(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060972
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】コア偏心測定装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20240425BHJP
【FI】
G01B11/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168585
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】島川 修
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA03
2F065AA07
2F065AA20
2F065CC23
2F065DD03
2F065EE08
2F065FF01
2F065FF04
2F065FF66
2F065GG07
2F065GG24
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065MM04
2F065QQ21
2F065QQ31
(57)【要約】
【課題】マルチコアファイバのコアの偏心量を高精度に測定できるコア偏心測定装置を提供する。
【解決手段】一実施形態に係るコア偏心測定装置において、回転機構は、マルチコアファイバを複数回回転させる。画像処理部は、回転機構がマルチコアファイバを回転させるごとに、マルチコアファイバにおける各コアの規定位置からのずれ量を測定し、各コアに対して、マルチコアファイバを回転させるごとに測定した複数のずれ量から補正係数を算出し、複数のずれ量をマルチコアファイバの回転回数で割った値から補正係数を引くことによって各コアの偏心量を算出する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチコアファイバの第1端面とは反対の第2端面の中心を通るとともに、前記マルチコアファイバが延在する方向に沿って延びる軸線を中心として前記マルチコアファイバを回転させる回転機構と、
前記マルチコアファイバの前記第1端面に光を入射する第1照射光源と、
前記マルチコアファイバの前記第2端面を撮像する撮像部と、
前記撮像部によって撮像された画像を処理する画像処理部と、
を備え、
前記回転機構は、前記マルチコアファイバを複数回回転させ、
前記画像処理部は、
前記回転機構が前記マルチコアファイバを回転させるごとに、前記マルチコアファイバにおける各コアの規定位置からのずれ量を測定し、
各前記コアに対して、前記マルチコアファイバを回転させるごとに測定した複数の前記ずれ量から補正係数を算出し、複数の前記ずれ量を前記マルチコアファイバの回転回数で割った値から前記補正係数を引くことによって各前記コアの偏心量を算出する、
コア偏心測定装置。
【請求項2】
前記回転機構は、nを自然数としたときに前記マルチコアファイバを90/n度ずつ回転させる、
請求項1に記載のコア偏心測定装置。
【請求項3】
nの値が1、2および3のいずれかである、
請求項2に記載のコア偏心測定装置。
【請求項4】
前記マルチコアファイバのクラッドに前記マルチコアファイバの側方から光を入射する第2照射光源を備える、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコア偏心測定装置。
【請求項5】
前記第2端面に対向する光学系と、
前記光学系を介して前記第2端面に光を入射する第3照射光源を備える、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコア偏心測定装置。
【請求項6】
前記撮像部は可視光の感度を有する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコア偏心測定装置。
【請求項7】
前記撮像部は近赤外光の感度を有する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコア偏心測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コア偏心測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、マルチコアファイバの評価方法および評価装置が記載されている。評価装置は、光源と、光ファイバ把持部と、対物レンズと、マルチコアファイバの断面観察を行うカメラと、プロセッサとを備える。カメラは、画像撮影器と、光画像撮影器と、画像撮影器および光画像撮影器を移動させる切替部とを有する。切替部は画像撮影器と光画像撮影器とを切り替える。カメラは、切替器が画像撮影器および光画像撮影器を切り替えたときに撮影を行うことにより、マルチコアファイバの2種類の端面画像を撮影する。プロセッサは、2種類の端面画像を合成してマルチコアファイバのクラッドの直径、および各コアの中心座標を計測し、計測した各コアに対して評価を行う。
