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特開2024-60891インサートの傾き検出方法、インサートの傾き検出装置及びインサート外周研削装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060891
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】インサートの傾き検出方法、インサートの傾き検出装置及びインサート外周研削装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 21/22 20060101AFI20240425BHJP
   G01B 21/24 20060101ALI20240425BHJP
   B24B 3/34 20060101ALI20240425BHJP
   B23P 15/28 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
G01B21/22
G01B21/24
B24B3/34
B23P15/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168456
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】590006343
【氏名又は名称】株式会社和井田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 充
(72)【発明者】
【氏名】宮武 伸次
(72)【発明者】
【氏名】諸屋 博
【テーマコード(参考)】
2F069
3C158
【Fターム(参考)】
2F069AA01
2F069AA17
2F069AA71
2F069GG01
2F069GG62
2F069JJ17
2F069MM02
3C158AA04
3C158AA14
3C158AB04
3C158AC02
3C158BA07
3C158BB02
3C158BC01
3C158CB01
(57)【要約】
【課題】インサートの傾き検出ができるインサートの傾き検出方法及びインサートの傾き検出装置を提供する。ワーク素材の傾きによるインサートの製品不良の抑制ができるインサート外周研削装置を提供する。
【解決手段】ワーク素材Wの一つの外周側面において、当該外周側面の延びる方向において離間した2つの点を第1計測点Q1及び第2計測点Q2とする。第1計測点Q1及び第2計測点Q2にそれぞれ指向配置される変位センサ44にて、変位センサ44から第1計測点Q1及び第2計測点Q2までの離間距離を計測値として取得する。第1計測点Q1における計測値及び第2計測点Q2における計測値に基づいてインサートの傾きを検出する。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の外周面(以下、側面という)を有して多角形状をなすとともに、厚さ方向に2つの厚さ側側面を有するインサートを挟持する挟持部と、変位センサを有するインサート傾き検出装置によるインサート傾き検出方法であって、
前記インサートに対して前記厚さ側側面を前記挟持部にて挟持する第1ステップと、
前記複数の側面のうち、一つの側面において、当該側面の延びる方向において離間した2つの点を第1計測点及び第2計測点としたとき、前記側面に臨む一対の位置において、前記第1計測点及び前記第2計測点にそれぞれ指向配置される変位センサにて、当該変位センサから前記第1計測点及び前記第2計測点までの離間距離を計測値として取得する第2ステップと、
前記第1計測点における前記計測値及び前記第2計測点における前記計測値に基づいて前記インサートの傾きを検出する第3ステップを含むインサートの傾き検出方法。
【請求項2】
前記変位センサにて前記インサートの芯ズレ計測を行うステップが、前記第1ステップと前記第2ステップの間、または、前記第3ステップの後に存する請求項1に記載のインサートの傾き検出方法。
【請求項3】
前記変位センサは、移動可能に設けられた単一のセンサであって、
前記第1計測点及び第2計測点における前記計測値を取得するに当たり、前記一対の位置間を前記変位センサが移動して行い、
前記インサートの芯ズレ計測を行うに当たり、芯ズレ計測位置に位置させて芯ズレ計測を行うものである請求項2に記載のインサートの傾き検出方法。
【請求項4】
多角形状となる複数の外周側面(以下、側面という)、及び厚さ方向に2つの厚さ側側面を有するインサートに対して前記厚さ側側面を挟持する挟持部と、
前記挟持部に挟持された前記インサートにおいて、前記複数の側面のうち、一つの側面において、当該側面の延びる方向において離間した2つの点を第1計測点及び第2計測点としたとき、
前記側面に臨む一対の位置において、前記第1計測点及び前記第2計測点にそれぞれ指向配置されて、前記第1計測点及び前記第2計測点までの離間距離を計測値として取得する変位センサと、
前記第1計測点における前記計測値及び前記第2計測点における前記計測値に基づいて前記インサートの傾きを演算する演算部を備えるインサートの傾き検出装置。
【請求項5】
前記変位センサは、さらに、前記インサートの芯ズレ計測を行い、
前記演算部は、前記変位センサの前記芯ズレ計測の結果に基づいて芯ズレ量を求める請求項4に記載のインサートの傾き検出装置。
【請求項6】
前記変位センサは、単一のセンサにて構成され、
前記変位センサが、前記第1計測点及び前記第2計測点における前記計測値を取得するに当たり、前記変位センサを前記一対の位置間で移動させるとともに、前記インサートの芯ズレ計測を行うに当たり、前記変位センサを芯ズレ計測位置に位置させる移動機構部を有する請求項5に記載のインサートの傾き検出装置。
【請求項7】
インサートの外周側面(以下、側面という)を研削する切削砥石と、請求項4乃至請求項6のうちいずれか1項に記載のインサートの傾き検出装置を備えるインサート外周研削装置であって、
前記挟持部が、前記インサートの回転位置を可変することと、
前記インサートの傾き検出装置が演算したインサートの傾きを減少すべく、前記挟持部にてインサートを回転させる制御部を備えるインサート外周研削装置。
【請求項8】
多角形状となる複数の外周側面(以下、側面という)を有するインサートが前記側面にて載置されることにより、概ねの前記インサートの芯出しを行う載置部と、前記載置部を前記挟持部へ移動する芯出装置を備え、
前記挟持部は、前記芯出装置の前記載置部に載置された前記インサートを挟持するものである請求項7に記載のインサート外周研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサートの傾き検出方法、インサートの傾き検出装置及びインサート外周研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インサート外周研削装置では、インサートの外周研削、及び必要に応じて外周研削の延長としてランド加工を行っている(特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。また、インサート外周研削装置は、外周側面には、インサート(ワーク素材)の位置を把握するために、ワーク素材を挟持する挟持部のB軸の中心からのワーク素材中心のズレ量を求めている。
【0003】
以下、ワーク素材の外周が正三角形の場合におけるワーク素材の中心のズレ量の計測方法について説明する。
図20及び図21は、ワーク素材WがB軸である挟持部にて挟持された状態を示していて、B軸方向からみた場合の説明図である。
【0004】
図20は、ワーク素材Wが図示しない芯出装置を介して、前記挟持部にて支持された状態を示している。この状態では、同図に示すように、ワーク素材中心Woは、挟持したときのB軸の中心Boとは、一致しているとは限らない。仮に、ワーク素材中心Woが、挟持したときのB軸の中心Boとずれているとする。この時のB軸の回転角を0°とする。また、B軸の中心Boの座標を(X,Z)とし、ワーク素材中心Woの座標を(0,0)とする。ワーク素材中心Woは、素材内接円の中心である。
【0005】
ワーク中心の芯ズレ量を計測する場合、図20の状態から、B軸である挟持部を回転角θ1で回転させることにより、図21図22(a)に示すようにワーク素材Wの一つの外周側面Waを仮想鉛直面に沿って配置する。
