(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060922
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/18 20060101AFI20240425BHJP
B60N 2/10 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
B60N2/18
B60N2/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168497
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 公一
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087AA02
3B087BA02
3B087BA12
3B087BA17
3B087BB02
3B087BB19
3B087BB27
(57)【要約】
【課題】昇降することに伴うシート本体の前後方向及び左右方向への傾きを抑制する。
【解決手段】車両用シート12は、着座乗員の臀部を下方側から支持するシートクッション14を有するシート本体18と、シート本体18を昇降させる昇降装置20と、を備えている。昇降装置20は、シートクッション14の前方側かつ右側の部位、前方側かつ左側の部位、後方側かつ右側の部位及び後方側かつ左側の部位にそれぞれ固定された前後左右4箇所の第1螺子部26を備えている。また、昇降装置20は、シート本体18の下方側に設けられかつ前後左右4箇所の第1螺子部26にそれぞれ螺合している前後左右4箇所の第2螺子部28を備えている。さらに、昇降装置20は、全ての第2螺子部28に連結されかつ作動させることで全ての第2螺子部28を同じ回転数で回転させる駆動部32と、を備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座乗員の臀部を下方側から支持するシートクッションを有するシート本体と、
前記シートクッションの前方側かつ右側の部位、前方側かつ左側の部位、後方側かつ右側の部位及び後方側かつ左側の部位にそれぞれ固定された前後左右4箇所の第1螺子部と、前記シート本体の下方側に設けられかつ前後左右4箇所の前記第1螺子部にそれぞれ螺合している前後左右4箇所の第2螺子部と、全ての前記第2螺子部に連結されかつ作動させることで全ての前記第2螺子部を同じ回転数で回転させる駆動部と、を有し、全ての前記第2螺子部が回転することで前記シート本体を昇降させる昇降装置と、
を備えた車両用シート。
【請求項2】
前記駆動部は、回転力が伝達されることで回転する左右一対の伝達軸部を含んで構成され、
右前方側の前記第2螺子部及び右後方側の前記第2螺子部が、右側の前記伝達軸部に係合しており、
左前方側の前記第2螺子部及び左後方側の前記第2螺子部が、左側の前記伝達軸部に係合しており、
右側の前記伝達軸部からの回転力が伝達されることで、右前方側の前記第2螺子部及び右後方側の前記第2螺子部が回転し、
左側の前記伝達軸部からの回転力が伝達されることで、左前方側の前記第2螺子部及び左後方側の前記第2螺子部が回転する請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記シート本体を前後方向にスライド可能に支持する左右一対のシートスライドレールをさらに備え、
右前方側の前記第2螺子部及び右後方側の前記第2螺子部が、右側の前記シートスライドレールに支持され、
左前方側の前記第2螺子部及び左後方側の前記第2螺子部が、左側の前記シートスライドレールに支持され、
右側の前記伝達軸部が、右側の前記シートスライドレール内に配置され、
左側の前記伝達軸部が、左側の前記シートスライドレール内に配置されている請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記駆動部は、複数の前記第2螺子部間に巻き掛けられた無端ベルトを含んで構成されている請求項1に記載の車両用シート。
【請求項5】
右前方側の前記第2螺子部と右後方側の前記第2螺子部との間に巻き掛けられた右側の前記無端ベルトと、
左前方側の前記第2螺子部と左後方側の前記第2螺子部との間に巻き掛けられた左側の前記無端ベルトと、
を備えた請求項4に記載の車両用シート。
【請求項6】
前記シート本体を前後方向にスライド可能に支持する左右一対のシートスライドレールをさらに備え、
右前方側の前記第2螺子部及び右後方側の前記第2螺子部が、右側の前記シートスライドレールに支持され、
左前方側の前記第2螺子部及び左後方側の前記第2螺子部が、左側の前記シートスライドレールに支持され、
