(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006087
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】防虫剤、防虫用組成物および防虫方法
(51)【国際特許分類】
A01N 43/90 20060101AFI20240110BHJP
A01P 17/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
A01N43/90 101
A01P17/00
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106653
(22)【出願日】2022-06-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】591016839
【氏名又は名称】長岡香料株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591206142
【氏名又は名称】京都リフレ新薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】宮里 博成
(72)【発明者】
【氏名】森川 瞬
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AC06
4H011BB08
(57)【要約】
【課題】
種々の虫に対して優れた防虫効果を奏するとともに、優れた防虫効果が長期間有効に持続する防虫剤を提供する。
【解決手段】
カリオフィレンジオキサイドを有効成分とする防虫剤、カリオフィレンジオキサイドを含有してなる防虫組成物および虫の生育域にカリオフィレンジオキサイドを施用することを含む防虫方法。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カリオフィレンジオキサイドを有効成分とする防虫剤。
【請求項2】
カリオフィレンジオキサイドを含有してなる防虫組成物。
【請求項3】
虫の生育域にカリオフィレンジオキサイドを施用することを含む防虫方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防虫剤、防虫用組成物および防虫方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴキブリ、ダニ、カなどは、ヒトに対して疾患となるウイルスなどを媒介する衛生害虫として実害があり、除去を図る意義があるが、近年では、清潔観念の高揚、虫との接触機会の減少などから、実害の有無に関わりなく、外見や動きが気分を害するという主観的な理由で「害虫」として、防虫する傾向が強い。
【0003】
従来から衛生害虫の防除対策に用いられている有機リン系、カーバメイト系、またはピレスロイド系などの殺虫剤は優れた殺虫力を持ち、かつ安価であることから、長い間用いられてきたが、害虫を殺虫剤などで殺処分した場合には、害虫の死骸がその場に残るため、かえって虫嫌いの購買者に不快感を与えるという問題もあり、近時は、害虫を寄せ付けない、いわゆる防虫剤が重視されている。
【0004】
しかしながら、これまでの防虫剤は、特定の害虫を対象としたものが多く、種々の害虫に対して広い防虫効果を有する防虫剤は知られておらず、また長期間その有効性を維持できる防虫剤は知られていないといっても過言ではない。
【0005】
もっとも、長期間の防虫効果を謳ったピレスロイド系の家庭用防虫剤は市販されている。しかしピレトリンや合成ピレスロイドは光や酸素により分解し易く、それ自体が長期間、有効性を維持するというものではないので、これらの家庭用防虫剤では、ピレスロイドを担体に吸着させたり、分解防止剤を併用するなどして、持続性を付与しており、製造面やコスト面での負担が避けられないという問題がある。
【0006】
カリオフィレンに関しては、カリオフィレンオキサイドを有効成分とするイネ吸汁性害虫の防虫剤が知られているが、この防虫剤は優れた効果を奏するものの、生活害虫や不快害虫を対象としたものではなく、また長期間にわたり効果を持続させるという点では十分とはいえない(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、意外にもカリオフィレンジオキサイドが、種々の虫に対して優れた防虫効果を奏することを見出すとともに、この優れた防虫効果が非常に長期間有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、カリオフィレンジオキサイドを有効成分とする防虫剤である。
【0010】
また、本発明は、カリオフィレンジオキサイドを含有してなる防虫組成物である。
【0011】
さらに、本発明は、虫の生育域にカリオフィレンジオキサイドを施用すること含む防虫方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、カリオフィレンジオキサイドは、常温における蒸気圧が低く、そのため、持続化のための製剤処理などがなくても、極めて長期間有効性を維持することができるので、防虫剤として優れている。
【0013】
さらにまた、カリオフィレンジオキサイドは、物質としての安定性も高く、防虫剤とした場合でも、取り扱いが容易であるという特徴も有する。さらに非常に広範囲の種類の虫に対して、防虫効果を奏するので、虫ごとに有効成分の異なる防虫剤を用いて防虫する必要がなく、簡単に虫のいない生活領域を確保することができる。
