(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060949
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】ドライルーム用作業服
(51)【国際特許分類】
A41D 13/002 20060101AFI20240425BHJP
【FI】
A41D13/002 105
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168549
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】503021102
【氏名又は名称】五和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 稔
【テーマコード(参考)】
3B011
3B211
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AA08
3B011AA10
3B011AA12
3B011AB01
3B011AB02
3B011AC02
3B011AC18
3B011AC26
3B211AA01
3B211AA08
3B211AA10
3B211AA12
3B211AB01
3B211AB02
3B211AC02
3B211AC18
3B211AC26
(57)【要約】
【課題】ドライルーム内で作業者が快適に、かつ自身から発散される水分を露点管理エリアに流入させることなく作業ができる作業服を提供する。
【解決手段】上服1とフェイスシールド2からなる。上服は通気性を有さず、上服が作業者に着用された状態で、上服の裾がドライルームの露点管理エリアよりも低い位置にある。上服の襟刳りと、左右の袖口に空気漏れ防止部7を備える。上服の胸元に、外気を上服の内側空間内に取り込むファン9が設けられる。フェイスシールドは、カバー部材12と、カバー部材を作業者の頭部に固定しフェイスシールドを作業者に装着するための装着部13を有する。フェイスシールドが作業者に装着された状態で、カバー部材の下端12dが、作業者の顔面から下方に、作業者に着用された上服のファンの吸気口9aの位置までのびる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライルーム内において作業者が着用するドライルーム用作業服であって、
上服と、フェイスシールドとの組み合わせからなり、
前記上服は、
通気性を有しない素材から形成され、身頃および前記身頃に取り付けられた一対の袖からなる上服本体を備え、
前記上服本体の裾は、前記上服が前記作業者に着用された状態で前記ドライルームの露点管理エリアよりも低い位置にあり、
前記上服は、さらに、
前記上服本体の前記身頃の襟刳りに設けられ、前記上服が前記作業者に着用された状態で、前記作業者の首回りにそれ自体が密着する、または前記首回りに前記身頃を密着させる第1の空気漏れ防止手段と、
前記一対の袖のそれぞれの袖口に設けられ、前記上服が前記作業者に着用された状態で、前記作業者の手首の回りにそれ自体が密着する、または前記手首に関係する前記袖を密着させる第2の空気漏れ防止手段と、
前記上服本体の胸元に形成された吸気口に設けられ、外気を前記上服の内側空間内に取り込むファンと、
前記上服本体に取り付けられまたは前記上服本体とは別に前記作業者の身に着けられ、前記ファンに電力を供給するバッテリーと、
前記ファンを前記バッテリーに接続する電源コードと、を備え、
前記フェイスシールドは、
前記作業者の少なくとも口および鼻を覆った状態で、前記作業者の顔面に対向して配置される、プラスチック製のカバー部材と、
前記カバー部材に設けられた、前記カバー部材を前記作業者の頭部に固定して前記フェイスシールドを前記作業者に装着するための装着手段と、を備え、
前記フェイスシールドが前記作業者に装着された状態で、前記カバー部材の下端が、前記作業者の顔面から下方に、前記作業者に着用された前記上服の前記ファンの吸気口の位置までのびているものであることを特徴とするドライルーム用作業服。
【請求項2】
前記フェイスシールドの前記カバー部材が、
前記作業者の口および鼻を被覆し得るカップ状のマスク部分と、
前記マスク部分の内面に設けられた一対の鼻当てと、を備え、
前記フェイスシールドが前記作業者に装着されて前記一対の鼻当てが前記作業者の鼻に当接した状態で、少なくとも前記マスク部分の上端と前記作業者の顔面との間に隙間が形成されるようになっており、前記カバー部材が、さらに、
前記フェイスシールドが前記作業者に装着された状態で、前記マスク部分の下端から下方に、前記作業者に着用された前記上服の前記ファンの吸気口の位置までのびる延長部分を備え、
