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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060921
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20240425BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20240425BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
H01L29/78 658F
H01L29/78 652Q
H01L29/78 652F
H01L29/78 652S
H01L29/78 653C
H01L29/78 652K
H01L29/78 652P
H01L29/78 652M
H01L29/78 652D
H01L29/06 301V
H01L29/06 301F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168496
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長浜 優
(72)【発明者】
【氏名】安孫子 雄哉
(57)【要約】
【課題】半導体装置の信頼性を向上させる。
【解決手段】半導体基板SUB中に、トレンチTRを形成する。トレンチTRの内部に、酸化シリコン膜OX1を形成する。酸化シリコン膜OX1上に、多結晶シリコン膜PLを形成する。多結晶シリコン膜PLに対して熱酸化処理を行い、多結晶シリコン膜PLから酸化シリコン膜OX2を形成する。これにより、酸化シリコン膜OX1および酸化シリコン膜OX2を含む絶縁膜IF1を形成する。絶縁膜IF1を介してトレンチTRの内部を埋め込むように、導電性膜(CF1)を形成する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)上面および下面を有する第1導電型の半導体基板を用意する工程、
(b)前記半導体基板の上面側において、前記半導体基板中に、トレンチを形成する工程、
(c)前記トレンチの内部に、第1酸化シリコン膜を形成する工程、
(d)前記第1酸化シリコン膜上に、多結晶シリコン膜を形成する工程、
(e)前記多結晶シリコン膜に対して熱酸化処理を行い、前記多結晶シリコン膜から第2酸化シリコン膜を形成することで、前記第1酸化シリコン膜および前記第2酸化シリコン膜を含む第1絶縁膜を形成する工程、
(f)前記第1絶縁膜を介して前記トレンチの内部を埋め込むように、第1導電性膜を形成する工程、
を備える、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
(g)前記(f)工程後、前記第1導電性膜の一部を後退させることで、後退させた前記第1導電性膜をフィールドプレート電極として形成する工程、
(h)前記(g)工程後、前記フィールドプレート電極の上面よりも低い位置まで前記第1絶縁膜を後退させる工程、
(i)前記(h)工程後、熱酸化処理によって、前記第1絶縁膜上の前記トレンチの内部に、ゲート絶縁膜を形成すると共に、前記第1絶縁膜から露出している前記フィールドプレート電極の上面上および側面上に、第2絶縁膜を形成する工程、
(j)前記(i)工程後、前記フィールドプレート電極上において、前記トレンチの内部を埋め込むように、ゲート電極を形成する工程、
(k)前記(j)工程後、前記半導体基板の上面側において、前記半導体基板中に、前記第1導電型と反対の第2導電型のボディ領域を形成する工程、
(l)前記(k)工程後、前記ボディ領域内に、前記第1導電型のソース領域を形成する工程、
(m)前記(l)工程後、前記半導体基板の下面側において、前記半導体基板中に、前記第1導電型のドレイン領域を形成する工程、
を更に備える、半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(d)工程では、CVD法によって、前記第1導電型の不純物が導入された前記多結晶シリコン膜が形成される、半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(d)工程では、前記半導体基板の下面下にも前記多結晶シリコン膜が形成され、
(n)前記(d)工程と前記(e)工程との間に、前記半導体基板の下面下の前記多結晶シリコン膜を除去する工程、
を更に備える、半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(e)工程では、前記熱酸化処理は、水蒸気を用いて、750℃以上且つ950℃以下の条件下で行われる、半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2酸化シリコン膜の厚さは、前記第1酸化シリコン膜の厚さよりも厚い、半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(f)工程は、
(f1)前記(e)工程後、前記トレンチの内部において、前記第1絶縁膜上に、第2導電性膜を形成する工程、
(f2)前記(f1)工程後、前記第2導電性膜に対して異方性エッチング処理を行うことで、前記第2導電性膜の厚さを薄くする工程、
(f3)前記(f2)工程後、前記トレンチの内部を埋め込むように、第3導電性膜を形成する工程、
を有し、
前記第1導電性膜は、前記第2導電性膜および前記第3導電性膜を含む、半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(c)工程では、熱酸化処理によって前記第1酸化シリコン膜が形成される、半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体装置の製造方法において、
(o)前記(c)工程と前記(d)工程の間に、CVD法によって、前記第1酸化シリコン膜上に、第3酸化シリコン膜を形成する工程、
を更に備え、
前記(d)工程では、前記第3酸化シリコン膜上に、前記多結晶シリコン膜が形成され、
前記第1絶縁膜は、前記第1酸化シリコン膜、前記第2酸化シリコン膜および前記第3酸化シリコン膜を含み、
前記第2酸化シリコン膜の厚さは、前記第1酸化シリコン膜および前記第3酸化シリコン膜の各々の厚さよりも厚い、半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項8に記載の半導体装置の製造方法において、
(p)前記(e)工程と前記(f)工程の間に、CVD法によって、前記第2酸化シリコン膜上に、第3酸化シリコン膜を形成する工程、
