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特開2024-6091tracrRNAユニット、及びゲノム編集方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006091
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】tracrRNAユニット、及びゲノム編集方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20240110BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20240110BHJP
   C12N 9/16 20060101ALN20240110BHJP
【FI】
C12N15/09 110
C12N15/11 Z
C12N9/16 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106658
(22)【出願日】2022-06-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】520254417
【氏名又は名称】リージョナルフィッシュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸本 謙太
(72)【発明者】
【氏名】國井 厚志
【テーマコード(参考)】
4B050
【Fターム(参考)】
4B050DD02
4B050LL01
4B050LL03
(57)【要約】
【課題】
本発明は、新たなtracrRNAユニット、及びこれを使ったゲノム編集方法を提供することを課題とする。
【解決手段】
CRISPR-Cas9ゲノム編集システムに使用するための、第1の一本鎖RNAと第2の一本鎖RNAから構成されるtracrRNAユニットであって、第1の一本鎖RNAと第2の一本鎖RNAは非連続であり、第1の一本鎖RNAが、少なくとも第1の部分と第2の部分を有し、第1の部分と第2の部分は重複せず、第1の部分はcrRNAの一部に相補的な配列を有し、第2の部分は第2の一本鎖RNAに相補的な配列を有する、
tracrRNAユニットにより、課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CRISPR-Cas9ゲノム編集システムに使用するための、第1の一本鎖RNAと第2の一本鎖RNAから構成されるtracrRNAユニットであって、
第1の一本鎖RNAと第2の一本鎖RNAは非連続であり、
第1の一本鎖RNAが、少なくとも第1の部分と第2の部分を有し、
第1の部分と第2の部分は重複せず、第1の部分はcrRNAの一部に相補的な配列を有し、第2の部分は第2の一本鎖RNAに相補的な配列を有する、
tracrRNAユニット。
【請求項2】
CRISPR-Cas9ゲノム編集システムに使用するための、第1の一本鎖RNAと第2の一本鎖RNAと第3の一本鎖RNAから構成されるtracrRNAユニットであって、
第1の一本鎖RNAと第2の一本鎖RNAと第3の一本鎖RNAは非連続であり、
第1の一本鎖RNAが、少なくとも第1の部分と第2の部分を有し、
第1の部分と第2の部分は重複せず、第1の部分はcrRNAの一部に相補的な配列を有し、第2の部分は第2の一本鎖RNAに相補的な配列を有し、
第2の一本鎖RNAが、少なくとも第1の部分を有し、
第2の一本鎖RNAの第1の部分は、第3の一本鎖RNAに相補的な配列を有する、
tracrRNAユニット。
【請求項3】
crRNAと第1の一本鎖RNAが順に連結されている、請求項1又は2に記載のtracrRNAユニット。
【請求項4】
crRNAと第1の一本鎖RNAと第2の1本鎖RNAが順に連結されている、請求項2に記載のtracrRNAユニット。
【請求項5】
第1の一本鎖RNAと第2の一本鎖RNAの少なくとも一方が、39ヌクレオチド以下の長さを有する、請求項1に記載のtracrRNAユニット。
【請求項6】
第1の一本鎖RNA、第2の一本鎖RNA、及び第3の一本鎖RNAの少なくとも1つが、39ヌクレオチド以下の長さを有する、請求項2に記載のtracrRNAユニット。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のtracrRNAユニットと、
crRNAと、
Cas9と、
を使用するゲノム編集方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書には、tracrRNAユニット、及びゲノム編集方法が開示される。
【背景技術】
【0002】
Clustered regularly interspaced short palindromic repeats/CRISPR associated protein 9(CRISPR/Cas9)システムは、細菌及び古細菌において発見されたウイルスやプラスミドに対する免疫システムである(非特許文献1)。このシステムは、現在、in vitroにおいて様々な生物のゲノムDNAの目的領域に対して、ヌクレオチド配列の削除、置換又は挿入を行う方法として利用されている(特許文献1及び2)。
【0003】
細菌や古細菌では、ゲノムDNAの目的領域のヌクレオチド配列に対して相補的なヌクレオチド配列を有するCRISPR RNA(crRNA)と、crRNAに対して相補的なヌクレオチド配列を有するtracrRNAとがそれぞれ別のRNA鎖であり、これらが互いに相補的なヌクレオチド配列を介してハイブリダイズし、crRNA:tracrRNA duplexを形成しCas9をガイドする。一方、一般的にin vitroにおいては、非特許文献1、特許文献1及び特許文献2に示されるように、crRNA:tracrRNA duplexに替えて、crRNAとtracrRNAがリンカーループ配列を挟んで単一のRNA鎖として結合したsingle guide RNA(sgRNA)を使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2013/176772号公報
【特許文献2】国際公開第2014/093661号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】M Jinek, et al.:SCIENCE, 28 Jun 2012,Vol 337, Issue 6096, pp. 816-821
【非特許文献2】H Nishimasu, et al.:Cell, 27 Feb 2014, Vol 156, pp. 935-949
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
tracrRNAは、図1(A)に示すように、そのRNA鎖内で3つのヘアピンループを形成する。3つのヘアピンループは、crRNAとハイブリダイズするヌクレオチド配列に近い方から、第1ステムループ、第2ステムループ、第3ステムループと呼ばれている。tracrRNAについては、これまで非特許文献2に記載されているように第1ステムループと第2ステムループの間のリンカー部分を欠損させてもtracrRNAとして機能することは知られているが、これ以外の部分に改良を加えた際にtracrRNAとしての機能を維持できるかはまったく不明である。
本発明は、新たなtracrRNAユニット、及びこれを使ったゲノム編集方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
項1.
CRISPR-Cas9ゲノム編集システムに使用するための、第1の一本鎖RNAと第2の一本鎖RNAから構成されるtracrRNAユニットであって、
第1の一本鎖RNAと第2の一本鎖RNAは非連続であり、
第1の一本鎖RNAが、少なくとも第1の部分と第2の部分を有し、
第1の部分と第2の部分は重複せず、第1の部分はcrRNAの一部に相補的な配列を有し、第2の部分は第2の一本鎖RNAに相補的な配列を有する、
tracrRNAユニット。
項2.
CRISPR-Cas9ゲノム編集システムに使用するための、第1の一本鎖RNAと第2の一本鎖RNAと第3の一本鎖RNAから構成されるtracrRNAユニットであって、
第1の一本鎖RNAと第2の一本鎖RNAと第3の一本鎖RNAは非連続であり、
第1の一本鎖RNAが、少なくとも第1の部分と第2の部分を有し、
第1の部分と第2の部分は重複せず、第1の部分はcrRNAの一部に相補的な配列を有し、第2の部分は第2の一本鎖RNAに相補的な配列を有し、
第2の一本鎖RNAが、少なくとも第1の部分を有し、
第2の一本鎖RNAの第1の部分は、第3の一本鎖RNAに相補的な配列を有する、
tracrRNAユニット。
項3.
crRNAと第1の一本鎖RNAが順に連結されている、項1又は2に記載のtracrRNAユニット。
項4.
crRNAと第1の一本鎖RNAと第2の1本鎖RNAが順に連結されている、項2に記載のtracrRNAユニット。
項5.