前記フェイスシールドの前記装着手段が、前記カバー部材の前記マスク部分の両側にそれぞれ取り付けられて前記マスク部分の前記内面から起立してのびる一対の耳掛け用つるからなっていることを特徴とする請求項1に記載のドライルーム用作業服。
【請求項3】
前記上服の前記第1の空気漏れ防止手段が、通気性を有しない素材から形成され、前記身頃の前記襟刳りに取り付けられた立ち襟と、前記立ち襟の周方向に設けられた第1の環状ゴムバンドからなり、
前記上服の前記第2の空気漏れ防止手段が、前記袖口の周方向に設けられた第2の環状ゴムバンドからなっていることを特徴とする請求項2に記載のドライルーム用作業服。
【請求項4】
一対のゴム製の手袋をさらに備え、前記手袋が前記上服を着用した前記作業者に装着されたとき、前記手袋の開口端が前記袖に密着するようになっていることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載のドライルーム用作業服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライルーム内において作業者が着用する作業服に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池、有機ELおよびキャパシタ等の研究開発および製造は低露点の乾燥空気中で行う必要があり、そのためにドライルームが使用される。
【0003】
ドライルームには除湿装置が備えられ、ドライルームおよび除湿装置間で空気が循環せしめられるとともに、ドライルームからの排気が除湿装置に送り込まれて除湿処理され、生成された低露点の乾燥空気が除湿装置から再びドライルームに供給され、ドライルーム内に予め設定された低露点雰囲気が維持されるようになっている。
【0004】
この場合、リチウムイオン電池、有機ELおよびキャパシタ等の実験対象物や被製造物はドライルーム内の実験(作業)台上または製造ライン上に置かれるので、実験(作業)台上および製造ライン上の実験対象物および被製造物の周囲の一定範囲内のエリア(以下、「露点管理エリア」という。)内の空気が常に予め設定された低露点に保たれていることが重要である。
【0005】
その一方で、ドライルーム内の作業者からは、呼気としてまたは皮膚から直接に水分が発散され、また、作業者は、ドライルーム内での作業中、実験(作業)台や製造ラインの傍らに位置している。
【0006】
そして、作業者から発散されたそれらの水分は、ドライルーム内の気流とともに容易に露点管理エリア内に流れ込み、露点管理エリアの露点温度を一時的に設定温度よりも上昇させる。
【0007】
こうして、ドライルーム内での作業中、露点管理エリア内の露点温度は一定ではなく、時折設定温度よりも上昇しており、そのため、正確な実験データが収集できない可能性、あるいは不良品の発生するおそれがあった。
【0008】
そのため、従来技術においては、ドライルーム内の作業者の身体から発散される水分を捕捉し、直接ドライルーム外に排出するための作業服が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
この作業服は、ビニール等の透湿性のない生地から作業者の全身を覆う形状に形成されたカバー着を備え、カバー着の頭部の前面と袖部分の先端に開口部が設けられ、足部分の先端は塞がれ、袖部分の開口部にゴムリングが取り付けられている。
【0010】
また、カバー着の背部外面に可撓性を有するチューブからなる分岐管が取り付けられ、各分岐管の先端部にはカバー着の内部に連通する吸気孔が設けられている。
【0011】
作業服は、さらに、カバー着を着用した作業者の胴に巻き付けられたベルトを介してカバー着に固定されたファンを備え、ファンの吸気側に分岐管の基端が接続され、ファンの排気側には排気管の一端が接続されている。排気管の他端は下方に作業者の足下までのびている。
【0012】
そして、ドライルームに入室する作業者は、アンダーウェアの上からカバー着を着用し、ファンを装着して、ファンの吸気側に分岐管を接続する。
こうして、ドライルーム内での作業中ファンが作動し、カバー着内の空気がファンによって吸引され、排気管を通じて作業者の足下に排出されるとともに、カバー着の頭部前面の開口部からドライルーム内の乾燥空気がカバー着内に流入するようになっている。
【0013】
しかしながら、この構成によれば、ファンが起動されると、短時間のうちにカバー着がアンダーウェアに密着し、カバー着およびアンダーウェア間の空間(空気流路)が消滅してしまい、作業者から発散される水分をカバー着内から排出できなくなる。
【0014】