右側の前記無端ベルトが、右側の前記シートスライドレール内に配置され、
左側の前記無端ベルトが、左側の前記シートスライドレール内に配置されている請求項5に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2には、シートを昇降させる機構を備えた車両用シートが開示されている。
【0003】
特許文献1に記載された車両用シートでは、シートの下方側の前後及び左右の4箇所に設けられた超音波モータを作動させて、シートに連結された4つのボルトをそれぞれ上下方向に変位させることで、シートを昇降させることが可能となっている。
【0004】
特許文献2に記載された車両用シートでは、シートクッションの前端側をヒンジを介して支持し、シートクッションの後端側を操作部を介して昇降させることで、シートを昇降させることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3-231040号公報
【特許文献2】特開平8-188074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載された構成では、4箇所の超音波モータの作動にずれが生じると、シートが前後方向及び左右方向に傾くことが考えられる。また、特許文献2に記載された構成では、シートの昇降に伴いシートが前後方向に傾く。
【0007】
上記事実を考慮し、昇降することに伴うシート本体の前後方向及び左右方向への傾きを抑制することを本発明が解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様の車両用シートは、着座乗員の臀部を下方側から支持するシートクッションを有するシート本体と、前記シートクッションの前方側かつ右側の部位、前方側かつ左側の部位、後方側かつ右側の部位及び後方側かつ左側の部位にそれぞれ固定された前後左右4箇所の第1螺子部と、前記シート本体の下方側に設けられかつ前後左右4箇所の前記第1螺子部にそれぞれ螺合している前後左右4箇所の第2螺子部と、全ての前記第2螺子部に連結されかつ作動させることで全ての前記第2螺子部を同じ回転数で回転させる駆動部と、を有し、全ての前記第2螺子部が回転することで前記シート本体を昇降させる昇降装置と、を備えている。
【0009】
第1の態様の車両用シートによれば、シート本体の一部を構成するシートクッショには、昇降装置の一部を構成する前後左右4箇所の第1螺子部が固定されている。また、シート本体の下方側には、昇降装置の他の一部を構成する前後左右4箇所の第2螺子部が設けられている。前後左右4箇所の第2螺子部は、前後左右4箇所の第1螺子部に螺合している。そして、全ての第2螺子部が回転すると、シート本体が昇降する。ここで、昇降装置には、全ての第2螺子部に連結された駆動部が設けられている。この駆動部を作動させることで全ての第2螺子部を同じ回転数で回転させることが可能となっている。これにより、昇降することに伴うシート本体の前後方向及び左右方向への傾きを抑制することができる。
【0010】
第2の態様の車両用シートは、第1の態様の車両用シートにおいて、前記駆動部は、回転力が伝達されることで回転する左右一対の伝達軸部を含んで構成され、右前方側の前記第2螺子部及び右後方側の前記第2螺子部が、右側の前記伝達軸部に係合しており、左前方側の前記第2螺子部及び左後方側の前記第2螺子部が、左側の前記伝達軸部に係合しており、右側の前記伝達軸部からの回転力が伝達されることで、右前方側の前記第2螺子部及び右後方側の前記第2螺子部が回転し、左側の前記伝達軸部からの回転力が伝達されることで、左前方側の前記第2螺子部及び左後方側の前記第2螺子部が回転する。
【0011】
第2の態様の車両用シートによれば、右前方側の第2螺子部及び右後方側の第2螺子部が、右側の伝達軸部に係合しており、左前方側の第2螺子部及び左後方側の第2螺子部が、左側の伝達軸部に係合している。そして、右側の伝達軸部からの回転力が伝達されることで、右前方側の第2螺子部及び右後方側の第2螺子部が回転し、左側の伝達軸部からの回転力が伝達されることで、左前方側の第2螺子部及び左後方側の第2螺子部が回転する。このように、右前方側の第2螺子部及び右後方側の第2螺子部を単一の右側の伝達軸部に係合させると共に、左前方側の第2螺子部及び左後方側の第2螺子部を単一の左側の伝達軸部に係合させる構成とすることで、前後の第2螺子部の回転を同期させることができ、昇降することに伴うシート本体の前後方向への傾きをより一層抑制することができる。
【0012】
