(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060876
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】ガスクーラの設計方法
(51)【国際特許分類】
F28F 13/04 20060101AFI20240425BHJP
F28D 7/10 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
F28F13/04
F28D7/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168437
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】310010564
【氏名又は名称】三菱重工コンプレッサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】宮田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】横尾 和俊
(72)【発明者】
【氏名】林 政宏
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA22
3L103BB14
3L103CC02
3L103CC21
3L103DD03
3L103DD31
(57)【要約】
【課題】ガスに含まれる水の凝縮による熱交換効率の低下を抑える。
【解決手段】水分を含むガスが送り込まれるシェル本体と、シェル本体内でガスの流路を通過するように配置されて冷却媒体が流通する配管と、を備えたガスクーラの設計方法は、ガスの条件及び冷却媒体の条件に関する情報を取得し、ガスの流れる第一方向に交差する第二方向から見た際での配管を配置する暫定配置条件を設定し、ガスの条件の情報、冷却媒体の条件の情報、及び暫定配置条件に基づいて、配管の外周面でのガスに含まれる水分の凝縮水の付着率と、ガスと冷却媒体との熱交換効率の低下率との関係を取得し、凝縮水の付着率と低下率との関係が予め定めた基準条件を満たしているか否かを判定し、判定した結果、基準条件を満たしていた場合に、暫定配置条件に基づいて、配管の配置を決定する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分を含むガスが外部から送り込まれる中空のシェル本体と、前記シェル本体内で前記ガスの流路を形成する流路形成部と、前記シェル本体内で前記流路を通過するように配置されて冷却媒体が流通する配管と、を備えたガスクーラの設計方法であって、
前記シェル本体内で前記流路を流通する前記ガスの条件及び前記配管を流通する前記冷却媒体の条件に関する情報を取得するステップと、
前記流路において前記ガスの流れる第一方向に交差する第二方向から見た際での前記配管の暫定配置条件を設定するステップと、
取得された前記ガスの条件の情報、前記冷却媒体の条件の情報、及び設定された前記暫定配置条件に基づいて、前記配管の外周面での前記ガスに含まれる水分の凝縮水の付着率と、前記ガスと前記冷却媒体との熱交換効率の低下率との関係を取得するステップと、
前記凝縮水の付着率と前記低下率との関係が予め定めた基準条件を満たしているか否かを判定するステップと、
前記判定した結果、前記基準条件を満たしていた場合に、前記暫定配置条件に基づいて、前記配管の配置を決定するステップと、を含むガスクーラの設計方法。
【請求項2】
前記凝縮水の付着率と前記低下率との関係は、前記ガスの流速の関数として取得される請求項1に記載のガスクーラの設計方法。
【請求項3】
前記シェル本体は、前記第二方向に延びる軸線を中心として延びる筒状に形成され、
前記暫定配置条件を設定するステップでは、前記暫定配置条件として、前記第二方向から見た際の前記配管の配置及び数を設定する請求項1又は2に記載のガスクーラの設計方法。
【請求項4】
前記配管は、前記第一方向に並ぶ前記配管の本数よりも、前記第一方向及び前記第二方向と交差する第三方向に並ぶ前記配管の本数の方が少ない請求項3に記載のガスクーラの設計方法。
【請求項5】
前記暫定配置条件を設定するステップでは、前記暫定配置条件として、前記第一方向から見た際の前記流路の流路断面積の大きさを設定する請求項3に記載のガスクーラの設計方法。
【請求項6】
前記暫定配置条件を設定するステップでは、前記暫定配置条件として、前記第二方向から見た際の前記流路の流路断面積の大きさを設定する請求項3に記載のガスクーラの設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスクーラの設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機でガスを圧縮すると、圧縮後のガスの温度が上昇する。多段圧縮機等において、圧縮後のガスを後段の他の圧縮機等に送り込む場合、後段の圧縮機におけるガスの圧縮効率を高めるために、ガスを冷却するガスクーラが用いられることがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、円筒状のハウジングと、冷却器としてハウジング内に配置された熱交換器と、を備える構成の冷却器であるガスクーラが開示されている。この構成において、ガスは、ハウジングに形成された流入口からハウジング内に流入する。ガスは、ハウジング内で、ハウジングの軸方向に延びる複数の管の周囲を流れる。管の内部には、冷却媒体(冷却剤)が流れている。ガスは、管を介して冷却媒体と熱交換されることで冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記したような冷却装置において、ガスに水分が含まれている場合、冷却媒体との熱交換によってガスが冷却された際に、ガスに含まれる水が凝縮する。この凝縮した水は、管の外周面に付着することがある。管の外周面には凝縮した水によって液膜が形成され、ガスと熱交換を行う伝熱面積が減少し、熱交換器におけるガスの熱交換効率の低下に繋がる。