【0006】
この状態で変位センサの接触子Pを外周側面Waに当接することにより、前記変位センサは、B軸の中心Boと、外周側面Wa間の計測値M1を取得する。ここで、素材内接円の半径Lと、素材内接円の中心からB軸の中心Boに向かう芯ズレベクトルNを定義する。
【0007】
このとき、計測値M1は、素材内接円の半径Lと、芯ズレベクトルNを、θ1で回転させた時のX要素となり、下記の式で表すことができる。
M1=L-(Nをθ1で回転させたX要素) ……(1)
同様に挟持部を図21からの回転角θ2(>θ1)で回転させることにより、図22(b)に示すようにワーク素材Wの外周側面Waに隣接する外周側面Wbを仮想鉛直面に沿って配置する。
【0008】
この状態で変位センサの接触子Pを外周側面Wbに当接することにより、前記変位センサは、B軸の中心Boと、外周側面Wb間の計測値M2を取得する。
このとき、計測値M2は、素材内接円の半径Lと、芯ズレベクトルNを、θ2で回転させた時のX要素となり、下記の式で表すことができる。
【0009】
M2=L-(Nをθ2で回転させたX要素) ……(2)
続いて挟持部を21からの回転角θ3(>θ2)で回転させることにより、図22(c)に示すようにワーク素材Wの外周側面Wbに隣接する外周側面Wcを仮想鉛直面に沿って配置する。
【0010】
この状態で変位センサの接触子Pを外周側面Wcに当接することにより、前記変位センサは、B軸の中心Boと、外周側面Wc間の計測値M3を取得する。
このとき、計測値M3は、素材内接円の半径Lと、芯ズレベクトルNを、θ3で回転させた時のX要素となり、下記の式で表すことができる。
【0011】
M3=L-(Nをθ3で回転させたX要素) ……(3)
上記(1)式、(2)式及び(3)式の連立方程式に対して、未知数は、X、Z、Lの3変数である。このため、この連立方程式を解くことにより、X方向のワーク中心の芯ズレ量X、及びZ方向のワーク中心の芯ズレ量Zが求められる。
【0012】
ここで、切削砥石は、変位センサの接触子側とは180度反対方向にある。このため、これらのワーク中心の芯ズレ量が求められた後、X方向のワーク中心の芯ズレ量については、180度反転させるとともに、加工するに当たっての必要切り込み量が求められて、前記切削砥石により切削加工される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2007-167960号公報
【特許文献2】特開平4-223853号公報
【特許文献3】特開昭63-306863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記のように、ワーク素材が複数の外周側面(以下、側面という)を有して多角形状をなしている場合、芯ズレ量の測定では、各側面のみの1点計測で行っている。このため、B軸中心からのズレ量は求めてはいるが、ワーク素材の傾きについては、なんら対応していないため、下記の問題がある。
【0015】
現状では、ワーク素材の加工取り代については、ワーク素材の形状及びサイズで一定とはしていない。
図23(a)において、W1は加工研削側の外周側面Waが仮想鉛直面に対して傾きがあるワーク素材である。W2は、傾きがない場合の、加工研削側の外周側面Waが仮想鉛直面となっている理論上のワーク素材の形状サイズを示している。ここでの加工取り代はaで示す領域である。この加工取り代aには余裕があることが分かる。このように、加工取り代が多いワーク素材では、ある程度ワーク素材に傾きがあっても、設計基準に対して、鉛直に加工が行える程度の許容がある。
【0016】
一方、図23(b)に示す加工取り代aが少ないワーク素材W3では、設計基準の理論的な形状サイズのワークW4に対して、傾きがあると、加工が行える程度の許容がない。すなわち、このような場合には、加工精度に影響を及ぼし、製品不良となる問題がある。
【0017】
本発明の目的は、ワーク素材であるインサートの傾き検出ができるインサートの傾き検出方法及びインサートの傾き検出装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、ワーク素材の傾きによるインサートの製品不良の抑制ができるインサート外周研削装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記問題点を解決するために、本発明のインサートの傾き検出方法は、複数の外周面(以下、側面という)を有して多角形状をなすとともに、厚さ方向に2つの厚さ側側面を有するインサートを挟持する挟持部と、変位センサを有するインサート傾き検出装置によるインサート傾き検出方法であって、前記インサートに対して前記厚さ側側面を前記挟持部にて挟持する第1ステップと、前記複数の側面のうち、一つの側面において、当該側面の延びる方向において離間した2つの点を第1計測点及び第2計測点としたとき、前記側面に臨む一対の位置において、前記第1計測点及び前記第2計測点にそれぞれ指向配置される変位センサにて、当該変位センサから前記第1計測点及び前記第2計測点までの離間距離を計測値として取得する第2ステップと、前記第1計測点における前記計測値及び前記第2計測点における前記計測値に基づいて前記インサートの傾きを検出する第3ステップを含むものである(請求項1)。
【0019】
上記の方法によれば、第1計測点における前記計測値及び前記第2計測点における前記計測値に基づいて、インサートの傾きを容易に検出することが可能となる。また、インサートの傾きは、当該インサートの取り代が少ない場合のB軸補正量として、使用することができる。
【0020】
上記方法において、前記変位センサにて前記インサートの芯ズレ計測を行うステップが、前記第1ステップと前記第2ステップの間、または、前記第3ステップの後に存していてもよい(請求項2)。
【0021】
上記方法によれば、単一の変位センサにより、インサートの傾きを検出及び芯ズレ計測ができるため、複数の変位センサを使用する場合に比して、コストを低減できる。
また、上記方法において、前記変位センサは、移動可能に設けられた単一のセンサであって、前記第1計測点及び第2計測点における前記計測値を取得するに当たり、前記一対の位置間を前記変位センサが移動して行い、前記インサートの芯ズレ計測を行うに当たり、芯ズレ計測位置に位置させて芯ズレ計測を行ってもよい(請求項3)。
【0022】
上記方法によれば、芯ズレ計測の変位センサを、インサート傾き検出のための変位センサとして共用できることにより、インサート傾き検出におけるコストを低減することが可能となる。
【0023】
本発明のインサートの傾き検出装置は、多角形状となる複数の外周側面(以下、側面という)、及び厚さ方向に2つの厚さ側側面を有するインサートに対して前記厚さ側側面を挟持する挟持部と、前記挟持部に挟持された前記インサートにおいて、前記複数の側面のうち、一つの側面において、当該側面の延びる方向において離間した2つの点を第1計測点及び第2計測点としたとき、前記側面に臨む一対の位置において、前記第1計測点及び前記第2計測点にそれぞれ指向配置されて、前記第1計測点及び前記第2計測点までの離間距離を計測値として取得する変位センサと、前記第1計測点における前記計測値及び前記第2計測点における前記計測値に基づいて前記インサートの傾きを演算する演算部を備えるものである(請求項4)。
【0024】
上記のインサートの傾き検出装置によれば、第1計測点における前記計測値及び前記第2計測点における前記計測値に基づいて、インサートの傾きが容易に検出される。また、インサートの傾きは、当該インサートの取り代が少ない場合のB軸補正量として、使用することができる。
【0025】
上記インサートの傾き検出装置において、前記変位センサは、さらに、前記インサートの芯ズレ計測を行い、前記演算部は、前記変位センサの前記芯ズレ計測の結果に基づいて芯ズレ量を求めてもよい(請求項5)
上記インサートの傾き検出装置によれば、インサートの傾き検出と芯ズレ計測の両方を行うことができる。
【0026】
上記インサートの傾き検出装置において、前記変位センサは、単一のセンサにて構成され、前記変位センサが、前記第1計測点及び前記第2計測点における前記計測値を取得するに当たり、前記変位センサを前記一対の位置間で移動させるとともに、前記インサートの芯ズレ計測を行う当たり、前記変位センサを芯ズレ計測位置に位置させる移動機構部を有していてもよい(請求項6)。
