(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060956
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/49 20070101AFI20240425BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20240425BHJP
H02M 7/487 20070101ALI20240425BHJP
【FI】
H02M7/49
H02M7/48 F
H02M7/487
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168561
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】慶本 裕史
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA02
5H770AA15
5H770BA01
5H770DA01
5H770DA12
5H770DA24
5H770DA33
5H770DA41
5H770EA01
5H770HA02Y
5H770HA02Z
5H770HA03W
5H770HA07Z
(57)【要約】
【課題】所定電圧未満の交流電力を出力する場合にも、複数のスイッチング素子のスイッチングの偏り、及び中性点電位の変動を抑制できる変圧器直列多重構成の電力変換装置を提供する。
【解決手段】変圧器直列多重構成の電力変換装置において、複数の3レベル変換器の動作を制御する制御装置は、損失分散制御において、複数の3レベル変換器を第1グループ及び第2グループの2つのグループに分け、第1グループの上期間の時に、第2グループを下期間に設定し、第1グループの下期間の時に、第2グループを上期間に設定し、所定の大きさの電圧を第1グループの3レベル変換器から出力させ、第1グループの3レベル変換器と反対の極性の所定の大きさの電圧を第2グループの3レベル変換器から出力させることにより、交流回路に出力される電圧が、意図した出力電圧となるようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流回路の高電位側に接続される直流正母線と、
直流回路の低電位側に接続される直流負母線と、
前記直流正母線と前記直流負母線との間に直列に接続される一対の電荷蓄積素子と、
前記一対の電荷蓄積素子の接続点に接続される直流中性点母線と、
3つの直流接続点と、一対の交流接続点と、を有し、前記3つの直流接続点を介して前記直流正母線、前記直流負母線、及び前記直流中性点母線に対して並列に接続される複数の3レベル変換器と、
前記複数の3レベル変換器のそれぞれの前記一対の交流接続点と接続される複数の一次巻線と、前記複数の一次巻線と磁気的に結合するとともに直列に接続された複数の二次巻線と、を有し、直列に接続された前記複数の二次巻線の両端を介して交流回路と接続される変圧器と、
前記複数の3レベル変換器のそれぞれの動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記複数の3レベル変換器は、第1レグ及び第2レグの2つのレグを有するフルブリッジ回路であり、複数のスイッチング素子を有し、前記複数のスイッチング素子のスイッチングにより、直流電力から交流電力への変換を行い、
前記制御装置は、上側キャリア、下側キャリア、第1電圧指令値、及び第2電圧指令値の4つの信号を基に、前記複数のスイッチング素子のスイッチングを制御することにより、前記複数の3レベル変換器のそれぞれの電力の変換を制御し、
前記上側キャリアは、最小値が0以上に設定され、前記複数の3レベル変換器から出力される交流電圧の周波数よりも高い周波数を有する三角波状の信号であり、
前記下側キャリアは、最大値が0以下に設定され、前記複数の3レベル変換器から出力される交流電圧の周波数よりも高い周波数を有する三角波状の信号であり、
前記第1電圧指令値は、前記第1レグ用の電圧指令値であり、
前記第2電圧指令値は、前記第2レグ用の電圧指令値であり、
前記制御装置は、所定電圧未満の交流電力を前記交流回路に出力する場合に、
前記第2電圧指令値が0よりも大きくなる上期間及び0よりも小さくなる下期間を、前記第1電圧指令値が0よりも大きくなる前記上期間及び0よりも小さくなる前記下期間と一致させる損失分散制御を行うとともに、
前記損失分散制御において、前記複数の3レベル変換器を第1グループ及び第2グループの2つのグループに分け、
前記第1グループの3レベル変換器の前記第1電圧指令値及び前記第2電圧指令値の前記上期間の時に、前記第2グループの3レベル変換器の前記第1電圧指令値及び前記第2電圧指令値を前記下期間に設定し、
前記第1グループの3レベル変換器の前記第1電圧指令値及び前記第2電圧指令値の前記下期間の時に、前記第2グループの3レベル変換器の前記第1電圧指令値及び前記第2電圧指令値を前記上期間に設定し、
前記第1グループの3レベル変換器の前記第1電圧指令値及び前記第2電圧指令値のそれぞれの大きさを調整することにより、所定の大きさの電圧を前記第1グループの3レベル変換器から出力させ、
前記第2グループの3レベル変換器の前記第1電圧指令値及び前記第2電圧指令値のそれぞれの大きさを調整することにより、前記第1グループの3レベル変換器と反対の極性の所定の大きさの電圧を前記第2グループの3レベル変換器から出力させることで、
前記交流回路に出力される電圧が、意図した出力電圧となるようにする電力変換装置。
【請求項2】
前記複数の3レベル変換器は、前記損失分散制御において、前記第1グループの3レベル変換器が前記上期間で前記第2グループの3レベル変換器が前記下期間の状態、前記第1グループの3レベル変換器が前記下期間で前記第2グループの3レベル変換器が前記上期間の状態、前記第1グループの3レベル変換器及び前記第2グループの3レベル変換器のそれぞれが前記上期間の状態、及び前記第1グループの3レベル変換器及び前記第2グループの3レベル変換器のそれぞれが前記下期間の状態の4つの状態を有し、
前記第1グループの3レベル変換器及び前記第2グループの3レベル変換器で前記上期間及び前記下期間が揃った期間は、前記上期間及び前記下期間が異なる期間よりも短い請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第1グループの3レベル変換器及び前記第2グループの3レベル変換器で前記上期間及び前記下期間が揃った期間は、前記上側キャリア及び前記下側キャリアの四分の一周期に設定される請求項2記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の3レベル変換器と変圧器とを用いた変圧器直列多重構成の電力変換装置が知られている。複数の3レベル変換器は、直流正母線、直流負母線、及び直流中性点母線に対して並列に接続される。複数の3レベル変換器は、複数のスイッチング素子を有し、複数のスイッチング素子のスイッチングにより、直流電力から交流電力への変換を行う。
【0003】
変圧器は、複数の3レベル変換器のそれぞれの交流側に接続される複数の一次巻線と、複数の一次巻線と磁気的に結合した複数の二次巻線と、を有する。複数の二次巻線は、直列に接続される。変圧器は、直列に接続された複数の二次巻線の両端を介して交流回路に接続される。これにより、複数の二次巻線の電圧を合計した電圧の交流電力を交流回路に供給することができる。
【0004】
こうした変圧器直列多重構成の電力変換装置では、変圧器の一次巻線電圧を合計した電圧を複数の3レベル変換器で分担することができ、複数の3レベル変換器に用いられる用品の耐圧を低くすることなどができる。
【0005】