を更に備え、
前記第1絶縁膜は、前記第1酸化シリコン膜、前記第2酸化シリコン膜および前記第3酸化シリコン膜を含み、
前記第2酸化シリコン膜の厚さは、前記第1酸化シリコン膜および前記第3酸化シリコン膜の各々の厚さよりも厚い、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、特に、トレンチの内部に絶縁膜が形成された半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)のような半導体素子を備えた半導体装置では、トレンチの内部にゲート電極が埋め込まれたトレンチゲート構造が適用されている。トレンチゲート構造の一種として、トレンチの下部にフィールドプレート電極を形成し、トレンチの上部にゲート電極を形成したスプリットゲート構造がある。フィールドプレート電極には、ソース電極に供給される電位と同じ電位が供給される。このフィールドプレート電極によって、ドリフト領域に空乏層を広げることで、ドリフト領域を高濃度化することが可能となり、ドリフト領域の低抵抗化が可能となる。
【0003】
例えば、特許文献1には、スプリットゲート構造のMOSFETが開示されている。また、特許文献1には、トレンチの内部に、熱酸化処理によってフィールドプレート電極用の絶縁膜を形成し、その後、トレンチの内部に、フィールドプレート電極用の導電性膜を埋め込む方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-032951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者らの検討によれば、フィールドプレート電極の基となる導電性膜を堆積する際に、導電性膜中にシームと呼ばれる空隙が発生し易く、この空隙が原因で、種々の問題が生じる場合があることが判った。図26図29は、本願発明者らが検討を行った検討例の半導体装置を示しており、フィールドプレート電極の形成前後の製造工程の様子を示している。以下に図26図29を用いて、検討例で発生する問題点について説明する。なお、検討例およびその問題点は、従来から知られていた知見ではなく、本願発明者らが新たに発見した知見である。
【0006】
図26に示されるように、スプリットゲート構造では、まず、半導体基板SUBにトレンチTRを形成する。次に、トレンチTRの内部に、半導体基板SUBとフィールドプレート電極とを絶縁させるための絶縁膜IF3を形成する。絶縁膜IF3の厚さは、例えば500nmである。
【0007】
ここでは、絶縁膜IF3は、熱酸化処理によって形成された酸化シリコン膜OX4と、CVD(Chemical Vapor Deposition)法によって形成された酸化シリコン膜OX5との積層膜で構成されている。
【0008】
絶縁膜IF3全体を熱酸化処理によって形成することも可能であるが、その場合、絶縁膜IF3からの応力によって、ウェハ状態の半導体基板SUBが反り易くなり、その後の製造工程に支障が出る虞がある。そこで、絶縁膜IF3全体をCVD法によって形成することも考えられる。しかし、絶縁膜IF3と半導体基板SUBとの界面準位の改善という点を考慮すると、半導体基板SUBに接する酸化シリコン膜は、熱酸化処理によって形成されていることが好ましい。
【0009】
従って、検討例では、まず、熱酸化処理によって、相対的に薄い酸化シリコン膜OX4を形成する。次に、CVD法によって、相対的に厚い酸化シリコン膜OX5を形成する。酸化シリコン膜OX4の厚さは、例えば100nmである。トレンチTRの側面における酸化シリコン膜OX5の厚さは、例えば400nmである。CVD法のカバレッジを考慮すると、トレンチTRの側面における厚さを400nm程度にするためには、例えば750nm程度の膜さを半導体基板SUBの全面上に堆積させる必要がある。従って、半導体基板SUBの上面上の絶縁膜IF3の厚さT3は、850nm程度のように、厚く形成される。
【0010】
ここで、絶縁膜IF3に、CVD法による厚い酸化シリコン膜OX5を適用すると、トレンチTRの最上部付近で絶縁膜IF3の厚さが厚くなり易い傾向があり、絶縁膜IF3がオーバーハング状になり易い。図26では、そのような箇所を、オーバーハング部10として示している。
【0011】
次に、図27に示されるように、トレンチTRの内部に、CVD法によって、フィールドプレート電極用の導電性膜CF1を堆積する。導電性膜CF1は、例えばn型の多結晶シリコン膜である。ここで、絶縁膜IF3がオーバーハング状になっていると、導電性膜CF1の埋め込み不良が発生し易くなる。すなわち、導電性膜CF1中に空隙20が発生し易くなる。
【0012】
図28は、空隙20が発生している状態で、導電性膜CF1を加工し、フィールドプレート電極FPを形成した様子を示している。まず、トレンチTRの外部に形成されている導電性膜CF1を除去する。次に、異方性エッチング処理によって導電性膜CF1を後退させることで、フィールドプレート電極FPを形成する。ここで、空隙20が発生している状態で、導電性膜CF1に対して異方性エッチング処理を行っているので、フィールドプレート電極FPの上部が異常な形状になり易い。
【0013】
次に、図29に示されるように、ウェットエッチング処理によって、トレンチTRの外部に形成されている絶縁膜IF3を除去すると共に、トレンチTRの内部の絶縁膜IF3を後退させる。次に、熱酸化処理によって、絶縁膜IF3上のトレンチTRの内部にゲート絶縁膜GIを形成し、絶縁膜IF3から露出しているフィールドプレート電極FPの表面上に絶縁膜IF2を形成する。
【0014】
ここで、絶縁膜IF2は、空隙20に沿って形成されていく。そうすると、フィールドプレート電極FPの内部で体積が膨張し、絶縁膜IF2からトレンチTRの外部へ応力が働く。特に、トレンチTRの底部付近において、応力が働きやすい。それ故、トレンチTRの底部付近に位置する半導体基板SUBに、結晶欠陥が発生し易くなる。結晶欠陥が多数発生すると、それらが、リークパスとなり、MOSFETの耐圧が低下する要因となる。
【0015】
また、図29の製造工程の後、フィールドプレート電極FP上には、絶縁膜IF2を介してゲート電極が形成される。空隙20が発生していると、フィールドプレート電極FPの上部が突起部のように加工され易いが、そのような突起部では電界が集中し易くなるので、フィールドプレート電極FPとゲート電極との間の絶縁耐性が劣化し易くなる。
【0016】
