(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060901
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】電子部品包装用カバーテープおよび電子部品包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 85/86 20060101AFI20240425BHJP
【FI】
B65D85/86 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168471
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】増井 健
【テーマコード(参考)】
3E096
【Fターム(参考)】
3E096BA08
3E096CA11
3E096FA20
3E096GA07
(57)【要約】
【課題】多層構造のカバーテープにおけるデラミネーションの抑制、特に高温・高湿下に放置されたカバーテープをキャリアテープから剥離する際のデラミネーションの抑制
【解決手段】基材層と、基材層の一方の面側に設けられた中間層と、中間層の基材層とは反対の面側に設けられたシーラント層と、を備え、基材層と中間層との間には、水性ウレタン系接着剤により形成されたアンカーコート層が存在する、電子部品包装用カバーテープ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、前記基材層の一方の面側に設けられた中間層と、前記中間層の前記基材層とは反対の面側に設けられたシーラント層と、を備え、
前記基材層と前記中間層との間には、水性ウレタン系接着剤により形成されたアンカーコート層が存在する、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項2】
請求項1に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
前記中間層は、ポリエチレン系樹脂を含む、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
前記中間層は、バイオマス由来のポリエチレン系樹脂を含む、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項4】
請求項1または2に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
前記基材層は、ポリエステル樹脂を含む、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項5】
請求項1または2に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
前記基材層は、ポリエチレンテレフタレートを含む、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項6】
請求項1または2に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
前記シーラント層は、スチレン系樹脂を含む、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項7】
請求項1または2に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
前記シーラント層は、石油樹脂を含む、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項8】
請求項1または2に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
前記水性ウレタン系接着剤は、主剤および硬化剤が、水およびアルコールを含む溶媒に溶解または分散している、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項9】
電子部品が凹部に収容されたキャリアテープと、請求項1または2に記載の電子部品包装用カバーテープとを備え、
前記電子部品を封止するように前記シーラント層が前記キャリアテープに接着された電子部品包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品包装用カバーテープおよび電子部品包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品を運搬、保管等する際に、しばしば、キャリアテープおよびカバーテープが用いられる。
具体的には、キャリアテープに形成された電子部品収納用の凹部に、電子部品(半導体チップ等)を入れ、その後、そのキャリアテープの上面に、カバーテープをヒートシールして電子部品を封入する。そして、それをリール状に巻き取って運搬/保管する。このようにすることで、運搬/保管中の電子部品の汚染を防ぐことができる。
【0003】
電子部品包装用カバーテープの先行技術としては、例えば以下の特許文献1~3を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-45513号公報
【特許文献2】特表2003-508253号公報
【特許文献3】特開2005-263257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子部品包装用カバーテープは、しばしば、基材層と、基材層の一方の面側に設けられた中間層と、中間層の基材層とは反対の面側に設けられたシーラント層とを備える多層構造を有する。多層構造のカバーテープは、例えば押出ラミネート法により製造される。
【0006】
多層構造のカバーテープにおいては、層間のデラミネーションが抑えられること、特に、高温・高湿下にカバーテープを放置した後においても層間のデラミネーションが抑えられることが好ましい。ここで「デラミネーション」とは、例えば、キャリアテープに接着されていたカバーテープを引きはがす際に、カバーテープの基材層と中間層との間で剥離が発生してしまうことをいう。
【0007】
本発明者らは、多層構造のカバーテープにおけるデラミネーションの抑制、特に高温・高湿下に放置されたカバーテープをキャリアテープから剥離する際のデラミネーションの抑制を目的の1つとして、検討を行った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため、以下に提供される発明を完成させた。
【0009】
1.
基材層と、前記基材層の一方の面側に設けられた中間層と、前記中間層の前記基材層とは反対の面側に設けられたシーラント層と、を備え、
前記基材層と前記中間層との間には、水性ウレタン系接着剤により形成されたアンカーコート層が存在する、電子部品包装用カバーテープ。
2.
1.に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
前記中間層は、ポリエチレン系樹脂を含む、電子部品包装用カバーテープ。
3.
1.または2.に記載の電子部品包装用カバーテープであって、
前記中間層は、バイオマス由来のポリエチレン系樹脂を含む、電子部品包装用カバーテープ。
4.
1.~3.のいずれか1つに記載の電子部品包装用カバーテープであって、
前記基材層は、ポリエステル樹脂を含む、電子部品包装用カバーテープ。
5.