一方で、変圧器直列多重構成の電力変換装置では、所定電圧未満の交流電力を出力する場合に、複数の3レベル変換器の複数のスイッチング素子のスイッチングに偏りが生じ、所定のスイッチング素子のスイッチング損失が増大してしまう可能性がある。また、素子の特性のばらつき等により、直流中性点母線の中性点電位が変動し、複数の3レベル変換器の動作が不安定になってしまう可能性があるが、所定のスイッチング素子のスイッチング損失増大を防ぐ動作と、中性点電位の変動を抑制することの双方を同時に両立した事例は無かった。
【0006】
このため、変圧器直列多重構成の3レベル変換器を用いた電力変換装置では、所定電圧未満の交流電力を出力する場合にも、複数のスイッチング素子のスイッチングの偏り、及び中性点電位の変動を抑制できるようにすることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の実施形態は、所定電圧未満の交流電力を出力する場合にも、複数のスイッチング素子のスイッチングの偏り、及び中性点電位の変動を抑制できる変圧器直列多重構成の電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態によれば、直流回路の高電位側に接続される直流正母線と、直流回路の低電位側に接続される直流負母線と、前記直流正母線と前記直流負母線との間に直列に接続される一対の電荷蓄積素子と、前記一対の電荷蓄積素子の接続点に接続される直流中性点母線と、3つの直流接続点と、一対の交流接続点と、を有し、前記3つの直流接続点を介して前記直流正母線、前記直流負母線、及び前記直流中性点母線に対して並列に接続される複数の3レベル変換器と、前記複数の3レベル変換器のそれぞれの前記一対の交流接続点と接続される複数の一次巻線と、前記複数の一次巻線と磁気的に結合するとともに直列に接続された複数の二次巻線と、を有し、直列に接続された前記複数の二次巻線の両端を介して交流回路と接続される変圧器と、前記複数の3レベル変換器のそれぞれの動作を制御する制御装置と、を備え、前記複数の3レベル変換器は、第1レグ及び第2レグの2つのレグを有するフルブリッジ回路であり、複数のスイッチング素子を有し、前記複数のスイッチング素子のスイッチングにより、直流電力から交流電力への変換を行い、前記制御装置は、上側キャリア、下側キャリア、第1電圧指令値、及び第2電圧指令値の4つの信号を基に、前記複数のスイッチング素子のスイッチングを制御することにより、前記複数の3レベル変換器のそれぞれの電力の変換を制御し、前記上側キャリアは、最小値が0以上に設定され、前記複数の3レベル変換器から出力される交流電圧の周波数よりも高い周波数を有する三角波状の信号であり、前記下側キャリアは、最大値が0以下に設定され、前記複数の3レベル変換器から出力される交流電圧の周波数よりも高い周波数を有する三角波状の信号であり、前記第1電圧指令値は、前記第1レグ用の電圧指令値であり、前記第2電圧指令値は、前記第2レグ用の電圧指令値であり、前記制御装置は、所定電圧未満の交流電力を前記交流回路に出力する場合に、前記第2電圧指令値が0よりも大きくなる上期間及び0よりも小さくなる下期間を、前記第1電圧指令値が0よりも大きくなる前記上期間及び0よりも小さくなる前記下期間と一致させる損失分散制御を行うとともに、前記損失分散制御において、前記複数の3レベル変換器を第1グループ及び第2グループの2つのグループに分け、前記第1グループの3レベル変換器の前記第1電圧指令値及び前記第2電圧指令値の前記上期間の時に、前記第2グループの3レベル変換器の前記第1電圧指令値及び前記第2電圧指令値を前記下期間に設定し、前記第1グループの3レベル変換器の前記第1電圧指令値及び前記第2電圧指令値の前記下期間の時に、前記第2グループの3レベル変換器の前記第1電圧指令値及び前記第2電圧指令値を前記上期間に設定し、前記第1グループの3レベル変換器の前記第1電圧指令値及び前記第2電圧指令値のそれぞれの大きさを調整することにより、所定の大きさの電圧を前記第1グループの3レベル変換器から出力させ、前記第2グループの3レベル変換器の前記第1電圧指令値及び前記第2電圧指令値のそれぞれの大きさを調整することにより、前記第1グループの3レベル変換器と反対の極性の所定の大きさの電圧を前記第2グループの3レベル変換器から出力させることで、前記交流回路に出力される電圧が、意図した出力電圧となるようにする電力変換装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、所定電圧未満の交流電力を出力する場合にも、複数のスイッチング素子のスイッチングの偏り、及び中性点電位の変動を抑制できる変圧器直列多重構成の電力変換装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る電力変換装置を模式的に表す回路図である。
【
図2】実施形態に係る3レベル変換器を模式的に表す回路図である。
【
図3】実施形態に係る電力変換装置の動作の一例を模式的に表す波形図である。
【
図4】
図4(a)及び
図4(b)は、電力変換装置の参考の動作の一例を模式的に表す波形図である。
【
図5】実施形態に係る制御装置の一例を模式的に表すブロック図である。
【
図6】極性演算に用いられる表の一例を模式的に表す説明図である。
【0012】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0013】
図1は、実施形態に係る電力変換装置を模式的に表す回路図である。
図1に表したように、電力変換装置10は、直流正母線12aと、直流負母線12bと、直流中性点母線12cと、一対の電荷蓄積素子14、16と、複数の3レベル変換器18と、変圧器20と、制御装置22と、を備える。
【0014】
直流正母線12a及び直流負母線12bは、図示を省略した直流回路と接続される。より詳しくは、直流正母線12aは、直流回路の高電位側の端子と接続され、直流負母線12bは、直流回路の低電位側の端子と接続される。
【0015】
一対の電荷蓄積素子14、16は、直流正母線12aと直流負母線12bとの間に直列に接続される。一対の電荷蓄積素子14、16は、直流正母線12aと直流負母線12bとの間の電圧を平滑化する。一対の電荷蓄積素子14、16は、換言すれば、平滑コンデンサである。
【0016】
直流中性点母線12cは、一対の電荷蓄積素子14、16の接続点に接続される。換言すれば、電荷蓄積素子14は、直流正母線12aと直流中性点母線12cとの間に設けられ、電荷蓄積素子16は、直流中性点母線12cと直流負母線12bとの間に設けられる。
【0017】
電荷蓄積素子16の静電容量の大きさは、電荷蓄積素子14の静電容量の大きさと実質的に同じである。これにより、直流中性点母線12cの電位は、直流正母線12aの電位と直流負母線12bの電位との半分の電位に設定される。一対の電荷蓄積素子14、16の接続点は、換言すれば、中性点である。
【0018】
複数の3レベル変換器18は、3つの直流接続点d1~d3と、一対の交流接続点a1、a2と、を有する。複数の3レベル変換器18のそれぞれは、3つの直流接続点d1~d3を介して直流正母線12a、直流負母線12b、及び直流中性点母線12cのそれぞれと接続される。直流接続点d1は、直流正母線12aと接続され、直流接続点d2は、直流負母線12bと接続され、直流接続点d3は、直流中性点母線12cと接続される。直流接続点d1は、換言すれば、正電位端子であり、直流接続点d2は、換言すれば、負電位端子であり、直流接続点d3は、換言すれば、中性点端子である。
【0019】
複数の3レベル変換器18は、換言すれば、直流正母線12a、直流負母線12b、及び直流中性点母線12cに対して並列に接続される。これにより、電力変換装置10では、直流回路を流れる電力を複数の3レベル変換器18で分担することができる。例えば、複数の3レベル変換器18に用いられる用品の定格電流を低くすることができる。
【0020】