第1の一本鎖RNAと第2の一本鎖RNAの少なくとも一方が、39ヌクレオチド以下の長さを有する、項1に記載のtracrRNAユニット。
項6.
第1の一本鎖RNA、第2の一本鎖RNA、及び第3の一本鎖RNAの少なくとも1つが、39ヌクレオチド以下の長さを有する、項2に記載のtracrRNAユニット。
項7.
第1の一本鎖RNAと第2の一本鎖RNAとが非連続であり、第2の一本鎖RNAと第3の一本鎖RNAが連続である、項2に記載のtracrRNAユニット。
項8.
項1~7のいずれか一項に記載のtracrRNAユニットと、
crRNAと、
Cas9と、
を使用するゲノム編集方法。
【発明の効果】
【0008】
新たなtracrRNAユニット、及びこれを使ったゲノム編集方法を提供することができる。新たなtracrRNAユニットは、1本のRNA鎖が短いため、RNA鎖を化学合成するコストの削減が可能となる。また、tracrRNAを分割することにより、RNA鎖の5’及び3’末端数が増え、tracrRNAに機能的モチーフを付与する数や種類を増すことができ、これによりドナーテザリングへの応用や、一般的な核酸修飾のデザインを増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】通常型のtracrRNAの構造、及び本発明のtracrRNAユニットの概要を示す。(A)は通常型のcrRNA:tracrRNA duplexの構造を示す。(B)本発明の第1の実施形態に係るtracrRNAユニットの構造を示す。aは、第1ステムループにおいて分割されている形態である。bは、第2ステムループにおいて分割されている形態である。(C)本発明の第2の実施形態に係るtracrRNAユニットの構造を示す。
図2】通常型のtracrRNAの配列を示す。
図3】tracrRNAユニットの一実施形態を示す。
図4】tracrRNAユニットの一実施形態を示す。
図5】tracrRNAユニットの一実施形態を示す。
図6】tracrRNAユニットの一実施形態を示す。
図7】メダカのslc45a2遺伝子を標的とするインビトロ切断アッセイの結果を示す。
図8】第1の一本鎖RNA、及び第2の一本鎖RNA;または第1の一本鎖RNA、第2の一本鎖RNA、及び第3の一本鎖RNAからなるtracrRNAをCas9とcrRNAとともに注入したメダカ胚の眼を観察した結果を示す。
図9】第1の一本鎖RNA、及び第2の一本鎖RNA;または第1の一本鎖RNA、第2の一本鎖RNA、及び第3の一本鎖RNAからなるtracrRNAをCas9とcrRNAとともに注入したメダカ胚のライセートを用いた、HMA解析の結果を示す。
図10】サンガーシーケンス法並びにTIDEによる変異解析の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.tracrRNAユニット
本明細書において、tracrRNAユニットは、tracrRNAが、2以上の一本鎖RNAから構成され、tracrRNAとしての機能を維持する複合体を意図する。
ヌクレオチドの標記は、一般的なRNA又はDNAを標記にしたがう。
【0011】
また、本明細書において「連結」することは、同一ポリヌクレオチド鎖としてつながれることを意図する。好ましくは、ホスホジエステル結合によって2本のポリヌクレオチド鎖がつながれることを意図する。
本明細書において、配列を有することは、配列を含むこと、又は配列からなることを意図する。
【0012】
1-1.第1の実施形態
第1の実施形態は、図1(B)に示す第1ステムループ、又は第2ステムループにおいて、tracrRNAが2分割されているtracrRNAユニットに関する。図1(B)aでは、第1ステムループの部分でtracrRNAが分割されている。図1(B)bでは、第2ステムループの部分でtracrRNAが分割されている。
【0013】
より具体的には、tracrRNAユニットは、第1の一本鎖RNA(図1(B)において「#1」で表されている)と第2の一本鎖RNA(図1(B)において「#2」で表されている)から構成され得る。第1の一本鎖RNAと第2の一本鎖RNAは非連続である。第1の一本鎖RNAが、少なくとも第1の部分と第2の部分を有し、第1の部分と第2の部分は重複しない。第1の部分はcrRNAの一部に相補的な配列を有し、第2の部分は第2の一本鎖RNAに相補的な配列を有する。
【0014】
図2に、通常型のtracrRNAのヌクレオチド配列(配列番号1)を示す。通常型のtracrRNAは、ヌクレオチド番号(nt No.)1~12が第1のcrRNA相補的配列であり、nt No.17~21が第2のcrRNA相補的配列であり、nt No.28~29が第1ステムループのループ部であり、nt No.35~39がリンカー部であり、nt No.45~48が第2ステムループのループ部であり、nt No.60~62が第3ステムループのループ部である。各ループ部の前後の配列がハイブリダイズし、ヘアピンループを形成する。例えば、第1ステムループは、少なくともnt No.25~27と、nt No.33、32、30がハイブリダイズすることで形成される。第2ステムループは、少なくともnt No.41~44と、nt No.52~49がハイブリダイズすることで形成される。第3ステムループは、少なくともnt No.54~59と、nt No.68~63がハイブリダイズすることで形成される。
【0015】
第1ステムループの部分でtracrRNAを分割する場合、配列番号1のnt No.27と28の間、nt No.28と29の間、又はnt No.29と30の間において分割し得る。或いは、nt No.28、nt No.29及びnt No.28と29を欠損させて分割してもよい。
【0016】
第2ステムループの部分でtracrRNAを分割する場合、配列番号1のnt No.44と45の間、nt No.45と46の間、nt No.46と47の間、nt No.47と48の間、又はnt No.48と49の間において分割し得る。或いは、nt No.45~48の1以上のヌクレオチドを欠損させて分割してもよい。
【0017】
第1の一本鎖RNA、及び/又は第2の一本鎖RNAは分割したヌクレオチド配列を有するRNAをその配列で使用してもよい。或いは、第1の一本鎖RNA、及び/又は第2の一本鎖RNAの5’末端、又は3’末端の一方、或いは両方に1~10ヌクレオチド程度の付加配列を加えてもよい。
【0018】
また、第1の一本鎖RNA、及び/又は第2の一本鎖RNAは、tracrRNAユニットとして構築したときにtracrRNAとしての機能を有する限り、その一部を欠損させてもよい。このとき、第1の一本鎖RNA、及び第2の一本鎖RNAの少なくとも一方の長さが、39ヌクレオチド以下となることが好ましい。第1の一本鎖RNA、及び第2の一本鎖RNAが付加配列を含む場合には、第1の一本鎖RNA、及び第2の一本鎖RNAの少なくとも一方の長さが、付加配列も含めて39ヌクレオチド以下となることが好ましい。
【0019】
ここで、第1の一本鎖RNAの第1の部分におけるcrRNAの一部と相補的な配列である部分は、図2に示す、第1のcrRNA相補的配列と第2のcrRNA相補的配列の少なくとも一方の一部を備えていればよい。また、第1の一本鎖RNAの第2の部分における第2の一本鎖RNAに相補的な配列である部分も、第1ステムループのループ部前後の配列の一部、又は第2ステムループのループ部前後の配列の一部の配列を含んでいればよい。