その結果、作業者から発散される水分がカバー着内に滞留してカバー着内が蒸れ、作業者は不快感を伴いながらの作業を強いられていた。
【0015】
さらには、この構成では、作業者の呼気中の水分がそのままドライルーム内に放出されてしまうという問題があった。
【0016】
この点に関し、作業者の呼気中の水分をドライルーム内に放出される前に除去することができるドライルーム用マスクが、また、従来技術において知られている。
【0017】
この種のマスクとしては、例えば、吸気口および排気口を有し、作業者の口および鼻を被覆可能なマスク本体と、マスク本体の吸気口に設けられた第1の逆止弁と、マスク本体の排気口に接続され、内部に除湿剤が充填された除湿部と、マスク本体の排気口に設けられた第2の逆止弁とを備え、作業者が息を吸うとき、第1の逆止弁が開くが、第2の逆止弁は閉じる一方、作業者が息を吐くとき、第1の逆止弁が閉じるが、第2の逆止弁は開くようにし、作業者の呼気を除湿剤に通して除湿するもの(例えば、特許文献2参照)や、作業者の口および鼻を被覆可能なマスク本体と、マスク本体の先端部に通気可能に接続され、内部に除放湿剤が収容された除放湿部とを備え、作業者が息を吐くとき、作業者の呼気を除放湿部に通して除湿するが、作業者が息を吐くときは、外部の乾燥空気を除放湿部に通して加湿するもの(例えば、特許文献3参照)がある。
【0018】
しかしながら、除湿剤および除放湿剤の水分吸着能力には一定の限界があり、そのため、マスク装着後比較的短時間のうちに除湿剤および除放湿剤の最大吸着水分量に達し、その後もマスクの装着を続けると、マスクの内側空間が飽和水蒸気圧に達して、作業者の呼気中の水分がドライルーム内に放出され、また、作業者の顔面のマスクで覆われた領域が蒸れる等して作業者に不快感を与えるという問題があった。
【0019】
したがって、作業者は、ドライルーム内での作業中、除湿剤および除放湿剤の最大吸着水分量に達するたびにマスクを交換しなければならず、それがドライルーム内での作業の効率を低下させる一因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特許第4008569号公報
【特許文献2】特許第4239415号公報
【特許文献3】特許第6150556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
したがって、本発明の課題は、ドライルーム内において作業者が快適に、かつ自身から発散される水分を露点管理エリアに流入させることなく作業ができる作業服を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を解決するため、本発明によれば、ドライルーム内において作業者が着用するドライルーム用作業服であって、上服と、フェイスシールドとの組み合わせからなり、前記上服は、通気性を有しない素材から形成され、身頃および前記身頃に取り付けられた一対の袖からなる上服本体を備え、前記上服本体の裾は、前記上服が前記作業者に着用された状態で前記ドライルームの露点管理エリアよりも低い位置にあり、前記上服は、さらに、前記上服本体の前記身頃の襟刳りに設けられ、前記上服が前記作業者に着用された状態で、前記作業者の首回りにそれ自体が密着する、または前記首回りに前記身頃を密着させる第1の空気漏れ防止手段と、前記一対の袖のそれぞれの袖口に設けられ、前記上服が前記作業者に着用された状態で、前記作業者の手首の回りにそれ自体が密着する、または前記手首に関係する前記袖を密着させる第2の空気漏れ防止手段と、前記上服本体の胸元に形成された吸気口に設けられ、外気を前記上服の内側空間内に取り込むファンと、前記上服本体に取り付けられまたは前記上服本体とは別に前記作業者の身に着けられ、前記ファンに電力を供給するバッテリーと、前記ファンを前記バッテリーに接続する電源コードと、を備え、前記フェイスシールドは、前記作業者の少なくとも口および鼻を覆った状態で、前記作業者の顔面に対向して配置される、プラスチック製のカバー部材と、前記カバー部材に設けられた、前記カバー部材を前記作業者の頭部に固定して前記フェイスシールドを前記作業者に装着するための装着手段と、を備え、前記フェイスシールドが前記作業者に装着された状態で、前記カバー部材の下端が、前記作業者の顔面から下方に、前記作業者に着用された前記上服の前記ファンの吸気口の位置までのびているものであることを特徴とするドライルーム用作業服が提供される。
【0023】
ここで、「露点管理エリア」とは、ドライルーム内の実験(作業)台上および製造ライン上の実験対象物および被製造物の周囲の一定範囲内のエリアをいう。以下同様。
【0024】