【0003】
非特許文献1には、光ファイバの端面の測定方法が記載されている。この測定方法では、シングルコアファイバにおけるコアの同軸度が測定される。コアの同軸度とは、光ファイバの端面におけるクラッドの外周の中心に対するコアの中心の一致性を示している。この測定方法では、光ファイバの端面が撮影されて得られた画像を処理することによってコアの同軸度が測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】IEC60793-1-20“Optical fibers, Measurementmethod and test procedures- Fiber geometry”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マルチコアファイバの端面を撮影するためには、カメラと拡大レンズ光学系が必要な場合がある。しかしながら、拡大レンズ光学系を構成するレンズについては、歪曲収差等、像を歪ませる収差がある場合がある。マルチコアファイバの端面のコアを高精度に測定するためには、上記の収差の影響を無視できない。高価なレンズであれば当該収差の影響を無視できることがある。しかしながら、安価なレンズであっても、当該収差の影響を排除し、かつマルチコアファイバのコアの偏心量を高精度に測定できることが求められうる。
【0007】
本開示は、マルチコアファイバのコアの偏心量を高精度に測定できるコア偏心測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るコア偏心測定装置は、マルチコアファイバの第1端面の中心を通るとともに、マルチコアファイバが延在する方向に沿って延びる軸線を中心としてマルチコアファイバを回転させる回転機構と、マルチコアファイバの第1端面に光を入射する第1照射光源と、マルチコアファイバの第1端面とは反対の第2端面を撮像する撮像部と、撮像部によって撮像された画像を処理する画像処理部と、を備える。回転機構は、マルチコアファイバを複数回回転させる。画像処理部は、回転機構がマルチコアファイバを回転させるごとに、マルチコアファイバにおける各コアの規定位置からのずれ量を測定し、各コアに対して、マルチコアファイバを回転させるごとに測定した複数のずれ量から補正係数を算出し、複数のずれ量をマルチコアファイバの回転回数で割った値から補正係数を引くことによって各コアの偏心量を算出する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、マルチコアファイバのコアの偏心量を高精度に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係るコア偏心測定装置の構成を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、
図1のコア偏心測定装置の拡大光学系を模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、マルチコアファイバを回転させながら撮影されたマルチコアファイバの端面を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、コア偏心測定装置によるコアの偏心量の測定方法を説明するための図である。
【
図5】
図5は、
図4の測定方法の結果得られた表を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に、本開示に係るコア偏心測定装置の実施形態を列挙して説明する。一実施形態に係るコア偏心測定装置は、(1)マルチコアファイバの第1端面とは反対の第2端面の中心を通るとともに、マルチコアファイバが延在する方向に沿って延びる軸線を中心としてマルチコアファイバを回転させる回転機構と、マルチコアファイバの第1端面に光を入射する第1照射光源と、マルチコアファイバの第2端面を撮像する撮像部と、撮像部によって撮像された画像を処理する画像処理部と、を備える。回転機構は、マルチコアファイバを複数回回転させる。画像処理部は、回転機構がマルチコアファイバを回転させるごとに、マルチコアファイバにおける各コアの規定位置からのずれ量を測定し、各コアに対して、マルチコアファイバを回転させるごとに測定した複数のずれ量から補正係数を算出し、複数のずれ量をマルチコアファイバの回転回数で割った値から補正係数を引くことによって各コアの偏心量を算出する。