【0020】
配列番号1において、非特許文献2に記載されているように、nt No.35~39がリンカー部はその一部、又は全部、好ましくはnt No.36~39を欠損させてもtracrRNAの機能は維持される。したがって、好ましくは、本実施形態からは、nt No.36~39のみ、好ましくはリンカー部のみを欠損させる態様は除かれる。
【0021】
本発明において、例えば、配列番号1のnt No.1~8を欠損させても、tracrRNAとして、若しくはtracrRNAユニットとして機能することができる。
本実施形態において、第1の一本鎖RNAは、後述するcrRNAと連結されていてもよい。
【0022】
また、tracrRNAのヌクレオチド配列の一部が欠損している場合、第1の一本鎖RNAと第2の一本鎖RNAは、5’側から3’側に向かって順に連結されてtracrRNAユニットを構成してもよい。
【0023】
第1の一本鎖RNA、及び第2の一本鎖RNAは、相補的な配列間でアニーリングさせてtracrRNAユニットを形成させてから細胞、個体、又は組織に導入されることが好ましい。アニーリングは、特に制限されないが、例えば、サーマルサイクラー等で、90℃~98℃程度で、3分から10分程度加熱した後、徐々に室温に下げる(例えば、毎秒0.1℃ずつ25℃まで下げる)ことで達成される。また、アニーリングの際、crRNAを加えてアニーリングさせ、ガイドRNAユニットを形成させてもよい。
【0024】
1-2.第2の実施形態
第2の実施形態は、図1(C)に示す第1ステムループ及び第2ステムループにおいて、tracrRNAが3分割されているtracrRNAユニットに関する。図1(C)では、第1ステムループの部分と、第2ステムループの部分でtracrRNAが分割されている。
【0025】
より具体的には、tracrRNAユニットは、第1の一本鎖RNA(図1(C)において「#1」で表されている)と、第2の一本鎖RNA(図1(C)において「#2」で表されている)と、第3の一本鎖RNA(図1(C)において「#3」で表されている)から構成されうる。第1の一本鎖RNAと第2の一本鎖RNAと第3の一本鎖RNAは非連続である。第1の一本鎖RNAが、少なくとも第1の部分と第2の部分を有し、第1の部分と第2の部分は重複せず、第1の部分はcrRNAの一部に相補的な配列を有し、第2の部分は第2の一本鎖RNAに相補的な配列を有する。第2の一本鎖RNAが、少なくとも第1の部分を有し、第2の一本鎖RNAの第1の部分は、第3の一本鎖RNAに相補的な配列を有する。ここで、第2の一本鎖RNAにおいて、第1の一本鎖RNAの第2の部分と相補的な部分は、第2の一本鎖RNAの第1の部分と重複しない。
第1ステムループの部分と、第2ステムループの部分の分割については、上記第1の実施形態と同様であるので、上記説明をここに援用する。
【0026】
第3ステムループの部分でtracrRNAを分割する場合、配列番号1のnt No.59と60の間、nt No.60と61の間、nt No.61と62の間、又はnt No.62と63の間において分割し得る。或いは、nt No.60~62の1以上のヌクレオチドを欠損させて分割してもよい。
【0027】
第1の一本鎖RNA、第2の一本鎖RNA、及び第3の一本鎖RNAの少なくとも1つは、分割したヌクレオチド配列を有するRNAをその配列で使用してもよい。或いは、第1の一本鎖RNA、第2の一本鎖RNA、及び第3の一本鎖RNAの少なくとも1つは、5’末端、又は3’末端の一方、或いは両方に1~10ヌクレオチド程度の付加配列が存在しても良い。
【0028】
第1の一本鎖RNA、第2の一本鎖RNA、及び第3の一本鎖RNAの少なくとも1つは、tracrRNAユニットとして構築したときにtracrRNAとしての機能を有する限り、その一部を欠損させてもよい。このとき、第1の一本鎖RNA、第2の一本鎖RNA、及び第3の一本鎖RNAの少なくとも1つの長さが、付加配列も含めて39ヌクレオチド以下となることが好ましい。
【0029】
ここで、第1の一本鎖RNAの第1の部分におけるcrRNAの一部と相補的な配列である部分は、図2に示す、第1のcrRNA相補的配列と第2のcrRNA相補的配列の少なくとも一方の一部を備えていればよい。また、第1の一本鎖RNAの第2の部分における第2の一本鎖RNAに相補的な配列である部分も、第1ステムループのループ部前後の配列の一部、又は第2ステムループのループ部前後の配列の一部の配列を含んでいればよい。さらに、第2の一本鎖RNAの第3の一本鎖RNAに相補的な配列である部分も、第3ステムループのループ部前後の配列の一部の配列を含んでいればよい。
【0030】
配列番号1において、非特許文献2に記載されているように、nt No.36~39がリンカー部は欠損させてもtracrRNAの機能は維持される。したがって、好ましくは、本実施形態からは、リンカー部のみを欠損させる態様は除かれる。
【0031】
本発明において、例えば、配列番号1のnt No.1~8を欠損させても、tracrRNAとして、若しくはtracrRNAユニットとして機能することができる。
【0032】
本実施形態において、第1の一本鎖RNAは、crRNAと連結されていてもよい。crRNAは目的ゲノム配列に相補的なヌクレオチド配列(好ましくは、20ヌクレオチド)と、第1の一本鎖RNAに相補的なヌクレオチド配列を含む。さらに、crRNAと連結した第1の一本鎖RNAは、第2の一本鎖RNAと連結されていてもよい。
【0033】
また、tracrRNAのヌクレオチド配列の一部が欠損している場合、第1の一本鎖RNAと第2の一本鎖RNAと第3の一本鎖RNAは、5’側から3’側に向かって順に連結されてtracrRNAユニットを構成してもよい。
【0034】
第1の一本鎖RNA、第2の一本鎖RNA及び第3の一本鎖RNAは、相補的な配列間でアニーリングさせてtracrRNAユニットを形成させてから細胞、個体、又は組織に導入されることが好ましい。アニーリングは、特に制限されないが、例えば、サーマルサイクラー等で、90℃~98℃程度で、3分から10分程度加熱した後、徐々に室温に下げる(例えば、毎秒0.1℃ずつ25℃まで下げる)ことで達成される。また、アニーリングの際、crRNAを加えてアニーリングさせ、ガイドRNAユニットを形成させてもよい。
【0035】
2.crRNAとtracrRNAユニットを連結したキメラRNA
第3の実施形態は、crRNAと、上記1.において説明した、tracrRNAユニットを構成する1本鎖RNAを連結したキメラRNAに関する。ただし、このキメラRNAは、配列番号1に示すヌクレオチド配列の一部が欠損している。
【0036】
3.tracrRNAユニットを構成する各RNAをコードする、又はキメラRNAをコードするDNAフラグメント
第4の実施形態は、上記1.において述べた各一本鎖RNA、又は上記2.において述べたキメラRNAをコードするDNAフラグメントに関する。
DNAフラグメントは、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。
【0037】
