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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060984
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】コイル装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/32 20060101AFI20240425BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20240425BHJP
   H01F 38/08 20060101ALI20240425BHJP
   H01F 5/02 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
H01F27/32 150
H01F27/28 K
H01F38/08 F
H01F38/08 D
H01F5/02 F
H01F5/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168610
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】李 戈
(72)【発明者】
【氏名】堀川 俊之
【テーマコード(参考)】
5E043
5E044
【Fターム(参考)】
5E043AB01
5E043BA01
5E043BA02
5E044BB02
5E044BB07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】漏れ磁束のばらつきを防止し、漏れ磁束を適切な値に調整することが可能なコイル装置を提供する。
【解決手段】コイル装置は、ボビンと、ボビンに配置される第1コイル10と、第1コイルの外側に配置される第2コイル20と、を有する。第1コイルは、第2コイルの内側に配置される第1部分と、第1部分の巻軸に沿って、第1部分及び第2コイルに隣接する第2部分12と、を有する。ボビンは、第1部分が配置される第1領域31と、第2部分12が配置される第2領域32と、を有する。ボビンの外周面には、ボビンの径方向に突出する第1凸部34と、第2凸部35a~35cと、仕切凸部36と、が形成されている。第1凸部は、第1領域に位置する。第2凸部は、第1領域に位置し、第1凸部よりもボビンの径方向の外側に突出している。仕切凸部は、第1領域と第2領域との間に位置し、第1凸部よりもボビンの径方向の外側に突出している。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボビンと、
前記ボビンに配置される第1コイルと、
前記第1コイルの外側に配置される第2コイルと、を有し、
前記第1コイルは、前記第2コイルの内側に配置される第1部分と、前記第1部分の巻軸に沿って、前記第1部分および前記第2コイルに隣接する第2部分とを有し、
前記ボビンは、前記第1部分が配置される第1領域と、前記第2部分が配置される第2領域とを有し、
前記ボビンの外周面には、前記ボビンの径方向に突出する第1凸部と第2凸部と仕切凸部とが形成されており、
前記第1凸部は、前記第1領域に位置し、
前記第2凸部は、前記第1領域に位置し、前記第1凸部よりも前記ボビンの径方向の外側に突出しており、
前記仕切凸部は、前記第1領域と前記第2領域との間に位置し、前記第1凸部よりも前記ボビンの径方向の外側に突出しているコイル装置。
【請求項2】
前記第1凸部は、前記ボビンの軸方向に沿って配置された複数の前記第1凸部を有し、
前記第1領域において、前記第2凸部は、隣接する一方の前記第1凸部と他方の前記第1凸部との間に配置されている請求項1に記載のコイル装置。
【請求項3】
前記第2コイルは、相互に連続する複数の第2ターン部を有し、
複数の前記第2ターン部のいずれかは、前記第2凸部に接しており、
複数の前記第2ターン部の他のいずれかは、前記仕切凸部に接している請求項1または2に記載のコイル装置。
【請求項4】
前記第2コイルは、前記ボビンの径方向に沿って配置された複数の層を有し、
前記第2コイルの最外層において、複数の前記第2ターン部のいずれかは、前記第2凸部に接しており、
前記第2コイルの最外層において、複数の前記第2ターン部の他のいずれかは、前記仕切凸部に接している請求項3に記載のコイル装置。
【請求項5】
前記第2凸部は、前記ボビンの軸方向に沿って配置された複数の前記第2凸部を有し、
隣接する一方の前記第2凸部と他方の前記第2凸部との間には、複数の前記第2ターン部が配置されている請求項3に記載のコイル装置。
【請求項6】
前記第1凸部は、前記ボビンの軸方向に沿って配置された複数の前記第1凸部を有し、
前記第1部分は、相互に連続する複数の第1ターン部を有し、
隣接する一方の前記第1凸部と他方の前記第1凸部との間には、複数の前記第1ターン部のいずれかが1つ配置されている請求項1または2に記載のコイル装置。
【請求項7】
前記第1部分と前記第2部分の1層目とは連続している請求項1または2に記載のコイル装置。
【請求項8】
前記第1コイルは、第1ワイヤが巻回されてなり、
前記第2コイルは、第2ワイヤが巻回されてなり、
前記第1凸部および前記第2凸部は、前記ボビンの周方向に沿って延在しており、
前記第1凸部の延在方向の一部には、前記第1ワイヤが挿通する第1切り欠きが形成されており、
前記第2凸部の延在方向の一部には、前記第2ワイヤが挿通する第2切り欠きが形成されている請求項1または2に記載のコイル装置。
【請求項9】
前記第1コイルは、第1ワイヤが巻回されてなり、
前記第1凸部の突出長は、前記第1ワイヤの直径と同等である請求項1または2に記載のコイル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リーケージトランスなどとして用いられるコイル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リーケージトランスとして用いられるコイル装置として、例えば特許文献1に示されるように、第1コイルに第2コイルが積層されたコイル装置がある。この種のコイル装置は、第1コイルと第2コイルとの間の結合係数が高い高結合タイプのコイル装置として知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-310648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のコイル装置のように、第1コイルに第2コイルが積層される場合、第1コイルおよび/または第2コイルの巻乱れに起因して、第1コイルと第2コイルとの間の漏れ磁束(リーケージインダクタンス)にばらつきが生じ、コイル装置の信頼性が低下するおそれがある。
【0005】
本開示は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、漏れ磁束のばらつきを防止し、漏れ磁束を適切な値に調整することが可能なコイル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示のコイル装置は、
