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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060924
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】車両用変速機の潤滑構造
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20240425BHJP
【FI】
F16H57/04 J
F16H57/04 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168507
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前森 隆年
(72)【発明者】
【氏名】更科 俊平
【テーマコード(参考)】
3J063
【Fターム(参考)】
3J063AA01
3J063AB01
3J063AC03
3J063BB01
3J063CD41
3J063XD03
3J063XD17
3J063XD47
3J063XD72
3J063XF02
3J063XF14
(57)【要約】
【課題】捕集部によって多くの潤滑油を捕集でき、より多くの潤滑油を潤滑部位に供給できる車両用変速機の潤滑構造を提供すること。
【解決手段】変速機1の潤滑構造は、ファイナルドライブギヤ7Eの回転によって左側壁2D側に掻き上げられた潤滑油を捕集して潤滑部位(プロペラシャフト、ファイナルドライブギヤ7Eとファイナルドリブンギヤ8Bの噛み合い部)に供給する捕集部16を有し、捕集部16は、上壁2Bからカウンタ軸7に向かって延びる縦壁部2Fと縦壁部2Fに設けられた湾曲部2Gとを有する。縦壁部2Fは、前端部が隔壁3Aに連続するとともに、前端部が隔壁4Aに連続しており、湾曲部2Gは、縦壁部2Fの下端部から左側壁2D側に屈曲した後、上方に延びており、潤滑油を貯留する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギヤを有する回転軸と、
底部に潤滑油が貯留され、かつ、前記ギヤを収容する収容室を有する変速機ケースとを備え、
前記収容室が、第1の縦壁と、前記回転軸の軸方向で前記ギヤを挟んで前記第1の縦壁に対向する第2の縦壁と、前記回転軸の軸方向に延び、前記回転軸の側方で前記第1の縦壁と前記第2の縦壁とを連絡する側壁と、前記回転軸の軸方向に延び、前記回転軸の上方で前記第1の縦壁と前記第2の縦壁とを連絡する上壁とを含んで構成される車両用変速機の潤滑構造であって、
前記ギヤの回転によって前記側壁側に掻き上げられた潤滑油を捕集して潤滑部位に供給する捕集部を有し、
前記捕集部は、前記上壁から前記回転軸に向かって延びる縦壁部と前記縦壁部に設けられた湾曲部とを有し、
前記縦壁部は、一端部が前記第1の縦壁に連続しているとともに、他端部が前記第2の縦壁に連続しており、
前記湾曲部は、前記縦壁部の下端部から前記側壁側に屈曲した後、上方に延びていることを特徴とする車両用変速機の潤滑構造。
【請求項2】
前記収容室にガイド壁が設けられており、
前記ガイド壁は、前記ギヤよりも下方から前記ギヤの外周に沿って延び、前記側壁に連続していることを特徴とする請求項1に記載の車両用変速機の潤滑構造。
【請求項3】
前記捕集部は、前記回転軸の軸心よりも前記側壁側に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用変速機の潤滑構造。
【請求項4】
前記縦壁部と前記湾曲部の連絡部位に開口部が形成されており、
前記湾曲部は、延出部を有し、
前記延出部は、前記開口部の下端部から前記側壁と離れるように前記ギヤの上方に延び、前記湾曲部から前記開口部を通して前記ギヤに潤滑油を供給することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用変速機の潤滑構造。