【0012】
このコア偏心測定装置では、マルチコアファイバは回転機構によって複数回回転する。回転機構がマルチコアファイバを回転させるごとに、画像処理部によってマルチコアファイバにおける各コアの規定位置からのずれ量が測定される。各コアに対して、マルチコアファイバが回転するごとに測定された複数の上記ずれ量から補正係数が算出される。複数のずれ量をマルチコアファイバの回転回数で割った値から補正係数を引くことによってコアの偏心量が算出される。複数のずれ量を当該回転回数で割った値から補正係数を引くことによって、収差の影響を抑えることができる。したがって、光学系のレンズが安価なレンズであっても当該収差の影響を無視できるので、レンズ等の光学系にかかるコストを低減できる。そして、収差の影響を抑えられることから、マルチコアファイバのコアの偏心量を高精度に測定できる。
【0013】
(2)上記(1)において、回転機構は、nを自然数としたときにマルチコアファイバを90/n度ずつ回転させてもよい。この場合、仮にレンズに収差がないとした場合、(90/n)度回転させたときのずれ量と、180+(90/n)度回転させたときのずれ量とが互いに同一となり、補正係数が0になる。一方、仮にレンズに収差があるとした場合、(90/n)度回転させたときのずれ量と、180+(90/n)度回転させたときのずれ量とが互いに同一とならないことがあり、補正係数は0以外の数値になる。したがって、収差に応じた補正係数を算出できる。この補正係数を用いて偏心量を算出することによって、より高精度にコアの偏心量を測定できる。
【0014】
(3)上記(2)において、nの値が1、2および3のいずれかであってもよい。この場合、マルチコアファイバの回転回数が少ないので、コアの偏心量の測定をスムーズに行うことができる。
【0015】
(4)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、コア偏心測定装置は、マルチコアファイバのクラッドにマルチコアファイバの側方から光を入射する第2照射光源を備えてもよい。この場合、クラッド外周付近にある欠けや汚れなどの影響を受けにくく、撮影されるマルチコアファイバの第2端面のクラッドの外周をより鮮明にすることができる。したがって、撮影される第2端面の精度が向上するので、より高精度に偏心量を測定できる。
【0016】
(5)上記(1)から(4)のいずれかにおいて、コア偏心測定装置は、第2端面に対向する光学系と、当該光学系を介して第2端面に光を入射する第3照射光源を備えてもよい。
【0017】
(6)上記(1)から(5)のいずれかにおいて、撮像部は可視光の感度を有してもよい。この場合、コアの偏心量の測定に可視光が用いられるので、撮像部等にかかるコストの増大を抑制できる。
【0018】
(7)上記(1)から(6)のいずれかにおいて、撮像部は近赤外光の感度を有してもよい。この場合、マルチコアファイバの実使用に近い形でコアの偏心量を測定できる。
【0019】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係るコア偏心測定装置の具体例を以下で図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下の例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示され、特許請求の範囲と均等の範囲における全ての変更が含まれることが意図される。図面の説明において同一または相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化または誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載したものに限定されない。
【0020】
図1は、一例としてのコア偏心測定装置1を示す図である。
図1に示されるように、コア偏心測定装置1は、例えば、第1照射光源2と、第2照射光源3と、回転機構4と、光学系5と、第3照射光源6と、撮像部7と、画像処理部8とを備える。第1照射光源2は、被測定体であるマルチコアファイバ10に光L1を入射する。マルチコアファイバ10は、方向Dに沿って延在するように配置される。マルチコアファイバ10は、マルチコアファイバ10の方向Dの一端に位置する第1端面11と、第1端面11とは反対方向を向く第2端面12とを有する。第2端面12は、例えば、ファイバクリーバによって切断されて形成されたマルチコアファイバ10の端面である。
