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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060912
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】ガイドワイヤー
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/09 20060101AFI20240425BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20240425BHJP
   A61M 25/098 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
A61M25/09 510
A61M25/00 650
A61M25/098
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168483
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】391016705
【氏名又は名称】クリエートメディック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104237
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 隆之
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA28
4C267BB02
4C267BB13
4C267BB43
4C267BB63
4C267CC07
4C267GG34
(57)【要約】
【課題】マーカーによって芯線のテーパーの位置も容易に視認することが可能であり、放射線透視下で先端側の位置を正確に確認することが可能であり、先端側の摩擦抵抗が低減され操作性が良くマーカーが剥がれる虞もないガイドワイヤーを提供する。
【解決手段】芯線12の外周に樹脂層を被覆して成るワイヤー本体11を備える。芯線12の先端側に、先端に向かい漸次縮径するテーパー部13が設けられている。ワイヤー本体11は、造影性のある先端部20と、視認可能なマーカー31aを含む指標部30と、近位の基端に亘る本体部40と、に区画されている。指標部30は、テーパー部13に対応して配置されている。

【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線の外周に樹脂層を被覆して成るワイヤー本体を備え、体内に挿入して使用する医療用のガイドワイヤーにおいて、
前記芯線の先端側に、先端に向かい漸次縮径するテーパー部が設けられ、
前記ワイヤー本体は、遠位の先端から順に、造影性のある先端部と、視認可能なマーカーを含む指標部と、該指標部より近位の基端に亘る本体部と、に区画され、
前記指標部は、前記テーパー部に対応して配置されたことを特徴とするガイドワイヤー。
【請求項2】
前記芯線において、前記テーパー部の表面と、前記テーパー部以外の部位の表面とは、互いに視覚的に区別可能に相違し、
前記マーカーは、前記指標部の動きや位置を視認可能とする所定パターンの模様を、前記芯線の表面のうち少なくともテーパー部に塗布して成り、
前記模様には、前記芯線の表面を被覆しない隙間が軸方向に並ぶように含まれ、該隙間より、当該部分の前記芯線の表面を外側から視認可能としたことを特徴とする請求項1に記載のガイドワイヤー。
【請求項3】
前記テーパー部には、前記芯線の軸線に対して異なる傾斜角ないし長さの相違があり、
前記テーパー部の相違に応じて、前記マーカーを成す模様の所定パターンも異ならせたことを特徴とする請求項2に記載のガイドワイヤー。
【請求項4】
前記指標部における樹脂層は、前記芯線の表面に塗布した前記模様とその隙間を下地層として、該下地層の表面を親水性樹脂の基材となる透明な樹脂から成る中間層で覆い、該中間層の表面に透明な親水性樹脂を塗布して最外層としたことを特徴とする請求項2に記載のガイドワイヤー。
【請求項5】
前記指標部における樹脂層のうち最外層を成す前記親水性樹脂は、前記先端部における樹脂層のうち最外層を成す親水性樹脂と同じ処方により塗布して形成したことを特徴とする請求項4に記載のガイドワイヤー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内に挿入して使用する医療用のガイドワイヤーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、内視鏡を用いた検査・治療の医療処置では、体内に挿入するガイドワイヤーが使用されていた。ここでガイドワイヤーは、内視鏡を通して体腔内の特定の処置対象まで到達するように挿入され、各種の処置を行うカテーテル等を案内したり位置決めする。一般にガイドワイヤーのコアを成す芯線の先端側には、柔軟性を付加するためのテーパー部が設けられている。