【請求項5】
前記縦壁部と前記湾曲部の連絡部位に開口部が形成されており、
前記湾曲部は、延出部を有し、
前記延出部は、前記開口部の下端部から前記側壁と離れるように前記ギヤの上方に延び、前記湾曲部から前記開口部を通して前記ギヤに潤滑油を供給することを特徴とする請求項3に記載の車両用変速機の潤滑構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用変速機の潤滑構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に搭載される変速機は、変速機ケースの底部に貯留された潤滑油をギヤによって掻き上げて、変速機ケースの内部の潤滑部位に供給するようにしている。
【0003】
従来の潤滑構造としては、特許文献1に記載されるギヤケース構造が知られている。このギヤケース構造は、ギヤが配置された収容室から出力ギヤが摺動する軸受が配置された外部貯留室に潤滑油を供給するものであって、出力ギヤの軸心より上方に配置されて、ギヤによって掻き上げられた潤滑油の移動を遮断する遮蔽壁部と、収容室と外部貯留室との境界に形成された潤滑油外部供給孔とを有する。
【0004】
これに加えて、ギヤケース構造は、遮蔽壁部より下方に配置され、出力ギヤにより掻き上げられた潤滑油を収容室から潤滑油外部供給孔を介して外部貯留室に配置された軸受に供給する潤滑油ガイドを備えており、潤滑油ガイドは、ギヤケースと別体に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-28988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のギヤケース構造にあっては、ギヤケースと潤滑油ガイドとの間に隙間が形成されているので、出力ギヤによって掻き上げられた潤滑油が隙間から漏れてしまう。これにより、潤滑油ガイドが十分な量の潤滑油を捕集し難く、潤滑油を外部貯留室から軸受に効率よく供給できないおそれがある。
【0007】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、捕集部によって多くの潤滑油を捕集でき、より多くの潤滑油を潤滑部位に供給できる車両用変速機の潤滑構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ギヤを有する回転軸と、底部に潤滑油が貯留され、かつ、前記ギヤを収容する収容室を有する変速機ケースとを備え、前記収容室が、第1の縦壁と、前記回転軸の軸方向で前記ギヤを挟んで前記第1の縦壁に対向する第2の縦壁と、前記回転軸の軸方向に延び、前記回転軸の側方で前記第1の縦壁と前記第2の縦壁とを連絡する側壁と、前記回転軸の軸方向に延び、前記回転軸の上方で前記第1の縦壁と前記第2の縦壁とを連絡する上壁とを含んで構成される車両用変速機の潤滑構造であって、前記ギヤの回転によって前記側壁側に掻き上げられた潤滑油を捕集して潤滑部位に供給する捕集部を有し、前記捕集部は、前記上壁から前記回転軸に向かって延びる縦壁部と前記縦壁部に設けられた湾曲部とを有し、前記縦壁部は、一端部が前記第1の縦壁に連続しているとともに、他端部が前記第2の縦壁に連続しており、前記湾曲部は、前記縦壁部の下端部から前記側壁側に屈曲した後、上方に延びていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このように上記の本発明によれば、捕集部によって多くの潤滑油を捕集でき、より多くの潤滑油を潤滑部位に供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施例に係るエンジンと車両用変速機の骨子図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係る車両用変速機の潤滑構造を示す図であり、出力軸を縦方向に切断した車両用変速機の後部の断面図である。
