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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060886
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/04 20180101AFI20240425BHJP
【FI】
G01N23/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168451
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 真起
(72)【発明者】
【氏名】石毛 隆晴
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001CA07
2G001CA10
2G001DA06
2G001DA08
2G001DA09
2G001HA07
2G001HA13
2G001JA09
2G001KA06
2G001LA10
2G001PA11
(57)【要約】
【課題】手荷物等の検査において、一軸方式のX線検査装置のみを用いた場合に比べて監視可能な領域が広く、かつ、多軸方式のX線検査装置を用いた場合に比べてコスト、及びスペースが抑制される検査装置を提供する。
【解決手段】検査装置9は、第1方向に沿って対象物にX線を照射し、対象物を透過したX線を検出するX線検査装置4と、対象物から熱放射され第1方向と交差する第2方向に進む電磁波を検出するパッシブ波検出装置3と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に沿って対象物にX線を照射し、前記対象物を透過したX線を検出するX線検出部と、前記対象物から熱放射され前記第1方向と交差する第2方向に進む電磁波を検出するパッシブ波検出部と、を有する検査装置。
【請求項2】
前記パッシブ波検出部は、自装置の前段に設けられた面熱源により加熱された前記対象物から熱放射される前記電磁波を検出する請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記電磁波はテラヘルツ波である請求項1に記載の検査装置。
【請求項4】
前記パッシブ波検出部は前記対象物の前記第2方向に配置された二次元アレイ型検出器により前記電磁波を検出する請求項1から3のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項5】
前記パッシブ波検出部は走査部により前記第1方向との交差が維持されるように前記第2方向を変化させて前記電磁波を検出する請求項1から3のいずれか1項に記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物にX線を照射してその対象物を透過したX線を検出する検査装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空港等で使用されているX線検査装置は、一台につき複数の係員が配置されている。また、これらのX線検査装置は、比較的、検査に時間をかけている。そして、一般的に、これらのX線検査装置による検査は、トレーを使用して検査対象のサイズを決められた大きさに制限している。
【0003】
一方、テーマパーク、及びイベント会場等における検査は、空港とは異なり入場前に多数の人が行列を作り開場を心待ちにしているため、一定水準の処理速度(スループットともいう)が求められる。
【0004】
そこで、手荷物検査装置のスループットを向上させるため、X線と他の検査方式とを組合せる技術が検討されている(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-11981号公報
【特許文献2】特開2006-84275号公報
【特許文献3】特表2008-500541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、X線検査装置は、X線の照射方向の数により、一軸方式とそれ以外とに分類される。一軸方式のX線検査装置は、単一方向のみからX線を照射して、対象物を透過したそのX線を検査する装置である。例えば、X線検査装置は、透過したX線が示す画像(X線画像ともいう)を撮像する。
【0007】
一軸方式に対して、X線の照射方向が複数である方式(多軸方式ともいう)がある。多軸方式は、例えば、垂直方向、及び水平方向の二方向からX線を照射して、対象物を透過したX線画像をそれぞれ撮像する二軸方式である。
【0008】
一軸方式を採用する場合、X線検査装置は、X線の照射と撮像とが単一方向のみであるため、多軸方式に比べてスループットが高い。