また、ガイドワイヤーの先端側には、その動きや位置を確認するために視認可能なマーカーが設けられていた(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ガイドワイヤーの先端側にマーカーを設けるには、着色の顔料を含有させた樹脂により模様を芯線の表面に直接塗布する他(例えば特許文献1参照)、模様を含む樹脂のチューブ状被膜で覆うことが知られている。ここでマーカーを成す樹脂は、塗布あるいは被覆を問わず具体的には例えば、顔料と相溶性が良いフッ素系樹脂等が用いられていた。これらの樹脂は、滑り性を確保する上で摩擦係数が比較的低いため、そのままガイドワイヤーの外表面を成すことも多かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-220789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した従来のガイドワイヤーでは、ガイドワイヤーの先端側にマーカーが設けられていたが、マーカーの位置は、必ずしも芯線のテーパーに合致することはなく、テーパー以外の箇所にも設けられている。そのため、マーカーの視認によって、テーパーによる柔軟性のある部位ないし任意の硬さを外観的に判断することは難しく、手で触って判断する必要があった。
【0006】
また、ガイドワイヤーをX線透視下で使用する場合に、ガイドワイヤーの先端側の部分でX線造影性を有するものは芯線だけであった。しかし、芯線は元々細い上にテーパーでさらに先細りとなっており、このような芯線だけでは、ガイドワイヤーの先端側の位置を正確に確認することは困難であった。
【0007】
さらに、マーカーを成すフッ素系樹脂等の顔料と相溶性が良い樹脂は、親水性ポリマーに比べれば摩擦係数は高くなる。そのため、ガイドワイヤーの使用の際に、術者が意図している操作性よりも実際の操作性が良くないという事象がある。また、ガイドワイヤーの外表面にマーカーが表れている場合は、併用医療機器との摩擦によりマーカーが剥がれる虞もあった。
【0008】
本発明は、以上のような従来技術が有する問題点に着目してなされたものであり、マーカーによって芯線のテーパーの位置も容易に視認することが可能であり、放射線透視下で先端側の位置を正確に確認することが可能であり、先端側の摩擦抵抗が低減され操作性が良くマーカーが剥がれる虞もないガイドワイヤーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するため、本発明の一態様は、
芯線の外周に樹脂層を被覆して成るワイヤー本体を備え、体内に挿入して使用する医療用のガイドワイヤーにおいて、
前記芯線の先端側に、先端に向かい漸次縮径するテーパー部が設けられ、
前記ワイヤー本体は、遠位の先端から順に、造影剤を含む先端部と、視認可能なマーカーを含む指標部と、該指標部より近位の基端に亘る本体部と、に区画され、
前記指標部は、前記テーパー部に対応して配置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るガイドワイヤーによれば、マーカーによって芯線のテーパーの位置も容易に視認することが可能であり、放射線透視下で先端側の位置を正確に確認することが可能であり、先端側の摩擦抵抗が低減され操作性が良くマーカーが剥がれる虞もなく、使い勝手が良い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係るガイドワイヤーを示す全体図(ただし本体部の一部は破断して省略)である。
図2】本発明の第1実施形態に係るガイドワイヤーの先端側を拡大して示す縦断面図である。
図3】本発明の第2実施形態に係るガイドワイヤーを示す全体図(ただし本体部の一部は破断して省略)である。
図4】本発明の第3実施形態に係るガイドワイヤーを示す全体図(ただし本体部の一部は破断して省略)である。
図5】本発明の第4実施形態に係るガイドワイヤーを示す全体図(ただし本体部の一部は破断して省略)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づき、本発明を代表する各種の実施形態を説明する。
図1は、第1実施形態に係るガイドワイヤー10を示している。図2は、図1に示すガイドワイヤー10の先端側を拡大して示す縦断面図である。図3は、第2実施形態に係るガイドワイヤー10Aを示している。図4は、第3実施形態に係るガイドワイヤー10Bを示している。図5は、第4実施形態に係るガイドワイヤー10Cを示している。
【0013】
各図において、紙面左側を「先端側」、紙面右側を「基端端」として説明するが、ガイドワイヤー10を使用する際の位置関係を限定するものではない。なお、以下に説明する各実施形態で示される構成要素、形状、数値等は、何れも本発明の一例であり、本発明を限定するものではない。また、各図に示した構成要素の相対的な寸法関係や形状等は、適宜設計変更されるものであり、実際のものとは異なる場合がある。
【0014】
[第1実施形態]
<ガイドワイヤー10の概要>
第1実施形態に係るガイドワイヤー10は、例えば内視鏡下で体内の血管や臓器等にカテーテルを挿入する際に、該カテーテルを処置対象まで導くために使用するものである。図1に示すように、ガイドワイヤー10は、芯線12(図2参照)の全長に亘る外周に樹脂層を被覆して成るワイヤー本体11を備えている。ワイヤー本体11は、術者から遠位となる先端から順に、先端部20と、指標部30と、本体部40と、に区画されている。本実施形態のガイドワイヤー10は、先端部20から内視鏡を通じて体内に挿入するように構成されている。
