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▶ 丸岡毅の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060929
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】虫糞茶
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/38 20210101AFI20240425BHJP
【FI】
A23L2/38 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168517
(22)【出願日】2022-10-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)2022年1月31日に、株式会社毎日新聞社のウェブサイト(https://mainichi.jp/articles/20220131/k00/00m/040/054000c)において、新しい香味を呈する虫糞茶を公開 (2)2022年2月9日に、毎日新聞 2022年2月9日付朝刊において、新しい香味を呈する虫糞茶を公開 (3)2022年2月14日に、株式会社毎日新聞社のウェブサイト(https://mainichi.jp/english/articles/20220212/p2a/00m/0li/024000c)において、新しい香味を呈する虫糞茶を公開 (4)2022年2月10日に、Abemaヒルズという番組において、新しい香味を呈する虫糞茶を公開 (5)2022年2月23日に、笑福亭晃瓶のほっかほかラジオという番組において、新しい香味を呈する虫糞茶を公開 (6)2022年2月5日に、丸岡毅のウェブサイト(https://www.maimai-teatime.com/)において、新しい香味を呈する虫糞茶を公開 (7)2021年12月23日に、京都府政記者クラブにおいて、新しい香味を呈する虫糞茶を公開 (8)2021年12月20日に、株式会社京都新聞社に対して、新しい香味を呈する虫糞茶を公開 (9)2021年12月20日に、株式会社西日本新聞社に対して、新しい香味を呈する虫糞茶を公開 (10)2022年2月14日に、京都大学 北部構内総務課に対して、新しい香味を呈する虫糞茶を公開
(71)【出願人】
【識別番号】522390283
【氏名又は名称】丸岡毅
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸岡 毅
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC03
4B117LK17
4B117LP01
4B117LP03
(57)【要約】
【課題】これまでに存在しなかったような新しい香味を呈する虫糞茶用の糞、虫糞茶、虫糞茶用の糞の製造方法、及び、虫糞茶の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に係る虫糞茶用の糞は、植物を食する蛾の幼虫の糞であって、前記植物は、ブドウ科、バラ科、ブナ科、カキノキ科、ツバキ科、及び、カバノキ科に属する少なくとも1種である。本発明に係る虫糞茶は、植物を食する蛾の幼虫の糞の抽出液を含む虫糞茶であって、前記植物は、ブドウ科、バラ科、ブナ科、カキノキ科、ツバキ科、及び、カバノキ科に属する少なくとも1種である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を食する蛾の幼虫の糞であって、
前記植物は、ブドウ科、バラ科、ブナ科、カキノキ科、ツバキ科、及び、カバノキ科に属する少なくとも1種である虫糞茶用の糞。
【請求項2】
前記蛾は、スズメガ科、ドクガ科、ヤママユガ科、及び、イラガ科に属する少なくとも1種である請求項1に記載の虫糞茶用の糞。
【請求項3】
前記蛾と前記植物との組み合わせは、スズメガ科に属する蛾とブドウ科に属する植物との組み合わせ、ドクガ科に属する蛾とリンゴ属に属する植物との組み合わせ、ヤママユガ科に属する蛾とブナ科に属する植物との組み合わせ、スズメガ科に属する蛾とバラ科に属する植物との組み合わせ、ドクガ科に属する蛾とサクラ属に属する植物との組み合わせ、又は、ドクガ科に属する蛾とカキノキ科に属する植物との組み合わせである請求項1又は請求項2に記載の虫糞茶用の糞。
