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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060952
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】レクテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/27 20160101AFI20240425BHJP
【FI】
H02J50/27
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168556
(22)【出願日】2022-10-20
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「革新的情報通信技術研究開発委託研究/完全ワイヤレス社会実現を目指したワイヤレス電力伝送の高周波化および通信との融合技術」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】593165487
【氏名又は名称】学校法人金沢工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(74)【代理人】
【識別番号】100222324
【弁理士】
【氏名又は名称】西野 千明
(72)【発明者】
【氏名】伊東 健治
(72)【発明者】
【氏名】坂井 尚貴
(72)【発明者】
【氏名】角谷 直哉
(72)【発明者】
【氏名】小林 章伸
(57)【要約】
【課題】高周波領域における整流効率の低下を防ぐのに効果的なレクテナ装置の提供を目的とする。
【解決手段】アンテナ回路と整流回路とを有するレクテナであって、前記整流回路は、前記アンテナ回路側との一対の接続部と一対の出力端子とを有し、前記一対の接続部と一対の出力端子との間に形成される、第1ダイオードペアと前記第1ダイオードペアを配線する第1配線回路と第2ダイオードペアと前記第2ダイオードペアを配線する第2配線回路を有し、第1配線回路および第2配線回路が対称配置されていることを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ回路と整流回路とを有するレクテナであって、
前記整流回路は、前記アンテナ回路側との一対の接続部と一対の出力端子とを有し、
前記一対の接続部と一対の出力端子との間に形成される、第1ダイオードペアと前記第1ダイオードペアを配線する第1配線回路と第2ダイオードペアと前記第2ダイオードペアを配線する第2配線回路を有し、第1配線回路および第2配線回路が対称配置されていることを特徴とするレクテナ装置。
【請求項2】
前記第1配線回路と第2配線回路の配線長が概ね同一であることを特徴とする請求項1記載のレクテナ装置。
【請求項3】
前記一対の出力端子は第1出力端子と第2出力端子とからなり、前記第1出力端子と第2出力端子との間に平滑キャパシタを有していることを特徴とする請求項1記載のレクテナ装置。
【請求項4】
前記一対の接続部に、直流カットキャパシタを有していることを特徴とする請求項3記載のレクテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレクテナ装置に関し、特にその整流回路に係る。
【背景技術】
【0002】
レクテナはアンテナと整流器の複合デバイスであり、高周波からなる受電電力を直流電力に変換するのに用いられる。
例えば図10(a)に、ブリッジダイオード形レクテナ装置の基本構成例を示す。
アンテナと、整合回路及びDCブロックを介して、ブリッジダイオード等の整流器と接続することで整流効率の向上を図っている。
また、ダイオードから発生する高調波を反射し、ダイオードに戻す高調波反射回路が接続されている。
本出願に係る発明者らは、これまでに5.8GH帯5Wの高効率レクテナを構成するために図10(b),(c)に示すように、表面にブリッジダイオードと平滑用コンデンサを集積化した整流器ICとアンテナの高調波処理給電部(HRF:Harmonic reaction feeder)を配置し、裏面に先端短絡スタブを接続した高インピーダンス ダイポールアンテナを配置したレクテナを提案している(非特許文献1)。
【0003】
無線電力伝送では、空間伝搬の損失が大きい。
高周波にするほど、波長に対するアンテナ開口面積が相対的に大きくなり高利得が得られるため、近年は20GH以上の周波数領域が注目されている。
例えば、図11に周波数に対する空間伝搬効率(a)及び整流回路の効率変化(b)のグラフを示す。
