に折り目を形成する工程と、
前記折り目を形成する工程後に前記熱収縮性積層体を熱収縮させる工程と、
前記熱収縮させる工程後にインキ除去液によって前記熱収縮性積層体から前記インキ層を除去する工程と、を含む、再生樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記熱収縮性積層体を準備する工程は、容器と前記容器に装着されたシュリンクラベルとを備えたシュリンクラベル付き容器から前記シュリンクラベルを回収する工程を含む、請求項1に記載の再生樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記折り目を形成する工程は、前記熱収縮性積層体を少なくともTD方向に折線が延びるように折り目を形成する工程を含む、請求項1に記載の再生樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記折り目を形成する工程は、前記熱収縮性積層体の縁に折り目を形成する工程を含む、請求項1に記載の再生樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、再生樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、たとえばポリエチレンテレフタレート製ボトル(PETボトル)等のプラスチック製品が広く利用されている。省資源的な観点や環境的な観点等から、PETボトル等のプラスチック製品を再利用することが強く求められている。
【0003】
プラスチック製品の中でも特にPETボトルの再利用は既に構築されている。しかしながら、商品情報等の表示のための印刷が施されたインキ層を備えるプラスチック製のシュリンクラベルがPETボトルの胴部に装着されることがあるが、このシュリンクラベルの再利用はまだ一般的ではない。
【0004】
シュリンクラベルの再利用を阻害する要因の1つが、シュリンクラベルからインキ層を効率的に除去することができない点にある。シュリンクラベルからインキ層を効率的に除去することができない場合には、シュリンクラベルから利用価値のある再生樹脂であるペレットを作製することができないためである。
【0005】
そこで、たとえば特許文献1には、インキ層を備えたシュリンクラベルを予備加熱する工程と、予備加熱する工程の後にシュリンクラベルを破砕してシュリンクラベル片を作製する工程と、シュリンクラベル片からインキ層をアルカリ脱離により除去する工程と、を含み、予備加熱の温度が、アルカリ脱離の温度と同一、またはアルカリ脱離の温度よりも高いシュリンクラベルからのインキ層の除去方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の方法でもインキ層を脱離除去することは可能であるが、近年の環境対応への高まりから、シュリンクラベルを含むインキ層を備えた熱収縮性積層体から効率的にインキ層を除去して再生樹脂を製造する方法が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここで開示された実施形態によれば、インキ層を備えた熱収縮性積層体を準備する工程と、熱収縮性積層体に折り目を形成する工程と、折り目を形成する工程後に熱収縮性積層体を熱収縮させる工程と、熱収縮させる工程後にインキ除去液によって熱収縮性積層体からインキ層を除去する工程とを含む再生樹脂の製造方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0009】
ここで開示された実施形態によれば、インキ層を備えた熱収縮性積層体から効率的にインキ層を除去することが可能な再生樹脂の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態の再生樹脂の製造方法のフローチャートである。
【
図2】実施形態の再生樹脂の製造方法に用いられる熱収縮性積層体の一例の写真である。
【
図3】折り目を形成した後の
図2に示す熱収縮性積層体の写真である。
【
図4】実験例1~7のシュリンクラベルの模式的な断面図である。
【
図5】実験例1~3のシュリンクラベルの評価結果を示す図である。
【
図6】実験例4~7のシュリンクラベルの評価結果を示す図である。
【
図7】圧縮前の実験例8~13のシュリンクラベルの写真である。
【
図8】圧縮後の実験例8~13のシュリンクラベルの写真である。
【