第3の態様の車両用シートは、第2の態様の車両用シートにおいて、前記シート本体を前後方向にスライド可能に支持する左右一対のシートスライドレールをさらに備え、右前方側の前記第2螺子部及び右後方側の前記第2螺子部が、右側の前記シートスライドレールに支持され、左前方側の前記第2螺子部及び左後方側の前記第2螺子部が、左側の前記シートスライドレールに支持され、右側の前記伝達軸部が、右側の前記シートスライドレール内に配置され、左側の前記伝達軸部が、左側の前記シートスライドレール内に配置されている。
【0013】
第3の態様の車両用シートによれば、右前方側の第2螺子部及び右後方側の第2螺子部が、右側のシートスライドレールに支持され、左前方側の第2螺子部及び左後方側の第2螺子部が、左側のシートスライドレールに支持されている。これに加えて、右側の伝達軸部が、右側のシートスライドレール内に配置され、左側の伝達軸部が、左側のシートスライドレール内に配置されている。このように、各伝達軸部をシートスライドレール内に配置することで、可動する部分である伝達軸部が露出することを抑制することができる。
【0014】
第4の態様の車両用シートは、第1の態様の車両用シートにおいて、前記駆動部は、複数の前記第2螺子部間に巻き掛けられた無端ベルトを含んで構成されている。
【0015】
第4の態様の車両用シートによれば、複数の第2螺子部間には、無端ベルトが巻き掛けられている。これにより、複数の第2螺子部の回転を無端ベルトによって同期させることができる。また、無端ベルトを用いた構成では、複数の第2螺子部の回転をギヤによって同期させる構成と比べて、昇降装置の作動時の静粛性を高めることができる。
【0016】
第5の態様の車両用シートは、第4の態様の車両用シートにおいて、右前方側の前記第2螺子部と右後方側の前記第2螺子部との間に巻き掛けられた右側の前記無端ベルトと、左前方側の前記第2螺子部と左後方側の前記第2螺子部との間に巻き掛けられた左側の前記無端ベルトと、を備えている。
【0017】
第5の態様の車両用シートによれば、右前方側の第2螺子部と右後方側の第2螺子部との間には、単一の右側の無端ベルトが巻き掛けられている。また、左前方側の第2螺子部と左後方側の第2螺子部との間には、単一の左側の無端ベルトが巻き掛けられている。これにより、前後の第2螺子部の回転を同期させることができ、昇降することに伴うシート本体の前後方向への傾きをより一層抑制することができる。
【0018】
第6の態様の車両用シートは、第5の態様の車両用シートにおいて、前記シート本体を前後方向にスライド可能に支持する左右一対のシートスライドレールをさらに備え、右前方側の前記第2螺子部及び右後方側の前記第2螺子部が、右側の前記シートスライドレールに支持され、左前方側の前記第2螺子部及び左後方側の前記第2螺子部が、左側の前記シートスライドレールに支持され、右側の前記無端ベルトが、右側の前記シートスライドレール内に配置され、左側の前記無端ベルトが、左側の前記シートスライドレール内に配置されている。
【0019】
第6の態様の車両用シートによれば、右前方側の第2螺子部及び右後方側の第2螺子部が、右側のシートスライドレールに支持され、左前方側の第2螺子部及び左後方側の第2螺子部が、左側のシートスライドレールに支持されている。これに加えて、右側の無端ベルトが、右側のシートスライドレール内に配置され、左側の無端ベルトが、左側のシートスライドレール内に配置されている。このように、各無端ベルトをシートスライドレール内に配置することで、可動する部分である無端ベルトが露出することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る車両用シートは、昇降することに伴うシート本体の前後方向及び左右方向への傾きを抑制することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態の車両用シートを模式的に示す側面図であり、シート本体が下限位置に位置している状態を示している。
【
図2】第1実施形態の車両用シートを模式的に示す側面図であり、シート本体が上限位置に位置している状態を示している。
【
図3】第1実施形態の車両用シートの昇降装置を模式的に示す斜視図である。
【
図4】第2実施形態の車両用シートの昇降装置を模式的に示す斜視図である。
【
図5】第3実施形態の車両用シートの昇降装置の要部を模式的に示す断面図である。
【
図6】第3実施形態の車両用シートの昇降装置の要部を模式的に示す断面図である。
【
図7】第2螺子部がロアレールに支持されている例を模式的に示す断面図である。
【
図8】第4実施形態の車両用シートの昇降装置を模式的に示す斜視図である。
【
図9】
図8に示された9-9線に沿って切断した昇降装置等の断面を模式的に示す断面図である。