【請求項4】
前記蛾と前記植物との組み合わせは、ブドウスズメとヤブガラシとの組み合わせ、ドクガとリンゴとの組み合わせ、ヤママユガとアラカシとの組み合わせ、モモスズメとサクラとの組み合わせ、ドクガとサクラとの組み合わせ、又は、ドクガとカキとの組み合わせである請求項1又は請求項2に記載の虫糞茶用の糞。
【請求項5】
植物を食する蛾の幼虫の糞の抽出液を含む虫糞茶であって、
前記植物は、ブドウ科、バラ科、ブナ科、カキノキ科、ツバキ科、及び、カバノキ科に属する少なくとも1種である虫糞茶。
【請求項6】
前記蛾は、スズメガ科、ドクガ科、ヤママユガ科、及び、イラガ科に属する少なくとも1種である請求項5に記載の虫糞茶。
【請求項7】
前記蛾と前記植物との組み合わせは、スズメガ科に属する蛾とブドウ科に属する植物との組み合わせ、ドクガ科に属する蛾とリンゴ属に属する植物との組み合わせ、ヤママユガ科に属する蛾とブナ科に属する植物との組み合わせ、スズメガ科に属する蛾とバラ科に属する植物との組み合わせ、ドクガ科に属する蛾とサクラ属に属する植物との組み合わせ、又は、ドクガ科に属する蛾とカキノキ科に属する植物との組み合わせである請求項5又は請求項6に記載の虫糞茶。
【請求項8】
前記蛾と前記植物との組み合わせは、ブドウスズメとヤブガラシとの組み合わせ、ドクガとリンゴとの組み合わせ、ヤママユガとアラカシとの組み合わせ、モモスズメとサクラとの組み合わせ、ドクガとサクラとの組み合わせ、又は、ドクガとカキとの組み合わせである請求項5又は請求項6に記載の虫糞茶。
【請求項9】
植物を食する蛾の幼虫の糞を採取する糞準備工程と、
前記糞に対して乾燥処理を施す乾燥工程と、を含み、
前記植物は、ブドウ科、バラ科、ブナ科、カキノキ科、ツバキ科、及び、カバノキ科に属する少なくとも1種である虫糞茶用の糞の製造方法。
【請求項10】
植物を食する蛾の幼虫の糞から抽出液を抽出する抽出工程と、を含み、
前記植物は、ブドウ科、バラ科、ブナ科、カキノキ科、ツバキ科、及び、カバノキ科に属する少なくとも1種である虫糞茶の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、虫糞茶用の糞、虫糞茶、虫糞茶用の糞の製造方法、及び、虫糞茶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チャノキ(Camellia sinensis)の葉や茎から作られる茶飲料は、身体によい成分を多く含むだけでなく、その香味は多様性に富んでいる。
そして、茶飲料の香味に関して、消費者の嗜好により適合するような香味とするため、研究開発が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、(A)アスコルビン酸又はその塩170~850質量ppm、及び(B)アストラガリン(C)バニリン15~200質量ppbを含有し、成分(A)と成分(B)とが下記式(1);0.006×Q-0.36≦P≦30(1)〔式(1)中、Pは成分(B)の含有量(質量ppm)を示し、Qは成分(A)の含有量(質量ppm)を示す〕を満たす、茶飲料が開示されている。
そして、特許文献1では、鼻抜け香が強く感じられる茶飲料を提供することができると説明している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第7030170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、特許文献1に記載されているような従来の茶飲料で実現できるような香味ではなく、これまでの茶飲料では存在し得なかったような新しい香味のお茶を提供したいと考えた。
そして、本発明者は、チャノキ以外のものから作られる茶外茶の中でも、日本人にはほとんど馴染みのない虫糞茶に着目し、消費者が驚くような新しい香味を虫糞茶によって実現したいと考えた。
【0006】
そこで、本発明は、これまでに存在しなかったような新しい香味を呈する虫糞茶用の糞、虫糞茶、虫糞茶用の糞の製造方法、及び、虫糞茶の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、蛾の幼虫の餌となる植物の種類や蛾の種類について、極めて多くの組み合わせを検討したところ、所定の植物を餌として使用した場合(特に、所定の植物と所定の蛾の組み合わせの場合)に、蛾の幼虫の糞から作る虫糞茶が一般的な茶飲料では実現できないような新しい香味を呈することを見出し、本発明を創出するに至った。