図3図3は、図2のフロントカバーからリアカバーを取り外してフロントカバーをIII-III方向から見た図である。
図4図4は、図2のフロントカバーからリアカバーを取り外してリアカバーをIV-IV方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施の形態に係る車両用変速機の潤滑構造は、ギヤを有する回転軸と、底部に潤滑油が貯留され、かつ、ギヤを収容する収容室を有する変速機ケースとを備え、 収容室が、第1の縦壁と、回転軸の軸方向でギヤを挟んで第1の縦壁に対向する第2の縦壁と、回転軸の軸方向に延び、回転軸の側方で第1の縦壁と第2の縦壁とを連絡する側壁と、回転軸の軸方向に延び、回転軸の上方で第1の縦壁と第2の縦壁とを連絡する上壁とを含んで構成される車両用変速機の潤滑構造であって、ギヤの回転によって側壁側に掻き上げられた潤滑油を捕集して潤滑部位に供給する捕集部を有し、捕集部は、上壁から回転軸に向かって延びる縦壁部と縦壁部に設けられた湾曲部とを有し、縦壁部は、一端部が第1の縦壁に連続しているとともに、他端部が第2の縦壁に連続しており、湾曲部は、縦壁部の下端部から側壁側に屈曲した後、上方に延びている。
【0012】
これにより、本発明の一実施の形態に係る車両用変速機の潤滑構造は、捕集部によって多くの潤滑油を捕集でき、より多くの潤滑油を潤滑部位に供給できる。
【実施例0013】
以下、本発明の一実施例に係る車両用変速機の潤滑構造について、図面を用いて説明する。
図1から図4は、本発明の一実施例に係る車両用変速機の潤滑構造を示す図である。
【0014】
図1から図4において、上下前後左右方向は、車両に設置された状態の車両用変速機を基準とし、車両の前後方向を前後方向、車両の左右方向(車幅方向)を左右方向、車両の上下方向(車両の高さ方向)を上下方向とする。
【0015】
まず、構成を説明する。
図1において、車両50に搭載された変速機1は、変速機ケース2を備えている。変速機ケース2は、フロントケース3とリアケース4とを備えており、フロントケース3とリアケース4には変速機構5が収容されている。本実施例の変速機1は、車両用変速機を構成する。
【0016】
変速機構5は、入力軸6、カウンタ軸7、出力軸8およびリバース軸9を備えている。入力軸6はクラッチ21を介してエンジン20に連結されており、クラッチ21の締結時にエンジン20の動力が入力軸6に伝達される。
【0017】
入力軸6には1速入力ギヤ6A、2速入力ギヤ6B、3速入力ギヤ6C、4速入力ギヤ6D、5速入力ギヤ6Eおよびリバースアイドラギヤ6Rが取付けられている。
【0018】
カウンタ軸7には1速カウンタギヤ7A、2速カウンタギヤ7B、3速カウンタギヤ7C、4速カウンタギヤ7Dおよびファイナルドライブギヤ7Eが取付けられている。
【0019】
1速入力ギヤ6A、2速入力ギヤ6B、3速入力ギヤ6Cおよび4速入力ギヤ6Dと1速カウンタギヤ7A、2速カウンタギヤ7B、3速カウンタギヤ7Cおよび4速カウンタギヤ7Dとは、同一の変速段を構成するギヤ同士が噛み合っている。
【0020】
1速入力ギヤ6A、2速入力ギヤ6B、5速入力ギヤ6Eおよびリバースアイドラギヤ6Rは、入力軸6に固定されており、3速入力ギヤ6Cと4速入力ギヤ6Dは、入力軸6に相対回転自在に連結されている。
【0021】
1速カウンタギヤ7Aと2速カウンタギヤ7Bは、カウンタ軸7に相対回転自在に連結されており、3速カウンタギヤ7C、4速カウンタギヤ7Dおよびファイナルドライブギヤ7Eは、カウンタ軸7に固定されている。
【0022】
出力軸8には5速出力ギヤ8Aとファイナルドリブンギヤ8Bが取付けられており、5速出力ギヤ8Aとファイナルドリブンギヤ8Bは、出力軸8に固定されている。
【0023】
リバース軸9にはリバースギヤ9Aが取付けられており、リバースギヤ9Aは、リバース軸9に固定されている。