【
図10】
図8に示された10-10線に沿って切断した昇降装置等の断面を模式的に示す断面図である。
【
図11】第5実施形態の車両用シートの昇降装置を模式的に示す斜視図である。
【
図12】第6実施形態の車両用シートの昇降装置を模式的に示す斜視図である。
【
図13】第7実施形態の車両用シートの昇降装置を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
図1~
図3を用いて、本発明の第1実施形態に係る車両用シート12について説明する。なお、図中に示す矢印FR、矢印UP、矢印RH及び矢印LHは、車両用シート12に着座した乗員から見たシート前方側、上方側、右側及び左側をそれぞれ示している。以下、単に前後、上下、左右の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、シート前後方向の前後、シート上下方向の上下、シート左右方向の左右を示すものとする。
【0023】
図1及び
図2に示されるように、本実施形態の車両用シート12は、着座乗員の臀部を下方側から支持するシートクッション14と、着座乗員の背部を後方側から支持するシートバック16と、を有するシート本体18を備えている。また、車両用シート12は、シート本体18を
図1に示された下限位置P1と
図2に示された上限位置P2との間において昇降させる昇降装置20を備えている。
【0024】
シートクッション14は、当該シートクッション14の骨格を構成するクッションフレーム22と、クッションフレーム22に取付けられたクッションパッド24と、を備えている。なお、クッションパッド24における着座乗員側は表皮材によって覆われている。
【0025】
図1、
図2及び
図3に示されるように、昇降装置20は、クッションフレーム22に固定された前後左右4箇所の第1螺子部26と、シート本体18の下方側に設けられていると共に前後左右4箇所の第1螺子部26にそれぞれ螺合している前後左右4箇所の第2螺子部28と、を備えている。また、
図3に示されるように、昇降装置20は、モータ30と、モータ30と前後左右4箇所の第2螺子部28とを連結する駆動部32を備えている。
【0026】
図1及び
図2に示されるように、第1螺子部26は、一例としてナットである。この第1螺子部26の内周部には、後述する第2螺子部28が螺合する螺子山が形成されている。さらに、第1螺子部26は、その軸方向が上下方向に向けられた状態でクッションフレーム22に溶接で固定されている。本実施形態では、1つめの第1螺子部26が、クッションフレーム22の前方側かつ右側の部位に溶接で固定されている。また、2つめの第1螺子部26が、クッションフレーム22の前方側かつ左側の部位に溶接で固定されている。さらに、3つめの第1螺子部26が、クッションフレーム22の後方側かつ右側の部位に溶接で固定されている。また、4つめの第1螺子部26が、クッションフレーム22の後方側かつ左側の部位に溶接で固定されている。
【0027】
図3に示されるように、第2螺子部28は、上下方向を軸方向とする円柱状に形成された螺子本体部28Aと、螺子本体部28Aの下端側に固定された歯車部28Bと、を備えている。螺子本体部28Aの外周部には、第1螺子部26(
図1参照)の内周部に形成された螺子山と螺合する螺子山が形成されている。歯車部28Bは、後述する第2伝達軸部38と噛み合うことで当該第2伝達軸部38の回転力が伝達される歯車となっている。そして、
図1、
図2及び
図3に示されるように、4つの第2螺子部28は、それぞれ左右一対のベース部材34に支持されている。なお、左右一対のベース部材34とは、車体のフロア等に取付け及び固定される部材のことである。本実施形態では、1つめの第2螺子部28が、右側のベース部材34の前方側の部位に上下方向を軸方向として回転可能に支持されている。また、2つめの第2螺子部28が、左側のベース部材34の前方側の部位に上下方向を軸方向として回転可能に支持されている。さらに、3つめの第2螺子部28が、右側のベース部材34の後方側の部位に上下方向を軸方向として回転可能に支持されている。また、4つめの第2螺子部28が、左側のベース部材34の後方側の部位に上下方向を軸方向として回転可能に支持されている。
【0028】
図3に示されるように、モータ30は、着座乗員等の操作によって作動することで、後述する第1伝達軸部36を一方側又は他方側へ選択的に回転させることができるモータである。このモータ30は、後述する左右一対の第2伝達軸部38の間に配置されている。
【0029】