ボビンと、
前記ボビンに配置される第1コイルと、
前記第1コイルの外側に配置される第2コイルと、を有し、
前記第1コイルは、前記第2コイルの内側に配置される第1部分と、前記第1部分の巻軸に沿って、前記第1部分および前記第2コイルに隣接する第2部分とを有し、
前記ボビンは、前記第1部分が配置される第1領域と、前記第2部分が配置される第2領域とを有し、
前記ボビンの外周面には、前記ボビンの径方向に突出する第1凸部と第2凸部と仕切凸部とが形成されており、
前記第1凸部は、前記第1領域に位置し、
前記第2凸部は、前記第1領域に位置し、前記第1凸部よりも前記ボビンの径方向の外側に突出しており、
前記仕切凸部は、前記第1領域と前記第2領域との間に位置し、前記第1凸部よりも前記ボビンの径方向の外側に突出している。
【0007】
本開示のコイル装置では、第1コイルが、第2コイルの内側に配置される第1部分と、第1部分の巻軸に沿って、第1部分および第2コイルに隣接する第2部分とを有する。第2コイルが第1コイルの第1部分の外側に配置されることにより、漏れ磁束を小さくする効果が奏される。また、第1部分の巻軸に沿って、第2コイルが第1コイルの第2部分に隣接することにより、漏れ磁束を大きくする効果が奏される。このように、本開示のコイル装置は、漏れ磁束の低減に寄与する部分と、漏れ磁束の増大に寄与する部分とを有する。そして、これらの部分が有機的に結合することにより、漏れ磁束を適切な値に調整することができる。
【0008】
特に、本開示のコイル装置では、ボビンの外周面に、ボビンの径方向に突出する第1凸部と第2凸部と仕切凸部とが形成されている。第1凸部は第1領域に位置するため、例えば、第1凸部に第1ワイヤを固定しつつ、第1領域に第1部分を形成することが可能である。これにより、第1部分の巻形状や巻位置のばらつきを防止することができる。また、第2凸部は第1領域に位置し、仕切凸部は第1領域と第2領域との間に位置する。そして、これらの凸部は、第1凸部よりもボビンの径方向の外側に突出している。そのため、例えば、第2凸部および/または仕切凸部に第2ワイヤを固定しつつ、第1部分の外側に第2コイルを形成することが可能である。これにより、第2コイルの巻形状や巻位置のばらつきを防止することができる。その結果、第1コイルおよび/または第2コイルに巻乱れが発生しにくくなり、第1コイルと第2コイルとの間の漏れ磁束にばらつきが生じることを防止することができる。
【0009】
前記第1凸部は、前記ボビンの軸方向に沿って配置された複数の前記第1凸部を有し、前記第1領域において、前記第2凸部は、隣接する一方の前記第1凸部と他方の前記第1凸部との間に配置されていてもよい。この場合、ボビンの軸方向に関して、第1領域の任意の位置で、第2凸部に第2ワイヤを固定しつつ、第1部分の外側に第2コイルを形成することが可能である。これにより、第2コイルの巻形状や巻位置のばらつきを防止することができる。
【0010】
前記第2コイルは、相互に連続する複数の第2ターン部を有し、複数の前記第2ターン部のいずれかは、前記第2凸部に接しており、複数の前記第2ターン部の他のいずれかは、前記仕切凸部に接していてもよい。複数の第2ターン部のいずれかを第2凸部に当接させ、その位置を固定することにより、第2コイルの巻形状や巻位置のばらつきを防止することができる。また、複数の第2ターン部の他のいずれかを仕切凸部に当接させ、その位置を固定することにより、第2コイルの巻形状や巻位置のばらつきを防止することができる。
【0011】
前記第2コイルは、前記ボビンの径方向に沿って配置された複数の層を有し、前記第2コイルの最外層において、複数の前記第2ターン部のいずれかは、前記第2凸部に接しており、前記第2コイルの最外層において、複数の前記第2ターン部の他のいずれかは、前記仕切凸部に接していてもよい。この場合、第2コイルの最外層において、複数の第2ターン部のいずれかが第2凸部および仕切凸部に固定され、第2コイルの巻形状や巻位置のばらつきを防止することができる。
【0012】
前記第2凸部は、前記ボビンの軸方向に沿って配置された複数の前記第2凸部を有し、隣接する一方の前記第2凸部と他方の前記第2凸部との間には、複数の前記第2ターン部が配置されていてもよい。この場合、一方の第2凸部と他方の第2凸部との間に、第2ワイヤを連続して(第2凸部を跨ぐことなく)巻回することができるため、第2コイルの形成が容易になる。
【0013】
前記第1凸部は、前記ボビンの軸方向に沿って配置された複数の前記第1凸部を有し、前記第1部分は、相互に連続する複数の第1ターン部を有し、隣接する一方の前記第1凸部と他方の前記第1凸部との間には、複数の前記第1ターン部のいずれかが1つ配置されていてもよい。この場合、隣接する一方の第1凸部と他方の第1凸部との間に、1つの第1ターン部が挟み込まれるため、一つひとつの第1ターン部の巻位置を固定することができる。これにより、第1部分の巻形状や巻位置のばらつきを防止することが可能となり、漏れ磁束の調整が容易になる。
【0014】
前記第1部分と前記第2部分の1層目とは連続していてもよい。この場合、第1部分と第2部分の1層目との間において、第1コイルの巻形状や巻位置のばらつきが生じることを防止することができる。
【0015】
前記第1コイルは、第1ワイヤが巻回されてなり、前記第2コイルは、第2ワイヤが巻回されてなり、前記第1凸部および前記第2凸部は、前記ボビンの周方向に沿って延在しており、前記第1凸部の延在方向の一部には、前記第1ワイヤが挿通する第1切り欠きが形成されており、前記第2凸部の延在方向の一部には、前記第2ワイヤが挿通する第2切り欠きが形成されていてもよい。この場合、例えば、第1領域に第1部分を形成するときに、第1凸部に阻害されることなく、ボビンの軸方向に沿って、第1凸部よりも一方側の領域から他方側の領域へ、第1切り欠きを介して、第1ワイヤを巻回することができる。また、例えば、第1領域に第2コイルを形成するときに、第2凸部に阻害されることなく、ボビンの軸方向に沿って、第2凸部よりも一方側の領域から他方側の領域へ、第2切り欠きを介して、第2ワイヤを巻回することができる。
【0016】
前記第1コイルは、第1ワイヤが巻回されてなり、前記第1凸部の突出長は、前記第1ワイヤの直径と同等でもよい。この場合、第1ターン部を第1凸部に隣接して配置したときに、第1ターン部と第1凸部との間の段差を小さくすることができる。そのため、例えば、第1ターン部と第1凸部とに跨るように、第1ターン部と第1凸部とに第2ターン部を載置したときに、第2ターン部の位置ずれを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は本開示の一実施形態のコイル装置の斜視図である。
図2図2図1に示すコイル装置の分解斜視図である。
図3図3図2に示すボビンの斜視図である。
図4図4図1に示すコイル装置のIV-IV線に沿う断面図である。