変圧器20は、複数の一次巻線20aと、複数の二次巻線20bと、を有する。複数の一次巻線20aのそれぞれは、複数の3レベル変換器18のそれぞれの一対の交流接続点a1、a2と接続される。従って、複数の一次巻線20aの数は、複数の3レベル変換器18の数と同じである。一次巻線20aの一端は、3レベル変換器18の一方の交流接続点a1と接続され、一次巻線20aの他端は、3レベル変換器18の他方の交流接続点a2と接続される。
【0021】
複数の二次巻線20bは、複数の一次巻線20aと磁気的に結合する。複数の二次巻線20bの数は、複数の一次巻線20aの数と同じである。但し、複数の二次巻線20bの数は、複数の一次巻線20aの数と必ずしも同じでなくてもよい。例えば、1つの二次巻線20bが、複数の一次巻線20aと磁気的に結合する構成などとしてもよい。
【0022】
複数の二次巻線20bは、それぞれ直列に接続されている。直列に接続された複数の二次巻線20bの一端は、交流回路の一方の端子と接続される。直列に接続された複数の二次巻線20bの他端は、交流回路の他方の端子と接続される。このように、電力変換装置10は、変圧器20の複数の二次巻線20bを介して図示を省略した交流回路と接続される。
【0023】
直流回路は、例えば、直流電源である。交流回路は、例えば、交流負荷である。複数の3レベル変換器18は、直流回路から供給された直流電力を交流電力に変換し、変換後の交流電力を変圧器20の一次巻線20aに出力する。変圧器20は、複数の3レベル変換器18から出力された交流電力(電圧)を複数の二次巻線20bによって直列合成する。直列に接続された複数の二次巻線20bの両端の電圧(交流回路に入力される電圧)は、複数の二次巻線20bのそれぞれから出力される電圧の合計の電圧である。変圧器20は、合成後の交流電力を交流回路に供給する。
【0024】
このように、電力変換装置10は、例えば、直流回路から供給された直流電力を交流回路に応じた交流電力に変換し、変換後の交流電力を交流回路に供給する。電力変換装置10は、例えば、複数の3レベル変換器18及び変圧器20を用いた変圧器直列多重構成の電力変換装置である。
【0025】
複数の3レベル変換器18は、直流回路から供給された直流電力を単相交流電力に変換する。電力変換装置10は、例えば、複数の3レベル変換器18から出力された交流電力を複数の二次巻線20bによって直列合成することにより、単相交流電力を交流回路に供給する。交流回路の交流電力は、例えば、単相交流電力である。但し、交流回路の交流電力は、三相交流電力などでもよい。電力変換装置10は、例えば、複数の3レベル変換器18の直列接続体を3つ設け、3つの直列接続体によって三相交流電力を交流回路に供給する構成としてもよい。
【0026】
電力変換装置10は、例えば、非同期交流系統や異周波交流系統の電力授受に用いられるBTB(Back to Back)システムなどに適用される。交流回路は、例えば、電力系統などでもよい。直流回路は、例えば、別の電力系統から供給された交流電力を直流電力に変換する別の電力変換装置などでもよい。電力変換装置10は、例えば、交流回路から供給された交流電力を直流電力に変換して直流回路に供給する機能をさらに有してもよい。
【0027】
制御装置22は、複数の3レベル変換器18のそれぞれの動作を制御する。換言すれば、制御装置22は、複数の3レベル変換器18のそれぞれによる電力の変換を制御する。
【0028】
図2は、実施形態に係る3レベル変換器を模式的に表す回路図である。
図2に表したように、各3レベル変換器18は、複数のスイッチング素子41と、複数の整流素子42、43と、を有する。この例において、3レベル変換器18は、8個のスイッチング素子41と、8個の整流素子42と、4個の整流素子43と、を有する。各スイッチング素子41は、フルブリッジ接続されている。各整流素子42は、各スイッチング素子41に逆並列に接続されている。
【0029】
スイッチング素子41は、一対の主端子と、制御端子と、を有する。制御端子は、各主端子間に電流が流れるオン状態と、各主端子間に実質的に電流が流れないオフ状態と、の切り替えに用いられる。スイッチング素子41には、例えば、GTO(Gate Turn Off thyristor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの自己消弧素子が用いられる。制御端子は、例えば、ゲート端子である。
【0030】
3レベル変換器18は、第1レグLG1及び第2レグLG2の2つのレグを有するフルブリッジ回路である。第1レグLG1は、第1アームAM1と第2アームAM2とを有する。第2レグLG2は、第3アームAM3と第4アームAM4とを有する。換言すれば、3レベル変換器18は、4つのアームを有する。第1アームAM1及び第3アームAM3は、正側のアームであり、第2アームAM2及び第4アームAM4は、負側のアームである。
【0031】
正側の第1アームAM1は、直列に接続された2つのスイッチング素子41と、2つのスイッチング素子41のそれぞれに逆並列に接続された2つの整流素子42と、2つのスイッチング素子41の直列接続点と直流接続点d3(中性点端子)との間に接続された整流素子43と、を有する。
【0032】
負側の第2アームAM2は、直列に接続された2つのスイッチング素子41と、2つのスイッチング素子41のそれぞれに逆並列に接続された2つの整流素子42と、2つのスイッチング素子41の直列接続点と直流接続点d3(中性点端子)との間に接続された整流素子43と、を有する。
【0033】
両アームAM1、AM2は、直流接続点d1(正電位端子)と直流接続点d2(負電位端子)との間に直列に接続され、両アームAM1、AM2の直列接続点が、交流接続点a1となる。第1アームAM1の2つのスイッチング素子41の直列接続点の電位は、整流素子43を介して中性点電位にクランプされる。同様に、第2アームAM2の2つのスイッチング素子41の直列接続点の電位は、整流素子43を介して中性点電位にクランプされる。整流素子42は、いわゆる還流ダイオードである。整流素子43は、いわゆるクランプダイオードである。
【0034】
第3アームAM3の構成は、第1アームAM1の構成と実質的に同じである。第4アームAM4の構成は、第2アームAM2の構成と実質的に同じである。第3アームAM3と第4アームAM4との直列接続点が、交流接続点a2となる。
【0035】
3レベル変換器18では、各スイッチング素子41のスイッチングに応じて、交流接続点a1、a2のそれぞれの電位が、直流接続点d1(正電位端子)、直流接続点d2(負電位端子)、及び直流接続点d3(中性点端子)の3レベルのいずれかに接続される。交流接続点a1、a2間の電圧は、直流正母線12aと直流負母線12bとの間の電圧をVdとする時、+Vd、+Vd/2、0、-Vd/2、-Vdの5レベルとなる。
【0036】
複数の3レベル変換器18は、複数のスイッチング素子41のスイッチングにより、直流電力から交流電力への変換を行う。複数の3レベル変換器18は、複数のスイッチング素子41のスイッチングにより、交流電力から直流電力への変換を行うこともできる。3レベル変換器18は、いわゆる中性点クランプ(NPC:Neutral-Point-Clamped)型の変換器(コンバータ)である。
【0037】
以下では、第1レグLG1に含まれる4つのスイッチング素子41を個別に識別する場合に、直流接続点d1側から順に、スイッチング素子S11、S12、S13、S14と称す。また、第2レグLG2に含まれる4つのスイッチング素子41を個別に識別する場合に、直流接続点d1側から順に、スイッチング素子S21、S22、S23、S24と称す。
【0038】
図3は、実施形態に係る電力変換装置の動作の一例を模式的に表す波形図である。