【0009】
しかし、X線は対象物の比重・密度・厚みが大きいほど、より多く吸収されるという特徴がある。そのため、X線検査装置は、上述した一軸方式を採用すると対象物の内部に見えない領域を生じさせる可能性があり、安全性に欠けることがある。例えば、一軸方式を採用したX線検査装置は、X線を照射する方向と刃の方向とが平行になるように配置された刃物を見つけることができない。
【0010】
したがって、X線検査装置に一軸方式を採用しつつ、セキュリティレベルを向上させるためには、スループットを低下させるしか無い。
【0011】
一方、二軸方式等の多軸方式は、一般に二台以上のX線検査装置を設置するため、サイズ、及びコストが大幅に増加する。また、いわゆるCT(Computed Tomography)により、対象物を中心にして一台のX線検査装置を周回させる多軸方式も考えられる。CT方式では、X線検査装置が移動してX線の照射方向を変化させるため、X線検査装置そのものの台数が一台で済む。しかし、X線検査装置を移動させる機構、動線を確保しなければならない。つまり、CT方式によるX線検査も、コスト及びスペースを大幅に増加させ、スループットも低い。
【0012】
したがって、テーマパーク、及びイベント会場等に従来のX線検査装置を導入することには高い障壁がある。
【0013】
本発明の目的の一つは、手荷物等の検査において、一軸方式のX線検査装置のみを用いた場合に比べて監視可能な領域が広く、かつ、多軸方式のX線検査装置を用いた場合に比べてコスト、及びスペースが抑制される検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、第1方向に沿って対象物にX線を照射し、前記対象物を透過したX線を検出するX線検出部と、前記対象物から熱放射され前記第1方向と交差する第2方向に進む電磁波を検出するパッシブ波検出部と、を有する検査装置、を第1の態様として提供する。
【0015】
第1の態様の検査装置によれば、一軸方式のX線検査装置のみを用いた場合に比べて監視可能な領域が広く、かつ、多軸方式のX線検査装置を用いた場合に比べてコスト、及びスペースが抑制される検査をすることができる。
【0016】
第1の態様の検査装置において、前記パッシブ波検出部は、自装置の前段に設けられた面熱源により加熱された前記対象物から熱放射される前記電磁波を検出する、という構成が第2の態様として採用されてもよい。
【0017】
第2の態様の検査装置によれば、対象物からの電磁波の放射を促進させることができ、その熱源を薄くすることができる。
【0018】
第1の態様の検査装置において、前記電磁波はテラヘルツ波である、という構成が第3の態様として採用されてもよい。
【0019】
第3の態様の検査装置によれば、電離作用を有するX線に比べて生物学的に安全に第2方向の検査を行うことができる。
【0020】
第1から第3のいずれか1の態様の検査装置において、前記パッシブ波検出部は前記対象物の前記第2方向に配置された二次元アレイ型検出器により前記電磁波を検出する、という構成が第4の態様として採用されてもよい。
【0021】
第4の態様の検査装置によれば、対象物から熱放射される電磁波を受波する受波素子を物理的に移動させて走査を行う場合に比べて、検査の処理速度が向上する。
【0022】
第1から第3のいずれか1の態様の検査装置において、前記パッシブ波検出部は走査部により前記第1方向との交差が維持されるように前記第2方向を変化させて前記電磁波を検出する、という構成が第5の態様として採用されてもよい。
【0023】
第5の態様の検査装置によれば、対象物から熱放射される電磁波を受波する受波素子を配列する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係る検査装置9の外観の例を示す斜視図。
図2】検査装置9の構成の例を示すブロック図。
図3】情報処理装置2の構成の例を示す図。
図4】X線検査装置4の構成の例を示す図。
図5】X線検査装置4によって撮像されたX線画像の例を示す図。
図6】2つ目のX線検査装置7を用いた場合の構成の例を示す図。
図7】パッシブ波検出装置3の構成の例を示す図。
図8】受波素子を配列させたパッシブ波検出部32の例を示す図。
図9】検査装置9の動作の流れの例を示すフロー図。
図10】走査型のパッシブ波検出装置3aの例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<実施形態>
<検査装置の構成>