【0027】
上記構成によれば、芯ズレ計測の変位センサを、インサート傾き検出のための変位センサとして共用できることにより、インサート傾き検出におけるコストを低減することが可能となる。
【0028】
インサートの外周側面(以下、側面という)を研削する切削砥石と、請求項4乃至請求項6のうちいずれか1項に記載のインサートの傾き検出装置を備えるインサート外周研削装置では、前記挟持部が、前記インサートの回転位置を可変することと、前記インサートの傾き検出装置が演算したインサートの傾きを減少すべく、前記挟持部にてインサートを回転させる制御部を備えることが好ましい(請求項7)。
【0029】
上記インサート外周研削装置によれば、インサートの傾きを減少させるため、インサートの傾きによる加工精度の影響を軽減できることとなる。
上記インサート外周研削装置において、多角形状となる複数の外周側面(以下、側面という)を有するインサートが前記側面にて載置されることにより、概ねの前記インサートの芯出しを行う載置部と、前記載置部を前記挟持部へ移動する芯出装置を備え、前記挟持部は、前記芯出装置の前記載置部に載置された前記インサートを挟持することが好ましい(請求項8)。
【0030】
上記インサート外周研削装置によれば、概ねの芯出しが行われたインサートに対して、インサートの傾き検出が行われていて、インサートの傾きがある場合に、インサートの傾きを減少させるため、インサートの傾きによる加工精度の影響を軽減できることとなる。
【発明の効果】
【0031】
本発明のインサートの傾き検出方法及びインサートの傾き検出装置によれば、ワーク素材であるインサートの傾き検出ができる効果がある。
また、本発明のインサート外周研削装置によれば、ワーク素材の傾きによるインサートの製品不良の抑制ができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施形態のインサート外周研削装置の概略平面図である。
図2】本発明の一実施形態のインサート外周研削装置の電気ブロック図である。
図3】インサート外周研削装置の加工室の要部拡大図である。
図4】インサート外周研削装置の加工室の要部拡大図である。
図5】インサート外周研削装置の移動機構部の正面図である。
図6】インサート外周研削装置の研削加工のフローチャートである。
図7】計測装置のフローチャートである。
図8】(a)~(g)は、移動機構部の動作工程の説明図である。
図9】インサート外周研削装置の加工工程における芯出装置の待機状態の説明図である。
図10】インサート外周研削装置の加工工程における芯出装置の水平軸移動の説明図である。
図11】インサート外周研削装置の加工工程における芯出装置の垂直軸移動の説明図である。
図12】インサート外周研削装置の芯出装置のブロックにワークを載せる工程の説明図である。
図13】インサート外周研削装置の芯出装置の退避工程の説明図である。
図14】インサート外周研削装置のB軸旋回の説明図である。
図15】変位センサの接触子の一点計測時の説明図である。
図16】変位センサの接触子の二点計測時の説明図である。
図17】(a)は、ロボットハンドによりワーク素材を把持した際、ワーク姿勢が安定した状態の説明図、(b)及び(c)はロボットハンドによりワーク素材を把持した際、ワーク姿勢が不安定となる状態の説明図である。
図18】他の実施形態のインサート外周研削装置の研削加工のフローチャートである。
図19】他の実施形態において、菱形のインサートの二点計測の説明図である。
図20】芯ズレ量の説明図である。
図21】芯ズレ量の測定の説明図である。
図22】(a)~(c)は、芯ズレ量の測定において、取得するインサートの各辺の計測値の説明図である。
図23】(a)、(b)は、それぞれ取り代が多い場合の例と、少ない場合の例の説明図である。
図24】他の実施形態のインサート外周研削装置における芯出装置を省略した例の説明図である。
図25】(a)~(d)は、インサートの外形形状の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(第1実施形態)
以下、本発明にかかるインサートの傾き検出方法、インサートの傾き検出装置19及びインサート外周研削装置10の第1実施形態を図1図17(c)を参照して説明する。
【0034】
本実施形態の傾き検出方法、傾き検出装置19及びインサート外周研削装置10は、図25(a)の正三角形、図25(b)の正方形、及び図25(d)に示す平行四辺形等のように、図25(c)の菱形を除く多角形状をなすインサートに対して適用可能である。以下では、この適用可能な代表例として、インサート(ワーク素材W)か正三角形の場合について説明する。
【0035】
<全体構成>
図1に示すようにインサート外周研削装置10は、数値制御研削盤である。インサート外周研削装置10は、大きく分けて、Y方向の中央に加工室Kと、加工室Kを基準に反Y方向に位置するローダー室Rと、Y方向に位置する制御室Tを備える機械本体12を有する。なお、本明細書では、Y方向を左右方向といい、X方向を前後方向といい、Z方向を上下方向ということがある。
【0036】
機械本体12の加工室K内には、ワークヘッド部14と、ワークヘッド部14で挟持されたインサートを研削する砥石台18とが収納されている。ローダー室Rには、ワークヘッド部14にワークとしてのインサートを供給するとともに加工後のインサートを搬出する供給搬出部16が収納されている。制御室Tには、制御盤13が収納されている。なお、加工前のインサートをワーク素材ということがある。
【0037】
<加工室K>
ワークヘッド部14は、図示しないテーブル上に機構カバーケース15が固定されている。機構カバーケース15の外側面には、インサートの厚さ方向に位置する一対の厚さ側側面を挟持するテールストック20と、ヘッドストック21を備えている。
【0038】
テールストック20は、ヘッドストック21に対して挟持方向に進むことにより、インサートをヘッドストック21と協働して挟持する。ヘッドストック21は、その中心軸であるB軸回りで回転可能であり、挟持したインサートを回転させる。テールストック20と、ヘッドストック21は、挟持部を構成する。
【0039】
ワークヘッド部14の前記テーブル(図示せず)は、テールストック20及びヘッドストック21のクランプ中心(B軸の中心)を上下方向に通過するZ軸を中心としてC軸周りで旋回可能となっている。図1に示すように機構カバーケース15内には、芯出装置17及びインサートの傾き検出装置19が設けられている。
【0040】
<芯出装置17>
図9図15に示すように、芯出装置17は、機構カバーケース15の内壁面に固定されて上下方向に延出する支持部材30と、移動アーム32を有する。なお、説明の便宜上、図9図15では、図面の簡略化のため、図3及び図4に示す開閉蓋27は省略している。
【0041】
芯出装置17は、公知の構造であるため、簡単に説明する。移動アーム32は、支持部材30に対して、上下方向に延びる鉛直軸、及び上下方向とB軸に対して直交する方向に延びる水平軸に沿って移動可能となっている。すなわち、芯出装置17は、移動アーム32を上下方向に駆動するエアシリンダ等の駆動源(図示しない)を有する。これにより、移動アーム32は、図9図10、及び図13図15に示す下限位置と、図11、及び図12に示す上限位置間を移動可能である。
【0042】
また、芯出装置17は、上下方向とB軸に対して直交する方向に移動アーム32を駆動するエアシリンダ等の駆動源(図示しない)を有する。これにより、移動アーム32は、この方向において、図9図13図14及び図15の機構カバーケース15内に収納された収納位置と、図10図12に示す、機構カバーケース15の開口部15aから突出した突出位置間を移動可能である。図11に示すように移動アーム32が突出位置に位置し、かつ上限位置に位置する状態を、以下、セット状態という。
【0043】
なお、開口部15aは、図3に示すように、開閉蓋27が設けられている。開閉蓋27は、移動アーム32が収納位置と突出位置間を移動する際は図示しない開閉駆動機構により開口部15aを開放する。また、移動アーム32が収納位置に保持される場合は、図4に示すように前記図示しない開閉駆動機構により、開口部15aを閉鎖する。
【0044】