本願の主な目的は、空隙20の発生を抑制することで、検討例の問題点を解消し、半導体装置の信頼性を向上させることにある。その他の課題および新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本願において開示される実施の形態のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0018】
一実施の形態に係る半導体装置の製造方法は、(a)上面および下面を有する第1導電型の半導体基板を用意する工程、(b)前記半導体基板の上面側において、前記半導体基板中に、トレンチを形成する工程、(c)前記トレンチの内部に、第1酸化シリコン膜を形成する工程、(d)前記第1酸化シリコン膜上に、多結晶シリコン膜を形成する工程、(e)前記多結晶シリコン膜に対して熱酸化処理を行い、前記多結晶シリコン膜から第2酸化シリコン膜を形成することで、前記第1酸化シリコン膜および前記第2酸化シリコン膜を含む第1絶縁膜を形成する工程、(f)前記第1絶縁膜を介して前記トレンチの内部を埋め込むように、第1導電性膜を形成する工程、を備える。
【発明の効果】
【0019】
一実施の形態によれば、半導体装置の信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施の形態1における半導体装置を示す平面図である。
図2】実施の形態1における半導体装置を示す平面図である。
図3】実施の形態1における半導体装置の要部を示す拡大平面図である。
図4】実施の形態1における半導体装置の要部を示す拡大平面図である。
図5】実施の形態1における半導体装置を示す断面図である。
図6】実施の形態1における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図7図6に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図8図7に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図9図8に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図10図9の半導体装置の製造工程の要部を示す拡大断面図である。
図11図8の半導体基板の状態を示す断面図である。
図12図9に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図13図12に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図14図13に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図15図14に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図16図15に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図17図16に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図18図17に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図19図18に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図20】変形例1における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図21図20に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図22図21に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図23】変形例2における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図24】変形例3における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図25】変形例4における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図26】検討例における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図27図26に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図28図27に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図29図28に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0022】
また、本願において説明されるX方向、Y方向およびZ方向は、互いに交差し、互いに直交している。本願では、Z方向をある構造体の上下方向、高さ方向または厚さ方向として説明する。また、本願で用いられる「平面図」または「平面視」などの表現は、X方向およびY方向によって構成される面を「平面」とし、この「平面」をZ方向から見ることを意味する。
【0023】
(実施の形態1)
<半導体装置の構造>
以下に図1図5を用いて、実施の形態1における半導体装置100について説明する。なお、本願の主な特徴は、絶縁膜IF1の製造工程と、その前後の製造工程とにあるが、そのような特徴については、後述の「半導体装置の製造方法」で詳細に説明する。
【0024】
図1および図2は、半導体装置100である半導体チップの平面図である。図3および図4は、図1および図2に示される領域1Aを拡大した要部平面図である。図2および図4は、図1および図3の下方の構造体を示し、主に、半導体基板SUBに形成されたトレンチゲートの構造を示している。また、図3に示される孔CH1~CH3の位置は、図4に示される孔CH1~CH4の位置と一致している。また、図5は、図3および図4に示されるA-A線およびB-B線に沿った断面図である。
【0025】
図1は、主に半導体基板SUBの上方に形成される配線パターンを示している。半導体装置100は、セル領域CRと、平面視においてセル領域CRを囲む外周領域ORとを有する。セル領域CRには、複数のMOSFETのような主要な半導体素子が形成される。外周領域ORは、ゲート電極GEにゲート配線GWを接続させるため、および、ターミネーション領域として機能するトレンチTRを形成するため等に用いられる。
【0026】