【0008】
前記課題は、以下の手段によって解決することができる。
(1)植物を食する蛾の幼虫の糞であって、前記植物は、ブドウ科、バラ科、ブナ科、カキノキ科、ツバキ科、及び、カバノキ科に属する少なくとも1種である虫糞茶用の糞。
(2)前記蛾は、スズメガ科、ドクガ科、ヤママユガ科、及び、イラガ科に属する少なくとも1種である前記1に記載の虫糞茶用の糞。
(3)前記蛾と前記植物との組み合わせは、スズメガ科に属する蛾とブドウ科に属する植物との組み合わせ、ドクガ科に属する蛾とリンゴ属に属する植物との組み合わせ、ヤママユガ科に属する蛾とブナ科に属する植物との組み合わせ、スズメガ科に属する蛾とバラ科に属する植物との組み合わせ、ドクガ科に属する蛾とサクラ属に属する植物との組み合わせ、又は、ドクガ科に属する蛾とカキノキ科に属する植物との組み合わせである前記1又は前記2に記載の虫糞茶用の糞。
(4)前記蛾と前記植物との組み合わせは、ブドウスズメとヤブガラシとの組み合わせ、ドクガとリンゴとの組み合わせ、ヤママユガとアラカシとの組み合わせ、モモスズメとサクラとの組み合わせ、ドクガとサクラとの組み合わせ、又は、ドクガとカキとの組み合わせである前記1又は前記2に記載の虫糞茶用の糞。
(5)植物を食する蛾の幼虫の糞の抽出液を含む虫糞茶であって、前記植物は、ブドウ科、バラ科、ブナ科、カキノキ科、ツバキ科、及び、カバノキ科に属する少なくとも1種である虫糞茶。
(6)前記蛾は、スズメガ科、ドクガ科、ヤママユガ科、及び、イラガ科に属する少なくとも1種である前記5に記載の虫糞茶。
(7)前記蛾と前記植物との組み合わせは、スズメガ科に属する蛾とブドウ科に属する植物との組み合わせ、ドクガ科に属する蛾とリンゴ属に属する植物との組み合わせ、ヤママユガ科に属する蛾とブナ科に属する植物との組み合わせ、スズメガ科に属する蛾とバラ科に属する植物との組み合わせ、ドクガ科に属する蛾とサクラ属に属する植物との組み合わせ、又は、ドクガ科に属する蛾とカキノキ科に属する植物との組み合わせである前記5又は前記6に記載の虫糞茶。
(8)前記蛾と前記植物との組み合わせは、ブドウスズメとヤブガラシとの組み合わせ、ドクガとリンゴとの組み合わせ、ヤママユガとアラカシとの組み合わせ、モモスズメとサクラとの組み合わせ、ドクガとサクラとの組み合わせ、又は、ドクガとカキとの組み合わせである前記5又は前記6に記載の虫糞茶。
(9)植物を食する蛾の幼虫の糞を採取する糞準備工程と、前記糞に対して乾燥処理を施す乾燥工程と、を含み、前記植物は、ブドウ科、バラ科、ブナ科、カキノキ科、ツバキ科、及び、カバノキ科に属する少なくとも1種である虫糞茶用の糞の製造方法。
(10)植物を食する蛾の幼虫の糞から抽出液を抽出する抽出工程と、を含み、前記植物は、ブドウ科、バラ科、ブナ科、カキノキ科、ツバキ科、及び、カバノキ科に属する少なくとも1種である虫糞茶の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る虫糞茶用の糞は、当該糞から作った虫糞茶が、これまでになかったような新しい香味を呈する。
本発明に係る虫糞茶は、これまでになかったような新しい香味を呈する。
本発明に係る虫糞茶用の糞の製造方法は、これまでになかったような新しい香味を呈する虫糞茶用の糞を製造することができる。
本発明に係る虫糞茶の製造方法は、これまでになかったような新しい香味を呈する虫糞茶を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る虫糞茶用の糞、虫糞茶、虫糞茶用の糞の製造方法、及び、虫糞茶の製造方法を実施するための形態(本実施形態)について説明する。
【0011】
[虫糞茶用の糞]
本実施形態に係る虫糞茶用の糞は、所定の植物を食する蛾の幼虫の糞である。
なお、「虫糞茶用」とは、後記する虫糞茶に使用するものという用途を示しており、虫糞茶用の糞から抽出した抽出液(又は、当該抽出液に所定の添加物などを含有させた液)が虫糞茶となる。
以下、本実施形態に係る虫糞茶用の糞の各構成要件を詳細に説明する。
【0012】
(蛾の幼虫)