【0015】
ワイヤー本体11(ガイドワイヤー10)の全長は、例えば800~5500mm程度の範囲で医療目的に応じて適宜設定される設計事項である。ワイヤー本体11の全長のうち先端部20の長さは、その最先端から例えば30~400mm程度の範囲が好ましい。指標部30の長さは、次述する芯線12のテーパー部13に合わせて、例えば60~400mm程度の範囲で適宜定めると良い。また、本実施形態のガイドワイヤー10では、ワイヤー本体11の外径は、先後端の丸み以外は全長に亘って略同一であり、例えば0.3~1.3mm前後であることが好ましい。
【0016】
<芯線12について>
芯線12は、例えばニッケルチタン合金等の金属材により、可撓性を有して捩れのない線状に形成されている。芯線12は、ワイヤー本体11のほぼ全長に亘る長さであり、その横断面は円形である。芯線12の外径は、基本的には例えば0.6~0.85mm程度でほぼ一定であるが、図2に示すように、芯線12の先端側には、先端に向かい漸次縮径するテーパー部13が設けられている。テーパー部13は、芯線12の本来の可撓性に、さらに柔軟性を付加するものである。ここでテーパー部13の始まり(始端)は、後述するがワイヤー本体11における指標部30と本体部40との境界と合致している。
【0017】
本実施形態の芯線12では、テーパー部13の終わり(終端)は、そのまま先細りとなって芯線12の最先端まで至り、ワイヤー本体11の先端部20まで延びている。あるいは、テーパー部13の先端より、該テーパー部13の終わりと同一径で所定長さの小径部を延設しても良い。ここでテーパー部13の終わり、すなわち小径部の始まり(始端)を、ワイヤー本体11における先端部20と指標部30との境界に合致させることも考えられる。なお、図2に示したテーパー部13の先端側、あるいは図示省略した小径部の先端側には、操作性を向上させるための錘となる金属材のコイル等を嵌装させると良い。
【0018】
テーパー部13は、芯線12の先端側を全周方向から切削加工することにより、任意の傾斜角で軸方向に所定の長さに亘って設けることができる。テーパー部13の具体的な長さは、後述する先端部20と指標部30を合わせた寸法の範囲内で適宜定め得る設計事項であり、例えば前述の小径部を延設する場合は、その分だけ短くなり傾斜角は大きくなる。また、テーパー部13の表面は、切削加工により微細な凹凸が生じてマット感(光沢の消失)があるため、芯線12の他の部位の表面とは、特に内視鏡下で視覚的に区別可能な程度に相違している。
【0019】
<先端部20について>
図1に示すように、先端部20は、ワイヤー本体11の最先端側に位置する部位であり、当該部位まで延びている芯線12の先端側の周りに樹脂層を被覆して成る。ここで樹脂層を被覆する芯線12の先端側とは、テーパー部13が該当するが、前述した小径部であっても構わない。先端部20において芯線12を被覆する樹脂層は、その下層から順に、基材を成すウレタン樹脂の下地層21と、外表面を成す親水性樹脂の最外層22と、を積層して構成されている。
【0020】
下地層21のウレタン樹脂は、ウレタン結合を備える重合体の総称であり、通常はポリウレタンと称される。ここでウレタン樹脂には、造影剤が含まれている。造影剤は、X線に代表される放射線の不透過性を有する物質であり、例えばタングステン粉、硫酸バリウム等が該当する。下地層21のウレタン樹脂には、予め造影剤が含有されており、X線透視下で先端部20の位置を容易に識別することが可能となる。先端部20における下地層21は、内部を視線可能な透明性を有する必要はなく、造影剤自体の色の他、顔料を混ぜて着色しても構わない。一般にウレタン樹脂は、フッ素系樹脂よりも親水性樹脂との相溶性が高い。なお、下地層21の厚さは、先端部20の外径にほぼ相当するものとなる。
【0021】
先端部20における芯線12の先端側に、前述した錘としてのコイル等を嵌装する場合には、例えば白金、タングステン等の貴金属のように、X線の不透過性が高い金属材で構成すると良い。これにより、下地層21に含まれる造影剤と相俟って、X線等の造影性を高めることができる。なお、各図では便宜上、先端部20の外径を、指標部30ないし本体部40の外径とほぼ同じ寸法で図示しているが、例えば芯線12の表面に対して均一な厚さで樹脂層を被覆する場合は、芯線12のテーパー部13の傾斜角に応じて先端部20の外径が縮径しても構わない、
【0022】
最外層22の親水性樹脂は、吸水して潤滑性が生じる樹脂の総称であり、例えばアクリルアミド系ポリマー等が該当する。このような親水性樹脂を最外層22とすることで、例えばフッ素樹脂と比べて摩擦抵抗を低減することができる。先端部20は、特に体腔内と接触するために摩擦抵抗のさらなる低減と高い生体適合性が求められており、また、カテーテルの内壁や内視鏡のルーメンとの摩擦抵抗も低減するため、ガイドワイヤー10の操作性が向上する。なお、最外層22の厚さは、例えば1~30μm程度の範囲が好ましい。
【0023】
<指標部30について>