【0014】
また、本発明によれば、前記非常に広範囲の種類の虫に対する防虫効果が長期間維持されるので、防虫剤を補給する頻度や、防虫剤を取り換える頻度を大幅に低減することができる。
【0015】
また、本発明によれば、多くの虫が、本発明の防虫剤を嫌って寄り付かないので、虫を見かけることがなく、その死骸を除去するなどの不愉快な機会を大幅に減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施例3で使用した実験器具の概略図である。
【
図2】実施例4で使用した実験器具の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の防虫剤は、分類学的には、前記の有翅亜目の原ゴキブリ目に属するゴキブリ上目のゴキブリ目、カマキリ目および等翅目の虫、有翅亜目の長翅目または陰翅目に属する双翅目の虫、有翅亜目の鱗翅目の虫、有翅亜目に属する半翅目、噛虫目、膜翅目および直翅目の虫を対象とする。これらの虫はヒトの日常生活における感覚をもとに不快害虫、衛生害虫および生活害虫などと呼ばれることがあるが、不快害虫、衛生害虫および生活害虫は、学術的な分類ではなく、同じ虫が複数の区分にまたがって分けられることも多い。
【0018】
また、本発明において、防虫とは、本発明の防虫剤が存在する一定の範囲内に生存する虫がいないことを意味し、その効果は、虫に対してカルシウムチャンネル、コリンエステラーゼ阻害、GABA作動阻害などの神経系阻害作用や、呼吸阻害作用、防虫作用などによる防虫メカニズムのいずれの作用によるものであってもよいことを意味する。
【0019】
本発明においては、以下の定義にしたがって、虫を定義するが、これらは一つの虫が一つの定義に該当することを意味するのではなく、前記分類学など複数の定義に該当する場合も含むものである。
【0020】
本発明の防虫剤は、不快害虫、衛生害虫および生活害虫などを対象とするものであり、不快害虫とは、ヒトに対する実害はないが、姿形などから気分を害する害虫であって、たとえばクモ、アリ、ヤスデ、ゲジ、セミ、カマドウマ、ゴキブリなどがあげられる。
【0021】
また、衛生害虫とは、ヒトやペットなどの疾病の原因または遠因となり得る害虫であり、たとえばカ、ハエ、アブ、ノミ、シラミ、ダニ、ハチ、ケムシ、ムカデ、ゴキブリ、ドクガなどがあげられる。
【0022】
生活害虫とは、衣類、米や小麦粉などの穀物、建物、書籍など、ヒトの生活に必要なものを食害する害虫であり、たとえばコクゾウムシ、マメゾウムシ、シバンムシ、キクイムシ、コクヌスト、カツオブシムシ、ノシメマダラメイガ、ゴキブリ、ハエ、ヒョウホンムシ、カツオブシムシ、コクヌストモドキ、ヒラタムシ、チビタケナガシンクイ、メイガ、チャタテムシ、トビムシ、シロアリ、フナクイムシ、イガ、コナダニ、アリ、ヒメマルカツオブシムシ、テントウムシ、カメムシなどがあげられる。
【0023】
本発明の防虫剤は、種々の多様な害虫に対して防虫効果を奏するというものであり、かつ長期間にわたって前記防虫効果を維持することができる。
【0024】
クモとしては、カバキコマチグモ、セアカゴケグモ、ジョロウグモ、クサグモ、アシダカグモ、ハエトリグモ、ジグモ、イエユウレイグモ、ヒラタグモ、ハンゲツオスナキグモなどがあげられる。
【0025】
アリとしては、クロオオアリ、ムネアカオオアリ、ミカドオオアリ、トゲアリ、アカヤマアリ、クロヤマアリ、サムライアリ、トビイロケアリなどのヤマアリ亜科に属するアリ、アミメアリ、クロナガアリ、アシナガアリ、イエヒメアリ、オオズアリ、キイロシリアゲアリ、ハリブトシリアゲアリ、テラニシシリアゲアリ、クシケアリ、ムネボソアリ、トビイロシワアリ、アメイロアリなどのフタフシアリ亜科に属するアリ、ルリアリなどのカタアリ亜科に属するアリ、アギトアリ、オオハリアリ、トゲズネハリアリ、ニセハリアリなどのハリアリ亜科に属するアリがあげられる。
【0026】
ヤスデとしては、ヤケヤスデ、キシャヤスデ、ウスアカフサヤスデ、ヤンバルトサカヤスデなどがあげられる。
【0027】
ゲジとしては、ゲジのほか、オオゲジがあげられる。
カマドウマとしては、カマドウマのほか、エラグカマドウマ、ヤクカマドウマ、アグニカマドウマ、クメカマドウマ、メシマカマドウマ、アマギカマドウマがあげられる。
【0028】
アブとしてはアカウシアブ、イヨシロオビアブ、ヤマトアブ、シロフアブ、ヒラタアブ、ツリアブ、シギアブ、ムシヒキアブ、ミズアブ、シオヤアブ、キンイロアブなどがあげられる。
【0029】
ゴキブリとしては、クロゴキブリ、ワモンゴキブリ、コワモンゴキブリ、ヤマトゴキブリ、チャバネゴキブリ、ヒメチャバネゴキブリ、キョウトゴキブリ、キスジゴキブリ、オオゴキブリ、サツマゴキブリ、ヤエヤママダラゴキブリ、オガサワラゴキブリ、ハイイロゴキブリなどがあげられる。
【0030】
また、衛生害虫であるカとしては、トワダオオカ、キンパラナガハシカ、アカイエカ、
チカイエカ、ネッタイイエカ、コガタアカイエカ、オオクロヤブカ、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ、チシマヤブカ、トウゴウヤブカ、ヤマトヤブカ、プロソフォラ・シリアタ、オオツルハマダラカ、シナハマダラカなどがあげられる。
【0031】