【0021】
第1照射光源2は、マルチコアファイバ10のコアに光L1を入射する。第1照射光源2は、例えば、コア入射用の照明である。第2照射光源3は、マルチコアファイバ10のクラッドに光L2を入射する。第2照射光源3は、マルチコアファイバ10に側方(方向Dに交差する方向)から光L2を入射する。一例として、第1照射光源2および第2照射光源3のそれぞれは、白色LED(Light Emission Diode)である。なお、第1照射光源2によりマルチコアファイバ10に光L1を入射する際、コアとクラッドの両方に同時に光L1を入射してもよい。クラッドに入射された光L1は、マルチコアファイバ10を伝搬して第2端面12に到達する前に大部分がクラッド外に抜けてしまうため、第2端面12では実質的にコアのみから光が発光される状態を作ることができる。
【0022】
回転機構4は、第2端面12の中心を通るとともに方向Dに沿って延在する軸線Xを中心としてマルチコアファイバ10を回転させる。例えば、回転機構4は、マルチコアファイバ10の第2端面12付近を把持してマルチコアファイバ10を軸線X回りに回転させる。回転機構4は、マルチコアファイバ10を複数回回転させる。例えば、回転機構4は、nを自然数としたときに、マルチコアファイバ10を90/n度ずつ回転させる。nの値は、例えば、1、2および3のいずれかである。回転機構4は、マルチコアファイバ10を270度以上回転させる。回転機構4の回転については後に詳述する。
【0023】
図2は、光学系5および第3照射光源6の構成の例を示す図である。光学系5はマルチコアファイバ10の第2端面12に対向する。第3照射光源6は、光学系5を介して第2端面12に光L3を入射する。例えば、光学系5は、第2端面12を観察するための拡大光学系であり、第3照射光源6は同軸落射照明である。例えば、第3照射光源6は白色LEDである。
【0024】
一例として、光学系5は、第3照射光源6からの光L3を第2端面12に向けて反射するハーフミラー5bと、ハーフミラー5bおよび第2端面12の間に位置する第1レンズ5cと、ハーフミラー5bおよび撮像部7の間に位置する第2レンズ5dとを有する。ハーフミラー5bによって反射された光L3は、第1レンズ5cを通って第2端面12において反射する。第2端面12から反射した光は、第1レンズ5c、ハーフミラー5bおよび第2レンズ5dを通って撮像部7に入射する。
【0025】
例えば、光L1、光L2および光L3は可視光であり、撮像部7は可視光の感度を有する。しかしながら、光L1、光L2および光L3は近赤外光であってもよく、撮像部7は近赤外光の感度を有していてもよい。撮像部7は、第2端面12を撮像する。撮像部7は、第2端面12を観察可能な機構を備えるカメラである。撮像部7は、例えば、撮像した第2端面12の画像データを画像処理部8に出力する。画像処理部8は、撮像部7によって撮像された画像を処理する。例えば、画像処理部8は、撮像部7から第2端面12の画像データを取得し、当該画像データを記憶する。画像処理部8は、回転機構4がマルチコアファイバ10を回転させるごとに、マルチコアファイバ10の各コアの規定位置からのずれ量を測定する。
【0026】
以下では、画像処理部8による第2端面12の画像処理について詳細に説明する。
図3は、回転機構4がマルチコアファイバ10を回転させるごとに撮像された第2端面12を示す図である。
図3に示されるように、例えば、被測定体であるマルチコアファイバ10は、複数のコアと、当該複数のコアを被覆するクラッドとを有する。以下では、当該複数のコアが第1コアC1、第2コアC2、第3コアC3および第4コアC4であり、第1コアC1、第2コアC2、第3コアC3および第4コアC4をクラッドRが被覆する例について説明する。また、第1コアC1、第2コアC2、第3コアC3および第4コアC4を識別する必要がない場合には、これらをまとめてコアCとして説明する。
【0027】
第2端面12において、第1コアC1、第2コアC2、第3コアC3および第4コアC4は正方形状をなすように配置されている。さらに、マルチコアファイバ10は、第1コアC1、第2コアC2、第3コアC3および第4コアC4を識別するためのマーカMを有する。撮像部7が第1コアC1、第2コアC2、第3コアC3および第4コアC4とともにマーカMを撮像することにより、画像処理部8は第1コアC1、第2コアC2、第3コアC3および第4コアC4を認識する。
