(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060911
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】放電ランプ用点灯装置、および車両用照射装置
(51)【国際特許分類】
H05B 41/288 20060101AFI20240425BHJP
【FI】
H05B41/288
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168482
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】石川 達章
(72)【発明者】
【氏名】長野 信久
【テーマコード(参考)】
3K072
【Fターム(参考)】
3K072AA11
3K072BA03
3K072CB07
3K072EB05
3K072GB12
3K072GC07
3K072HA05
3K072HA06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】制御遅れにより無制御状態となる期間において、共振外れが生じるのを抑制する放電ランプ用点灯装置を提供する。
【解決手段】第1のスイッチング素子11a、11bの駆動信号を生成する制御回路11cを有するスイッチング出力回路11と;一次側巻線が共振用コンデンサ13を介して第1のスイッチング素子と接続され、二次側巻線が放電ランプ4と電気的に接続されたトランス12と;第1の抵抗を有する動作周波数設定回路14と;動作周波数設定回路と並列に、第2の抵抗16bと第2のスイッチング素子16cとの直列回路と、始動検出回路16dと、を有する動作周波数制御回路16と;を有し、始動検出回路は、スイッチング出力回路の入力側に直流電圧が印加されたのを検出した場合、所定の期間、第2のスイッチング素子をON状態にし、制御回路は、第1の抵抗と第2の抵抗との合成抵抗値に基づいて、第1の動作周波数を有する駆動信号を生成する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電ランプに、所定の動作周波数の駆動電圧を印加する放電ランプ用点灯装置であって、
第1のスイッチング素子と、前記第1のスイッチング素子の駆動信号を生成する制御回路と、を有し、直流電圧を前記駆動電圧に変換するスイッチング出力回路と;
一次側巻線が、共振用コンデンサを介して前記第1のスイッチング素子と電気的に接続され、二次側巻線が、前記放電ランプと電気的に接続されたトランスと;
前記制御回路と電気的に接続され、第1の抵抗を有する動作周波数設定回路と;
前記動作周波数設定回路と並列に、前記制御回路と電気的に接続され、前記制御回路と電気的に接続されたコンデンサと、前記コンデンサと直列接続された第2の抵抗と、前記第2の抵抗と直列接続された第2のスイッチング素子と、前記第2のスイッチング素子および前記スイッチング出力回路の入力側と電気的に接続された始動検出回路と、を有する動作周波数制御回路と;
を具備し、
前記始動検出回路は、前記スイッチング出力回路の入力側に前記直流電圧が印加されたのを検出した場合には、所定の期間、前記第2のスイッチング素子をON状態にし、
前記制御回路は、前記第1の抵抗と、前記第1の抵抗と並列接続される前記第2の抵抗と、の合成抵抗値に基づいて、第1の動作周波数を有する第1の駆動信号を生成する放電ランプ用点灯装置。
【請求項2】
前記始動検出回路は、前記所定の期間の経過後に、前記第2のスイッチング素子をOFF状態にし、
前記制御回路は、前記第1の抵抗の抵抗値に基づいて、前記第1の動作周波数よりも低い第2の動作周波数を有する第2の駆動信号を生成する請求項1記載の放電ランプ用点灯装置。
【請求項3】
前記第1の動作周波数を有する前記第1の駆動信号の生成から、前記第2の動作周波数を有する前記第2の駆動信号の生成に切り替える際に、
前記制御回路は、前記コンデンサと、前記第2の抵抗とによる、時定数の間、前記第1の動作周波数を前記第2の動作周波数に徐々に近づける請求項2記載の放電ランプ用点灯装置。
【請求項4】
前記制御回路と電気的に接続され、前記トランスの出力状態を検出するフィードバック回路をさらに具備した請求項1または2に記載の放電ランプ用点灯装置。
【請求項5】
車両に設けられる車両用照射装置であって、
放電ランプと;
前記放電ランプと電気的に接続された、請求項1記載の放電ランプ用点灯装置と;