以下に示す図において、各構成が配置される空間をxyz右手系座標空間として表す。また、図に示す座標記号のうち、円の中に点を描いた記号は、紙面奥側から手前側に向かう矢印を表し、円の中に交差する2本の線を描いた記号は、紙面手前側から奥側に向かう矢印を表す。空間においてx軸に沿う方向をx軸方向という。また、x軸方向のうち、x成分が増加する方向を+x方向といい、x成分が減少する方向を-x方向という。y、z成分についても、上記の定義に沿ってy軸方向、+y方向、-y方向、z軸方向、+z方向、-z方向が定義される。図において、-z方向は重力の方向、つまり、下方である。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る検査装置9の外観の例を示す斜視図である。また、図2は、検査装置9の構成の例を示すブロック図である。図2に示す検査装置9は、制御基板1、情報処理装置2、及びX線検査装置4を有する。また、図2に示す検査装置9は、パッシブ波検出装置3の一部の構成を有する。
【0027】
図2に示すパッシブ波検出装置3は、熱源31、及びパッシブ波検出部32を有する。なお、熱源31、及びパッシブ波検出部32は、それぞれ独立した装置であってもよい。
【0028】
熱源31は、検査装置9による検査の対象となる手荷物等の物体(以下、対象物ともいう)を加熱する熱源である。図2に示す熱源31は、制御基板1によって制御される。
【0029】
この熱源31により加熱された対象物は、電磁波を放射(熱放射ともいう)する。対象物が熱放射するこの電磁波には、サブミリ波、又はテラヘルツ波等と呼ばれる電磁波が含まれる。テラヘルツ波は、100GHzから10THzまでの周波数、又は3ミリメートルから3マイクロメートルまでの波長を有する電磁波である。
【0030】
パッシブ波検出部32は、加熱された対象物から熱放射される電磁波を受波し、その対象物を検出する機器である。対象物を検出すると、パッシブ波検出部32は、その検出結果を情報処理装置2に通知する。
【0031】
図2に示すX線検査装置4は、X線照射部41、及びX線検出部42を有する。なお、X線照射部41、及びX線検出部42は、それぞれ独立した装置であってもよい。
【0032】
X線照射部41は、制御基板1によって制御される。このX線照射部41は、制御基板1の制御の下、搬送装置6によって決められた位置に搬送された対象物に向けてX線を照射する。
【0033】
X線検出部42は、X線照射部41により照射され対象物を透過したX線を検出する機器である。このX線検出部42は、例えば、X線ラインセンサ等である。対象物を透過したX線を検出すると、X線検出部42は、その検出結果を情報処理装置2に通知する。このX線検出部42は、例えば、対象物を透過したX線に基づいてX線画像を生成し、検出結果としてそのX線画像を情報処理装置2に通知(供給)する。
【0034】
図2に示す検査装置9は、パッシブ波検出装置3のうち、パッシブ波検出部32を有する。また、この検査装置9は、外部装置として、パッシブ波検出装置3の熱源31、検知センサ5、及び搬送装置6とやり取りをする。なお、検査装置9は、熱源31、検知センサ5、及び搬送装置6の少なくともいずれかを内部装置として有してもよい。
【0035】
制御基板1は、各種のデバイスを制御するために設計されたプリント基板である。この制御基板1は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の、汎用的なプロセッサを有する。図2に示すこの制御基板1は、検知センサ5、搬送装置6、及びX線検査装置4のうちX線照射部41を制御する。
【0036】
検知センサ5は、搬送装置6に載置された対象物を検知するセンサである。この検知センサ5は、例えば、赤外線センサ、歪センサ等である。搬送装置6に載置された対象物を検知すると、検知センサ5は、その検知結果を制御基板1に通知する。
【0037】
この検知結果の通知を受けた制御基板1は、搬送装置6を起動させる。また、この検知結果の通知を受けた制御基板1は、パッシブ波検出装置3の熱源31、及びX線検査装置4のX線照射部41を起動させ、これらを起動させたことを情報処理装置2に伝える。
【0038】
搬送装置6は、対象物Jを搬送する装置である。この搬送装置6は、例えば、ベルトコンベア、ローラコンベア等である。図1に示す搬送装置6は、制御基板1の制御の下で起動し、対象物を矢印D1に沿ってパッシブ波検出装置3、及びX線検査装置4のそれぞれの検出領域へ搬送する。なお、この搬送装置6による対象物Jの搬送方向を示す矢印D1は、+y方向に沿った方向である。したがって、対象物の搬送方向、及び鉛直方向のいずれにも垂直な搬送装置6の幅方向は、x軸に沿った方向である。
【0039】
情報処理装置2は、制御基板1、パッシブ波検出装置3のパッシブ波検出部32、及びX線検査装置4のX線検出部42をそれぞれ制御する装置である。情報処理装置2は、例えばコンピュータである。
【0040】