図9】実験例8~13のシュリンクラベルの評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態の再生樹脂の製造方法>
図1に、本開示の再生樹脂の製造方法の一例である実施形態の再生樹脂の製造方法のフローチャートを示す。
図1に示すように、実施形態の再生樹脂の製造方法は、インキ層を備えた熱収縮性積層体を準備する工程S1と、熱収縮性積層体に折り目を形成する工程S2と、熱収縮性積層体を熱収縮させる工程S3と、熱収縮性積層体からインキ層を除去する工程S4と、を含んでいる。また、実施形態の再生樹脂の製造方法は、工程S3と工程S4との間に第1の破砕工程(破砕片の作製工程)S5を含んでいてもよい。また、実施形態の再生樹脂の製造方法は、工程S4の後に、第2の破砕工程(フラフの生成工程)S6とフラフをリペレットする工程S7とをこの順に含んでいてもよい。
【0012】
<工程S1>
工程S1は、たとえば、シュリンクラベル付き容器からシュリンクラベルを回収することにより行うことができる。シュリンクラベル付き容器は、たとえば、PETボトル等の容器と、当該容器に装着されたシュリンクラベルとを備えている。シュリンクラベルを回収する工程は、たとえば、シュリンクラベル付き容器のシュリンクラベルの装着箇所から機械的にまたは手作業でシュリンクラベルを取り外すことにより行うことができる。なお、本実施形態においては、インキ層を備えた熱収縮性積層体の一例として主にシュリンクラベルを用いる場合について説明するが、シュリンクラベルに限定されず、インキ層を備えるとともに加熱されることによって収縮可能な積層体をインキ層を備えた熱収縮性積層体として適宜用いることができる。熱収縮性積層体の形状は、たとえば、筒状または枚葉状のいずれであってもよく、筒状と枚葉状とが混在している状態であってもよい。
【0013】
<工程S2>
工程S2は、たとえば、
図2に示すシュリンクラベル等の熱収縮性積層体に
図3に示すように少なくとも1つ以上の折り目を形成することにより行うことができる。工程S2は、たとえば、機械的にまたは手作業で熱収縮性積層体に折り目を形成することにより行うことができ、熱収縮性積層体を圧縮することにより折り目を形成することが好ましく、より具体的には、複数の熱収縮性積層体からなる集合体を圧縮することにより折り目を形成することが好ましい(集合体に対して縦方向、横方向および厚み方向の3方向から同じ割合で圧縮してもよく、熱収縮積層体はその厚み方向が薄い(厚み方向の大きさが小さい)ため、集合体は、熱収縮積層体がその厚み方向に重なっている状態で集合する形態になりやすい。この場合、熱収縮積層体の厚み方向に重なった集合体を厚み方向から抑えた状態で、縦方向、横方向または縦方向および横方向の双方向から圧縮してもよい。)また、熱収縮性積層体を回転数の異なる2つのローラ間を通過させて、ローラの速度差で熱収縮性積層体に折り目を形成してもよい。
【0014】
後述する工程S3後の熱収縮性積層体のカールの度合いを抑える観点からは、工程S2において形成される折り目の数は、複数であることが好ましい。なお、本実施形態において「折り目」は、熱収縮性積層体が折られた箇所に熱収縮性積層体に形成される線であって、熱収縮性積層体に当該線を尾根とする山または当該線を底とする谷を形成する線を意味する。また、後述する工程S3後の熱収縮性積層体のカールの度合いを抑える観点からは、熱収縮性積層体は縁部を有し、熱収縮性積層体の縁部に折り目が形成されることが好ましい。
【0015】
また、後述する工程S3後の熱収縮性積層体のカールの度合いを抑えることによって後述する工程S4において効率的にインキ層を除去する観点からは、工程S2は、熱収縮性積層体をMD方向に折る(TD方向に折線が延びるように折り目を形成する)工程を含むことが好ましく、熱収縮性積層体をMD方向に折るとともに、TD方向に折る(MD方向に折線が延びるように折り目を形成する)工程を含むことがより好ましい。なお、熱収縮性積層体がたとえばシュリンクラベル等の筒状の原反から繰り出されて切断されることにより得られたものである場合には、「熱収縮性積層体のMD方向」は、熱収縮性積層体の筒状の原反の軸方向を意味し、「熱収縮性積層体のTD方向」は、熱収縮性積層体の筒状の原反の周方向を意味する。また、熱収縮性積層体にたとえば文字等のデザインが印刷されている場合には、当該デザインの上下方向がMD方向を意味し、当該デザインの左右方向がTD方向を意味する。
【0016】