図1に示すように、指標部30は、前記先端部20の基端側に続く部位であり、当該部位に位置する芯線12の周りに樹脂層を被覆して成る。ここで指標部30に位置する芯線12は、ちょうどテーパー部13を合致させている。指標部30には、視認可能なマーカー31aが含まれている。ここでマーカー31aは、指標部30の動きや位置を視認可能とする所定パターンの模様31bを、芯線12の表面のうち少なくともテーパー部13に塗布して成る。なお、模様31bの塗布は、例えば周知の印刷技術として、樹脂性塗料を微細スプレーで吹き付けたり、マスキングを利用した方法等によって実現される。
【0024】
指標部30における樹脂層は、芯線12(テーパー部13)の表面に塗布した前記模様31bとその隙間31cを下地層31として、該下地層31の表面を親水性樹脂の基材となる透明な樹脂から成る中間層32で覆い、該中間層32の表面に親水性樹脂を塗布して最外層33として構成されている。ここで最外層33と中間層32は、それぞれ透明性を有するため、これらを通して下地層31における模様31bの他、模様31bの隙間31cより当該部分の芯線12(テーパー部13)の表面を外側から視認可能となっている。
【0025】
マーカー31aを成す模様31bは、その背景となる芯線12のテーパー部13の表面色と明瞭に区別できる色で所定のパターンに設けられている。第1実施形態における模様31bは、螺旋状のパターンであって、螺旋を形成する線は、例えばフッ素系樹脂に黒色の顔料を混ぜて成り、一定幅でテーパー部13の全周に亘り塗布(印刷)されている。ここで模様31bには、芯線12の表面を被覆しない隙間31cが含まれており、模様31bを成す線自体と線間の隙間31cは、ガイドワイヤー10の軸方向と直交する側面視において、軸方向に沿って平行かつ均等に配列されている。
【0026】
螺旋を形成する線間の隙間31cは、下地の芯線12の表面のままで次述する中間層32で被覆しても良いが、隙間31cを埋めるように、線と同等の厚さで透明なフッ素系樹脂を塗布しても良い。あるいは、テーパー部13の表面を外部から視認できなくても構わなければ、螺旋を形成する線の色とはコントラストが異なる顔料を混ぜたフッ素系樹脂を塗布して、2色以上に塗り分けることもできる。何れの構成にせよ、マーカー31aを成す模様31bとその隙間31cは、指標部30における下地層31を形成する。
【0027】
指標部30において、下地層31を覆う中間層32は、親水性樹脂の基材となる透明な樹脂から成り、例えば先端部20の下地層21と同じウレタン樹脂が適している。下地層31を成すフッ素系樹脂は、模様31bを形成するための顔料と相溶性が良いが、親水性樹脂との相溶性はウレタン樹脂の方が優れている。従って、ウレタン樹脂の中間層32を、前記下地層31と次述の最外層33との間に設けることが、互いに強固に積層させる上で重要となる。
【0028】
指標部30の外表面を成す最外層33は、中間層32の表面上に透明な親水性樹脂を塗布して形成されている。ここで親水性樹脂は、先端部20の最外層22と同じものであり、これらの親水性樹脂は、同じ処方により塗布して形成されている。これにより、先端部20と指標部30の最外層22,33の境界に段差や凹凸が生じることはなく、先端部20から指標部30にかけて滑らかに連続する外表面が形成されている。
【0029】
このような指標部30は、芯線12のテーパー部13に対応して配置されている。すなわち、テーパー部13の始まり(始端)が、指標部30と本体部40との境界と合致している。ここで指標部30のマーカー31aを成す模様31bは、実際には次述する本体部40に位置する芯線12の表面にも塗布されているが、これは模様31bを形成するフッ素系樹脂の印刷の便宜の理由による。指標部30と本体部40の外表面上の境界や相違は、それぞれの表面加工上の違いにより視覚的に明確に区別できるように構成されている。
【0030】
詳しく言えば、本体部40の最外層42は、後述する螺旋状の凹凸の存在によって、指標部30の最外層33とは視覚的に明瞭に区別可能であり、また外側からの芯線12の見え方も大きく異なる。すなわち、本体部40では螺旋状の凹凸によって光が乱反射するため、透明であっても内部の芯線12がぼやけて見え難くなっている。なお、指標部30と本体部40の境界は、厳密にいえば螺旋状の凹凸の最先端に位置(図2中のA線参照)するものとし、当該位置にテーパー部13の始まり(始端)を合致させている。
【0031】
<本体部40について>
図1に示すように、本体部40は、前記指標部30よりも基端側に延びている部位であり、長さ的にはワイヤー本体11の主要部を占めている。本体部40は、そのほぼ全長に亘って延びる芯線12の周りに樹脂層を被覆して成る。本体部40における樹脂層は、その下層から順に、芯線12を覆う下地層41と、外表面を成す最外層42と、を積層して構成されている。
【0032】
本実施形態では、本体部40に位置する芯線12にも、前記指標部30と同様にマーカー31aが塗布されており、このマーカー31aを成すフッ素系樹脂が、前記指標部30の下地層31に相当する。ただし、本体部40ではマーカー31aが必須の構成要素ではないため、当該マーカー31aも含めて、これを覆う樹脂層全体を下地層41と定義する。かかる下地層41は、例えば透明なフッ素樹脂から形成されるが、次述する最外層42と一体の樹脂層と定義しても良い。
【0033】