図1および図3に示されるように、セル領域CRはソース電極SEで覆われている。平面視において、ゲート配線GWはソース電極SEを囲んでいる。また、ここでは図示していないが、ソース電極SEおよびゲート配線GWは、ポリイミド膜のような保護膜で覆われている。上記保護膜の一部には開口部が設けられ、その開口部で露出しているソース電極SEおよびゲート配線GWが、ソースパッドSPおよびゲートパッドGPになる。ソースパッドSP上およびゲートパッドGP上に、外部接続用部材が接続されることで、半導体装置100が、他の半導体チップまたは配線基板などに電気的に接続される。なお、外部接続用部材は、例えば、金若しくは銅からなるワイヤ、または、銅板からなるクリップなどである。
【0027】
図2および図4に示されるように、半導体基板SUBには複数のトレンチTRが形成されている。セル領域CRに形成されている複数のトレンチTRは、ストライプ状に形成され、それぞれY方向に延在し、X方向において互いに隣接している。
【0028】
セル領域CRでは、トレンチTRの内部において、トレンチTRの下部にフィールドプレート電極FPが形成され、トレンチTRの上部にゲート電極GEが形成されている。フィールドプレート電極FPの一部は、コンタクト部FPaを成している。コンタクト部FPaを構成するフィールドプレート電極FPは、トレンチTRの内部において、トレンチTRの下部だけでなく、トレンチTRの上部にも形成されている。図4に示されるように、コンタクト部FPaは、セル領域CRの一部に形成されている。
【0029】
図2に示されるように、外周領域ORに形成されている複数のトレンチTRは、平面視においてセル領域CRを囲むように、Y方向およびX方向に延在している。外周領域ORにおいて、トレンチTRの内部は、フィールドプレート電極FPによって埋め込まれている。
【0030】
以下に図5を用いて、半導体装置100の断面構造について説明する。
【0031】
図5に示されるように、半導体装置100は、上面および下面を有するn型の半導体基板SUBを備える。半導体基板SUBは、シリコンからなる。半導体基板SUBは、低濃度のn型のドリフト領域NVを有する。ここでは、n型の半導体基板SUB自体がドリフト領域NVを構成している。なお、ドリフト領域NVは、n型のシリコン基板上に、エピタキシャル成長法によって燐(P)を導入しながら成長させたn型の半導体層であってもよい。本願では、そのようなn型のシリコン基板およびn型の半導体層からなる積層体も半導体基板SUBであるとして説明する。
【0032】
半導体基板SUBの上面側において、半導体基板SUB中には、半導体基板SUBの上面から所定の深さに達するトレンチTRが形成されている。トレンチTRの深さは、例えば5μm以上且つ7μm以下である。トレンチTRの内部において、トレンチTRの下部には、絶縁膜IF1を介してフィールドプレート電極FPが形成され、トレンチTRの上部には、ゲート絶縁膜GIを介してゲート電極GEが形成されている。ゲート電極GEの上面は、半導体基板SUBの上面よりも若干後退している。
【0033】
絶縁膜IF1の上面の位置は、フィールドプレート電極FPの上面の位置よりも低くなっている。ゲート絶縁膜GIは、絶縁膜IF1上のトレンチTRの内部に形成されている。絶縁膜IF1から露出しているフィールドプレート電極FPの上面および側面には、絶縁膜IF2が形成されている。また、ゲート電極GEは、絶縁膜IF1から露出しているフィールドプレート電極FPと半導体基板SUBとの間にも、ゲート絶縁膜GIおよび絶縁膜IF2を介して形成されている。
【0034】
絶縁膜IF1は、半導体基板SUBとフィールドプレート電極FPとの間に形成されている。絶縁膜IF2は、ゲート電極GEとフィールドプレート電極FPとの間に形成されている。ゲート絶縁膜GIは、半導体基板SUBとゲート電極GEとの間に形成されている。これらの絶縁膜によって、半導体基板SUB、ゲート電極GEおよびフィールドプレート電極FPは、互いに電気的に絶縁されている。
【0035】
ゲート電極GEおよびフィールドプレート電極FPは、例えばn型の不純物が導入された多結晶シリコン膜からなる。絶縁膜IF1、絶縁膜IF2およびゲート絶縁膜GIは、例えば酸化シリコン膜からなる。絶縁膜IF1の厚さは、絶縁膜IF2およびゲート絶縁膜GIの各々の厚さよりも厚くなっている。絶縁膜IF1の厚さは、例えば400nm以上且つ600nm以下である。絶縁膜IF2およびゲート絶縁膜GIの各々の厚さは、例えば50nm以上且つ80nm以下である。
【0036】
半導体基板SUBの上面側において、半導体基板SUB中には、トレンチTRの深さよりも浅くなるように、p型のボディ領域PBが形成されている。ボディ領域PB内には、n型のソース領域NSが形成されている。ソース領域NSは、ドリフト領域NVよりも高い不純物濃度を有している。
【0037】
半導体基板SUBの下面側において、半導体基板SUB中には、n型のドレイン領域NDが形成されている。ドレイン領域NDは、ドリフト領域NVよりも高い不純物濃度を有している。半導体基板SUBの下面下には、ドレイン電極DEが形成されている。ドレイン電極DEは、例えばアルミニウム膜、チタン膜、ニッケル膜、金膜若しくは銀膜のような単層の金属膜、または、これらの金属膜を適宜積層させた積層膜からなる。ドレイン領域NDおよびドレイン電極DEは、セル領域CRおよび外周領域ORに渡って形成されている。半導体基板SUB(ドレイン領域ND、ドリフト領域NV)には、ドレイン電極DEからドレイン電位が供給される。
【0038】
半導体基板SUBの上面上には、トレンチTRを覆うように、層間絶縁膜ILが形成されている。層間絶縁膜ILは、例えば酸化シリコン膜からなる。層間絶縁膜ILの厚さは、例えば700nm以上且つ900nm以下である。
【0039】
層間絶縁膜IL中には、ソース領域NSおよびボディ領域PBに達する孔CH1が形成されている。孔CH1の底部において、ボディ領域PBには、高濃度拡散領域PRが形成されている。高濃度拡散領域PRは、ボディ領域PBよりも高い不純物濃度を有する。
【0040】
層間絶縁膜IL上には、ソース電極SEが形成されている。ソース電極SEは、孔CH1の内部に埋め込まれ、ソース領域NS、ボディ領域PBおよび高濃度拡散領域PRに電気的に接続され、これらの不純物領域にソース電位を供給する。
【0041】
図5のB-B断面に示されるように、フィールドプレート電極FPの一部は、フィールドプレート電極FPのコンタクト部FPaを成している。コンタクト部FPa以外のフィールドプレート電極FPに接している絶縁膜IF1の上面の位置は、コンタクト部FPaに接している絶縁膜IF1の上面の位置よりも低くなっている。すなわち、A-A断面の絶縁膜IF1の上面の位置は、半導体基板SUBの上面から300nm以上且つ400nm以下の深さに位置する。B-B断面の絶縁膜IF1の上面の位置は、半導体基板SUBの上面から50nm以上且つ100nm以下の深さに位置する。