図11(b)に示すように高周波領域では、整流器の効率低下が問題になる。
上記、非特許文献1にて採用した整流回路図を模式的に示した図2にて説明すると、第1ダイオードペアと各端子の間を配線する第1配線回路と、第2ダイオードペアと各端子の間を配線する第2配線回路は、それぞれが対称となる形状に配置されていないために、非対称性に起因する寄生インダクタンスが生じる。
これが整流効率の低下の原因となっていた。
特に10GHを超える高周波では、この寄生インダクタンスのため、直流出力端子が理想的な中点とならず平滑キャパシタで十分に平滑にされない問題が生じる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】小松 郁弥,桔川 洸一,麦谷 彰彦,坂井 尚貴,伊東 健治,「放熱機能を有するアンテナを用いる5.8GHz帯5Wレクテナ」,信学技報MW2021-117,P.36-41,2022年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高周波領域における整流効率の低下を防ぐのに効果的なレクテナ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るレクテナ装置は、アンテナ回路と整流回路とを有するレクテナであって、前記整流回路は、前記アンテナ回路側との一対の接続部と一対の出力端子とを有し、前記一対の接続部と一対の出力端子との間に、第1ダイオードペアと前記第1ダイオードペアを配線する第1配線回路と第2ダイオードペアと前記第2ダイオードペアを配線する第2配線回路を有し、第1配線回路および第2配線回路が対称配置されていることを特徴とする。
ここで、例えば図1にて説明すると、第1配線回路は第1ダイオードペア(ダイオードA、ダイオードA)と端子間の配線、第2配線回路とは第2ダイオードペア(ダイオードB、ダイオードB)と端子間の配線である。
なお、本発明にてダイオードペアとは広義のペアを意味し、例えば図10(c)に示すように3直列ダイオードがペアになっているもの等、複数のダイオードがペアになっているものも含まれる。
より具体的に説明すると、整流器には高周波電力を受電するアンテナ側と接続された第1接続部(RF IN)11Aと、第2接続部(RF IN)11Bとを有し、整流器にて直流電力に変換され、出力される第1出力端子12Aと第2出力端子12Bとが形成されている。
電流の導通路としては、第1接続部11Aの電位の方が高い場合に、ダイオードAを経由して第1出力端子12Aに流れる。
戻りの電流は、ダイオードBを経由して第2接続部11Bとなる。
また、第2接続部11Bの電位の方が高い場合には、電流の導通路としてはダイオードBを経由して第1出力端子12Aに流れ、戻りの電流はダイオードAを経由して第1接続部11Aとなる。
従って、第1接続部11Aから見ると、整流器(RF)にダイオードAを経由して入力され、ダイオードAを経由して戻り回路が形成され、第2接続部11Bから見ると、整流器(RF)にダイオードBを経由して入力され、ダイオードBを経由して戻りの回路が形成される。
そこで、第1配線回路Aは、整流回路に設けられたアンテナ側との第1接続部11Aからの導通の入力回路及び戻りの回路をいい、第2配線回路Bは同第2接続部11Bからの導通の入力回路及び戻りの回路をいう。
また、対称配置とは、第1及び第2配線回路に寄生インダクタンスが発生するのを抑えることができる程度に、バランスがとれていることをいう。
【0007】
ここで、第1配線回路と第2配線回路が対称配置されることで、前記第1配線回路と第2配線回路の配線長が概ね同一であるのが好ましい。
【0008】
本発明においては、前記一対の出力端子は第1出力端子と第2出力端子とからなり、前記第1出力端子と第2出力端子との間に平滑キャパシタを有するのが好ましく、さらには前記一対の接続部に、直流カットキャパシタを有していてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、アンテナ回路と整流回路を有するレクテナ装置において、整流回路を構成する第1配線回路と第2配線回路とを対称形になるように配置したので、10GHを超えるような高周波に対しても整流効率が低下するのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る実施例1の整流回路の例を示す。(a)は配線例、(b)は配線AとBの重なり部分の断面図、(c)は回路図を示す。
図2】非特許文献1に記載されている配線例(従来例)を示す。
図3】電流効率の比較を示す。