本体部40の外表面を成す最外層42は、先端部20や指標部30ほど摩擦抵抗を低減させる必要はないため、例えば透明なフッ素系樹脂により形成すると良い。ただし、本実施形態では、最外層42がフッ素系樹脂であっても摩擦抵抗を減らすために、螺旋状の凹凸を密に並べたスリーブ状に形成されている。この最外層42を成す螺旋状の凹凸は、前述したように、指標部30との境界(図2中のA線参照)からワイヤー本体11の基端側まで連続して設けられている。なお、前述したように、最外層42と下地層41を一体の樹脂層として、これらが例えば透明なフッ素樹脂によりピッチが細かく凹凸のある透明なスリープ状として形成しても良い。
【0034】
本実施形態の本体部40では、最外層42および下地層41は、これらを通してマーカー31aを視認可能な程度に透明性を有しているが、必ずしも透明である必要はない。また、指標部30と本体部40の外表面上の境界は、最外層42における螺旋状の凹凸によって、視覚的に明確に区別可能であり、当該位置が芯線12におけるテーパー部13の始まり(始端)と容易に認識できるように構成されている。
【0035】
<ガイドワイヤー10の作用について>
次に、第1実施形態に係るガイドワイヤー10の作用について説明する。
内視鏡(図示せず)を用いた医療処置において、内視鏡は例えば経口で体内に導入され、ガイドワイヤー10は、ワイヤー本体11の先端部20から内視鏡を通して体内に挿入される。体内でワイヤー本体11は、必要な処置に応じて軸回りに回転させたり、押したり引いたりして操作される。ワイヤー本体11の指標部30より先端側は、芯線12に設けられたテーパー部13によって柔軟性が付加され、ガイドワイヤー10を使用する際の操作性や安全性が高められている。
【0036】
ガイドワイヤー10を、X線透視下で体内に挿入する場合には、ワイヤー本体11の先端部20における下地層21に造影剤が含まれているため、先端部20の位置を正確に確認することができて使い勝手が良い。なお、先端部20における芯線12の先端側に嵌装させたコイル等の錘が、X線の不透過性が高い金属材から成る場合には、下地層21に含まれる造影剤と相俟って、X線等の造影性を高めることができる。
【0037】
ここで先端部20は、特に体腔内と接触するために摩擦抵抗のさらなる低減と高い生体適合性が求められる。よって、先端部20の下地層21の表面全体は、親水性樹脂の最外層22で覆われている。これにより、先端部20では高い滑り性を確保でき、体腔内や併用医療機器との摩擦抵抗も低減するため、ガイドワイヤー10の操作性を向上させることができる。なお、先端部20の最外層22は、指標部30の最外層33とは異なり、内部を視認できる透明性を有する必要はない。
【0038】
ガイドワイヤー10は、体腔内の特定の処置対象まで到達するように挿入された後、各種処置を行うカテーテル等を案内したり位置決めする。カテーテル等は、ガイドワイヤー10によって位置決めされた後、内視鏡を通して操作される。ガイドワイヤー10やカテーテル、これらが位置決めされている領域は、内視鏡を通して視認することができる。このとき、指標部30にあるマーカー31aによって、ワイヤー本体11の軸心を中心とする回転方向(動き)や、体内の対象部位に対する深度(位置)等を、それぞれ容易に確認することができる。
【0039】
このような指標部30は、芯線12にあるテーパー部13に対応して配置されている。すなわち、図2に示すように、テーパー部13の始端が、指標部30と本体部40との境界と合致している。これにより、芯線12にあるテーパー部13の始まりを、指標部30を介して視認することができ、手で触らなくともワイヤー本体11の先端側が柔らかくなる位置を容易に判別することができる。なお、後述するがワイヤー本体11の先端側の硬さに違い(テーパー部13の相違)がある場合、指標部30の種類に応じて適宜選択し、医療処置ごとに使い分けることができる。
【0040】
また、芯線12におけるテーパー部13の表面と、テーパー部13以外の部位の表面とは、互いに視覚的に区別可能に相違している。ここで視覚的に区別可能とは、必ずしも肉眼で区別できることに限らず、内視鏡下で拡大した状態で確認できる場合も含まれる。本実施形態のテーパー部13の表面には、切削加工により微細な凹凸が生じてマット感(光沢の消失)があるため、芯線12のテーパー部13以外におけるマット感がない部位の表面とは、視覚的に容易に区別することができる。
【0041】
そこで、テーパー部13を、マーカー31aの模様31bによって全て覆うことなく、模様31bにテーパー部13の表面を被覆しない隙間31cを含ませると良い。これにより、模様31bの隙間31cを通して、テーパー部13を外側から直接視認するも可能となる。従って、前述した指標部30とテーパー部13との対応関係と相俟って、より正確にテーパー部13の位置を確認することかできる。
【0042】
また、指標部30では、マーカー31aを成す下地層31を、透明な中間層32で覆うことにより、マーカー31aの視認性を損なうことなく、模様31bの塗膜剥がれ等の不具合を防止することができる。さらに、指標部30は、先端部20と同様に体腔内と接触するために摩擦係数のさらなる低減が求められている。そこで、中間層32の表面に、透明な親水性樹脂を塗布して最外層33としたことにより、マーカー31aの視認性を損なうことなく高い滑り性を確保でき、併用医療機器との摩擦が小さくなるため、ガイドワイヤー10の操作性を向上させることができる。