熱収縮性積層体の一例であるシュリンクラベルとしては、たとえば、少なくとも片方の表面にインキ層を備えたシート状の熱収縮性のシュリンクフィルムを用いることができる。シュリンクフィルムとしては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等からなるポリエステルフィルム;スチレン-ブタジエンブロック共重合体等からなるスチレン系フィルム;ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂からなるオレフィン系フィルム;塩化ビニル樹脂からなる塩化ビニル系フィルム等を用いることができる。シュリンクフィルムは、発泡フィルムであってもよい。また、シュリンクフィルムは単層であってもよく、2層以上の積層体であってもよい。シュリンクフィルムの色は特に限定されず、たとえば乳白色または透明であってもよい。
【0017】
熱収縮性積層体のMD方向の熱収縮率よりも熱収縮性積層体のTD方向の熱収縮率が大きいことが好ましい。また、熱収縮性積層体の主収縮方向であるTD方向に折線が延びるように折り目を形成することが好ましい。また、熱収縮性積層体のMD方向に延びる縁に折り目(TD方向に折線が延びる折り目)を形成することが好ましい。また、TD方向だけでなく、MD方向にも折線が延びるように形成されていることがより好ましい。TD方向およびMD方向の両方に折線が延びるように形成されている場合には、TD方向に延びる縁に折り目(MD方向に折線が伸びる折り目)がさらに形成されていることが好ましい。なお、「TD方向に折線が延びる」とは、折線が熱収縮性積層体のTD方向に延びていれば、折線が必ずしも熱収縮性積層体のTD方向と平行な方向に延びている必要はない。また、「MD方向に折線が延びる」とは、折線が熱収縮性積層体のMD方向に延びていれば、折線が必ずしも熱収縮性積層体のTD方向と平行な方向に延びている必要はない。
【0018】
熱収縮性積層体の熱収縮率は、たとえば、熱収縮性積層体を90℃の熱水に10秒間浸漬させたときの熱収縮性積層体の熱収縮率はたとえば10%以上90%以下程度であり、熱収縮性積層体を90℃の熱水に10秒間浸漬させたときの熱収縮性積層体のMD方向の熱収縮率はたとえば-5%以上15%以下程度である。また、熱収縮性積層体を90℃の熱水に10秒間浸漬させたときの熱収縮性積層体のTD方向の熱収縮率は、各種容器等への収縮密着性の点から、15%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。また、熱収縮性積層体を90℃の熱水に10秒間浸漬させたときの熱収縮性積層体のMD方向の熱収縮率は、-3%以上10%以下であることが好ましい。
【0019】
熱収縮性積層体の表面は、インキ層との接着性を高めるため、必要に応じてコロナ放電処理等の表面処理を施したり、アンカーコート層を設けてもよい。アンカーコート層は従来公知のアンカーコート剤等により形成することができる。
【0020】
インキ層は、アルカリ水溶液に溶解または膨潤して、熱収縮性積層体より脱離可能であればよく、たとえば油性インキまたは水性インキのいずれかにより構成することができる。
【0021】
熱収縮性積層体のインキ層の形成方法としては、たとえば、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、またはインクジェット印刷等を用いることができる。インキ層は、単層であってもよく、多層であってもよい。インキ層の厚さは用途等により適宜選択することができ、たとえば0.1~100μm程度とすることができる。また、インキ層が多層である場合、インキ層全体がアルカリ可溶性であってもよく、少なくともその一部がアルカリ可溶性であってもよい。
【0022】
<工程S3>
工程S3は、たとえば、工程S2で折り目が形成された熱収縮性積層体を熱収縮させることにより行うことができる。熱収縮性積層体を熱収縮させる方法は、たとえば後述する工程S4においてインキ層の除去に用いられるインキ除去液の温度と同一またはインキ除去液の温度よりも高くなるように熱収縮性積層体を加熱することにより行うことが好ましい。後述する工程S4において、熱収縮性積層体からインキ層を効率的に除去する観点からは、工程S3における熱収縮性積層体の加熱温度を、後述する工程S4において用いられるインキ除去液の温度よりも5℃以上高くしておくことが好ましい。
【0023】