図5図5図3に示すボビンに第1ワイヤを巻回したときの側面図である。
図6図6図1に示すコイル装置のVI-VI線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施形態を、図面を用いて説明する。必要に応じて図面を参照して説明を行うものの、図示する内容は、本開示の理解のために模式的かつ例示的に示したにすぎず、外観や寸法比などは実物と異なり得る。以下、本開示を実施形態により具体的に説明するが、本開示はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0019】
図1に示すコイル装置1は、例えばリーケージトランスとして機能し、各種の電気機器の電源回路等に搭載される。図2に示すように、コイル装置1は、第1ワイヤ10aが巻回されてなる第1コイル10と、第2ワイヤ20aが巻回されてなる第2コイル20と、ボビン30とを有する。コイル装置1は、第1コイル10、第2コイル20およびボビン30に加えて、コア50a~50dと端子60a~60dとを具備していてもよい。本実施形態では、第1コイル10および第2コイル20は、ボビン30に設けられる。ただし、ボビン30を省略し、第1コイル10および第2コイル20をコア50a~50dに設けもよい。
【0020】
図面において、X軸は、ボビン30の長手方向(軸方向)に対応する軸である。Y軸は、ボビン30の短手方向(端子60aと端子60bとが向かい合う方向)に対応する軸である。Z軸は、X軸およびY軸に垂直な軸である。以下では、X軸、Y軸およびZ軸の各々について、コイル装置1の中心に向かう方向を「内側」とし、コイル装置1の中心から離れる方向を「外側」とする。また、Z軸の正方向側を「上」とし、Z軸の負方向側を「下」とする。
【0021】
コイル装置1は、ボビン30の軸芯が実装基板(図示略)に対して平行に配置される横型のコイル装置である。本実施形態において、「平行」とは、厳密に平行である場合に限定されず、例えば±10度以内の誤差を許容するものとする。また、「垂直」とは、厳密に垂直である場合に限定されず、例えば±10度以内の誤差を許容するものとする。
【0022】
例えば、コイル装置1のX軸に沿った長さは20~60mmであり、Y軸に沿った長さは10~60mmであり、Z軸に沿った長さは10~70mmである。ただし、コイル装置1のサイズは、これに限定されない。
【0023】
第1ワイヤ10aおよび第2ワイヤ20aは、例えば銅線などを絶縁被覆した絶縁被覆ワイヤで構成されている。第1ワイヤ10aおよび第2ワイヤ20aは、単線で構成されているが、捻り線で構成されてもよい。第1ワイヤ10aまたは第2ワイヤ20aの線径は、例えば1.0~3.0mmである。第2ワイヤ20aの線径は、第1ワイヤ10aの線径よりも大きくなっているが、これと同等、あるいはこれよりも小さくてもよい。なお、本実施形態において、「同等」、「等しい」、「同一」あるいは「同様」とは、厳密に等しい場合に限定されず、例えば±10%以内の誤差を許容するものとする。
【0024】
コア50a~50dは、E型コアであり、それぞれ同一の形状を有する。ただし、コア50a~50dのいずれかが、異なる形状を有していてもよい。コア50a~50dの材質は、金属やフェライト等の磁性材料が挙げられるが、特に限定されない。コア50aとコア50bとは一体であってもよく、コア50cとコア50dとは一体であってもよい。
【0025】
コア50a~50dは、ボビン30に取り付けられる。コア50aは、ベース部51と、ベース部51のY軸方向の両端に形成された外脚部52と、一方の外脚部52と他方の外脚部52との間に形成された中脚部53とを有する。コア50b~50dの構成は、コア50aの構成と同様であるため、その詳細な説明については省略する。
【0026】
ベース部51には、ベース凹部54が形成されていてもよい。ベース凹部54は、ベース部51の側面、すなわち中脚部53が形成されている面とは直交する面に形成されている。ベース部51の側面は、ベース凹部54の位置で凹んでいる。コア50aにおいて、ベース凹部54には、ボビン30の端子台40aの少なくとも一部が配置される。コア50cにおいて、ベース凹部54には、ボビン30の端子台40bの少なくとも一部が配置される。コア50bにおいて、ベース凹部54には、ボビン30の脚部44aが配置される。コア50dにおいて、ベース凹部54には、ボビン30の脚部44bが配置される。
【0027】
外脚部52には、外脚凹部55が形成されていてもよい。外脚凹部55は、外脚部52の内面、すなわち中脚部53と向かい合う側の面に形成されている。外脚部52の内面は、外脚凹部55の位置で凹んでいる。コア50aおよび50bにおいて、外脚部52の内面は、第1コイル10の外周面に沿って湾曲していてもよい。コア50cおよび50dにおいて、外脚部52の内面は、第2コイル20の外周面に沿って湾曲していてもよい(図4)。
【0028】
図3に示すように、ボビン30は、樹脂などの絶縁部材で構成されている。ボビン30は、巻回筒部38を有する。巻回筒部38は、貫通孔38aを有し、貫通孔38aの内部には、コア50a~50d(図2)の中脚部53が挿入される。巻回筒部38の外周面には、第1コイル10が配置(巻回)される(図5)。
【0029】
巻回筒部38のX軸方向の一端には鍔部39aが形成され、巻回筒部38のX軸方向の他端には鍔部39bが形成されていてもよい。鍔部39aおよび39bは、巻回筒部38の径方向に沿って突出しており、巻回筒部38の周方向に沿って延在している。鍔部39aおよび39bは、巻回筒部38の周方向に沿って、連続的に1周しているが、断続的に1周していてもよい。鍔部39aの形状と鍔部39bの形状とは同一であるが、異なっていてもよい。
【0030】
鍔部39aには、端子台40aと脚部44aとが形成されていてもよい。鍔部39bには、端子台40bと脚部44bとが形成されていてもよい。脚部44aは、鍔部39aの下端部に位置する。脚部44aの少なくとも一部は、鍔部39aの端面から、X軸の外側に突出していてもよい。脚部44bは、鍔部39bの下端部に位置する。脚部44bの少なくとも一部は、鍔部39bの端面から、X軸の外側に突出していてもよい。脚部44aおよび脚部44bは、巻回筒部38を支持する役割を有する。
【0031】
端子台40aは、鍔部39aの上端部に位置し、鍔部39aの端面から、X軸の外側に突出していてもよい。端子台40aは、端子固定部41mおよび41nと、凹部42mおよび42nと、絶縁部43とを有していてもよい。ただし、端子台40aの構成は、図3に示す構成に限定されない。
【0032】
端子固定部41mは、端子台40aのY軸方向の一方の端部に形成されており、端子固定部41nは、端子台40aのY軸方向の他方の端部に形成されている。端子固定部41mおよび41nには、それぞれ端子60aおよび60b(図2)が固定される。端子固定部41mおよび41nには、それぞれ端子60aおよび60bを嵌め込むための孔が形成されていてもよい。
【0033】