を具備した車両用照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、放電ランプ用点灯装置、および車両用照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放電ランプを点灯させる点灯装置がある。例えば、放電ランプを点灯させる点灯装置として、スイッチング素子、共振用コンデンサ、トランスなどを有するLLC共振回路を備えた点灯装置が提案されている。LLC共振回路の動作周波数が共振周波数以下になると、いわゆる共振外れの状態となって、放電ランプの不点灯や、スイッチング素子の故障などが発生する場合がある。そのため、LLC共振回路においては、共振外れの状態とならないように、最低動作周波数が共振周波数以上となるようにしている。
【0003】
ここで、LLC共振回路の出力電圧(駆動電圧)のフィードバック制御に、例えば、トランス巻線から磁気結合により検出した電圧を整流平滑して用いる場合がある。しかしながら、この様なフィードバック制御においては、始動時に、制御遅れにより無制御状態となる期間が発生する場合がある。無制御状態となる期間においては、動作周波数が下がる。そのため、最低動作周波数を共振周波数の近傍に設定していると、動作周波数が下がった際に共振外れの状態となるおそれがある。
そこで、制御遅れにより無制御状態となる期間において、共振外れが生じるのを抑制することができる技術の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、制御遅れにより無制御状態となる期間において、共振外れが生じるのを抑制することができる放電ランプ用点灯装置、および車両用照射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る放電ランプ用点灯装置は、放電ランプに、所定の動作周波数の駆動電圧を印加する放電ランプ用点灯装置である。前記放電ランプ用点灯装置は、第1のスイッチング素子と、前記第1のスイッチング素子の駆動信号を生成する制御回路と、を有し、直流電圧を前記駆動電圧に変換するスイッチング出力回路と;一次側巻線が、共振用コンデンサを介して前記第1のスイッチング素子と電気的に接続され、二次側巻線が、前記放電ランプと電気的に接続されたトランスと;前記制御回路と電気的に接続され、第1の抵抗を有する動作周波数設定回路と;前記動作周波数設定回路と並列に、前記制御回路と電気的に接続され、前記制御回路と電気的に接続されたコンデンサと、前記コンデンサと直列接続された第2の抵抗と、前記第2の抵抗と直列接続された第2のスイッチング素子と、前記第2のスイッチング素子および前記スイッチング出力回路の入力側と電気的に接続された始動検出回路と、を有する動作周波数制御回路と;を具備している。前記始動検出回路は、前記スイッチング出力回路の入力側に前記直流電圧が印加されたのを検出した場合には、所定の期間、前記第2のスイッチング素子をON状態にする。前記制御回路は、前記第1の抵抗と、前記第1の抵抗と並列接続される前記第2の抵抗と、の合成抵抗値に基づいて、第1の動作周波数を有する第1の駆動信号を生成する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態によれば、制御遅れにより無制御状態となる期間において、共振外れが生じるのを抑制することができる放電ランプ用点灯装置、および車両用照射装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施の形態に係る車両用照射装置を例示するための模式斜視図である。
【
図2】
図1における車両用照射装置のA-A線方向の模式断面図である。
【
図4】周波数と昇降圧比との関係を例示するためのグラフである。
【
図5】動作周波数の設定を例示するためのグラフである。
【
図6】無制御状態となる期間における動作周波数の変化を例示するためのグラフである。
【
図7】動作周波数制御回路の作用を例示するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
本実施の形態に係る放電ランプ用点灯装置の用途には特に限定はないが、例えば、自動車や鉄道などの車両に設けられる車両用照射装置に用いることができる。そのため、以下においては、一例として、放電ランプ用点灯装置が車両用照射装置に設けられる場合を説明する。