ハエとしては、シュモクバエ、メバエ、リミバエ、チチュウカイミバエ、デガシラバエ、シマバエ、ヤチバエ、ハモグリバエ、キモグリバエ、トゲハネバエ、キイロショウジョウバエ、コシアキノミバエ、オオキモンノミバエ、チビクロバネキノコバエ、オオチョウバエ、ホシチョウバエ、ミギワバエ、シラミバエ、コウモリバエ、クモバエ、イエバエ、クロバエ、ヒツジバエ、ニクバエなどがあげられる。
【0032】
アブとしては、前記のものがあげられ、ノミとしては、ヒトノミ、イヌノミ、ネコノミなどがあげられる。
シラミとしては、ヒトジラミ、コロモジラミなどのヒトジラミ、ケジラミがあげられる。
【0033】
ダニとしては、コナヒョウヒダニ、ヤケヒョウヒダニ、コナダニ、ツメダニ、マダニ、イエダニ、ワクモ、トリサシダニ、ヒゼンダニ、ニキビダニ、タカラダニなどがあげられる。
【0034】
ハチとしては、ハバチ、ベッコウバチ、スズメバチ、ミツバチなどがあげられ、スズメバチとしては、オオスズメバチ、ヒメスズメバチ、キイロスズメバチ、コガタスズメバチ、モンスズメバチ、チャイロスズメバチ、ツマアカスズメバチ、ツマグロスズメバチ、オリエントスズメバチ、クロスズメバチ、キオビホオナガスズメバチ、ヤミスズメバチなどがあげられる。
【0035】
ケムシとしては、イラムシ(イラガの幼虫)、クマケムシ(ヒトリガ・シロヒトリなどの幼虫)、シラガタロウ・クリケムシ(クスサンの幼虫)、ブランコケムシ(マイマイガの幼虫)、テンマクケムシ・ウメケムシ(オビカレハの幼虫)、マツケムシ(マツカレハの幼虫)などがあげられる。
ムカデとしては、トビズムカデ、オオズムカデ、アカズムカデなどがあげられる。
【0036】
ゴキブリとしては前記のものがあげられる。
ドクガとしては、ドクガ、チャドクガ、キドクガ、モンシロドクガ、ブドウドクガ、マメドクガ、スゲドクガ、リンゴドクガ、ヒメシロモンドクガ、コシロモンドグガ、スギドクガ、ダイセツドクガ、マイマイガ、カシワマイマイ、ノンネマイマイ、キアシドクガ、ヒメキアシドクガなどがあげられる。
【0037】
コクゾウムシとしては、コクゾウムシのほか、ココクゾウムシがあげられる。
【0038】
マメゾウムシとしては、ミツバマメゾウムシ、インゲンマメゾウムシ、イタチハギマメゾウムシ、チビマメゾウムシ、チャバラマメゾウムシ、シロモンマメゾウムシ、サムライマメゾウムシ、ヒゲナガマメゾウムシ、ネムノキマメゾウムシ、シリアカマメゾウムシ、ミヤコグサマメゾウムシ、エンドウマメゾウムシ、ソラマメゾウムシ、ワモンマメゾウムシ、アズキマメゾウムシ、ヨツモンマメゾウムシ、タテモンマメゾウムシ、クシヒゲマメゾウムシ、サイカチマメゾウムシ、エンジュマメゾウムシ、イクビマメゾウムシ、ザウテルマメゾウムシ、ブラジルマメゾウムシなどがあげられる。
【0039】
シバンムシとしては、タバコシバンムシ、ジンサンシバンムシ、ケブカシバンムシ、マツザイシバンムシ、オオナガシバンムシ、カツラクシヒゲツツシバンムシ(ノウタニシバンムシ)、クロノコヒゲシバンムなどがあげられる。
【0040】
キクイムシとしては、マツノスジキクイムシ、ヤチダモノクロキクイムシ、ハルニレノキクイムシ、マツノキクイムシ、ルイスオオキクイムシ、ニイシマキクイムシ、ギフキクイムシ、ヒバノキクイムシ、ヒノキノキクイムシ、ヤツガタケキクイムシ、エゾキクイムシ、キソキクイムシ、オオヨツメキクイムシ、ヒメヨツメキクイムシ、ヨツメキクイムなどがあげられる。
【0041】
コクヌストとしては、コクイブストのほか、ホソチビコクヌストなどがあげられる。カツオブシムシとしては、ホソマメムシ、オビカツオブシムシ、アカオビカツオブシムシ、ハラジロカツオブシムシ、カドムネカツオブシムシ、ケアカカツオブシムシ、シモフリカツオブシムシ、フイツカカツオブシムシ、トビカツオブシムシ、スジカツオブシムシ、ヒメカツオブシムシ、シラホシカツオブシムシ、カマキリタマゴカツオブシムシ、アカマダラカツオブシムシ、シロオビカツオブシムシ、ヒメマルカツオブシムシ、ベニモンカツオブシムシ、チビケカツオブシムシ、ヒメアカカツオブシムシなどがあげられる。
【0042】
ゴキブリおよびハエは前記のとおりのものがあげられる。ヒョウホンムシとしては、ニセセマルヒョウホンムシ、セマルヒョウホンムシ、ケジロヒョウホンムシ、クロヒョウホンムシ、カバイロヒョウホンムシ、ナガヒョウホンムシ、ヒョウホンムシ、ヒメヒョウホンムシ、コナガヒョウホンムシなどがあげられる。
【0043】
カツオブシムシ、シバンムシ、コクヌストモドキは前記のとおりのものがあげられる。
【0044】
ヒラタムシとしては、ノコギリヒラタムシ、オオメノコギリヒラタムシ、オオメノコギリホソヒラタムシ、カドコブホソヒラタムシ、フタトゲホソヒラタムシ、カクムネヒラタムシ、ハウカクムネヒラタムシ、ハウカクムネチビヒラタムシ、サビカクムネヒラタムシ、トルコカクムネヒラタムシなどがあげられる。
【0045】
コクゾウムシとしては前記のものがあげられる。
【0046】
チビタケナガシンクイとしては、チビタケナガシンクイムシ、オオチビシンクイムシ、ニホンタケナガシンクイムシがあげられる。
【0047】
メイガとしては、ノシメマダラメイガ、ハイマダラメイガ、ウリノメイガ、ワタノメイガなどがあげられる。
【0048】
チャタテムシとしては、ヒラタチャタテ、コナチャタテ、コチャタテ、カツブシチャタテ、ウスベニチャタテムシ、キモンチャタテムシ、ヨツモンホソチャタテムシ、ホソチャタテムシ、ナガケチャタテムシ、スジチャタテムシ、オオスジチャタテムシ、クロミャクチャタテムシ、オオチャタテムシ、オオウロコチャタテムシ、ハグルマチャタテムシ、イダテンチャタテムシなどがあげられる。