【0024】
カウンタ軸7には1-2速用同期装置10が設けられている。1-2速用同期装置10は、カウンタ軸7の軸方向の前方に移動して1速カウンタギヤ7Aがカウンタ軸7と一体回転するように1速カウンタギヤ7Aをカウンタ軸7に連結し、カウンタ軸7の軸方向の後方に移動して2速カウンタギヤ7Bがカウンタ軸7と一体回転するように2速カウンタギヤ7Bをカウンタ軸7に連結する。
【0025】
例えば、1-2速用同期装置10によって1速入力ギヤ6Aが入力軸6に連結されると、エンジン20の動力が入力軸6から1速入力ギヤ6A、1速カウンタギヤ7A、1-2速用同期装置10、カウンタ軸7、ファイナルドライブギヤ7Eおよびファイナルドリブンギヤ8Bを介して出力軸8に伝達される。
【0026】
出力軸8は、図示しないプロペラシャフトを介して後輪側の図示しない差動装置に接続されており、後輪側の差動装置は、図示しないドライブシャフトを介して図示しない後輪に接続されている。出力軸8は、エンジン20の動力を、プロペラシャフトおよび後輪側の差動装置を介して後輪に伝達する。
【0027】
本実施例の変速機1は、入力軸6、カウンタ軸7、出力軸8およびリバース軸9が前後方向に平行に並んで設置されるフロントエンジン・リヤドライブ(FR)車両に適用される。なお、変速機1は、FR車両に適用されるものに限定されるものではない。
【0028】
入力軸6には3-4速用同期装置11が設けられている。3-4速用同期装置11は、入力軸6の軸方向に移動して、3速入力ギヤ6Cまたは4速入力ギヤ6Dが入力軸6と一体回転するように3速入力ギヤ6Cまたは4速入力ギヤ6Dを入力軸6に連結する。
【0029】
例えば、3-4速用同期装置11によって3速入力ギヤ6Aが入力軸6に連結されると、エンジン20の動力が入力軸6から3-4速用同期装置11、3速入力ギヤ6C、3速カウンタギヤ7C、カウンタ軸7、ファイナルドライブギヤ7Eおよびファイナルドリブンギヤ8Bを介して出力軸8に伝達される。
【0030】
入力軸6には5速用同期装置12が設けられており、5速用同期装置12は、5速入力ギヤ6Eと5速出力ギヤ8Aとを連結して、エンジン20の動力を入力軸6から出力軸8に直接伝達する。
【0031】
5速入力ギヤ6Eは、入力軸6の後端部に形成されたドグから構成されており、5速出力ギヤ8Aは、出力軸8の先端部に形成されたドグから構成されている。
【0032】
リバース軸9は、図示しないドグクラッチによって軸方向に移動自在となっている。車両50の後進時には1-2速用同期装置10が1速カウンタギヤ7Aをカウンタ軸7に連結した状態となり、この状態でリバースギヤ9Aがリバースアイドラギヤ6Rと1-2速用同期装置10に連結される。リバースアイドラギヤ6Rが1-2速用同期装置10に連結されたときにはリバースギヤ9Aが1-2速用同期装置10に設けられたギヤに噛み合う。
【0033】
これにより、エンジン20の動力が入力軸6からリバースアイドラギヤ6R、リバースギヤ9A、1-2速用同期装置10、カウンタ軸7、ファイナルドライブギヤ7Eおよびファイナルドリブンギヤ8Bを介して出力軸8に伝達される。
【0034】
本実施例のカウンタ軸7は、回転軸を構成し、ファイナルドライブギヤ7Eは、ギヤを構成する。
【0035】
図3図4に示すように、フロントケース3とリアケース4は別体に設けられており、リアケース4は図示しないボルトによってフロントケース3に連結されている。
【0036】
図1図2に示すように、入力軸6、カウンタ軸7およびリバース軸9は、フロントケース3に収容されている。
【0037】
図2図4に示すように、ファイナルドライブギヤ7Eとファイナルドリブンギヤ8Bは、リアケース4に収容されている。図1に示すように、出力軸8の後端部はリアケース4から後方に突出しており、出力軸8の後端部にはプロペラシャフトが連結されている。
【0038】