<情報処理装置の構成>
図3は、情報処理装置2の構成の例を示す図である。情報処理装置2は、プロセッサ21、メモリ22、インタフェース23、操作部24、及び表示部25を有する。これらは、バスにより相互に通信可能に接続されている。
【0041】
メモリ22は、プロセッサ21に読み込まれるオペレーティングシステム、各種のコンピュータプログラム(以下、単にプログラムという)、データ等を記憶する記憶手段である。メモリ22は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)を有する。なお、メモリ22は、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブ等を有してもよい。
【0042】
プロセッサ21は、メモリ22に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより情報処理装置2の各部を制御する。プロセッサ21は、例えばCPUである。
【0043】
インタフェース23は、有線又は無線により他の装置(すなわち、外部装置)に接続する通信回路である。図3に示すインタフェース23は、制御基板1、パッシブ波検出装置3のパッシブ波検出部32、及びX線検査装置4のX線検出部42とそれぞれ通信可能に接続する。
【0044】
操作部24は、各種の指示をするための操作ボタン、キーボード、タッチパネル等の操作子を備えており、利用者による操作を受付けてその操作内容に応じた信号をプロセッサ21に送る。
【0045】
表示部25は、液晶ディスプレイ等の表示画面を有しており、プロセッサ21の制御の下、画像を表示する。表示画面の上には、操作部24の透明のタッチパネルが重ねて配置されてもよい。
【0046】
<X線検査装置の構成>
図4は、X線検査装置4の構成の例を示す図である。図4には、X線検査装置4を構成するX線照射部41、及びX線検出部42のそれぞれの配置が示されている。
【0047】
図4に示す搬送装置6は、対象物Jを矢印D1に沿った方向、つまり+y方向に搬送する。矢印D1に沿った搬送方向において、最も上流には検知センサ5が設置されている。検知センサ5は、対象物Jが搬送装置6の搬送路の最も上流の位置を監視する。搬送路の最も上流の位置に対象物Jが載置されると、検知センサ5は、これを検知して検知結果を図2に示す制御基板1に伝える。これにより搬送装置6の駆動が開始される。
【0048】
上述した搬送方向において、検知センサ5の下流には、パッシブ波検出装置3、及びX線検査装置4がこの順に配置されている。検知センサ5に検知された対象物Jは、搬送装置6によりパッシブ波検出装置3の内部に搬送され、これを通過した後、さらにX線検査装置4の内部に搬送される。
【0049】
X線検査装置4のX線照射部41は、搬送装置6の下方に配置されている。このX線照射部41は、搬送装置6により対象物Jが自身の直上を通過するときに、上向き、つまり+z方向(第1方向ともいう)にX線を照射する。このX線照射部41を有する検査装置9は、第1方向に沿って対象物にX線を照射する検査装置の例である。
【0050】
X線照射部41は、X線源411、及び絞り412を有する。X線源411は、X線を発生させる機器であり、例えば、X線管である。
【0051】
一般に、X線源411は点光源である。そのため、死角を減らす、又はX線画像の歪みを抑制する都合上、X線源411は、X線検出部42からある程度、離れて配置する必要がある。また、X線の漏洩を防止する観点からも、X線の発散角(拡がり角ともいう)をある程度、狭くしなければならないため、X線源411とX線検出部42との距離は必要である。
【0052】
絞り412は、X線源411の上方に配置され、X線を照射する範囲(照射野ともいう)を限定する機器である。絞り412により、X線源411から発生したX線は、対象物Jが搬送される動線の上方のうち、限られた範囲に向けて照射される。
【0053】
X線照射部41は、X線源411と絞り412とをX線の照射方向(第1方向)に沿って配列させるため、この照射方向に沿ったある程度の長さを必要とする。例えば、図4に示す配置においてX線照射部41は、z軸方向に高さHが必要である。
【0054】
X線検出部42は、X線照射部41の直上であって、搬送装置6により搬送される対象物Jの動線よりもさらに上方に配置されている。この配置により、X線検出部42は、X線照射部41との間に搬送されたときの対象物Jを透過するX線を検出する。つまり、このX線検出部42は、対象物を透過したX線を検出するX線検出部の例である。
【0055】
図4に示す対象物Jは、取手Gを有する鞄であり、この取手Gが上になるように立てた状態で載置され、搬送されている。この対象物Jの内部には、ナイフ等の比較的薄い危険物Cが入っている。