熱収縮性積層体を熱収縮させる方法としては、たとえば、熱風トンネルに熱収縮性積層体を通過させる方法、スチームトンネル若しくは過熱スチームトンネルに熱収縮性積層体を通過させる方法、または温水槽中の熱水に熱収縮性積層体を浸漬させる方法等を挙げることができる。
【0024】
ただし、以下の1)~3)の観点からは、熱収縮性積層体を熱収縮させる方法として、熱風トンネル、スチームトンネル若しくは過熱スチームトンネルに熱収縮性積層体を通過させる方法よりも熱水槽中の熱水に熱収縮性積層体を浸漬させる方法を用いることが好ましい。
【0025】
1)熱水に浸漬させる方法は、熱風を用いる方法よりも温度制御が容易である。
2)熱水に浸漬させる方法は、熱風を用いる方法よりも装置のフットプリントが小さい。
【0026】
3)熱水に浸漬させる方法は、熱風を用いる方法よりも熱収縮性積層体の収縮ムラが生じにくく、均一に収縮可能である。
【0027】
熱水槽中の熱水に熱収縮性積層体を浸漬させることによって熱収縮性積層体を熱収縮させる場合には、たとえば、80℃~90℃程度の熱水に熱収縮性積層体を10秒~20秒程度浸漬させることにより行うことができる。
【0028】
本実施形態において、工程S3における熱収縮性積層体の加熱温度は、加熱時の熱収縮性積層体の表面温度であることを意味する。したがって、温水槽中の熱水に熱収縮性積層体を浸漬させることによって熱収縮性積層体を加熱する場合には、熱収縮性積層体の加熱温度は、熱水の温度に置き換えることができる。また、スチームトンネル若しくは過熱スチームトンネルに熱収縮性積層体を通過させることにより熱収縮性積層体を加熱する場合には、熱収縮性積層体の加熱温度は、スチームトンネルを通過させる場合にはスチームの温度(たとえば80℃以上100℃以下)、および過熱スチームトンネルを通過させる場合には過熱スチームの温度(たとえば100℃を超え130℃以下程度)に置き換えることができる。また、熱風トンネルに筒状シュリンクラベル1を通過させることにより筒状シュリンクラベル1を予備加熱する場合には、予備加熱の温度は熱風の温度に置き換えることができず、熱風の温度は予備加熱の温度よりも50~250℃程度大きい温度とすることができる(たとえば、80~130℃の予備加熱の温度にする場合、150℃~300℃程度の熱風が使用される。)。
【0029】
<工程S4>
工程S4は、たとえば、折り目の形成後に熱収縮させた熱収縮性積層体からインキ層を除去することにより行うことができる。インキ層の除去は、たとえば、折り目の形成後に熱収縮させた熱収縮性積層体をインキ除去液に浸漬することによって行うことができる。インキ除去液は、インキ層を溶解可能なものであれば特に限定されない。インキ除去液としては、たとえば、アルカリ水溶液、高級アルコール等の溶剤、または界面活性剤含有アルカリ水溶液等を挙げることができる。界面活性剤含有アルカリ水溶液は、たとえば、アニオン系、カチオン系、またはノニオン系の界面活性剤を含み得るが、アニオン系の界面活性剤を含むことが好ましい。
【0030】
アルカリ水溶液としては、たとえば、折り目の形成後に熱収縮させた熱収縮性積層体を浸漬させることにより、当該熱収縮性積層体からインキ層を除去することが可能なアルカリ水溶液を用いることができる。アルカリ水溶液としては、たとえば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の水溶液、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩の水溶液、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩の水溶液、またはアンモニア水等を用いることができる。
【0031】
アルカリ水溶液中のアルカリ性物質の濃度は、インキ層の脱離能、操作性、または作業性等を損なわない範囲で適宜選択することができる。アルカリ水溶液中のアルカリ性物質の濃度は、たとえば0.1~10重量%程度、好ましくは0.5~5重量%、さらに好ましくは1~3重量%程度である。
【0032】
高級アルコールの具体例として、たとえば、インフィニティ株式会社製「ペイントソルブ」が挙げられる。高級アルコールは一般的に沸点が高いため、温浴槽で使用することが可能である。
【0033】