図2に示すように、フロントケース3の後端部には隔壁3Aが設けられている。出力軸8は、軸受13Aを介して隔壁3Aに回転自在に支持されており、カウンタ軸7は、隔壁3Aに形成された図示しない挿通孔に挿通されてフロントケース3とリアケース4とに設置されている。
【0039】
リアケース4には隔壁4Aが設けられており、隔壁4Aは、カウンタ軸7の軸方向で隔壁3Aに対向している。隔壁4Aには軸受13Bを介して出力軸8が回転自在に支持されている。
【0040】
出力軸8の前端部はニードルベアリング13Cを介して入力軸6の後端部に相対回転自在に連結されている。本実施例の隔壁3Aは、第1の縦壁を構成し、隔壁4Aは、第2の縦壁を構成する。
【0041】
フロントケース3は、上壁、下壁、左側壁および右側壁を有する。以下、隔壁3Aの後方のフロントケース3の上壁3B、下壁3C、左側壁3Dおよび右側壁3Eのみを説明する。
【0042】
図4に示すように、リアケース4は、上壁4B、下壁4C、左側壁4Dおよび右側壁4Eを有し、上壁4B、下壁4C、左側壁4Dおよび右側壁4Eは、それぞれフロントケース3の上壁3B、下壁3C、左側壁3Dおよび右側壁3Eにボルトによって締結されている。
【0043】
以下、上壁3B、下壁3C、左側壁3Dおよび右側壁3Eと、上壁4B、下壁4C、左側壁4Dおよび右側壁4Eとが締結されて一体化されたものを上壁2B、下壁2C、左側壁2Dおよび右側壁2Eとして説明する。本実施例の左側壁2Dは、側壁を構成する。
【0044】
左側壁2Dは、出力軸8の軸方向に延びており、出力軸8の左側方で隔壁3Aと隔壁4Aとを連絡している。右側壁2Eは、出力軸8の軸方向に延びており、出力軸8の右側方で隔壁3Aと隔壁4Aとを連絡している。
【0045】
図3図4に示すように、右側壁2Eは、上方から下方に向かうに従って左側壁2Dに近づくように傾斜しており、上壁2Bの車幅方向の長さは下壁2Cの車幅方向の長さよりも長く形成されている。
【0046】
図2に示すように、上壁2Bは、出力軸8の軸方向に延びており、出力軸8の上方で隔壁3Aと隔壁4Aとを連絡している。下壁2Cは、出力軸8の軸方向に延びており、出力軸8の下方で隔壁3Aと隔壁4Aとを連絡している。
【0047】
変速機ケース2は、隔壁3Aと隔壁4Aと上壁2Bと下壁2Cと左側壁2Dと右側壁2Eとによって囲まれる収容室14を有し、ファイナルドライブギヤ7Eとファイナルドリブンギヤ8Bは、収容室14に収容されている。
【0048】
本実施例の隔壁4Aは、カウンタ軸7の軸方向でファイナルドライブギヤ7Eおよびファイナルドリブンギヤ8Bを挟んで隔壁3Aに対向している。
【0049】
図3図4に示すように、出力軸8は、カウンタ軸7の右斜め上方に設置されている。出力軸8は、左側壁2Dよりも右側壁2E側に位置しており、カウンタ軸7は、右側壁2Eよりも左側壁2D側に位置している。
【0050】
収容室14には捕集部16が設けられており、捕集部16は、ファイナルドライブギヤ7Eの上方に位置し、かつ、カウンタ軸7の軸心C1よりも左側壁2D側に形成されている。本実施例の軸心C1は、回転軸の軸心を構成する。
【0051】
捕集部16は、フロントケース3の上壁3Bから出力軸8に向かって延びる縦壁部3Fと、縦壁部3Fに設けられた湾曲部3Gと、リアケース4の上壁4Bから出力軸8に向かって延びる縦壁部4Fと、縦壁部4Fに設けられた湾曲部4Gとを有する。
【0052】
図2に示すように、縦壁部3Fは、前端部3f(一端部)が隔壁3Aに連続しており、縦壁部4Fは、後端部4r(他端部)が隔壁4Aに連続している。縦壁部3Fの後端部3rは、隔壁4Aの前端部4fに当接している。すなわち、縦壁部3Fと縦壁部4Fは、隔壁3Aと隔壁4Aと一体に設けられており、隔壁3Aから隔壁4Aまで延びている。
【0053】
湾曲部3Gは、縦壁部3Fの下端部から左側壁2D側に屈曲した後、上方に延びており、潤滑油を貯留可能となっている。湾曲部4Gは、縦壁部4Fの下端部から左側壁2D側に屈曲した後、上方に延びており、潤滑油を貯留可能となっている。