移動アーム32の先端部は、上向きL字形状になっていて、その上端には、載置部としての芯出ブロック34が着脱自在に取付けられている。芯出ブロック34の上面には、凹部35が形成されている。凹部35は、仮想鉛直面に対して、相互に反対方向に30度の傾斜角度を有する斜面で形成されている。すなわち、両斜面間の交差角度は、60度となっている。凹部35は、移動アーム32が前記セット状態で、ワーク素材の外周側面が両斜面に接して載置された際、当該ワーク素材の内接円の中心の位置がB軸の中心に概ね合うように当該ワーク素材の外周側面の形状に応じて凹設されている。
【0045】
また、ワーク素材が凹部35に上述のように芯出ブロック34に載置された場合、ワーク素材の厚さ側側面が両ストックにそれぞれ相対して配置可能となっている。例えば、正三角形状のインサート(ワーク素材)の場合は、凹部35はV状に凹設されている。また、正方形等のn(>3)角形状のインサートの場合は、その外周側面の形状を受け入れ可能な形状に凹設されている。なお、受け入れ可能とは、必ずしも、インサート(ワーク素材W)の外周側面が凹部35の内面の形状に合致するとは限らないことを意味している。ワーク素材Wの外周側面が精確な平面等に形成されているとは限らないためである。
【0046】
<インサートの傾き検出装置19>
図5に示すように、インサートの傾き検出装置19は、変位センサ44と、変位センサ44を上下移動させる移動機構部39を有する。移動機構部39は、機構カバーケース15の内壁面に対して上下動自在に支持された上下動部材40と、その上端に固定された当接部材45と、上下動部材40を上下方向に駆動する上下可動用エアシリンダ43を含む。
【0047】
変位センサ44は、取付部材41及びブラケットを介して上下動部材40に固定されている。変位センサ44は、接触式であって、進退可能な接触子Pを有する。
当接部材45の下面は、上下動部材40と機構カバーケース15の内壁面に固定された上下可動用エアシリンダ43のロッド43aに連結されている。これにより、上下動部材40及び当接部材45は一体に上下動する。
【0048】
当接部材45の上方において、一対のガイド部材46、47が互いにB軸と平行となるように、かつ相互に離間して機構カバーケース15に対して固定されている。ガイド部材46、47間には、ガイド部材46、47により、B軸と平行にガイドされる原点用ストッパブロック48が配置されている。
【0049】
原点用ストッパブロック48は、機構カバーケース15に固定されたストッパ用エアシリンダ49のロッド50に一体に固定されている。原点用ストッパブロック48は、ストッパ用エアシリンダ49の作動により、ロッド50が伸張した図5に示す干渉位置と、図8(c)に示すロッド50が退縮する非干渉位置間を移動可能となる。
【0050】
原点用ストッパブロック48が干渉位置に位置する際は、図5図8(a)に示すように、上動した上下動部材40と一体の当接部材45が原点用ストッパブロック48に干渉する。このとき、変位センサ44は、図8(a)に示すように、B軸の中心と交差するように配置される。また、変位センサ44は、図8(a)に示す原点位置において、後述する一点計測(芯ズレ計測)を行うことが可能となっている。原点位置は、芯ズレ計測位置に相当する。
【0051】
ここで、変位センサ44の原点位置は、上下動部材40が原点位置に位置した時の位置である。変位センサ44の上方位置は、後述する上下動部材40が上方位置に位置した時の位置である。変位センサ44の下方位置は、後述する上下動部材40が下方位置に位置した時の位置である。
【0052】
また、機構カバーケース15には、当接部材45の位置を検出する位置センサ51が固定されている。位置センサ51の検出機能については後述する。原点用ストッパブロック48が非干渉位置に位置する際は、上動した上下動部材40と一体の当接部材45は原点用ストッパブロック48に対して干渉しないものとなっている。
【0053】
図5に示すように、上下動部材40の移動軌跡領域の付近に位置するように、上動ストッパ52及び下動ストッパ53が機構カバーケース15に固定されている。上動ストッパ52及び下動ストッパ53は、例えば、機構カバーケース15の内壁面に固定した固定部材等に対して螺合するボルト等により構成することにより、上下動部材40に対して当接する端部の上下位置の位置調節が可能であることが好ましい。
【0054】
上動ストッパ52は、上下動部材40に設けられたストッパ当接部40aが当接することにより、上下動部材40の上方位置を決定するためのものである。この上方位置に上下動部材40が位置する際、干渉位置に位置していたときの原点用ストッパブロック48が占有していた領域内に当接部材45の進入が許容される。なお、図8(a)~図8(g)では、図が略体図となっていて、ストッパ当接部40a、当接部材45の下端の一部、及びガイド部材47等が省略されていることに留意されたい。ストッパ当接部40aが省略されている代わりに、その機能を上下動部材40の肩部が代替しているものとして理解されたい。
【0055】
下動ストッパ53は、上下動部材40の下端が当接することにより、上下動部材40の下方位置を決定するためのものである。なお、上方位置及び下方位置は、上下動部材40が、原点位置に位置したときを基準にして、上方及び下方を定義している。
【0056】
(変位センサ44の位置の定義)
ここで、上下動部材40と一体に移動する変位センサ44は、上下動部材40が下方位置及び上方位置に位置した場合、それぞれ第1計測位置及び第2計測位置にそれぞれ位置するという。
【0057】
変位センサ44が第1計測位置及び第2計測位置にそれぞれ位置する際、挟持部に挟持されたインサートの外周側面における第1計測点及び第2計測点の計測が可能となっている。すなわち、上下動部材40が下方位置及び上方位置に位置するように、下動ストッパ53及び上動ストッパ52における上下動部材40に対して当接する端部の上下位置の位置調節が予め施されている。
【0058】
また、変位センサ44は、第1計測位置及び第2計測位置に位置した際、その接触子Pが、機構カバーケース15の内壁に透設されたセンサ用開口部15b(図15参照)から外部に突出することが可能である。
【0059】
<砥石台18>
また、砥石台18は、テールストック20とヘッドストック21に挟持されたインサートと対向するように配置されていて、砥石軸(図示しない)に装着された切削砥石22を備えている。前記砥石軸は、切削砥石22が砥石軸を中心として回転する。
【0060】
砥石台18は、図1に示すように、水平面内において前後のX軸方向及び左右のY軸方向に移動するX-Yスライド機構(図示しない)を備えている。前記砥石軸は、このX-Yスライド機構により、X軸方向及びY軸方向に移動可能となっている。
【0061】
<ローダー室R>
図1に示す供給搬出部16は、パレットストッカ23と、パレット搬送装置24と、多関節ロボット26及び図示しない搬出装置を備えている。パレットストッカ23は、複数のワーク素材であるインサートが載置されたワークパレットを貯留する。パレット搬送装置24は、パレットストッカ23からワークパレット25を搬送する。
【0062】
多関節ロボット26は、図2に示すロボット制御装置28により制御されることにより搬送されたワークパレット25上のインサートをロボットハンドで把持した後、芯出装置17の芯出ブロック34の凹部35に載置する。また、多関節ロボット26は、図2に示すロボット制御装置28により加工後のインサートをロボットハンド26a(図12参照)で把持した後、図示しない搬出装置上のワークパレットに載置する。前記搬出装置は、加工後のインサートを載せたワークパレットを、ローダー室Rから搬出する。
【0063】
<インサート外周研削装置10の電気的構成>
次に、インサート外周研削装置10に関する電気的構成を図2を参照して説明する。
制御盤13は、図示しない動力回路及び制御部13aを備えている。前記制御部13aは、例えば、コンピュータ等を含む。以下の説明では、制御部13aによる制御、及び動力回路のモータ等への電力供給及び電力供給停止を含めて、制御部13aによる制御または指令という。
【0064】
制御部13aには、X軸モータ58、Y軸モータ60及び砥石駆動モータ62が電気的に接続されている。制御部13aは、X軸モータ58、及びY軸モータ60の制御により、前記X-Yスライド機構(図示しない)を作動させる。また、制御部13aは、砥石駆動モータ62の制御により、切削砥石22を回転させる。
【0065】