駆動部32は、第1伝達軸部36及び伝達軸部としての左右一対の第2伝達軸部38と、を含んで構成されている。第1伝達軸部36は、左右方向を軸方向とする円柱状に形成されている。この第1伝達軸部の左右方向の両端部には、後述する左右一対の第2伝達軸部38とそれぞれ噛み合う歯が形成されている。また、第1伝達軸部36の左右方向の中間部には、前述のモータ30が係合している。
【0030】
左右一対の第2伝達軸部38は、それぞれ前後方向を軸方向とする円柱状に形成されている。右側の第2伝達軸部38の前後方向の中間部には、第1伝達軸部36の右側の端部に形成された歯と噛み合う歯が形成されている。また、右側の第2伝達軸部38の前端側には、右前方側の第2螺子部28の歯車部28Bと噛み合う歯が形成されており、右側の第2伝達軸部38の後端側には、右後方側の第2螺子部28の歯車部28Bと噛み合う歯が形成されている。なお、右側の第2伝達軸部38は、右前方側の第2螺子部28の歯車部28B及び右後方側の第2螺子部28の歯車部28Bに対して左側に配置されている。
【0031】
また、左側の第2伝達軸部38の前後方向の中間部には、第1伝達軸部36の左側の端部に形成された歯と噛み合う歯が形成されている。また、左側の第2伝達軸部38の前端側には、左前方側の第2螺子部28の歯車部28Bと噛み合う歯が形成されており、左側の第2伝達軸部38の後端側には、左後方側の第2螺子部28の歯車部28Bと噛み合う歯が形成されている。なお、左側の第2伝達軸部38は、左前方側の第2螺子部28の歯車部28B及び左後方側の第2螺子部28の歯車部28Bに対して右側に配置されている。
【0032】
なお、以上説明した第1伝達軸部36と左右一対の第2伝達軸部38との噛み合い部分の構成は、両者の回転軸方向が直交する方向となっていても回転力を伝達可能な構成となっており、一例として、傘歯車やウォーム、ウォームホイール等と呼ばれるものの構成が適用されている。また、左右一対の第2伝達軸部38と4つの第2螺子部28の歯車部28Bとの噛み合い部分の構成についても同様に、両者の回転軸方向が直交する方向となっていても回転力を伝達可能な構成となっている。
【0033】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0034】
図1及び
図3に示されるように、以上説明した車両用シート12では、着座乗員等の操作によってモータ30が作動して、第1伝達軸部36が一方側へ回転すると、左右一対の第2伝達軸部38がそれぞれ一方側へ回転する。これにより、4つの第2螺子部28が一方側へ回転して、
図2に示されるように、4つの第2螺子部28とそれぞれ噛み合う4つの第1螺子部26が上方側へ向けて送られる。その結果、4つの第1螺子部26が固定されたクッションフレーム22が上昇する。すなわち、シート本体18が上昇する。
【0035】
その一方で、
図2及び
図3に示されるように、着座乗員等の操作によってモータ30が作動して、第1伝達軸部36が他方側へ回転すると、左右一対の第2伝達軸部38がそれぞれ他方側へ回転する。これにより、4つの第2螺子部28が他方側へ回転して、
図1に示されるように、4つの第2螺子部28とそれぞれ噛み合う4つの第1螺子部26が下方側へ向けて送られる。その結果、4つの第1螺子部26が固定されたクッションフレーム22が下降する。すなわち、シート本体18が下降する。
【0036】
ここで、
図1、
図2及び
図3に示されるように、本実施形態の昇降装置20には、全ての第2螺子部28に連結されることで全ての第2螺子部28を同じ回転数に同期して回転させる駆動部32が設けられている。これにより、昇降することに伴うシート本体18の前後方向及び左右方向への傾きを抑制することができる。
【0037】
また、本実施形態の駆動部32は、左右一対の第2伝達軸部38を備えている。ここで、右前方側の第2螺子部28及び右後方側の第2螺子部28は、右側の第2伝達軸部38に係合している(噛み合っている)。さらに、左前方側の第2螺子部28及び左後方側の第2螺子部28は、左側の第2伝達軸部38に係合している(噛み合っている)。そして、右側の第2伝達軸部38からの回転力が伝達されることで、右前方側の第2螺子部28及び右後方側の第2螺子部28が回転し、左側の第2伝達軸部38からの回転力が伝達されることで、左前方側の第2螺子部28及び左後方側の第2螺子部28が回転する。このように、右前方側の第2螺子部28及び右後方側の第2螺子部28を単一の右側の第2伝達軸部38に係合させると共に、左前方側の第2螺子部28及び左後方側の第2螺子部28を単一の左側の第2伝達軸部38に係合させる構成とすることで、前後の第2螺子部28の回転を確実に同期させることができ、昇降することに伴うシート本体の前後方向への傾きをより一層抑制することができる。
