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特開2024-60846発熱体の収容構造及び射出成形機の制御盤
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  • 特開-発熱体の収容構造及び射出成形機の制御盤 図1
  • 特開-発熱体の収容構造及び射出成形機の制御盤 図2A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060846
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】発熱体の収容構造及び射出成形機の制御盤
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/20 20060101AFI20240425BHJP
   B29C 45/03 20060101ALI20240425BHJP
   H01L 23/467 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
H05K7/20 G
H05K7/20 H
B29C45/03
H01L23/46 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168393
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】中▲崎▼ 友喜
【テーマコード(参考)】
4F206
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
4F206AK12
4F206JA07
4F206JQ88
5E322AA01
5E322BA01
5E322BA03
5E322BA05
5E322BB03
5E322CA05
5E322FA02
5F136BA00
5F136CA01
5F136CA17
(57)【要約】
【課題】発熱量の高い発熱体を効果的に冷却可能な発熱体の収容構造を提供する。
【解決手段】制御盤4は、筐体41と、少なくとも一つの高発熱体(ヒートシンク43等)と、筐体41に収容され、少なくとも一つの高発熱体より発熱量の低い少なくとも一つの低発熱体(基板45等)と、を有している。筐体41は、少なくとも一つの高発熱体を収容する少なくとも一つの高発熱体収容部51と、少なくとも一つの高発熱体収容部51から分離され、少なくとも一つの低発熱体を収容する低発熱体収容部52と、を有している。少なくとも一つの高発熱体収容部51は、低発熱体収容部52との境界面53と対向する面55に、外気と連通する複数の連通口61を有している。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、前記筐体に収容された少なくとも一つの高発熱体と、前記筐体に収容され、前記少なくとも一つの高発熱体より発熱量の低い少なくとも一つの低発熱体と、を有し、
前記筐体は、
前記少なくとも一つの高発熱体を収容する少なくとも一つの高発熱体収容部と、
前記少なくとも一つの高発熱体収容部から分離され、前記少なくとも一つの低発熱体を収容する低発熱体収容部と、を有し、
前記少なくとも一つの高発熱体収容部は、前記低発熱体収容部との境界面と対向する面に、外気と連通する複数の連通口を有する、発熱体の収容構造。
【請求項2】
前記少なくとも一つの低発熱体は熱エネルギー発生部を有し、前記少なくとも一つの高発熱体は、前記熱エネルギー発生部から伝導した熱エネルギーを放散する放熱部を有する、請求項1に記載の発熱体の収容構造。
【請求項3】
前記熱エネルギー発生部は射出成形機の駆動電力を発生させるアンプを含み、前記放熱部は前記アンプに接続されたヒートシンクを含む、請求項2に記載の発熱体の収容構造。
【請求項4】
前記少なくとも一つの高発熱体収容部の奥行きは40cm以上50cm以下である、請求項1から3のいずれか1項に記載の発熱体の収容構造。
【請求項5】
前記少なくとも一つの高発熱体収容部に収容され、前記外気を前記少なくとも一つの高発熱体収容部に供給する外気送風機を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の発熱体の収容構造。
【請求項6】
前記低発熱体収容部に収容され、前記低発熱体収容部の内部空気を循環させる空気循環用送風機を有し、前記低発熱体収容部は通風口を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の発熱体の収容構造。
