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  • 特開-インキ瓶一体型つけペン 図1
  • 特開-インキ瓶一体型つけペン 図2
  • 特開-インキ瓶一体型つけペン 図3
  • 特開-インキ瓶一体型つけペン 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006099
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】インキ瓶一体型つけペン
(51)【国際特許分類】
   B43K 5/02 20060101AFI20240110BHJP
   B43L 25/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B43K5/02
B43L25/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106668
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】大野 貴史
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 千夏
【テーマコード(参考)】
2C350
【Fターム(参考)】
2C350GA01
2C350HA01
2C350KC01
2C350KC19
(57)【要約】
【課題】インキ瓶内のインキが無くなるまで使い切ることが可能な、インキ瓶一体型つけペンを得る。
【解決手段】下方にインキ10を収容するインキ収容部2aを有し上方に首部2bを有したインキ瓶2と、インキ瓶2の首部2bの開口部を密封するキャップ3と、キャップ3に連結されインキ瓶2のインキ収容部2aに挿通されるペン体4とを備え、キャップ3に、インキ瓶2の首部2bへ挿通される中空の筒部31bが設けられ、筒部31bの中空部に、インキ10を貯留する貯留部5bと該インキ10をペン体4のスリット4bに供給するインキ流通溝5dとを有する貯留体5がペン体4と共に嵌着され、筒部31bにおけるペン体4の反対位置に、貯留体5の貯留部5bとインキ瓶2のインキ収容部2aとを連通させる連通孔31cが、連通孔31cの上部とインキ瓶2の首部2bの開口部2cの上部とを一致させて設けられたインキ瓶一体型つけペン1。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方にインキを収容するインキ収容部を有し上方に首部を有したインキ瓶と、前記インキ瓶の首部の開口部を密封するキャップと、前記キャップに連結され前記インキ瓶のインキ収容部に挿通されるペン体とを備え、
前記キャップに、前記インキ瓶の首部へ挿通される中空の筒部が設けられ、
前記筒部の中空部に、前記インキを貯留する貯留部と該インキを前記ペン体のスリットに供給するインキ流通溝とを有する貯留体が前記ペン体と共に嵌着され、
前記筒部における前記ペン体の反対位置に、前記貯留体の貯留部と前記インキ瓶のインキ収容部とを連通させる連通孔が、該連通孔の上部と該インキ瓶の首部の開口部の上部とを一致させて設けられたインキ瓶一体型つけペン。
【請求項2】
前記インキ瓶の底面に、水平面と該水平部に対して45度で傾斜する傾斜面とを有し、前記キャップを前記インキ瓶に装着した状態で、前記傾斜面が前記ペン体の反対側に位置する請求項1に記載のインキ瓶一体型つけペン。
【請求項3】
前記インキ瓶がガラス製であり、前記傾斜面の内側に厚く形成した肉厚部を設けて重くし、前記インキ瓶の傾斜面を机上等につけて置いた際に、前記インキ瓶が自立する請求項2に記載のインキ瓶一体型つけペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、つけペンに関し、詳細にはインキ瓶と一体になったつけペンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、つけペンは、シンプルな構造であることから、洗浄し易く、筆記具用インキの着色剤が染料系であったり顔料系であったり、あるいは粘度が高かったり低かったりなど、さまざまな筆記具用インキに対応することができる。
その反面、万年筆のようなインキタンクがないことから、つけぺんと一緒にインキ瓶が必要となる。
【0003】
これに対し、万年筆は、軸筒の内部に、インキを収納したカートリッジや、インキ吸入器などのインキタンクを備えていることから(例えば、特許文献1参照)、インキタンクの内部に連通したペン芯を介して、インキタンク内のインキをペン体に供給させることができ、筆記距離を長くすることができる。
その反面、ペン芯のインキ溝や櫛溝や空気溝など、細い隙間に入り込んだインキが乾燥して固化することで、筆記できなくなるという課題がある。
【0004】