【0049】
トビムシとしては、ハイイロツチトビムシ、ムラサキトビムシ、シロトビムシなどがあげられる。
【0050】
シロアリとしては、オオシロアリ、ヤマトシロアリ、イエシロアリ、ダイコクシロアリ、アメリカカンザイシロアリなどがあげられる。
【0051】
シバンムシとしては前記のものがあげられ、イガとしてはイガのほかコイガがあげられる。
コナダニとしては、ケナガコナダニがあげられる。アリ、カツオブシムシ、ヒメマルカツオブシムシとしては前記のとおりのものがあげられる。
【0052】
テントウムシとしては、ナナホシテントウ、ナミテントウ、ダンダラテントウ、カメノコテントウ、ヒメカメノコテントウ、ジュウサンホシテントウ、ウンモンテントウ、オオテントウ、ベダリアテントウ、アカホシテントウ、ベニヘリテントウ、アミダテントウ 、ムツボシテントウ、キイロテントウ、シロホシテントウなどがあげられる。
【0053】
カメムシとしては、イネクロカメムシ(クロカメムシ)、ウズラカメムシ、トゲシラホシカメムシ、シラホシカメムシ、ブチヒゲカメムシ、アオクサカメムシ、ミナミアオカメムシ、イネカメムシ、オオトゲシラホシカメムシ、イネクロカメムシ、クサギカメムシなどのカメムシ科に属するカメムシ、ヒメナガカメムシ、コバネヒョウタンナガカメムシなどのナガカメムシ科に属するカメムシ、ホソヘリカメムシ、クモヘリカメムシなどのホソヘリカメムシ科に属するカメムシ、ホソハリカメムシなどのヘリカメムシ科に属するカメムシ、アカヒメヘリカメムシなどのヒメヘリカメムシ科に属するカメムシ、ブチヒゲヘリカメムシなどのヒメヘリカメムシ科に属するカメムシ、アカヒゲホソミドリカスミカメ、アカスジカスミカメ)などのカスミカメムシ科などのカメムシがあげられる。
【0054】
本発明の防虫成分であるカリオフィレンジオキサイドは、既知化合物(カナディアン ジャーナル オブ ケミストリー,54(9),1372-1382,1976年)であり、常温では、結晶状の白色固体であるが、加熱すると液体となり、芳香を有する化合物である。
【0055】
カリオフィレンジオキサイドは極めて安全性の高い化合物であり、たとえば化学物質などの安全性を評価するための国際的に合意された試験方法のコレクションであるOECDテストガイドライン(OECD Guideline for Testing of Chemicals)420(2001)に準拠し、6週齢の雌ラットを用いて一般財団法人日本食品分析センターが行った実験では、カリオフィレンジオキサイドのLD50は、2000mg/kg以上であり、極めて安全性の高い物質であることが確認されている。
【0056】
また、健常人(20歳~60歳)を被験者として、カリオフィレンジオキサイド0.5%水溶液(注射用蒸留水)を用いて、24時間閉塞パッチテストを行った結果では、皮膚刺激指数は0.0であり、安全品に分類されている。
【0057】
本発明において、防虫成分であるカリオフィレンジオキサイドの使用量は、対象となる害虫によっても変化するが、1cm2あたり、通常、10~800μgを用いることによって、十分な防虫効果を得ることができる。さらに、1cm2あたり50~500μgを用いることが好ましく、1cm2あたり100~200μgを用いることがとりわけ好ましい。前記の量を越えて用いても、防虫剤が過剰となるだけで特に問題はなく、むしろ、より長期間、防虫効果を維持することができる利点がある。
【0058】
本発明の防虫剤は、そのままで使用できるほか、適当な溶媒に溶解して用いることができるが、さらに適宜選択される製剤助剤とともに溶液、乳液、懸濁液、固形製剤、エアゾール剤、さらにはシート状など種々の形態の組成物とすることができる。たとえば、溶液であれば、本発明の防虫成分を、水、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、ケロシン、灯油、燃料油、機械油等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等の室温で液体状の酸アミド類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、アセトニトリル、プロピオニトリル等などのニトリル類などから適宜選択された溶媒に適宜溶解して使用することができる。
【0059】
また、本発明の防虫組成物が、たとえば乳剤であれば、本発明の防虫成分、並びに乳化剤および有機溶剤等を均一に混合することにより製造できる。
【0060】
さらに、本発明の防虫組成物を固形製剤とするときは、固体担体にカリオフィレンジオキサイドを含浸または吸着させることによって製造できる。かかる担体としては、たとえば大豆粉、タバコ粉、小麦粉、木粉等の植物性粉末、たとえばカオリン、ベントナイト、セピオライト、酸性白土等のクレー類、たとえば滑石粉、ロウ石粉等のタルク類、たとえば珪藻土、雲母粉等のシリカ類、たとえば炭酸カルシウム、アルミナ、ケイ酸カルシウムなどの無機塩類などが挙げられ、これらは多孔性のものを用いることがより好ましい。さらには、ビスコパールなどのパルプを原料とするシート状または球状の担体があげられる。
【0061】