本実施形態に係る蛾の幼虫とは、昆虫綱、チョウ目(鱗翅目)に分類される昆虫のうち、チョウ類(具体的には、アゲハチョウ上科、セセリチョウ上科、シャクガモドキ上科)を除いた分類に属する昆虫の幼虫(さなぎになるまで)である。
本発明者は、糞から作られる虫糞茶の香味の観点だけではなく、後記する所定の植物を食するか、幼虫のサイズが大きいか(大きな糞を出すか)、共食いをしないか(多頭飼育が可能か)、越冬が可能か(年に何回孵化するか、孵化前に春化処理が必要か)といった複数の観点に基づいて検討及び実験を行った。その結果、スズメガ科、ドクガ科、ヤママユガ科、イラガ科に属する蛾を使用するのが好ましいことを確認した。
なお、スズメガ科に属する蛾は、ブドウスズメ、モモスズメ、クチバスズメが挙げられ、ドクガ科に属する蛾は、ドクガ、リンゴドクガ、マイマイガが挙げられ、ヤママユガ科に属する蛾は、ヤママユガ、ヒメヤママユ、オオミズアオが挙げられ、イラガ科に属する蛾は、ヒロヘリアオイラガ、タイワンイラガ、イラガが挙げられる。
そして、これらの蛾の中でも、ブドウスズメ、ドクガ、ヤママユガ、モモスズメが特に好ましい。
なお、蛾の幼虫における蛾の種類は、1種以上(少なくとも1種)であってもよいが、当然、1種でもよい。
【0013】
(蛾の幼虫が食する所定の植物)
本実施形態に係る蛾の幼虫が食する所定の植物とは、蛾の幼虫の餌となる植物であって、主に植物の葉や茎(特に葉)である。
本発明者は、所定の植物を餌とした蛾の幼虫の糞から作られる虫糞茶の香味の観点から、ブドウ科、バラ科、ブナ科、カキノキ科、ツバキ科、カバノキ科に属する植物を餌とするのが好ましいことを確認した。
なお、ブドウ科に属する植物は、ヤブガラシ、ノブドウが挙げられ、バラ科に属する植物は、リンゴ、サクラが挙げられ、ブナ科に属する植物は、アラカシ、クリが挙げられ、カキノキ科に属する植物は、カキが挙げられ、ツバキ科に属する植物は、チャ(チャノキ)が挙げられ、カバノキ科に属する植物は、ハンノキが挙げられる。
そして、これらの植物の中でも、ヤブガラシ、リンゴ、アラカシ、サクラが特に好ましい。
なお、餌とする植物の種類は、1種以上(少なくとも1種)であってもよいが、当然、1種でもよい。
【0014】
前記した昆虫種と前記した植物種との組み合わせであれば、得られる虫糞茶は新しい香味を発揮できると考えるが、両者の組み合わせに関して、より詳細な具体例を以下に示す。
【0015】
(昆虫種:スズメガ科のブドウスズメ × 植物種:ブドウ科のヤブガラシ)
本発明者は、ブドウ科の植物(ヤブガラシ)を餌としたスズメガ科の蛾(ブドウスズメ)の幼虫の糞を用いた虫糞茶が、べっこう飴様の香り、ウーロン茶様の香ばしさ、奥における甘味を発揮できることを見出した。
つまり、この昆虫種と植物種の組み合わせによって、「べっこう飴様の香り」、「ウーロン茶様の香ばしさ」、「奥における甘味」を呈する新しい香味の虫糞茶を提供するという課題を解決することができる。
なお、ブドウスズメは、スズメガ科ホウジャク亜科に属する蛾である。また、ヤブガラシは、ブドウ科ヤブガラシ属に属する植物である。
【0016】
(昆虫種:ドクガ科のドクガ × 植物種:バラ科のリンゴ)
本発明者は、バラ科の植物(リンゴ)を餌としたドクガ科の蛾(ドクガ)の幼虫の糞を用いた虫糞茶が、リンゴ皮様の香り、白玉様の甘味を発揮できることを見出した。
つまり、この昆虫種と植物種の組み合わせによって、「リンゴ皮様の香り」、「白玉様の甘味」を呈する新しい香味の虫糞茶を提供するという課題を解決することができる。
なお、ドクガは、ドクガ科ドクガ属に属する蛾である。また、リンゴは、バラ科リンゴ属に属する植物である。
【0017】
(昆虫種:ヤママユガ科のヤママユガ × 植物種:ブナ科のアラカシ)
本発明者は、ブナ科の植物(アラカシ)を餌としたヤママユガ科の蛾(ヤママユガ)の幼虫の糞を用いた虫糞茶が、ジャスミン茶用の香り、香ばしいものの爽快な後味を発揮できることを見出した。
つまり、この昆虫種と植物種の組み合わせによって、「ジャスミン茶様の香り」、「香ばしいものの爽快な後味」を呈する新しい香味の虫糞茶を提供するという課題を解決することができる。
なお、ヤママユガ(ヤママユ)は、ヤママユガ科ヤママユ属に属する蛾である。また、アラカシは、ブナ科コナラ属に属する植物である。
【0018】
(昆虫種:スズメガ科のモモスズメ × 植物種:バラ科のサクラ)