絶縁部43は、端子台40aのY軸方向の中央部に形成されている。絶縁部43は、端子60a(図2)と端子60bとを絶縁する役割を有する。溝部42mは、端子固定部41mと絶縁部43との間に形成されており、X軸に沿って端子台40aを貫通している。溝部42mには、端子60a(図2)の一部が配置される。溝部42nは、端子固定部41nと絶縁部43との間に形成されており、X軸に沿って端子台40aを貫通している。溝部42nには、端子60b(図2)の一部が配置される。
【0034】
端子台40bは、鍔部39bの上端部に位置し、鍔部39bの端面から、X軸の外側に突出していてもよい。端子台40bは、端子固定部41mおよび41nと、凹部42mおよび42nと、絶縁部43とを有していてもよい。ただし、端子台40bの構成は、図3に示す構成に限定されない。
【0035】
端子固定部41mは、端子台40bのY軸方向の一方の端部に形成されており、端子固定部41nは、端子台40bのY軸方向の他方の端部に形成されている。端子固定部41mおよび41nには、それぞれ端子60cおよび60d(図2)が固定される。端子固定部41mおよび41nには、それぞれ端子60cおよび60d(図2)を嵌め込むための孔が形成されていてもよい。
【0036】
絶縁部43は、端子台40bのY軸方向の中央部に形成されている。絶縁部43は、端子60c(図2)と端子60dとを絶縁する役割を有する。溝部42mは、端子固定部41mと絶縁部43との間に形成されており、X軸に沿って端子台40bを貫通している。溝部42mには、端子60c(図2)の一部が配置される。溝部42nは、端子固定部41nと絶縁部43との間に形成されており、X軸に沿って端子台40bを貫通している。溝部42nには、端子60d(図2)の一部が配置される。
【0037】
巻回筒部38の外周面には、巻回筒部38の径方向に突出する仕切凸部36と、巻回筒部38の径方向に突出する複数の第1凸部34と、巻回筒部38の径方向に突出する複数の第2凸部35とが形成されていてもよい。仕切凸部36は、鍔部39aと鍔部39との間に位置し、巻回筒部38の周方向に沿って延在している。仕切凸部36は、巻回筒部38の軸方向の中央よりも一方側に位置するが、巻回筒部38の軸方向の中央、またはこれよりも他方側に位置していてもよい。仕切凸部36は、第1凸部34よりも、巻回筒部38の径方向の外側に突出している。仕切凸部36の突出長は、特に限定されないが、例えば第1凸部34の突出長の2倍または3倍以上でもよい。
【0038】
仕切凸部36は、巻回筒部38の径方向に沿って、第1コイル10(図6)の外周面または第2コイル20の外周面の位置よりも外側に突出していてもよい。仕切凸部36の突出長は、特に限定されないが、例えば第1ワイヤ10aの線径の2倍または3倍以上でもよく、あるいは第2ワイヤ20aの線径の2倍または3倍以上でもよい。
【0039】
仕切凸部36の延在方向(周方向)の一部には、切り欠き37が形成されていてもよい。切り欠き37の位置では、仕切凸部36の延在方向の一端と他端との間に隙間が形成されている。切り欠き37は、仕切凸部36よりもX軸方向の一方側から他方側へ、第1ワイヤ10a(図2)を挿通させるためのものである。なお、切り欠き37の数は、1個であるが、複数でもよい。また、切り欠き37の位置は、特に限定されない。
【0040】
複数の第1凸部34は、巻回筒部38の軸方向に沿って配置されている。複数の第1凸部34は、仕切凸部36と鍔部39bとの間に位置し、巻回筒部38の周方向に沿って延在している。図5では、5つの第1凸部34が巻回筒部38の軸方向に沿って配置されているが、第1凸部34の数はこれに限定されない。図5に示すように、第1凸部34の突出長は、仕切凸部36の突出長よりも小さくなっている。第1凸部34の突出長は、第1ワイヤ10aの線径と同等であるが、これよりも小さくてもよく、あるいはこれよりも大きくてもよい。例えば、第1凸部34の突出長は、第1ワイヤ10aの線径の1/2倍以上2倍以下である。
【0041】
第1凸部34のX軸方向の幅は、仕切凸部36のX軸方向の幅と同等であるが、これよりも大きくてもよく、あるいはこれよりも小さくてもよい。第1凸部34のX軸方向の幅は、第1ワイヤ10aの線径よりも小さいが、これと同等でもよく、あるいはこれよりも大きくてもよい。例えば、第1凸部34のX軸方向の幅は、第1ワイヤ10aの線径の1/5倍以上2倍以下である。
【0042】
図3に示すように、第1凸部34の延在方向(周方向)の一部には、切り欠き37が形成されていてもよい。切り欠き37の位置では、第1凸部34の延在方向の一端と他端との間に隙間が形成されている。切り欠き37は、第1凸部34よりもX軸方向の一方側から他方側へ、第1ワイヤ10a(図2)を挿通させるためのものである。なお、複数の第1凸部34の各々について、切り欠き37の数は、1個であるが、複数でもよい。また、切り欠き37の位置は、特に限定されない。
【0043】
図6に示すように、X軸方向に関して、隣接する一方の第1凸部34と他方の第1凸部34との間隔は、第1ワイヤ10aの線径よりも大きい。一方の第1凸部34と他方の第1凸部34との間隔は、第1ワイヤ10aの線径の2倍未満でもよく、あるいは第2ワイヤ20aの線径よりも小さくてもよい。
【0044】
X軸方向に関して、隣接する第1凸部34と仕切凸部36との間隔は、第1ワイヤ10aの線径よりも大きい。第1凸部34と仕切凸部36との間隔は、第1ワイヤ10aの線径の2倍未満でもよく、あるいは第2ワイヤ20aの線径よりも小さくてもよい。なお、上述した2つの区間(一方の第1凸部34と他方の第1凸部34との間の区間/第1凸部34と仕切凸部36との間の区間)の間隔は、等しくてもよく、あるいは異なっていてもよい。
【0045】
第1凸部34は、鍔部39bに対して隣接して配置されてはいないが、鍔部39bの隣に第1凸部34が配置されていてもよい。
【0046】
図3に示すように、複数の第2凸部35a~35cは、巻回筒部38の軸方向に沿って配置されている。第2凸部35a~35cは、仕切凸部36と鍔部39bとの間に位置し、巻回筒部38の周方向に沿って延在している。図5では、3つの第2凸部35a~35cが巻回筒部38の軸方向に沿って配置されているが、第2凸部の数はこれに限定されない。
【0047】
第2凸部35a~35cは、第1凸部34よりも、巻回筒部38の径方向の外側に突出している。第2凸部35a~35cの突出長は、仕切凸部36の突出長と同等であるが、これよりも小さくてもよく、あるいはこれよりも大きくてもよい。第2凸部35a~35cの突出長は、第1ワイヤ10aまたは第2ワイヤ20a(図2)の線径よりも大きくてもよい。例えば、第2凸部35a~35cの突出長は、第1ワイヤ10aの線径と第2ワイヤ20aの線径の和と同等以上でもよい。
【0048】
第2凸部35a~35cのX軸方向の幅は、第1凸部34または仕切凸部36のX軸方向の幅と同等であるが、これよりも大きくてもよく、あるいはこれよりも小さくてもよい。第2凸部35a~35cのX軸方向の幅は、第1ワイヤ10aの線径よりも小さいが、これと同等でもよく、あるいはこれよりも大きくてもよい。例えば、第2凸部35a~35cのX軸方向の幅は、第1ワイヤ10aの線径の1/5倍以上2倍以下である。