1.~4.のいずれか1つに記載の電子部品包装用カバーテープであって、
前記基材層は、ポリエチレンテレフタレートを含む、電子部品包装用カバーテープ。
6.
1.~5.のいずれか1つに記載の電子部品包装用カバーテープであって、
前記シーラント層は、スチレン系樹脂を含む、電子部品包装用カバーテープ。
7.
1.~6.のいずれか1つに記載の電子部品包装用カバーテープであって、
前記シーラント層は、石油樹脂を含む、電子部品包装用カバーテープ。
8.
1.~7.のいずれか1つに記載の電子部品包装用カバーテープであって、
前記水性ウレタン系接着剤は、主剤および硬化剤が、水およびアルコールを含む溶媒に溶解または分散している、電子部品包装用カバーテープ。
9.
電子部品が凹部に収容されたキャリアテープと、1.~8.のいずれか1つに記載の電子部品包装用カバーテープとを備え、
前記電子部品を封止するように前記シーラント層が前記キャリアテープに接着された電子部品包装体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、多層構造のカバーテープにおけるデラミネーションの抑制、特に高温・高湿下に放置されたカバーテープをキャリアテープから剥離する際のデラミネーションを抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態のカバーテープの層構成の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
図面はあくまで説明用のものである。図面中の各部材の形状や寸法比などは、必ずしも現実の物品と対応しない。
【0013】
本明細書中、数値範囲の説明における「X~Y」との表記は、特に断らない限り、X以上Y以下のことを表す。例えば、「1~5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。
【0014】
本明細書における基(原子団)の表記において、置換か無置換かを記していない表記は、置換基を有しないものと置換基を有するものの両方を包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有しないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書における「(メタ)アクリル」との表記は、アクリルとメタクリルの両方を包含する概念を表す。「(メタ)アクリレート」等の類似の表記についても同様である。
【0015】
<電子部品包装用カバーテープ>
図1は、本実施形態の電子部品包装用カバーテープ(カバーテープ1)の層構成を模式的に示している。
カバーテープ1は、基材層11と、基材層11の一方の面側に設けられた中間層13と、中間層13の基材層11とは反対の面側に設けられたシーラント層14と、を備える。そして、基材層11と中間層13との間には、水性ウレタン系接着剤により形成されたアンカーコート層12が存在する。
【0016】
カバーテープ1においては、基材層11と中間層13との間に、水性ウレタン系接着剤により形成されたアンカーコート層12が存在することにより、基材層11と中間層13との間でのデラミネーションが抑制される。特に、高温・高湿下にカバーテープを放置した後においても、基材層11と中間層13との間でのデラミネーションが抑制される。
水性の接着剤の多くは、「水性」であることから湿度に弱いように思われるが、本発明者らによる試行錯誤の結果、水性ウレタン系接着剤により形成されたアンカーコート層12は、他の水性接着剤により形成されたアンカーコート層に比べて、高温や高湿度に強い。このことは、後掲の実施例および比較例において、水性ウレタン系接着剤をアンカーコート剤として用いた場合にはデラミネーションが抑えられたが、ウレタン系ではない水性接着剤をアンカーコート剤として用いた場合にはデラミネーションが発生したことから理解される。
また、アンカーコート層12は「水性」ウレタン系接着剤により形成されるため、有機溶剤系のアンカーコート剤を用いる場合に比べて、カバーテープ1の製造時の環境負荷を小さくすることができるという利点がある。
さらに、アンカーコート層12が「水性」ウレタン系接着剤により形成されることにより、有機溶剤系のアンカーコート剤を用いる場合に必要な「エージング処理」が不要となるというメリットもある。
【0017】
以下、カバーテープ1の層構成や性状についてより具体的に説明する。
【0018】
(基材層11)
基材層11を構成する材料は特に限定されない。典型的には、カバーテープ1を作製するとき、キャリアテープに対してカバーテープ1を接着するとき、外力が加わったとき等に十分に耐えうる程度の機械的強度が得られる材料が好ましい。また、キャリアテープにカバーテープ1を接着する際の熱に耐えうる程度の耐熱性を有する材料が好ましい。