さらには、本発明の防虫組成物を防虫性樹脂とするときは、カリオフィレンジオキサイドを、合成樹脂、熱可塑性樹脂や生分解性高分子物質中に配合することにより製造できる。かかる樹脂や高分子物質としては、たとえば酢酸ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリメタアクリル酸メチル、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、EVA(エチレン―酢酸ビニル共重合)樹脂など、本発明の防虫成分と反応しないものであれば、どのようなものでも好適に使用できる。また生分解性高分子としては、たとえばポリ乳酸、ポリカプロラクトン、脂肪族ポリエステルなどの化学合成によるもののほか、デンプン、キチン、キトサン、ポリアミドなどの生分解性高分子物質を使用することができる。
【0062】
前記防虫性樹脂は、常法により製造することができ、たとえば前記の樹脂とカリオフィレンジオキサイドとを加熱下または可塑剤もしくは溶媒の存在下に、混練したのち切断してペレットとしてもよく、あるいはシート、板、フィルム、繊維など、所望の形状に成型することにより、製造することができる。
【0063】
本発明の防虫組成物をエアゾール剤とする場合には、たとえば、カリオフィレンジオキサイド、有機溶剤、並びに必要に応じて適宜配合される安定剤等をエアゾール容器に充填し、該容器にエアゾールバルブを装着し、噴射剤を該容器中に充填し、振とうした後、アクチュエーターを装着することにより製造することができる。
【0064】
前記エアゾール剤に用いる有機溶剤としては、たとえば低級アルコール類、ノルマルパラフィン系溶剤、イソパラフィン系溶剤およびこれらの混合物、ならびに鎖状飽和炭化水素、飽和炭化水素系溶剤が挙げられ、本発明のエアゾールに含有される噴射剤とは、沸点が-50℃~0℃の液化ガスがあげられ、たとえば液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル、プロパン、n-ブタンおよびイソブタンが挙げられる。
【0065】
本発明の防虫組成物におけるカリオフィレンジオキサイドの含有量は、使用時に、前記カリオフィレンジオキサイドの防虫効果が有効に発揮される量となるように、防虫組成物の含有量を勘案して決定すればよいが、その1例をあげるとすれば、防虫組成物中において、カリオフィレンジオキサイドが0.1~5質量%、好ましくは0.3~5質量%、より好ましくは0.5~3重量%、最も好ましくは0.8~1.5重量%存在するよう配合すればよい。
【0066】
さらに、本発明の防虫組成物には、乳化剤、展着剤、浸透剤、湿潤剤または分散剤等として界面活性剤を添加することができ、かかる界面活性剤としては、非イオン系界面活性剤として、たとえば、石鹸類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル類、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、高級脂肪酸アルカノールアミド、アルキルマレイン酸共重合物、多価アルコールエステル類など、通常の農薬または防虫剤に使用される界面活性剤が挙げられる。
【0067】
また、陽イオン系界面活性剤としては、たとえば、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩等を用いることができ、陰イオン系界面活性剤として、たとえば、ナフタレンスルホン酸重縮合物金属塩、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸塩、リグニンスルホン酸金属塩、アルキルアリルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホネート硫酸塩等の高分子化合物、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム塩、ポリカルボン酸金属塩、ポリオキシエチレンヒスチジルフェニルエーテルサルフェートアンモニウム、高級アルコールスルホン酸塩、高級アルコールエーテルスルホン酸塩、ジアルキルスルホサクシネートまたは高級脂肪酸アルカリ金属塩等が挙げられる。
【0068】
さらに、本発明の防虫剤においては、安定化剤、酸化防止剤などを配合することができ、安定化剤として、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、テトラキス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル〕メタン、DL-トコフェロール、没食子酸プロピル、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、クエン酸イソプロピル等、ポリリン酸、シクロデキストリン(トヨデリンP)などが挙げられ、酸化防止剤としては、BHT、4,4-チオビス-6-tert-ブチル-3-メチルフェノール、BHA、パラオクチルフェノールなどがあげられる。
【0069】
本発明の防虫方法は、虫の生育域に、本発明の防虫剤または防虫組成物を施用することにより実施できる。
本発明において、施用とは、防虫効果を発揮させるために、本発明の防虫剤または防虫組成物を、虫の生育域に存在させることを意味し、具体的にはたとえば、虫の生育域に、本発明の防虫剤または防虫組成物を、塗布、散布、噴射、静置または固定など、既知の手段により、存在させることを意味する。
施用に際しては、本発明の防虫効果が発揮しうる前記カリオフィレンジオキサイド量となるようにすることによって、防虫効果を得ることができる。