また、DNAフラグメントは、ベクターに組み込まれていてもよい。ベクターは、DNAフラグメントから、上記一本鎖RNA又はキメラRNAを転写できる限り制限されない。DNAフラグメントは、H1、7SK、及びU6プロモーター等のプロモーターヌクレオチド配列の下流に挿入される。ベクターは、プラスミドベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター等を例示することができる。
【0038】
4.tracrRNAユニットを使用したゲノム編集方法
第5の実施形態は、上記1.において述べたtracrRNAユニットを使ったゲノム編集方法に関する。また、第5の実施形態は、上記2.において述べたキメラRNAを使ったゲノム編集方法に関する。ゲノム編集には、目的ゲノムのヌクレオチド配列の置換、欠失、及び挿入の態様、または、遺伝子発現制御及びエピゲノム編集等の手法が含まれ得る。
【0039】
ここで、「使う」とは、細胞内においてtracrRNAユニット及び/又はキメラRNAがゲノム編集に使用されることを意図する。すなわち、細胞にRNAの状態で導入するか、上記3.において述べたDNAフラグメントをベクターに搭載した状態で導入するかは問わない。
【0040】
好ましい態様は、上記1.において述べたtracrRNAユニットをcrRNA、及びCRISPR(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)酵素と共に使用する。
【0041】
crRNAは目的ゲノムのヌクレオチド配列(以下、「標的配列ともいう」)に相補的なヌクレオチド配列(好ましくは、20ヌクレオチド)と、上述の第1の一本鎖RNAの第1の部分の全部、又は一部に相補的なヌクレオチド配列を含む。
【0042】
標的配列の選択方法は、公知である。標的配列は、Optimized CRISPR design tool (Massachusetts Institute of Technology, ZhangLabのウェブページ(http://crispr.mit.edu/))、E-CRISP(http://www.e-crisp.org/E-CRISP/ (ドイツがん研究センター))、ZiFiT Targeter(http://zifit.partners.org/ZiFit/ (Zing Finger コンソーシアム))、Cas9 design(http://cas9.cbi.pku.edu.cn (北京大学))、CRISPRdirect(http://crispr.dbcls.jp (東京大学))、CRISPR-P(http://cbi.hzau.edu.cn/crispr/ (華中農業大学))、CRISPR RGEN Tools(http://www.rgenome.net/ (ソウル大学))等において公開されている公知のデザインツールを使用して選択することができる。
【0043】
tracrRNAユニット、crRNA、CRISPR酵素及びこれをコードする核酸は、マイクロインジェクション法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法等により導入することができる。
【0044】
tracrRNAユニット及びcrRNAは、それぞれ0.05pg~25pg、好ましくは0.25pg~10pg、より好ましくは0.5pg~2.5pg程度の範囲で注入することができる。
【0045】
CRISPR酵素を、タンパク質、又はタンパク質をコードする核酸として導入する場合、1細胞あたり、5pg~100pg、好ましくは10pg~80pg、より好ましくは10pg~50pg程度の範囲で注入することができる。
【0046】
tracrRNAユニット、crRNA、CRISPR酵素又はこれをコードする核酸は、リポソーム等のデリバリーシステムを使って、個体に全身投与、又は局所投与してもよい。全身投与の場合、tracrRNAユニット、crRNA、CRISPR酵素又はこれをコードする核酸をそれぞれ個体の体重1kgあたり0.1~1,000mg/日となるように投与することができる。局所投与の場合、tracrRNAユニット、crRNA、CRISPR酵素又はこれをコードする核酸をそれぞれ標的組織1cmあたり、0.01~100mg/日となるように投与することができる。
【0047】
また、tracrRNAユニット及びcrRNAを独立したユニットとして使用することに変えて、キメラRNAとしてtracrRNAユニット及びcrRNAを連結して使用してもよい。キメラRNAは、1細胞あたり0.1pg~50pg、好ましくは0.5pg~20pg、より好ましくは1pg~5pg程度の範囲で注入することができる。また、キメラRNAを全身投与する場合、個体の体重1kgあたり0.1~1,000mg/日となるように投与することができる。局所投与の場合、キメラRNAを標的組織1cmあたり、0.01~100mg/日となるように投与することができる。
【0048】
tracrRNAユニット、crRNA、又はキメラRNAは、上記3.において述べたこれらのRNAをコードするDNAフラグメントを搭載したベクターを細胞、個体、又は組織に導入することで、導入後にDNAフラグメントにコードされているRNAを発現させることにより使用してもよい。
【0049】
ベクターがプラスミドベクターの場合、1細胞あたりに、DNAの総量として5pg~100pg、好ましくは10pg~80pg、より好ましくは10pg~50pg程度の範囲で導入することができる。プラスミドベクターを全身投与する場合、個体の体重1kgあたりDNAの総量として0.1~1,000mg/日となるように投与することができる。局所投与の場合、プラスミドベクターを標的組織1cmあたり、DNAの総量として0.01~100mg/日となるように投与することができる。CRISPR酵素をコードするDNAを搭載したプラスミドベクターを使用する場合は、DNAの総量には、これも含む。
【0050】
ベクターがウイルスベクターの場合、1細胞あたり、目的のヌクレオチド配列を搭載したウイルスの総量として10~10vg程度の範囲で導入することができる。ウイルスを全身投与する場合、個体の体重1kgあたりウイルスの総量として1010~1018vg/日となるように投与することができる。局所投与の場合、ウイルスを標的組織1cmあたり、ウイルスの総量として10~1016vg/日となるように投与することができる。CRISPR酵素をコードするDNAを搭載したウイルスを使用する場合は、上記ウイルスの総量には、これも含む。
【0051】
さらに、本実施形態では、tracrRNAユニット、crRNA、CRISPR酵素又はこれをコードする核酸とともに、一本鎖オリゴ(ssODNs)等のドナーオリゴDNAを共導入してもよい。ssODNsは、公知の方法にしたがってデザインすることができる。
【0052】