図3に表したように、制御装置22は、上側キャリアCW1、下側キャリアCW2、第1電圧指令値VR1、及び第2電圧指令値VR2の4つの信号を基に、各3レベル変換器18の複数のスイッチング素子41のスイッチングを制御することにより、各3レベル変換器18のそれぞれの電力の変換を制御する。
【0039】
制御装置22は、上側キャリアCW1、下側キャリアCW2、第1電圧指令値VR1、及び第2電圧指令値VR2の4つの信号を基に、スイッチング素子S11のスイッチングを制御するための制御信号GS11、スイッチング素子S12のスイッチングを制御するための制御信号GS12、スイッチング素子S13のスイッチングを制御するための制御信号GS13、スイッチング素子S14のスイッチングを制御するための制御信号GS14、スイッチング素子S21のスイッチングを制御するための制御信号GS21、スイッチング素子S22のスイッチングを制御するための制御信号GS22、スイッチング素子S23のスイッチングを制御するための制御信号GS23、及びスイッチング素子S24のスイッチングを制御するための制御信号GS24を生成する。制御装置22は、各3レベル変換器18のそれぞれに対応する複数の制御信号を生成し、生成した各制御信号を対応する3レベル変換器18に入力することにより、各3レベル変換器18の動作を制御する。
【0040】
上側キャリアCW1及び下側キャリアCW2は、例えば、三角波信号である。直流正母線12aと直流負母線12bとの間の直流電圧をVdとする時、上側キャリアCW1の最大値は、+Vdであり、最小値は、0である。そして、下側キャリアCW2の最大値は、0であり、最小値は、-Vdである。下側キャリアCW2の周波数及び位相は、上側キャリアCW1の周波数及び位相と同じである。上側キャリアCW1及び下側キャリアCW2の周波数は、出力する交流電圧の周波数よりも高い。上側キャリアCW1及び下側キャリアCW2の周波数は、例えば、出力する交流電圧の周波数の整数倍に設定される。上側キャリアCW1及び下側キャリアCW2は、例えば、出力する交流電圧と同期した信号である。
【0041】
上側キャリアCW1及び下側キャリアCW2は、換言すれば、搬送波である。上側キャリアCW1及び下側キャリアCW2は、例えば、のこぎり波信号などでもよい。上側キャリアCW1は、最小値が0以上に設定され、各3レベル変換器18から出力される交流電圧の周波数よりも高い周波数を有する任意の三角波状の信号でよい。下側キャリアCW2は、最大値が0以下に設定され、各3レベル変換器18から出力される交流電圧の周波数よりも高い周波数を有する任意の三角波状の信号でよい。
【0042】
第1電圧指令値VR1は、第1レグLG1用の電圧指令値である。制御装置22は、第1電圧指令値VR1が、上側キャリアCW1よりも大きい時に、スイッチング素子S11をオン状態とし、第1電圧指令値VR1が、上側キャリアCW1よりも小さい時に、スイッチング素子S11をオフ状態とする制御信号GS11を生成する。なお、
図3では、スイッチング素子41のオン状態をHi(電圧の高い状態)、スイッチング素子41のオフ状態をLo(電圧の低い状態)とする各制御信号の一例を示している。
【0043】
制御装置22は、第1電圧指令値VR1が、下側キャリアCW2よりも大きい時に、スイッチング素子S12をオン状態とし、第1電圧指令値VR1が、下側キャリアCW2よりも小さい時に、スイッチング素子S12をオフ状態とする制御信号GS12を生成する。
【0044】
また、制御装置22は、制御信号GS11のHi、Loを反転させて制御信号GS13を生成し、制御信号GS12のHi、Loを反転させて制御信号GS14を生成する。
【0045】
第2電圧指令値VR2は、第2レグLG2用の電圧指令値である。制御装置22は、第1レグLG1の場合と同様に、第2電圧指令値VR2と上側キャリアCW1との比較、及び第2電圧指令値VR2と下側キャリアCW2との比較により、第2レグLG2の各スイッチング素子41の制御信号GS21、GS22、GS23、GS24を生成する。
【0046】
図4(a)及び
図4(b)は、電力変換装置の参考の動作の一例を模式的に表す波形図である。
図4(a)は、電力変換装置10から交流回路に対して所定電圧以上の交流電力を出力する場合の動作の一例を模式的に表す波形図である。
図4(a)に表したように、交流回路に対して所定電圧以上の交流電力を出力する場合には、制御装置22は、出力する交流電力に応じた正弦波状の第1電圧指令値VR1及び第2電圧指令値VR2を用いる。第1電圧指令値VR1及び第2電圧指令値VR2の最大値は、+Vdであり、最小値は、-Vdである。また、第2電圧指令値VR2の位相は、第1電圧指令値VR1の位相に対して180°ずらして設定される。
【0047】
このとき、第1電圧指令値VR1と第2電圧指令値VR2に同じ値を加算し、中性点端子が交流接続点に接続される時間比率を制御する。これにより、電荷蓄積素子14の電圧(直流正母線12aと直流中性点母線12cとの間の電圧)と、電荷蓄積素子16の電圧(直流中性点母線12cと直流負母線12bとの間の電圧)と、に偏りが生じてしまうことを抑制することができる。換言すれば、中性点電位が変動してしまうことを抑制することができる。
【0048】
3レベル変換器18の交流接続点a1、a2間の出力電圧は、第1電圧指令値VR1と第2電圧指令値VR2との差分に応じた電圧となる。従って、3レベル変換器18から低い電圧を出力する場合には、第1電圧指令値VR1及び第2電圧指令値VR2のそれぞれの振幅を小さくし、0に近づけることとなる。
【0049】
しかしながら、第1電圧指令値VR1及び第2電圧指令値VR2のそれぞれの振幅を0に近付けるように設定すると、複数のスイッチング素子41のスイッチングに偏りが生じ、所定のスイッチング素子41のスイッチング損失が増大してしまう可能性がある。換言すれば、所定のスイッチング素子41に対する負荷が増大し、所定のスイッチング素子41の劣化を早めてしまう可能性がある。
【0050】
このため、電力変換装置10から交流回路に対して所定電圧未満の交流電力を出力する場合に、
図4(b)に表した損失分散制御を行うことが提案されている。
図4(b)に表したように、損失分散制御では、第1電圧指令値VR1と第2電圧指令値VR2との差分を出力電圧に応じて小さく設定しつつ、第2電圧指令値VR2が0よりも大きくなる期間及び0よりも小さくなる期間を、第1電圧指令値VR1が0よりも大きくなる期間及び0よりも小さくなる期間と一致させる。なお、
図4(b)では、第2電圧指令値VR2の大きさが、第1電圧指令値VR1の大きさとほぼ等しくなり、第2電圧指令値VR2が、第1電圧指令値VR1と実質的に重なった状態を図示している。
【0051】
以下では、第1電圧指令値VR1及び第2電圧指令値VR2が0よりも大きくなる期間を上期間、第1電圧指令値VR1及び第2電圧指令値VR2が0よりも小さくなる期間を下期間と称す。損失分散制御では、上期間と下期間とを所定の周期で繰り返す。上期間及び下期間の切り替えの周期は、例えば、素子の熱容量から計算される。これにより、電力変換装置10から交流回路に対して所定電圧未満の交流電力を出力する場合にも、複数のスイッチング素子41のスイッチングに偏りが生じることを抑制することができる。
【0052】
一方で、複数の3レベル変換器18のそれぞれが、実質的に同時に上期間及び下期間となるように第1電圧指令値VR1及び第2電圧指令値VR2を設定すると、第1電圧指令値VR1と第2電圧指令値VR2に同じ値を加算しても、第1レグLG1の中性点導通電流増減分を第2レグLG2の中性点導通電流増減分が打ち消しあい、中性点電位を制御することができなくなり、中性点電位が変動する可能性が生じてしまう。換言すれば、電荷蓄積素子14、16のそれぞれの電圧が変動する可能性が生じてしまう。
【0053】
このため、本実施形態に係る電力変換装置10の制御装置22は、交流接続点a1、a2から所定電圧未満の交流電力を出力する損失分散制御を行う際に、複数の3レベル変換器18を第1グループ及び第2グループの2つのグループに分ける。