【請求項7】
前記低発熱体収容部は自然換気のための通風口を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の発熱体の収容構造。
【請求項8】
前記低発熱体収容部に収容され、前記低発熱体収容部の内部空気を循環させる空気循環用送風機を有し、前記低発熱体収容部は密閉構造である、請求項1から3のいずれか1項に記載の発熱体の収容構造。
【請求項9】
前記少なくとも一つの高発熱体収容部は一つの高発熱体収容部である、請求項1から3のいずれか1項に記載の発熱体の収容構造。
【請求項10】
前記少なくとも一つの高発熱体は複数の高発熱体であり、前記複数の高発熱体は上下方向に複数段で配置されている、請求項9に記載の発熱体の収容構造。
【請求項11】
前記少なくとも一つの高発熱体収容部は複数の高発熱体収容部であり、前記低発熱体収容部は前記複数の高発熱体収容部の間に配置されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の発熱体の収容構造。
【請求項12】
前記境界面を構成する分離壁を有し、前記分離壁の熱伝導率は前記筐体の熱伝導率より低い、請求項1から3のいずれか1項に記載の発熱体の収容構造。
【請求項13】
前記高発熱体収容部の前記境界面は、前記低発熱体収容部の前記高発熱体収容部との対向面より小さい、請求項1から3のいずれか1項に記載の発熱体の収容構造。
【請求項14】
前記少なくとも一つの連通口は、前記少なくとも一つの高発熱体収容部の、前記境界面と前記境界面と対向する面のいずれとも異なる面にも設けられる、請求項1から3のいずれか1項に記載の発熱体の収容構造。
【請求項15】
前記筐体は制御盤の筐体である、請求項1から3のいずれか1項に記載の発熱体の収容構造。
【請求項16】
筐体と、前記筐体に収容され射出成形機の駆動電力を発生させる少なくとも一つのアンプと、前記筐体に収容され前記少なくとも一つのアンプに接続された少なくとも一つのヒートシンクと、を有し、
前記筐体は、
前記少なくとも一つのヒートシンクを収容する少なくとも一つのヒートシンク収容部と、
前記少なくとも一つのヒートシンク収容部から分離され、前記少なくとも一つのアンプを収容するアンプ収容部と、を有する、射出成形機の制御盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱体の収容構造と射出成形機の制御盤に関する。
【背景技術】
【0002】
産業機器の制御盤は、制御対象機器の制御のための様々な電気機器や電子機器を収容している。これらの機器から大きな熱が発生する場合、制御盤は冷却のための機構を備えることがある。特許文献1にはNC工作機械の制御盤の冷却装置が開示されている。この冷却装置では、アンプなどの発熱体にフィンやヒートレーンが接続されている。フィンやヒートレーンはダクトに配置され、ダクト内を流動する空気で冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-353679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された冷却機構では、フィンやヒートレーンなどの被冷却物がダクトに設置されているため、冷却効率の向上に限度がある。このような課題はNC工作機械の制御盤に限らず、広く発熱体の収容構造に共通する。
【0005】
本開示は、発熱量の高い発熱体を効果的に冷却可能な発熱体の収容構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、筐体と、筐体に収容された発熱体と、を有する発熱体の収容構造に関する。筐体は、高発熱体を収容する高発熱体収容部と、高発熱体収容部から分離され、低発熱体を収容する低発熱体収容部と、を有している。高発熱体収容部は、低発熱体収容部との境界面と対向する面に、外気と連通する複数の連通口を有している。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、発熱量の高い発熱体を効果的に冷却可能な発熱体の収容構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明が適用される例示的な射出成形機の概略図である。
図2A】第1の実施形態に係る射出成形機の制御盤の概略断面図である。