【0042】
また、コンタクト部FPaの上面の位置は、半導体基板SUBの上面の位置よりも高くなっており、半導体基板SUBの上面から200nm以上且つ400nm以下の高さに位置する。
【0043】
層間絶縁膜IL中には、コンタクト部FPaに達する孔CH3が形成されている。ソース電極SEは、孔CH3の内部に埋め込まれ、フィールドプレート電極FPに電気的に接続され、フィールドプレート電極FPにソース電位を供給する。なお、外周領域ORのトレンチTRの断面構造も、B-B断面と同じである。外周領域ORのフィールドプレート電極FPの一部上にも、孔CH3が形成されている。従って、外周領域ORのフィールドプレート電極FPにも、ソース電極SEが電気的に接続され、ソース電位が供給される。
【0044】
ここでは図示していないが、層間絶縁膜IL中には、ゲート電極GEに達する孔CH2が形成されている。また、層間絶縁膜IL上には、ゲート配線GWが形成されている。ゲート配線GWは、孔CH2の内部に埋め込まれ、ゲート電極GEに電気的に接続され、ゲート電極GEにゲート電位を供給する。
【0045】
ソース電極SEおよびゲート配線GWは、例えば、バリアメタル膜と、上記バリアメタル膜上に形成された導電性膜とからなる。上記バリアメタル膜は、例えば窒化チタン膜であり、上記導電性膜は、例えばアルミニウム膜である。
【0046】
なお、ソース電極SEおよびゲート配線GWは、孔CH1~CH3の内部を埋め込むプラグ層と、層間絶縁膜IL上に形成された配線層とから構成されていてもよい。その場合、配線層は、上記バリアメタル膜および上記導電性膜によって構成される。プラグ層は、例えば、窒化チタン膜のようなバリアメタル膜と、タングステン膜のような導電性膜との積層膜によって構成される。
【0047】
<半導体装置の製造方法>
以下に図6図19を用いて、半導体装置100の製造方法に含まれる各製造工程について説明する。
【0048】
図6に示されるように、まず、上面および下面を有するn型の半導体基板SUBを用意する。上述のように、ここでは、n型の半導体基板SUB自体がドリフト領域NVを構成しているが、ドリフト領域NVは、n型のシリコン基板上に、エピタキシャル成長法によって燐(P)を導入しながら成長させたn型の半導体層であってもよい。
【0049】
次に、半導体基板SUBの上面側において、半導体基板SUB中にトレンチTRを形成する。トレンチTRを形成するためには、まず、半導体基板SUB上に、例えばCVD法によって、例えば酸化シリコン膜を形成する。次に、上記酸化シリコン膜上に、フォトリソグラフィ技術によって、開口部を有するレジストパターンを形成する。次に、上記レジストパターンをマスクとして異方性エッチング処理を行うことで、上記酸化シリコン膜をパターニングし、ハードマスクHMを形成する。次に、アッシング処理によって上記レジストパターンを除去する。次に、ハードマスクHMをマスクとして異方性エッチング処理を行うことで、半導体基板SUB中にトレンチTRを形成する。その後、例えばフッ酸を含む溶液を用いたウェットエッチング処理によって、ハードマスクHMを除去する。
【0050】
図7に示されるように、トレンチTRの内部および半導体基板SUB上に、例えば熱酸化処理によって、酸化シリコン膜OX1を形成する。ここで行われる熱酸化処理は、酸素ガスを用いて、1000℃以上且つ1100℃以下の条件下で行われる。酸化シリコン膜OX1の厚さは、例えば50nm以上且つ150nm以下である。
【0051】
図8に示されるように、酸化シリコン膜OX1上に、多結晶シリコン膜PLを形成する。多結晶シリコン膜PLには、n型の不純物が導入されており、その不純物濃度は、例えば4.0×1020cm-3である。多結晶シリコン膜PLの厚さは、例えば150nm以上且つ250nm以下である。
【0052】
また、多結晶シリコン膜PLは、例えばCVD法によって形成できる。多結晶シリコン膜PLの形成条件の一例を以下に記す。CVD装置のチャンバ内の温度を580℃にした状態で、上記チャンバ内に、シラン(SiH)とホスフィン(PH)との混合ガスを流す。これにより、n型の不純物が導入された多結晶シリコン膜PLを形成できる。
【0053】
図9に示されるように、多結晶シリコン膜PLに対して熱酸化処理を行い、多結晶シリコン膜PLから酸化シリコン膜OX2を形成する。この熱酸化処理は、水蒸気を用いて、750℃以上且つ950℃以下の条件下で行われる。なお、酸化シリコン膜OX2の厚さは、例えば350nm以上且つ450nm以下である。これにより、フィールドプレート電極FPおよび半導体基板SUBを電気的に分離するための絶縁膜として、酸化シリコン膜OX1および酸化シリコン膜OX2を含む絶縁膜IF1が形成される。
【0054】
図10は、図9のトレンチTRの上部を拡大した断面図である。絶縁膜IF1では、図26の検討例の絶縁膜IF3のようなオーバーハング部10が形成されていない。従って、後述のフィールドプレート電極FP用の導電性膜CF1を形成した際に、空隙20の発生を抑制することができる。
【0055】
検討例では、空隙20の発生に起因して、フィールドプレート電極FPの上部が突起部のように加工され、突起部において電界が集中し、フィールドプレート電極FPとゲート電極GEとの間の絶縁耐性が劣化し易いという問題があった。また、検討例では、空隙20に沿って形成された絶縁膜IF2によって、フィールドプレート電極FPの内部で体積が膨張し、半導体基板SUBに、結晶欠陥が発生し易くなるという問題もあった。実施の形態1では、これらの問題を解消できるので、半導体装置100の信頼性を向上できる。
【0056】
上述のように、実施の形態1では、多結晶シリコン膜PLをCVD法によって形成している。本願発明者らの検討によれば、CVD法による多結晶シリコン膜PLの形成は、検討例のようなCVD法による酸化シリコン膜OX5の形成と比較して、平坦に形成され易く、オーバーハング部10のような形状に成り難いということが判った。
【0057】
また、検討例では、例えば400nmの厚さを有する酸化シリコン膜OX5をトレンチTRの側面に形成するためには、CVD法でのカバレッジ等を考慮し、750nm程度の酸化シリコン膜OX5を堆積する必要があった。それ故、半導体基板SUBの上面上における厚さT3が、トレンチTRの側面上における厚さよりも厚くなり、オーバーハング部10が発生し易くなっていた。しかしながら、多結晶シリコンのCVD法でのカバレッジは、酸化シリコンよりも高く、更に、実施の形態1では、多結晶シリコン膜PLの厚さは、例えば150nm以上且つ250nm以下のように、薄く形成できる。CVD法による成膜時の厚さが、実施の形態1の方が検討例よりも薄いので、更にオーバーハング部10が発生し難くなっている。そして、多結晶シリコン膜PL自体を酸化することで、検討例のトレンチTR側面上において、酸化シリコン膜OX5の厚さと同程度の厚さを有する酸化シリコン膜OX2を形成することができる。