【0054】
以下では、損失分散制御を行う場合において、第1グループの3レベル変換器18用の第1電圧指令値VR1を第1電圧指令値VR1a、第1グループの3レベル変換器18用の第2電圧指令値VR2を第2電圧指令値VR2a、第2グループの3レベル変換器18用の第1電圧指令値VR1を第1電圧指令値VR1b、第2グループの3レベル変換器18用の第2電圧指令値VR2を第2電圧指令値VR2bと、それぞれ称することとする。
【0055】
なお、
図3では、直流状の第1電圧指令値VR1a、第2電圧指令値VR2a、第1電圧指令値VR1b、及び第2電圧指令値VR2bを表している。第1電圧指令値VR1a、第2電圧指令値VR2a、第1電圧指令値VR1b、及び第2電圧指令値VR2bは、これに限ることなく、正弦波状に設定してもよい。
【0056】
図3に表したように、制御装置22は、第1グループの3レベル変換器18の第1電圧指令値VR1a及び第2電圧指令値VR2aの上期間の時に、第2グループの3レベル変換器18の第1電圧指令値VR1b及び第2電圧指令値VR2bを下期間に設定し、第1グループの3レベル変換器18の第1電圧指令値VR1a及び第2電圧指令値VR2aの下期間の時に、第2グループの3レベル変換器18の第1電圧指令値VR1b及び第2電圧指令値VR2bを上期間に設定する。
【0057】
また、制御装置22は、第1電圧指令値VR1a及び第2電圧指令値VR2aのそれぞれの大きさ(振幅)を調整することにより、所定の大きさの電圧を第1グループの3レベル変換器18から出力させる。そして、制御装置22は、第1電圧指令値VR1b及び第2電圧指令値VR2bのそれぞれの大きさ(振幅)を調整することにより、第1グループの3レベル変換器18と反対の極性の所定の大きさの電圧を第2グループの3レベル変換器18から出力させる。
【0058】
すなわち、制御装置22は、第1グループの3レベル変換器18から正側の電圧を出力させている時に、第2グループの3レベル変換器18から負側の電圧を出力させ、第1グループの3レベル変換器18から負側の電圧を出力させている時に、第2グループの3レベル変換器18から正側の電圧を出力させる。
【0059】
前述のように、電力変換装置10から交流回路に出力される電圧は、複数の二次巻線20bのそれぞれから出力される電圧の合計の電圧である。制御装置22は、第1グループの3レベル変換器18及び第2グループの3レベル変換器18に反対の極性の電圧を出力させることにより、電力変換装置10から交流回路に出力される電圧が、意図した出力電圧となるようにする。
【0060】
これにより、電力変換装置10から比較的小さな電圧の交流電力を出力することができる。また、第1電圧指令値VR1a、第2電圧指令値VR2a、第1電圧指令値VR1b、及び第2電圧指令値VR2bのそれぞれに上期間及び下期間を設けることにより、出力電圧を小さくした設定した際にも、複数のスイッチング素子41のスイッチングに偏りが生じることを抑制することができる。
【0061】
さらに、第1グループの3レベル変換器18と第2グループの3レベル変換器18とで上期間及び下期間が反対になるようにし、第1グループの3レベル変換器18及び第2グループの3レベル変換器18に反対の極性の電圧を出力させる。これにより、第1グループの3レベル変換器18から出力される電圧、及び第2グループの3レベル変換器18から出力される電圧のそれぞれの大きさを調整することで、中性点電位を制御することができる。
【0062】
制御装置22は、例えば、中性点電位の検出を行い、中性点電位がゼロになるように、第1電圧指令値VR1a、第2電圧指令値VR2a、第1電圧指令値VR1b、及び第2電圧指令値VR2bのそれぞれの大きさを調整する。これにより、中性点電位の変動を抑制することができる。
【0063】
制御装置22は、例えば、電荷蓄積素子14、16のそれぞれの電圧値を電圧計などから取得し、電荷蓄積素子14、16のそれぞれの電圧値の差分を演算することにより、中性点電位を検出する。なお、制御装置22は、上記に限ることなく、例えば、上位のコントローラなどから入力される中性点電位の指令値などに基づいて、中性点電位を検出してもよい。
【0064】
第2グループの3レベル変換器18の数は、例えば、第1グループの3レベル変換器18の数と同じである。換言すれば、複数の3レベル変換器18の数は、偶数である。この場合、第2グループの3レベル変換器18から出力される電圧の大きさは、第1グループの3レベル変換器18から出力される電圧の大きさと同程度に設定される。これにより、電力変換装置10から比較的小さな電圧の交流電力を出力することができる。
【0065】
但し、第2グループの3レベル変換器18の数は、必ずしも第1グループの3レベル変換器18の数と同じでなくてもよい。第2グループの3レベル変換器18から出力される電圧の合計の大きさが、第1グループの3レベル変換器18から出力される電圧の合計の大きさと同程度となるように、複数の3レベル変換器18の出力が制御されていればよく、第2グループの3レベル変換器18の数は、第1グループの3レベル変換器18の数と異なってもよい。
【0066】
図3に表したように、制御装置22は、例えば、損失分散オフセット値OFVと、中性点電位制御量CA1a、CA2a、CA1b、CA2bと、を基に、損失分散制御用の第1電圧指令値VR1a、第2電圧指令値VR2a、第1電圧指令値VR1b、及び第2電圧指令値VR2bを生成する。
【0067】
損失分散オフセット値OFVは、例えば、複数のスイッチング素子41のスイッチングの偏りを抑制可能な任意の値に設定される。損失分散オフセット値OFVは、例えば、上側キャリアCW1及び下側キャリアCW2のそれぞれの最大値及び最小値の中間の値(三角波のピークトゥピークの半分の値)となるように設定される。これにより、複数のスイッチング素子41のスイッチングの偏りを適切に抑制することができる。
【0068】
中性点電位制御量CA1a、CA2a、CA1b、CA2bは、中性点電位の検出結果に応じて設定される。第2電圧指令値VR2a用の中性点電位制御量CA2aの大きさは、極性を反転させた第1電圧指令値VR1a用の中性点電位制御量CA1aの大きさと実質的に同じである。第2電圧指令値VR2b用の中性点電位制御量CA2bの大きさは、極性を反転させた第1電圧指令値VR1b用の中性点電位制御量CA1bの大きさと実質的に同じである。
【0069】
例えば、第2グループの3レベル変換器18の数が、第1グループの3レベル変換器18の数と同じである場合には、第2グループの3レベル変換器18用の中性点電位制御量CA1bの大きさは、第1グループの3レベル変換器18用の中性点電位制御量CA1aの大きさと同程度に設定される。但し、第1グループの3レベル変換器18用の中性点電位制御量CA1aの大きさ、及び第2グループの3レベル変換器18用の中性点電位制御量CA1bの大きさは、中性点電位の検出結果などに任意に設定すればよい。
【0070】
制御装置22は、第1グループの3レベル変換器18の第1レグLG1の交流出力端子a1から変圧器20の一次巻線20aに向かって電流が流れている場合に、第1グループの3レベル変換器18が上期間の時には、正側の損失分散オフセット値OFVに対して中性点電位制御量CA1aを加算することにより、第1レグLG1用の第1電圧指令値VR1aを生成し、正側の損失分散オフセット値OFVに対して中性点電位制御量CA2aを減算することにより、第2レグLG2用の第2電圧指令値VR2aを生成する。電流の向きが反対の場合は、加減算を逆転させる。
【0071】