【0038】
なお、本実施形態では、第1伝達軸部36を左右一対の第2伝達軸部38における前後方向の中間部において噛み合わせているが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1伝達軸部36を左右一対の第2伝達軸部38の前端部(一例として前側の第2螺子部28よりも前方側)において噛み合わせてもよい。また、第1伝達軸部36を左右一対の第2伝達軸部38の後端部(一例として後側の第2螺子部28よりも後方側)において噛み合わせてもよい。ここで、第1伝達軸部36を左右一対の第2伝達軸部38における前後方向の中間部において噛み合わせている構成や第1伝達軸部36を左右一対の第2伝達軸部38の前端部において噛み合わせている構成では、第1伝達軸部36を左右一対の第2伝達軸部38の後端部において噛み合わせている構成と比べて、後席乗員の足元スペースを広く確保することができる。また、第1伝達軸部36を左右一対の第2伝達軸部38における前後方向の中間部において噛み合わせている構成では、第1伝達軸部36を左右一対の第2伝達軸部38の前端部において噛み合わせている構成や第1伝達軸部36を左右一対の第2伝達軸部38の後端部において噛み合わせている構成と比べて、後述するシートスライドレール46およびクッションフレーム22を用いた場合に、後突や前突などの衝突に対して強度的に有利となる。
【0039】
(第2実施形態及び第3実施形態)
次に、第2実施形態の車両用シートの昇降装置40及び第3実施形態の車両用シートの昇降装置42について説明する。なお、第2実施形態の車両用シートの昇降装置40及び第3実施形態の車両用シートの昇降装置42において、前述の第1実施形態の車両用シート12の昇降装置20と対応する部材及び部分には、昇降装置20と対応する部材及び部分と同じ符号を付して、その説明を省略することがある。
【0040】
(第2実施形態)
図4に示されるように、第2実施形態の車両用シートの昇降装置40では、モータ30(
図3参照)に代えて操作ハンドル44が設けられている。この操作ハンドル44は、第1伝達軸部36の左側の端部に固定されている。なお、操作ハンドル44は、第1伝達軸部36の右側の端部に固定されていてもよい。
【0041】
以上説明した昇降装置40では、第1伝達軸部36を操作ハンドル44を介して一方側へ回転させることにより、シート本体18(
図1参照)を上昇させることができる。また、第1伝達軸部36を操作ハンドル44を介して他方側へ回転させることにより、シート本体18(
図1参照)を下降させることができる。
【0042】
(第3実施形態)
図5には、第3実施形態の昇降装置42の一部を第2螺子部28と対応する部分において上下方向及び左右方向に沿って切断した断面が示されている。また、
図6には、第3実施形態の昇降装置42の一部を第2螺子部28と対応する部分において上下方向及び前後方向に沿って切断した断面が示されている。これらの図に示されるように、本実施形態の昇降装置42では、4つの第2螺子部28が、左右一対のシートスライドレール46に支持されている。ここで、左右一対のシートスライドレール46とは、前述のベース部材34(
図1参照)と対応する部材である。左右一対のシートスライドレール46は、車体のフロア等に取付け及び固定されるロアレール48と、ロアレール48に係合していると共に当該ロアレール48に対して前後方向に移動可能となっているアッパレール50と、を含んで構成されている。一部の図示は省略するが、右前方側の第2螺子部28及び右後方側の第2螺子部28が、右側のシートスライドレール46のアッパレール50に支持されている。また、左前方側の第2螺子部28及び左後方側の第2螺子部28が、左側のシートスライドレール46のアッパレール50に支持されている。なお、符号52で示された部材は、第2螺子部28の下端部を支持する軸受部材52である。また、
図6に示されるように、本実施形態では、第2螺子部28をシートスライドレール46のアッパレール50にブラケット54を介して支持させている。
図6に示された例では、ブラケット54とアッパレール50とが、溶接やリベット等の接合部56を介して接合されている。また、軸受部材52はブラケット54に固定されている。
【0043】
ここで、本実施形態では、4つの第2螺子部28の歯車部28B及び螺子本体部28Aの下端側がそれぞれシートスライドレール46内に配置されている。また、4つの第2螺子部28の螺子本体部28Aは、アッパレール50の上部に形成された開口からそれぞれ上方側へ向けて突出している。
【0044】