【0058】
なお、実施の形態1の方法で酸化シリコン膜OX2を形成すると、半導体基板SUBの上面上における酸化シリコン膜OX2の厚さが、トレンチTRの内部における酸化シリコン膜OX2の厚さと同程度になる。従って、半導体基板SUBの上面上における絶縁膜IF1の厚さT1が、トレンチTRの内部における絶縁膜IF1の厚さT2と同程度になる。また、図26の検討例では、半導体基板SUBの上面上における絶縁膜IF3の厚さは、厚さT3であるが、厚さT1は、厚さT3よりも薄くなっている。
【0059】
後述のトレンチTRの内部に導電性膜CF1を埋め込む際に、半導体基板SUBの上面上における絶縁膜IF1の厚さT1が薄い方が、アスペクト比が低減される。そのため、トレンチTRの内部に導電性膜CF1を良好に埋め込み易くなる。
【0060】
また、後述の絶縁膜IF1を後退させる際に、半導体基板SUBの上面上における絶縁膜IF1は除去されるが、その厚さT1が薄いので、ウェットエッチング処理の時間を短縮できる。
【0061】
また、実施の形態1ではn型の多結晶シリコン膜PLを例示したが、多結晶シリコン膜PLは、ノンドープのシリコンであってもよい。この場合でも、上述の熱酸化処理を行うことで、酸化シリコン膜OX2を形成できる。しかし、多結晶シリコン膜PLに不純物が導入されている場合には、増速酸化を利用して酸化シリコン膜OX2を形成できるという利点がある。すなわち、不純物が導入された多結晶シリコン膜の酸化速度は、不純物が導入されていない多結晶シリコン膜の酸化速度よりも速い。従って、酸化シリコン膜OX2の形成速度を速めることができるので、上述の熱酸化処理の時間を短縮できるという利点がある。
【0062】
また、n型の多結晶シリコン膜PLを適用した場合には、上述の熱酸化処理中に、不純物が半導体基板SUB中に拡散する可能性がある。そうすると、ドリフト領域NV、ボディ領域PBおよびソース領域NSの各々の不純物プロファイルが変動する虞がある。しかし、多結晶シリコン膜PLと半導体基板SUBとの間に酸化シリコン膜OX1が存在しているので、そのような不純物の拡散を防止できる。すなわち、酸化シリコン膜OX1は、界面準位の改善という役割だけでなく、不純物の拡散防止という役割も担う。
【0063】
図11は、図8の半導体基板SUBの状態を示す断面図である。すなわち、図11は、多結晶シリコン膜PLを形成した後であって、酸化シリコン膜OX2を形成する前の状態を示している。図11では、破線で囲まれた領域のように、半導体基板SUBの下面付近が拡大して示されている。
【0064】
酸化シリコン膜OX1および多結晶シリコン膜PLは、実際には、半導体基板SUBの上面側だけでなく、半導体基板SUBの下面側にも形成される。この状態で多結晶シリコン膜PLに対して熱酸化処理を行うと、半導体基板SUBの下面にも酸化シリコン膜OX2が形成される。そうすると、下面側の酸化シリコン膜OX2によって、ウェハ状態の半導体基板SUBの反り量が変動する。この熱酸化処理前に、半導体基板SUBの下面側の多結晶シリコン膜PLを除去しておけば、半導体基板SUBの反り量を調整することができる。例えば、半導体基板SUBの反り量を低減することができる。
【0065】
図12は、図9に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。図12に示されるように、絶縁膜IF1を介してトレンチTRの内部を埋め込むように、例えばCVD法によって、導電性膜CF1を形成する。導電性膜CF1は、例えばn型の多結晶シリコン膜である。導電性膜CF1の厚さは、例えば400nm以上且つ600nm以下である。
【0066】
上述のように、実施の形態1では、検討例の絶縁膜IF3のようなオーバーハング部10が形成されていないので、導電性膜CF1の形成時に、空隙20の発生を抑制することができる。また、実施の形態1では、検討例と比較して、半導体基板SUBの上面上における絶縁膜IF1の厚さT1が薄いので、アスペクト比が低減されている。そのため、トレンチTRの内部に導電性膜CF1を良好に埋め込み易くなっている。
【0067】
図13に示されるように、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用いた研磨処理、または、異方性エッチング処理を行うことで、トレンチTRの外部に形成されている導電性膜CF1を除去する。この時点で、導電性膜CF1の上面の位置は、半導体基板SUBの絶縁膜IF1の上面の位置とほぼ同じになる。
【0068】
図14に示されるように、導電性膜CF1の一部がコンタクト部FPaとして残されるように、導電性膜CF1の他部を選択的に後退させる。まず、B-B断面に示されるように、コンタクト部FPaとなる領域を選択的に覆うレジストパターンRP1を形成する。次に、レジストパターンRP1をマスクとして異方性エッチング処理を行うことで、導電性膜CF1をパターニングする。すなわち、A-A断面に示されるように、導電性膜CF1の他部を選択的に後退させる。これにより、後退させた導電性膜CF1の他部がフィールドプレート電極FPとして形成され、後退させなかった導電性膜CF1の一部がコンタクト部FPaとなる。その後、アッシング処理によってレジストパターンRP1を除去する。
【0069】
図15に示されるように、例えばフッ酸を含む溶液を用いたウェットエッチング処理によって、半導体基板SUB上の絶縁膜IF1を除去し、トレンチTRの内部において、絶縁膜IF1を後退させる。これにより、トレンチTRの内部において、絶縁膜IF1の上面の位置が、フィールドプレート電極FPの上面の位置よりも低くなる。
【0070】
A-A断面では、フィールドプレート電極FPの上面が後退しているので、トレンチTRの内部の絶縁膜IF1が、ウェットエッチング処理に直接晒される 従って、ウェットエッチング処理後には、コンタクト部FPa以外のフィールドプレート電極FPに接している絶縁膜IF1の上面の位置は、コンタクト部FPaに接している絶縁膜IF1の上面の位置よりも低くなる。また、半導体基板SUB上の絶縁膜IF1を除去したことで、コンタクト部FPaの上面の位置は、半導体基板SUBの上面の位置よりも高くなる。
【0071】
図16に示されるように、まず、絶縁膜IF1上のトレンチTRの内部および半導体基板SUBの上面上に、熱酸化処理によって、酸化シリコン膜からなるゲート絶縁膜GIを形成する。同時に、絶縁膜IF1から露出しているフィールドプレート電極FPの上面および側面には、酸化シリコン膜からなる絶縁膜IF2が形成される。