本発明者は、バラ科の植物(サクラ)を餌としたスズメガ科の蛾(モモスズメ)の幼虫の糞を用いた虫糞茶が、桜餅様の香り、シナモンの香り、グルタミン酸の旨味を発揮できることを見出した。
つまり、この昆虫種と植物種の組み合わせによって、「桜餅様の香り」、「シナモンの香り」、「グルタミン酸の旨味」を呈する新しい香味の虫糞茶を提供するという課題を解決することができる。
なお、モモスズメは、スズメガ科ウチスズメ亜科に属する蛾である。また、サクラは、バラ科サクラ属に属する植物である。
【0019】
(昆虫種:ドクガ科のドクガ × 植物種:バラ科のサクラ)
本発明者は、バラ科の植物(サクラ)を餌としたドクガ科の蛾(ドクガ)の幼虫の糞を用いた虫糞茶が、桜餅様の香り、シナモンの香り、グルタミン酸の旨味を発揮できることを見出した。
つまり、この昆虫種と植物種の組み合わせによって、「桜餅様の香り」、「シナモンの香り」、「グルタミン酸の旨味」を呈する新しい香味の虫糞茶を提供するという課題を解決することができる。
なお、ドクガとサクラは、前記したとおりである。
【0020】
(昆虫種:ドクガ科のドクガ × 植物種:カキノキ科のカキ)
本発明者は、カキノキ科の植物(カキ)を餌としたドクガ科の蛾(ドクガ)の幼虫の糞を用いた虫糞茶が、ヒノキ様の香り、独特な甘さと渋味、後味における酸味を発揮できることを見出した。
つまり、この昆虫種と植物種の組み合わせによって、「ヒノキ様の香り」、「独特な甘さと渋味」、「後味における酸味」を呈する新しい香味の虫糞茶を提供するという課題を解決することができる。
なお、ドクガは前記したとおりである。また、カキ(カキノキ)は、カキノキ科カキノキ属に属する植物である。
【0021】
(その他)
本実施形態に係る虫糞茶用の糞は、一般的な茶飲料用の茶葉に添加されるような添加物を含有していてもよいし、当然、含有しなくてもよい。
例えば、添加物としては、ビタミンC、賦形剤(デキストリン)などが挙げられる。
【0022】
[虫糞茶]
本実施形態に係る虫糞茶は、前記した糞の抽出液を含むものである。
なお、本実施形態に係る虫糞茶は、前記した糞の抽出液のみで構成されていてもよいし、水やお湯で希釈されていてもよいし、後記する添加物が付与されていてもよい。
【0023】
(その他)
本実施形態に係る虫糞茶は、本発明の所望の効果が阻害されない範囲で飲料として通常配合される甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、香料、酸味料、塩類、食物繊維などの添加剤を含有していてもよいし、当然、含有しなくてもよい。
甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、マルトースなどを用いることができる。高甘味度甘味料としては、例えば、ネオテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、ステビア、グリチルリチンなどを用いることができる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなどを用いることができる。酸味料としては、例えば、クエン酸、アジピン酸、クエン酸三ナトリウムなどを用いることができる。塩類としては、例えば、食塩、酸性りん酸カリウム、酸性りん酸カルシウム、りん酸アンモニウムなどを用いることができる。食物繊維としては、例えば、難消化性デキストリン、ペクチンなどを用いることができる。
【0024】
(容器詰め虫糞茶)
本実施形態に係る虫糞茶は、各種容器に入れて提供することができる。各種容器に虫糞茶を詰めることにより、長期間の保管による品質の劣化を好適に防止することができる。
なお、容器は密閉できるものであればよく、金属製(アルミニウム製又はスチール製など)のいわゆる缶容器、ガラス容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ容器など、現在流通しているものであれば特に限定されない。
【0025】
[虫糞茶の製造方法]
本実施形態に係る虫糞茶の製造方法は、抽出工程、を含む。そして、本実施形態に係る虫糞茶の製造方法は、抽出工程の前に、糞準備工程、乾燥工程、を含んでもよく、抽出工程の後に、虫糞茶製品化工程を含んでもよい。
以下、各工程を説明する。
【0026】
(糞準備工程)