CRISPR酵素として、Streptococcus pyogenes、Staphylococcus aureus、Francisella novicida、Campylobacter jejuni、Neisseria meningitidis、Streptococcus thermophilus、Clostridium cellulolyticum、Treponema denticola、Brevibacillus laterosporus、Actinobacillus succinogenes等に由来するCas9等を例示できる。また、この他にも、文献:Gasiunas et al. (2020), Nat Commun, 11_5512のSupplementary Data 2に記載の、Lpn、Khu、Ain、Cgl、Esp1、Esp2、Fma、Lce、Lrh、Lsp1、Lsp2、Pac、Tba、Tde、Tpu、Vpa、Efa、Eit、Lan、Lmo、Sag1、Sag2、Sdy、Seq1、Seq2、Sga、Smu、Sra、Bni、Ece、Edo、Fho、Mga、Mse、Sgo、Sma2、Ssa、Ssi、Ssu、Sth1A、Tsp、Bok、Cco、Cpe、Dde、Ghc2、Ghy3、Ghy4、Gsp、Kki、Nme2、Nsp、Tmo、Nsa、Jpa、Rsp、Bbo、Cca2、Cme2、Cme3、Cme4、Csa、Ghc1、Ghe、Ghh1、Ghh2、Ghy1、Msc、Sdo、Spa、Cca1、Cga、Cme1、Ffr、Ghy2、Orh、Phi、Psp、Wvi等のCas9を挙げることができる。
【0053】
さらに、Cas9は、アミノ酸置換を有するか、及び/又はエフェクター分子と結合していてもよい。アミノ酸置換したCas9として、例えばStreptococcus pyogenesCas9(SpCas9ともいう)のR691A変異(HiFiCas9ともいう)等の高特異性変異、SpCas9のD10AおよびH840A変異(dCas9)等のヌクレアーゼ不活性化変異等を挙げることができる。エフェクター分子として、相同組み換え修復を促進するためのRad51タンパク質、マイクロホモロジーを介した末端結合を促進するためのCtIPタンパク質を挙げることができる。エフェクター分子は、リンカーを介してCas9に結合され得る。また、Cas9として、H840A変異を有するnCas9に逆転写酵素をエフェクターとして結合させることができる。
【0054】
本明細書において、「Cas9」は、上記様々な生物由来する野生型Cas9、アミノ酸置換を有する変異型Cas9、エフェクター分子と結合した変異型Cas9等を含み得る。
CRISPR酵素は、タンパク質、又はタンパク質をコードする核酸の状態で細胞、個体、又は組織に導入することができる。
【0055】
本実施形態のゲノム編集方法が適用される生物は、特に制限されない。生物は、原核細胞生物であっても、真核細胞生物、真核細胞生物由来の培養細胞であってもよい。真核細胞生物として、例えば、魚類、は虫類、両生類、鳥類、哺乳類、昆虫、甲殻類、節足動物、軟体動物、棘皮動物、刺胞動物、環形動物、線形動物等の動物細胞生物、植物、藻類等の植物細胞生物、真菌類、原生生物等を挙げることができる。
【0056】
5.ゲノム編集キット
第4の実施形態は、上記1.において述べたtracrRNAユニット、crRNA、及びCRISPR酵素又はこれをコードする核酸を含む、ゲノム編集キットに関する。各用語の説明は、上記1.及び4.の説明をここに援用する。
【0057】
第5の実施形態は、上記2.において述べたキメラRNA、及びCRISPR酵素又はこれをコードする核酸を含む、ゲノム編集キットに関する。各用語の説明は、上記2.、4.の説明をここに援用する。
【0058】
第6の実施形態は、上記3.において述べたtracrRNAユニットを構成する各RNAをコードする、又はキメラRNAをコードするDNAフラグメント;及びCRISPR酵素又はこれをコードする核酸を含む、ゲノム編集キットに関する。各用語の説明は、上記3.、4.の説明をここに援用する。
【0059】
6.変形例
本明細書に開示されるtracrRNAユニットを構成する各RNA鎖、キメラRNAは、5’及び/又は3’末端に、機能的モチーフを備えていてもよい。機能的モチーフとして、例えばビオチン標識、ヌクレアーゼ耐性修飾、蛍光標識、タンパク質結合モチーフ等を挙げることができる。
【実施例0060】
以下に実施例を示して、本発明の態様についてより詳細に説明するが、本発明は実施例に限定して解釈されるものではない。
【0061】
1.ゲノム編集実験のためのツール設計
(1)crRNA
本明細書において、crRNAのヌクレオチド配列は、標的DNAとの塩基対形成が20ヌクレオチドである場合、「N」を任意のヌクレオチドとして、5’-NNNNNNNNNNNNNNNNNNNNGUUUUAGAGCUAUGCUGUUUUG-3’(配列番号2)である。本実施例において、標的遺伝子はメダカのslc45a2であり、PAMを含む標的配列は5’ -ACGGAGCGCACTGGAAGCTGAGG-3’(配列番号3)であり、crRNAのヌクレオチド配列は5’-ACGGAGCGCACUGGAAGCUGGUUUUAGAGCUAUGCUGUUUUG-3’(配列番号4)である。RNAの合成は、Fasmac社が実施した。
【0062】
(2)通常型tracrRNA
本明細書において、通常型tracrRNAのヌクレオチド配列は、図2に示す5’-AAACAGCAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCU-3’(配列番号1)であり、nt No.24~34を「第1ステムループ」、nt No.35~39を「リンカー」、nt No.40~53を「第2ステムループ」と称する。RNAの合成は、Fasmac社が実施した。
【0063】
(3)tracrRNAにおける5’側配列の短縮
上記(2)に記載した通常型tracrRNAから、nt No.1~8を削除した。短縮後のヌクレオチド配列は、5’-UAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCU-3’(配列番号5)である。RNAの合成は、Fasmac社が実施した。
【0064】
(4)tracrRNAにおけるリンカーの短縮
上記(2)に記載した通常型tracrRNAから、nt No.36~39を削除した。短縮後のヌクレオチド配列は、5’-AAACAGCAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCU-3’(配列番号6)である。RNAの合成は、Fasmac社が実施した。
【0065】
(5)tracrRNAにおける第1ステムループの分割
上記(2)に記載した通常型tracrRNAを、nt No.1~28およびnt No.29~69に分割し、5’側に位置する第1の一本鎖RNAの3’側に5’-CCGG-3’を付与し、3’側に位置する第2の一本鎖RNAの5’側に5’-CCGG-3’を付与した。ユニットの配列を図3aに示す。第1の一本鎖RNAのヌクレオチド配列は、5’-AAACAGCAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUCCGG-3’(配列番号7)であり、第2の一本鎖RNAのヌクレオチド配列は、5’-CCGGAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCU-3’(配列番号8)である。ワトソン・クリック塩基対形成により、図3aにおいて配列番号7により示される第1の一本鎖RNAのnt No.25、26、27、28、29、30、31、32は、図3aにおいて配列番号8により示される第2の一本鎖RNAのnt No.9、8、6、5、4、3、2、1と相互作用することが予想され、ミスマッチ塩基対形成により、図3aにおいて配列番号7により示される第1の一本鎖RNAのnt No.24は、図3aにおいて配列番号8により示される第2の一本鎖RNAのnt No.10と相互作用することが予想される。配列番号7の1番目の「a」は、図2に示す配列番号1の1番目の「a」に対応し、配列番号8の5番目の「a」は、図2に示す配列番号1の29番目の「a」に対応する。RNAの合成は、Fasmac社が実施した。