本発明の好ましい実施例によれば、前記フェイスシールドの前記カバー部材が、前記作業者の口および鼻を被覆し得るカップ状のマスク部分と、前記マスク部分の内面に設けられた一対の鼻当てと、を備え、前記フェイスシールドが前記作業者に装着されて前記一対の鼻当てが前記作業者の鼻に当接した状態で、少なくとも前記マスク部分の上端と前記作業者の顔面との間に隙間が形成されるようになっており、前記カバー部材が、さらに、前記フェイスシールドが前記作業者に装着された状態で、前記マスク部分の下端から下方に、前記作業者に着用された前記上服の前記ファンの吸気口の位置までのびる延長部分を備え、前記フェイスシールドの前記装着手段が、前記カバー部材の前記マスク部分の両側にそれぞれ取り付けられて前記マスク部分の前記内面から起立してのびる一対の耳掛け用つるからなっている。
【0025】
本発明の別の好ましい実施例によれば、前記上服の前記第1の空気漏れ防止手段が、通気性を有しない素材から形成され、前記身頃の前記襟刳りに取り付けられた立ち襟と、前記立ち襟の周方向に設けられた第1の環状ゴムバンドからなり、前記上服の前記第2の空気漏れ防止手段が、前記袖口の周方向に設けられた第2の環状ゴムバンドからなっている。
【0026】
本発明のさらに別の好ましい実施例によれば、前記ドライルーム用作業服は、一対のゴム製の手袋をさらに備え、前記手袋が前記上服を着用した前記作業者に装着されたとき、前記手袋の開口端が前記袖に密着するようになっている。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、作業者が、上服を着用し(必要な場合には、バッテリーを身に着け)てファンを作動させ、かつフェイスシールドを装着した状態でドライルームに入室すると、ファンの吸気口から上服内にドライルーム内の乾燥空気が取り込まれる。
【0028】
このとき、上服の襟刳りおよび袖口からの空気の流出はなく、上服が常時膨らんだ状態となり、上服内に取り込まれた空気は順次、上服本体(すなわち、上服)の裾および作業者間に形成された隙間から下向きにドライルーム内に排出される。
【0029】
そして、作業者(の上半身)から発散された水分が上服内を流れる乾燥空気に吸収され、上服の裾の位置からドライルーム内に排出されるが、上服の裾は露点管理エリアよりも低い位置にあるので、作業者(の上半身)から発散された水分が露点管理エリア内に流入することはない。
【0030】
また、この上服内の乾燥空気の流れは作業中(ファンの動作中)継続し、よって、上服内が蒸れることや、その下の着衣が湿ることがなく、作業者は常に快適に作業を行うことができる。
【0031】
さらには、フェイスシールドの下端が上服のファンの吸気口の位置までのびているので、作業者の顔面とフェイスシールドの内面との間の空間内には、常時フェイスシールドの上方および側方から下方に向かう乾燥空気の流れが形成され、この気流は最終的にファンの吸気口から上服内に取り込まれ、上服の裾および作業者間に形成された隙間から下向きにドライルーム内に排出される。
【0032】
そして、作業者の呼気は、作業者の顔面とフェイスシールドの内面との間の空間内を流れる気流とともに、ファンの吸気口から上服内に取り込まれ、この気流とともにドライルーム内に排出される。
【0033】
その後、作業者の上半身から発散された水分と、作業者の呼気を含んだ空気はドライルームからの排気の一部として除湿装置に送り込まれて除湿処理される。そして、除湿装置によって生成された低露点の乾燥空気が再びドライルームに供給される。
【0034】
それによって、作業者の呼気がドライルーム内の露点管理エリア内に流入することはない。
また、作業者の顔面およびフェイスシールドの内面間の空間内の乾燥空気の流れは作業中(ファンの動作中)継続し、よってフェイスシールドの内面が曇ることもなく、作業者は常に快適に作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】(A)は、本発明の1実施例によるドライルーム用作業服の上服の正面図であり、(B)は同上服の背面図である。
【
図2】本発明の1実施例によるドライルーム用作業服のフェイスシールドの正面図である。
【
図3】
図1および
図2のドライルーム用作業服が作業者に着用された状態を示す斜視図である。
【
図4】
図1および
図2のドライルーム用作業服を着用した作業者がドライルーム内で作業している状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の構成を好ましい実施例に基づいて説明する。
図1(A)は、本発明の1実施例によるドライルーム用作業服の上服の正面図であり、
図1(B)は、同上服の背面図であり、