図2B図2Aに示す射出成形機の制御盤の概略正面図である。
図2C図2Aに示す射出成形機の制御盤の概略斜視図である。
図3A】連通口の一例を示す概念図である。
図3B】連通口の他の例を示す概念図である。
図3C】連通口の他の例を示す概念図である。
図4】第2の実施形態に係る射出成形機の制御盤の概略断面図である。
図5】第3の実施形態に係る射出成形機の制御盤の概略断面図である。
図6A】第4の実施形態に係る射出成形機の制御盤の概略断面図である。
図6B図6Aに示す射出成形機の制御盤の概略正面図である。
図6C図6Aに示す射出成形機の制御盤の概略斜視図である。
図7】第5の実施形態に係る射出成形機の制御盤の概略断面図である。
図8】比較例の制御盤の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
図面を参照して本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下の実施形態では射出成形機の制御盤について説明する。しかし、本発明はNC工作機械の制御盤など、発熱体の収容構造に広く適用することができる。
【0010】
図1を参照して、本発明が適用される射出成形機の概要について説明する。射出成形機1は、金型Mを型締めする型締装置2と、射出される材料を加熱溶融して射出する射出装置3と、から概略構成されている。また、射出成形機1は、射出成形機1を制御するための電気機器や電子機器が収容された制御盤4を有している。
【0011】
<型締装置2>
型締装置2は、支持部21に固定され固定金型M1が取り付けられる固定盤22と、支持部21上をスライド可能な型締ハウジング23と、支持部21上をスライド可能で可動金型M2が取り付けられる可動盤24と、を備えている。固定盤22と型締ハウジング23は複数本のタイバー25によって連結されている。可動盤24と型締ハウジング23の間には、金型Mを開閉するための型締機構26が設けられている。型締機構26はトグル機構から構成されている。図示は省略するが、型締機構26は直圧式の型締機構、つまり油圧式の型締シリンダから構成してもよい。
【0012】
<射出装置3>
射出装置3はベッド31上に設けられている。ベッド31はチャンネル鋼を組み合わせて形成されたフレームにパネルを取り付けた箱状の構造物である。射出装置3は、シリンダ32と、シリンダ32に収容されたスクリュ33と、スクリュ33を駆動する駆動機構34と、を備えている。スクリュ33は駆動機構34によって回転駆動されるとともに軸方向Xに駆動される。駆動機構34はカバー35で覆われている。シリンダ32の後端部近傍に、射出される材料を供給するホッパ36が設けられている。ホッパ36は射出される材料が供給される材料供給開口36Aを備えている。シリンダ32の先端には材料を射出する射出ノズル37が設けられている。
【0013】
射出装置3はノズルタッチ装置38を備えている。ノズルタッチ装置38は射出装置3を前進させ、それによって射出ノズル37が金型MのスプルーブッシュM3にタッチする。ノズルタッチ装置38は駆動機構34と固定盤22とを連結している。ノズルタッチ装置38は、たとえば油圧シリンダを用いた機構、あるいは、ボールねじを用いた機構によって構成される。
【0014】
<制御盤4の概要>
図2A~2Cを参照して、制御盤4(発熱体の収容構造の一例)の構成について説明する。図2A図1の2A-2A線に沿った制御盤の概略断面図、図2B、2Cは図2Aの左側からみた制御盤4の概略正面図と概略斜視図であり、いずれも高発熱体収容部51の内部を示している。図2Aの白抜き矢印は気流を概念的に示す。
【0015】
制御盤4は射出成形機1のベッド31に収容されている。制御盤4は、筐体41と、筐体41に収容され、射出成形機1の駆動電力を発生させる複数のアンプ42A~42H(以下、区別する必要のない場合アンプ42という)と、を有している。筐体41は鋼板で作成されている。筐体41を省略し、ベッド31に筐体41の機能を持たせてもよい。各アンプ42A~42Hには、ヒートシンク43A~43H(以下、区別する必要のない場合ヒートシンク43という)が接続されている。ヒートシンク43はアルミニウム製の複数のフィンであるが、ヒートシンク43としての機能を有する限りヒートパイプなどの他の構成を有してもよい。ヒートシンク43は筐体41に収容されている。
【0016】