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、ガスに含まれる水の凝縮による熱交換効率の低下を抑えることが可能なガスクーラの設計方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係るガスクーラの設計方法は、水分を含むガスが外部から送り込まれる中空のシェル本体と、前記シェル本体内で前記ガスの流路を形成する流路形成部と、前記シェル本体内で前記流路を通過するように配置されて冷却媒体が流通する配管と、を備えたガスクーラの設計方法であって、前記シェル本体内で前記流路を流通する前記ガスの条件及び前記配管を流通する前記冷却媒体の条件に関する情報を取得するステップと、前記流路において前記ガスの流れる第一方向に交差する第二方向から見た際での前記配管の暫定配置条件を設定するステップと、取得された前記ガスの条件の情報、前記冷却媒体の条件の情報、及び設定された前記暫定配置条件に基づいて、前記配管の外周面での前記ガスに含まれる水分の凝縮水の付着率と、前記ガスと前記冷却媒体との熱交換効率の低下率との関係を取得するステップと、前記凝縮水の付着率と前記低下率との関係が予め定めた基準条件を満たしているか否かを判定するステップと、前記判定した結果、前記基準条件を満たしていた場合に、前記暫定配置条件に基づいて、前記配管の配置を決定するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示のガスクーラの設計方法によれば、ガスに含まれる水の凝縮による熱交換効率の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態に係るガスクーラの設計方法によって設計されたガスクーラを備える圧縮機システムの概略構成を示す図である。
【
図3】上記ガスクーラを、入口ノズルの部分で軸方向から見た断面図である。
【
図4】本開示の実施形態に係るガスクーラの設計方法の手順を示すフローチャートである。
【
図5】ガスの流速とガスの熱交換効率の低下量との関係を示す、管群通過流速の関数の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本開示によるガスクーラの設計方法を実施するための形態を説明する。しかし、本開示はこの実施形態のみに限定されるものではない。
【0011】
(圧縮機システムの構成)
図1に示すように、本開示によるガスクーラの設計方法によって設計されたガスクーラ1は、圧縮機システム8の一部として配置されている。圧縮機システム8は、直列に接続された複数の圧縮機9と、ガスクーラ1と、を備えている。複数の圧縮機9は、直列に接続されている。本実施形態において、圧縮機9は、例えば二台が配置されている。なお、圧縮機システム8が備える圧縮機9の台数は、一台のみであってもよく、三台以上であってもよい。
【0012】
圧縮機システム8において圧縮対象となるガスGは、水分を含むガスである。ガスGは、前段の圧縮機9Aで圧縮された後、後段の圧縮機9Bに送り込まれる。前段の圧縮機9Aで圧縮されたガスGは、後段の圧縮機9Bでさらに圧縮される。ガスクーラ1は、前段の圧縮機9Aと、後段の圧縮機9Bとの間に配置されている。ガスクーラ1は、前段の圧縮機9Aに対して出口側に前段接続管10Aを介して接続されている。ガスクーラ1は、後段の圧縮機9Bに対して入口側に後段接続管10Bを介して接続されている。
【0013】
(ガスクーラの構成)
ガスクーラ1は、前段の圧縮機9Aで圧縮されたガスGを冷却する。ガスクーラ1は、圧縮過程でのガスGを中間的に冷却することによって、後段の圧縮機9Bの駆動に必要とされる動力を低減している。本実施形態では、ガスクーラ1で冷却するガスGは、例えば、水分を含んだ炭酸(CO
2)ガスである。ガスクーラ1で冷却するガスGは、炭酸ガスに限られるものではなく、水分を含んでいれば空気や窒素等の他のガスであってもよい。
図2及び
図3に示すように、本実施形態のガスクーラ1は、シェル2と、冷却器3と、仕切部材5(
図2参照)と、を主に備えている。
【0014】
(シェルの構成)
シェル2は、中空構造をなしている。シェル2は、シェル本体21と、入口ノズル24と、出口ノズル25とを備えている。
【0015】
シェル本体21は、中空に形成されている。シェル本体21には、水分を含むガスGが外部から内部に送り込まれる。シェル本体21は、軸方向Daに延びる軸線Oを中心として延びる有底円筒状に形成されている。シェル本体21は、軸線Oを水平方向に一致させるように配置されている。なお、シェル2は、その内部におけるガスGの偏流を抑えるため、その内径を可能な限り大きくすることが好ましい。
【0016】
シェル本体21には、入口ノズル24と、出口ノズル25とが一体的に接続されている。入口ノズル24と出口ノズル25とは、軸線Oの延びる軸方向(第二方向)Daに間隔をあけて配置されている。入口ノズル24は、軸方向Daにおけるシェル本体21の中心21cに対して、軸方向Daの第一側Da1に配置されている。出口ノズル25は、シェル本体21の中心21cに対して、軸方向Daの第二側Da2に配置されている。入口ノズル24及び出口ノズル25は、水平な状態に配置されたシェル本体21に対して、鉛直方向(第三方向)Dvまたは鉛直方向から傾斜した方向の上部に配置されている。また、入口ノズル24及び出口ノズル25は、シェル本体21の上部から鉛直方向Dvまたは鉛直方向から傾斜した方向の上方に向かって延びる筒状に形成されている。
図3に示すように、入口ノズル24及び出口ノズル25の下端は、シェル本体21の内部と連通するように、シェル本体21の内周面で開口している。
【0017】
(冷却器の構成)
冷却器3は、シェル本体21の内部に配置されている。冷却器3は、入口ノズル24から出口ノズル25に向かって流れるガスGを内部に流通させることで、ガスGを冷却可能とされている。冷却器3は、流路形成部30と、管群31と、を備えている。冷却器3は、全体として、軸方向Daに延びる直方体状をなしている。
【0018】
流路形成部30は、シェル本体21内の冷却器3において、ガスGが管群31の周囲を通過する際の流路30rを形成する。つまり、流路形成部30は、管群31が配置されつつ、ガスGが流通可能な流路30rを形成している。流路形成部30は、第一板部32と、第二板部33と、を備えている。
【0019】
図2及び
図3に示すように、第一板部32は、後述する管群31に対して、鉛直方向Dvの上方に配置されている。第一板部32は、管群31に対して、入口ノズル24及び出口ノズル25に対向する位置に配置されている。第一板部32は、平板状で、鉛直方向Dvに直交する面(水平面)に沿って広がっている。第一板部32は、軸方向Daに対して直交する鉛直方向Dvから見た際に、長方形状に形成されている。第一板部32は、管群31の全体を鉛直方向Dvの上方から覆うように配置されている。