図2は、同ドライルーム用作業服のフェイスシールドの正面図である。
また、
図3は、
図1および
図2のドライルーム用作業服が作業者に着用された状態を示す斜視図であり、
図4は、同ドライルーム用作業服を着用した作業者がドライルーム内で作業している状態を示す斜視図である。
【0037】
図1~
図4を参照して、本発明のドライルーム用作業服は、上服1とフェイスシールド2との組み合わせからなっている。
【0038】
図1に示すように、上服1は、通気性を有しない素材から形成され、身頃4および身頃4に取り付けられた一対の袖5、6からなる上服本体3を備えている。
図4からわかるように、上服本体3の裾3aは、上服1が作業者に着用された状態でドライルーム14の露点管理エリア16よりも低い位置にある。
【0039】
ここで、露点管理エリア16は、ドライルーム14内の実験(作業)台15上の実験対象物17の周囲の一定範囲内のエリアを意味する。
【0040】
上服本体3は、この実施例では、後ろあきに形成され、後ろあきの領域に、気密ファスナー8が取り付けられている。
なお、上服本体3は、身頃および身頃に取り付けられた一対の袖からなり、全体として通気性を有しないのであれば、どのような仕立てになっていてもよい。
【0041】
身頃4の襟刳りに、通気性を有しない素材から形成された立ち襟7が取り付けられ、立ち襟7には、周方向に第1の環状ゴムバンド(図示されない)が設けられている。
【0042】
また、一対の袖5、6のそれぞれの袖口5a、6aに、周方向に第2の環状ゴムバンド(図示されない)が設けられている。
【0043】
そして、作業者は、気密ファスナー8を開いた状態で、上服1を前後が逆になるようにして被って立ち襟7に首を通し、気密ファスナー8を閉じ、次いで、作業者は、上服1を首のまわりに回して前後の位置を合わせ、その後、左右の腕をそれぞれ上服1の袖に通すことによって、上服1を着用する。
【0044】
作業者が上服1を着用した状態で、立ち襟7は第1の環状ゴムバンド(図示されない)によって作業者の首回りに密着し、左右の袖口5a、6aはそれぞれ第2の環状ゴムバンド(図示されない)によって作業者の手首に密着する。
【0045】
立ち襟7および第1の環状ゴムバンド(図示されない)から、上服1の襟刳りからの空気の漏れを防止する第1の空気漏れ防止手段が構成され、第2の環状ゴムバンドから上服1の袖口5a、6aからの空気の漏れを防止する第2の空気漏れ防止手段が構成される。
【0046】
第1および第2の空気漏れ防止手段の構成はこれに限定されない。
第1の空気漏れ防止手段は、上服本体3の身頃4の襟刳りに設けられ、上服1が作業者に着用された状態で、作業者の首回りにそれ自体が密着する、または首回りに身頃4を密着させる任意の構成を有し得るし、第2の空気漏れ防止手段は、一対の袖5、6のそれぞれの袖口5a、6aに設けられ、上服1が作業者に着用された状態で、作業者の手首の回りにそれ自体が密着する、または手首に関係する袖を密着させる任意の構成を有し得る。
【0047】
上服1は、さらに、上服本体3の胸元に形成された吸気口に設けられ、外気を上服1の内側空間内に取り込むファン9と、上服本体3の外面に取り付けられ、ファン9に電力を供給するバッテリー10と、ファン9をバッテリー10に接続する電源コード11とを備えている。
【0048】
図示はしないが、電源コード11は、柔軟性を有する細長い被覆シートによって、上服1の内面に接着固定され、上服1の外側であって、電源コード11とバッテリー10の接続部に、ファン9への電力供給のON/OFFを切り替えるスイッチが設けられている。
【0049】
図2および
図3に示すように、フェイスシールド2は、作業者の少なくとも口および鼻を覆った状態で、作業者の顔面に対向して配置される、プラスチック製のカバー部材12と、カバー部材12に設けられた、カバー部材12を作業者の頭部に固定してフェイスシールド2を作業者に装着するための装着手段13とを備えている。
【0050】
カバー部材12は、この実施例では、作業者の口および鼻を被覆し得るカップ状のマスク部分12aと、マスク部分12aの内面に設けられた一対の鼻当て12b、12bを備えている。
【0051】
そして、フェイスシールド2が作業者に装着されて一対の鼻当て12b、12bが作業者の鼻に当接した状態で、少なくともマスク部分12aの上端と作業者の顔面との間に隙間が形成されるようになっている。
【0052】
カバー部材12は、さらに、フェイスシールド2が作業者に装着された状態で、マスク部分12aの下端から下方に、作業者に着用された上服1のファン9の吸気口9aの位置までのびる延長部分12cを備えている。
【0053】