糞準備工程では、抽出対象となる糞を準備(採取)する。
具体的には、前記した蛾の幼虫に対して、前記した植物を餌として与え、幼虫の糞を採取する。
植物を餌として与える際は、新鮮な状態で与えるのが好ましく、枝のある植物の場合は、葉が生った枝を水に刺した状態で与えればよい。また、糞の採取のタイミングは特に限定されないものの、1~2日に1回程度の頻度で実施すればよい。
なお、糞準備工程で使用する蛾の種類と植物の種類は前記したとおりである。
【0027】
(乾燥工程)
乾燥工程では、糞準備工程で得られた糞に対して乾燥処理を施す。
乾燥工程での乾燥処理の条件は、糞を乾燥させることができる条件であれば特に限定されないものの、例えば、市販の乾熱器や乾熱滅菌器を用いて50~70℃(好ましくは55~60℃)で4~24時間(好ましくは8~12時間)の乾燥処理を施してもよいし、室温で風乾させてもよい。
また、乾燥工程では、糞を加熱することなく乾燥させる真空凍結乾燥処理(フリーズドライ処理)を実施してもよい。
【0028】
(抽出工程)
抽出工程では、糞から抽出液を抽出する。
抽出工程で使用する溶媒は、50~90℃(好ましくは60~85℃)のお湯、水等が挙げられる。また、抽出処理の条件については、一般的な茶飲料の抽出条件を適用すればよく、例えば、糞の質量に対する溶媒の質量の倍率(よく比)が50~150倍(好ましくは80~110倍)となるようにお湯を加えて、糞がお湯に浸った状態で1~5分間(好ましくは2~3分間)保持すればよい。
【0029】
(虫糞茶製品化工程)
虫糞茶製品化工程では、得られた抽出液を製品化する。
虫糞茶製品化工程において、例えば、ろ過、前記した添加物の添加、殺菌、容器への充填などの処理を必要に応じて選択的に実施する。なお、虫糞茶製品化工程での各処理の順序は特に限定されない。
【0030】
(その他の工程)
乾燥処理の後に、糞の粒径を揃えるために粉砕処理を施す粉砕工程を設けてもよい。また、複数種の糞を使用する場合は、複数の糞準備工程の後、糞を混合する混合工程を設けてもよい。
【0031】
なお、本実施形態に係る虫糞茶の製造方法について、各工程(糞準備工程以外)の処理は、一般的な茶飲料などのRDT(ready to drink)の製造に用いられる設備で実施することができる。
【0032】
[虫糞茶用の糞の製造方法]
本実施形態に係る虫糞茶用の糞の製造方法は、前記した糞準備工程と乾燥工程とを含み、乾燥工程の後に糞製品化工程を含んでもよい。
そして、糞製品化工程は、例えば、ティーバッグ、パウチ(個袋)、茶袋への封入処理、パッケージング処理、選別処理などを必要に応じて選択的に実施する。なお、糞製品化工程での各処理の順序は特に限定されない。
【実施例0033】
次に、本発明の要件を満たす実施例とそうでない比較例とを例示して、本発明について説明する。
【0034】
[サンプルの準備:実施例]
まず、ケージにおいて、表1に記載の昆虫種の幼虫に対して、表1に記載の植物種を餌として与え、約2週間、飼育した。なお、植物は、葉が生った枝を水に刺した状態で与えた。
そして、飼育期間中、1~2日に1回程度の頻度でケージ内の糞を採取した。その後、採取した糞を乾熱器(約50℃×6時間)で乾燥させた。
乾燥させた糞2gを80℃のお湯200mL(よく比:約100倍)で2分間抽出し、実施例であるサンプルA~F(抽出液)を製造した。
【0035】
[サンプルの準備:比較例]
表1に記載の植物種の葉を、葉の状態で乾熱器(約50℃×12時間)で乾燥させた。そして、乾燥した葉2gを80℃のお湯200mL(よく比:約100倍)で2分間抽出し、比較例であるサンプル(抽出液)を製造した。
なお、例えば、「サンプルAの比較例」は、表1に示すサンプルAと同じ植物種であるサクラの葉を使用したものであり、「サンプルBの比較例」は、表1に示すサンプルBと同じ植物種であるリンゴの葉を使用したものである。
【0036】
[試験内容:実施例であるサンプルAと比較例との官能試験]
前記の方法により製造したサンプルAと比較例について、パネル6名が下記評価基準に則って「赤茶色」、「桜餅様の香り」、「シナモンの香り」、「グルタミン酸の旨味」について、1~5点の5段階評価でそれぞれ点数付けし、その平均値を算出した。
なお、色に関する評価は、サンプルの外観で評価し、香りと味に関する評価は、サンプルを飲んで評価した。この点、後記する各官能試験でも同様である。