【0010】
車両用照射装置は、例えば、自動車の車室内やトランクルームなどに設けたり、鉄道車両の車室内などに設けたりすることができる。ただし、車両用照射装置の設置場所は、例示をしたものに限定されるわけではない。
【0011】
また、本発明の1つの実施形態において、放電ランプ用点灯装置1(以下、単に点灯装置1と称する)を具備した車両用照射装置100を提供することができる。後述する点灯装置1に関する説明、および点灯装置1の変形例(例えば、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもので、本発明の特徴を備えているもの)は、いずれも車両用照射装置100に適用することができる。
【0012】
図1は、本実施の形態に係る車両用照射装置100を例示するための模式斜視図である。
図2は、
図1における車両用照射装置100のA-A線方向の模式断面図である。
図1、および
図2に示すように、車両用照射装置100には、例えば、点灯装置1、筐体2、基板3、放電ランプ4、ランプカバー5、配線6、窓7、およびシールド8が設けられている。
【0013】
まず、本実施の形態に係る点灯装置1について例示する。
図2に示すように、点灯装置1は、筐体2の内部に設けられている。点灯装置1は、例えば、基板3の、放電ランプ4が設けられる側の面に設けられている。放電ランプ4と点灯装置1が基板3の同じ側の面に設けられていれば、筐体2の厚み寸法Tを小さくするのが容易となる。点灯装置1は、例えば、配線コードや金属板などの配線部材を用いて、放電ランプ4が装着される一対の端子ホルダ41と電気的に接続されている。そのため、放電ランプ4を一対の端子ホルダ41に装着することで、点灯装置1と放電ランプ4とを電気的に接続することができる。
【0014】
点灯装置1は、放電ランプ4に、所定の動作周波数の駆動電圧を印加する。また、点灯装置1は、放電ランプ4に印加する駆動電圧の値を制御する。放電ランプ4に駆動電圧が印加されると、例えば、放電ランプ4に設けられた一対の電極間に放電が生じて、放電ランプ4から紫外線などの光が放射される。
【0015】
図3は、点灯装置1を例示するための回路図である。
図3に示すように、点灯装置1は、例えば、スイッチング出力回路11、トランス12、共振用コンデンサ13、動作周波数設定回路14、フィードバック回路15、および、動作周波数制御回路16を有する。
【0016】
スイッチング出力回路11は、共振用コンデンサ13を介して、2つのトランス12の一次側巻線に電気的に接続されている。スイッチング出力回路11は、直流電圧を所定の周波数の交流電圧に変換する。例えば、スイッチング出力回路11は、直流電源200からの直流電圧を所定の周波数の交流電圧、例えば、擬似的な正弦波電圧に変換する。直流電源200は、例えば、電池や、自動車などの車両に搭載されたバッテリ-などである。
【0017】
図3に例示をしたスイッチング出力回路11は、ハーフブリッジ回路である。ハーフブリッジ回路であるスイッチング出力回路11は、例えば、スイッチング素子11a(第1のスイッチング素子の一例に相当する)、スイッチング素子11b(第1のスイッチング素子の一例に相当する)、および制御回路11cを有する。
【0018】
スイッチング素子11aおよびスイッチング素子11bは、例えば、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect TransistorField effect transistor)である。スイッチング素子11aおよびスイッチング素子11bが、電圧駆動形素子であるMOSFETであれば、回路の電力ロスを小さくすることができる。また、スイッチング素子11aおよびスイッチング素子11bが、MOSFETであれば、スイッチングの高速化や、スイッチングロスの低減を図ることができる。
【0019】
制御回路11cは、スイッチング素子11a、およびスイッチング素子11bと電気的に接続されている。制御回路11cは、スイッチング素子11a、11bの駆動信号を生成する。例えば、制御回路11cは、後述する動作周波数設定回路14の抵抗値に基づいて、動作周波数を設定する。また、例えば、制御回路11cは、設定された動作周波数に基づいて、スイッチング素子11aのゲート電極への電圧の印加と、スイッチング素子11bのゲート電極への電圧の印加と、を交互に切り替えて、直流電源200からの直流電圧を所定の周波数の交流電圧(駆動電圧)に変換する。例えば、周波数は、100kHz~300kHz程度である。また、制御回路11cは、スイッチング素子11a、11bのスイッチング周波数を変化させることで、駆動電圧(トランス12の一次側巻線に印加する電圧)を変化させることができる。