【0020】
軸方向Daに直交する幅方向(第一方向)Dwにおける第一板部32の第一側Dw1の端部32aは、シェル本体21との間に間隔をあけて配置されている。幅方向Dwにおける第一板部32の第二側Dw2の端部32bは、シェル本体21との間に間隔をあけて配置されている。
【0021】
第二板部33は、管群31を挟んで第一板部32の反対側に配置されている。つまり、第二板部33は、管群31に対して、鉛直方向Dvの下方に配置されている。第二板部33は、平板状で、鉛直方向Dvに直交する面(水平面)に沿って広がっている。第二板部33は、鉛直方向Dvから見て長方形状に形成されている。第二板部33は、管群31の全体を鉛直方向Dvの下方から覆うように配置されている。
【0022】
幅方向Dwにおける第二板部33の第一側Dw1の端部33aは、シェル本体21の内周面に接触している。幅方向Dwにおける第二板部33の第二側Dw2の端部33bは、シェル本体21の内周面との間に間隔をあけて配置されている。
【0023】
流路形成部30は、第一板部32と、第二板部33と、シェル本体21における軸方向Daの第一側Da1の第一シェル端部211と、シェル本体21における軸方向Daの第二側Da2の第二シェル端部212と、に囲まれた領域に、ガスGが管群31を通過する際の流路30rを形成する。流路30rは、シェル本体21の内部での、軸方向Daに長い直方体状の領域(空間)である。流路30rは、シェル本体21の内部で幅方向Dwの第一側Dw1と第二側Dw2と連通している。流路30rは、軸方向Daから見た際に、幅方向Dwに長い矩形状に形成されている(
図3において、二点鎖線で囲まれた部分)。
【0024】
管群31は、流路形成部30によって形成される流路30rを通過するように配置されている。管群31は、複数の配管35を備えている。
【0025】
各配管35は、シェル本体21内で軸方向Daに延びている。複数の配管35は、鉛直方向Dvと、幅方向Dwとにそれぞれ間隔をあけて配置されている。複数の配管35は、幅方向Dwで互いに隣り合う配管35同士で、鉛直方向Dvにおける設置高さが互いに同じになるように配置されている。つまり、複数の配管35は、軸方向Daから見た際に、最も近い四つの配管35が四角形の頂点に位置されるように配置されている。
【0026】
配管35は、シェル本体21内において、軸方向Daの第二側Da2の第二シェル端部212に近接する位置で、U字状に折り返されている。各配管35の管径は、例えば直径30mm以下とされている。各配管35内には、冷却媒体として、例えば水が供給される。各配管35内において、冷却媒体である水は、軸方向Daの第一側Da1から第二側Da2に向かって流れ、配管35がU字状に折り返された部分で流れ方向が変更され、軸方向Daの第二側Da2から第一側Da1に向かって流れていく。
【0027】
なお、以下の説明において、配管35は、第二シェル端部212に近接する位置でU字状に折り返された部分を挟んで、一方の側の配管35と他方の側の配管35とを、別々の一本の配管35として説明する。また、配管35は、U字状に折り返えされた構造であることに限定されるものではない。配管35は、シェル本体21を軸方向Daで貫通するまっすぐな配管であってもよい。つまり、配管35は、シェル本体21を軸方向Daで貫通するまっすぐな配管であってもよく、中間ヘッダーで折り返す構造でもよい。
【0028】
冷却器3において、ガスGは、鉛直方向Dvの上下に配置された第一板部32と第二板部33との間の流路30rを通り抜けることで、配管35に接触する。ここで、ガスGは、第一板部32と第二板部33との間を、幅方向Dwに流れる。つまり、幅方向Dwは、冷却器3においてガスGの流れる流れ方向(第一方向)Dfと一致している。本実施形態の説明において、幅方向Dwにおいて、管群31に対して冷却器3にガスGが流れ込む側を第一側Dw1と称し、管群31に対して冷却器3からガスGが流れ出る側を第二側Dw2と称する。したがって、流れ方向Dfは、幅方向Dwにおいて第一側Dw1から第二側Dw2に向かう方向である。また、本実施形態において、流れ、方向Dfと直交(交差)する第二方向は、軸方向Daである。さらに、本実施形態において、流れ方向Df(幅方向Dw)及び軸方向Daに直交(交差)する第三方向は、鉛直方向Dvである。
【0029】
(仕切部材の構成)
図2に示すように、仕切部材5は、第一板部32に固定されている。仕切部材5は、シェル本体21において、入口ノズル24に近い第一シェル端部211から、出口ノズル25に近い第二シェル端部212に向かうように、第一板部32上で延びている。仕切部材5は、冷却器3とシェル本体21との間の空間部2Sを仕切っている。具体的には、仕切部材5は、入口ノズル24に連通する第一空間21Sと、出口ノズル25に連通する第二空間22Sとに空間部2Sを仕切っている。仕切部材5は、主仕切板51と、第一案内部52と、第二案内部53と、を一体に備えている。
【0030】
主仕切板51は、軸方向Daにおいて、入口ノズル24と出口ノズル25との間に配置されている。主仕切板51は、第一板部32から鉛直方向Dvの上方に向かって延びている。主仕切板51は、平板状に形成されている。主仕切板51は、軸線Oに交差する方向に広がるように第一板部32からシェル本体21まで延びている。つまり、主仕切板51は、第一板部32とシェル本体21と間を、軸方向Daの第一側Da1と第二側Da2とに仕切るように配置されている。
【0031】
第一案内部52は、主仕切板51に対して、軸方向Daの第一側Da1に配置されている。第一案内部52は、主仕切板51の幅方向Dwにおける第二側Dw2の端部51aから、軸方向Daで第一側Da1に延びている。第一案内部52は、第一板部32から鉛直方向Dvの上方に向かうにしたがって、幅方向Dwの第二側Dw2に向かうように傾斜して延びている。第一案内部52の先端部は、シェル本体21に接触している。第一案内部52は、主仕切板51と同程度の板厚の平板状に形成されている。
【0032】
第二案内部53は、主仕切板51に対して、軸方向Daの第二側Da2に配置されている。第二案内部53は、主仕切板51の幅方向Dwにおける第一側Dw1の端部51bから、軸方向Daで第二側Da2に延びている。第二案内部53は、第一板部32から鉛直方向Dvの上方に向かうにしたがって、幅方向Dwの第一側Dw1に向かうように傾斜して延びている。第二案内部53の先端部は、シェル本体21に接触している。第二案内部53は、主仕切板51と同程度の板厚の平板状に形成されている。