そこで、本件発明者らは、インキ瓶のキャップにペン先を下に向けたペン体を取り付けたインキ瓶一体型のつけペンを検討するに至ったが、一般的な硬質のガラス製のインキ瓶では、インキ瓶における内面の成形の寸法精度が低いことから、インキ瓶にキャップを装着した状態で、ペン先がインキ瓶の内底面に当接しないよう、インキ瓶の内底面からペン先の先端までの間に十分な隙間を設けた構造にする必要がある。このことにより、インキが少なくなった際に、ペン先がインキ瓶の底に溜まったインキに届かず、最後までインキを使い切れないという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-209863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、インキ瓶内のインキが無くなるまで使い切ることが可能な、インキ瓶一体型つけペンを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるつけペンは、
「1.下方にインキを収容するインキ収容部を有し上方に首部を有したインキ瓶と、前記インキ瓶の首部の開口部を密封するキャップと、前記キャップに連結され前記インキ瓶のインキ収容部に挿通されるペン体とを備え、
前記キャップに、前記インキ瓶の首部へ挿通される中空の筒部が設けられ、
前記筒部の中空部に、前記インキを貯留する貯留部と該インキを前記ペン体のスリットに供給するインキ流通溝とを有する貯留体が前記ペン体と共に嵌着され、
前記筒部における前記ペン体の反対位置に、前記貯留体の貯留部と前記インキ瓶のインキ収容部とを連通させる連通孔が、該連通孔の上部と該インキ瓶の首部の開口部の上部とを一致させて設けられたインキ瓶一体型つけペン。
2.前記インキ瓶の底面に、水平面と該水平部に対して45度で傾斜する傾斜面とを有し、前記キャップを前記インキ瓶に装着した状態で、前記傾斜面が前記ペン体の反対側に位置する前記1項に記載のインキ瓶一体型つけペン。
3.前記インキ瓶がガラス製であり、前記傾斜面の内側に厚く形成した肉厚部を設けて重くし、前記インキ瓶の傾斜面を机上等につけて置いた際に、前記インキ瓶が自立する前記2項に記載のインキ瓶一体型つけペン。」である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のインキ瓶一体型つけペンによれば、インキ瓶内のインキが少なくなった際には、インキ瓶のキャップを下に向けることで、インキが、キャップ側に移動して筒部の連通孔から貯留部に移動し、再びインキ瓶のキャップを上に向けることで、貯留部に溜まったインキがインキ流通溝を流れ、ペン体のスリットに供給され、筆記を行うことができる。これを繰り返すことで、インキ瓶内のインキが無くなるまで使い切ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態のインキ瓶一体型つけペンの縦断面図である。
図2図2は、キャップを下に向けた状態の縦断面図である。
図3図3は、インキ瓶の傾斜面を机上につけて置いた状態の縦断面図である。
図4図4は、筆記状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のし易さの便宜上、適宜縮尺及び縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0011】
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0012】
図1は、本実施形態のインキ瓶一体型つけペンの縦断面図である。図2は、キャップを下に向けた状態の縦断面図である。図3は、インキ瓶の傾斜面を机上につけて置いた状態の縦断面図である。図4は、つけペンでの筆記状態を示す縦断面図である。
【0013】
図1にて、本実施形態のインキ瓶一体型つけペンについて説明を行うが、この場合、インキ瓶にキャップを装着して机上に置かれた状態についての説明となり、その状態でペン先が向いてる方を下方と表現し、その反対を上方と表現する。
本実施形態のインキ瓶一体型つけペン1は、下方にインキ10を収容するインキ収容部2aを有し、上方に首部2bを有したインキ瓶2と、インキ瓶2の首部2bの開口部2cを密封するキャップ3と、キャップ3に連結されインキ瓶2のインキ収容部2aに挿通されるペン体4とを備えている。ペン体4は、その巾方向の中心にペン先4aから長手方向の中央に向かって形成されたスリット4bを有している。
【0014】
本実施形態のインキ瓶2は硬質のガラス製である。インキ瓶2の底面20には、水平面20aと該水平部20aに対して45度で傾斜する傾斜面20bとを有している。傾斜面20bは、キャップ3をインキ瓶2に装着した状態で、傾斜面20bがペン体4の反対側に位置する。また、傾斜面20bの内側には、厚く形成した肉厚部20cを設けて重くしてあり、図3に示すように、傾斜面20bを机上100につけて置いた際に、インキ瓶2が自立する。
【0015】
本実施形態のキャップ3は、キャップ本体30の内方に中空の筒体31が嵌着され一体になっている。筒体31は、キャップ本体30に嵌着される大径筒部31aと、インキ瓶2の首部2bへ挿通される筒部31bとを有している。筒部31bの内方には、ペン体4と共にインキ10を貯留する貯留体5が嵌着されている。
【0016】