【0070】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0071】
参考例1
カリオフィレンオキサイド4.4g(20mmol)をジクロロメタン100mLに溶解し、氷冷で0℃まで冷やし、8.7%過酢酸26.2g(30mmol)を攪拌しながら加えた。その後、室温で4時間撹拌した。反応終了後、反応液を飽和食塩水200mLで3回、飽和重曹水100mLで3回洗浄し、さらに飽和食塩水100mLで3回洗浄した。溶液に硫酸ナトリウムを加えて乾燥したのち、ジクロロメタンを留去し、得られた粗生成物を減圧蒸留(121℃、0.2kPa)で精製することによって、カリオフィレンジオキサイド3.8g(16mmol)を取得した。収率80%、純度94%(GC)であった。
【0072】
得られたカリオフィレンジオキサイドの質量スペクトル(EI法、70eV,m/z)は次のとおりであった。
43,55,67,79,93,108,121,137,145,163,175,191,205,221,236(M+)
【0073】
実施例1
<アミメアリに対する防虫効果>
家屋軒下のアミメアリの巣の近傍に、直径9cmの円形濾紙の中央にアミメアリの誘引源として20%砂糖水と蜂蜜を当量混合したものを1mL塗布した。ついで、参考例1と同様にして製造したカリオフィレンジオキサイド(以下、単にカリオフィレンジオキサイドという)を1%または3%含有するアセトン溶液5mLを噴霧した後、常温で乾燥させたものを試験区とした。
【0074】
対照区として、カリオフィレンジオキサイド含有アセトン溶液に代えて、アセトンのみを噴霧する以外は、前記試験区と同様に処理したものを対照区とした。
試験区および対照区の濾紙に誘引されるアミメアリの個体数を観察し、防虫率を算出した。
試験は同じ場所で3回実施し、試験後の濾紙はそのまま放置し、24時間後と48時間後に濾紙の中央部に誘引源の糖として蜂蜜水溶液1mLを噴霧し、同様にして評価をおこなった。試験結果は3回の平均値で示した。結果は表1に示すとおりである。
【0075】
【表1】
防虫率は、以下の通り求めた。
防虫率=(1-試験区への侵入個体数/対照区への侵入個体数)×100(%)
【0076】
実施例2
<コイガ幼虫に対する防虫効果>
ウール生地(JIS L0803準拠 染色堅ろう度試験用添付白布「毛 Wool」)を2.0cm×2.0cmにカットしたものに、カリオフィレンジオキサイドを1%含むアセトン溶液を塗布(処理量:0.16mg/cm2)して試験区とした。
また、カリオフィレンジオキサイド含有アセトン溶液に代えてアセトンを用いる以外は前記試験区と同様に塗布したものを対照区とした。
長方形のプラスチック容器に試験区と対照区を設置し、コイガ幼虫20匹を放し、暗条件下で24時間後の個体数並びに7日後の食害量を計測し、防虫率を測定した。
防虫率は、7日間経過後、コイガ幼虫を除去し、食害された試験区および対照区を黒色台紙に貼り付け、白黒でスキャンを行った。これを、画像解析ソフト(Image J)を用いてピクセル(pixel)単位で数値化し、ウール生地の食害面積の比較処理を行った。
その結果、試験区は、ウール生地の面積5286ピクセルに対して、反復回数4回の試験区の食害面積は20~228ピクセルであり、対照区の食害面積は3513~4660ピクセルであり、下記式で計算される防虫率の平均値は、97.2%であった。
防虫率=(1-試験区の食害面積/対照区の食害面積)×100(%)
【0077】
実施例3
<ココクゾウムシに対する防虫効果>
図1に示すように、アルミカップ(直径3.8cm 高さ1cm)の底から2~3mmの高さのある部分までを残して栽断したものを底部とし、これとは別に、同じサイズのアルミカップの側面2ケ所を切り抜いてトンネル状にしたアルミカップを前記底部に、上から被せてシェルターとした。
【0078】
直径3.8cmのろ紙に、カリオフィレンジオキサイドを0.10%、0.20%および0.50%の濃度で含有するアセトン溶液を、それぞれ0.2mL塗布(処理量:16μg/cm2、31μg/cm2および70μg/cm2)したものを試験区とし、カリオフィレンジオキサイドに代えてβ―カリオフィレンを0.50%含有するアセトン溶液を用いる以外は試験区と同様に塗布したものを比較区とし、アセトンのみを塗布したものを対照区として、それぞれ前記シェルターの底部に置き、その上に玄米0.1gを置いて、上からトンネル状のカップを被せた。
【0079】
長方形のプラスチック容器にシェルターを設置し、予め24時間絶食させたココクゾウムシ成虫20匹を放し、暗条件下で24時間後における各区への個体侵入数を測定して防虫率を算出した。この操作を4回反復して実施し、その平均防虫率を求めた。
結果は表2に示すとおりである。
【0080】
【表2】
防虫率=(1-試験区または比較区への侵入個体数/対照区への侵入個体数)
×100(%)
【0081】
実施例4
<ショウジョウバエに対する防虫効果>
図2に示すように、フタ付きプラスチックカップ(上面:径10cm、下面:径8cm、高さ:4.5cm)のフタに正方形の開口部(5cm×5cm)を設け、下図のようなアクリル製容器をはめ込んだものを作成した。カップの底部にアルミを敷き、その上に市販のバナナを5mm角程度にカットしたものを1.5g載せた。