制御部13aには、テールストック20及びヘッドストック21の駆動モータ64が電気的に接続されている。制御部13aは、テールストック20の制御により、ワークとしてのインサートをヘッドストック21と協働して挟持を保持するとともに、挟持の保持を解除する。制御部13aは、駆動モータ64の制御により、挟持部に挟持されたワークの回転位置を変化させる。
【0066】
制御部13aには、C軸モータ66が電気的に接続されている。制御部13aは、C軸モータ66の制御により、ワークヘッド部14の前記テーブル(図示せず)をC軸の周りで旋回させる。制御部13aには、芯出装置17、パレット搬送装置24及びロボット制御装置28に電気的に接続されている。
【0067】
芯出装置17は、制御部13aの制御により、移動アーム32の下限位置と上限位置間の制御、並びに、収納位置と突出位置間を移動する。また、制御部13aには、開閉駆動機構(図示しない)が電気的に接続されている。制御部13aは、前記開閉駆動機構(図示しない)にて、図3及び図4に示す開閉蓋27を開閉制御する。
【0068】
制御部13aには、計測装置56が電気的に接続されている。計測装置56は、上下可動用エアシリンダ43、ストッパ用エアシリンダ49、位置センサ51及び変位センサ44が電気的に接続されている。
【0069】
計測装置56は、コンピュータを備えている。制御部13aの指令に基づく計測装置56の制御により、上下可動用エアシリンダ43及びストッパ用エアシリンダ49が駆動される。また、変位センサ44は、制御部13aの前記指令に基づく計測装置56の制御により、ワークとの間の離間距離の計測を行う。
【0070】
位置センサ51は、原点用ストッパブロック48に当接部材45が当接したとき、ストッパ当接部40aが上動ストッパ52に当接したとき、及び上下動部材40の下端が下動ストッパ53に当接したときの当接部材45の上下位置を検出するセンサである。具体的には、位置センサ51は、距離センサから構成されている。
【0071】
当接部材45の前記上下位置が変わる毎に当接部材45の位置センサ51に対向する側面は、位置センサ51との離間距離が相互に異なるように斜状に形成されている。なお、図5及び図8(a)~(g)では、実物とは縮小して図示されているため、その傾斜は描かれていない。
【0072】
位置センサ51は、当接部材45が原点用ストッパブロック48に当接した際、すなわち、原点に位置した際、その旨の原点位置信号を計測装置56に出力する。位置センサ51は、ストッパ当接部40aが上動ストッパ52に当接した際、上方位置信号を計測装置56に出力する。位置センサ51は、上下動部材40の下端が下動ストッパ53に当接した際、下方位置信号を計測装置56に出力する。これにより、計測装置56は、変位センサ44の上方位置、原点位置、及び下方位置の位置検出が可能である。
【0073】
また、計測装置56は、変位センサ44から入力したワークにおける第1計測点及び第2計測点との離間距離を計測値として、これらの計測値に基づいてワーク(インサート)の傾きを演算する。計測装置56は、この演算結果を、制御部13aに出力する。計測装置56は、インサートの傾きを演算する演算部に相当する。
【0074】
(実施形態の作用)
上記のように構成されたインサートの傾き検出装置19及びインサート外周研削装置10の作用を説明する。
【0075】
図6は、インサート外周研削装置10の制御部13aが実行するインサート(ワーク素材)の研削加工の数値制御プログラムのフローチャートである。
(S10:ワークローディング)
S10では、ワークローディングが行われる。なお、図1に示すように、挟持部は切削砥石22に対して正対したC軸0°の状態となっている。この状態で、具体的には、制御部13aからの指令に基づくロボット制御装置28の制御により、図1に示す多関節ロボット26が、ワークパレット25からインサートをロボットハンド26a(図12参照)で把持して加工室Kへ搬送する。
【0076】
(S20:芯出装置ON)
S20は、前記ワークパレット25からインサートを加工室K側へ搬送する間の処理である。制御部13aは、図9に示す待機状態から、芯出装置17を制御することにより、図10図11図3)の順に移動アーム32を移動させる。図9の待機状態では、移動アーム32が下限位置及び収納位置に位置する。
【0077】
このステップでは、図9の待機状態から図10の状態に遷移する前に、図3に示す開閉蓋27は図示しない開閉駆動機構が制御部13aにより制御されることにより、開口部15aが開放される。図10に示すように、制御部13aの制御により、移動アーム32は突出位置に移動する。次の図11では、制御部13aの制御により、移動アーム32は上限位置に移動する。
【0078】
図11及び図3に示すように移動アーム32は、上限位置に位置すると、セット状態となる。このセット状態で、芯出ブロック34の凹部35内に、ヘッドストック21のB軸の中心が通過するように配置される。
【0079】
(S30)
S30では、図12に示すようにロボット制御装置28の制御により、多関節ロボット26のロボットハンド26aは、ワーク素材Wを芯出ブロック34の凹部35に載置する。このため、本実施形態では、三角形のワーク素材Wの1つの角部が、下向きに配置されて、変位センサ44に対向する1つの外周側面は、B軸と平行に配置される仮想鉛直面に対して下向きに概ね30度傾いて配置される。
【0080】
(S40)
S40では、制御部13aの制御により、テールストック20は、ヘッドストック21に対して挟持方向に進むことにより、ワーク素材Wをヘッドストック21と協働して挟持する。また、多関節ロボット26のロボットハンド26aは、ロボット制御装置28の制御により、ロボットハンド26aをローダー室R内に退避する。
【0081】
また、制御部13aの制御により、芯出装置17の移動アーム32は下限位置に移動した後、図13に示すように、収納位置に移動する。この後、図4に示す開閉蓋27は図示しない開閉駆動機構が制御部13aにより制御されることにより、開口部15aが閉じられる。
【0082】
また、図14に示すように、制御部13aのヘッドストック21の駆動モータ64に対する制御により、挟持部に挟持されたワーク素材WをB軸の周りで+側に30度回転させる。このことにより、ワーク素材Wにおける変位センサ44に対向する1つの外周側面は前記仮想鉛直面に含まれるように配置される。
【0083】
(S50:傾き計測)
S50では、制御部13aの指令により、計測装置56がON(起動)されることにより、計測装置56による傾き計測処理がワーク素材の外周側面の形状に合わせて行われる。
【0084】
以下、図7のフローチャート及び図8(a)~図8(g)を参照して計測装置56による傾き計測処理を説明する。
(S51)
S51では、計測装置56は、上下可動用エアシリンダ43を制御することにより、図8(a)に示す変位センサ44が原点位置に位置している状態から、図8(b)に示す上下動部材40を下動ストッパ53に当接する下方位置まで下動させる。
【0085】
(S52)
S52では、図8(b)に示す状態で、計測装置56は、図15及び図16に示すように、変位センサ44の接触子Pを機構カバーケース15の外部に突出させて、変位センサ44に対向するワーク素材Wの外周側面に当接させる。
【0086】
このときの接触子Pが当接した外周側面の部位が、第1計測点Q1に相当する。ここで、変位センサ44は、第1計測点Q1に対して指向配置されていることになる。
なお、図16では、第1計測点Q1に当接した接触子Pを、他の計測点に当接した接触子と区別するために、P1の符号も付す。
【0087】
そして、接触子Pのワーク素材Wの外周側面に対する当接における接触子Pのストローク量が、変位センサ44と第1計測点Q1との離間距離に相当するとともに計測値Mdとなる。変位センサ44は、取得した第1計測点Q1での前記計測値Mdを計測装置56に出力するとともに、計測終了後には接触子Pを、計測前の位置に戻す。
【0088】
(S53)
S53では、図8(c)に示すように、計測装置56は、ストッパ用エアシリンダ49を制御して、原点用ストッパブロック48を非干渉位置に位置させる。
【0089】
(S54)
S54では、計測装置56は、上下可動用エアシリンダ43を制御することにより、図8(d)に示すように上下動部材40を上動ストッパ52に当接する上方位置まで上動させる。
【0090】
(S55)