【0020】
なお、スイッチング出力回路11がハーフブリッジ回路である場合を例示したが、スイッチング出力回路11は、例えば、フルブリッジ回路などであってもよい。
【0021】
トランス12は、2つ設けられている。2つのトランス12の一次側巻線は、共振用コンデンサ13を介して、スイッチング出力回路11(スイッチング素子11a、11b)に電気的に接続されている。一方のトランス12の二次側巻線は、放電ランプ4の一方の電極と電気的に接続されている。他方のトランス12の二次側巻線は、放電ランプ4の他方の電極と電気的に接続されている。すなわち、トランス12の中点をグランド(基準)とした両高圧放電の形態となっている。
なお、トランス12は、1つ設けられていてもよい。
【0022】
ここで、本実施の形態に係る点灯装置1には、スイッチング出力回路11、トランス12、および共振用コンデンサ13を有するLLC共振回路が設けられているので、回路のスイッチングロスを低減させることができる。そのため、回路効率を向上させることができるので、放電ランプ4と回路を含めたトータルの効率を向上させることができる。
【0023】
また、回路効率を向上させることができるので、回路部品の発熱量を低減させたり、点灯装置1を小さくしたりすることができる。点灯装置1が小さくなれば、点灯装置1が設けられる車両用照射装置100の小型化を図ることができる。車両用照射装置100は、車室内などの狭いスペースに設けられる場合が多い。そのため、点灯装置1の小型化を図ることができれば、車両用照射装置100の設置が容易となる。
【0024】
ここで、LLC共振回路は、動作周波数により昇降圧比、ひいては駆動電圧が変動する。
図4は、周波数と昇降圧比との関係を例示するためのグラフである。
図4から分かるように、動作周波数が共振周波数よりも高くなるほど、昇降圧比が低下する。動作周波数が共振周波数よりも低ければ、動作周波数が共振周波数よりも高い場合に比べて昇降圧比が高くなる。動作周波数が共振周波数よりも低くなる領域は、いわゆる共振外れの領域となる。共振外れの領域においては、放電ランプ4の始動ができないため、放電ランプ4が不点灯となる。また、スイッチング素子11a、11bの故障が発生するおそれがある。
【0025】
そのため、点灯装置1には、動作周波数設定回路14が設けられ、共振周波数よりも高い周波数の動作周波数が設定できるようになっている。
動作周波数設定回路14は、例えば、抵抗14a(第1の抵抗の一例に相当する)、および抵抗14b(第1の抵抗の一例に相当する)を有する。
抵抗14aは、抵抗14bと直列接続されている。直列接続された抵抗14a、および抵抗14bは、例えば、スイッチング出力回路11の制御回路11cとグランドとに電気的に接続されている。例えば、抵抗14aは固定抵抗とすることができる。例えば、抵抗14bは可変抵抗とすることができる。そのため、抵抗14bの抵抗値を変えることで、抵抗14aおよび抵抗14bの合成抵抗値を調整することができる。なお、抵抗14aのみが設けられていてもよいし、抵抗14bのみが設けられていてもよい。ただし、抵抗14a、および抵抗14bが設けられていれば、抵抗値の調整が容易となる。
【0026】
制御回路11cは、抵抗14aおよび抵抗14bの合成抵抗値に基づいて、動作周波数を設定する。
図5は、動作周波数の設定を例示するためのグラフである。
例えば、抵抗14aおよび抵抗14bの合成抵抗値を大きくすれば、制御回路11cの端子電圧が高くなる。抵抗14aおよび抵抗14bの合成抵抗値を小さくすれば、制御回路11cの端子電圧が低くなる。制御回路11cは、端子電圧の値に応じて、動作周波数の設定値を変化させることができる。例えば、
図5に示すように、制御回路11cは、抵抗値が大きい(端子電圧が高い)場合には動作周波数の設定値を低くし、抵抗値が小さい(端子電圧が低い)場合には動作周波数の設定値を高くする。
そのため、抵抗14aおよび抵抗14bの合成抵抗値を調整することで、共振周波数よりも高い周波数の動作周波数を設定することができる。その結果、共振外れの状態が発生するのを抑制することができる。
【0027】