アンプ42とヒートシンク43はいずれも発熱体であるが、アンプ42は電気エネルギーを熱エネルギーに変換することから、自身が熱エネルギーを発生する熱エネルギー発生部といえる。これに対し、ヒートシンク43はアンプ42に接続されアンプ42から伝導した熱エネルギーを放散する放熱部であるため、熱エネルギー発生部ではない。しかし、熱は主にヒートシンク43によって放熱されるため、ヒートシンク43の発熱量(放熱量)はアンプ42の発熱量(放熱量)より多い。なお、発熱量は単位時間当たりの発熱量を意味する。
【0017】
アンプ42A~42Hは材料の射出用、型の開閉用、材料の可塑化用など目的に応じて複数個(本実施形態では8個)設けられている。従って、ヒートシンク43A~43Hも複数個(本実施形態では8個)設けられている。図2B,2Cに示すように、アンプ42A~42HはX方向に一列に配置され、ヒートシンク43A~43Hも軸方向Xに一列に配置されている。ただし、アンプ42とヒートシンク43の数は限定されず、それぞれ少なくとも一つあればよい。ヒートシンク43は少なくとも一つの高発熱体の例であり、アンプ42は高発熱体より発熱量の低い少なくとも一つの低発熱体の例である。
【0018】
筐体41には基板45、ブレーカ46なども収容されている。基板45及びブレーカ46は低発熱体の他の例である。なお、場合により、筐体41にリアクトルが設けられる場合もある。
【0019】
筐体41は、ヒートシンク43などの高発熱体を収容する一つの高発熱体収容部51(ヒートシンク収容部)と、アンプ42や基板45などの低発熱体を収容する一つの低発熱体収容部52(アンプ収容部)と、に分割されている。低発熱体収容部52は高発熱体収容部51から分離され、高発熱体収容部51の低発熱体収容部52との境界面53は分離壁54で構成されている。分離壁54は断熱材で形成され、または断熱層を含んでいる。分離壁54の熱伝導率は筐体41の熱伝導率より低い。高発熱体収容部51は筐体41の外面の一部を構成する。
【0020】
筐体41は概ね直方体形状を有し、分離壁54は軸方向Xと概ね平行に延びる平板である。従って、高発熱体収容部51と低発熱体収容部52も概ね直方体形状を有している。高発熱体収容部51の6面は、低発熱体収容部52との境界面53を構成する分離壁54と、背面壁55と、分離壁54と背面壁55との間にある一対の側壁57,58と、上壁59と、下壁60と、からなっている。背面壁55は、高発熱体収容部51の内部空間を介して境界面53と対向する面である。
【0021】
<連通口61>
図3Aは背面壁55の平面図であり、連通口61の配置を示している。高発熱体収容部51の背面壁55は、外気と連通する複数の円形の連通口61を有している。背面壁55は多数の連通口61を有するパンチングメタル66からなっている。パンチングメタル66は背面壁55のほぼ全域にわたって設けられ、連通口61はパンチングメタル66のほぼ全域にわたって均等に形成されている。高発熱体の点検や清掃のため、パンチングメタル66(または背面壁55)は取り外し可能であることが好ましい。連通口61の数や面積は外気導入量などに応じて決定することができる。
【0022】
各連通口61の開口面積は限定されないが、外気が大きな抵抗を受けることなく高発熱体収容部51に流入し、高発熱体収容部51から流出することができる程度の開口面積であることが好ましい。連通口61の形状は限定されず、楕円形、四角形などでもよい。
【0023】
背面壁55はパンチングメタル66に限定されず、様々な構成を取ることができる。図3Bに示す変形例では、背面壁55は上下方向と水平方向に延びる鋼棒67を組み合わせた格子状の連通口61を有している。本変形例では開口比を大きく取ることができる。背面壁55を通して高発熱体を視認できるため、メンテナンス上も有利である。
【0024】
図3Cに示す変形例では、背面壁55は水平方向に延びる複数のスリット68からなる連通口61を有している。本変形例でも開口比を大きく取ることができる。図示は省略するが、図3Cに示すスリット状の連通口61をルーバ形状としてもよい。外部から高発熱体を直視できなくなるので、制御盤4の意匠性が向上する。図示は省略するが、スリット68の向きは水平方向に限らず鉛直方向や斜め方向でもよい。
【0025】
外気は複数の連通口61のみを通って高発熱体収容部51に流入する。換言すれば、連通口61には外気をろ過するためのフィルタが設けられていない。射出成形機1からは成形時に塵埃が発生することもあるが、高発熱体はフィンやコイルなどの金属部品であり、塵埃や油が付着しても機能への大きな影響はない。一方、フィルタを省略することで、外気の吸い込み時と排出時の抵抗が低減され、以下に説明する外気送風機62の動力費の増加が抑制される。また、フィルタの交換やメンテナンスも不要となる。