【0043】
なお、マーカー31aを成す下地層31の樹脂は、前述したフッ素系樹脂に限定されることはなく、他にも顔料と相溶性が良いポリアミドイミド系樹脂等を用いても良い。また、模様31bの色は黒色に限らず、テーパー部13の表面色とコントラストの異なる他の色であっても構わない。あるいは、模様31bに含まれる隙間31cを透明な樹脂で覆わずに、テーパー部13は隠れるがコントラストが異なる2色以上に塗り分けても良い。また、所定色の顔料は、1種だけに限らず、2種類以上を混ぜ合わせて所定色となるように使用しても良い。
【0044】
さらに、指標部30の最外層33を成す親水性樹脂は、前記先端部20の最外層22を成す親水性樹脂と同じ処方により塗布して形成すると良い。すなわち、先端部20の下地層21と、指標部30の中間層32とを、ほぼ同径に形成した後、これらの外表面全体を覆うように、同じ親水性樹脂を同時に同じ厚さに塗布すれば良い。これにより、先端部20と指標部30の外表面間の段差を解消するように加工中に調整可能であり、外表面を滑らかに連続させることができる。
【0045】
従って、先端部20と指標部30の部位ごとの滑り性に差が生じることはなく、ガイドワイヤー10のスムーズな操作性を確保することができる。なお、先端部20の下地層21は、造影剤の色があり、指標部30の中間層32は、透明で下地層31のマーカー31aが透けて見えるため、先端部20と指標部30とは視覚的には明確に区別されることになる。
【0046】
なお、本実施形態のガイドワイヤー10では、指標部30においてマーカー31aを成す模様31bが、実際には本体部40に位置する芯線12の表面にも塗布されている。これは前述したように、芯線12に対する模様31b(フッ素系樹脂)の印刷の便宜によるものである。ここで本体部40の最外層42は、螺旋状の凹凸が密に並ぶスリーブ状に形成されている。これにより、指標部30と本体部40の外表面上の境界や相違は、それぞれの表面加工上の違いによって視覚的に明確に区別することができる。
【0047】
本体部40は、最外層42を例えばフッ素系樹脂により形成しても、密に並ぶ螺旋状の凹凸によって、併用医療機器等との接触面積が低減する。これにより、従来のガイドワイヤーのように最外層がフッ素系樹脂の周面から成る場合よりは、比較的滑り性を良くすることができる。なお、本体部40と同様に先端部20における芯線12の外周にも、一続きとなる模様31bを連続的に印刷しても構わない。ここで先端部20の芯線12上に模様31bがあっても、不透明な下地層21に覆われるため、外側からの視認性はない。
【0048】
[第2実施形態]
図3は、本発明の第2実施形態を示している。
第2実施形態に係るガイドワイヤー10Aは、基本的には第1実施形態と同様に構成されているが、指標部30におけるマーカー31dの模様31eのパターンが相違している。なお、第1実施形態と同種の部位については、同一符号を付して重複した説明は省略する。
【0049】
図3に示すように、第2実施形態におけるマーカー31dの模様31eは、第1実施形態の模様31bと同様に螺旋状のパターンであるが、模様31eを成す線自体と線間の隙間31fのピッチは、軸方向に沿って平行かつ均等ではない。すなわち、模様31eと隙間31fのピッチは、芯線12のテーパー部13の始端から終端に向かって徐々に長いスパンに広がるように緩急が付けられている。
【0050】
このようなマーカー31dの模様31eのパターンによって、例えば第1実施形態のテーパー部13と違うものを、外観上分かり易く区別することが可能となる。なお、模様31eの隙間31fには、透明な樹脂を塗布してテーパー部13の視認性を確保したり、あるいは模様31eと異なる色の樹脂で塗り分けても良い。ここで隙間31fに、透明な樹脂を塗布した場合は、手技中の内視鏡観察下におけるガイドワイヤー10Aの挿入深度が分かるようになる。特に、先端側の隙間31fの幅を漸次広くすることで、当該部位からの内視鏡観察下におけるテーパー部13の視認性が向上する。また、模様31eと隙間31fの具体的な幅や傾斜等の寸法は、適宜定め得る設計事項である。
【0051】
[第3実施形態]
図4は、本発明の第3実施形態を示している。
第3実施形態に係るガイドワイヤー10Bは、基本的には第1実施形態と同様に構成されているが、指標部30におけるマーカー31gの模様31hのパターンが相違している。なお、第1実施形態と同種の部位については、同一符号を付して重複した説明は省略する。
【0052】
図4に示すように、第3実施形態におけるマーカー31gの模様31hは、複数並ぶ環状のパターンであって、全周に亘る環状の模様31hを成す線自体と、各線間の隙間31iのピッチは、それぞれ軸方向に沿って平行かつ均等に配列されている。ここで模様31hの幅は、隙間31iの幅よりも長いスパンに設定されているが、逆に隙間31iの幅を、模様31hの幅よりも長いスパンに設定しても良い。
【0053】