ここで、直流電源200の電圧が変動する場合がある。例えば、一般的な自動車においては、動作標準電圧(定格電圧)が13.5V程度であるが、バッテリーの電圧低下、オルタネーターの動作、回路の影響などにより、直流電源200の電圧が9V以上16V以下の範囲で変動する場合がある。直流電源200の電圧が変動すると駆動電圧が変動して、放電ランプ4から照射される紫外線などの光の照度が変化する場合がある。
そのため、点灯装置1には、フィードバック回路15が設けられている。
【0028】
フィードバック回路15は、トランス12の出力状態を検出する。フィードバック回路15は、制御回路11cと電気的に接続されている。
フィードバック回路15は、例えば、検出部15a、比較器15b、および基準電圧部15cを有する。
【0029】
検出部15aは、例えば、2つのトランス12のそれぞれに設けることができる。検出部15aは、例えば、トランス12に設けられた補助巻線とすることができる。検出部15aが補助巻線であれば、補助巻線に流れる電流を検出することで、トランス12の二次側巻線に流れている電流(トランス12の出力状態)を検出することができる。
【0030】
比較器15bは、検出部15aにより検出されたトランス12の出力状態と、基準電圧部15cからの基準値と、を比較して、直流電源200の電圧の変動に起因する、駆動電圧の変動量を検出する。例えば、比較器15bは、検出部15aにより検出された電流に基づく電圧と、基準電圧部15cからの基準電圧を比較する。この様にすれば、直流電源200の電圧変動に起因する、放電ランプ4に印加される駆動電圧の変動量を検出することができる。
【0031】
制御回路11cは、比較器15bにより検出された、放電ランプ4に印加される駆動電圧の変動量に基づいて、スイッチング素子11a、11bのスイッチング周波数を変化させる。例えば、制御回路11cは、放電ランプ4に印加される駆動電圧が基準値より低くなった場合(直流電源200の電圧が低下した場合)には、スイッチング素子11a、11bのスイッチング周波数を、放電ランプ4に印加される駆動電圧の減少量に応じて低くする。
【0032】
例えば、制御回路11cは、放電ランプ4に印加される駆動電圧が基準値より高くなった場合(直流電源200の電圧が低下した場合)には、スイッチング素子11a、11bのスイッチング周波数を、放電ランプ4に印加される駆動電圧の増加量に応じて高くする。すなわち、制御回路11cは、フィードバック回路15により検出されたトランス12の出力状態に基づいて、フィードバック制御を行う。
【0033】
なお、以上においては、2つのトランス12のそれぞれに検出部15aを設ける場合を例示したが、2つのトランス12のいずれか一方に検出部15aを設けることもできる。すなわち、検出部15aは、2つのトランス12の、少なくともいずれかの出力状態を検出するものであればよい。
例えば、トランス12の特性が安定している場合などには、1つのトランス12の出力状態に基づいて、前述したフィードバック制御を行えば良い。
この様にすれば、点灯装置1の小型化と低コスト化を図ることができる。
【0034】
ここで、制御回路11cが、フィードバック回路15により検出されたトランス12の出力状態に基づいて、フィードバック制御を行うと、始動時に制御遅れが発生する場合がある。制御遅れが発生すると、無制御状態となる期間が発生する。始動時に無制御状態となる期間は、例えば、10ms~40ms程度である。
【0035】
図6は、無制御状態となる期間における動作周波数の変化を例示するためのグラフである。なお、
図6は、動作周波数制御回路16による動作周波数の制御が行われない場合である。
図6に示すように、無制御状態となる期間においては、動作周波数が下がる。そのため、前述した動作周波数設定回路14により設定する動作周波数(定常動作周波数)を共振周波数の近傍にすると、
図6に示すように、動作周波数が下がった際に共振外れの状態となる場合がある。前述した様に、共振外れの状態となると、放電ランプ4が不点灯となったり、スイッチング素子11a、11bの故障が発生したりする場合がある。
【0036】
そこで、点灯装置1には、動作周波数制御回路16が設けられている。
例えば、動作周波数制御回路16は、始動から所定の期間、動作周波数を、動作周波数設定回路14により設定された動作周波数(定常動作周波数)よりも高くする。例えば、動作周波数制御回路16は、始動時に無制御状態となる期間よりも長い期間、動作周波数を、定常動作周波数よりも高くする。