基材層11を構成する材料の形態は、加工の容易性の点で、フィルム状であることが好ましい。
【0019】
基材層11を構成する材料の具体例としては、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアクリレート系樹脂、ポリメタアクリレート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS樹脂等が挙げられる。中でも、カバーテープ1の機械的強度を向上させる観点やコストなどから、ポリエステル系樹脂が好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂がより好ましい。つまり、基材層11は、これら列挙した樹脂のうち1または2以上を含むことが好ましい。
基材層1は、滑材などの添加剤を含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0020】
基材層11は、単層であってもよいし、2層以上であってもよい。例えば、基材層11は、上述した樹脂が積層された多層フィルムにより形成されていてもよい。
基材層11を形成するために用いられるフィルムは、未延伸フィルムであってもよいし、一軸方向又は二軸方向に延伸されたフィルムであってもよい。カバーテープ1の機械的強度を一層向上させる観点からは、一軸方向又は二軸方向に延伸されたフィルムであることが好ましい。
【0021】
基材層11の厚さは特に限定されない。基材層11の厚さは、好ましくは5μm以上、より好ましくは9μm以上、より好ましくは12μm以上である。また、基材層11の厚さは、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。
基材層11の厚さが50μm以下であることで、カバーテープ1の剛性が大きくなりすぎない。これにより、シール後のキャリアテープに対して捻り応力がかかった場合でも、カバーテープ1がキャリアテープの変形に追従しやすい。よって、カバーテープ1がキャリアテープから意図せず剥離してしまうことを抑制することができる。
基材層11の厚さが5μm以上であることで、カバーテープ1の機械的強度を十分良好なものとすることができる。よって、例えばキャリアテープからカバーテープ1を高速で剥離する場合でも、カバーテープ1が破断してしまうことを抑制することができる。
【0022】
(中間層13)
中間層13は、基材層11の一方の面側に設けられている。中間層13が存在することで、カバーテープ1のクッション性、耐衝撃性などを高めることができる。
【0023】
中間層12の材料としては、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、環状オレフィン系樹脂等が挙げられる。中でも、カバーテープ1全体のクッション性を向上させる観点から、オレフィン系樹脂が好ましい。
オレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。なかでもポリエチレン系樹脂が好ましい。特にクッション性の点からは、低密度ポリエチレン(LDPE)または直鎖状低密度ポリエチレン(L-LDPE)がより好ましい。また、クッション性と強度の両立の点から、高密度ポリエチレン(HDPE)も好ましい。
【0024】
別観点として、中間層13は、バイオマス由来の樹脂、好ましくはバイオマス由来のポリオレフィン樹脂、さらに好ましくはバイオマス由来のポリエチレン系樹脂を含む。近年、地球環境保護の観点から、バイオマス由来の原料の使用が推進されている。カバーテープにおいても原材料の一部としてバイオマス由来の樹脂を用いることが好ましいといえる。
ちなみに、バイオマス由来の原料には、石油由来の原料に比べて、意図せぬ不純物が含まれている懸念や、スペックが一定しない懸念などがある。これら懸念に起因して、中間層13を構成する材料としてバイオマス由来の原料を用いると、基材層11と中間層13との間でのデラミネーションを抑えにくくなることも考えられる。しかし、本発明者らによる確認の限り、中間層13を構成する材料としてバイオマス由来の原料を用いても、基材層11と中間層13との間でのデラミネーションは十分に抑えられる。これは、水性ウレタン系接着剤により形成されたアンカーコート層12が、基材層11と中間層13とを十分に強く接着するためと考えられる。
【0025】
中間層13は、各種の添加剤を含んでもよいし、含まなくてもよい。
中間層13は、単層であってもよいし、2層以上であってもよい。例えば、中間層13は、上述した樹脂が積層された多層構造であってもよい。