【0054】
以下、フロントケース3にリアケース4が取付けられて縦壁部3Fの後端部3rが隔壁4Aの前端部4fに当接した状態の縦壁部3F、4Fを縦壁部2Fとし、湾曲部3G、4Gを湾曲部2Gとして説明する。
【0055】
つまり、縦壁部2Fと湾曲部2Gは、隔壁3Aと隔壁4Aに連続しており、隔壁3Aから隔壁4Aまで延びている。
【0056】
図3に示すように、収容室14の底部には潤滑油Oが貯留されており、潤滑油Oの油面は、エンジン20が停止した状態でファイナルドライブギヤ7Eの上端と略同じ高さとなっている。
【0057】
図3において、車両の前進時にはファイナルドライブギヤ7E(カウンタ軸7)が時計方向に回転し、図4において、車両の前進時にはファイナルドライブギヤ7E(カウンタ軸7)が反時計方向に回転する。
【0058】
図4に示すように、隔壁4Aにはオイル供給孔4aが形成されている。リアケース4の後部には図示しないオイル通路を有する図示しないリブが形成されており、リブは、プロペラシャフトを支持するプロペラシャフト支持部まで延びている。
【0059】
湾曲部2Gに貯留されたオイルは、オイル供給孔4aからリブのオイル通路を通してプロペラシャフト支持部に供給されることにより、プロペラシャフトが潤滑油によって潤滑される。
【0060】
図3図4に示すように、収容室14にはガイド壁2Hが設けられており、ガイド壁2Hは、ガイド壁3H、4Hを有する。
【0061】
ガイド壁3Hは、フロントケース3に設けられており、前端部(一端部)が隔壁3Aに連続している。ガイド壁4Hは、リアケース4に設けられており、後端部(他端部)が隔壁4Aに連続している。
【0062】
ガイド壁3Hの後端部とガイド壁4Hの前端部は当接している。すなわち、ガイド壁2Hは、それぞれ隔壁3A、4Aに一体に形成されており、隔壁3Aから隔壁4Aまで延びている。
【0063】
ガイド壁2Hは、ファイナルドライブギヤ7Eよりも下方からファイナルドライブギヤ7Eの外周に沿って延び、左側壁2Dに連続している。
【0064】
具体的には、ガイド壁4Hは、ファイナルドライブギヤ7Eの車幅方向でカウンタ軸7の軸心C1と出力軸8の軸心C2との間からファイナルドライブギヤ7Eの外周に沿って延び、左側壁4Dに連続しており、ガイド壁3Hは、ファイナルドライブギヤ7Eの前方においてファイナルドライブギヤ7Eの外周に沿って延び、左側壁3Dに連続している。
【0065】
縦壁部2Fと湾曲部2Gの連絡部位のうち、縦壁部4Fと湾曲部4Gの連絡部位には開口部4bが形成されている(図4参照)。
【0066】
図4に示すように、湾曲部4Gは、延出部4Iを有する。延出部4Iは、開口部4bの下端部から左側壁2Dと離れるようにファイナルドライブギヤ7Eの上方に延びており、後端部が隔壁4Aに連続している。
【0067】
図3に示すように、湾曲部3Gは、延出部3Iを有する。延出部3Iは、前端部が隔壁3Aに連続しており、隔壁3Aから延出部4Iまで延び、後端部が延出部4Iに当接している。
【0068】
延出部3Iは、開口部4bの前方において湾曲部3Gから左側壁2Dと離れるようにファイナルドライブギヤ7Eの上方に延びている。
【0069】
図4に示すように、延出部4Iの延びる方向の先端部は、ファイナルドライブギヤ7Eの上端で、かつ、上下方向でカウンタ軸7の軸心C1と出力軸8の軸心C2との間に位置している。
【0070】
これにより、湾曲部2Gに貯留される潤滑油は、開口部4bから延出部4Iに供給され、延出部3I、4Iによってファイナルドライブギヤ7Eとファイナルドリブンギヤ8Bの噛み合い部に供給され、ファイナルドライブギヤ7Eとファイナルドリブンギヤ8Bの噛み合い部が潤滑油によって潤滑される。
【0071】
延出部3Iと延出部4Iにおけるカウンタ軸7の軸方向の長さは、ファイナルドライブギヤ7Eのカウンタ軸7の軸方向の幅の2倍以上の長さに形成されているので、延出部3I、4Iによってより多くの潤滑油をファイナルドライブギヤ7Eとファイナルドリブンギヤ8Bの噛み合い部に供給できる。