カリオフィレンジオキサイドをアセトンで5%濃度に希釈した溶液0.5mLを、ろ紙(5cm×5cm)に塗布(処理量:1.0mg/cm
2)し、試験区とした。アセトンのみ塗布したものを対照区とした。
【0082】
試験区および対照区を、それぞれ容器内に入れてフタをし、周囲をメッシュで囲ったケージ(40cm×40cm×40cm)内に設置し、キイロショウジョウバエ成虫100匹を放ち、24時間後のカップ内の虫数を測定した。この操作を4回反復して実施し、その平均防虫率を求めた。
その結果、試験区には1~8匹、対照区には46~94匹、外部領域には5~53匹のキイロショウジョウバエ成虫が確認され、これに基づく平均防虫率は、93.2%であった。
防虫率=(1-試験区への侵入個体数/対照区への侵入個体数)×100(%)
【0083】
実施例5
<チャタテムシに対する防虫効果>
厚さ3mmのダンボールを2cm×2cmのサイズにカットし、表面と裏面にそれぞれ0.1mLずつ、カリオフィレンジオキサイドを1%濃度になるようにアセトンで希釈して塗布したもの(処理量:0.2mg/cm2)を試験区、アセトンのみ塗布したものを対照区とした。直径9cmのガラスシャーレの両端に試験区と対照区を設置し、ヒラタチャタテ成虫を50匹放ち、フタをして25℃の暗条件下で24時間静置した。その後、試験区と対照区のそれぞれの個体数を測定した。この操作を4回反復して実施し、その平均防虫率を求めた。
その結果、試験区には0~1匹、対照区には40~48匹、外部領域には2~10匹のヒラタチャタテ成虫が確認され、これに基づく平均防虫率は、99.4%であった。
防虫率=(1-試験区への侵入個体数/対照区への侵入個体数)×100(%)
【0084】
実施例6
<チャバネゴキブリに対する防虫効果>
内部側面にワセリンを塗った直径30cm×高さ15cmのプラスチック容器内に光を好まないチャバネゴキブリのシェルターとして、アルミ製の皿(直径11.5cm×高さ3.5cm)を裏返しにして設置した。その際、チャバネゴキブリの出入り口となるようアルミ皿の2ヶ所を切り抜いたものとした。
直径9cmのろ紙に、カリオフィレンジオキサイドを0.05%の濃度で含有するアセトン溶液1mLを塗布(処理量:8μg/cm2)したものを試験区、アセトンのみ塗布したものを対照区とした。
【0085】
前記プラスチック容器内に、チャバネゴキブリ(雄の成虫、卵鞘なしの雌の成虫および幼虫を各10匹ずつ、計30匹)を放ち、餌・水を与えたまま明条件下で24時間馴致した。
ついで、前記プラスチック容器の底部に、試験区、対照区の濾紙を離して設置し、それぞれにシェルターを被せ、明条件下で2、4、6時間後の数を測定し、防虫率を算出した。
この操作を4回反復して実施し、その平均防虫率(%)を求めた。
なお、各濃度の効果を測定する際には、個体の誘引を防ぐため、開始時に餌・水を取り除いてから行った
結果は表3に示すとおりである。
【0086】
【表3】
防虫率=(1-試験区への侵入個体数/対照区への侵入個体数)×100(%)
【0087】
実施例7
<防虫効果の持続性>
本発明の防虫剤が持続性に優れることを明らかにするために、防虫成分としてβ―カリオフィレン、カリオフィレンオキサイドおよびカリオフィレンジオキサイドをそれぞれ用い、実施例6と同様にして、前記防虫成分を0.50%の濃度で含有するアセトン溶液1mLを塗布(処理量:79μg/cm2)して製作した試験区および対照区のろ紙を、塗布後、室温で、28日間放置したのち、実施例6と同様にして防虫試験を実施した。この操作を4回反復して実施し、その平均防虫率(%)を求めた。
結果は表4に示すとおりである。
【0088】
【表4】
防虫率=(1-試験区への侵入個体数/対照区への侵入個体数)×100(%)
【0089】
実施例8
<防虫効果の安定性>
カリオフィレンジオキサイドを5%の濃度で含有するようポリエチレン樹脂(ノバテックLS880、日本ポリエチレン株式会社製)に混練し、油圧式ヒートプレス(東洋精機株式会社製)を用いて、厚さ1mmのシート状に成型した。
これを5cm×5cmのサイズにカットして試験区とした。また、前記ポリエチレンと同じ質感の塩化ビニルシートを試験区と同じサイズにカットしたものを対照区とした。
ついで、40℃における加速試験を実施して、防虫効果がどの程度経過した後まで持続するのかを確認した。
防虫効果の実験は実施例6と同様にして実施した。4回反復して実施し、その平均防虫率(%)を求めた。
結果は、表5に示すとおりである。
【0090】
【表5】
防虫率=(1-試験区への侵入個体数/対照区への侵入個体数)×100(%)
表5から明らかなとおり、本発明の防虫シートは、常温(25℃)における360日経過後も、高い防虫効果を維持することができるという優れたものであった。
【0091】
実施例9
<ヒトスジシマカ成虫に対する防虫効果>
直径185mmのろ紙(ADVANTEC No.2)を蛇腹状に折ったアルミホイルの上に置き、ろ紙におけるカリオフィレンジオキサイドの処理量が1.5mg/cm2になるよう調製したカリオフィレンジオキサイド含有アセトン溶液を4.5mL滴下してドラフト内で4分間風乾し、試験区とした。
同サイズのろ紙にアセトンを同量滴下後風乾したものを対照区とした。
ナイロンゴースケージ(20cm×20cm×30cm)の側面に試験区および対照区をそれぞれ吊るし、設置直後にヒトスジシマカ(Aedes albopictus)雌成虫約100頭をケージ内に放虫した。0(試験開始直後)、1、3、6および24時間後に、試験区および対照区上に定着した供試虫数をカウントした。3回反復実施し、以下の式により防虫率並びにその平均(%)を算出した。なお、上記試験は25+1℃に維持した実験室内で実施した。