中間層13の厚さは、他の性能を過度に損なわずにカバーテープ全体のクッション性を向上させる観点から、好ましくは10~30μm、さらに好ましくは15~25μmである。
【0026】
(シーラント層14)
シーラント層14は、中間層13の、基材層11とは反対の面側に設けられている。
シーラント層14は、通常、熱可塑性樹脂を含む。シーラント層14は、通常のヒートシール条件において適度に軟化/融解し、キャリアテープとヒートシール可能なものである限り、任意の樹脂を含むことができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、アイオノマー樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、(メタ)アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、マレイン酸樹脂、スチレン系樹脂などのうち1または2以上を挙げることができる。
【0027】
シーラント層14は、バイオマス由来の樹脂を含んでもよい。具体的には、シーラント層14は、バイオマス由来のポリエチレン系樹脂など、バイオマス由来のポリオレフィン樹脂を含むことが好ましい。
【0028】
シーラント層14は、例えば良好な剥離強度を得る点で、スチレン系樹脂を含むことが好ましい。
スチレン系樹脂としては、ポリスチレン、スチレン-(メタ)アクリレート共重合体、スチレン-オレフィン共重合体、水素添加スチレンブロック共重合体、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS;High Impact Polystyrene)、および汎用ポリスチレン樹脂(GPPS;General Purpose Polystyrene等のスチレン系ポリマーを挙げることができる。なかでも、剥離強度を効果的に向上させる観点から、スチレン-(メタ)アクリレート共重合体および/またはスチレン-オレフィン共重合体が好ましく、スチレン-(メタ)アクリレート共重合体がより好ましい。
スチレン系樹脂を用いる場合、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
シーラント層14がスチレン系樹脂を含む場合、その量は、カバーテープ1とキャリアテープとの剥離強度の向上の観点から、シーラント層14中、好ましくは5~90質量%、より好ましくは8~80質量%、さらに好ましくは10~70質量%である。
【0030】
シーラント層14は、好ましくは帯電防止剤を含む。帯電防止剤の作用により、カバーテープ1をキャリアテープから剥離する際に発生する静電気による電子部品の損傷を抑えることができる。
【0031】
帯電防止剤としては例えば以下を挙げることができる。念のため述べておくと、使用可能な帯電防止剤はこれらのみに限定されない。
・ポリエーテル構造を含むポリマー(例えば、ポリエーテルエステルアミドなどのポリアミド系コポリマー、ポリオレフィンとポリエーテルのブロックポリマー、ポリエチレンエーテル及びグリコールからなるポリマーなど)、カリウムアイオノマーなどのカルボン酸塩基含有ポリマー、第4級アンモニウム塩基含有コポリマーなど
・酸化アルミニウム、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化チタン等の金属含有フィラー(金属酸化物粒子など)
・ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)、ポリアセチレン、ポリアニリン等の導電性ポリマー
・導電カーボン
【0032】
上述の帯電防止剤のうち、他成分との相溶性や、ヒートシール性への悪影響の少なさなどの点で、特にポリエーテル構造を含むポリマーを好ましく用いることができる。ポリエーテル構造を含むポリマーとしては、例えば三洋化成工業株式会社の「ぺレクトロン」シリーズを挙げることができる。
【0033】
シーラント層14が帯電防止剤を含む場合、1のみの帯電防止剤を含んでもよいし、2以上の帯電防止剤を含んでもよい。
シーラント層14が帯電防止剤を含む場合、その量は、シーラント層14全体に対して、例えば0.1~30質量%、好ましくは1~20質量%である。帯電防止剤の量は、帯電防止能とその他性能とのバランスを踏まえて適宜設定すればよい。
【0034】
別観点として、シーラント層14は、石油樹脂を含むことが好ましい。石油樹脂を用いることにより、シーラント層14に適度な粘着性を付与できる傾向がある。酸化防止の観点から、石油樹脂は、水素化されていることが好ましい。
石油樹脂としては、脂肪族系の石油樹脂、芳香族系の石油樹脂、脂肪族芳香族共重合系の石油樹脂等が挙げられる。市販品としては、荒川化学工業社の水素化石油樹脂、商品名「アルコン」シリーズが挙げられる。