【0026】
<高発熱体収容部51>
高発熱体収容部51には、外気を供給する外気送風機62が収容されている。外気送風機62は高発熱体収容部51の概ねX方向中央に設けられ、中央のヒートシンク43に向かって外気を吹き付ける、従って、外気は中央部の連通口61から流入し、高発熱体収容部51を四方に分かれて両側の連通口61から排出される。しかし、外気送風機62の数や位置は何ら限定されず、複数の外気送風機62を設けてもよいし、外気送風機62を高発熱体収容部51のX方向端部に設けてもよい。複数の連通口61の各々は、外気送風機62の数や位置によって、給気口になることもあるし排気口となることもある。
【0027】
図8は比較例の制御盤104の図2Aと同様の図である。制御盤104の筐体141の内部は高発熱体収容部51と低発熱体収容部52とに区画されておらず、高発熱体(例としてヒートシンク43を示す)と低発熱体(例としてアンプ42、基板45を示す)が同じ空間に収容されている。筐体141の両側側面にX方向に延びる帯状の給気口161が設けられ、筐体141の背面(本実施形態の側面58に相当する面)に排気口163が設けられている。筐体141の内部に送風機(図示せず)が設けられている。
【0028】
比較例では、高発熱体を重点的に冷却するため、制御盤104の内部に、高発熱体に向けて気流をガイドするダクト構造164を設けている。具体的には、給気口161から導入された外気は、一旦下方に向かって流れ、そこから上向きに向きを変えて高発熱体(ヒートシンク43)を冷却し、さらに排気口163に向けて向きを変える。従って、ダクト構造164は極めて複雑である。
【0029】
換言すれば、高発熱体を通る空気流のルートを確保するために、構造物を配置しない複雑な空間を確保する必要がある。この空間を確保するため制御盤104の配置効率が制約され、制御盤104のコンパクト化が困難となる可能性がある。また、複雑なダクト形状に伴うダクトの圧力損失に見合うだけの送風機を設ける必要がある。さらに、送風機の風量は高発熱体を冷却するための性能で決められるため、低発熱体の冷却にとっては過剰となる可能性がある。これらの理由により、送風機の配置スペース、動力費とも不利となる可能性がある。
【0030】
これに対して本実施形態では、上述の通り、高発熱体収容部51の背面壁55のほぼ全面に多数の連通口61が配置されている。背面壁55のほぼ全面が外気の流入口と排出口となるため、外気は、背面壁55と直交する方向から高発熱体収容部51に流入し、直交する方向から排出される。従って、高発熱体収容部51はいわゆるダクト構造とは異なる。高発熱体収容部51の内部の空気流路は単純で且つ短いので、空気流路を確保するために、構造物を配置しない過大な空間を備える必要がない。このため、高発熱体収容部51の配置効率を高めることができる。
【0031】
さらに、高発熱体収容部51は、高発熱体と外気送風機62を収容できるスペースがあればよい。高発熱体収容部51に収容される高発熱体は限定されており、高発熱体収容部51の奥行き(X方向寸法)は高発熱体と外気送風機62の配置で決定されるので、奥行きを抑えることが容易である。従って、高発熱体収容部51の容積を抑えることが容易である。また、上述のように高発熱体収容部51の内部の空気流路は単純で且つ短いので、圧力損失が小さい。これらの理由から、外気送風機62の容量を抑えることができる。従って、送風機のコンパクト化やそれに伴う高発熱体収容部51の縮小が可能となり、これに伴い、高発熱体の点検や清掃のためのアクセス性を確保することも容易となる。
【0032】
高発熱体収容部51の奥行き(背面壁55と直交する方向の寸法)は一例では40cm以上50cm以下程度で十分である。また、一般的な成人の腕の長さは40~60cm程度であることが多いため、高発熱体収容部51の奥行きをこの程度にとどめることで、メンテナンス性も向上する。
【0033】
<低発熱体収容部52>