【0037】
(赤茶色:評価基準)
赤茶色の評価は、詳細には表1に示すとおり「透き通った赤茶色」の程度を判断しており、この程度を強く感じた場合を5点、弱く感じた場合を1点と評価した。
(桜餅様の香り:評価基準)
桜餅様の香りの評価は、詳細には表1に示すとおり「立ち香として桜餅の香り。飲むと鼻を抜ける。(つまり、立ち香と飲用時に感じる香りにおける、桜餅様の香り)」の程度を判断しており、この程度を強く感じた場合を5点、弱く感じた場合を1点と評価した。
そして、桜餅様の香りについては、点数が高いほど斬新な香り(新しい香り)であり、好ましいと判断できる。
(シナモンの香り:評価基準)
シナモンの香りの評価は、詳細には表1に示すとおり「飲み込んだ後に遅れてくるシナモンの香り」の程度を判断しており、この程度を強く感じた場合を5点、弱く感じた場合を1点と評価した。
そして、シナモンの香りについては、点数が高いほど斬新な香り(新しい香り)であり、好ましいと判断できる。
(グルタミン酸の旨味:評価基準)
グルタミン酸の旨味の評価は、詳細には表1に示すとおり「口に残るグルタミン酸の旨味」の程度を判断しており、この程度を強く感じた場合を5点、弱く感じた場合を1点と評価した。
そして、グルタミン酸の旨味については、点数が高いほど斬新な味(新しい味)であり、好ましいと判断できる。
【0038】
[試験内容:実施例であるサンプルBと比較例との官能試験]
前記の方法により製造したサンプルBと比較例について、パネル6名が下記評価基準に則って「黄色」、「リンゴ皮様の香り」、「白玉様の甘味」について、1~5点の5段階評価でそれぞれ点数付けし、その平均値を算出した。
【0039】
(黄色:評価基準)
黄色の評価は、詳細には表1に示すとおり「鮮やかな黄色」の程度を判断しており、この程度を強く感じた場合を5点、弱く感じた場合を1点と評価した。
(リンゴ皮様の香り:評価基準)
リンゴ皮様の香りの評価は、詳細には表1に示すとおり「リンゴを皮ごとかじったような(リンゴの皮のような)香り」の程度を判断しており、この程度を強く感じた場合を5点、弱く感じた場合を1点と評価した。
そして、リンゴ皮様の香りについては、点数が高いほど斬新な香り(新しい香り)であり、好ましいと判断できる。
(白玉様の甘味:評価基準)
白玉様の甘味の評価は、詳細には表1に示すとおり「白玉(米粉や白玉粉)のような甘味」の程度を判断しており、この程度を強く感じた場合を5点、弱く感じた場合を1点と評価した。
そして、白玉様の甘味については、点数が高いほど斬新な味(新しい味)であり、好ましいと判断できる。
【0040】
[試験内容:実施例であるサンプルCと比較例との官能試験]
前記の方法により製造したサンプルCと比較例について、パネル6名が下記評価基準に則って「茶色」、「ジャスミン茶様の香り」、「香ばしいものの爽快な後味」について、1~5点の5段階評価でそれぞれ点数付けし、その平均値を算出した。
【0041】
(茶色:評価基準)
茶色の評価は、詳細には表1に示すとおり「透き通った茶色」の程度を判断しており、この程度を強く感じた場合を5点、弱く感じた場合を1点と評価した。
(ジャスミン茶様の香り:評価基準)
ジャスミン茶様の香りの評価は、詳細には表1に示すとおり「ジャスミン茶のような香り」の程度を判断しており、この程度を強く感じた場合を5点、弱く感じた場合を1点と評価した。
そして、ジャスミン茶様の香りについては、点数が高いほど斬新な香り(新しい香り)であり、好ましいと判断できる。
(香ばしいものの爽快な後味:評価基準)
香ばしいものの爽快な後味の評価は、詳細には表1に示すとおり「豆を炒ったような香ばしさと爽快な後味。後味が残らずにスッキリとする。」の程度を判断しており、この程度を強く感じた場合を5点、弱く感じた場合を1点と評価した。
そして、香ばしいものの爽快な後味については、点数が高いほど斬新な味(新しい味)であり、好ましいと判断できる。
【0042】
[試験内容:実施例であるサンプルDと比較例との官能試験]
前記の方法により製造したサンプルDと比較例について、パネル6名が下記評価基準に則って「茶色」、「ヒノキ様の香り」、「独特な甘さと渋味」、「後味における酸味」について、1~5点の5段階評価でそれぞれ点数付けし、その平均値を算出した。
【0043】
(茶色:評価基準)