【0028】
以下では、前述したnの値が1であって、回転機構4が90度ずつマルチコアファイバ10を回転させる場合における第2端面12の画像処理の例について説明する。第2端面12の画像処理では第1コアC1、第2コアC2、第3コアC3および第4コアC4の偏心量が測定される。
【0029】
図4は、マルチコアファイバ10の第2端面12を拡大した図である。
図3および
図4に示されるように、画像処理部8は、撮像部7によって撮像された第2端面12の画像からクラッドRの外周、およびクラッドRの中心Oの位置を算出する。例えば、画像処理部8は、クラッドRの外周のエッジから最小二乗法によって中心Oを求める。
【0030】
画像処理部8は、中心Oを原点としたXY座標軸を記憶している。画像処理部8は、クラッドRの外周および中心Oの位置を算出した後に、理想的なコアCの位置P1,P2,P3,P4を算出する。例えば、画像処理部8は、中心Oを囲むように位置P1,P2,P3,P4を結んで得られる図形Z1を描写する。図形Z1は、一例として、正方形状を呈する。
【0031】
画像処理部8は、撮像された第1コアC1、第2コアC2、第3コアC3および第4コアC4の実際の位置A1,A2,A3,A4を算出する。そして、画像処理部8は、中心Oおよび位置P1,P2,P3,P4のそれぞれを結ぶ線分S1に対する、中心Oおよび位置A1,A2,A3,A4のそれぞれを結ぶ線分S2の角度θ1,θ2,θ3,θ4を算出する。
【0032】
画像処理部8は、角度θ1,θ2,θ3,θ4の平均値を算出する。画像処理部8は、中心Oを中心として図形Z1を当該平均値だけ回転させた図形Z2を描写する。図形Z2の頂点Y1,Y2,Y3,Y4は、当該回転を考慮した理想のコアCの位置に相当する。画像処理部8は、頂点Y1および頂点Y4を結ぶ辺に中心Oから延びる垂直二等分線であるY'軸、および、頂点Y1および頂点Y2を結ぶ辺に中心Oから延びる垂直二等分線であるX'軸を設定する。
【0033】
画像処理部8は、理想的なコアCの位置である位置P1,P2,P3,P4に対する実際の位置A1,A2,A3,A4のずれ量を偏心とする。第1コアC1、第2コアC2、第3コアC3および第4コアC4のそれぞれのずれ量は、例えば、
図5に示される表のように算出される。
【0034】
図4および
図5に示されるように、回転機構4によるマルチコアファイバ10の回転角度が0度(回転させていない状態)であるときに、画像処理部8は、第1コアC1のX'座標におけるずれ量X
1-0、および、第1コアC1のY'座標におけるずれ量Y
1-0を算出する。同様に、画像処理部8は、第2コアC2のX'座標におけるずれ量X
2-0、第2コアC2のY'座標におけるずれ量Y
2-0、第3コアC3のX'座標におけるずれ量X
3-0、第3コアC3のY'座標におけるずれ量Y
3-0、第4コアC4のX'座標におけるずれ量X
4-0、および、第4コアC4のY'座標におけるずれ量Y
4-0を算出する。
【0035】
そして、回転機構4はマルチコアファイバ10を90度回転させる。その後、画像処理部8は、上記同様、第1コアC1のX'座標におけるずれ量X1-90、第1コアC1のY'座標におけるずれ量Y1-90、第2コアC2のX'座標におけるずれ量X2-90、第2コアC2のY'座標におけるずれ量Y2-90、第3コアC3のX'座標におけるずれ量X3-90、第3コアC3のY'座標におけるずれ量Y3-90、第4コアC4のX'座標におけるずれ量X4-90、および、第4コアC4のY'座標におけるずれ量Y4-90、を算出する。
【0036】
その後、回転機構4はマルチコアファイバ10を更に90度(回転させていない状態から180度)回転させる。そして上記同様、画像処理部8は、第1コアC1のX'座標におけるずれ量X1-180、第1コアC1のY'座標におけるずれ量Y1-180、第2コアC2のX'座標におけるずれ量X2-180、第2コアC2のY'座標におけるずれ量Y2-180、第3コアC3のX'座標におけるずれ量X3-180、第3コアC3のY'座標におけるずれ量Y3-180、第4コアC4のX'座標におけるずれ量X4-180、および、第4コアC4のY'座標におけるずれ量Y4-180、を算出する。
【0037】