【0033】
(シェル内における流体の流れの説明)
図3に示すように、仕切部材5が設けられることで、入口ノズル24からシェル本体21内に流入したガスGは、第一空間21Sに流れ込む。第一空間21Sに流れ込んだガスGは、第一板部32に衝突し、主仕切板51に対して軸方向Daの第一側Da1で、第一板部32の上面に沿って広がる。同時に、ガスGは、軸方向Daの第二側Da2でも、第一板部32の上面に沿って広がる。このガスGは、第一案内部52によって、幅方向Dwの第一側Dw1に案内されて第一板部32とシェル本体21との隙間を通り、第一板部32の端部32aを回り込むようにして、冷却器3に対して幅方向Dwの第一側Dw1に流れ込む。さらに、ガスGは、第一板部32と第二板部33との間の流路30rに流入し、管群31の隙間を通って、幅方向Dwの第一側Dw1から第二側Dw2に流れていく。
【0034】
流路30r(管群31)を幅方向Dwの第一側Dw1から第二側Dw2に通り抜けたガスGは、冷却器3に対して、幅方向Dwの第二側Dw2に流出する。流出したガスGは、シェル本体21の内周面に沿って上方に流れ、第一板部32の端部32bを回り込むようにして、第一板部32とシェル本体21との隙間を流入する。その後、ガスGは、主仕切板51に対して軸方向Daの第二側Da2で、第二案内部53によって案内されて、出口ノズル25からシェル本体21の外部に流出する。
【0035】
(ガスクーラの設計方法の手順)
次に、上記したようなガスクーラ1の設計方法S10について説明する。
図4に示すように、本開示の実施形態に係るガスクーラ1の設計方法S10は、要求仕様を設定するステップS11と、暫定配置条件を設定するステップS12と、冷却媒体の流量を設定するステップS13と、ガスGと冷却媒体との熱交換に関する数値を算出するステップS14と、冷却媒体出口温度を確認するステップS15と、ガス出口温度を確認するステップS16と、ガス圧力損失を確認するステップS17と、凝縮水の付着率(凝縮水の単位面積当たりの付着率)と熱交換効率の低下率との関係を取得するステップS18と、ガスクーラ1における熱交換熱量を確認するステップS19と、ガスクーラ1の仕様を決定するステップS20と、シェル本体21のシェル径を確認するステップS21と、を含む。
【0036】
要求仕様を設定するステップS11では、ガスクーラ1の要求仕様を設定する。具体的には、ステップS11では、ガスクーラ1の要求仕様として、シェル本体21内で流路30rを流通するガスGの条件と、配管35を流通する冷却媒体の条件とを、圧縮機システム8の基本仕様に基づいて設定する。つまり、ガスGの条件と、配管35を流通する冷却媒体の条件とを、圧縮機システム8においてガスクーラ1に要求されるガスGの条件及び冷却媒体の条件の要求値が設定される。ここで、ガスGの条件としては、例えば、入口ノズル24からシェル本体21内に送り込まれるガスGの流量、入口ノズル24におけるガスGの入口温度及び入口圧力、出口ノズル25におけるガスGの出口温度及び出口圧力、ガスGの入口から出口までで生じる圧力損失、ガスGの絶対湿度(ガスGの成分)が挙げられる。また、冷却媒体の条件としては、例えば、配管35の入口における冷却媒体の入口温度、配管35の出口における冷却媒体の出口温度が挙げられる。
【0037】
暫定配置条件を設定するステップS12では、流路30rにおいて、軸方向Daから見た際での複数の配管35の暫定配置条件を設定する。ステップS12では、暫定配置条件として、軸方向Daから見た際の複数の配管35の配置及び数を設定する。さらに、ステップS12では、暫定配置条件として、幅方向Dwから見た際の流路30rの流路断面積の大きさを設定する。加えて、ステップS12では、暫定配置条件として、軸方向Daから見た際の流路30rの流路断面積の大きさを設定する。
【0038】
具体的に、本実施形態のステップS12では、第一に、管群31を構成する複数の配管35の軸方向Daの長さ寸法L1(
図2参照)を、暫定配置条件の一つとして仮設定する。ここで、配管35の軸方向Daの長さ寸法L1は、例えば、シェル本体21の第一シェル端部211と第二シェル端部212との間における配管35の長さである。さらに、ステップS12では、第二に、軸方向Daから見た際の配管35の配置及び数を、暫定配置条件の一つとして仮設定する。より具体的には、管群31を構成する複数の配管35の配置及び数として、
図3に示すように、鉛直方向Dvに並ぶ配管35の列数と、幅方向Dwに並ぶ配管35の段数とを仮設定する。仮設定した配管35の列数と段数とを積算したものが、軸方向Daから見た際の配管35の数となる。ここで、管群31において、配管35は、U字状に折り返されていることから、配管35の数は、偶数となるようにすることが好ましい。
【0039】
このように、ステップS12で複数の配管35の軸方向Daの長さ寸法L1を仮設定することにより、シェル本体21の軸方向Daの長さ寸法L2が設定される。シェル本体21の軸方向Daの第二側Da2の第二シェル端部212は、配管35がU字状に折り返される部分に、所定寸法の隙間をあけて配置されることから、長さ寸法L2は、長さ寸法L1に、この隙間を加えたものとなる。
【0040】
また、ステップS12で仮設定した配管35の鉛直方向Dvにおける列数に応じて、第一板部32と第二板部33との鉛直方向Dvにおける間隔、すなわち、流路30rの高さ寸法Hが設定される(
図3参照)。第一板部32は、管群31の鉛直方向Dvにおける最上列の配管35との間に、所定の間隔をあけて配置される(間隔が0の場合を含む)。第二板部33は、管群31の鉛直方向Dvにおける最下列の配管35との間に、所定の間隔をあけて配置される(間隔が0の場合を含む)。このようにして、複数の配管35の軸方向Daの長さ寸法L1と、配管35の鉛直方向Dvにおける列数と、を仮設定することにより、幅方向Dwから見た際の流路30rの流路断面積の大きさが、実質的に設定される。
【0041】
また、ステップS12で仮設定した幅方向Dwにおける段数に応じて、第一板部32の幅方向Dwにおける幅寸法、すなわち流路30rの幅寸法Wが設定される。この幅寸法Wは、幅方向Dwに仮設定した段数で配置される複数の配管35の管径と、予め設定された配管35同士の間隔とに基づいて設定される。
【0042】
このようにして、管群31が通過する流路30rの幅寸法Wと、鉛直方向Dvでの流路30rの高さ寸法Hとを設定することにより、軸方向Daから見た際の流路30rの流路断面積の大きさが、実質的に設定される。