茶色の評価は、詳細には表1に示すとおり「黄がかった茶色」の程度を判断しており、この程度を強く感じた場合を5点、弱く感じた場合を1点と評価した。
(ヒノキ様の香り:評価基準)
ヒノキ様の香りの評価は、詳細には表1に示すとおり「ヒノキっぽい木の甘い香り」の程度を判断しており、この程度を強く感じた場合を5点、弱く感じた場合を1点と評価した。
そして、ヒノキ様の香りについては、点数が高いほど斬新な香り(新しい香り)であり、好ましいと判断できる。
(独特な甘さと渋味:評価基準)
独特な甘さと渋味の評価は、詳細には表1に示すとおり「まずニッキのような甘さを感じ、その中からほんのり渋みが出る。」の程度を判断しており、この程度を強く感じた場合を5点、弱く感じた場合を1点と評価した。
そして、独特な甘さと渋味については、点数が高いほど斬新な味(新しい味)であり、好ましいと判断できる。
(後味における酸味:評価基準)
後味における酸味の評価は、詳細には表1に示すとおり「最後に、味にメリハリをつけるような酸味が残り、さっぱりとする。」の程度を判断しており、この程度を強く感じた場合を5点、弱く感じた場合を1点と評価した。
そして、後味における酸味については、点数が高いほど斬新な味(新しい味)であり、好ましいと判断できる。
【0044】
[試験内容:実施例であるサンプルEと比較例との官能試験]
前記の方法により製造したサンプルEと比較例について、パネル3名が下記評価基準に則って「金色」、「べっこう飴様の香り」、「ウーロン茶様の香ばしさ」、「奥における甘味」について、1~5点の5段階評価でそれぞれ点数付けし、その平均値を算出した。
【0045】
(金色:評価基準)
金色の評価は、詳細には表1に示すとおり「透き通った金色」の程度を判断しており、この程度を強く感じた場合を5点、弱く感じた場合を1点と評価した。
(べっこう飴様の香り:評価基準)
べっこう飴様の香りの評価は、詳細には表1に示すとおり「べっこう飴のような香り」の程度を判断しており、この程度を強く感じた場合を5点、弱く感じた場合を1点と評価した。
そして、べっこう飴様の香りについては、点数が高いほど斬新な香り(新しい香り)であり、好ましいと判断できる。
(ウーロン茶様の香ばしさ:評価基準)
ウーロン茶様の香ばしさの評価は、詳細には表1に示すとおり「ウーロン茶のような味わいで焙じたような香ばしさ」の程度を判断しており、この程度を強く感じた場合を5点、弱く感じた場合を1点と評価した。
そして、ウーロン茶様の香ばしさについては、点数が高いほど斬新な味(新しい味)であり、好ましいと判断できる。
(奥における甘味:評価基準)
奥における甘味の評価は、詳細には表1に示すとおり「奥に甘味がある(他の香味に隠れるように甘味を感じる)」の程度を判断しており、この程度を強く感じた場合を5点、弱く感じた場合を1点と評価した。
そして、奥における甘味については、点数が高いほど斬新な味(新しい味)であり、好ましいと判断できる。
【0046】
[試験内容:実施例であるサンプルFの官能試験]
前記の方法により製造したサンプルFについて、パネル3名が前記した評価基準(サンプルAの官能試験で示した評価基準)に則って「赤茶色」、「桜餅様の香り」、「シナモンの香り」、「グルタミン酸の旨味」について、1~5点の5段階評価でそれぞれ点数付けし、その平均値を算出した。
なお、表1のサンプルFの評価点数の右側に示した比較例の評価点数は、サンプルAの官能試験の際に評価した点数である。
【0047】
【表1】
【0048】
[結果の検討]
表1の結果から、所定の植物種と所定の昆虫種の組み合わせにおいて、一般的な茶飲料では実現し得なかったような新しい香味を呈する飲料(虫糞茶)を得られることが確認できた。
【0049】
(補足)
本発明者は、表1に記載した以外にも、非常に多くの植物種と昆虫種との組み合わせで実験を実施しており、その結果、植物の香味が虫糞茶に直接反映されるものではなく、単純に植物の香味に基づいて虫糞茶の香味を予想できないことを確認している。したがって、本発明者は、蛾の幼虫の体内で植物が糞となる過程において香味に大きな変化が生じているのではないかと推察する。
なお、具体的には、「昆虫種:マイマイガ」と「植物種:ミカン」の組み合わせでは、虫糞茶の香味が柑橘様となることを期待したものの、全く柑橘様の香味が感じられず、お茶として好ましくない香味となることを確認している。