そして、回転機構4はマルチコアファイバ10を更に90度(回転させていない状態から270度)回転させる。画像処理部8は、第1コアC1のX'座標におけるずれ量X1-270、第1コアC1のY'座標におけるずれ量Y1-270、第2コアC2のX'座標におけるずれ量X2-270、第2コアC2のY'座標におけるずれ量Y2-270、第3コアC3のX'座標におけるずれ量X3-270、第3コアC3のY'座標におけるずれ量Y3-270、第4コアC4のX'座標におけるずれ量X4-270、および、第4コアC4のY'座標におけるずれ量Y4-270、を算出する。
【0038】
以上のように各ずれ量が算出されると、例えば、
図5の表の「0°」、「90°」、「180°」および「270°」の行に算出されたずれ量が入力される。そして、画像処理部8は、各コアCのずれ量の平均値を算出する。より具体的には、画像処理部8は、以下の式(1)から式(8)を用いて各コアCのX'座標およびY'座標のそれぞれのずれ量の平均値X
1c、Y
1c、X
2c、Y
2c、X
3c、Y
3c、X
4c、Y
4cを算出する。
X
1c=(X
1-0+X
1-90+X
1-180+X
1-270)/4 ・・・(1)
Y
1c=(Y
1-0+Y
1-90+Y
1-180+Y
1-270)/4 ・・・(2)
X
2c=(X
2-0+X
2-90+X
2-180+X
2-270)/4 ・・・(3)
Y
2c=(Y
2-0+Y
2-90+Y
2-180+Y
2-270)/4 ・・・(4)
X
3c=(X
3-0+X
3-90+X
3-180+X
3-270)/4 ・・・(5)
Y
3c=(Y
3-0+Y
3-90+Y
3-180+Y
3-270)/4 ・・・(6)
X
4c=(X
4-0+X
4-90+X
4-180+X
4-270)/4 ・・・(7)
Y
4c=(Y
4-0+Y
4-90+Y
4-180+Y
4-270)/4 ・・・(8)
【0039】
ところで、例えばX1-180の値は、X1-0の状態からマルチコアファイバ10を180度回転させたときのX'座標の値であるため、X1-180とX1-0の和は0になるはずである。同様に、X1-270とX1-90の和等も0になるため、前述したX1c、Y1c、X2c、Y2c、X3c、Y3c、X4c、およびY4cの値も0になるはずである。しかしながら、実際にはX1c、Y1c、X2c、Y2c、X3c、Y3c、X4c、およびY4cの値は0にならないことがある。これらの値が0にならない原因は、光学系5が持つ収差によるものである。この収差以外に誤差要因がなければ、コアCのそれぞれの回転角度での偏心Xおよび偏心Yは全て同一の値となるはずである。
【0040】
本実施形態では、第1コアC1、第2コアC2、第3コアC3および第4コアC4の偏心Xの平均値(X1c、X2c、X3cおよびX4cの平均値)をXcとし、第1コアC1、第2コアC2、第3コアC3および第4コアC4の偏心Yの平均値(Y1c、Y2c、Y3cおよびY4cの平均値)をYcとする。(Xc,Yc)は、光学系5自体がもつ収差による値であって、画像処理部8ではXcおよびYcの値を補正係数とする。画像処理部8は、測定した偏心データから補正係数を引くことによって、光学系5の収差の影響が排除されたマルチコアファイバ10のコアCの偏心を求める。例えば、回転角度が0度、90度、180度および270度のそれぞれにおける第1コアC1の偏心量が(X11-0,Y11-0)、(X11-90,Y11-90)、(X11-180,Y11-180)、(X11-270,Y11-270)である場合、以下の式(8)、式(9)によって第1コアC1の偏心量(X11,Y11)が算出される。
X11=(X11-0+X11-90+X11-180+X11-270)/4-Xc ・・・(8)
Y11=(Y11-0+Y11-90+Y11-180+Y11-270)/4-Yc ・・・(9)
【0041】
なお、画像処理部8は、補正係数であるXcおよびYcの値をコアCを測定する毎に算出してもよい。また、画像処理部8は、補正係数であるXcおよびYcの値を記憶していてもよく、記憶しているXcおよびYcの値からコアCの偏心量を算出してもよい。この場合、予め記憶されているXcおよびYcの値を繰り返し用いることが可能である。
【0042】
次に、本実施形態に係るコア偏心測定装置1から得られる作用効果について説明する。コア偏心測定装置1では、マルチコアファイバ10は回転機構4によって複数回回転する。回転機構4がマルチコアファイバ10を回転させるごとに、画像処理部8によってマルチコアファイバ10における各コアCの規定位置からのずれ量(例えば、ずれ量X1-0、およびずれ量X2-0等)が測定される。
【0043】