【0043】
ここで、上述したような暫定配置条件は、流路30rにおけるガスGの流速が高まるように設定されることが好ましい。ガスGの流速が高まるほど、ガスGに含まれる水分が凝縮した際に、凝縮した水が配管35の外周面に付着し続けにくくなるためである。具体的には、断面が真円状のシェル本体21内に管群31を配置する場合、複数の配管35は、シェル本体21の軸線Oを中心として、鉛直方向Dvにおける列数と、幅方向Dwにおける段数とを同等レベルとすることが一般的である。この場合、軸方向Daから見た際の、管群31が通過する流路30rの高さ寸法Hと、流路30rの幅寸法Wとの比(H/W)は、約1となる。これに対し、本実施形態のステップS12では、幅方向Dwに並ぶ配管35の本数(段数)よりも、鉛直方向Dvに並ぶ配管35の本数(列数)の方が少なくなるようにする。これにより、軸方向Daから見た際の、管群31が通過する流路30rの高さ寸法Hと、流路30rの幅寸法Wとの比(H/W)は、1未満となる。流路30rの高さ寸法Hと、流路30rの幅寸法Wとの比(H/W)は、例えば、0.7以下とするのが好ましい。このようにして、流路30rの流路30rの高さ寸法Hを、幅寸法Wに対して相対的に小さくすることで、比(H/W)を約1とする一般的な場合に比較し、幅方向Dwから見た際の流路30rの流路断面積が小さくなり、流路30rにおけるガスGの流速が高まる。
【0044】
また、ステップS12では、流路30rにおけるガスGの流速が高まるように、管群31を構成する複数の配管35の軸方向Daの長さ寸法L1を短くしてもよい。これに応じて、シェル本体21の軸方向Daにおける長さ寸法L2が短くなることによって、幅方向Dwから見た際の流路30rの流路断面積が小さくなり、流路30rにおけるガスGの流速が高まる。
【0045】
冷却媒体の流量を設定するステップS13では、複数の配管35の全体に流通させる冷却媒体の流量を設定する。冷却媒体の流量は、配管35の配置や数に基づいて推定される冷却媒体の出口温度が要求値を満たすように仮設定される。
【0046】
ガスGと冷却媒体との熱交換に関する数値を算出するステップS14では、流路30rを流れるガスGと、複数の配管35を流れる冷却媒体との間の熱交換を行う際の、ガスG及び冷却媒体に関する数値を算出する。ステップS14では、流路30rを流れるガスGと、複数の配管35を流れる冷却媒体との間で伝熱計算を行う。具体的には、ステップS14では、流路30rを流れるガスGと、複数の配管35を流れる冷却媒体との間の熱交換時における、熱交換熱量を算出する。さらに、算出された熱交換熱量に基づいて、ガスGの入口温度に対する温度低下量、すなわちガスGの出口温度を算出する。また、算出された熱交換熱量に基づいて、冷却媒体の入口温度に対する温度上昇量、すなわち冷却媒体の出口温度を算出する。また、複数の配管35の本数や管径等に基づいて、流路30r内で複数の配管35の隙間を通過する際のガスGの圧力損失を算出する。
【0047】
冷却媒体出口温度を確認するステップS15では、ステップS14で算出された冷却媒体の出口温度が、ステップS11で予め設定された冷却媒体の出口温度の要求値(許容温度)より低いか否かを確認する。その結果、算出された冷却媒体の出口温度が、許容温度を超えている場合(ステップS15でNo)、ステップS13に戻り、冷却媒体の流量を再度仮設定する。具体的には、冷却媒体の出口温度が、許容温度を超えている場合、冷却媒体の流量を増加した値に再度仮設定する。また、ステップS15において、冷却媒体の出口温度が、許容温度以下であった場合(ステップS15でYes)、設定されていた冷却媒体の流量に決定され、ステップS16が実施される。
【0048】
ガス出口温度を確認するステップS16では、ステップS14で算出されたガスGの出口温度が、ステップS11で予め設定されたガスGの出口温度の要求値(要求温度)より低いか否かを確認する。その結果、算出されたガスGの出口温度が、要求温度を超えている場合(ステップS16でNo)、ステップS12に戻り、流路30rでのガスGと配管35との接触面積を増やすように暫定配置条件を再度仮設定する。本実施形態では、例えば、暫定配置条件の一つである配管35の数を増やすように再度仮設定する。具体的には、ガスGの出口温度が、要求温度を超えている場合、配管35の列数及び段数を増やすように仮設定する。また、ステップS16において、ガスGの出口温度が、要求温度以下であった場合(ステップS16でYes)、ステップS17に進む。
【0049】
ガス圧力損失を確認するステップS17では、ステップS14で算出されたガスGの圧力損失が、ステップS11で予め設定されたガスGの圧力損失の要求値(要求圧力損失)より高いか否かを確認する。その結果、ガスGの圧力損失が、要求圧力損失以上である場合(ステップS17でNo)、ステップS12に戻り、流路30rでのガスGの流速を低下させるように暫定配置条件を再度仮設定する。本実施形態では、例えば、暫定配置条件の一つである配管35の数を調整し再度仮設定する。具体的には、ガスGの圧力損失が、要求圧力損失を超えている場合、配管35の列数を増やしたり、段数を減らしたり、配置を変更したりして、流路30rでのガスGの流れによる圧損を低下させるように仮設定する。また、ステップS17において、ガスGの圧力損失が、要求圧力損失以下であった場合(ステップS17でYes)、設定されていた配管35の列数及び段数や配置に決定され、ステップS18に進む。
【0050】
また、凝縮水の付着率と熱交換効率の低下率との関係を取得するステップS18では、配管35の外周面でのガスGに含まれる水分の凝縮水の付着率と、ガスGと冷却媒体との熱交換効率の低下率との関係を取得する。本実施形態の凝縮水の付着率と熱交換効率の低下率との関係は、ガスの流速の関数として取得される。
【0051】
ここで、凝縮水の付着率とは、配管35の外周面への凝縮水の単位面積当たりの付着率である。この凝縮水の発生率は、後述する管群通過流速と相関関係がある。具体的には、流路30rにおいてガスGが管群31を通過する際の流速(管群通過流速)が高まるほど、配管35の外周面でのガスGに含まれる水分の凝縮水の付着率が低くなる。また、凝縮水は、ガスGに含まれる水分が、冷却媒体との熱交換によって凝縮することで生じる。さらに、熱交換効率の低下率とは、凝縮水が配管35への付着していない状態を基準とし、凝縮水が配管35の外周面に液膜として付着した場合に生じるガスGと冷却媒体との熱交換効率の低下する割合である。熱交換効率の低下率は、凝縮水の付着率が低下することで低下し、凝縮水の付着率が増加することで増加する。つまり、凝縮水の配管35への付着が生じなければ、ガスGと冷却媒体との熱交換効率の低下率は0(ゼロ)となる。