図4】実施例2を示す。
図5】実施例2の配線例を示す。
図6】実施例3を示し、(a)は配線例、(b)は回路図を示す。
図7】実施例3の変形例を示す。
図8】実施例4を示し、(a)は配線例、(b)は回路図を示す。
図9】実施例5を示し、(a)は配線例、(b)は回路図を示す。
図10】レクテナの構成例を示す。
図11】周波数に対する空間伝搬効率変化、及び整流回路の効率変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るレクテナ装置は、図10(b)に示したアンテナや、図4に示したダイポールアンテナ等、いろいろなアンテナ回路に接続でき、本発明は整流回路の構成に特徴があることから、以下、図に基づいて整流回路を中心に説明する。
【0012】
図1(c)に本発明に係る整流器の回路図を示し、図1(a),(b)にその例として具体的な配線例を示す。
アンテナ側に接続する一対の第1接続部(接続端子)11Aと第2接続部(接続端子)11Bと、直流電力を出力する一対の第1出力端子12Aと第2出力端子12Bとを有する。
【0013】
第1接続部11Aは、配線A,ダイオードA及び配線Aの配線経路を介して、第1出力端子12Aに接続されている。
また、配線B,ダイオードA及び配線Aの配線経路とからなる戻りの回路を形成している。
第2接続部11Bは、配線B,ダイオードB及び配線Aの配線経路と配線B,ダイオードB及び配線Bの配線経路とからなる戻りの回路が形成されている。
また、配線Aと配線Bとの間には図1(b)に示すように誘電体層13を配置することで平滑キャパシタの機能を有する。
図1に示した中央の第1の一点鎖線の左側が第1配線回路A、右側が第2配線回路Bとなる。
【0014】
本発明は、図1(c)に示したように、第1配線回路Aと第2配線回路Bのそれぞれが第2の一点鎖線に対し上下対称であることが特徴であり、第1配線回路Aと第2配線回路Bとが左右対称になるように配置されている、図1(a)、(b)に示した配線例にて、本発明は限定されない。
例えば、配線A,Bは線状の配線パターンであってもよく、配線A,Bも線状の配線パターンにし、その間に平滑キャパシタを接続してもよい。
【0015】
図3に周波数28GH帯を用いて、計算にて整流効率を求めたグラフを示す。
グラフ中、本発明の配線は図1の例であり、従来の配線は図2の例である。
配線考慮せずとは、配線の影響を無視して計算したものである。
この比較のグラフから、従来の配線構造では約5%程度、整流効率が低下するのに対して本発明に係る配線構造を用いると、理想状態に近い効率が得られている。
【0016】
図4は実施例2として平衡型アンテナに接続する倍電圧整流回路例を示し、図5に具体的な配線例を示す。
本実施例は、折り返し型のダイポールアンテナに接続した倍電圧整流回路の例である。
この場合にも、第1配線回路Aと第2配線回路Bのそれぞれが第2の一点鎖線に対し上下対称であることが特徴であり、また第1配線回路Aと第2配線回路Bとは左右対称形に配置されている。
例として、配線例を図5(a)に示し、誘電体層13の配置構造を図5(b)に示す。
配線Cの上に、それぞれ誘電体層13を介して配線AとBとを積層配置し、平滑キャパシタとして機能する。
【0017】
図6は、ヴィアホールDを用いた接地型倍電圧整流回路の例を示す。
マイクロストリップアンテナやモノポールアンテナのように地導体と放射素子とからなり、地導体を整流回路と共有し、放射素子を整流回路の入力端子である第1接続部11Aに接続する場合である。
この場合は、配線Aに対して、配線Aと配線Bの間に誘電体層13を設けるとともに、配線が均等になるように配置されている。
第2の一点鎖線に対し上下対称となっており、寄生リアクタンスは接続されないため、他の実施例と同様の効果を奏する。
また、配線A,A,Bは、線状の配線パターン等であってもよい。
また、図7のようにヴィアホールD,Dの2つを設けた配線であってもよい。
図8及び図9は、それぞれ図1図5の実施例1,2に対して、DCカット機能を追加した実施例4,5である。
配線Aと第1接続部11Aを接続した配線Aとの間に、誘電体層13を有し、同様に配線Bと第2接続部11Bに接続した配線Bとの間に、誘電体層13を設けてある。
この場合も配線は、上下対象、左右均等(対称形)になるように配置してある。
【符号の説明】
【0018】
A 第1配線回路
B 第2配線回路
11A 第1接続部
11B 第2接続部
12A 第1出力端子
12B 第2出力端子
13 誘電体層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11