【0037】
図3に示すように、動作周波数制御回路16は、動作周波数設定回路14と並列に、制御回路11cと電気的に接続されている。動作周波数制御回路16は、例えば、コンデンサ16a、抵抗16b(第2の抵抗の一例に相当する)、スイッチング素子16c(第2のスイッチング素子の一例に相当する)、および、始動検出回路16dを有する。 コンデンサ16a、抵抗16b、およびスイッチング素子16cは、直列接続されている。直列接続されたコンデンサ16a、抵抗16b、およびスイッチング素子16cは、例えば、制御回路11cとグランドとに電気的に接続されている。
【0038】
また、直列接続されたコンデンサ16a、抵抗16b、およびスイッチング素子16cは、直列接続された抵抗14a、および抵抗14bと並列接続されている。始動検出回路16dの入力側は、例えば、スイッチング出力回路11の、直流電源200と接続される端子に電気的に接続されている。始動検出回路16dの出力側は、例えば、スイッチング素子16cのベースまたはゲートに電気的に接続されている。
【0039】
すなわち、動作周波数制御回路16は、制御回路11cと電気的に接続されたコンデンサ16aと、コンデンサ16aと直列接続された抵抗16bと、抵抗16bと直列接続されたスイッチング素子16cと、スイッチング素子16cおよびスイッチング出力回路11の入力側と電気的に接続された始動検出回路16dと、を有する。
【0040】
次に、動作周波数制御回路16の作用を説明する。
図7は、動作周波数制御回路16の作用を例示するためのグラフである。
始動検出回路16dは、例えば、直流電源200からの電圧が、スイッチング出力回路11に印加された時点を「始動」と判定する。
【0041】
始動検出回路16dは、スイッチング出力回路11の入力側に直流電圧が印加されたのを検出した場合には、所定の期間、スイッチング素子16cをON状態にする。前述した様に、所定の期間は、始動時に無制御状態となる期間よりも長い期間とすることができる。始動時に無制御状態となる期間は、実験やシミュレーションを行うことで求めることができる。始動時に無制御状態となる期間は、例えば、10ms~40ms程度である。所定の期間は、例えば、90ms程度である。
【0042】
スイッチング素子16cがON状態になると、直列接続されたコンデンサ16a、および抵抗16bは、直列接続された抵抗14a、および抵抗14bと並列接続となる。そのため、これらの合成抵抗値が小さくなるので、制御回路11cの端子電圧が低くなる。その結果、
図7に示すように、制御回路11cは、動作周波数を、前述した動作周波数設定回路14により設定された動作周波数(定常動作周波数)よりも高くする。例えば、定常動作周波数が、140kHz程度の場合には、制御回路11cは、動作周波数を180kHz程度にする。
すなわち、制御回路11cは、抵抗14aおよび抵抗14bと、抵抗14aおよび抵抗14bと並列接続される抵抗16bと、の合成抵抗値に基づいて、第1の動作周波数を有する第1の駆動信号を生成する。
【0043】
次に、始動検出回路16dは、始動から所定の期間が経過した後は、スイッチング素子16cをOFF状態にする。
スイッチング素子16cがOFF状態になると、制御回路11cの端子とグランドとの間には、直列接続された抵抗14a、および抵抗14bのみが電気的に接続されることになる。そのため、
図7に示すように、制御回路11cは、動作周波数を、前述した動作周波数設定回路14により設定された動作周波数(定常動作周波数)にまで低下させる。
すなわち、制御回路11cは、直列接続された抵抗14a、および抵抗14bの抵抗値に基づいて、前述した第1の動作周波数よりも低い第2の動作周波数を有する第2の駆動信号を生成する。
【0044】
また、始動検出回路16dには、直列接続されたコンデンサ16a、および抵抗16bが設けられているので、CR時定数を有することになる。そのため、
図7に示すように、動作周波数は、定常動作周波数まで徐々に低下することになる。
すなわち、第1の動作周波数を有する第1の駆動信号の生成から、第2の動作周波数を有する第2の駆動信号の生成に切り替える際に、制御回路11cは、コンデンサ16aと、抵抗16bとによる、時定数の間、第1の動作周波数を第2の動作周波数に徐々に近づける。
【0045】