【0049】
図3に示すように、第2凸部35a~35cの延在方向(周方向)の一部には、切り欠き37が形成されていてもよい。切り欠き37の位置では、第2凸部35a~35cの延在方向の一端と他端との間に隙間が形成されている。切り欠き37は、第2凸部35a~35cよりもX軸方向の一方側から他方側へ、第1ワイヤ10aおよび/または第2ワイヤ20a(図2)を挿通させるためのものである。なお、複数の第2凸部35a~35cの各々について、切り欠き37の数は、1個であるが、複数でもよい。また、切り欠き37の位置は、特に限定されない。
【0050】
図6に示すように、X軸方向に関して、隣接する一方の第2凸部35aと他方の第2凸部35bとの間隔は、第2ワイヤ20aの線径よりも大きい。また、隣接する一方の第2凸部35bと他方の第2凸部35cとの間隔は、第2ワイヤ20aの線径よりも大きい。また、一方の第2凸部35a(35b)と他方の第2凸部35b(35c)との間隔は、隣接する一方の第1凸部34と他方の第1凸部34との間隔よりも大きい。一方の第2凸部35a(35b)と他方の第2凸部35b(35c)との間隔は、特に限定されないが、第2ワイヤ20aの線径の2倍以上でもよく、あるいは4倍以上でもよい。
【0051】
X軸方向に関して、隣接する第2凸部35aと仕切凸部36との間隔は、第2ワイヤ20aの線径よりも大きい。第2凸部35aと仕切凸部36との間隔は、特に限定されないが、第2ワイヤ20aの線径の2倍以上でもよい。
【0052】
X軸方向に関して、隣接する第2凸部35cと鍔部39bとの間隔は、第1ワイヤ10aの線径よりも大きい。隣接する第2凸部35cと鍔部39bとの間隔は、第2ワイヤ20aの線径よりも小さくなっているが、これと同等、あるいはこれよりも大きくてもよい。
【0053】
ここで、仕切凸部36と第2凸部35aとの間の区間を「第1区間70a」と呼び、第2凸部35aと第2凸部35bとの間の区間を「第2区間70b」と呼び、第2凸部35bと第2凸部35cとの間の区間を「第3区間70c」と呼び、第2凸部35cと鍔部39bとの間の区間を「第4区間70d」と呼ぶ。第1区間70a~第4区間70dの間隔は、異なっているが、等しくてもよい。
【0054】
第2凸部35aは、隣接する一方の第1凸部34と他方の第1凸部34との間に配置されている。第2凸部35bは、隣接する一方の第1凸部34と他方の第1凸部34との間に配置されている。第2凸部35cは、第1凸部34と鍔部39bとの間に配置されている。なお、第1凸部34と仕切凸部36との間に、第2凸部が配置されていてもよい。
【0055】
以下では、巻回筒部38のうち、X軸方向に沿って、仕切凸部36と鍔部39bとの間に位置する領域を「第1領域31」と呼ぶ。また、巻回筒部38のうち、X軸方向に沿って、仕切凸部36と鍔部39aとの間に位置する領域を「第2領域32」と呼ぶ。仕切凸部36は、第1領域31と第2領域32との間に位置し、これらを仕切っている。第1領域31のX軸方向の幅は、第2領域32のX軸方向の幅よりも大きくなっているが、これと同等、あるいはこれよりも小さくてもよい。第1凸部34および第2凸部35a~35cは、第1領域31に位置する。
【0056】
図5に示すように、第1コイル10は、第1領域31に配置(巻回)される第1部分11と、第2領域32に配置(巻回)される第2部分12とを有する。図6に示すように、第1領域31において、第1部分11の外側には、第2コイル20が配置(巻回)される。換言すれば、第1部分11は、第2コイル20の内側に配置される部分である。第2部分12は、X軸に沿って、第1部分11および第2コイル20に隣接している。なお、巻回筒部38の軸芯と、第1コイル10(第1部分11および第2部分12)の巻軸と、第2コイル20の巻軸とは平行である。
【0057】
第1部分11の径方向の層数は、1層であるが、複数層でもよい。第2部分12の径方向の層数は、2層であるが、1層または3層以上でもよい。第1部分11と第2部分12の1層目とは連続している。これにより、第1部分11と第2部分12の1層目との間において、第1コイル10の巻形状や巻位置のばらつきが生じることを防止することができる。第2コイル20の径方向の層数は、2層であるが、1層または3層以上でもよい。
【0058】
第1部分11および第2部分12は、巻回筒部38の外周面に形成されているが、直接、コア50a~50dの外周面に形成されていてもよい。第2コイル20は、第1部分11の外周面に形成されている(当接している)が、第1部分11と第2コイル20との間に、例えば絶縁性の部材が設けられていてもよい。
【0059】
第1部分11は、相互に連続する複数の第1ターン部13を有する。複数の第1ターン部13のいずれかは、隣接する一方の第1凸部34と他方の第1凸部34との間に配置されている。複数の第1ターン部13のいずれかは、隣接する第1凸部34と第2凸部35a~35cのいずれかとの間に配置されている。複数の第1ターン部13のいずれかは、隣接する仕切凸部36と第1凸部34との間に配置されている。複数の第1ターン部13のいずれかは、隣接する鍔部39bと第2凸部35cとの間に配置されている。
【0060】
隣接する一方の第1ターン部13と他方の第1ターン部13との間には、第1凸部34、第2凸部35a、第2凸部35bまたは第2凸部35cのいずれかが配置されている。そのため、一方の第1ターン部13と他方の第1ターン部13とは、X軸に沿って離間している。第1凸部34または第2凸部35a~35cのX軸方向の幅に応じて(あるいは、第1凸部34または第2凸部35a~35cのX軸方向の幅とは無関係に)、一方の第1ターン部13と他方の第1ターン部13との間隔を調整する(特に、複数の第1ターン部13同士を密ではなく疎に配置する)ことにより、第1コイル10と第2コイル20との間の漏れ磁束を適切な値に調整することができる。一方の第1ターン部13と他方の第1ターン部13との間隔は、第1凸部34または第2凸部35a~35cのX軸方向の幅と同等であるが、これよりも大きくてもよい。例えば、一方の第1ターン部13と他方の第1ターン部13との間隔は、第1ワイヤ10aの線径の1/5倍以上2倍以下でもよい。
【0061】
隣接する一方の第1凸部34と他方の第1凸部34との間には、1つの第1ターン部13が配置されている。この場合、一方の第1凸部34と他方の第1凸部34との間に、1つの第1ターン部13が挟み込まれる。そのため、一つひとつの第1ターン部13の巻位置が固定され、第1部分11の巻形状や巻位置のばらつきを防止することができる。これにより、第1コイル10と第2コイル20との間の漏れ磁束の調整が容易になる。ただし、一方の第1凸部34と他方の第1凸部34との間には、2つ以上の第1ターン部13が、X軸方向に隣接して配置されていてもよく、2つ以上の第1ターン部13が、巻回筒部38の径方向に隣接して配置されていてもよい。
【0062】