また、本実施形態では、右側の第2伝達軸部38が、右側のシートスライドレール46内に配置されている。さらに、左側の第2伝達軸部38が、左側のシートスライドレール46内に配置されている。
【0045】
以上説明した本実施形態では、左右一対の第2伝達軸部38が、左右一対のシートスライドレール46内に配置されている。このように、第2伝達軸部38をシートスライドレール46内に配置することで、回転する部分である第2伝達軸部38が着座乗員側に露出することを抑制することができる。そのため、第2伝達軸部38を覆うカバー等を設けることを不要にすることができる。
【0046】
なお、
図7に示されるように、ブラケット54(
図5等参照)を用いずに、第2螺子部28をシートスライドレール46のアッパレール50の上部に直接支持させた構成としてもよい。この構成では、軸受部材52をアッパレール50の上部に取付けている。
【0047】
(第4実施形態~第7実施形態)
次に、第4実施形態の車両用シートの昇降装置58、第5実施形態の車両用シートの昇降装置60、第6実施形態の車両用シートの昇降装置62及び第7実施形態の車両用シートの昇降装置64について説明する。なお、各昇降装置58、60、62、64において、既に説明した昇降装置20等と対応する部材及び部分には、既に説明した昇降装置20等と対応する部材及び部分と同じ符号を付して、その説明を省略することがある。
【0048】
(第4実施形態)
図8、
図9及び
図10に示されるように、第4実施形態の車両用シートの昇降装置58では、4つの第2螺子部28の螺子本体部28Aの下端側に第2螺子部側プーリ28Cがそれぞれ固定されている。右前方側の第2螺子部28の第2螺子部側プーリ28Cと右後方側の第2螺子部28の第2螺子部側プーリ28Cとの間には、無端ベルト66(右側の無端ベルト66)が巻き掛けられている。また、左前方側の第2螺子部28の第2螺子部側プーリ28Cと左後方側の第2螺子部28の第2螺子部側プーリ28Cとの間には、無端ベルト66(左側の無端ベルト66)が巻き掛けられている。なお、各無端ベルト66は、歯付ベルトであってもよいし平ベルトであってもよい。また、本実施形態では、右前方側の第2螺子部28の第2螺子部側プーリ28C、右後方側の第2螺子部28の第2螺子部側プーリ28C及び右側の無端ベルト66が、右側のシートスライドレール46内に配置されている。また、左前方側の第2螺子部28の第2螺子部側プーリ28C、左後方側の第2螺子部28の第2螺子部側プーリ28C及び左側の無端ベルト66が、左側のシートスライドレール46内に配置されている。
【0049】
また、右前方側の第2螺子部28と右後方側の第2螺子部28との間の前後方向の中間部には、駆動側螺子部68が設けられている。また、左前方側の第2螺子部28と左後方側の第2螺子部28との間の前後方向の中間部にも、駆動側螺子部68が設けられている。駆動側螺子部68は、上下方向を軸方向とする円柱状に形成された駆動螺子本体部68Aと、駆動螺子本体部68Aの下端側に固定された駆動側プーリ68Bと、を備えている。駆動螺子本体部68Aの外周部には、第1伝達軸部36の左右方向の端部に形成された歯と噛み合う歯が形成されている。なお、第1伝達軸部36と駆動螺子本体部68Aとの噛み合い部分の構成は、両者の回転軸方向が直交する方向となっていても回転力を伝達可能な構成となっている。
【0050】
右側の駆動側螺子部68の駆動側プーリ68Bは、右側のシートスライドレール46内に配置された状態でアッパレール50に上下方向を軸方向として回転可能に支持されている。また、左側の駆動側螺子部68の駆動側プーリ68Bは、左側のシートスライドレール46内に配置された状態でアッパレール50に上下方向を軸方向として回転可能に支持されている。右側の駆動側螺子部68の駆動側プーリ68Bには、右側の無端ベルト66が巻き掛けられている。また、右側の駆動側螺子部68の駆動螺子本体部68Aの歯には、第1伝達軸部36の右側の端部の歯が噛み合っている。左側の駆動側螺子部68の駆動側プーリ68Bには、左側の無端ベルト66が巻き掛けられている。また、左側の駆動側螺子部68の駆動螺子本体部68Aの歯には、第1伝達軸部36の左側の端部の歯が噛み合っている。なお、本実施形態の駆動部32は、第1伝達軸部36、左右一対の駆動側螺子部68及び左右一対の無端ベルト66によって構成されている。
【0051】
以上説明した本実施形態では、着座乗員等の操作によってモータ30が作動して、第1伝達軸部36が一方側へ回転すると、左右一対の駆動側螺子部68がそれぞれ一方側へ回転する。これにより、左右一対の駆動側螺子部68の回転力が左右一対の無端ベルト66を介して4つの第2螺子部28に伝達される。その結果、4つの第2螺子部28が一方側へ回転して、シート本体18(