【0072】
次に、トレンチTRを覆うように、例えばCVD法によって、半導体基板SUB上に、導電性膜CF2を形成する。導電性膜CF2は、例えばn型の多結晶シリコン膜である。
【0073】
図17に示されるように、導電性膜CF2に対して異方性ドライエッチング処理を行うことで、トレンチTRの外部に形成されていた導電性膜CF2を除去する。これにより、フィールドプレート電極FP上において、トレンチTRの内部を埋め込むように、ゲート電極GEを形成する。
【0074】
なお、この異方性ドライエッチング処理によって、コンタクト部FPaが形成されているトレンチTRの内部では、導電性膜CF2が除去される。ゲート用のコンタクト部FPaとソース領域NSの短絡を防止する目的で、不要な導電性膜CF2を除去するために、異方性ドライエッチング処理はオーバーエッチングで行われるので、ゲート電極GEの上面の位置は、半導体基板SUBの上面の位置よりも若干低くなる。また、この時点で、トレンチTRの内部において、半導体基板SUB、ゲート電極GEおよびフィールドプレート電極FP(コンタクト部FPa)は、互いに絶縁されている。
【0075】
図18に示されるように、異方性エッチング処理によって、半導体基板SUBの上面上のゲート絶縁膜GIと、フィールドプレート電極FPの上面上の絶縁膜IF2とを除去する。
【0076】
次に、半導体基板SUBの上面側において、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法によって、例えばホウ素(B)を導入することで、半導体基板SUB中に、p型のボディ領域PBを選択的に形成する。ボディ領域PBは、トレンチTRの深さよりも浅くなるように形成される。
【0077】
次に、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法によって、例えば砒素(As)を導入することで、セル領域CRのボディ領域PB内に、n型のソース領域NSを選択的に形成する。なお、コンタクト部FPaに隣接するボディ領域PB内には、ソース領域NSを形成しない。その後、半導体基板SUBに対して熱処理を施すことで、ソース領域NSおよびボディ領域PBに含まれる不純物を拡散させる。
【0078】
図19に示されるように、トレンチTRを覆うように、例えばCVD法によって、半導体基板SUBの上面上に、層間絶縁膜ILを形成する。層間絶縁膜ILは、例えば酸化シリコン膜からなる。なお、層間絶縁膜ILは、CVD法によって形成された薄い酸化シリコン膜と、塗布法によって形成されたPSG膜との積層膜であってもよい。
【0079】
次に、層間絶縁膜IL中に、孔CH1~CH3を形成する。まず、層間絶縁膜IL上に、ソース領域NSが形成されている半導体基板SUBを開口するパターンを有するレジストパターンを形成する。次に、上記レジストパターンをマスクとして異方性エッチング処理を行うことで、層間絶縁膜IL中に、ソース領域NS中およびボディ領域PB中に達する孔CH1を形成する。孔CH1の底部は、ボディ領域PB内に位置している。次に、イオン注入法によって、孔CH1の底部におけるボディ領域PBに、例えばホウ素(B)を導入することで、p型の高濃度拡散領域PRを形成する。その後、アッシング処理によって上記レジストパターンを除去する。
【0080】
次に、層間絶縁膜IL上に、外周領域ORのゲート電極GE上およびコンタクト部FPa上を開口するパターンを有するレジストパターンを形成する。次に、上記レジストパターンをマスクとして異方性エッチング処理を行うことで、層間絶縁膜ILに、ゲート電極GEに達する孔CH2と、コンタクト部FPaに達する孔CH3とを形成する。その後、アッシング処理によって上記レジストパターンを除去する。
【0081】
次に、層間絶縁膜IL上に、ソース電極SEおよびゲート配線GWを形成する。まず、層間絶縁膜IL上に、スパッタリング法またはCVD法によって、例えば窒化チタン膜からなるバリアメタル膜と、例えばアルミニウム膜からなる導電性膜との積層膜を形成する。次に、上記積層膜をパターニングすることで、ソース電極SEおよびゲート配線GWを形成する。
【0082】
ゲート配線GWは、孔CH2内に埋め込まれ、ゲート電極GEに電気的に接続される。ソース電極SEは、孔CH1内および孔CH3に埋め込まれ、ソース領域NS、ボディ領域PB、高濃度拡散領域PRおよびフィールドプレート電極FPに電気的に接続される。
【0083】
なお、ソース電極SEおよびゲート配線GWは、孔CH1~CH3の内部を埋め込むプラグ層と、層間絶縁膜IL上に形成された配線層とから構成されていてもよい。その場合、まず、孔CH1~CH3の内部および層間絶縁膜IL上に、スパッタリング法またはCVD法によって、例えば窒化チタン膜からなる第1バリアメタル膜を形成する。次に、上記第1バリアメタル膜上に、CVD法によって、例えばタングステン膜からなる第1導電性膜を形成する。次に、CMP法または異方性エッチング処理によって、孔CH1~CH3の外部に形成されている上記第1バリアメタル膜および上記第1導電性膜を除去する。これにより、孔CH1~CH3の内部を埋め込むように、上記第1バリアメタル膜および上記第1導電性膜からなるプラグ層が形成される。
【0084】
次に、層間絶縁膜IL上に、スパッタリング法またはCVD法によって、例えば窒化チタン膜からなる第2バリアメタル膜と、例えばアルミニウム膜からなる第2導電性膜との積層膜を形成する。次に、上記積層膜をパターニングすることで、上記プラグ層に電気的に接続された配線層を形成する。
【0085】
次に、ここでは図示はしないが、ソース電極SE上およびゲート配線GW上に、例えば塗布法によって、例えばポリイミド膜からなる保護膜を形成する。上記保護膜の一部に開口部を形成することで、ソース電極SEおよびゲート配線GWのうち、ソースパッドSPおよびゲートパッドGPになる領域を露出させる。
【0086】
その後、以下の製造工程を経て、図5に示される構造体が得られる。まず、必要に応じて半導体基板SUBの下面を研磨する。次に、半導体基板SUBの下面に、イオン注入法によって、例えば砒素(As)などを導入することで、n型のドレイン領域NDを形成する。次に、半導体基板SUBの下面下に、スパッタリング法によって、ドレイン電極DEを形成する。
【0087】
(変形例1)
以下に図20図22を用いて、変形例1における半導体装置100の製造方法に含まれる製造工程について説明する。図20図22は、実施の形態1の図12の代わりに行われる製造工程である。
【0088】