同様に、隣接する第1凸部34と第2凸部35a~35cのいずれかとの間には、1つの第1ターン部13が配置されている。この場合、第1凸部34と第2凸部35a~35cのいずれかとの間に、1つの第1ターン部13が挟み込まれる。そのため、一つひとつの第1ターン部13の巻位置が固定され、第1部分11の巻形状や巻位置のばらつきを防止することができる。これにより、第1コイル10と第2コイル20との間の漏れ磁束の調整が容易になる。ただし、第1凸部34と第2凸部35a~35cのいずれかとの間には、2つ以上の第1ターン部13が、X軸方向に隣接して配置されていてもよく、2つ以上の第1ターン部13が、巻回筒部38の径方向に隣接して配置されていてもよい。
【0063】
複数の第1ターン部13のいずれかは、X軸に沿って、第1凸部34に隣接して配置されている。複数の第1ターン部13のいずれかは、そのX軸方向の片側または両側に位置する第1凸部34に当接していてもよい。この場合、第1凸部34に第1ターン部13(第1ワイヤ10a)を固定しつつ、第1領域31に第1部分11を形成することが可能となる。それゆえ、第1部分11の巻形状や巻位置のばらつきを防止することができる。
【0064】
複数の第1ターン部13のいずれかは、X軸に沿って、第2凸部35a~35cに隣接して配置されている。複数の第1ターン部13のいずれかは、そのX軸方向の片側に位置する第2凸部35a~35cに当接していてもよい。この場合、第2凸部35a~35cに第1ターン部13(第1ワイヤ10a)を固定しつつ、第1領域31に第1部分11を形成することが可能となる。それゆえ、第1部分11の巻形状や巻位置のばらつきを防止することができる。
【0065】
複数の第1ターン部13のいずれかは、仕切凸部36に当接していてもよい。また、複数の第1ターン部13のいずれかは、鍔部39bに当接していてもよい。この場合、仕切凸部36および/または鍔部39bに第1ターン部13(第1ワイヤ10a)を固定しつつ、第1領域31に第1部分11を形成することが可能となり、第1部分11の巻形状や巻位置のばらつきを防止することができる。
【0066】
なお、複数の第1ターン部13のいずれかは、そのX軸方向の片側または両側に位置する第1凸部34に対して離間して配置されていてもよい。すなわち、第1ターン部13と第1凸部34との間には、隙間が形成されていてもよい。同様に、第1ターン部13と第2凸部35a~35cのいずれかとの間、第1ターン部13と仕切凸部36との間、または第1ターン部13と鍔部39bとの間には、隙間が形成されていてもよい。
【0067】
第2コイル20は、相互に連続する複数の第2ターン部23を有する。第2コイル20の1層目において、第2ターン部23は、隣接する第1ターン部13と第1凸部34とに跨りつつ、第1ターン部13と第1凸部34とに載置されていてもよい。より詳細には、第2ターン部23は、第1ターン部13と第1凸部34との間の窪み(または、隙間)に固定されていてもよい。この場合、第2ターン部23が位置ずれしにくくなり、第1ターン部13と第2ターン部23との位置関係が適正化され、第1コイル10と第2コイル20との間の漏れ磁束を適切な値に調整することができる。
【0068】
上述したように、第1凸部34の突出長が、第1ワイヤ10aの直径と同等である場合、第1ターン部13と第1凸部34との間の段差を小さくすることができる。そのため、第1ターン部13と第1凸部34とに第2ターン部23を載置したときに、第2ターン部23の位置ずれを防止することができる。
【0069】
なお、第2ターン部23は、必ずしも、第1凸部34に載置されていなくてもよい。例えば、複数の第2ターン部23のいずれかは、隣接する一方の第1ターン部13と他方の第1ターン部13とに跨りつつ、一方の第1ターン部13と他方の第1ターン部13とに載置されていてもよい。この場合、一方の第1ターン部13と他方の第1ターン部13との間の窪み(または、隙間)に、第2ターン部23を固定することが可能となり、第2ターン部23の位置ずれを防止することができる。これにより、第1ターン部13と第2ターン部23との位置関係が適正化され、第1コイル10と第2コイル20との間の漏れ磁束を適切な値に調整することができる。あるいは、第2ターン部23は、2つの第1ターン部13に跨ることなく、1つの第1ターン部13に載置されていてもよい。
【0070】
第2コイル20の1層目において、隣接する一方の第2ターン部23は、他方の第2ターン部23に当接しているが、離間していてもよい。第2凸部35a~35cに隣接する第2ターン部23は、位置ずれを防止する観点から、第2凸部35a~35cに当接していることが好ましい。第2ターン部23を第2凸部35a~35cに当接させ、その位置を固定することにより、第2ターン部23の巻形状や巻位置のばらつきを防止することができる。ただし、第2ターン部23と第2凸部35a~35cのいずれかとの間に隙間が形成されていてもよい。
【0071】
仕切凸部36に隣接する第2ターン部23は、位置ずれを防止する観点から、仕切凸部36に当接していることが好ましい。第2ターン部23を仕切凸部36に当接させ、その位置を固定することにより、第2ターン部23の巻形状や巻位置のばらつきを防止することができる。ただし、第2ターン部23と仕切凸部36との間に隙間が形成されていてもよい。
【0072】
なお、本発明者等の調査によると、第1コイル10と第2コイル20との間の漏れ磁束のばらつきは、第2コイル20の巻形状や巻位置のばらつきによる影響が大きいことが明らかになっている。上記のように、第2ターン部23を第2凸部35a~35cおよび/または仕切凸部36に当接させることにより、第2コイル20の巻形状や巻位置のばらつきに起因する漏れ磁束のばらつきを防止することができる。
【0073】
第2コイル20の2層目(最外層)では、第2コイル20の1層目に比べて、第2ターン部23の数は少なくなっている。ただし、第2コイル20の2層目の第2ターン部23の数は、第2コイル20の1層目の第2ターン部23の数と等しくてもよく、あるいはこれよりも多くてもよい。第2コイル20の2層目(最外層)において、複数の第2ターン部23のいずれかは、位置ずれを防止する観点から、第2凸部35a~35cのいずれかに当接していることが好ましい。また、第2コイル20の2層目(最外層)において、複数の第2ターン部23のいずれかは、位置ずれを防止する観点から、仕切凸部36に当接していることが好ましい。この場合、第2コイル20の2層目(最外層)において、第2ターン部23が、第2凸部35a~35cのいずれか、および/または仕切凸部36に固定されるため、第2ターン部23の巻形状や巻位置のばらつきを防止することができる。
【0074】
第1コイル10の第1部分11において、第1区間70aに配置される第1ターン部13の数は2個であるが、1個または3個以上でもよい。第2コイル20の1層目において、第1区間70aに配置される第2ターン部23の数は2個であるが、1個または3以上でもよい。第2コイル20の2層目(最外層)において、第1区間70aに配置される第2ターン部23の数は1個であるが、複数でもよい。第3区間70cについても同様である。
【0075】