このようなマーカー31gの模様31hのパターンによって、例えば第1実施形態や第2実施形態のテーパー部13と違うものを、外観上分かり易く区別することが可能となる。なお、模様31hの隙間31iには、透明な樹脂を塗布してテーパー部13の視認性を確保したり、あるいは模様31iと異なる色の樹脂で塗り分けても良い。また、模様31hと隙間31iの具体的な幅や傾斜等の寸法は、適宜定め得る設計事項である。
【0054】
[第4実施形態]
図5は、本発明の第4実施形態を示している。
第4実施形態に係るガイドワイヤー10Cは、基本的には第1実施形態と同様に構成されているが、指標部30におけるマーカー31jの模様31k,31mのパターンが相違している。なお、第1実施形態と同種の部位については、同一符号を付して重複した説明は省略する。
【0055】
図5に示すように、第4実施形態におけるマーカー31jは、芯線12の外周面上で周方向に2分割されており、片側の半周面(図5中で上側半分)と、もう片側の半周面(図5中で下側半分)とで、それぞれ模様31k,31mが互いに異なっている。すなわち、芯線12の片側の半周面には、軸方向と直交し同一幅に並ぶ縞状の模様31kが、これと同一幅の隙間31lを空けて繰り返し並ぶように配置され、もう片側の半周面には、前記模様31kよりも広い同一幅(約2倍)の模様31mが、これと同一幅の隙間31nを空けて繰り返し並ぶように配置されている。
【0056】
このように、芯線12の外周面が周方向に2分割された各半周面ごとに模様31k,31mが異なるため、ガイドワイヤー10を回転させる操作時には、マーカー31jを通じてガイドワイヤー10の回転動作も容易に確認することができる。また、芯線12の周方向の各領域ごとに、異なる模様31k,31mによる別々のメジャーマークとして活用することも可能となる。
【0057】
また、このようなマーカー31jの模様31k,31mのパターンによって、例えば第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態のテーパー部13とまた違うものを、外観上分かり易く区別することが可能となる。なお、模様31kの隙間31l、および模様31mの隙間31nには、それぞれ透明な樹脂を塗布してテーパー部13の視認性を確保したり、あるいは模様31k,31mと異なる色の樹脂で塗り分けても良い。また、模様31k,31mと隙間31l,31nの具体的な幅や傾斜等の寸法は、適宜定め得る設計事項である。
【0058】
<本発明の構成と作用効果>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されるものではない。前述した実施形態から導かれる本発明について、以下に説明する。
【0059】
先ず、芯線12の外周に樹脂層を被覆して成るワイヤー本体11を備え、体内に挿入して使用する医療用のガイドワイヤー10,10A~Cにおいて、
前記芯線12の先端側に、先端に向かい漸次縮径するテーパー部13が設けられ、
前記ワイヤー本体11は、遠位の先端から順に、造影性のある先端部20と、視認可能なマーカー31a,31d,31g,31jを含む指標部30と、該指標部30より近位の基端に亘る本体部40と、に区画され、
前記指標部30は、前記テーパー部13に対応して配置されたことを特徴とするガイドワイヤー10。
【0060】
このようなガイドワイヤー10によれば、ワイヤー本体11の先端部20には造影性があるため、放射線の透視下で使用する場合に、ワイヤー本体11全体を先導する先端部20の位置を正確に確認することができて使い勝手が良い。ここで先端部20の造影性は、その樹脂層に造影剤を含ませたり、あるいは放射線の不透過性が高い部品を埋め込むことにより得ることができる。
【0061】
また、ワイヤー本体11の指標部30に含まれる視認可能なマーカー31a,31d,31g,31jによって、術者が内視鏡を通してガイドワイヤー10を操作する際に、特に指標部30より先端側の動きや位置を容易に確認することができる。ここで指標部30は、芯線12にあるテーパー部13に対応して配置されている。例えばテーパー部13の始端が、指標部30と本体部40との境界に合致している。
【0062】
これにより、芯線12にあるテーパー部13を、指標部30を介して視認することができ、手で触らなくともワイヤー本体11の先端側における硬さ(柔軟長)の判別が容易となる。一方、従来のガイドワイヤーでは、使用する際に任意の硬さの先端(テーパー性)を確認・選択するためには、手で触って判断する必要があり、外観的に判断することはできずに不便であった。
【0063】
また、本発明は、前記芯線12において、前記テーパー部13の表面と、前記テーパー部13以外の部位の表面とは、互いに視覚的に区別可能に相違し、
前記マーカー31a,31d,31g,31jは、前記指標部30の動きや位置を視認可能とする所定パターンの模様31b,31e,31h,31k,31mを、前記芯線12の表面のうち少なくともテーパー部13に塗布して成り、
前記模様31b,31e,31h,31k,31mには、前記芯線12の表面を被覆しない隙間31c,31f,31i,31l,31nが軸方向に並ぶように含まれ、該隙間31c,31f,31i,31l,31nより、当該部分の前記芯線12の表面を外側から視認可能としたことを特徴とする。
【0064】