以上に説明した様に、始動検出回路16dが設けられていれば、始動時の無制御状態となる期間、定常動作周波数よりも高い動作周波数を設定することができる。無制御状態となる期間においては動作周波数が下がるが、定常動作周波数よりも高い動作周波数が設定されれば、動作周波数が共振周波数以下になって共振外れの状態となるのを抑制することができる。
すなわち、本実施の形態に係る点灯装置1とすれば、制御遅れにより無制御状態となる期間において、共振外れが生じるのを抑制することができる。
【0046】
また、動作周波数は、定常動作周波数まで徐々に低下させることができるので、放電ランプ4から照射される紫外線などの光の照度を徐々に変化させたり、トランス12の偏磁を抑制したりすることができる。
また、所定の時間の経過後は、CR時定数を有する始動検出回路16dを、制御回路11cから切り離すことができるので、定常動作周波数の制御特性への始動検出回路16dの影響を無くすことができる。
【0047】
次に、
図1、および
図2に戻って、車両用照射装置100に設けられた筐体2、基板3、放電ランプ4、ランプカバー5、配線6、窓7、およびシールド8について例示する。
図1、および
図2に示すように、筐体2は、箱状を呈し、内部に、基板3、放電ランプ4、ランプカバー5、および点灯装置1を収納する空間を有する。筐体2の厚み寸法Tは、筐体2の平面寸法よりも小さくすることができる。車両用照射装置100は、車室内などの狭いスペースに、車両の運行などに用いられる電子機器と一緒に設けられる場合がある。そのため、筐体2の厚み寸法Tを小さくすることができれば、車両用照射装置100の設置が容易となる。
【0048】
また、筐体2は、筐体2の厚み方向において、第1の部分21と第2の部分22とに分割されている。第1の部分21は、例えば、基板3、放電ランプ4、ランプカバー5、および点灯装置1が取り付けられるベースとなる。第2の部分22は、例えば、第1の部分21の開口側を覆うカバーとなる。第2の部分22には、紫外線などの光を出射させるための孔22aを設けることができる。孔22aは、放電ランプ4と対向する位置に設けることができる。
【0049】
第2の部分22は、第1の部分21に着脱可能に設けることができる。例えば、第1の部分21と第2の部分22は、開口部分同士を嵌め合わせることで発生させた弾性力により、着脱可能に接続されている。
【0050】
第1の部分21と第2の部分22は、例えば、絶縁性を有する樹脂から形成される。この場合、第2の部分22の材料は、第1の部分21の材料と同じであってもよいし、異なっていてもよい。第1の部分21と第2の部分22が絶縁性を有していれば、第1の部分21および第2の部分22の内壁と、放電ランプ4および点灯装置1などとの間の距離を短くすることができる。そのため、筐体2の薄型化が容易となる。
【0051】
基板3は、板状を呈している。基板3は、例えば、スペーサ31などを介して、第1の部分21に設けることができる。なお、スペーサ31に代えて、第1の部分21に設けられた凸部に基板3を設けてもよい。
【0052】
放電ランプ4は、基板3と第2の部分22との間に位置している。放電ランプ4は、第2の部分22の孔22aに対向する位置に設けることができる。放電ランプ4は、一対の端子ホルダ41に着脱可能に設けられる。一対の端子ホルダ41は、例えば、基板3に設けることができる。なお、
図2においては、1つの放電ランプ4が設けられる場合を例示したが、複数の放電ランプ4が設けられるようにしてもよい。放電ランプ4は、少なくとも1つ設けられていればよい。
【0053】
放電ランプ4は、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、誘電体バリア放電ランプなどとすることができる。ただし、放電ランプ4は、例示をしたものに限定されるわけではなく、紫外線や光(例えば、可視光)を照射可能なものであればよい。
【0054】
ランプカバー5は、基板3と第2の部分22との間に位置している。ランプカバー5は、例えば、基板3に設けることができる。ランプカバー5は、箱状を呈し、基板3側とは反対側の端部が開口している。ランプカバー5の開口5aは、第2の部分22の孔22aに対向している。ランプカバー5の内部には、放電ランプ4と一対の端子ホルダ41を設けることができる。例えば、ランプカバー5は、絶縁性を有する樹脂から形成される。ランプカバー5の材料は、例えば、筐体2の材料と同じとすることができる。ただし、ランプカバー5は、放電ランプ4から照射された紫外線などの光に曝される。そのため、カバー5の材料は、筐体2の材料よりも紫外線などの光に対する耐性の高い材料とすることが好ましい。