実施の形態1では、1回のCVD法による製造工程によって、トレンチTRの内部に導電性膜CF1を埋め込んでいた。変形例1では、複数回のCVD法による製造工程によって、トレンチTRの内部に導電性膜CF1を埋め込む。
【0089】
図20に示されるように、絶縁膜IF1上に、例えばCVD法によって、導電性膜CF1aを形成する。導電性膜CF1aは、例えばn型の多結晶シリコン膜である。この際、トレンチTRの内部は、導電性膜CF1aによって完全に埋め込まれていない。また、導電性膜CF1bは、トレンチTRの外部において絶縁膜IF1上にも形成される。導電性膜CF1aの厚さは、例えば200nm以上且つ300nm以下である。
【0090】
図21に示されるように、導電性膜CF1aに対して異方性エッチング処理を行うことで、導電性膜CF1aの厚さを薄くする。導電性膜CF1aは、トレンチTRの内部においてサイドウォール状に加工されるので、トレンチTRの最上部に近づくに連れて、導電性膜CF1aの厚さが薄くなる。なお、トレンチTRの外部に形成されていた導電性膜CF1aは、除去される。
【0091】
図22に示されるように、絶縁膜IF1および導電性膜CF1aを介してトレンチTRの内部を埋め込むように、例えばCVD法によって、導電性膜CF1bを形成する。導電性膜CF1bは、トレンチTRの外部において絶縁膜IF1上にも形成される。導電性膜CF2は、例えばn型の多結晶シリコン膜である。導電性膜CF1bの厚さは、例えば200nm以上且つ300nm以下である。導電性膜CF1は、このように形成された導電性膜CF1aおよび導電性膜CF1bを含む。その後の製造工程は、実施の形態1の図13以降と同じである。
【0092】
図21の製造工程で、トレンチTRの最上部に近づくに連れて、導電性膜CF1aの厚さが薄くなっているので、導電性膜CF1bの形成時には、アスペクト比が低減している。そのため、実施の形態1と比較して、導電性膜CF1bの形成時に、空隙20が更に発生し難くなっているので、半導体装置100の信頼性を更に向上させることができる。
【0093】
なお、ここでは、2回のCVD法による製造工程を例示したが、その回数は、3回以上であってもよい。
【0094】
一方で、実施の形態1では、1回のCVD法による製造工程によって導電性膜CF1を形成していた。従って、アスペクト比の低減という観点では、変形例1の方が実施の形態1よりも優れているが、製造工程の簡略化という観点では、実施の形態1の方が変形例1よりも優れている。
【0095】
(変形例2)
以下に図23を用いて、変形例2における半導体装置100の製造方法に含まれる製造工程について説明する。
【0096】
変形例2では、酸化シリコン膜OX1と多結晶シリコン膜PLとの間に、酸化シリコン膜OX3が形成されている。図7の製造工程後、CVD法によって、酸化シリコン膜OX1上に、酸化シリコン膜OX3を形成する。その後、図8の製造工程では、酸化シリコン膜OX3上に、多結晶シリコン膜PLが形成される。その後の製造工程は、実施の形態1の図9以降と同じである。従って、変形例2の絶縁膜IF1は、酸化シリコン膜OX1と、酸化シリコン膜OX3と、多結晶シリコン膜PLが酸化された酸化シリコン膜OX2とを含む。
【0097】
変形例2では、酸化シリコン膜OX3を形成することで、絶縁膜IF1の厚さの調整を行うことができる。
【0098】
なお、酸化シリコン膜OX3はCVD法によって形成されるので、酸化シリコン膜OX3の厚さが厚すぎると、オーバーハング部10が形成され易くなってしまう。そこで、オーバーハング部10が形成されない程度に、酸化シリコン膜OX3の厚さを調整している。酸化シリコン膜OX3の厚さは、例えば50nm以上且つ150nm以下であり、酸化シリコン膜OX2の厚さよりも薄い。
【0099】
なお、変形例2の酸化シリコン膜OX3を、変形例1に適用することもできる。
【0100】
(変形例3)
以下に図24を用いて、変形例3における半導体装置100の製造方法に含まれる製造工程について説明する。
【0101】
変形例3では、多結晶シリコン膜PLを酸化して酸化シリコン膜OX2を形成した後、酸化シリコン膜OX3を形成している。図9の製造工程後、CVD法によって、酸化シリコン膜OX2上に、酸化シリコン膜OX3を形成する。その後の製造工程は、実施の形態1の図12以降と同じである。従って、変形例3の絶縁膜IF1は、酸化シリコン膜OX1と、酸化シリコン膜OX2と、酸化シリコン膜OX3とを含む。
【0102】
変形例3でも変形例2と同様に、酸化シリコン膜OX3を形成することで、絶縁膜IF1の厚さの調整を行うことができる。
【0103】
なお、変形例3でも変形例2と同様に、オーバーハング部10が形成されない程度に、酸化シリコン膜OX3の厚さを調整している。酸化シリコン膜OX3の厚さは、例えば50nm以上且つ150nm以下であり、酸化シリコン膜OX2の厚さよりも薄い。
【0104】
なお、変形例3の酸化シリコン膜OX3を、変形例1に適用することもできる。
【0105】
(変形例4)
以下に図25を用いて、変形例4における半導体装置100について説明する。
【0106】
実施の形態1では、複数のトレンチTRが、それぞれY方向に延在し、ストライプ形状になっていた。変形例4では、複数のトレンチTRにX方向に延在する箇所が存在し、複数のトレンチTRが、互いに接続され、メッシュ状になっている。
【0107】
変形例4のトレンチTRの構造においても、絶縁膜IF1に、多結晶シリコン膜PLを酸化することで形成された酸化シリコン膜OX2を適用でき、半導体装置100の信頼性を向上させることができる。
【0108】
なお、変形例4に開示されたメッシュ状の複数のトレンチTRを、変形例1~3に適用することもできる。
【0109】
以上、本発明を上記実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0110】
100 半導体装置
10 オーバーハング部
20 空隙
1A 領域
CF1、CF1a、CF1b、CF2 導電性膜
CH1~CH3 孔
CR セル領域
DE ドレイン電極
FP フィールドプレート電極
FPa コンタクト部
GE ゲート電極
GI ゲート絶縁膜
GP ゲートパッド
GW ゲート配線
HM ハードマスク
IF1~IF3 絶縁膜
IL 層間絶縁膜
ND ドレイン領域
NS ソース領域
NV ドリフト領域
OR 外周領域
OX1~OX5 酸化シリコン膜
PB ボディ領域
PL 多結晶シリコン膜
PR 高濃度拡散領域
RP1 レジストパターン
SE ソース電極
SP ソースパッド
SUB 半導体基板
TR トレンチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29