【0035】
石油樹脂を用いる場合、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
シーラント層14が石油樹脂を含む場合、シーラント層14全体に対する石油樹脂の含有量は、キャリアテープとのシール強度と、電子部品の付着しにくさやキャリアテープに対するヒートシール性などのバランスを考慮し、好ましくは1~15質量%、より好ましくは2~12質量%である。
【0036】
シーラント層14は、その特性を損なわない範囲で、上記成分のほか、アンチブロッキング剤、スリップ剤、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、界面活性剤、無機フィラー等の任意の添加剤を含んでいてもよい。かつ/または、シーラント層14の表面には、これらのコーティング処理が施されていてもよい。
【0037】
シーラント層14の厚みは、1~20μmであることが好ましく、3~15μmであることがより好ましい。シーラント層の厚みが、上記上限値以下のものであれば、ヒートシール時に溶融した樹脂の「染み出し」を制御しやすくなり、また、シーラント層の厚さが、上記下限値以上のものであれば、カバーテープのキャリアテープに対する剥離強度が好適なものとなる。
【0038】
(アンカーコート層12)
アンカーコート層12は、水性ウレタン系接着剤により形成される。前述のように、カバーテープ1においては、基材層11と中間層13との間に、水性ウレタン系接着剤により形成されたアンカーコート層12が存在することにより、基材層11と中間層13との間でのデラミネーションが抑制される。
【0039】
アンカーコート層12を形成するための水性ウレタン系接着剤は、一例として、主剤および硬化剤が、溶媒に溶解または分散したものである。溶媒として好ましくは、水とアルコールの混合溶媒を挙げることができる。水性ウレタン系接着剤は、主剤と硬化剤が別々の容器で供給され、使用直前に混合する2液型であってもよい。また別の例として、水性ウレタン系接着剤は、接着性のポリウレタン樹脂を含むものであってもよい。要するに、水性ウレタン系接着剤は、最終的な硬化物内にウレタン構造を含みうるものであればよい。
使用可能な水性ウレタン系接着剤としては、例えば日本曹達株式会社のチタボンド(登録商標)T-120A、T-185Eなどを挙げることができる。
【0040】
アンカーコート層12を設ける場合、固形分塗布量が0.05~1.5g/m2となるように水性ウレタン系接着剤を塗布することが好ましく、固形分塗布量が0.1~1.0g/m2となるように水性ウレタン系接着剤を塗布することがより好ましい。
【0041】
(製造方法)
カバーテープ1は、例えば以下手順で製造することができる。
(1)基材層形成用のフィルムを準備する。基材層形成用のフィルムの片面または両面には、コロナ処理等の表面処理が施されていてもよい。
(2)基材層形成用のフィルムの片面に、アンカーコート剤を塗布する。塗布後、通常は乾燥炉でアンカーコート剤中の溶媒を乾燥させる。これにより基材層11の片面にアンカーコート層12を形成する。
(3)形成されたアンカーコート層12の上に、押出ラミネート法により、溶融した中間層形成用の材料を押し出す。これにより中間層13を形成する。
(4)形成した中間層13の上に、押出ラミネート法により、溶融したシーラント層形成用の材料を押し出す。これによりシーラント層14を形成する。
【0042】
<電子部品包装体>
電子部品が凹部に収容されたキャリアテープと、上述のカバーテープ1とをヒートシールすることで、電子部品包装体を製造することができる。
より具体的には、以下のような手順で、電子部品を封止するように、カバーテープ1のシーラント層14がキャリアテープに接着された電子部品包装体を得ることができる。
(1)電子部品が凹部に収容されたキャリアテープを準備する。
(2)カバーテープ1を用いて、上述のキャリアテープの開口部全面を覆う(このときシーラント層14がキャリアテープと接触するようにする)。
(3)ヒートシール処理を施す。
【0043】
ヒートシールの具体的なやり方や条件は、カバーテープ1がキャリアテープに十分強く接着する限り特に限定されない。典型的には、公知のテーピングマシンを用い、温度100~240℃、荷重0.1~10kgf(0.98~98N)、時間0.0001~1秒の範囲内で行うことができる。
【0044】
得られた電子部品包装体は、例えば、リールに巻かれ、その後、電子部品を電子回路基板等に実装する作業領域まで搬送される。リールの素材は、金属製、紙製、プラスチック製などであることができる。
電子部品包装体が作業領域まで搬送された後、カバーテープ1をキャリアテープから剥離し、収容された電子部品を取り出す。