貯留体5は、筒部31bに嵌着する嵌着部5aの内部に、インキ10を貯留する貯留部5bを有している。貯留部5bは、ペン体4の反対側で開口する開口部5cを有している。開口部5cは、筒体31の筒部31bに設けた連通孔31cと連通して、インキ瓶2のインキ収容部2aとも連通する。
本実施形態の貯留体5の外形形状は、ペン体4に沿って形成されており、ペン体4で筆記が行われる際に、貯留体5が紙面に接触しないよう、ペン体4の反対面はペン体4側に向かって凹むように湾曲させている。また、貯留体5のペン体4側には、全長に渡り設けられたインキ流通溝5dを有している。
インキ流通溝5dは、上方部の隙間が0.2mmで、下方部の隙間が0.1mmの先窄み形状になっている。スリット4bは、上方部の隙間が0.15mmで、下方部のペン先4aが密着する先窄み形状になっている。また、インキ流通溝5dの上方部は、貯留部5bに連通していることから、貯留部5bに貯留されたインキ10は、毛細管力と重力とで、インキ流通溝5dを通過して、スリット4bに入り、ペン先4aまで移動して、筆記が行える。
【0017】
本実施形態のインキ瓶一体型つけペン1は、インキ収容部2a内のインキ10が、ペン体4のペン先4aに接する位置まで残っている場合には、一体となったキャップ3とペン4とをつけペン40として、インキ瓶2のインキ10にペン先4aを浸けながら筆記を行うことができる。
【0018】
次に、図2を用いて、インキ収容部2a内のインキ10の残量が、ペン体4のペン先4aに接しなくなった時について説明を行う。図2は、キャップを下に向けた状態の縦断面図である。
図2のようにキャップ3を下方に向けると、インキ瓶2の首部2bと、筒体31の筒部31bとの間にインキ10が入り込み、そのインキ10は、筒体31の連通孔31cと貯留体5の開口部5cとを通過して、貯留部5bに貯留される。尚、キャップ3の内面に当接するインキ瓶2の首部2bの開口部2cの上部と、貯留体5の開口部5cの上部、および筒部31bの連通孔31cの上部とが一致していることから、インキ10が止まることなく、キャップ3の内面に沿って滑らかに貯留部5bに入る。この状態から、再びキャップ3が上方に向く図1の状態に戻すことにより、貯留部5b内のインキ10が、毛細管力と重力とで、インキ流通溝5dを通過して、スリット4bに入り、ペン先4aまで移動して、筆記が行えるようになる。
また、本実施形態のキャップ3は、筒体31の筒部31bの外周にリング状のゴムパッキン32が装着されており、ゴムパッキン32にインキ瓶2の筒部2bの開口部2cの上部が当接し、キャップ3を下方に向けた状態でも、インキ収容部2a内のインキ10が漏れ出ない構造である。また、円筒形状の筒体31の筒部31bの中心線を、円筒形状のキャップ本体30の首部2bの中心線とずらし、筒体31の連通孔31cが位置する側面とインキ瓶2の首部2bの内面との間に空間Kを生じさせ、インキ10が貯留部5bに入り易い構造にしてある。
【0019】
なお、キャップ3を下方に向けた状態から、キャップ3を上方へ向けた図1の状態にしたときに、貯留部5b内に入り切らなかったインキ10は、貯留体5の開口部5cと筒体31の連通孔31cとを通過して、インキ収容部2aに戻る。
以上のことから、本実施形態のインキ瓶一体型つけペン1は、つけペン40にて、インキ瓶2内のインキ10が無くなるまで使い切ることができる。
【0020】
また、本実施形態のインキ瓶一体型つけペン1は、インキ瓶2の底面20に、キャップ3をインキ瓶2に装着した状態でペン体4の反対側に位置する傾斜面20bを有しており、図3に示すように、インキ瓶2の傾斜面20bを机上100につけて置くことができる。さらに、本実施形態では前述の通り、傾斜面20bの内側に厚く形成した肉厚部を20cを設けて重くしてあることから、図3に示すように、使用者がインキ瓶2を支え続けることなく、インキ瓶一体型つけペン1を自立させることができる。これにより、つけペン40が45度で傾斜した状態で、貯留部5b内に入り切らないインキ10を、インキ収容部2aへ戻すことができる。その結果、紙面110に対して、つけペン40を一般的な筆記角度である45度から60度の範囲で傾けて筆記を行う場合において、貯留部5bに貯留されたインキ10が、貯留体5の開口部5cと筒体31の連通孔31cから通過して、落下して、紙面110を汚してしまうことを防止できる。
図4は、つけペン40を紙面110に対して60度傾けて筆記を行っている状態であり、貯留部5bに貯留されたインキ10の液面10aが、貯留部5b内に納まっている。
【符号の説明】
【0021】
1…インキ瓶一体型つけペン、
10…インキ、10a…液面、
2…インキ瓶、2a…インキ収容部、2b…首部、2c…開口部、
20…底面、20a…水平面、20b…傾斜面、20c…肉厚部、
3…キャップ、30…キャップ本体、31…筒体、31a…大径筒部、31b…筒部、31c…連通孔、
4…ペン体、4a…ペン先、4b…スリット、40…つけペン、
5…貯留体、5a…嵌着部、5b…貯留部、5c…開口部、5d…インキ流通溝、
K…空間、100…机上、110…紙面。
図1
図2
図3
図4