アニオン系界面活性剤としては、たとえば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ナトリウム-ホルムアルデヒド縮合物、スルホコハク酸ビス(2-エチルヘキシル)ナトリウム等のスルホコハク酸ジアルキルエステル塩等のスルホン酸型アニオン系界面活性剤;ラウリン酸ナトリウム等の脂肪族モノカルボン酸塩、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム等のN-アシロイルグルタミン酸塩等のカルボン酸型アニオン系界面活性剤;硫酸ドデシルナトリウム等の硫酸アルキル塩等の硫酸エステル型アニオン系界面活性剤等を挙げることができる。これらの界面活性剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。界面活性剤のアルカリ水溶液中における濃度は、たとえば、0.01~5.0重量%、好ましくは0.1~3重量%程度である。
【0034】
アルカリ水溶液中に、界面活性剤、特にアニオン系界面活性剤を含有させた場合には、インキ層の脱離が著しく促進される。これは、界面活性剤の作用により、アルカリ水溶液がインキ層中やインキ層とフィルムとの界面に浸透しやすくなり、インキ層が速やかに軟化するためと考えられる。
【0035】
インキ除去液への浸漬は、たとえば、折り目の形成後に熱収縮させた熱収縮性積層体を温度調節可能な温浴槽中に注がれたアルカリ水溶液に浸漬する方法が好ましい。アルカリ水溶液を用いたインキ層の除去は、たとえば、以下の(1)1槽処理または(2)2槽処理のいずれかの処理により行うことができる。
【0036】
(1)1槽処理
1槽処理は、たとえば、熱アルカリ槽中のアルカリ水溶液に、折り目の形成後に熱収縮させた熱収縮性積層体を浸漬させながら攪拌することにより行うことができる。1槽処理に要する時間は、攪拌速度およびアルカリ水溶液に対する熱収縮性積層体の投下量等により異なるが、たとえば、30秒~20分程度とすることができる。1槽処理によれば、アルカリ水溶液中において、折り目の形成後に熱収縮させた熱収縮性積層体からインキ層を効率的に除去することができる。
【0037】
実施形態の再生樹脂の製造方法においては、工程S4の温度は、工程S3において折り目の形成後の熱収縮させた熱収縮性積層体の加熱温度よりも低いことが好ましい。仮に、熱収縮後の熱収縮性積層体に熱収縮能力が未だ残っている場合に、インキ除去液への当該熱収縮性積層体の浸漬中に熱収縮性積層体がさらに熱収縮して、インキ層の除去が困難になるほど当該熱収縮性積層体の端部がカールすることがあるが、この場合には、当該熱収縮性積層体の端部のカールの度合いを抑えることができる傾向にある。
【0038】
なお、本実施形態において、工程S4の温度は、インキ層が除去されることとなる熱収縮性積層体の表面温度であることを意味する。したがって、工程S4の温度は、熱収縮性積層体が浸漬させられるインキ除去液の温度に置き換えることができる。
【0039】
工程S4において、折り目の形成後に熱収縮させた熱収縮性積層体からインキ層を効率的に除去する観点からは、インキ除去液の温度は65℃以上であることが好ましい。なお、インキ除去液の温度の上限は理論上は100℃であり、より好ましくはインキ除去液の温度は85℃以上95℃以下であり、さらに好ましくはインキ除去液の温度は80℃以上90℃以下である。たとえば、工程S3における折り目の形成後の熱収縮させた熱収縮性積層体の加熱温度が90℃であって、工程S4の温度が90℃以下である場合に、折り目の形成後に熱収縮させた熱収縮性積層体から十分にインキ層を除去することができる傾向にある。
【0040】
(2)2槽処理
2槽処理は、たとえば、熱アルカリ槽中のアルカリ水溶液に折り目の形成後に熱収縮させた熱収縮性積層体を30秒~20分程度浸漬させた後に熱アルカリ槽から取り出し、熱アルカリ槽から取り出した当該熱収縮性積層体を水槽中の水に浸漬させながら攪拌することにより行うことができる。2槽処理におけるアルカリ水溶液の好ましい温度およびアルカリ水溶液の種類は、たとえば、上述の(1)1槽処理に用いられるアルカリ水溶液と同様とすることができる。また、水槽中の水の温度は特に制限されないが、熱収縮性積層体の意図しない熱収縮を避ける観点から、アルカリ脱離の温度よりも低い温度であることが好ましく、使用エネルギーの観点からは室温程度(27℃前後)であることが好ましい。
【0041】