【0056】
図5は、X線検査装置4によって撮像されたX線画像の例を示す図である。図4に示すように立てて載置された鞄である対象物Jは、例えば、ジッパーJzを有している。このジッパーJzは、X線画像においてy軸に沿った像を形成する。
【0057】
そして、ナイフである危険物Cは、峰から刃先に向かう方向がz軸に、柄尻から切先に向かう方向がy軸に、それぞれ沿った姿勢で対象物Jの内部に収容されている。この場合、+z方向にX線が照射されると、X線検査装置4は、危険物Cを図5に示す通り、例えば細い棒のような、x軸方向が比較的薄い像として表示する。さらに、X線画像においてジッパーJzの像と重なると、危険物Cはさらに認識され難くなる。
【0058】
上述した通り、X線による検出に一軸方式を採用すると危険物Cの認識が困難になる場合があるので、多軸方式を採用することが考えられる。図6は、2つ目のX線検査装置7を用いた場合の構成の例を示す図である。この検査装置は、X線検査装置4に加えて2つ目のX線検査装置7を有する。1つ目のX線検査装置4は、+z方向にX線を照射する。一方、2つ目のX線検査装置7は、+x方向にX線を照射する。
【0059】
X線検査装置4、及びX線検査装置7は、一方で図5に示したX線画像を生成したとしても、他方で異なる方向から観察した異なるX線画像を生成する。そのため、多軸方式を採用したX線検出は、一軸方式を採用する場合に比べて危険物Cを認識し易い。
【0060】
しかし、+z方向にX線を照射するX線検査装置4が高さHを必要とすることに加えて、+x方向にX線を照射するX線検査装置7は、x軸方向に幅Wを必要とする。そのため、X線検査装置4に加えてX線検査装置7を導入すると、検査装置全体に必要となる空間は増大する。また、検査装置のイニシャルコストの大半を占めるのは、X線検査装置である。したがって、X線による検出に二軸方式を採用すると、X線検査装置が二台必要になり、イニシャルコストが倍になる。
【0061】
<パッシブ波検出装置の構成>
本願発明は、X線による検出に一軸方式を採用し、かつ、対象物から熱放射された電磁波であって、X線の照射方向と交差する方向に進む電磁波を検出する。
【0062】
図7は、パッシブ波検出装置3の構成の例を示す図である。図7に示すパッシブ波検出装置3は、対象物Jの搬送方向(矢印D1の方向)において、X線検査装置4の上流、すなわち、-y方向に配置されている。このパッシブ波検出装置3は、-x側から熱源31によってこの対象物Jを加熱する。
【0063】
熱源31は、例えば、赤外線を+x方向に放射して対象物Jを加熱する。また、熱源31は、温風等を+x方向に噴出させて対流伝熱により対象物Jを加熱してもよい。熱源31は、対象物Jを加熱するものであれば特に限定されないが、対象物Jに向けた面全体で、この対象物Jを加熱する面熱源が好適に用いられる。図7に示す熱源31は、面熱源であるため、対象物Jのある方向に沿った厚みが、例えばX線検査装置4と比べて薄い。つまり、このパッシブ波検出装置3は、熱源31に面熱源を採用することで、X線検査装置を追加する場合に比べて全体をコンパクトにすることができ、かつ、対象物Jからの電磁波の放射を促進させることができる。なお、熱源31は、上述した面熱源のほかに、線状、球状等の形状を有する発熱体であってもよい。また、熱源31は、温めた空気を対象物Jに吹き付ける温風発生機等であってもよい。また、対象物Jは、例えば常温下でも黒体放射をしている。そのため、パッシブ波検出装置3は、熱源31を有しなくても対象物Jから電磁波を検出することができる。すなわち、検査装置9は、熱源31を有しなくてもよい。
【0064】
図7に示す通り、パッシブ波検出装置3のパッシブ波検出部32は、対象物Jの搬送方向において熱源31の下流(後段ともいう)に設けられている。また、このパッシブ波検出部32は、対象物Jの動線に対して+x側に配置されている。
【0065】
したがって、パッシブ波検出部32は、自装置の前段に設けられた熱源31により加熱された対象物Jが自装置の前を通過するときに、その対象物Jから+x方向に熱放射される電磁波を検出する。パッシブ波検出部32により検出される電磁波が進む+x方向(第2方向ともいう)は、X線検査装置4がX線を照射する上述した第1方向と交差する方向である。
【0066】
つまり、このパッシブ波検出部32は、対象物から熱放射されこの対象物にX線を照射する方向である第1方向と交差する第2方向に進む電磁波を検出するパッシブ波検出部の例である。
【0067】
また、このパッシブ波検出部32は、対象物Jから熱放射される電磁波に含まれるテラヘルツ波を検出する。この場合、このパッシブ波検出部32は、自装置の前段に設けられた面熱源により加熱された対象物から熱放射される電磁波を検出するパッシブ波検出部の例である。