防虫率=(1-T/C)×100(%)
T:試験区における0時間から24時間後までの平均定着虫数
C:対照区における0時間から24時間後までの平均定着虫数
その結果、試験区における定着数は0~2匹、対照区における定着数は13~22匹で、これに基づく平均防虫率(%)は99.2%であった。
【0092】
実施例10
<ヒメカツオブシムシ幼虫に対する防虫効果>
ウール生地(JIS L0803準拠 染色堅ろう度試験用添付白布「毛 Wool」)を2.0cm×2.0cmにカットしたものに、カリオフィレンジオキサイドを1%含むアセトン溶液を塗布(処理量:0.16mg/cm2)して試験区とした。
また、カリオフィレンジオキサイド含有アセトン溶液に代えてアセトンを用いる以外は前記試験区と同様に塗布したものを対照区とした。
【0093】
長方形のプラスチック容器に試験区と対照区を設置し、ヒメカツオブシムシ幼虫20匹を放し、暗条件下で14日後の食害量を計測し、防虫率を測定した。
防虫率は、14日間経過後、ヒメカツオブシムシ幼虫を取り出し、食害された生地を黒色台紙に貼り付け、白黒でスキャンを行った。これを、画像解析ソフト(Image J)を用いてピクセル(pixel)単位で数値化し、ディスクの食害面積の比較処理を行った。この操作を4回反復して実施し、その平均防虫率(%)を求めた。
【0094】
その結果、試験区は、ウール生地の面積5883ピクセルに対して試験区の食害面積が16~312ピクセルであり、対照区の食害面積が2464~4924ピクセルであり、下記式で計算される平均防虫率は、96.9%であった。
なお、防虫率は以下の式にて算出した。
防虫率=(1-試験区の食害面積/対照区の食害面積)×100(%)
【0095】
実施例11
<ヤケヒョウヒダニに対する防虫効果>
直径36mmのろ紙(ADVANTEC No.2)を蛇腹状に折ったアルミホイルの上に置き、ろ紙におけるカリオフィレンジオキサイドの処理量が0.03mg/cm2および0.6mg/cm2になるよう調製したカリオフィレンジオキサイド含有アセトン溶液を0.2mL滴下してドラフト内で4分間風乾し、試験区とした。
同サイズのろ紙にアセトンを同量滴下後風乾したものを対照区とした。
シャーレ(直径38mm)に試験区を入れ、中央に誘引源としてダニ用飼育培地(MF粉末飼料(オリエンタル酵母工業株式会社製)と乾燥酵母を1:1で混合したものを0.01g置いた。
【0096】
樹脂製容器(内寸42cm×32cm、高さ15cm)内にダニ逃亡防止のための粘着シート(14.8cm×21.0cm 強粘着 両面粘着シートA4、VAN-SONIC CO.LTD)と湿度調整用飽和食塩水を設置した。
5000匹/gに調製したダニ培地をシャーレ(直径90mm)に6g入れ、中央に上述の小型シャーレを設置したものを樹脂製容器内の粘着シート上に置き、ポリ袋でフタをして試験を開始した。試験中は室温25±1℃とし、全暗条件下に置いた。
試験開始から24時間後に、シャーレ内に侵入した生存ダニ数を調査した。各処理区4反復実施し、以下の式にて平均防虫率(%)を算出した。
防虫率=(1-試験区の平均侵入ダニ数/対照区の平均侵入ダニ数)
×100(%)
(ただし、マイナスの値の場合は、0%とする)
結果は、表6に示すとおりである。
【0097】
【手続補正書】
【提出日】2022-10-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カリオフィレンジオキサイドを有効成分とするアリ、イガ、コクゾウムシ、ハエ、チャタテムシ、ゴキブリ、カ、カツオブシムシまたはダニのいずれか1種以上の虫用の持続性防虫剤。
【請求項2】
カリオフィレンジオキサイドを含有してなるアリ、イガ、コクゾウムシ、ハエ、チャタテムシ、ゴキブリ、カ、カツオブシムシまたはダニのいずれか1種以上の虫用の持続性防虫用組成物。
【請求項3】
アリ、イガ、コクゾウムシ、ハエ、チャタテムシ、ゴキブリ、カ、カツオブシムシまたはダニのいずれか1種以上の虫の生育域にカリオフィレンジオキサイドを施用し、当該生育域において前記虫に対する防虫効果を持続させることを含む防虫方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
すなわち、本発明は、カリオフィレンジオキサイドを有効成分とするアリ、イガ、コクゾウムシ、ハエ、チャタテムシ、ゴキブリ、カ、カツオブシムシまたはダニのいずれか1種以上の虫用の持続性防虫剤である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
また、本発明は、カリオフィレンジオキサイドを含有してなるアリ、イガ、コクゾウムシ、ハエ、チャタテムシ、ゴキブリ、カ、カツオブシムシまたはダニのいずれか1種以上の虫用の持続性防虫用組成物である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
さらに、本発明は、アリ、イガ、コクゾウムシ、ハエ、チャタテムシ、ゴキブリ、カ、カツオブシムシまたはダニのいずれか1種以上の虫の生育域にカリオフィレンジオキサイドを施用し、当該生育域において前記虫に対する防虫効果を持続させることを含む防虫方法である。