低発熱体収容部52には空気循環用送風機63が収容され、低発熱体収容部52は、空気の取り込みと排出を兼ねた通風口64を有している。空気循環用送風機63は、低発熱体収容部52の内部空気を循環させる。低発熱体収容部52は基板45などの精密部品を含むため、外部からの塵埃や油の流入をできるだけ避けることが好ましい。このため、通風口64をできるだけ小さくするとともに、フィルタを設けることが好ましい。空気の取り込みと排出がより効果的に行えるように、通風口64を複数設けてもよい。空気循環用送風機63は冷却負荷に応じた適切な容量のものでよいため、設置面積や動力費の面で有利となる。
【0034】
低発熱体収容部52は冷却負荷が限定されているため、冷却用の空気流路のために、構造物を配置しない過大な空間を確保する必要性が小さい。このため、低発熱体収容部52の配置効率を高めることができる。上述の通り高発熱体収容部51の配置効率も向上するので、本実施形態では、比較例と比べて全体的な配置効率が向上し、制御盤4のコンパクト化が容易となる。
【0035】
低発熱体収容部52を密閉構造とすることもできる。この場合も、低発熱体収容部52の内部に空気循環用送風機63を設けることが好ましい。あるいは、空気循環用送風機63を省略し、低発熱体収容部52に、自然換気のための少なくとも一つの通風口64を設けることもできる。このように、低発熱体収容部52の冷却構造については、低発熱体の発生熱量や、低発熱体の防塵要求などに基づき適宜決定することができる。
【0036】
(第2の実施形態)
図4は第2の実施形態を示す、図2Aと同様の図である。ここでは第1の実施形態との違いを主に説明する。説明を省略した構成や効果は第1の実施形態と同様である。本実施形態では2つの高発熱体収容部51が設けられている。低発熱体収容部52は2つの高発熱体収容部51の間に配置され、2つの高発熱体収容部51は、それぞれ筐体41の側面の一部を構成している。本実施形態は制御盤4のX方向寸法が制限されている場合に効果的であり、各アンプ42と被駆動対象物との距離の短縮(ケーブル長の短縮)を図る場合にも効果的となる可能性がある。高発熱体収容部51の数は2つに限定されず、3以上の高発熱体収容部51を筐体41の外面に配置してもよい。
【0037】
(第3の実施形態)
図5は第3の実施形態を示す、図2Aと同様の図である。ここでは第1の実施形態との違いを主に説明する。説明を省略した構成や効果は第1の実施形態と同様である。本実施形態では、複数の高発熱体(例としてヒートシンク43を示す)は上下方向に複数段(本実施形態では2段)で配置されている。本実施形態も、第2の実施形態と同様、制御盤4のX方向寸法が制限されている場合に効果的である。
【0038】
(第4の実施形態)
図6A~6Cは第4の実施形態を示す、図2A~2Cと同様の図である。ここでは第1の実施形態との違いを主に説明する。説明を省略した構成や効果は第1の実施形態と同様である。ここでは第1の実施形態との違いを主に説明する。説明を省略した構成や効果は第1の実施形態と同様である。
【0039】
本実施形態では、高発熱体収容部51の境界面53は、低発熱体収容部52の高発熱体収容部51との対向面65より小さい。すなわち、高発熱体収容部51の容積は第1の実施形態と比べて小さくされている。通気口を確保するため高発熱体収容部51の上壁59にも連通口61を配置している。ヒートシンク43以外の高発熱体がある場合は、低発熱体収容部52に収容するが、高発熱体収容部51に収容しすることもできる。本実施形態は高発熱体収容部51の容積を限定することで、制御盤4をさらにコンパクト化することができる。連通口61が設けられるすべての面(本実施形態では、背面壁55及び上壁59)の総面積(連通口61を含む)に対する連通口61の総面積の比は20%以上であることが好ましい。
【0040】
(第5の実施形態)
図7は第4の実施形態を示す、図2Aと同様の図である。ここでは第1及び第6の実施形態との違いを主に説明する。説明を省略した構成や効果は第1及び第6の実施形態と同様である。本実施形態では、連通口61は、高発熱体収容部51の境界面53を除く全ての面(すなわち、背面壁55、側壁57,58、上壁59、下壁60)に設けられている。連通口61は、高発熱体収容部51の、境界面53と背面壁55のいずれとも異なる少なくとも一つの面(すなわち、側壁57,58、上壁59、下壁60の少なくとも一つ)にも設けることができる。
【0041】
本実施形態は外気の流入効率と排気効率がさらに向上するため、高発熱体の冷却効果が向上する。また、高発熱体収容部51を図3Bに示す格子状などにすることで、高発熱体収容部51の構成を簡素化することができる。本実施形態でも、連通口61が設けられるすべての面(背面壁55、側壁57,58、上壁59、下壁60)の総面積(連通口61を含む)に対する連通口61の総面積の比は20%以上であることが好ましい。