S55では、図8(d)に示す状態で、計測装置56は、図16に示すように、変位センサ44の接触子Pを機構カバーケース15の外部に突出させて、変位センサ44に対向するワーク素材Wの外周側面に当接させる。
【0091】
このときの接触子Pが当接した外周側面の部位が、第2計測点Q2に相当する。ここで、変位センサ44は、第2計測点Q2に対して指向配置されていることになる。
なお、図16では、第2計測点Q2に当接した接触子Pを、他の計測点に当接した接触子と区別するために、P2の符号も付す。そして、接触子Pのワーク素材Wの外周側面に対する当接における接触子Pのストローク量が、変位センサ44と第2計測点Q2との離間距離に相当するとともに計測値Muとなる。
【0092】
変位センサ44は、取得した第2計測点Q2での前記計測値Muを計測装置56に出力するとともに、計測終了後には接触子Pを、計測前の位置に戻す。計測装置56は、第1計測点Q1及び第2計測点Q2におけるそれぞれ計測値Md,Muに基づいて、ワーク素材Wの傾きを演算する。
【0093】
(ワーク素材Wの傾きの演算)
ワーク素材Wの傾きは、下記の演算式(4)で、運算される。
(Mu-Md)=J・tan(γ-θ)……(4)
ここで、Jは、変位センサ44の上方位置と下方位置間の距離である。θは、変位センサ44が、上方位置と下方位置間を移動するときの仮想鉛直面E1に対する斜交の角度である。γは、ワーク素材Wの計測対象である外周側面と、仮想鉛直面E2に対する傾きである。仮想鉛直面E1と、仮想鉛直面E2とは平行である。また、Jとθは、キャリブレーションにより既知である。
【0094】
上記演算式(4)に基づいて、傾きγが演算されると、計測装置56は、制御部13aに傾きγを出力する。
(S56)
S56では、計測装置56は、上下可動用エアシリンダ43を制御することにより、図8(e)に示すように上下動部材40を下動ストッパ53に当接する下方位置まで下動させる。
【0095】
(S57)
S57では、計測装置56は、図8(f)に示すように、ストッパ用エアシリンダ49を制御して、原点用ストッパブロック48を干渉位置に位置させる。
【0096】
(S58)
S58では、計測装置56は、上下可動用エアシリンダ43の制御により、図8(g)に示すように上下動部材40を上動ストッパ52に当接する上方位置まで上動させる。この結果、上下動部材40は、図8(a)に示すように変位センサ44を原点位置に位置させる状態に復帰する。
【0097】
(S60)
S50が終了すると、図6に示すS60では、計測装置56から入力された傾きγ(≠0)を解消すべく、制御部13aは、ヘッドストック21の駆動モータ64を制御駆動する。すなわち、挟持部に挟持されたワーク素材Wの傾きγ(≠0)がB軸を中心に-側に傾いている場合、ワーク素材Wは、+側にγ分回転される。挟持部に挟持されたワーク素材Wの傾きγ(≠0)がB軸を中心に+側に傾いている場合、ワーク素材Wは、-側にγ分回転される。
【0098】
また、傾きγが0°の場合には、ワーク素材WのB軸の周りの回転補正はなされず、ワーク素材Wの回転位置が保持される。このようにして、ワーク素材Wにおける変位センサ44に対向する1つの外周側面は前記仮想鉛直面E2に含まれるように配置される。
【0099】
(S70:計測装置ON、芯ズレ計測)
S70では、制御部13aの指令により、計測装置56がON(起動)されることにより、計測装置56による芯ズレ計測処理がワーク素材の外周側面の形状に合わせて行われる。なお、芯ズレ計測では、変位センサ44は、図8(a)に示す原点位置に位置した状態で、一点計測が実行される。この芯ズレ計測は、図22(a)~図22(c)に示すように、背景技術で説明したと芯ズレ計測と同様に行われる。
【0100】
図22(a)~図22(c)に示すように、ワーク素材Wの外周側面Wa、Wb、Wcに対して、接触子Pを当接することにより、背景技術で説明したように離間距離をそれぞれ計測する。なお、外周側面Waについての前記離間距離の測定後は、制御部13aは、ヘッドストック21の駆動モータ64を制御駆動することにより、ワーク素材Wの外周側面Wb、Wcをそれぞれ変位センサ44に対向させるように配置するものとする。
【0101】
そのため、図20図21においては、変位センサ44が原点位置に位置した際に、機構カバーケース15の外部に突出する接触子Pに対してP0の符号も付す。図16において、Q0は、接触子P0が当接する外周側面の部位である。
【0102】
X方向のワーク中心の芯ズレ量X、及びZ方向のワーク中心の芯ズレ量Zの演算は、背景技術で説明した通りであり、この演算が計測装置56で行われる。X方向のワーク中心の芯ズレ量X、及びZ方向のワーク中心の芯ズレ量Zである演算結果が求まると、計測装置56は、制御部13aにその演算結果を、出力する。
【0103】
(S80:外周加工)
S80では、制御部13aにより、ワーク素材Wに対する外周側面に対する外周加工が行われる。
【0104】
この場合、制御部13aの数値制御により、砥石駆動モータ62によって切削砥石22を回転させるとともに、X軸モータ58、及びY軸モータ60によって前記X-Yスライド機構(図示しない)を作動させる。この数値制御では、予め設定された前記数値制御プログラムに基づいて行われる。
【0105】
本実施形態の前記数値制御プログラムは、傾きがない場合のワーク素材Wに対して、前記X方向のワーク中心の芯ズレ量X、及びZ方向のワーク中心の芯ズレ量Zに基づいて、設計基準の理論的な形状サイズとの差である取り代が設定される。本実施形態では、設計基準の理論的な形状サイズは、三角形状のインサートにおける理論的な形状サイズである。
【0106】
この数値制御プログラムにより、ワーク素材Wが設計基準の理論的な形状サイズに合うようにワーク素材Wの外周側面の研削(加工)が行われる結果、前記取り代分が除去される。
【0107】
(S90)
S80が終了すると、制御部13aは、S70と同様の一点計測が、ワーク素材Wの外周側面のうちの一辺に対して実行される。この一点計測は、S80での加工後のワーク素材Wの大きさが設計基準の理論的な形状サイズとなっているかを確認するための計測である。それぞれのワーク素材の外周側面の一辺と変位センサ44の離間距離が測定されることにより、当該測定距離と、前記芯ズレ量に基づいて、ワーク素材Wの大きさが設計基準の理論的な形状サイズとなっているか否かが判定できる。
【0108】
S80での加工後のワーク素材Wの大きさが設計基準の理論的な形状サイズとなっていない場合には、制御部13aは、「NG」判定をした後、S80にリターンする。S80での加工後のワーク素材Wの大きさが設計基準の理論的な形状サイズとなっている場合には、制御部13aは、「OK」判定をした後、S95に移行する。
【0109】
(S95)
S95では、ワーク素材Wに対して切削砥石22によるランド加工の研削が制御部13aの制御により実行される。
【0110】
(S100:ワークアンローディング)
S100では、ワークアンローディングが行われる。
次に、制御盤13からの指令に基づくロボット制御装置28の制御により、図1に示す多関節ロボット26が、加工後のワーク素材Wをロボットハンド26aにて把持する。この後、制御部13aは、テールストック20に反挟持方向へ移動させることにより、挟持部によるワーク素材Wの挟持を解除する。
【0111】
この後、ロボット制御装置28の制御により、多関節ロボット26は、ロボットハンド26aにて把持した加工後のワーク素材W(インサート)をローダー室R内の図示しない搬出装置上のワークパレットに載置する。前記搬出装置は、加工後のインサートを載せたワークパレットを、ローダー室Rから搬出する。
【0112】
(S110)
S110では、制御部13aは、次に加工するワーク素材Wがあるか、否かを、図示しないワーク加工カウンタにて確認する。次のワーク素材がある場合は、S10にリターンする。次のワーク素材がない場合は、このインサート(ワーク素材)の研削加工の数値制御プログラムを終了する。
【0113】
本実施形態では、下記の特徴を有する。