各コアCに対して、マルチコアファイバ10が回転するごとに測定された複数の上記ずれ量から補正係数(例えば、XcおよびYc)が算出される。複数のずれ量をマルチコアファイバ10の回転回数(例えば、4)で割った値から補正係数を引く(例えば式(8)および式(9)の演算を行う)ことによってコアCの偏心量が算出される。複数のずれ量を当該回転回数で割った値から補正係数を引くことによって、収差の影響を抑えることができる。したがって、光学系5のレンズ(例えば、第1レンズ5cおよび第2レンズ5d)が安価なレンズであっても当該収差の影響を無視できるので、レンズ等にかかるコストを低減できる。そして、収差の影響を抑えられることから、マルチコアファイバ10のコアCの偏心量を高精度に測定できる。
【0044】
回転機構4は、nを自然数としたときにマルチコアファイバ10を90/n度ずつ回転させてもよい。この場合、仮に光学系5のレンズに収差がないとした場合、(90/n)度回転させたときのずれ量と、180+(90/n)度回転させたときのずれ量とが互いに同一となり、補正係数が0になる。一方、仮にレンズに収差があるとした場合、(90/n)度回転させたときのずれ量と、180+(90/n)度回転させたときのずれ量とが互いに同一とならないことがあり、補正係数は0以外の数値になる。したがって、収差に応じた補正係数を算出できる。この補正係数を用いて偏心量を算出することによって、より高精度にコアCの偏心量を測定できる。
【0045】
上記nの値が1、2および3のいずれかであってもよい。この場合、マルチコアファイバ10の回転回数が少ないので、コアCの偏心量の測定をスムーズに行うことができる。
【0046】
コア偏心測定装置1は、マルチコアファイバ10のクラッドにマルチコアファイバ10の側方から光L2を入射する第2照射光源3を備えてもよい。この場合、撮影されるマルチコアファイバ10の第2端面12のクラッドの外周をより鮮明に光らせることができる。より具体的には、仮にコア偏心測定装置1が第2照射光源3を有しない場合、クラッドの外周に傷があったときに、撮像部7によって撮像された画像において当該傷が見えるということが起こりうる。当該傷は、例えば、マルチコアファイバ10がファイバクリーバによって切断されたときに生じる。これに対し、コア偏心測定装置1が第2照射光源3を有する場合には、当該傷を見えにくくすることができる。従って、第2端面12の撮像画像においてクラッドRの外周をより鮮明に表示できるので、コアCの偏心の測定精度を更に高めることができる。
【0047】
コア偏心測定装置1は、第2端面12に対向する光学系5と、光学系5を介して第2端面12に光L3を入射する第3照射光源6を備えてもよい。
【0048】
前述したように、撮像部7は可視光の感度を有してもよい。この場合、コアCの偏心量の測定に可視光が用いられるので、撮像部7等にかかるコストの増大を抑制できる。また、撮像部7は近赤外光の感度を有してもよい。この場合、マルチコアファイバ10の実使用に近い形でコアの偏心量を測定できる。
【0049】
以上、本開示に係るコア偏心測定装置の実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、前述した実施形態に限定されない。すなわち、本発明が特許請求の範囲に記載された要旨を変更しない範囲において種々の変形及び変更が可能であることは、当業者によって容易に認識される。例えば、コア偏心測定装置の各部品の形状、大きさ、数、材料及び配置態様は、前述した内容に限られず適宜変更可能である。
【0050】
例えば、前述の実施形態では、同軸落射照明である第3照射光源6を備えるコア偏心測定装置1について説明した。しかしながら、第3照射光源は、同軸落射照明以外のものであってもよく、例えば、リング照明であってもよいし、第2端面12の斜め前方から光を照射する光源であってもよい。前述の実施形態では、第2照射光源3および第3照射光源6を有するコア偏心測定装置1について説明した。しかしながら、第2照射光源3および第3照射光源6のいずれかを有しないコア偏心測定装置であってもよい。このように、第2照射光源3および第3照射光源6のいずれかは省略可能である。
【符号の説明】
【0051】
1…コア偏心測定装置
2…第1照射光源
3…第2照射光源
4…回転機構
5…光学系
5b…ハーフミラー
5c…第1レンズ
5d…第2レンズ
6…第3照射光源
7…撮像部
8…画像処理部
10…マルチコアファイバ
11…第1端面
12…第2端面
C…コア
C1…第1コア
C2…第2コア
C3…第3コア
C4…第4コア
L1,L2,L3…光
M…マーカ
O…中心
R…クラッド
X…軸線
Y1,Y2,Y3,Y4…頂点
Z1,Z2…図形
θ1,θ2,θ3,θ4…角度