【0072】
フロントケース3にリアケース4が取付けられて延出部3Iの後端部が延出部4Iの前端部に当接した状態を延出部2Iとして説明する。
【0073】
本実施例のプロペラシャフト、ファイナルドライブギヤ7Eとファイナルドリブンギヤ8Bの噛み合い部は、潤滑部位を構成する。
【0074】
次に、本実施例の変速機1の潤滑構造の作用効果を説明する。
本実施例の変速機1は、ファイナルドライブギヤ7Eを有するカウンタ軸7と、底部に潤滑油Oが貯留され、かつ、ファイナルドライブギヤ7Eを収容する収容室14を有する変速機ケース2とを備えている。
【0075】
収容室14は、隔壁3Aと、カウンタ軸7の軸方向でファイナルドライブギヤ7Eおよびファイナルドリブンギヤ8Bを挟んで隔壁3Aに対向する隔壁4Aと、カウンタ軸7の軸方向に延び、隔壁3Aと隔壁4Aとを連絡する左側壁2Dと、カウンタ軸7の軸方向に延び、カウンタ軸7の上方で隔壁3Aと隔壁4Aとを連絡する上壁2Bとを含んで構成されている。
【0076】
本実施例の変速機1の潤滑構造は、ファイナルドライブギヤ7Eの回転によって左側壁2D側に掻き上げられた潤滑油を捕集して潤滑部位(プロペラシャフト、ファイナルドライブギヤ7Eとファイナルドリブンギヤ8Bの噛み合い部)に供給する捕集部16を有し、捕集部16は、上壁2Bからカウンタ軸7に向かって延びる縦壁部2Fと縦壁部2Fに設けられた湾曲部2Gとを有する。
【0077】
縦壁部2Fは、前端部が隔壁3Aに連続するとともに、後端部が隔壁4Aに連続しており、湾曲部2Gは、縦壁部2Fの下端部から左側壁2D側に屈曲した後、上方に延びており、潤滑油を貯留する。
【0078】
これにより、隔壁3Aと隔壁4Aと左側壁2Dと捕集部16との間に閉空間からなる収容室14を形成できる。
【0079】
本実施例の変速機1は、潤滑構造がこのように構成されるので、収容室14の底部に貯留された潤滑油Oは、ファイナルドライブギヤ7Eにより掻き上げられて湾曲部2Gと左側壁2Dの間から収容室14に導入される。
【0080】
収容室14に導入された潤滑油は、図3図4の潤滑油O1で示すように、左側壁2Dを伝って上方に移動した後、縦壁部2Fに衝突して落下し、湾曲部2Gに貯留される。これにより、収容室14に導入された潤滑油O1は、湾曲部2Gに貯留される。
【0081】
また、車両50の高速走行時にカウンタ軸7の回転数が高くなり、ファイナルドライブギヤ7Eが高速回転すると、ファイナルドライブギヤ7Eによって掻き上げられる潤滑油がカウンタ軸7の軸方向に飛散する。
【0082】
本実施例の縦壁部2Fは、隔壁3Aから隔壁4Aまで延びているので、ファイナルドライブギヤ7Eによって掻き上げられて収容室14に導入された潤滑油がカウンタ軸7の軸方向に飛散した場合でも、潤滑油O1を縦壁部2Fに衝突させることができる。
【0083】
このため、潤滑油O1が収容室14から外部に飛び散ることを防止しつつ、収容室14に導入されたより多くの潤滑油O1を湾曲部2Gに貯留できる。
【0084】
このように、本実施例の変速機1の潤滑構造は、捕集部16によって多くの潤滑油を捕集でき、潤滑部位により多くの潤滑油を供給できる。
【0085】
また、より多くの潤滑油O1を捕集部16に捕集することができるので、収容室14の底面に貯留される潤滑油Oの油面を低くすることができ、ファイナルドライブギヤ7Eの撹拌抵抗を低減できる。
【0086】
また、本実施例の変速機1の潤滑構造によれば、収容室14にガイド壁2Hが設けられており、ガイド壁2Hは、ファイナルドライブギヤ7Eよりも下方からファイナルドライブギヤ7Eの外周に沿って延び、左側壁2Dに連続している。
【0087】
これにより、車両50の低速走行時等にカウンタ軸7の回転数が低く、ファイナルドライブギヤ7Eが低速回転した場合であっても、ファイナルドライブギヤ7Eがガイド壁2Hに沿って潤滑油Oを掻き上げて収容室14に導入できる。