延長部分12c(すなわち、カバー部材12)の下端12dは、フェイスシールド2が作業者に装着された状態で、作業者の顔面から下方に、作業者に着用された上服1のファン9の吸気口9aの位置までのびている。
【0054】
なお、カバー部材12の形状はこの実施例に限定されず、カバー部材12は、作業者の少なくとも口および鼻を覆った状態で、作業者の顔面に対向して配置され、フェイスシールド2が作業者に装着された状態で、カバー部材12の下端12dが、作業者の顔面から下方に、作業者に着用された上服1のファン9の吸気口9aの位置までのびてさえおれば、どのような形状であってもよい。
【0055】
装着手段13は、この実施例では、カバー部材12のマスク部分12aの両側にそれぞれ取り付けられてマスク部分12aの内面から起立してのびる一対の耳掛け用つる13a、13aからなっている。
なお、装着手段13の構成もこれに限定されず、装着手段13が、一対の耳掛け用つるの代わりに、例えば、一端がマスク部分の一側に固定され、他端がマスク部分の他側に固定されたゴムベルトからなっていてもよい。
【0056】
図4を参照して、本発明によれば、作業者が、上服1を着用してファン9を作動させ、かつフェイスシールド2を装着した状態でドライルーム14に入室すると、ファン9の吸気口9aから上服1内にドライルーム14内の乾燥空気が取り込まれる。
【0057】
このとき、上服1の襟刳りおよび袖口5、6からの空気の流出はなく、上服1が常時膨らんだ状態となり、上服1内に取り込まれた空気は順次、上服本体3(すなわち、上服1)の裾3aおよび作業者間に形成された隙間から下向きにドライルーム14内に排出される。
【0058】
そして、作業者(の上半身)から発散された水分が上服1内を流れる乾燥空気に吸収され、上服1の裾3aの位置からドライルーム14内に排出されるが、上服1の裾3aは露点管理エリア16よりも低い位置にあるので、作業者(の上半身)から発散された水分が露点管理エリア16内に流入することはない。
【0059】
また、この上服1内の乾燥空気の流れは作業中(ファン9の動作中)継続し、よって、上服1内が蒸れることや、その下の着衣が湿ることがなく、作業者は常に快適に作業を行うことができる。
【0060】
さらには、フェイスシールド2の下端12dが上服のファン9の吸気口9aの位置までのびているので、作業者の顔面とフェイスシールド2の内面との間の空間内には、常時フェイスシールド2の上方および側方から下方に向かう乾燥空気の流れが形成され、この気流は最終的にファン9の吸気口9aから上服1内に取り込まれ、上服1の裾3aおよび作業者間に形成された隙間から下向きにドライルーム14内に排出される。
【0061】
そして、作業者の呼気は、作業者の顔面とフェイスシールド2の内面との間の空間内を流れる気流とともに、ファン9の吸気口9aから上服1内に取り込まれ、この気流とともにドライルーム14内に排出される。
【0062】
その後、作業者の上半身から発散された水分、および作業者の呼気を含んだ空気はドライルーム14からの排気の一部として除湿装置(図示されない)に送り込まれて除湿処理される。そして、除湿装置によって生成された低露点の乾燥空気が再びドライルーム14に供給される。
【0063】
それによって、作業者の呼気がドライルーム14内の露点管理エリア16内に流入することはない。
また、作業者の顔面およびフェイスシールド2の内面間の空間内の乾燥空気の流れは作業中(ファン9の動作中)継続し、よってフェイスシールド2の内面が曇ることもなく、作業者は常に快適に作業を行うことができる。
【0064】
図示はしないが、本発明の別の実施例によれば、本発明のドライルーム用作業服は、上服1およびフェイスシールド2に加えて、左右一対のゴム製の手袋を備えており、手袋が上服1を着用した作業者に装着されたとき、手袋の開口端が関係する袖5、6に密着するようになっている。
【0065】
この実施例によれば、作業者の手指から発散された水分は、手袋内に留まり、外部に排出されることがない。それによって、作業者から発散される水分の露点管理エリア内への侵入を、ほぼ完璧に防止することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 上服
2 フェイスシールド
2a 下端
3 上服本体
3a 裾
4 身頃
5、6 袖
5a、6a 袖口
7 立ち襟
8 気密ファスナー
9 ファン
9a 吸気口
10 バッテリー
11 電源コード
12 カバー部材
12a マスク部分
12b 鼻当て
12c 延長部分
12d 下端
13 装着手段
13a 耳掛け用つる
14 ドライルーム
15 実験(作業)台
16 露点管理エリア
17 実験対象物