このようなガイドワイヤー10によれば、芯線12のテーパー部13の位置を、前述したように指標部30から間接的に確認するだけでなく、芯線12のテーパー部13とそれ以外の部位の表面上の相違を見比べることで、直接的に視認することもできる。ここでテーパー部13は、マーカー31a,31d,31g,31jの模様31b,31e,31h,31k,31mによって全て覆われることなく、隙間31c,31f,31i,31l,31nを通して外側から視認可能となっている。
【0065】
また、本発明では、前記テーパー部13には、前記芯線12の軸線に対して異なる傾斜角ないし長さの相違があり、
前記テーパー部13の相違に応じて、前記マーカー31a,31d,31g,31jを成す模様31b,31e,31h,31k,31mの所定パターンも異ならせたことを特徴とする。
【0066】
このような構成によれば、テーパー部13の種類は1種類だけに限らず、芯線12の軸線に対して異なる傾斜角ないし長さの相違により複数種類が存在する。そこで、テーパー部13の相違に応じて、マーカー31a,31d,31g,31jを成す模様31b,31e,31h,31k,31mの所定パターンも異ならせる。
【0067】
これにより、医療処置毎にガイドワイヤー10の種類(ワイヤー本体11の先端側の硬さ(柔軟長等))を使い分ける場合には、各ガイドワイヤー10の先端側を手で触って確認しなくても、指標部30のマーカー31a,31d,31g,31jの視覚的な相違だけで、容易に所望のガイドワイヤー10の種類を選択することが可能となる。
【0068】
また、本発明では、前記指標部30における樹脂層は、前記芯線12の表面に塗布した前記模様31b,31e,31h,31k,31mとその隙間31c,31f,31i,31l,31nを下地層31として、該下地層31の表面を親水性樹脂の基材となる透明な樹脂から成る中間層32で覆い、該中間層32の表面に透明な親水性樹脂を塗布して最外層33としたことを特徴とする。
【0069】
このようなガイドワイヤー10によれば、マーカー31a,31d,31g,31jを成す下地層31を、透明な中間層32で覆うことにより、マーカー31a,31d,31g,31jの視認性を損なうことなく、模様31b,31e,31h,31k,31mの塗膜剥がれ等の不具合を防止することができる。さらに、中間層32の表面に透明な親水性樹脂を塗布して最外層33としたことにより、マーカー31a,31d,31g,31jの視認性を損なうことなく高い滑り性を確保でき、併用医療機器との摩擦が小さくなるため、ガイドワイヤー10の操作性を向上させることができる。
【0070】
さらに、本発明では、前記指標部30における樹脂層のうち最外層33を成す前記親水性樹脂は、前記先端部20における樹脂層のうち最外層22を成す親水性樹脂と同じ処方により塗布して形成したことを特徴とする。
【0071】
このようなイドワイヤー10によれば、先端部20と指標部30における最外層22,33を形成する親水性樹脂を、被膜ではなく塗布で形成することにより、先端部20と指標部30の外表面間の段差を解消するように加工中に調整可能であり、外表面を滑らかに連続させることができる。従って、先端部20と指標部30の部位毎の滑り性に差が生じることはなく、ガイドワイヤー10のスムーズな操作性を確保することができる。
【0072】
一方、従来のガイドワイヤーでは、最外層を形成する手段として、異なる材質のチューブ状部品を組み合わせて被膜を形成している製品がある。このような構造の製品の場合には、部品点数が嵩むためコストが高くなり、しかも、各部品の寸法公差が原因で、部品同士の境界に生じた段差により、滑り性が損なわれたり、段差を基点として破損が生じる虞があった。
【0073】
以上、本発明の各種実施形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は前述した実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば各ガイドワイヤー10,10A~Cの具体的な長さや径、それに両端の形状は、図示したものに限定されることはない。また、カテーテルは、必ずしも内視鏡を用いた医療処置での使用に限られるものではない。
【0074】
さらに、各実施形態のガイドワイヤー10,10A~Cは、何れも先端部20だけから内視鏡を通じて体内に挿入するように構成されているが、基端部からも先端部20と同様に体内に挿入できる両端使用型のガイドワイヤーとして構成しても良い。この場合は、基端部側の芯線12にもテーパー部13を設けて、基端部と本体部40との間にも指標部を設けると良い。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明に係るガイドワイヤーは、様々な医療処置に使用するガイドワイヤーに適用することができる。
【符号の説明】
【0076】
10,10A,10B,10C…ガイドワイヤー
11…ワイヤー本体
12…芯線
13…テーパー部
20…先端部
21…下地層
22…最外層
30…指標部
31…下地層
31a,31d,31g,31j…マーカー
31b,31e,31h,31k,31m…模様
31c,31f,31i,31l,31n…隙間
32…中間層
33…最外層
40…本体部
41…下地層
42…最外層
図1
図2
図3
図4
図5