【0068】
検査装置9は、様々な方式のパッシブ波検出部32を採用することが可能である。実施形態に係る検査装置9は、パッシブ波検出部32として複数の受波素子を配列させたアレイ型検出器を採用する。
【0069】
図8は、受波素子を配列させたパッシブ波検出部32の例を示す図である。このパッシブ波検出部32は、図8の(b)に示す通り、y軸方向、及びz軸方向のそれぞれに沿って二次元格子状に並んだ複数の受波素子321を有している。つまり、これらの複数の受波素子321は、二次元アレイ型検出器であるパッシブ波検出部32を構成する。
【0070】
また、複数の受波素子321は、図8の(a)に示す通り、対象物Jから+x方向(つまり、第2方向)に進む電磁波を検出する。そして、これら複数の受波素子321は、それぞれ検出した電磁波の強度と、それぞれの位置とを対応付け、電磁波による画像(パッシブ画像ともいう)を生成する。
【0071】
したがって、このパッシブ波検出部32は、対象物の第2方向に配置された二次元アレイ型検出器により対象物から熱放射され第2方向に進む電磁波を検出するパッシブ波検出部の例である。このパッシブ波検出部32は、複数の受波素子を移動させることなく同時にそれぞれの位置で電磁波を検出するので、受波素子を物理的に移動させて走査を行う場合に比べて早く検査を行うことができる。
【0072】
<距離画像センサの動作>
図9は、検査装置9の動作の流れの例を示すフロー図である。制御基板1は、検知センサ5からの通知を受けて、対象物Jを検知したか否かを判断する(ステップS101)。対象物Jを検知していない、と判断する間(ステップS101;NO)、制御基板1は、この判断を続ける。
【0073】
一方、対象物Jを検知した、と判断すると(ステップS101;YES)、制御基板1は、搬送装置6を駆動させて対象物Jを搬送させる(ステップS102)。そして、対象物Jが熱源31の前まで搬送されるとき、制御基板1は、この熱源31に指示を出して対象物Jの加熱を開始する(ステップS103)。
【0074】
情報処理装置2は、加熱された対象物Jから第2方向に向かって放射される電磁波を検出し、パッシブ画像を取得する(ステップS104)。
【0075】
一方、制御基板1は、対象物JがX線照射部41の前まで搬送されるときに、このX線照射部41に指示を出して対象物Jに向けたX線の照射を開始する(ステップS105)。
【0076】
X線検出部42は、X線照射部41により第1方向に沿って照射され、対象物Jを透過したX線を検出し、X線画像を生成する。情報処理装置2は、X線検出部42からX線画像を取得する(ステップS106)。
【0077】
そして、情報処理装置2は、ステップS104で取得したパッシブ画像と、ステップS106で取得したX線画像と、をそれぞれ解析し、対象物Jに危険物が含まれているか否かを判定する判定処理を行う(ステップS107)。判定処理を行った情報処理装置2は、例えば、表示部25による表示等によって、この判定処理の結果を出力する(ステップS108)。
【0078】
以上、説明した処理を実行することにより、この検査装置9は、一軸方式のX線検査装置のみを用いた場合に比べて、多様な角度から広い領域を監視、検査することができる。
【0079】
また、X線検査装置4は、点光源を用いるために対象物Jの方向に比較的大きな空間を要する。一方、パッシブ波検出装置3は、対象物Jをその対象物Jに向いた面で加熱することができ、かつ、対象物Jから熱放射される電磁波をその対象物Jに向いた面で検出することができる。そのため、一台のX線検査装置4と、これを補助するパッシブ波検出装置3とを有するこの検査装置9は、多軸方式のX線検査装置を用いた場合に比べて安価に製造することが可能であり、X線の漏洩による被爆の危険性が抑制され、かつ、スペースも節約することができる。また、この検査装置9は、既存の一軸方式のX線検査装置4に、上述したパッシブ波検出装置3を追加して構成することもできる。
【0080】
さらに、この検査装置9は、加熱された対象物Jの黒体放射を利用して、この対象物Jから熱放射される電磁波を検出するパッシブ波検出装置3を採用する。したがって、この検査装置9は、対象物Jに向けてテラヘルツ波を照射して、その反射波を検出する装置を利用する、いわゆるアクティブ方式の電磁波検出を採用する場合と異なり、電波法の制限を受けることがない。
【0081】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさ及び配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎない。したがって、本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【0082】