第1コイル10の第1部分11において、第2区間70bに配置される第1ターン部13の数は4個であるが、1~3個あるいは5個以上でもよい。第2コイル20の1層目において、第2区間70bに配置される第2ターン部23の数は4個であるが、1~3個あるいは5個以上でもよい。第2コイル20の2層目において、第2区間70bに配置される第2ターン部23の数は2個であるが、1個あるいは3個以上でもよい。なお、第4区間70dには、第2ターン部23が配置されていないが、第2ターン部23が、X軸方向に1層以上、あるいは径方向に1層または2層以上で配置されていてもよい。
【0076】
本実施形態では、第1区間70aに、第2ワイヤ20aを連続して2ターンで巻回し、第2コイル20の1層目の一部を形成することができる。また、第2区間70bに、第2ワイヤ20aを連続して4ターンで巻回し、第2コイル20の1層目の一部を形成することができる。また、第3区間70cに、第2ワイヤ20aを連続して2ターンで巻回し、第2コイル20の1層目の一部を形成することができる。このように、第1区間70a~第3区間70cに第2ワイヤ20aを連続して巻回することができるため、第2コイル20の形成が容易である。
【0077】
第2領域32において、第1コイル10の第2部分12は、径方向に沿って、2層で形成されている。第2部分12は、仕切凸部36と鍔部39aとの間に配置されている。第2領域32において、複数の第1ターン部13のいずれかは、位置ずれを防止する観点から、鍔部39aに当接していてもよい。複数の第1ターン部13のいずれかは、位置ずれを防止する観点から、仕切凸部36に当接していてもよい。仕切凸部36は、巻回筒部38の径方向に沿って、第2部分12の外周面よりも外側に突出していてもよい。
【0078】
図2に示すように、第1コイル10は、引出部14aおよび14bを有する。引出部14aは、例えば、仕切凸部36に隣接する位置で、第2部分12(図6)の2層目から立ち上げられ、端子台40aまで引き出される。引出部14bは、例えば、鍔部39bに隣接する位置で、第1部分11から立ち上げられる(図5)。そして、引出部14bは、第2コイル20および第1コイル10(第2部分12)の外周面よりも外側を通過しつつ、端子台40aまで引き出される。
【0079】
第2コイル20は、引出部24aおよび24bを有する。引出部24aは、例えば、第2凸部35c(図6)に隣接する位置で、第2コイル20の1層目から立ち上げられ、端子台40bまで引き出される。引出部24bは、例えば、第2凸部35cに隣接する位置で、第2コイル20の2層目から端子台40bまで引き出される。
【0080】
図1に示すように、端子60aおよび60bは、端子台40aに取り付けられ、端子60cおよび60dは、端子台40bに取り付けられる。図2に示すように、端子60a~60dは、それぞれ固定部61と、連結部62と、継線部63とを有していてもよい。
【0081】
固定部61は、端子台40aまたは40bに固定される部分である。端子60aの固定部61は、端子台40aの端子固定部41m(図3)に取り付けられる。端子60bの固定部61は、端子台40aの端子固定部41n(図3)に取り付けられる。端子60cの固定部61は、端子台40bの端子固定部41m(図3)に取り付けられる。端子60dの固定部61は、端子台40bの端子固定部41n(図3)に取り付けられる。なお、固定部61に形成された貫通孔には、留め具(例えば、ボルト)が挿入されてもよい。端子台40aまたは40bには、この留め具に嵌合する部材(例えば、ナット)が設けられていてもよい。
【0082】
継線部63は、引出部14a、14b、24aまたは24bが接続される部分である。継線部63は、C字形状を有し、引出部14a、14b、24aまたは24bを挟み込み可能に構成されている。ただし、継線部63の形状はこれに限定されず、例えば、リング形状を有していてもよい。引出部14a、14b、24aまたは24bは、継線部63にレーザ溶接されてもよい。
【0083】
連結部62は、固定部61と継線部63との間に位置し、これらを接続する部分である。端子60aの連結部62の少なくとも一部は、端子台40aの溝部42m(図3)に配置されてもよい。端子60bの連結部62の少なくとも一部は、端子台40aの溝部42nに配置されてもよい。端子60cの連結部62の少なくとも一部は、端子台40bの溝部42mに配置されてもよい。端子60dの連結部62の少なくとも一部は、端子台40bの溝部42nに配置されてもよい。
【0084】
次に、コイル装置1の製造方法について説明する。まず、図2に示す各部材を準備する。ボビン30には、端子60a~60dが一体成形されていてもよい。あるいは、端子60a~60dをボビン30に後付けしておいてもよい。
【0085】
次に、図5に示すように、ボビン30の巻回筒部38に第1コイル10を形成する。より詳細には、以下のようにして、巻回筒部38の第1領域31に第1コイル10の第1部分11を形成する。まず、鍔部39bと第2凸部35cとの間の第4区間70dに、第1ワイヤ10aを巻回する。次いで、その隣の第3区間70cへ、第2凸部35cの切り欠き37(図3)を介して、第1ワイヤ10aを移行する。そして、第3区間70cにおいて、隣接する第1凸部34と第2凸部35c(35b)との間に第1ワイヤ10aを巻回する。次いで、その隣の第2区間70bへ、第2凸部35bの切り欠き37(図3)を介して、第1ワイヤ10aを移行する。そして、第2区間70bにおいて、隣接する第1凸部34と第2凸部35b(35a)との間、さらには隣接する一方の第1凸部34と他方の第1凸部34との間に、第1ワイヤ10aを巻回する。次いで、その隣の第1区間70aへ、第2凸部35aの切り欠き37(図3)を介して、第1ワイヤ10aを移行する。そして、第1区間70aにおいて、隣接する第1凸部34と第2凸部35aとの間、さらには隣接する第1凸部34と仕切凸部36との間に、第1ワイヤ10aを巻回する。以上のようにして、第1領域31に第1部分11(複数の第1ターン部13)を形成する。
【0086】
次に、以下のようにして、巻回筒部38の第2領域32に第1コイル10の第2部分12を形成する。まず、仕切凸部36の切り欠き37(図3)を介して、第1ワイヤ10aを第1領域31から第2領域32に移行する。そして、仕切凸部36から鍔部39aに向けて、第1ワイヤ10aを巻回筒部38の外周面に巻回し、第2部分12の1層目を形成する。次いで、鍔部39aから仕切凸部36に向けて、1層目の外側に第1ワイヤ10aを巻回し、第2部分12の2層目を形成する。以上のようにして、第2領域32に第2部分12を形成する。
【0087】
次に、図6に示すように、以下のようにして、第1コイル10の外側に第2コイル20を形成する。まず、第3区間70cにおいて、第2凸部35cに隣接する位置から、第2ワイヤ20aを第1部分11の外側に巻き始める。次いで、その隣の第2区間70bへ、第2凸部35bの切り欠き37(図3)を介して、第2ワイヤ20aを移行する。そして、第2区間70bにおいて、第1部分11の外側に第2ワイヤ20aを巻回する。次いで、その隣の第1区間70aへ、第2凸部35aの切り欠き37(図3)を介して、第2ワイヤ20aを移行する。そして、第1区間70aにおいて、第1部分11の外側に第2ワイヤ20aを巻回する。これにより、第2コイル20の1層目を形成する。