(1)本実施形態のインサートの傾き検出方法は、複数の側面を有して多角形状をなすとともに、厚さ方向に2つの厚さ側側面を有するインサートを挟持する挟持部と、変位センサを有するインサート傾き検出装置によるインサート傾き検出方法である。前記インサート傾き検出方法は、2つの厚さ側側面を有する三角形状のインサート(ワーク素材W)に対して厚さ側側面を挟持する第1ステップを有する。また、前記検出方法は、前記ワーク素材Wの一つの外周側面において、当該外周側面の延びる方向において離間した2つの点を第1計測点Q1及び第2計測点Q2とする。前記検出方法は、第1計測点Q1及び第2計測点Q2にそれぞれ指向配置される変位センサ44にて、変位センサ44から第1計測点Q1及び第2計測点Q2までの離間距離を計測値として取得する第2ステップを有する。また、前記検出方法は、第1計測点Q1における計測値及び第2計測点Q2における計測値に基づいてインサートの傾きを検出する第3ステップを有する。
【0114】
また、インサートの傾き検出装置19は、2つの厚さ側側面を有する三角形状のインサート(ワーク素材W)に対して厚さ側側面を挟持する挟持部(テールストック20、ヘッドストック21)を有する。また、インサートの傾き検出装置19は、第1計測点Q1及び第2計測点Q2にそれぞれ指向配置されて、第1計測点Q1及び第2計測点Q2までの離間距離を計測値として取得する変位センサ44を有する。また、インサートの傾き検出装置19は、第1計測点Q1における計測値及び第2計測点Q2における計測値に基づいてインサートの傾きを演算する計測装置56(演算部)を備える。
【0115】
この結果、前記方法及びインサートの傾き検出装置19により、第1計測点及び第2計測点における両計測値に基づいて、インサートの傾きを容易に検出することが可能となる。また、インサートの傾きは、当該インサートの取り代が少ない場合のB軸補正量として、使用することができる。
【0116】
(2)本実施形態のインサートの傾き検出方法は、変位センサ44にてインサートの芯ズレ計測を行うステップが、第3ステップの後に存する。
また、本実施形態のインサートの傾き検出装置は、前記変位センサは、さらに、前記インサートの芯ズレ計測を行い、前記演算部は、前記変位センサの前記芯ズレ計測の結果に基づいて芯ズレ量を求める。
【0117】
これにより、インサートの傾き検出と芯ズレ計測の両方を行うことができる。
(3)本実施形態のインサートの傾き検出方法及びインサートの傾き検出装置19では、前記変位センサは、移動可能に設けられた単一のセンサが第1計測点Q1及び第2計測点Q2における計測値を取得するに当たり、一対の位置間を移動して行う。そして、インサートの芯ズレ計測を行うに当たり、芯ズレ計測位置に位置させて芯ずれ計測を行う。
【0118】
この結果、芯ズレ計測の変位センサを、インサート傾き検出のための変位センサとして共用できることにより、インサート傾き検出におけるコストを低減することが可能となる。
【0119】
(4)本実施形態のインサートの傾き検出方法及びインサートの傾き検出装置19は、変位センサ44を、単一のセンサとしている。そして、インサートの傾き検出方法及びインサートの傾き検出装置19は、第1計測点Q1及び第2計測点Q2における離間距離を計測するに当たり、移動機構部39が変位センサ44を移動して行うものである。
【0120】
この結果、インサートの傾き検出方法及びインサートの傾き検出装置によれば、単一の変位センサにより、インサートの傾きを検出できるため、複数の変位センサを使用する場合に比して、コストを低減できる。
【0121】
(5)本実施形態のインサート外周研削装置は、インサートの外周側面を研削する切削砥石22と、上記インサートの傾き検出装置19を備える。
インサート外周研削装置の挟持部(テールストック20、ヘッドストック21)は、インサートの回転位置を可変するようにしている。そして、インサートの傾き検出装置19が演算したインサートの傾きを減少すべく、挟持部(テールストック20、ヘッドストック21)にてインサートを回転させる制御部13aを備えている。
【0122】
従来は、インサートの傾きがあると、加工が行える程度の許容がなくて、加工精度に影響を及ぼし、製品不良となる問題があるが、本実施形態によれば、インサートの傾きが減少、またはなくなる。この結果、インサートの傾きによる加工精度の影響を軽減できる。
【0123】
(6)本実施形態のインサート外周研削装置10は、三角形状となる複数の外周側面を有するインサートが外周側面にて載置されることにより、概ねのインサートの芯出しを行う載置部(芯出ブロック34)を備える。また、インサート外周研削装置10は、載置部(芯出ブロック34)を挟持部(テールストック20、ヘッドストック21)へ移動する芯出装置17を備える。挟持部(テールストック20、ヘッドストック21)は、芯出装置17の載置部(芯出ブロック34)に載置されたインサートを挟持する。
【0124】
この結果、概ねの芯出しが行われたインサートに対して、インサートの傾き検出が行われていて、インサートの傾きがある場合に、インサートの傾きを減少させるため、インサートの傾きによる加工精度の影響を軽減できる。
【0125】
なお、図17(a)に示すように、ワーク素材Wの両厚さ側側面が平行で平面の場合、ロボットハンド26aにワーク素材Wが把持されても、ロボットハンド26aに両厚さ側側面が平行となる。このため、ワーク姿勢が安定して、載置部(芯出ブロック34)に対してロボットハンド26aにより、ワーク素材Wを載置できる。
【0126】
一方、図17(b)及び図17(c)に示すように、一方の厚さ側側面に凹部Dがあるワーク素材Wの場合、ロボットハンド26aにワーク素材Wが把持されると、ロボットハンド26aに厚さ側側面は平行でなくなる。このような状態の場合であっても、芯出装置の載置部(芯出ブロック34)にワーク素材Wを載せることで、ワーク姿勢が安定した状態となり、このワーク姿勢が安定した状態を確保したままで、挟持部により挟持することができる。
【0127】
(第2実施形態)
次に、インサートの傾き検出方法、インサートの傾き検出装置19及びインサート外周研削装置10の第2実施形態を、図6図18及び図19を参照して説明する。本実施形態のインサートの傾き検出方法、インサートの傾き検出装置19及びインサート外周研削装置10は、図25(c)の菱形をなすインサート(ワーク素材W)を対象としたものである。菱形をなすインサート(ワーク素材W)は、図25(c)に示すように、α(<90度)の角度を有する一対のコーナーと、β(>90度)の角度を有する一対のコーナーを備える。
【0128】
<ハード構成において、異なる事項>
なお、インサートの傾き検出装置19及びインサート外周研削装置10のハード構成において、第1実施形態と異なる事項は、芯出ブロック34の凹部35の形状である。
【0129】
第1実施形態の凹部35は、仮想鉛直面に対して、相互に反対側に30度の傾斜角度を有する斜面で形成されている。すなわち、両斜面間の交差角度は、60度となっていた。
これに対して、本実施形態の凹部35の内面は、仮想平面としての仮想鉛直面E2に対して、相互に反対側にα/2度の傾斜角度を有する斜面で形成されている。すなわち、両斜面間の交差角度がαとなるように配置された一対の斜面によりV字状に形成されている。なお、本実施形態の変位センサ44は、第1変位センサ、及び第2変位センサに相当する。
【0130】
以下、第1実施形態と同一のハード構成については、同一符号を付して、詳細説明を省略する。
<1.図6のフローチャートにおいて、異なる事項>
以下のフローチャートの説明中、第1実施形態と同一処理のステップには、同一ステップの符号を付して説明を省略する。一部または全部が異なる事項を含む処理のステップには、第1実施形態で付したステップの符号にさらに「A」を付す。本実施形態では、図6及び図18のフローチャートに従って、制御部13aは、各ステップの処理を実行するが、下記のステップにおいて、第1実施形態と異なっている。
【0131】
(S30A)
図6のS30Aでは、菱形のワーク素材Wが芯出ブロック34の凹部35に載置される場合、相互に90度未満で交差するコーナーを形成する一対の外周側面が下向きに凹部35内に載置される。これにより、凹部35内に入った一対の外周側面のうち、変位センサ44側の一方の外周側面Wd(図19参照)は、下向きとなる。
【0132】
(S40A)
第1実施形態のS40では、制御部13aのヘッドストック21の駆動モータ64に対する制御により、挟持部に挟持されたワーク素材WをB軸の周りで+側に30度回転させる。
【0133】