<変形例>
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例は組み合わされてもよい。
【0083】
<1>
上述した実施形態において、検査装置9は、パッシブ波検出部32として複数の受波素子を配列させたアレイ型検出器を採用していたが、これに限らない。検査装置9は、例えば、パッシブ波検出部として、走査型の検出器を採用してもよい。
【0084】
図10は、走査型のパッシブ波検出装置3aの例を示す図である。上述した検査装置9は、パッシブ波検出装置3に代えて、このパッシブ波検出装置3aを採用することができる。
【0085】
パッシブ波検出装置3aは、熱源31a、及びパッシブ波検出部32aを有する。パッシブ波検出部32aは、受波の方向を変化させる走査型の検出器である。このパッシブ波検出部32aは、受波素子321a、及び走査部322を有する。受波素子321aは、向けられた方向から到達する電磁波を検出する素子である。走査部322は、受波素子321aの向きを変化させて対象物Jを含む空間の走査を行わせる機器である。
【0086】
ただし、パッシブ波検出部32aは、+z方向、又は-z方向に沿って対象物Jから熱放射される電磁波を検出しなくてもよい。対象物Jをz軸に沿った方向に観察した結果は、X線検査装置4によって得られるからである。したがって、走査部322は、X線検査装置4によるX線の照射方向(つまり、第1方向)との交差が維持されるように、受波素子321aの検出方向(つまり、第2方向)を変化させることが望ましい。
【0087】
熱源31aは、実施形態に係る熱源31と同じであってもよいが、例えば、図10に示す通り、+x方向に赤外線等を放射する面と、-z方向に赤外線等を放射する面とを有してもよい。多方向から輻射熱によって加熱された対象物Jは、一方向から加熱される場合に比べて早く温度が上昇する。
【0088】
したがって、この変形例に係るパッシブ波検出装置3aのパッシブ波検出部32aは、走査部により第1方向との交差が維持されるように第2方向を変化させて電磁波を検出するパッシブ波検出部の例である。
【0089】
<2>
上述した実施形態において、制御基板1、及びプロセッサ21はCPUを有していたが、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)を有してもよい。また、制御基板1、及びプロセッサ21は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、又は他のプログラマブル論理デバイスを有し、これらによって制御を行ってもよい。
【0090】
<3>
上述した実施形態において、制御基板1、及びプロセッサ21は別体であったが、これらの機能は一つのプロセッサによって行われてもよい。例えば、プロセッサ21は、制御基板1を兼ねてもよい。
【0091】
<4>
上述した実施形態において、搬送装置6によって搬送される対象物Jの搬送路に沿って、パッシブ波検出装置3、及びX線検査装置4がこの順に配置されていたが、これらの装置が配置される順番は逆でもよい。また、これらの装置は、上述した搬送路において重なるように配置されてもよい。
【0092】
<5>
上述した実施形態において、制御基板1、及びプロセッサ21の動作は、いずれも1つのプロセッサによって成すのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであってもよい。また、制御基板1、及びプロセッサ21の各動作の順序は上述した順序のみに限定されるものではなく、適宜変更されてもよい。
【0093】
<6>
上述した実施形態において、制御基板1、及び情報処理装置2のプロセッサ21によって実行されるプログラムは、磁気テープ及び磁気ディスク等の磁気記録媒体、光ディスク等の光記録媒体、光磁気記録媒体、半導体メモリ等の、コンピュータ装置が読取り可能な記録媒体に記憶された状態で提供し得る。また、このプログラムは、インターネット等の通信回線経由でダウンロードされてもよい。
【符号の説明】
【0094】
1…制御基板、2…情報処理装置、21…プロセッサ、22…メモリ、23…インタフェース、24…操作部、25…表示部、3、3a…パッシブ波検出装置、31、31a…熱源、32、32a…パッシブ波検出部、321、321a…受波素子、322…走査部、4…X線検査装置、41…X線照射部、411…X線源、412…絞り、42…X線検出部、5…検知センサ、6…搬送装置、7…X線検査装置、9…検査装置、D1…矢印。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10