制御装置22は、第1グループの3レベル変換器18の第1レグLG1の交流出力端子a1から変圧器20の一次巻線20aに向かって電流が流れている場合に、第1グループの3レベル変換器18が下期間の時には、負側の損失分散オフセット値OFVに対して中性点電位制御量CA1aを減算することにより、第1レグLG1用の第1電圧指令値VR1aを生成し、負側の損失分散オフセット値OFVに対して中性点電位制御量CA2aを加算することにより、第2レグLG2用の第2電圧指令値VR2aを生成する。電流の向きが反対の場合は、加減算を逆転させる。
【0072】
すなわち、制御装置22は、第1グループの3レベル変換器18の第1レグLG1の交流出力端子a1から変圧器20の一次巻線20aに向かって電流が流れている場合に、損失分散オフセット値OFVの大きさを中性点電位制御量CA1aの分だけ大きくすることにより、第1電圧指令値VR1aを生成し、損失分散オフセット値OFVの大きさを中性点電位制御量CA2aの分だけ小さくすることにより、第2電圧指令値VR2aを生成する。
【0073】
制御装置22は、第1グループの場合と同様に、第2グループの場合も、3レベル変換器18の第1レグLG1の交流出力端子a1から変圧器20の一次巻線20aに向かって電流が流れている条件では、損失分散オフセット値OFVの大きさを中性点電位制御量CA1bの分だけ小さくすることにより、第2グループの第1電圧指令値VR1bを生成し、損失分散オフセット値OFVの大きさを中性点電位制御量CA2bの分だけ大きくすることにより、第2グループの第2電圧指令値VR2bを生成する。なお、変圧器20の二次巻線20bは直列接続されており、各一次巻線20aの電流値もほとんどばらつきは無く、各3レベル変換器18の出力電流の向きは、実用上同じとして扱ってよい。
【0074】
制御装置22は、前述のように、上側キャリアCW1及び下側キャリアCW2と生成した第1電圧指令値VR1aとの比較、及び上側キャリアCW1及び下側キャリアCW2と生成した第2電圧指令値VR2aとの比較により、第1グループの3レベル変換器18の動作を制御する。そして、制御装置22は、上側キャリアCW1及び下側キャリアCW2と生成した第1電圧指令値VR1bとの比較、及び上側キャリアCW1及び下側キャリアCW2と生成した第2電圧指令値VR2bとの比較により、第2グループの3レベル変換器18の動作を制御する。
【0075】
複数の3レベル変換器18及び変圧器20を用いた変圧器直列多重構成の電力変換装置10では、
図3に表したように、高調波の発生を抑制するため、複数の3レベル変換器18のそれぞれにおいて上側キャリアCW1及び下側キャリアCW2の位相をずらすことが行われている。
【0076】
例えば、2段目の3レベル変換器18の上側キャリアCW1及び下側キャリアCW2の位相は、1段目の3レベル変換器18の上側キャリアCW1及び下側キャリアCW2の位相に対し、上側キャリアCW1及び下側キャリアCW2の四分の一周期分だけずらして設定される。
【0077】
制御装置22は、例えば、2つの3レベル変換器18を1セットとし、一方を第1グループの3レベル変換器18、他方を第2グループの3レベル変換器18とする際に、第2グループの3レベル変換器18の上側キャリアCW1及び下側キャリアCW2の位相を、第1グループの3レベル変換器18の上側キャリアCW1及び下側キャリアCW2の位相に対し、上側キャリアCW1及び下側キャリアCW2の四分の一周期分だけずらして設定する。これにより、複数の3レベル変換器18を第1グループと第2グループとに分ける場合にも、高調波の発生を抑制することができる。
【0078】
上記のように、上側キャリアCW1及び下側キャリアCW2の位相をずらした場合には、第1グループの3レベル変換器18と第2グループの3レベル変換器18とで上期間及び下期間が完全には反対にならず、第1グループの3レベル変換器18及び第2グループの3レベル変換器18のそれぞれが上期間又は下期間となる期間が生じる。
【0079】
すなわち、複数の3レベル変換器18は、損失分散制御において、第1グループの3レベル変換器18が上期間で第2グループの3レベル変換器18が下期間の状態、第1グループの3レベル変換器18が下期間で第2グループの3レベル変換器18が上期間の状態、第1グループの3レベル変換器18及び第2グループの3レベル変換器18のそれぞれが上期間の状態、及び第1グループの3レベル変換器18及び第2グループの3レベル変換器18のそれぞれが下期間の状態の4つの状態を有する。
【0080】
第1グループの3レベル変換器18及び第2グループの3レベル変換器18で上期間及び下期間が揃った期間は、上記のように、例えば、上側キャリアCW1及び下側キャリアCW2の四分の一周期に設定される。第1グループの3レベル変換器18及び第2グループの3レベル変換器18で上期間及び下期間が揃った期間は、上期間及び下期間が異なる期間よりも短い。
【0081】
なお、上期間及び下期間が揃った期間の長さは、上側キャリアCW1及び下側キャリアCW2の四分の一周期に限ることなく、上期間及び下期間が揃った期間よりも短い任意の長さでよい。上期間及び下期間が揃った期間は、なるべく短く設定することが好ましい。上期間及び下期間が揃った期間は、必ずしも設けられていなくてもよい。
【0082】
図5は、実施形態に係る制御装置の一例を模式的に表すブロック図である。
図5は、
図3に表した動作を行う場合の制御装置22の一例を模式的に表す。
図5では、交流回路の一例として、交流電動機2を示している。また、
図5では、2つの3レベル変換器18を1セットとし、一方を第1グループの3レベル変換器18、他方を第2グループの3レベル変換器18とする場合の、1セット分の2つの3レベル変換器18に対応する制御装置22の一部のみを抽出して図示している。電力変換装置10は、例えば、複数セットの3レベル変換器18を有する。この場合、制御装置22の他のセットに対応する部分の構成は、
図5に表した1セット分の2つの3レベル変換器18に対応する部分の構成と実質的に同じである。なお、電力変換装置10は、1セット分の2つの3レベル変換器18を有する構成としてもよい。
【0083】
図5に表したように、制御装置22は、回転座標変換回路50と、電流指令値演算回路51と、電流制御器52と、逆座標変換回路53と、キャリア生成回路54と、オフセット出力回路55と、極性演算回路56と、中性点電位制御回路57と、乗算器58と、制御信号生成回路59と、第1グループ用回路61と、第2グループ用回路62と、を有する。
【0084】
また、
図5に表したように、電力変換装置10は、電圧検出器80、82と、電流検出器84、86、88と、をさらに備える。
【0085】
電圧検出器80は、電荷蓄積素子14の電圧を検出する。電圧検出器82は、電荷蓄積素子16の電圧を検出する。電流検出器84は、第1グループの3レベル変換器18から出力される交流電流を検出する。電流検出器84は、例えば、複数の3レベル変換器18の1段目の3レベル変換器18の交流電流を検出する。電流検出器86は、第2グループの3レベル変換器18から出力される交流電流を検出する。電流検出器86は、例えば、複数の3レベル変換器18の2段目の3レベル変換器18の交流電流を検出する。
【0086】
電流検出器88は、変圧器20の直列に接続された複数の二次巻線20bの交流電流を検出する。電流検出器84、86は、換言すれば、変圧器20の複数の一次巻線20aの交流電流を検出する。電流検出器88は、換言すれば、変圧器20から交流電動機2(交流回路)に供給される交流電流を検出する。さらに換言すれば、電流検出器88は、電力変換装置10の交流側の出力電流を検出する。
【0087】
回転座標変換回路50には、電流検出器84、86、88のそれぞれの検出結果、及び交流電動機2に供給する交流電流の電気角θが入力される。電気角θは、例えば、交流回路側に設けられた回転角検出回路4から回転座標変換回路50に入力される。回転角検出回路4は、例えば、交流電動機2の回転角(機械角)を検出し、検出した回転角に応じた電気角θを演算し、演算した電気角θを回転座標変換回路50に入力する。電気角θは、換言すれば、交流回路に供給する交流電流の位相θである。