【0088】
次いで、第1区間70aにおいて、第2コイル20の1層目の外側に第2ワイヤ20aを巻回し、第2コイル20の2層目を形成する。次いで、その隣の第2区間70bへ、第2凸部35aの切り欠き37(図3)を介して、第2ワイヤ20aを移行する。そして、第2区間70bにおいて、第2コイル20の1層目の外側に第2ワイヤ20aを巻回する。次いで、その隣の第3区間70cへ、第2凸部35bの切り欠き37(図3)を介して、第2ワイヤ20aを移行する。そして、第3区間70cにおいて、第2コイル20の1層目の外側に第2ワイヤ20aを巻回する。以上のようにして、第2コイル20を形成する。
【0089】
次に、図1に示すように、第1コイル10の引出部14aを端子60aの継線部63(図2)に接続する。また、第1コイル10の引出部14bを端子60bの継線部63(図2)に接続する。また、第2コイル20の引出部24aを端子60cの継線部63(図2)に接続する。また、第2コイル20の引出部24bを端子60dの継線部63(図2)に接続する。必要に応じて、引出部14a、14b、24aおよび24bにレーザ溶接を行ってもよい。
【0090】
次に、ボビン30にコア50a~50dを取り付ける。より詳細には、コア50a~50dの各々の中脚部53(図2)を巻回筒部38の貫通孔38a(図3)に嵌め込む。必要に応じて、コア50a~50dを相互に接着してもよい。以上のようにして、コイル装置1を製造することができる。
【0091】
本実施形態では、図6に示すように、第2コイル20が第1コイル10の第1部分11の外側に配置されることにより、漏れ磁束を小さくする効果が奏される。また、X軸に沿って、第2コイル20が第1コイル10の第2部分12に隣接することにより、漏れ磁束を大きくする効果が奏される。このように、コイル装置1は、漏れ磁束の低減に寄与する部分と、漏れ磁束の増大に寄与する部分とを有する。そして、これらの部分が有機的に結合することにより、第1コイル10と第2コイル20との間の漏れ磁束を適切な値に調整することができる。
【0092】
特に、本実施形態では、第1凸部34が第1領域31に形成されているため、第1凸部34に第1ワイヤ10aを固定しつつ、第1領域31に第1部分11を形成することが可能である。これにより、第1部分11の巻形状や巻位置のばらつきを防止することができる。また、第2凸部35a~35cが第1領域31に形成され、仕切凸部36が第1領域31と第2領域32との間に形成されている。そのため、第2凸部35a~35cさらには仕切凸部36に第2ワイヤ20aを固定しつつ、第1部分11の外側に第2コイル20を形成することが可能である。これにより、第2コイル20の巻形状や巻位置のばらつきを防止することができる。その結果、第1コイル10(第1部分11)および/または第2コイル20に巻乱れが発生しにくくなり、第1コイル10と第2コイル20との間の漏れ磁束にばらつきが生じることを防止することができる。
【0093】
また、図3に示すように、複数の第1凸部34には、切り欠き37が形成されている。そのため、図5に示すように、第1領域31に第1部分11を形成するときに、第1凸部34に阻害されることなく、X軸に沿って、第1凸部34よりも一方側から他方側へ、切り欠き37を介して、第1ワイヤ10aを巻回することができる。
【0094】
また、図3に示すように、第2凸部35には、切り欠き37が形成されている。そのため、図5に示すように、第1領域31に第2コイル20を形成するときに、第2凸部35に阻害されることなく、X軸に沿って、第2凸部35よりも一方側から他方側へ、切り欠き37を介して、第2ワイヤ20aを巻回することができる。
【0095】
なお、本開示は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本開示の範囲内で種々に改変することができる。例えば、上記実施形態では、本開示のリーケージトランスへの適用例について説明したが、本開示は、リーケージトランス以外のトランスにも適用することができる。
【0096】
上記実施形態において、図3に示すように、複数の第1凸部34のX軸方向の幅は等しくなっていたが、異なっていてもよい。例えば、仕切凸部36に隣接する第1凸部34のX軸方向の幅は、他の第1凸部34のX軸方向の幅よりも大きくてもよい。また、第1凸部34には、X軸方向の幅が広い部分(幅広部)と、X軸方向の幅が狭い部分(幅狭部)とが、それぞれ少なくとも1つ具備されていてもよい。幅広部と幅狭部とは、第1凸部34の延在方向(周方向)に沿って、配置されていてもよい。なお、幅狭部のX軸方向の幅は、幅広部のX軸方向の幅の1/2以下でもよく、1/3以下でもよい。
【0097】
上記実施形態において、図3に示すように、第2凸部35a~35cのX軸方向の幅は等しくなっていたが、異なっていてもよい。例えば、第2凸部35cのX軸方向の幅は、第2凸部35aまたは35bのX軸方向の幅よりも大きくてもよい。また、第2凸部35a~35cには、X軸方向の幅が広い部分(幅広部)と、X軸方向の幅が狭い部分(幅狭部)とが、それぞれ少なくとも1つ具備されていてもよい。幅広部と幅狭部とは、第2凸部35a~35cの延在方向(周方向)に沿って、配置されていてもよい。なお、幅狭部のX軸方向の幅は、幅広部のX軸方向の幅の1/2以下でもよく、1/3以下でもよい。
【0098】
上記実施形態において、コイル装置1からボビン30を省略してもよい。この場合、コア50a~50d(例えば、コア50a~50dの中脚部53)に、第1コイル10を形成してもよい。
【0099】
上記実施形態において、第1コイル10および第2コイル20は、空芯コイルでもよい。
【0100】
上記実施形態において、図3に示すように、巻回筒部38の外周面には、複数の第1凸部34が形成されていたが、第1凸部34の数は1個でもよい。また、巻回筒部38の外周面には、複数の第2凸部35a~35cが形成されていたが、第2凸部の数は1個でもよい。
【符号の説明】
【0101】
1…コイル装置
10…第1コイル
10a…第1ワイヤ
11…第1部分
12…第2部分
13…第1ターン部
14a,14b…引出部
20…第2コイル
20a…第2ワイヤ
23…第2ターン部
24a,24b…引出部
30…ボビン
31…第1領域
32…第2領域
34…第1凸部
35a~35c…第2凸部
36…仕切凸部
37…切り欠き
38…巻回筒部
38a…貫通孔
39a,39b…鍔部
40a,40b…端子台
41m,41n…端子固定部
42m,42n…溝部
43…絶縁部
44a,44b…脚部
50a~50d…コア
51…ベース部
52…外脚部
53…中脚部
54…ベース凹部
55…外脚凹部
60a~60d…端子
61…固定部
62…連結部
63…継線部
70a~70d…第1区間~第4区間
図1
図2
図3
図4
図5
図6