【0052】
具体的には、ステップS18では、まず、流路30rにおいて複数の配管35の周囲を通過する際のガスGの流速である管群通過流速を算出する。ガスGの管群通過流速は、ステップS11で設定(取得)されたガスGの条件の情報、冷却媒体の条件の情報、及び、ステップS12で仮設定された後に、ステップS13~S17を経て定められた暫定配置条件に基づいて算出される。算出した管群通過流速の関数Fとして、
図5に示すように、管群通過流速と、熱交換効率の低下量との関係が取得される。
図5では、管群通過流速が大きくなるほど、熱交換効率の低下量が低くなっている。また、関数Fとしては、例えば、管群通過流速と水の表面張力の関係から得られるウェーバー数(We数)を用いた関数がある。また、管群通過流速、管群直径、動粘性係数の関係から得られるレイノルズ数(Re数)がある。上述したように関数Fが、凝縮水の付着率と熱交換効率の低下率との関係を示す関数として取得される。
【0053】
ステップS18では、このような関数Fに基づき、凝縮水の付着率に対応する管群通過流速から、ガスGと冷却媒体との熱交換効率の低下量が算出される。この熱交換効率の低下量に基づいて、熱交換効率の低下率が算出される。このようにして、配管35の外周面でのガスGに含まれる水分の凝縮水の付着率と、ガスGと冷却媒体との熱交換効率の低下量との関係が、ガスGの流速である管群通過流速と、熱交換効率の低下量の関係として取得される。
【0054】
ガスクーラ1における熱交換熱量を確認するステップS19では、凝縮水の付着率と熱交換効率の低下率との関係が予め定めた基準条件を満たしているか否かを判定する。具体的には、ステップS19では、まず、ステップS18で算出されたガスGと冷却媒体との熱交換効率の低下量に基づいて、ガスクーラ1における熱交換熱量を算出する。その後、算出したガスクーラ1における熱交換熱量が、予め設定された熱交換熱量の目標値を満たしているか否かを確認する。具体的には、熱交換量の目標値とは、例えば、ガスクーラ1において熱交換量が目標に対して尤度を有することである。ガスクーラ1における熱交換熱量が、目標値を満たしていない場合(ステップS19でNo)、ステップS12に戻り、暫定配置条件(配管35の長さ寸法L1、配管35の列数、段数)を再度仮設定し、ステップS13以下の処理を繰り返す。また、ガスクーラ1における熱交換熱量が、目標値を満たしていた場合(ステップS19でYes)、ステップS20に進む。
【0055】
ガスクーラ1の仕様を決定するステップS20では、ステップS19で判定した結果、基準条件を満たしていた場合に、設定していた暫定配置条件に基づいて、配管35の配置を決定する。本実施形態のステップS20では、ステップS19において、ガスクーラ1における熱交換熱量が目標値を満たした場合に、ステップS12で仮設定した暫定配置条件、及びステップS13で仮設定した冷却媒体の流量に基づいて、ガスクーラ1の仕様が決定される。ここで決定するガスクーラ1の仕様とは、例えば、配管35の仕様及びシェル本体21の仕様である。配管35の仕様として、配管35の軸方向Daの長さ寸法L1、配管35の配置、配管35の本数(鉛直方向Dvに並ぶ配管35の列数及び幅方向Dwに並ぶ配管35の段数)、流路30rの幅寸法W、高さ寸法H、冷却媒体の流量が決定される。
【0056】
また、シェル本体21の仕様として、シェル本体21のシェル径が決定される。シェル本体21のシェル径は、決定された配管35の列数及び段数から決まる冷却器3の幅方向Dw及び鉛直方向Dvの大きさに基づいて、予め規定されている複数のサイズのシェル本体21の標準寸法の中から選定される。
【0057】
シェル本体21のシェル径を確認するステップS21では、ステップS20で決定されたシェル本体21のシェル径が、予め設定された許容シェル径未満であるか否かを確認する。その結果、シェル本体21のシェル径が、許容シェル径以上である場合(ステップS21でNo)、ステップS12に戻り、暫定配置条件として、配管35の列数及び段数を仮設定し、ステップS13以下の処理を繰り返す。一方、シェル本体21のシェル径が、許容シェル径未満であった場合(ステップS21でYes)、ステップS20で決定したガスクーラ1の仕様を、最終的なガスクーラ1の仕様として、そのまま決定する。これにより、ガスクーラ1の設計が完了する。
【0058】
(作用効果)
上記構成のガスクーラ1の設計方法S10では、流路30rにおいて軸方向Daから見た際での配管35の暫定配置条件が設定される。また、ガスGの条件の情報、冷却媒体の条件の情報、及び設定された暫定配置条件に基づいて、配管35の外周面でのガスGに含まれる水分の凝縮水の付着率と、ガスGと冷却媒体との熱交換効率の低下率との関係が取得される。さらに、取得した凝縮水の付着率と低下率との関係が基準条件を満たしている場合に、暫定配置条件に基づいて、配管35の配置を決定する。
【0059】
これにより、ガスGに含まれる水分の凝縮による熱交換効率の低下を考慮した位置に、配管35を配置することができる。ガスクーラ1では、配管35の周囲を流通するガスGに水分が含まれている場合、配管35を流通する冷却媒体とガスGと熱交換によって、水分が凝縮する。凝縮した水分は液滴となって配管35の外周面に付着する。液滴が配管35の外周面に付着した状態では、ガスGと配管35の外周面との接触面積が減少してしまい、冷却媒体とガスGとが熱交換する際の伝熱面積が減少する。そのため、凝縮水の付着率が上昇して、液滴が配管35の外周面に付着し続けるほど、熱交換効率が低下してしまう。しかしながら、本実施形態では、凝縮水の付着率と低下率との関係を取得したうえで、予め定めた基準条件を満たしているか否かを判定している。その結果、水分の凝縮による熱交換効率の低下を考慮して配管35の配置が決定されている。これにより、ガスGの流路30rにおいて、配管35を流通する冷却媒体とガスGとが熱交換した際に、凝縮によって生じた液滴が、配管35の外周面に付着し続けることが抑えられる。その結果、ガスGに含まれる水の凝縮による熱交換効率の低下を抑えることが可能なガスクーラ1を設計することができる。
【0060】