【0088】
回転座標変換回路50は、入力された電流検出器84、86、88のそれぞれの検出結果、及び電気角θ(位相θ)を基に、いわゆるdq変換(パーク変換)により、電流検出器84、86、88によって検出された電流信号を電気角θに同期した座標系(dq座標)の電流信号に回転座標変換する。回転座標変換回路50は、変換後の電流信号を電流制御器52に入力する。
【0089】
電流指令値演算回路51は、例えば、上位のコントローラから入力される指令値などに基づいて、複数の3レベル変換器18から出力する交流電流の電流指令値を演算し、演算した電流指令値を電流制御器52に入力する。電流指令値は、例えば、複数の3レベル変換器18から出力する交流電流のd軸成分の電流指令値、及びq軸成分の電流指令値である。
【0090】
電流制御器52は、回転座標変換回路50から入力された電流信号、及び電流指令値演算回路51から入力された電流指令値を基に、電流指令値に応じた交流電流を複数の3レベル変換器18から出力させるための複数の3レベル変換器18の交流電圧の電圧指令値を演算する。電流制御器52は、例えば、電流信号と電流指令値との差分を基に、PI制御を行うことにより、電圧指令値を演算する。電圧指令値は、例えば、複数の3レベル変換器18から出力する交流電圧のd軸成分の電圧指令値、及びq軸成分の電圧指令値である。但し、電流制御器52による電圧指令値の演算方法は、PI制御に限ることなく、電流指令値に応じた交流電流を複数の3レベル変換器18から適切に出力させることが可能な任意の演算方法でよい。電流制御器52は、演算した電圧指令値を逆座標変換回路53に入力する。
【0091】
逆座標変換回路53には、電流制御器52から電圧指令値が入力されるとともに、回転座標変換回路50と同様の電気角θが入力される。逆座標変換回路53は、入力された電圧指令値及び電気角θを基に、電圧指令値に対して逆dq変換(逆パーク変換)を行うことにより、回転座標系の電圧指令値を三相座標の電圧指令値に変換する。逆座標変換回路53は、変換後の電圧指令値を基準の電圧指令値として第1グループ用回路61及び第2グループ用回路62に入力する。
【0092】
キャリア生成回路54は、予め設定された振幅の情報、周波数の情報、及び位相の情報などを基に、複数の3レベル変換器18のそれぞれの上側キャリアCW1及び下側キャリアCW2を生成する。キャリア生成回路54は、生成した上側キャリアCW1及び下側キャリアCW2をオフセット出力回路55及び制御信号生成回路59に入力する。
【0093】
オフセット出力回路55は、所定電圧未満の交流電力を出力する損失分散制御を行う際に動作する。オフセット出力回路55は、損失分散制御を行う際に、キャリア生成回路54から入力された複数の3レベル変換器18のそれぞれの上側キャリアCW1及び下側キャリアCW2を基に、複数の3レベル変換器18のそれぞれの損失分散オフセット値OFVを生成する。オフセット出力回路55は、例えば、前述のように、上側キャリアCW1及び下側キャリアCW2のそれぞれの最大値及び最小値の中間の値となるように、損失分散オフセット値OFVを生成する。
【0094】
オフセット出力回路55は、生成した損失分散オフセット値OFVを極性演算回路56に入力する。また、オフセット出力回路55は、第1グループの3レベル変換器18に対応する損失分散オフセット値OFVを第1グループ用回路61に入力するとともに、第2グループの3レベル変換器18に対応する損失分散オフセット値OFVを第2グループ用回路62に入力する。
【0095】
極性演算回路56には、オフセット出力回路55から損失分散オフセット値OFVが入力されるとともに、電流検出器84、86の検出結果が入力される。極性演算回路56は、入力された損失分散オフセット値OFV及び電流検出器84、86の検出結果を基に、損失分散制御に用いられる中性点電位制御量CA1a、CA2a、CA1b、CA2bの極性の演算を行う。
【0096】
図6は、極性演算に用いられる表の一例を模式的に表す説明図である。
極性演算回路56は、
図6に表した表に基づいて、極性の演算を行う。極性演算回路56は、電流検出器84、86の検出結果を基に、複数の3レベル変換器18の出力電流の極性を判定する。なお、この例では、第1レグLG1から一次巻線20aを介して第2レグLG2に電流が流れる方向を正とし、これと反対の方向を負としている。換言すれば、この例では、交流接続点a1から交流接続点a2に向かって電流が流れる方向を正とし、これと反対の方向を負としている。
【0097】
また、極性演算回路56は、複数の3レベル変換器18のそれぞれの損失分散オフセット値OFVを基に、第1グループの3レベル変換器18及び第2グループの3レベル変換器18のそれぞれの上期間及び下期間を判定する。
【0098】
そして、極性演算回路56は、出力電流の極性の判定結果と、上期間及び下期間の判定結果と、を基に、
図6に表した表に基づいて、中性点電位制御量CA1a、CA2a、CA1b、CA2bの極性を決定する。極性演算回路56は、決定した極性を乗算器58に入力する。
【0099】
図6に表したように、第1グループの3レベル変換器18が上期間で、第2グループの3レベル変換器18が下期間の場合、又は、第1グループの3レベル変換器18が下期間で、第2グループの3レベル変換器18が上期間の場合には、
図6に表した方向に中性点電位を制御することができる。なお、
図5及び
図6では、直流接続点d1の正電位をP、直流接続点d2の負電位をN、直流接続点d3の中性点電位をOとして表している。
【0100】
例えば、複数の3レベル変換器18の出力電流の極性が正であり、第1グループの3レベル変換器18が上期間、第2グループの3レベル変換器18が下期間である場合には、乗算器58の出力が正の値の時に、正電位Pと中性点電位Oとの間のエネルギーを放出し、中性点電位Oと負電位Nとの間のエネルギーを蓄積することができる。換言すれば、電荷蓄積素子14を放電し、電荷蓄積素子16を充電する操作が必要である時に、中性点電位制御回路57が正の値を出力する場合に、乗算器58で極性を反転させる必要がない。
【0101】
そして、複数の3レベル変換器18の出力電流の極性が正であり、第1グループの3レベル変換器18が下期間、第2グループの3レベル変換器18が上期間である場合には、乗算器58の出力が正の値の時に、正電位Pと中性点電位Oとの間のエネルギーを蓄積し、中性点電位Oと負電位Nとの間のエネルギーを放出することができる。換言すれば、電荷蓄積素子14を放電し、電荷蓄積素子16を充電する操作が必要である時に、中性点電位制御回路57が正の値を出力する場合に、乗算器58で極性を反転させることが必要である。
【0102】
一方、第1グループの3レベル変換器18及び第2グループの3レベル変換器18がともに上期間又は下期間の場合には、第1グループの3レベル変換器18による正電位Pと中性点電位Oとの間のエネルギー蓄積ないし放出、および、中性点電位Oと負電位Nとの間のエネルギー蓄積ないし放出を、第2グループの3レベル変換器18が打ち消してしまうため、中性点電位を制御することができない。従って、第1グループの3レベル変換器18及び第2グループの3レベル変換器18がともに上期間又は下期間となる状態は、なるべく短くすることが好ましい。これにより、中性点電位の制御性を高めることができる。例えば、第1グループの3レベル変換器18及び第2グループの3レベル変換器18がともに上期間又は下期間となる状態は、上記のように、上側キャリアCW1及び下側キャリアCW2の四分の一周期に設定する。これにより、複数の3レベル変換器18において、高調波の発生を抑制しつつ、中性点電位の制御性を高めることができる。
【0103】