図2参照)が上昇する。
【0052】
その一方で、着座乗員等の操作によってモータ30が作動して、第1伝達軸部36が他方側へ回転すると、左右一対の駆動側螺子部68がそれぞれ他方側へ回転する。これにより、左右一対の駆動側螺子部68の回転力が左右一対の無端ベルト66を介して4つの第2螺子部28に伝達される。その結果、4つの第2螺子部28が他方側へ回転して、シート本体18(
図1参照)が下降する。
【0053】
ここで、本実施形態の昇降装置58には、全ての第2螺子部28に連結されることで全ての第2螺子部28を同じ回転数で同期して回転させる駆動部32が設けられている。これにより、昇降することに伴うシート本体18の前後方向及び左右方向への傾きを抑制することができる。
【0054】
また、本実施形態の昇降装置58のように無端ベルト66を用いた構成では、複数の第2螺子部28の回転をギヤによって同期させる構成と比べて、昇降装置58の作動時の静粛性を高めることができる。
【0055】
また、本実施形態の昇降装置58のように、左右一対の無端ベルト66を左右一対のシートスライドレール46内に配置することで、可動する部分である無端ベルト66が着座乗員側に露出することを抑制することができる。そのため、無端ベルト66を覆うカバー等を設けることを不要にすることができる。
【0056】
なお、本実施形態では、モータ30の回転力を第1伝達軸部36を介して左右一対の駆動側螺子部68に伝達した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図10において二点鎖線で示されるように、モータ30の回転力を駆動側プーリ68Bに接続されたフレキシブルワイヤ70を介して駆動側螺子部68に伝達してもよい。また、モータ30の回転力を駆動螺子本体部68Aに接続されたフレキシブルワイヤ70を介して駆動側螺子部68に伝達してもよい。
【0057】
(第5実施形態)
図11に示されるように、本実施形態の車両用シートの昇降装置60では、モータ30に接続された一方のフレキシブルワイヤ70が、右前方側の第2螺子部28の第2螺子部側プーリ28Cに接続されている。また、モータ30に接続された他方のフレキシブルワイヤ70が、左前方側の第2螺子部28の第2螺子部側プーリ28Cに接続されている。
【0058】
以上説明した本実施形態の昇降装置60においても、昇降することに伴うシート本体18(
図1参照)の前後方向及び左右方向への傾きを抑制することができる。また、本実施形態の昇降装置60では、第4実施形態の昇降装置58に対して駆動側螺子部68を不要にすることができる。
【0059】
(第6実施形態)
図12に示されるように、本実施形態の車両用シートの昇降装置62では、第1伝達軸部36の右側の端部の歯が、右前方側の第2螺子部28の第2螺子部側プーリ28Cと螺子本体部28Aとの境目部分に形成された歯と噛み合っている。また、第1伝達軸部36の左側の端部の歯が、左前方側の第2螺子部28の第2螺子部側プーリ28Cと螺子本体部28Aとの境目部分に形成された歯と噛み合っている。なお、第1伝達軸部36と左右一対の第2螺子部28との噛み合い部分の構成は、両者の回転軸方向が直交する方向となっていても回転力を伝達可能な構成となっている。
【0060】
以上説明した本実施形態の昇降装置62においても、昇降することに伴うシート本体18(
図1参照)の前後方向及び左右方向への傾きを抑制することができる。また、本実施形態の昇降装置62では、第4実施形態の昇降装置58に対して駆動側螺子部68を不要にすることができる。
【0061】
(第7実施形態)
図13に示されるように、本実施形態の車両用シートの昇降装置64では、単一の無端ベルト66が、4つの第2螺子部28の第2螺子部側プーリ28Cに巻き掛けられている。また、本実施形態の昇降装置64では、モータ30が左後方側の第2螺子部28を直接回転させるようになっている。
【0062】
以上説明した本実施形態の昇降装置64においても、昇降することに伴うシート本体18(
図1参照)の前後方向及び左右方向への傾きを抑制することができる。また、本実施形態の昇降装置64によって4つの第2螺子部28の回転を同期させることができる。
【0063】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0064】
12 車両用シート
14 シートクッション
18 シート本体
20 昇降装置
26 第1螺子部
28 第2螺子部
32 駆動部
38 第2伝達軸部(伝達軸部)
40 昇降装置
42 昇降装置
46 シートスライドレール
58 昇降装置
60 昇降装置
62 昇降装置
64 昇降装置
66 無端ベルト