また、ステップ18において、凝縮水の付着率と熱交換効率の低下率との関係は、凝縮水の付着率に対応するガスGの管群通過流速の関数Fとして取得される。具体的には、関数Fに基づき、管群通過流速に対応する熱交換効率の低下量が算出される。この熱交換効率の低下量に基づいて、熱交換効率の低下率が算出される。このようにして、配管35の外周面でのガスGに含まれる水分の凝縮水の付着率と、ガスGと冷却媒体との熱交換効率の低下量との関係が、ガスGの流速である管群通過流速と熱交換効率の低下量との関係として取得される。このように、凝縮水の付着率と、ガスGと冷却媒体との熱交換効率の低下率との関係を、ガスGの流速の関数として把握することができる。ガスGの流速の把握は、実際に測定したり、計算したりすることによって容易に可能となっている。つまり、凝縮水の付着率を直接把握するよりも容易となっている。これにより、凝縮水の付着率と熱交換効率の低下率との関係を容易に取得することができる。
【0061】
また、ステップS12において、暫定配置条件として、軸方向Daから見た際の配管35の配置及び数が設定される。これにより、シェル本体21内部で流路30rを幅方向Dwに流れるガスGに対し、軸方向Daから見た際の配管35の配置及び数を、ガスGに含まれる水分により凝縮水の付着率(配管35の外周面への凝縮水の単位面積当たりの付着率)を抑えるように、適切に設定できる。
【0062】
また、ステップS12において、幅方向Dwに並ぶ配管35の本数(段数)よりも、鉛直方向Dvに並ぶ配管35の本数(列数)の方が少なくなるように、配管35を配置する。これにより、幅方向Dw及び鉛直方向Dvに同数の配管35を配置した場合に比べて、幅方向Dwから見た際の流路30rの流路断面積が小さくなる。その結果、流路30rにおけるガスGの流速が増加する。そのため、水分が凝縮して配管35の外周面に液滴として付着しても、ガスGによって弾き飛ばしやすくなる。したがって、凝縮によって生じた液滴が配管35の外周面に付着し続けることを抑えることができる。これにより、ガスGに含まれる水の凝縮による熱交換効率の低下をより抑えることが可能なガスクーラ1を設計することができる。
【0063】
また、ステップS12において、暫定配置条件として、幅方向Dwから見た際の流路30rの流路断面積が設定される。つまり、配管35の軸方向Daの長さ寸法L1及び流路30rの幅寸法Wが設定される。したがって、配管35の配置だけでなく、幅方向Dwから見た際の流路30rの流路断面積が直接設定される。そのため、流路30rにおけるガスGの流速が高くなるように、幅方向Dwから見た際の流路30rの流路断面積を高い精度で設定することができる。したがって、水分の凝縮による熱交換効率の低下を抑えることが可能なガスクーラ1を高い精度で設計することができる。
【0064】
また、ステップS12では、暫定配置条件として、軸方向Daから見た際の流路30rの流路断面積が設定される。つまり、流路30rの幅寸法W及び高さ寸法Hが設定される。したがって、配管35の配置だけでなく、軸方向Daから見た際の流路30rの流路断面積が直接設定される。そのため、流路30rにおけるガスGの流速が高くなるように、軸方向Daから見た際の流路30rの流路断面積を高い精度で設定することができる。したがって、水分の凝縮による熱交換効率の低下を抑えることが可能なガスクーラ1を高い精度で設計することができる。また、軸方向Daから見た際の流路30rの流路断面積を設定することで、軸方向Daから見た際のシェル本体21の断面積の大きさもおおよそ設定することが可能となる。したがって、ステップS21で、シェル本体21を選定する際に、標準寸法に近いシェル本体21を選択しやすくすることができる。
【0065】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0066】
なお、ガスクーラ1の構成は上記実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、シェル2、冷却器3、仕切部材5の以外の構造を有していてもよい。また、シェル2、仕切部材5、第一板部32、第二板部33は、上記実施形態以外の構造であってもよい。
【0067】
また、管群31を構成する複数の配管35の配置は上記実施形態の配置に限定されるものではない。例えば、複数の配管35は本実施形態のようにグリッド状に配置されることに限定されるものではなく、千鳥状に配置されていてもよい。
【0068】
<付記>
実施形態に記載のガスクーラ1の設計方法S10は、例えば以下のように把握される。
【0069】
(1)第1の態様に係るガスクーラ1の設計方法S10は、水分を含むガスGが外部から送り込まれる中空のシェル本体21と、前記シェル本体21内で前記ガスGの流路30rを形成する流路形成部30と、前記シェル本体21内で前記流路30rを通過するように配置されて冷却媒体が流通する配管35と、を備えたガスクーラ1の設計方法S10であって、前記シェル本体21内で前記流路30rを流通する前記ガスGの条件及び前記配管35を流通する前記冷却媒体の条件に関する情報を取得するステップS11と、前記流路30rにおいて前記ガスGの流れる第一方向Dwに交差する第二方向Daから見た際での前記配管35の暫定配置条件を設定するステップS12と、取得された前記ガスGの条件の情報、前記冷却媒体の条件の情報、及び設定された前記暫定配置条件に基づいて、前記配管35の外周面での前記ガスGに含まれる水分の凝縮水の付着率と、前記ガスGと前記冷却媒体との熱交換効率の低下率との関係を取得するステップS18と、前記凝縮水の付着率と前記低下率との関係が予め定めた基準条件を満たしているか否かを判定するステップS19と、前記判定した結果、前記基準条件を満たしていた場合に、前記暫定配置条件に基づいて、前記配管35の配置を決定するステップS20と、を含む。
【0070】
ガスGの条件の例としては、入口ノズル24からシェル本体21内に送り込まれるガスGの流量、入口ノズル24におけるガスGの入口温度及び入口圧力、出口ノズル25におけるガスGの出口温度及び出口圧力、ガスGの入口から出口までで生じる圧力損失、ガスGの絶対湿度(ガスGの成分)が挙げられる。冷却媒体の条件の例としては、配管35の入口における冷却媒体の入口温度、配管35の出口における冷却媒体の出口温度が挙げられる。
【0071】