中性点電位制御回路57には、電圧検出器80、82の検出結果が入力される。中性点電位制御回路57は、電圧検出器80、82の検出結果を基に、中性点電位制御量CA1a、CA2a、CA1b、CA2bの大きさを演算する。中性点電位制御回路57は、例えば、中性点電位の大きさ(電荷蓄積素子14、16の電圧差)に応じて、中性点電位制御量CA1a、CA2a、CA1b、CA2bの大きさを演算する。中性点電位制御回路57は、例えば、中性点電位が大きいほど、中性点電位制御量CA1a、CA2a、CA1b、CA2bの大きさが大きくなるように、中性点電位制御量CA1a、CA2a、CA1b、CA2bの大きさを演算する。中性点電位制御回路57は、演算した中性点電位制御量CA1a、CA2a、CA1b、CA2bの大きさを乗算器58に入力する。
【0104】
乗算器58は、中性点電位制御回路57から入力された中性点電位制御量CA1a、CA2a、CA1b、CA2bの大きさに、極性演算回路56から入力された極性を乗算する。乗算器58は、乗算結果を中性点電位制御量CA1a、CA2a、CA1b、CA2bとし、第1グループ用回路61及び第2グループ用回路62に入力する。
【0105】
第1グループ用回路61は、加算器61a、61b、61cと、減算器61dと、を有する。第1グループ用回路61は、損失分散制御を行う場合、逆座標変換回路53から入力された基準の電圧指令値にオフセット出力回路55から入力された損失分散オフセット値OFVを加算器61aで加算するとともに、加算器61aの加算結果に乗算器58から入力された中性点電位制御量CA1aを加算器61bで加算することにより、第1グループの3レベル変換器18の第1レグLG1用の第1電圧指令値VR1aを演算する。
【0106】
そして、第1グループ用回路61は、損失分散制御を行う場合、逆座標変換回路53から入力された基準の電圧指令値にオフセット出力回路55から入力された損失分散オフセット値OFVを加算器61cで加算するとともに、加算器61cの加算結果に乗算器58から入力された中性点電位制御量CA2aを減算器61dで減算することにより、第1グループの3レベル変換器18の第2レグLG2用の第2電圧指令値VR2aを演算する。
【0107】
第1グループ用回路61は、演算した第1電圧指令値VR1a及び第2電圧指令値VR2aを制御信号生成回路59に入力する。
【0108】
第2グループ用回路62は、加算器62aと、減算器62bと、加算器62c、62dと、を有する。第2グループ用回路62は、損失分散制御を行う場合、逆座標変換回路53から入力された基準の電圧指令値にオフセット出力回路55から入力された損失分散オフセット値OFVを加算器62aで加算するとともに、加算器62aの加算結果に乗算器58から入力された中性点電位制御量CA1bを減算器62bで減算することにより、第2グループの3レベル変換器18の第1レグLG1用の第1電圧指令値VR1bを演算する。
【0109】
そして、第2グループ用回路62は、損失分散制御を行う場合、逆座標変換回路53から入力された基準の電圧指令値にオフセット出力回路55から入力された損失分散オフセット値OFVを加算器62cで加算するとともに、加算器62cの加算結果に乗算器58から入力された中性点電位制御量CA2bを加算器62dで加算することにより、第2グループの3レベル変換器18の第2レグLG2用の第2電圧指令値VR2bを演算する。
【0110】
第2グループ用回路62は、演算した第1電圧指令値VR1b及び第2電圧指令値VR2bを制御信号生成回路59に入力する。
【0111】
このように、制御装置22は、損失分散オフセット値OFVを加算した電圧指令値に中性点電位制御量CA1aを加算することによって、第1グループの3レベル変換器18の第1レグLG1用の第1電圧指令値VR1aを演算し、損失分散オフセット値OFVを加算した電圧指令値に中性点電位制御量CA2aを減算することによって、第1グループの3レベル変換器18の第2レグLG2用の第2電圧指令値VR2aを演算し、損失分散オフセット値OFVを加算した電圧指令値に中性点電位制御量CA1bを減算することによって、第2グループの3レベル変換器18の第1レグLG1用の第1電圧指令値VR1bを演算し、損失分散オフセット値OFVを加算した電圧指令値に中性点電位制御量CA2bを加算することによって、第2グループの3レベル変換器18の第2レグLG2用の第2電圧指令値VR2bを演算する。これにより、
図3に表した第1電圧指令値VR1a、第2電圧指令値VR2a、第1電圧指令値VR1b、第2電圧指令値VR2bを演算することができる。
【0112】
制御信号生成回路59は、キャリア生成回路54から入力された上側キャリアCW1及び下側キャリアCW2、第1グループ用回路61から入力された第1電圧指令値VR1a及び第2電圧指令値VR2a、及び第2グループ用回路62から入力された第1電圧指令値VR1b及び第2電圧指令値VR2bを基に、
図3に関して説明したように、各制御信号を生成し、生成した各制御信号を各3レベル変換器18に入力する。
【0113】
これにより、
図3に関して説明したように、第1グループの3レベル変換器18と第2グループの3レベル変換器18とで上期間及び下期間が反対になるようにし、第1グループの3レベル変換器18及び第2グループの3レベル変換器18に反対の極性の電圧を出力させることができる。
【0114】
以上、説明したように、本実施形態に係る電力変換装置10によれば、制御装置22が、所定電圧未満の交流電力を交流回路に出力する場合に、複数の3レベル変換器18を第1グループ及び第2グループの2つのグループに分け、第1グループの3レベル変換器18の上期間の時に、第2グループの3レベル変換器18を下期間に設定し、第1グループの3レベル変換器18の下期間の時に、第2グループの3レベル変換器18を上期間に設定し、所定の大きさの電圧を第1グループの3レベル変換器18から出力させ、第1グループの3レベル変換器18と反対の極性の所定の大きさの電圧を第2グループの3レベル変換器18から出力させることで、交流回路に出力される電圧が、意図した出力電圧となるようにする。
【0115】
第1電圧指令値VR1a、第2電圧指令値VR2a、第1電圧指令値VR1b、及び第2電圧指令値VR2bのそれぞれに上期間及び下期間を設けることにより、出力電圧を小さくした設定した際にも、複数の3レベル変換器18の複数のスイッチング素子41のスイッチングに偏りが生じることを抑制することができる。
【0116】
そして、第1グループの3レベル変換器18と第2グループの3レベル変換器18とで上期間及び下期間が反対になるようにし、第1グループの3レベル変換器18及び第2グループの3レベル変換器18に反対の極性の電圧を出力させることにより、中性点電位を制御することができる。
【0117】
従って、所定電圧未満の交流電力を出力する場合にも、複数のスイッチング素子41のスイッチングの偏り、及び中性点電位の変動を抑制できる変圧器直列多重構成の電力変換装置10を提供することができる。
【0118】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0119】
2…交流電動機、 4…回転角検出回路、 10…電力変換装置、 12a…直流正母線、 12b…直流負母線、 12c…直流中性点母線、 14、16…電荷蓄積素子、 18…3レベル変換器、 20…変圧器、 20a…一次巻線、 20b…二次巻線、 22…制御装置、 41…スイッチング素子、 42、43…整流素子、 50…回転座標変換回路、 51…電流指令値演算回路、 52…電流制御器、 53…逆座標変換回路、 54…キャリア生成回路、 55…オフセット出力回路、 56…極性演算回路、 57…中性点電位制御回路、 58…乗算器、 59…制御信号生成回路、 61…第1グループ用回路、 62…第2グループ用回路、 80、82…電圧検出器、 84、86、88…電流検出器