2槽処理によれば、折り目の形成後に熱収縮させた熱収縮性積層体をアルカリ水溶液中に静かに浸漬することができる。これにより、アルカリ水溶液中において、熱収縮性積層体からのインキ層の完全な分離を抑制しつつ、インキ層の密着性を低下させることができる。なお、静かに浸漬されるとは、アルカリ水溶液が攪拌されない、または上記両者の完全な分離が起こらないような、極めて緩やかに攪拌される状態を意味する。そして、それに続く水槽中の水中への浸漬および攪拌により、水中において、折り目の形成後に熱収縮させた熱収縮性積層体からインキ層を除去することができる。熱収縮性積層体からインキ層が除去された後の樹脂フィルムは、たとえば、ペレット等の再生樹脂として再利用することができる。また、インキ層は、たとえば、サーマルリサイクル工程で再利用またはインキとしてリサイクルすることができる。
【0042】
また、折り目の形成後に熱収縮させた熱収縮性積層体のインキ除去液への浸漬後に、たとえば、インキ層を捕集することもできる。インキ層を捕集する方法としては、たとえば、相対的に大きな開口を有する第1の網で折り目の形成後に熱収縮させた熱収縮性積層体からインキ層が除去された後の樹脂フィルムを捕集し、相対的に小さな開口を有する第2の網で樹脂フィルムよりも小さいインキ層を捕集することができる。
【0043】
第1の網で捕集された樹脂フィルムは、たとえば、ペレット等の再生樹脂として再利用することができる。また、第2の網で捕集されたインキ層は、たとえば、サーマルリサイクル工程で再利用またはインキとしてリサイクルすることができる。
【0044】
<工程S5>
図1に示すように、実施形態の再生樹脂の製造方法は、工程S3と工程S4との間に第1の破砕工程(破砕片の作製工程)S5を含んでいてもよい。工程S5は、たとえば、折り目の形成後に熱収縮させた熱収縮性積層体を破砕機により破砕して当該熱収縮性積層体の破砕片を生成することにより行うことができる。折り目の形成後に熱収縮させた熱収縮性積層体は、たとえば、上述した工程4においてインキ層を効率的に除去することができる程度の大きさ(たとえば数cm角)に破砕することができる。
【0045】
<工程S6>
図1に示すように、実施形態の再生樹脂の製造方法は、工程S4の後に第2の破砕工程(フラフの生成工程)S6を含んでいてもよい。工程S6は、たとえば、工程S4において折り目の形成後に熱収縮させた熱収縮性積層体からインキ層が除去された後の樹脂フィルムを破砕機により破砕して、フラフを生成することにより行うことができる。これにより、フラフ状の再生樹脂を製造することが可能である。工程S6は、再生樹脂をフラフとして輸送することができるため、再生樹脂の輸送効率が向上するという点で有利である。なお、本明細書において、フラフとは、折り目の形成後に熱収縮させた熱収縮性積層体からインキ層が除去された樹脂フィルムを破砕することによって生成する樹脂片を意味する。
【0046】
<工程S7>
図1に示すように、実施形態の再生樹脂の製造方法は、工程S6の後にフラフをリペレットする工程S7を含んでいてもよい。工程S7は、たとえば、工程S6で生成されたフラフをペレット状にすることにより行うことができる。これにより、ペレット状の再生樹脂を製造することが可能である。工程S7により得られたペレット状の再生樹脂は、フラフ状の再生樹脂と比べて取り扱いやすい傾向にある。
【0047】
<実施形態の再生樹脂の製造方法の作用効果>
上述した実施形態の再生樹脂の製造方法によれば、インキ層を備えた熱収縮性積層体から効率的にインキ層を除去することが可能となる。
【0048】
たとえば、特許文献1に記載の方法においては、予め熱収縮をさせていないシュリンクラベルを破砕して作製されたシュリンクラベル片をアルカリ水溶液に浸漬させた場合にはアルカリ水溶液中でシュリンクラベル片がくるくると巻きついてカールしながら収縮し、カールしながら収縮した小片であるシュリンクラベル片からインキ層を除去するのは非常に難しいという課題を解決するために、シュリンクラベルを破砕してシュリンクラベル片とする前にアルカリ脱離の温度と同一またはそれよりも高い温度でシュリンクラベルの予備加熱を行って予め熱収縮させている。
【0049】
しかしながら、特許文献1に記載の方法においても効率的にインキ層を除去することが可能であったが、本発明者が鋭意検討した結果、さらに効率的にインキ層を除去することが可能な実施形態の再生樹脂の製造方法を見い出した。
【0050】
すなわち、実施形態の再生樹脂の製造方法においては、工程S3の熱収縮性積層体を熱収縮させる前の工程S2において熱収縮性積層体に折り目を形成しておくことによって、熱収縮性積層体に立体的な強度を持たせることができる。これにより、工程S3の熱収縮後に熱収縮性積層体の応力により発生する熱収縮性積層体の端部に発生するカールの度合いを抑えることができ、熱収縮性積層体の端部に発生するカールの度合いを抑えた状態でインキ除去液を用いてインキ層を除去することができるため、インキ層を備えた熱収縮性積層体から効率的にインキ層を除去することが可能となる。