【0066】
(6)tracrRNAにおける第2ステムループの分割
上記(2)に記載した通常型tracrRNAを、nt No.1~44およびnt No.49~69に分割し、5'側に位置する第1の一本鎖RNAの3'側に5’-GGCC-3’を付与し、3’側に位置する第2の一本鎖RNAの5’側に5’-GGCC-3’を付与した。ユニットの配列を図3bに示す。図3bにおいて配列番号9により示される第1の一本鎖RNAのヌクレオチド配列は、5’-AAACAGCAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGGCC-3’(配列番号9)であり、図3bにおいて配列番号10により示される第2の一本鎖RNAのヌクレオチド配列は、5’-GGCCAAGUGGCACCGAGUCGGUGCU-3’(配列番号10)である。ワトソン・クリック塩基対形成により、第1の一本鎖RNAのnt No.41、42、43、44、45、46、47、48は、第2の一本鎖RNAのnt No.8、7、6、5、4、3、2、1と相互作用することが予想され、ミスマッチ塩基対形成により、第1の一本鎖RNAのnt No.40は、第2の一本鎖RNAのnt No.9と相互作用することが予想される。配列番号9の1番目の「a」は、図2に示す配列番号1の1番目の「a」に対応し、配列番号10の5番目の「a」は、図2に示す配列番号1の49番目の「a」に対応する。RNAの合成は、Fasmac社が実施した。
【0067】
(7)tracrRNAにおける5’側配列の短縮、リンカーの短縮、および第2ステムループの分割
上記(2)に記載した通常型tracrRNAから、nt No.1~8およびnt No.36~39を削除し、nt No.9~35、40~44およびnt No.49~69に分割し、5’側に位置する第1の一本鎖RNAの3’側に5’-GGCC-3’を付与し、3'側に位置する第2の一本鎖RNAの5'側に5’-GGCC-3’を付与した。ユニットの配列を図4aに、ユニットの予測される構造を図4bに示す。第1の一本鎖RNAのヌクレオチド配列は、5’-UAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUAACUUGGCC-3’(配列番号11)であり、第2の一本鎖RNAのヌクレオチド配列は、5’-GGCCAAGUGGCACCGAGUCGGUGCU-3’(配列番号10)である。ワトソン・クリック塩基対形成により、図4aにおいて配列番号11により示される第1の一本鎖RNAのnt No. 29、30、31、32、33、34、35、36は、図4aにおいて配列番号10により示される第2の一本鎖RNAのnt No. 8、7、6、5、4、3、2、1と相互作用することが予想され、ミスマッチ塩基対形成により、図4aにおいて配列番号11により示される第1の一本鎖RNAのnt No. 28は、図4aにおいて配列番号10により示される第2の一本鎖RNAのnt No. 9と相互作用することが予想される。配列番号11の1番目の「u」は、図2に示す配列番号1の9番目の「u」に対応し、配列番号10の5番目の「a」は、図2に示す配列番号1の49番目の「a」に対応する。RNAの合成は、Fasmac社が実施した。
【0068】
(8)tracrRNAにおける第1ステムループおよび第2ステムループの分割
上記(2)に記載した通常型tracrRNAを、nt No. 1~28、nt No. 29~44、およびnt No. 49~69に分割し、最も5’側に位置する第1の一本鎖RNAの3’側に5’-CCGG-3’を付与し、中央に位置する第2の一本鎖RNAの5’側に5’-CCGG-3’、3’側に5’-GGCC-3’を付与し、最も3’側に位置する第3の一本鎖RNAの5’側に5’-GGCC-3’を付与した。ユニットの配列を図5aに、ユニットの予測される構造を図5bに示す。第1の一本鎖RNAのヌクレオチド配列は、5’-AAACAGCAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUCCGG-3’(配列番号7)であり、第2の一本鎖RNAのヌクレオチド配列は、5’ -CCGGAGUCCGUUAUCAACUUGGCC-3’(配列番号12)であり、第3の一本鎖RNAのヌクレオチド配列は、5’-GGCCAAGUGGCACCGAGUCGGUGCU-3’(配列番号10)である。ワトソン・クリック塩基対形成により、図5aにおいて配列番号7により示される第1の一本鎖RNAのnt No.25、26、27、28、29、30、31、32は、図5aにおいて配列番号12により示される第2の一本鎖RNAのnt No.9、8、6、5、4、3、2、1と相互作用することが予想され、図5aにおいて配列番号12により示される第2の一本鎖RNAのnt No.17、18、19、20、21、22、23、24は、図5aにおいて配列番号10により示される第3の一本鎖RNAのnt No.8、7、6、5、4、3、2、1と相互作用することが予想される。ミスマッチ塩基対形成により、図5aにおいて配列番号7により示される第1の一本鎖RNAのnt No.24は、図5aにおいて配列番号12により示される第2の一本鎖RNAのnt No.10と相互作用することが予想され、図5aにおいて配列番号12により示される第2の一本鎖RNAのnt No.16は、図5aにおいて配列番号10により示される第3の一本鎖RNAのnt No.9と相互作用することが予想される。配列番号7の1番目の「a」は、図2に示す配列番号1の1番目の「a」に対応し、配列番号12の5番目の「a」は、図2に示す配列番号1の29番目の「a」に対応し、配列番号10の5番目の「a」は、図2に示す配列番号1の49番目の「a」に対応する。RNAの合成は、Fasmac社が実施した。
【0069】
(9)tracrRNAにおける5’側配列の短縮、第1ステムループの分割、および第2ステムループの分割
上記(2)に記載した通常型tracrRNAから、nt No.1~8を削除し、nt No.9~28、nt No.29~44、およびnt No.49~69に分割し、最も5’側に位置する第1の一本鎖RNAの3’側に5’-CCGG-3’を付与し、中央に位置する第2の一本鎖RNAの5’側に5’-CCGG-3’、3’側に5’-GGCC-3’を付与し、最も3’側に位置する第3の一本鎖RNAの5’側に5’-GGCC-3’を付与した。ユニットの配列を図6aに、ユニットの予測される構造を図6bに示す。第1の一本鎖RNAのヌクレオチド配列は、5’-UAGCAAGUUAAAAUAAGGCUCCGG-3’(配列番号13)であり、第2の一本鎖RNAのヌクレオチド配列は、5’-CCGGAGUCCGUUAUCAACUUGGCC-3’(配列番号12)であり、第3の一本鎖RNAのヌクレオチド配列は、5’-GGCCAAGUGGCACCGAGUCGGUGCU-3’(配列番号10)である。