【0042】
(付記)本明細書は以下の開示を含む。
[構成1]
筐体と、前記筐体に収容された少なくとも一つの高発熱体と、前記筐体に収容され、前記少なくとも一つの高発熱体より発熱量の低い少なくとも一つの低発熱体と、を有し、
前記筐体は、
前記少なくとも一つの高発熱体を収容する少なくとも一つの高発熱体収容部と、
前記少なくとも一つの高発熱体収容部から分離され、前記少なくとも一つの低発熱体を収容する低発熱体収容部と、を有し、
前記少なくとも一つの高発熱体収容部は、前記低発熱体収容部との境界面と対向する面に、外気と連通する複数の連通口を有する、発熱体の収容構造。
[構成2]
前記少なくとも一つの低発熱体は熱エネルギー発生部を有し、前記少なくとも一つの高発熱体は、前記熱エネルギー発生部から伝導した熱エネルギーを放散する放熱部を有する、構成1に記載の発熱体の収容構造。
[構成3]
前記熱エネルギー発生部は射出成形機の駆動電力を発生させるアンプを含み、前記放熱部は前記アンプに接続されたヒートシンクを含む、構成2に記載の発熱体の収容構造。
[構成4]
前記少なくとも一つの高発熱体収容部の奥行きは40cm以上50cm以下である、構成1から3のいずれか1項に記載の発熱体の収容構造。
[構成5]
前記少なくとも一つの高発熱体収容部に収容され、前記外気を前記少なくとも一つの高発熱体収容部に供給する外気送風機を有する、構成1から4のいずれか1項に記載の発熱体の収容構造。
[構成6]
前記低発熱体収容部に収容され、前記低発熱体収容部の内部空気を循環させる空気循環用送風機を有し、前記低発熱体収容部は通風口を有する、構成1から5のいずれか1項に記載の発熱体の収容構造。
[構成7]
前記低発熱体収容部は自然換気のための通風口を有する、構成1から5のいずれか1項に記載の発熱体の収容構造。
[構成8]
前記低発熱体収容部に収容され、前記低発熱体収容部の内部空気を循環させる空気循環用送風機を有し、前記低発熱体収容部は密閉構造である、構成1から5のいずれか1項に記載の発熱体の収容構造。
[構成9]
前記少なくとも一つの高発熱体収容部は一つの高発熱体収容部である、構成1から8のいずれか1項に記載の発熱体の収容構造。
[構成10]
前記少なくとも一つの高発熱体は複数の高発熱体であり、前記複数の高発熱体は上下方向に複数段で配置されている、構成9に記載の発熱体の収容構造。
[構成11]
前記少なくとも一つの高発熱体収容部は複数の高発熱体収容部であり、前記低発熱体収容部は前記複数の高発熱体収容部の間に配置されている、構成1から8のいずれか1項に記載の発熱体の収容構造。
[構成12]
前記境界面を構成する分離壁を有し、前記分離壁の熱伝導率は前記筐体の熱伝導率より低い、構成1から11のいずれか1項に記載の発熱体の収容構造。
[構成13]
前記高発熱体収容部の前記境界面は、前記低発熱体収容部の前記高発熱体収容部との対向面より小さい、構成1から12のいずれか1項に記載の発熱体の収容構造。
[構成14]
前記少なくとも一つの連通口は、前記少なくとも一つの高発熱体収容部の、前記境界面と前記境界面と対向する面のいずれとも異なる面にも設けられる、構成1から13のいずれか1項に記載の発熱体の収容構造。
[構成15]
前記筐体は制御盤の筐体である、構成1から14のいずれか1項に記載の発熱体の収容構造。
[構成16]
筐体と、前記筐体に収容され射出成形機の駆動電力を発生させる少なくとも一つのアンプと、前記筐体に収容され前記少なくとも一つのアンプに接続された少なくとも一つのヒートシンクと、を有し、
前記筐体は、
前記少なくとも一つのヒートシンクを収容する少なくとも一つのヒートシンク収容部と、
前記少なくとも一つのヒートシンク収容部から分離され、前記少なくとも一つのアンプを収容するアンプ収容部と、を有する、射出成形機の制御盤。
【符号の説明】
【0043】
1 射出成形機
4 制御盤(発熱体の収容構造の例)
31 ベッド
41 筐体
42 アンプ(低発熱体の例)
43 ヒートシンク(高発熱体及び放熱部の例)
45 基板(低発熱体の例)
51 高発熱体収容部(ヒートシンク収容部)
52 低発熱体収容部(アンプ収容部)
53 境界面
54 分離壁
55 背面壁(境界面53と対向する面)
61 連通口
62 外気送風機
63 空気循環用送風機
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8