【実施例0051】
<実験例1~7のシュリンクラベルの作製>
実験例1~7においては、
図2の写真に示される平面を有するとともに、
図4の模式的断面図に示される断面を有するシュリンクラベルを以下のようにして作製した。まず、
図4に示すように、基材1として厚さ20μmのポリエチレンテレフタレート系シュリンクフィルム(PET系フィルム)を準備した。
【0052】
次に、基材1の一方の表面上にアルカリ可溶性のアンカーコートを塗布した後に乾燥することによってアンカーコート層3を形成した。次に、アンカーコート層3上にデザイン印刷層2を形成した。デザイン印刷層2は、アンカーコート層3上に赤色インキを格子状にグラビア印刷した後に乾燥することによって赤色インキ層2aを形成した後に、赤色インキ層2aの表面上に白色インキをベタ状にグラビア印刷した後に乾燥することによって白色インキ層2bを形成することによって作製された。
【0053】
最後に、以上のようにして形成されたシュリンクフィルムが巻き取られたシュリンクフィルム原反からシュリンクフィルムを繰り出し、それぞれTD方向×MD方向=6cm×5cmの矩形状に切断することによって、実験例1~7のシュリンクラベルを作製した。
【0054】
<実験例1~7のシュリンクラベルの評価方法>
上記のようにして作製した実験例1~7のシュリンクラベルのそれぞれを
図5または
図6の「折り方」の欄に記載の折り方で折ることによって折り目を形成した。
図5の「収縮前」の欄に上記のようにして折り目が形成された実験例1~3のシュリンクラベルの写真を示し、
図6の「収縮前」の欄に上記のようにして折り目が形成された実験例4~7のシュリンクラベルの写真を示す。
【0055】
また、
図6の実験例4~5のシュリンクラベルの「折り方」の欄には、「斜めに山折り谷折り」の記載があるが、これは実験例4~5のシュリンクラベルを
図2の写真に示される矩形の平面の対角線に平行に折り目が形成されるように山折り谷折りしたことを意味している。
【0056】
その後、上記のようにして折り目が形成された実験例1~7のシュリンクラベルをそれぞれ90℃の熱水に20秒間浸漬させることによって熱収縮させ、実験例1~7のシュリンクラベルに発生したカールの度合いを1~5の評価基準により評価した。その結果を
図5または
図6の「結果」の欄に示す。
図5または
図6の「結果」の欄の数値が大きい方が実験例1~7のシュリンクラベルに発生したカールの度合いを抑えることができたことを示している。また、
図5または
図6の「収縮後」の欄に、上記熱収縮後の実験例1~7のシュリンクラベルの写真を示す。なお、
図5および
図6において、実験例1が比較例であり、実験例2~7が実施例である。
【0057】
<実験例1~7のシュリンクラベルの評価結果>
図5および
図6に示すように、上記のようにして折り目が形成された後に熱収縮させた実験例2~7のシュリンクラベルに発生したカールの度合いは、折り目が形成されなかったこと以外は同一の条件および同一の方法で熱収縮させた実験例1のシュリンクラベルと比べて抑えられることが確認された。
【0058】
また、
図5に示すように、MD方向に折ることによってTD方向に延びる折り目が形成された後に熱収縮させた実験例2~3のシュリンクラベルは、折り目が形成されなかった実験例1のシュリンクラベルと比べてカールの度合いを抑えることができることが確認された。
【0059】
また、
図5および
図6に示すように、MD方向に折ることによってTD方向に延びる折り目が形成された後に熱収縮させた実験例2~3のシュリンクラベルは、斜め方向に折ることによって折り目が形成された後に熱収縮させた実験例4~5のシュリンクラベルと比べてカールの度合いを抑えることができることが確認された。
【0060】
さらに、
図5および
図6に示すように、MD方向およびTD方向の両方に折ることによってTD方向およびMD方向の両方に折り目が形成された後に熱収縮させた実験例6~7のシュリンクラベルは、実験例1~5のシュリンクラベルと比べてカールの度合いを抑えることができることが確認された。
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。