ワトソン・クリック塩基対形成により、図6aにおいて配列番号13により示される第1の一本鎖RNAのnt No.17、18、19、20、21、22、23、24は、図6aにおいて配列番号12により示される第2の一本鎖RNAのnt No.9、8、6、5、4、3、2、1と相互作用することが予想され、図6aにおいて配列番号12により示される第2の一本鎖RNAのnt No.17、18、19、20、21、22、23、24は、図6aにおいて配列番号10により示される第3の一本鎖RNAのnt No.8、7、6、5、4、3、2、1と相互作用することが予想される。ミスマッチ塩基対形成により、図6aにおいて配列番号13により示される第2の一本鎖RNAのnt No.16は、図6aにおいて配列番号12により示される第2の一本鎖RNAのnt No.10と相互作用することが予想され、図6aにおいて配列番号12により示される第2の一本鎖RNAのnt No.16は、図6aにおいて配列番号10により示される第3の一本鎖RNAのnt No.9と相互作用することが予想される。配列番号13の1番目の「u」は、図2に示す配列番号1の9番目の「u」に対応し、配列番号12の5番目の「a」は、図2に示す配列番号1の29番目の「a」に対応し、配列番号10の5番目の「a」は、図2に示す配列番号1の49番目の「a」に対応する。RNAの合成は、Fasmac社が実施した。
【0070】
2.インビトロ切断アッセイ
(1)基質DNAの作製
メダカゲノムDNAより、slc45a2遺伝子座の標的配列周辺を、KOD FX(東洋紡社)並びにフォワードプライマー5’-GTCACTCTGTATTGGGGCGCCTCCT-3’(配列番号14)およびリバースプライマー5’-CTTGGCCTGATCTCAGGGCTGGATG-3’(配列番号15)を用いて、メダカゲノムDNAからPCR増幅した。プライマーの合成は、ユーロフィンジェノミクス社が実施した。増幅産物を、NucleoSpin Gel and PCR Clean-up(タカラバイオ社)を用いて精製し、NanoDrop(Thermo Fisher Scientific社)を用いてDNA濃度を測定した。DNA 100ngを含む溶液にローディングバッファーを加え、ミドリグリーン(日本ジェネティクス社)を添加したアガロースゲルで電気泳動し、バンドを確認した。設計上のヌクレオチド長は253塩基対である。
【0071】
(2)crRNAおよびtracrRNAユニットのアニーリング
上記1.(1)に記載した、メダカのslc45a2遺伝子を標的とするcrRNA 40~200 ng/μL(終濃度)と、上記1.(2)~(9)に記載した第1の一本鎖RNA、及び第2の一本鎖RNA;または第1の一本鎖RNA、第2の一本鎖RNA、及び第3の一本鎖RNAを等モル量となるように混合した。tracrRNAを構成する各一本鎖RNAのモル数は、ヌクレオチド長を基準とし、下記のように計算した。
(crRNA濃度 ng/μL)×(各一本鎖RNAのヌクレオチド長)/42
混合液は、サーマルサイクラーを用いて、95℃で5分間加熱後、毎秒0.1℃ずつ25℃まで下げ、4℃で保存した。
【0072】
(3)インビトロ切断アッセイ
上記(2)でアニーリングさせたRNA溶液に、Cas9タンパク質(Fasmac社)を0.5~2 μg/μL(終濃度)、上記(1)で調製した基質DNAを20 ng/μL(終濃度)、Hバッファー(タカラバイオ社)を加えた。サーマルサイクラーを用いて、37℃で60分間反応後、80℃で5分間熱処理し、4℃で保存した。
【0073】
(4)アガロースゲル電気泳動
上記(3)の切断産物に、RNaseA(ニッポンジーン社)を1 μg/μL(終濃度)加え、サーマルサイクラーを用いて37℃で30分間反応後、80℃で5分間熱処理し、4℃で保存した。ローディングバッファーを加え、ミドリグリーン(日本ジェネティクス社)を添加した3%のアガロースゲルで泳動し、LED照射によりバンドを確認した。未切断の基質DNAは253塩基対、切断後の基質DNAは144塩基対および109塩基対であることが予想される。
【0074】
(5)結果
上記図7に、Streptococcus pyogenes由来のCas9タンパク質、並びにアニーリングさせた1.(1)に記載したcrRNAおよび1.(2)~(9)に記載した第1の一本鎖RNA、及び第2の一本鎖RNA;または第1の一本鎖RNA、第2の一本鎖RNA、及び第3の一本鎖RNAからなるtracrRNAを用いたインビトロ切断アッセイの結果を示す。各設計において、114塩基対および109塩基対とみられる切断産物が生じ、DNA切断活性を有すること認められた。
【0075】
3.メダカ受精卵における変異の導入
(1)メダカ受精卵の取得
性成熟した雌雄のメダカを水槽内で共存させ、産卵直後の受精卵を採取した。
【0076】
(2)CRISPR溶液を細胞に注射するためのマイクロインジェクション
上記(1)に記載の方法により、メダカ受精卵を取得した。上記2.(2)に記載の方法により、メダカのslc45a2遺伝子座を標的とするcrRNA並びに第1の一本鎖RNA、及び第2の一本鎖RNA;または第1の一本鎖RNA、第2の一本鎖RNA、及び第3の一本鎖RNAからなるtracrRNAをアニーリングさせ、Cas9タンパク質(Fasmac社)を0.5~2 μg/μL(終濃度)、GFP mRNAを50ng/μL(終濃度)、crRNAを40~160ng/μL(終濃度)、tracrRNAを60~240ng/μL(終濃度)加え、受精卵1個あたり1~5nLを、マイクロインジェクション法により導入し、少量のメチレンブルーを加えた飼育水に移して26℃で維持した。翌日、GFPの蛍光シグナルを有する胚を、正しく細胞内にCRISPR溶液を注射した卵として選抜した。
【0077】
(3)ゲノム編集による表現型の解析
マイクロインジェクションから4日後、実体顕微鏡(Olympus社)を用いて、メダカ胚の眼を観察した。slc45a2遺伝子に変異が導入された場合、黒色色素胞が形成されないことから、眼の一部または全体の黒色色素が欠損することが予想される。観察を終えた胚は、次項に記載の解析まで維持した。
【0078】
(4)メダカ破砕液の作製
上記(3)で取得した受精卵を、1×メダカECM(0.1% NaCl, 0.003% KCl, 0.004% CaCl2, 0.016% MgSO4)に少量のメチレンブルーを加えた飼育水に移し、26℃のインキュベーターで維持した。5~10日後、25μLのアルカリバッファー(25 mM NaOH、0.2 mM EDTA)に入れ、200 μLチップで卵膜を破り、サーマルサイクラーを用いて95℃で5分間熱処理した。等量(25μL)の40mM Tris-HCl(pH 8.0)を加えて、中和後に、ゲノムDNAサンプルとして、4℃で保存した。
【0079】
(5)ヘテロ二本鎖移動度解析(HMA)による変異解析
マイクロインジェクションから5~10日後、上記(4)に記載の方法により、メダカ胚を破砕した。上記2.(3)に記載の領域をPCR増幅し、MultiNA(島津社)を用いて電気泳動した。標的領域に変異が導入された場合、PCRにおけるアニーリングの過程でヘテロ二重鎖が生じ、物理的特性による泳動度の違いから、バンドシフトが起こることが予想される。より強く変異が導入された場合は、多様な変異が多数出現するため、バンドシフトがより強く検出されると予想される。
【0080】
(6)サンガーシーケンス法による変異解析