【0055】
配線6の一端は、筐体2の内部において、点灯装置1と電気的に接続されている。配線6の他端は、筐体2の外部に引き出され、例えば、直流電源200と電気的に接続される。
【0056】
窓7は、筐体2(第2の部分22)の孔22aが設けられた部分に設けられている。例えば、窓7は、第2の部分22の内壁に設けられ、孔22aを覆っている。窓7は、放電ランプ4から照射された紫外線や光を透過させる。例えば、窓7は、導電性を有し、複数の開口を有している。放電ランプ4を点灯させた際に、放電ランプ4の電極間において放電が生じると、紫外線などの光とともに、電磁波が放射される場合がある。窓7が、導電性を有していれば、反射損失を大きくすることができるので、電磁波が窓7を介して筐体2の外部に放射されるのを抑制することができる。
【0057】
シールド8は、筐体2の内部において発生した電磁波が、筐体2の外部に放射されるのを抑制する。シールド8は、導電性を有し、例えば、筐体2の外壁に設けることができる。シールド8が導電性を有していれば、反射損失を大きくすることができるので、電磁波が筐体2の外部に放射されるのを抑制することができる。
【0058】
以下、前述した実施形態に関する付記を示す。
【0059】
(付記1)
放電ランプに、所定の動作周波数の駆動電圧を印加する放電ランプ用点灯装置であって、
第1のスイッチング素子と、前記第1のスイッチング素子の駆動信号を生成する制御回路と、を有し、直流電圧を前記駆動電圧に変換するスイッチング出力回路と;
一次側巻線が、共振用コンデンサを介して前記第1のスイッチング素子と電気的に接続され、二次側巻線が、前記放電ランプと電気的に接続されたトランスと;
前記制御回路と電気的に接続され、第1の抵抗を有する動作周波数設定回路と;
前記動作周波数設定回路と並列に、前記制御回路と電気的に接続され、前記制御回路と電気的に接続されたコンデンサと、前記コンデンサと直列接続された第2の抵抗と、前記第2の抵抗と直列接続された第2のスイッチング素子と、前記第2のスイッチング素子および前記スイッチング出力回路の入力側と電気的に接続された始動検出回路と、を有する動作周波数制御回路と;
を具備し、
前記始動検出回路は、前記スイッチング出力回路の入力側に前記直流電圧が印加されたのを検出した場合には、所定の期間、前記第2のスイッチング素子をON状態にし、
前記制御回路は、前記第1の抵抗と、前記第1の抵抗と並列接続される前記第2の抵抗と、の合成抵抗値に基づいて、第1の動作周波数を有する第1の駆動信号を生成する放電ランプ用点灯装置。
【0060】
(付記2)
前記始動検出回路は、前記所定の期間の経過後に、前記第2のスイッチング素子をOFF状態にし、
前記制御回路は、前記第1の抵抗の抵抗値に基づいて、前記第1の動作周波数よりも低い第2の動作周波数を有する第2の駆動信号を生成する付記1記載の放電ランプ用点灯装置。
【0061】
(付記3)
前記第1の動作周波数を有する前記第1の駆動信号の生成から、前記第2の動作周波数を有する前記第2の駆動信号の生成に切り替える際に、
前記制御回路は、前記コンデンサと、前記第2の抵抗とによる、時定数の間、前記第1の動作周波数を前記第2の動作周波数に徐々に近づける付記2記載の放電ランプ用点灯装置。
【0062】
(付記4)
前記制御回路と電気的に接続され、前記トランスの出力状態を検出するフィードバック回路をさらに具備した付記1~3のいずれか1つに記載の放電ランプ用点灯装置。
【0063】
(付記5)
車両に設けられる車両用照射装置であって、
放電ランプと;
前記放電ランプと電気的に接続された、付記1~4のいずれか1つに記載の放電ランプ用点灯装置と;
を具備した車両用照射装置。
【0064】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 点灯装置、2 筐体、4 放電ランプ、11 スイッチング出力回路、11a スイッチング素子、11b スイッチング素子、11c 制御回路、12 トランス、13 共振用コンデンサ、14 動作周波数設定回路、14a 抵抗、14b 抵抗、15 フィードバック回路、15a 検出部、15b 比較器、15c 基準電圧部、16 動作周波数制御回路、16a コンデンサ、16b 抵抗、16c スイッチング素子、16d 始動検出回路、100 車両用照射装置、200 直流電源