【0045】
収容される電子部品は、特に限定されない。半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、コンデンサ、圧電素子、光学素子、LED関連部材、コネクタ、電極など、電気・電子機器の製造に用いられる部品全般を挙げることができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【実施例0047】
本発明の実施態様を、実施例および比較例に基づき詳細に説明する。念のため述べておくと、本発明は実施例のみに限定されない。
【0048】
<材料の準備>
各層の形成のために、以下の材料を準備した。
【0049】
(基材層形成用のフィルム)
・基材-1:帯電防止二軸延伸PETフィルム FE2301 厚み16μm フタムラ化学株式会社
・基材-2:帯電防止二軸延伸PETフィルム E7455 厚み19μm 東洋紡株式会社
【0050】
(アンカーコート剤:アンカーコート層形成用の接着剤)
・AC-1:2液水性型ポリウレタン系アンカーコート剤 チタボンドT-185E(水溶性エマルジョン)/T-185E硬化剤 日本曹達株式会社
チタボンドT-185Eの組成は、樹脂10質量%、エタノール15質量%、水75%である。
T-185E硬化剤は溶剤を含まない。
使用時には、チタボンドT-185EとT-185E硬化剤を、30質量部と0.75質量部の割合で混合して混合物とし、この混合物にイソプロピルアルコール/水=50/50(質量比)の混合溶媒を加えて100質量部にして使用した。
・AC-2:ポリエチレンイミン系樹脂 エポミンP-1000(水溶性ポリマー) 株式会社日本触媒
・AC-3:変性ポリオレフィン樹脂 ザイクセンA(水性ディスパージョン) 住友精化株式会社
・AC-4:EVA系樹脂 セポルジョンVA407(水系エマルジョン) 住友精化株式会社
・AC-5:ポリブタジエン系樹脂 EL-452(水系) 東洋モートン社
【0051】
(中間層形成用の材料)
・中間層-1:バイオマス由来LDPE SBC818 ブラスケム社
・中間層-2:石油由来LDPE スミカセンL705 住友化学株式会社
【0052】
(シーラント層形成用の材料)
以下に示す組成のシーラント-1~シーラント-8を、シーラント層形成用の材料とした。ちなみに、後述するように、シーラント層形成時には、これら材料の溶融物を押出ラミネート法により中間層上に押し出してシーラント層を形成した。
・シーラント-1:
石油由来LDPE スミカセンL705 住友化学株式会社 67質量%
帯電防止剤 ペレクトロンPVH 三洋化成工業株式会社 15質量%
ポリスチレン系樹脂 エスチレンMS-750(メチルメタクリレート・スチレン共重合体)東洋スチレン株式会社 10質量%
水素化石油樹脂 アルコンP-140 8質量%
・シーラント-2:
バイオマス由来LDPE SBC818 ブラスケム社 67質量%
帯電防止剤 ペレクトロンPVH 三洋化成工業株式会社 15質量%
ポリスチレン系樹脂 エスチレンMS-750 東洋スチレン株式会社 10質量%
水素化石油樹脂 アルコンP-140 8質量%
・シーラント-3:
エチレン-エチルアクリレート共重合体 NUC-6170 株式会社ENEOS NUC 60質量%
帯電防止剤 ペレクトロンPVH 三洋化成工業株式会社 15質量%
ポリスチレン系樹脂 エスチレンMS-750 東洋スチレン株式会社 20質量%
水素化石油樹脂 アルコンP-140 5質量%
・シーラント-4:
エチレン-エチルアクリレート共重合体 NUC-6170 株式会社ENEOS NUC 60質量%
帯電防止剤 ペレクトロンPVH 三洋化成工業株式会社 15質量%
ポリスチレン系樹脂 エスチレンMS-600(メチルメタクリレート・スチレン共重合体) 東洋スチレン株式会社 20質量%
水素化石油樹脂 アルコンP-140 5質量%
・シーラント-5:
エチレン-エチルアクリレート共重合体 NUC-6170 株式会社ENEOS NUC 60質量%
帯電防止剤 ペレクトロンPVH 三洋化成工業株式会社 15質量%
ポリスチレン系樹脂 エスチレンMS-750(メチルメタクリレート・スチレン共重合体) 東洋スチレン株式会社 20質量%
水素化石油樹脂 アルコンP-140 5質量%
・シーラント-6:
エチレン-メチルアクリレート共重合体 レクスパールEB240H 日本ポリエチレン株式会社 60質量%
帯電防止剤 ペレクトロンPVH 三洋化成工業株式会社 15質量%
ポリスチレン系樹脂 エスチレンMS-750(メチルメタクリレート・スチレン共重合体) 東洋スチレン株式会社 20質量%
水素化石油樹脂 アルコンP-140 5質量%
・シーラント-7:
エチレン-メチルメタクリレート共重合体 アクリフトWH303-F 住友化学株式会社 60質量%
帯電防止剤 ペレクトロンPVH 三洋化成工業株式会社 15質量%
ポリスチレン系樹脂 エスチレンMS-750(メチルメタクリレート・スチレン共重合体) 東洋スチレン株式会社 20質量%
水素化石油樹脂 アルコンP-140 5質量%
・シーラント-8:
エチレン-ブチルアクリレート共重合体 ロトリル17BA07N アルケマ社 60質量%
帯電防止剤 ペレクトロンPVH 三洋化成工業株式会社 15質量%
ポリスチレン系樹脂 エスチレンMS-750(メチルメタクリレート・スチレン共重合体) 東洋スチレン株式会社 20質量%
水素化石油樹脂 アルコンP-140 5質量%
【0053】
<カバーテープの製造>
以下(1)~(3)の手順によりカバーテープを製造した。各層を形成するための材料の種類は、後掲の表に示す通りとした。
(1)基材層形成用のフィルムの片面に、アンカーコート剤を塗布し、100℃に設定した乾燥炉で乾燥して、アンカーコート層を形成した。アンカーコート剤の塗布量は、乾燥後塗布量が0.3g/m2となるように調整した。また、塗布にはグラビアコーターを用いた。
(2)上記(1)で形成したアンカーコート層の上に、押出ラミネート法により、溶融した中間層形成用の材料を押し出して、中間層を形成した。このとき、押出温度は280℃とし、中間層の厚みは20μmになるようにした。
(3)上記(1)で形成した中間層の上に、押出ラミネート法により、溶融したシーラント層形成用の材料を押し出して、シーラント層を形成した。このとき、押出温度は200℃とした。また、シーラント層形成用の材料としてシーラント-1またはシーラント-2を用いた場合には厚みが10μmになるように、シーラント-3、4、5、6、7または8を用いた場合には厚みが5μmになるようにした。
【0054】
<評価>
まず、下記条件で、カバーテープを、導電性ポリスチレン製のキャリアテープまたは紙製キャリアテープ(いずれも市場で入手可能なもの)にヒートシールした。これにより評価用サンプルを得た。
シール機:TWA-6621(東京ウェルズ社製)
温度:220℃(導電性ポリスチレン製キャリアテープ使用時)、200℃(紙製キャリアテープ使用時)
時間:50ms(導電性ポリスチレン製キャリアテープ使用時)、100ms(紙製キャリアテープ使用時)
圧力:4kgf(39.2N)
コテ幅:0.5mm
コテ長:54mm
送りピッチ:4mm(導電性ポリスチレン製キャリアテープ使用時)、2mm(紙製キャリアテープ使用時)
【0055】
次に、評価用サンプルを、40℃、90%RH環境下に30日間放置した。
その後、キャリアテープからカバーテープを剥離速度15,000mm/minにて剥離した。
その後、カバーテープの状態を目視で観察した。カバーテープにおける基材層と中間層との間においてデラミネーションが発生しなかった場合を「良好」、基材層と中間層との間でデラミネーションが認められた場合を「不良」とした。
【0056】
カバーテープの構成と評価結果とをまとめて表に示す。
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
表1および2に示されるとおり、基材層と中間層との間に、水性ウレタン系接着剤により形成されたアンカーコート層が存在する実施例1~11のカバーテープを用いた評価では、デラミネーションの発生が抑えられた。中間層としてバイオマス由来のポリエチレン系樹脂を用いた場合であっても、デラミネーションの発生は抑えられた。
特に、評価用サンプルを「40℃、90%RH環境下に30日間放置した」後、「剥離速度15,000mm/min」という高速度で剥離しても、デラミネーションの発生が抑えられたことは、特筆すべき効果である。
【0062】
また、上記実施例においては、プラスチック製のキャリアテープを用いた場合だけでなく、紙製キャリアテープを用いた場合でも、デラミネーションの発生が抑えられた。
一般的に、紙製キャリアテープの表面は、プラスチック製のキャリアテープに比べて状態にばらつきが出やすいため、剥離強度が変動しやすい傾向がある。このため、ヒートシールの際にシーラント層と強く接着しすぎて、キャリアテープからカバーテープを剥がすときにキャリアテープ・カバーテープ間で剥がれずに、基材層・中間層の間で剥がれる懸念がある。しかし、上記実施例においては、紙製キャリアテープに接着したカバーテープを引きはがした場合にも、デラミネーションは発生しなかった。
【0063】
一方、表3および4に示されるとおり、基材層と中間層との間に、水性ウレタン系ではない接着剤により形成されたアンカーコート層が存在する各比較例のカバーテープを用いた評価では、デラミネーションが発生してしまった。