これにより、ガスGに含まれる水分の凝縮による熱交換効率の低下を考慮した位置に、配管35を配置することができる。ガスクーラ1では、配管35の周囲を流通するガスGに水分が含まれている場合、配管35を流通する冷却媒体とガスGと熱交換によって、水分が凝縮する。凝縮した水分は液滴となって配管35の外周面に付着する。液滴が配管35の外周面に付着した状態では、ガスGと配管35の外周面との接触面積が減少してしまい、冷却媒体とガスGとが熱交換する際の伝熱面積が減少する。そのため、凝縮水の付着率が上昇して、液滴が配管35の外周面に付着し続けるほど、熱交換効率が低下してしまう。しかしながら、本実施形態では、凝縮水の付着率と低下率との関係を取得したうえで、予め定めた基準条件を満たしているか否かを判定している。その結果、水分の凝縮による熱交換効率の低下を考慮して配管35の配置が決定されている。これにより、ガスGの流路30rにおいて、配管35を流通する冷却媒体とガスGとが熱交換した際に、凝縮によって生じた液滴が、配管35の外周面に付着し続けることが抑えられる。その結果、ガスGに含まれる水の凝縮による熱交換効率の低下を抑えることが可能なガスクーラ1を設計することができる。
【0072】
(2)第2の態様に係るガスクーラ1の設計方法S10は、(1)のガスクーラ1の設計方法S10であって、前記凝縮水の付着率と前記低下率との関係は、前記ガスGの流速の関数として取得される。
【0073】
これにより、配管35の外周面でのガスGに含まれる水分の凝縮水の付着率と、ガスGと冷却媒体との熱交換効率の低下量との関係が、ガスGの流速と熱交換効率の低下量との関係として取得される。このように、凝縮水の付着率と、ガスGと冷却媒体との熱交換効率の低下率との関係を、ガスGの流速の関数として把握することができる。ガスGの流速の把握は、実際に測定したり、計算したりすることによって容易に可能となっている。つまり、凝縮水の付着率を直接把握するよりも容易となっている。これにより、凝縮水の付着率と熱交換効率の低下率との関係を容易に取得することができる。
【0074】
(3)第3の態様に係るガスクーラ1の設計方法S10は、(1)又は(2)のガスクーラ1の設計方法S10であって、前記シェル本体21は、前記第二方向Daに延びる軸線Oを中心として延びる筒状に形成され、前記暫定配置条件を設定するステップS12では、前記暫定配置条件として、前記第二方向Daから見た際の前記配管35の配置及び数を設定する。
【0075】
これにより、シェル本体21内部で流路30rを幅方向Dwに流れるガスGに対し、第二方向Daから見た際の配管35の配置及び数を、ガスGに含まれる水分による、凝縮水の付着率(配管35の外周面への凝縮水の単位面積当たりの付着率)を抑えるよう、適切に設定できる。
【0076】
(4)第4の態様に係るガスクーラ1の設計方法S10は、(3)のガスクーラ1の設計方法S10であって、前記配管35は、前記第一方向Dwに並ぶ前記配管35の本数よりも、前記第一方向Dw及び前記第二方向Daと交差する第三方向Dvに並ぶ前記配管35の本数の方が少ない。
【0077】
これにより、第一方向Dw及び第三方向Dvに同数の配管35を配置した場合に比べて、第一方向Dwから見た際の流路30rの流路断面積が小さくなる。その結果、流路30rにおけるガスGの流速が増加する。そのため、水分が凝縮して配管35の外周面に液滴として付着しても、ガスGによって弾き飛ばしやすくなる。したがって、凝縮によって生じた液滴が配管35の外周面に付着し続けることを抑えることができる。これにより、ガスGに含まれる水の凝縮による熱交換効率の低下をより抑えることが可能なガスクーラ1を設計することができる。
【0078】
(5)第5の態様に係るガスクーラ1の設計方法S10は、(3)又は(4)のガスクーラ1の設計方法S10であって、前記暫定配置条件を設定するステップS12では、前記暫定配置条件として、前記第一方向Dwから見た際の前記流路30rの流路断面積の大きさを設定する。
【0079】
これにより、幅方向Dwから見た際の流路30rの流路断面積が直接設定される。そのため、流路30rにおけるガスGの流速が高くなるように、幅方向Dwから見た際の流路30rの流路断面積を高い精度で設定することができる。したがって、水分の凝縮による熱交換効率の低下を抑えることが可能なガスクーラ1を高い精度で設計することができる。
【0080】
(6)第6の態様に係るガスクーラ1の設計方法S10は、(3)から(5)の何れか一つのガスクーラ1の設計方法S10であって、前記暫定配置条件を設定するステップS12では、前記暫定配置条件として、前記第二方向Daから見た際の前記流路の流路断面積の大きさを設定する。
【0081】
これにより、第二方向Daから見た際の流路30rの流路断面積が直接設定される。そのため、流路30rにおけるガスGの流速が高くなるように、第二方向Daから見た際の流路30rの流路断面積を高い精度で設定することができる。したがって、水分の凝縮による熱交換効率の低下を抑えることが可能なガスクーラ1を高い精度で設計することができる。
【符号の説明】
【0082】
1…ガスクーラ
2…シェル
2S…空間部
3…冷却器
5…仕切部材
8…圧縮機システム
9、9A、9B…圧縮機
10A…前段接続管
10B…後段接続管
21…シェル本体
21S…第一空間
21c…中心
211…第一シェル端部
212…第二シェル端部
22S…第二空間
24…入口ノズル
25…出口ノズル
30…流路形成部
30r…流路
31…管群
32…第一板部
32a…端部
32b…端部
33…第二板部
33a…端部
33b…端部
35…配管
51…主仕切板
51a…端部
51b…端部
52…第一案内部
53…第二案内部
Da…軸方向(第二方向)
Da1…第一側(軸方向)
Da2…第二側(軸方向)
Df…ガスの流れの方向
Dv…鉛直方向(第三方向)
Dw…幅方向(第一方向)
Dw1…第一側(幅方向)
Dw2…第二側(幅方向)
管群通過流速のF…関数
G…ガス
H…高さ寸法
W…幅寸法
L1、L2…長さ寸法
O…軸線
S10…ガスクーラの設計方法
S11…要求仕様を設定するステップ
S12…暫定配置条件を設定するステップ
S13…冷却媒体の流量を設定するステップ
S14…ガスと冷却媒体との熱交換に関する数値を算出するステップ
S15…冷却媒体出口温度を確認するステップ
S16…ガス出口温度を確認するステップ
S17…ガス圧力損失を確認するステップ
S18…凝縮水の付着率と熱交換効率の低下率との関係を取得するステップ
S19…ガスクーラにおける熱交換熱量を確認するステップ
S20…ガスクーラの仕様を決定するステップ
S21…シェル本体のシェル径を確認するステップ