【0088】
このため、より多くの潤滑油O1を捕集部16によって捕集でき、潤滑部位により多くの潤滑油を導入できる。これに加えて、収容室14の潤滑油Oの油面をより効果的に低減でき、ファイナルドライブギヤ7Eの撹拌抵抗をより効果的に低減できる。
【0089】
また、ガイド壁2Hによってファイナルドライブギヤ7Eが浸かる潤滑油の量を少なくできるので、ファイナルドライブギヤ7Eの撹拌抵抗をより効果的に低減できる。
【0090】
ここで、捕集部16が、カウンタ軸7の軸心C1に対して車幅方向に離れていると、ファイナルドライブギヤ7Eによって掻き上げられた潤滑油が捕集部16に到達する前に自重で落下してしまうおそれがある。
【0091】
本実施例の変速機1の潤滑構造によれば、捕集部16は、カウンタ軸7の軸心C1よりも左側壁2D側に形成されているので、ファイナルドライブギヤ7Eによって掻き上げられた潤滑油を初期段階で捕集部16によって確実に捕集でき、より多くの潤滑油を捕集部16で捕集できる。このため、潤滑部位により多くの潤滑油を供給できる。
【0092】
また、本実施例の変速機1の潤滑構造によれば、縦壁部4Fと湾曲部4Gの連絡部位に開口部4bが形成されている。
【0093】
湾曲部2Gは、延出部2Iを有し、延出部4Iは、開口部4bの下端部から左側壁2Dと離れるようにファイナルドライブギヤ7Eの上方に延び、湾曲部4Gから開口部4bを通してファイナルドライブギヤ7Eに潤滑油を供給し、延出部3Iは、延出部4Iの前方で左側壁2Dと離れるようにファイナルドライブギヤ7Eの上方に延び、湾曲部4Gから開口部4bを通してファイナルドライブギヤ7Eに潤滑油を供給する。
【0094】
これにより、湾曲部2Gに貯留された潤滑油を、延出部2Iよって捕集部16から離れた位置に供給できる。このため、ファイナルドライブギヤ7Eとファイナルドリブンギヤ8Bの噛み合い部に潤滑油を供給してファイナルドライブギヤ7Eとファイナルドリブンギヤ8Bの噛み合い部を潤滑油によって効率よく潤滑できる。
【0095】
ここで、変速機ケース2の製造時にフロントケース3とリアケース4を金型で成形する場合に、縦壁部3Fおよび湾曲部3Gと、縦壁部4Fおよび湾曲部4Gとには、フロントケース3とリアケース4から金型を容易に抜くための抜き勾配が形成されている。
【0096】
このため、縦壁部3F、湾曲部3Gおよび延出部3Iと、縦壁部4F、湾曲部4Gおよび延出部4Iとは、それぞれ隔壁3A、4Aから離れるほど厚みが薄くなる。
【0097】
これにより、カウンタ軸7の軸方向で延出部3Iと延出部4Iの接合面は、隔壁3A、4A側に対して窪むことになる。
【0098】
そこで、カウンタ軸7の軸方向で延出部3Iと延出部4Iの接合面を車幅方向でファイナルドライブギヤ7Eに対向させることにより、湾曲部2Gから開口部4bを通して延出部4Iに導入された潤滑油を延出部3Iと延出部4Iの合わせ面に集めて接合面に沿ってファイナルドライブギヤ7Eに供給できる。
【0099】
このため、ファイナルドライブギヤ7Eとファイナルドリブンギヤ8Bの噛み合い部により多くの潤滑油を効率よく導入でき、ファイナルドライブギヤ7Eとファイナルドリブンギヤ8Bの噛み合い部をより一層効率よく潤滑できる。
【0100】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0101】
1...変速機(車両用変速機)、2...変速機ケース、2B...上壁、2C...下壁、2D...左側壁(側壁)、2F...縦壁部、2G...湾曲部、2H...ガイド壁、2I...延出部、3A...隔壁(第1の縦壁)、4A...隔壁(第2の縦壁)、4b...開口部、7...カウンタ軸(回転軸)、7E...ファイナルドライブギヤ(ギヤ)、14...収容室、16...捕集部、C1...軸心(回転軸の軸心)
図1
図2
図3
図4