上記(3)に記載のPCRにより生じた増幅産物を用いて、サンガーシーケンス法により、ヌクレオチド配列の波形を得た。サンガーシーケンス法は、ユーロフィンジェノミクス社が実施した。TIDE(オランダがん研究所)を用いて、変異アレルの配列および出現頻度を推定した。
【0081】
(7)結果
図8に、Cas9タンパク質、並びにアニーリングさせた上記1.(1)に記載したcrRNAおよび上記1.(5)~(9)に記載した第1の一本鎖RNA、及び第2の一本鎖RNA;または第1の一本鎖RNA、第2の一本鎖RNA、及び第3の一本鎖RNAからなるtracrRNAを注入したメダカ胚の眼を観察した結果を示す。いずれも複数の胚において、眼の全体または一部における黒色色素の欠損が認められた。
【0082】
図9に、Cas9タンパク質、並びにアニーリングさせた上記1.(1)に記載したcrRNAおよび上記1.(5)~(9)に記載した第1の一本鎖RNA、及び第2の一本鎖RNA;または第1の一本鎖RNA、第2の一本鎖RNA、及び第3の一本鎖RNAからなるtracrRNAを注入したメダカ胚のライセートを用いた、HMA解析の結果を示す。いずれも複数の胚において、変異導入によるバンドシフトが認められた。
図10に、Cas9タンパク質、並びにアニーリングさせた上記1.(1)に記載したcrRNAおよび上記1.(5)~(9)に記載した第1の一本鎖RNA、及び第2の一本鎖RNA;または第1の一本鎖RNA、第2の一本鎖RNA、及び第3の一本鎖RNAからなるtracrRNAを注入したメダカ胚のライセートを用いた、サンガーシーケンス法並びにTIDEによる変異解析の結果を示す。いずれも複数の胚において、塩基の欠失または挿入を有する変異アレルの存在が示唆された。
【0083】
以上の結果から、tracrRNAを分割した場合、また、さらに一部のヌクレオチド配列を削除してもtracrRNAとしての機能が維持されることが示された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
2024006091000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-07-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CRISPR-Cas9ゲノム編集システムに使用するための、第1の一本鎖RNAと第2の一本鎖RNAから構成されるtracrRNAユニットであって、
第1の一本鎖RNAと第2の一本鎖RNAは非連続であり、
第1の一本鎖RNAが、少なくとも第1の部分と第2の部分を有し、
第1の部分と第2の部分は重複せず、第1の部分はcrRNAの一部に相補的な配列を有し、第2の部分は第2の一本鎖RNAに相補的な配列を有する、
tracrRNAユニット。
【請求項2】
CRISPR-Cas9ゲノム編集システムに使用するための、第1の一本鎖RNAと第2の一本鎖RNAと第3の一本鎖RNAから構成されるtracrRNAユニットであって、
第1の一本鎖RNAと第2の一本鎖RNAと第3の一本鎖RNAは非連続であり、
第1の一本鎖RNAが、少なくとも第1の部分と第2の部分を有し、
第1の部分と第2の部分は重複せず、第1の部分はcrRNAの一部に相補的な配列を有し、第2の部分は第2の一本鎖RNAに相補的な配列を有し、
第2の一本鎖RNAが、少なくとも第1の部分を有し、
第2の一本鎖RNAの第1の部分は、第3の一本鎖RNAに相補的な配列を有する、
tracrRNAユニット。
【請求項3】
crRNAと第1の一本鎖RNAが順に連結されている、請求項1又は2に記載のtracrRNAユニット。
【請求項4】
crRNAと第1の一本鎖RNAと第2の1本鎖RNAが順に連結されている、請求項2に記載のtracrRNAユニット。
【請求項5】
第1の一本鎖RNAと第2の一本鎖RNAの少なくとも一方が、39ヌクレオチド以下の長さを有する、請求項1に記載のtracrRNAユニット。
【請求項6】
第1の一本鎖RNA、第2の一本鎖RNA、及び第3の一本鎖RNAの少なくとも1つが、39ヌクレオチド以下の長さを有する、請求項2に記載のtracrRNAユニット。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のtracrRNAユニットと、
crRNAと、
Cas9と、
を使用するゲノム編集方法。
【手続補正書】
【提出日】2022-08-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CRISPR-Cas9ゲノム編集システムに使用するための、第1の一本鎖RNAと第2の一本鎖RNAから構成されるtracrRNAユニットであって、
第1の一本鎖RNAと第2の一本鎖RNAは連結されておらず
第1の一本鎖RNAが、少なくとも第1の部分と第2の部分を有し、
第1の部分と第2の部分は重複せず、第1の部分はcrRNAの一部に相補的な配列を有し、第2の部分は第2の一本鎖RNAに相補的な配列を有する、
tracrRNAユニット。
【請求項2】
CRISPR-Cas9ゲノム編集システムに使用するための、第1の一本鎖RNAと第2の一本鎖RNAと第3の一本鎖RNAから構成されるtracrRNAユニットであって、
第1の一本鎖RNAと第2の一本鎖RNAと第3の一本鎖RNAは連結されておらず
第1の一本鎖RNAが、少なくとも第1の部分と第2の部分を有し、
第1の部分と第2の部分は重複せず、第1の部分はcrRNAの一部に相補的な配列を有し、第2の部分は第2の一本鎖RNAに相補的な配列を有し、
第2の一本鎖RNAが、少なくとも第1の部分を有し、
第2の一本鎖RNAの第1の部分は、第3の一本鎖RNAに相補的な配列を有する、
tracrRNAユニット。
【請求項3】
crRNAと第1の一本鎖RNAが順に連結されている、請求項1又は2に記載のtracrRNAユニット。
【請求項4】
第1の一本鎖RNAと第2の一本鎖RNAの少なくとも一方が、39ヌクレオチド以下の長さを有する、請求項1に記載のtracrRNAユニット。
【請求項5】
第1の一本鎖RNA、第2の一本鎖RNA、及び第3の一本鎖RNAの少なくとも1つが、39ヌクレオチド以下の長さを有する、請求項2に記載のtracrRNAユニット。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のtracrRNAユニットと、
crRNAと、
Cas9と、
を使用するゲノム編集方法(ただし、ヒトの体内において実施するゲノム編集方法は含まない)
【請求項7】
請求項1又は2に記載のtracrRNAユニット、又は請求項1又は2に記載のtracrRNAユニットを構成する各RNAをコードするDNAフラグメントと、
crRNA、又はcrRNAをコードするDNAフラグメントと、
Cas9、又はCas9コードする核酸と、
を含む、ゲノム編集キット。
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図4
【補正方法】変更
【補正の内容】
図4
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図5
【補正方法】変更
【補正の内容】
図5
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図6
【補正方法】変更
【補正の内容】
図6