これに対して、本実施形態のS40Aは、制御部13aのヘッドストック21の駆動モータ64に対する制御により、挟持部に挟持された菱形のワーク素材WをB軸の周りで+側に回転させる。この回転により、ワーク素材Wにおける変位センサ44側の下向きであった外周側面Wdは仮想鉛直面E2に含まれるように配置される(図19参照)。
【0134】
図18のフローチャート>
図6のS50では、計測装置56がON(起動)されることにより、計測装置56による傾き計測処理が図7のフローチャートの代わりに、図18に示すS51、S52A、S58A、S59のステップを有するフローチャートに従って実行される。S51は、第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0135】
(S52A)
S52Aでは、変位センサ44の接触子Pを機構カバーケース15の外部に突出させて、変位センサ44に対向するワーク素材Wの外周側面Wdに当接させる。
【0136】
このときの接触子Pが当接した外周側面の部位は第1計測点Q1に相当する。ここで、変位センサ44は、第1計測点Q1に対して指向配置されていることになる。なお、図19では、第1計測点Q1に当接した接触子Pを、他の計測点に当接した接触子と区別するために、P1の符号も付す。
【0137】
そして、接触子Pのワーク素材Wの外周側面Wdに対する当接における接触子Pのストローク量が、変位センサ44と第1計測点Q1との離間距離に相当するとともに計測値Mdとなる。
【0138】
変位センサ44は、取得した第1計測点Q1での前記計測値Mdを計測装置56に出力するとともに、計測終了後には接触子Pを、計測前の位置に戻す。
(S58A)
S58Aでは、計測装置56は、上下可動用エアシリンダ43の制御により、図8(g)に示すように上下動部材40の当接部材45が干渉位置に位置する原点用ストッパブロック48に当接させることにより、変位センサ44を原点位置に復帰させる。
【0139】
(S59)
S59では、計測装置56は、図19に示すように、変位センサ44の接触子Pを機構カバーケース15の外部に突出させて、変位センサ44に対向するワーク素材Wの外周側面Wdに当接させる。本実施形態では、変位センサ44が原点位置に位置する際に、ワーク素材Wの外周側面Wdの上部に対して、図19に示すように、接触子Pが当接するように設定されている。
【0140】
ここで、変位センサ44は、第2計測点Q2に対して指向配置されていることになる。なお、図19では、第2計測点Q2に当接した接触子Pを、他の計測点に当接した接触子と区別するために、P2の符号も付す。なお、第2計測点Q2は、原点位置でもある。そして、接触子Pのワーク素材Wの外周側面Wdに対する当接における接触子Pのストローク量が、変位センサ44と第2計測点Q2との離間距離に相当するとともに計測値Muとなる。
【0141】
変位センサ44は、取得した第2計測点Q2での前記計測値Muを計測装置56に出力するとともに、計測終了後には接触子Pを、計測前の位置に戻す。
演算部としての計測装置56は、第1計測点Q1及び第2計測点Q2におけるそれぞれ計測値Md,Muに基づいて、ワーク素材Wの傾きγを演算する。ワーク素材Wの傾きγの演算は、第1実施形態と同様である。
【0142】
<2.図6のフローチャートにおいて、異なる事項
(S60A)
ワーク素材Wの傾きγが得られた場合、図6のS60Aでは、傾きγ(≠0)を解消すべく、制御部13aは、ワーク素材Wの傾きγ(≠0)がB軸を中心に-側または+側に傾きに応じて、ワーク素材Wは、+側または-側にそれぞれγ分回転される。
【0143】
本実施形態では、ワーク素材Wの外周側面Wdが仮想鉛直面E2に含まれるように配置される。
また、傾きγが0°の場合には、ワーク素材WのB軸の周りの回転補正はなされず、ワーク素材Wの回転位置が保持される。
【0144】
(S70A)
S70Aでは、制御部13aの指令により、計測装置56がON(起動)されることにより、計測装置56による芯ズレ計測処理がワーク素材の外周側面の形状に合わせて行われる。なお、本実施形態の芯ズレ計測では、変位センサ44は、図8(a)に示す原点位置に位置した状態で、一点計測が実行されることにより、図19に示す外周側面WdにおけるQ2で示す部位に接触子が当接する。
【0145】
以下、第1実施形態と同様に、X方向のワーク中心の芯ズレ量X、及びZ方向のワーク中心の芯ズレ量Zの演算は計測装置56が行う。
X方向のワーク中心の芯ズレ量X、及びZ方向のワーク中心の芯ズレ量Zである演算結果が求まると、計測装置56は、制御部13aにその演算結果を、出力する。
【0146】
(S80A及びS90A)
第1実施形態のS80、S90は、設計基準の理論的な形状サイズを、三角形状のインサートにおける理論的な形状サイズとしているが、S80A及びS90Aでは、菱形形状のインサートにおける理論的な形状サイズとしていることが異なっている。他は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0147】
本実施形態では、第1実施形態の(1)~(6)の効果を同様に奏する。
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0148】
・第1実施形態では、変位センサ44の下方位置を第1計測位置とし、上方位置を第2計測位置にするとともに、この順序で、Md、Muを計測するようにした。計測する順序は、この順序に限定するものではなく、逆順であってもよい。
【0149】
・第2実施形態では、変位センサ44の下方位置を第1計測位置とし、原点位置を第2計測位置にするとともに、この順序で、Md、Muを計測するようにした。計測する順序は、この順序に限定するものではなく、逆順であってもよい。
【0150】
・第1実施形態において、図6に示すS60とS80間のS70を省略する代わりに、S40とS50の間において、S70の芯ズレ計測を、実行してもよい。
・第2実施形態の図6に示すS60AとS80A間のS70Aを省略する代わりに、S40AとS50の間において、S70Aの芯ズレ計測を、実行してもよい。
【0151】
・第1実施形態及び第2実施形態では、インサート外周研削装置10は、図17(b)に示すようにワーク素材Wの厚さ側側面に凹部Dがある場合を想定して芯出装置17を備えるようにしている。
【0152】
ワーク素材Wの両厚さ側側面が、互いに平行な平面となっている場合を加工対象とする場合には、芯出装置17を省略してもよい(図24参照)。この場合は、ロボットハンド26aはワーク素材Wを図17(a)に示すようにワーク姿勢が安定した状態で把持できる。このため、テールストック20、ヘッドストック21、間にロボットハンド26aがワーク素材Wを差込みした後、テールストック20、ヘッドストック21で挟持するようにすればよい。
【0153】
・前記実施形態では、変位センサ44を単一としたが、一対の変位センサで、前記第1計測点及び第2計測点との離間距離を計測してもよい。
・一点計測を実行する変位センサをさらに設けてもよい。
【符号の説明】
【0154】
10…インサート外周研削装置
12…機械本体
13…制御盤
13a…制御部
14…ワークヘッド部
15…機構カバーケース
15a…開口部
16…供給搬出部
17…芯出装置
18…砥石台
19…インサートの傾き検出装置
20…テールストック
21…ヘッドストック
22…切削砥石
23…パレットストッカ
24…パレット搬送装置
25…ワークパレット
26…多関節ロボット
26a…ロボットハンド
27…開閉蓋
30…支持部材
32…移動アーム
34…芯出ブロック
35…凹部
39…移動機構部
40…上下動部材
41…取付部材
43…上下可動用エアシリンダ
43a…ロッド
44…変位センサ(第1変位センサ、第2変位センサ)
44a…接触子
45…当接部材
46…ガイド部材
47…ガイド部材
48…原点用ストッパブロック
49…エアシリンダ
50…ロッド
51…位置センサ
52…上動ストッパ
53…下動ストッパ
56…計測装置
Bo…中心
D…凹部
E1…仮想鉛直面
E2…仮想鉛直面(仮想平面)
K…加工室
J…変位センサ44の上方位置と下方位置間の距離
M1、M2、M3…離間距離
N…芯ズレベクトル
P…接触子
Q1…第1計測点
Q2…第2計測点
R…ローダー室
T…制御室
W…ワーク素材
Wa…外周側面
Wb…外周側面
Wc…外周側面
Wd…外周側面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25