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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060992
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】補強構造
(51)【国際特許分類】
   E01D 22/00 20060101AFI20240425BHJP
   E01D 19/02 20060101ALI20240425BHJP
   E02D 27/34 20060101ALI20240425BHJP
   E02D 31/00 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
E01D22/00 B
E01D19/02
E02D27/34 A
E02D31/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168621
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】藤代 勝
(72)【発明者】
【氏名】藤本 達貴
(72)【発明者】
【氏名】森田 遼
(72)【発明者】
【氏名】川部 優太
【テーマコード(参考)】
2D046
2D059
【Fターム(参考)】
2D046DA11
2D059AA03
2D059GG40
2D059GG56
(57)【要約】
【課題】所望の補強効果が得られる橋脚などの補強構造等を提供する。
【解決手段】補強構造2は、基部にフーチング4を有する、コンクリートによる橋脚3の補強を行うものである。補強構造2は、フーチング4の上方で、橋脚3の周囲に形成されたコンクリートによる増厚部5と、増厚部5の上面の橋脚3側の縁部に形成された圧縮抵抗部6と、を具備する。圧縮抵抗部6は、橋脚3および増厚部5のコンクリートの圧縮強度よりも大きい圧縮強度を有するコンクリートによって形成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部にフーチングを有する、コンクリートによる柱部材の補強構造であって、
前記フーチングの上方で、前記柱部材の周囲に形成されたコンクリートによる増厚部と、
前記増厚部の上面の前記柱部材側の縁部に形成された圧縮抵抗部と、
を具備し、
前記圧縮抵抗部が、前記柱部材および前記増厚部のコンクリートの圧縮強度よりも大きい圧縮強度を有する材料によって形成されたことを特徴とする補強構造。
【請求項2】
前記圧縮抵抗部が、超高強度繊維補強コンクリートによって形成されたことを特徴とする請求項1記載の補強構造。
【請求項3】
前記圧縮抵抗部が、現場打ちコンクリートによって形成されたことを特徴とする請求項1記載の補強構造。
【請求項4】
前記圧縮抵抗部が、プレキャストコンクリート部材によって形成されたことを特徴とする請求項1記載の補強構造。
【請求項5】
前記柱部材は橋脚であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋脚などの補強構造等に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁の上部工の拡幅等に伴う荷重増に対応すべく、橋脚を補強する場合がある。その一般的な補強構造として、図8に示すように、橋脚101のフーチング102の上方に、増厚部103をコンクリートによって打ち増すものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-323988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、地震などにより橋脚101に鉛直面内の曲げモーメントMが加わると、増厚部103の上面の橋脚101側の縁部のコンクリートに橋脚3からの圧縮力が集中して当該コンクリートが破壊され、曲げの繰り返しにより、コンクリートの破壊範囲104が当該縁部から増厚部103のコンクリート内に広がる。
【0005】
すると、フーチング102を増厚部103の上面の高さaまで増厚したものとして、塑性化を事前の設計通りに制御することで得られる補強効果が、実際には、破壊範囲104の下端の高さa’までフーチング102を増厚した分の効果しか得られず、橋脚101の補強効果が低減する。また橋脚101の塑性化を事前の設計通りに制御することが難しくなる。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、所望の補強効果が得られる橋脚などの補強構造等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するための本発明は、基部にフーチングを有する、コンクリートによる柱部材の補強構造であって、前記フーチングの上方で、前記柱部材の周囲に形成されたコンクリートによる増厚部と、前記増厚部の上面の前記柱部材側の縁部に形成された圧縮抵抗部と、具備し、前記圧縮抵抗部が、前記柱部材および前記増厚部のコンクリートの圧縮強度よりも大きい圧縮強度を有する材料によって形成されたことを特徴とする補強構造である。
【0008】
本発明によれば、橋脚などの柱部材のフーチングを増厚する増厚部において、柱部材側の縁部に圧縮強度の高い圧縮抵抗部を設けることにより、地震などにより柱部材に鉛直面内の曲げモーメントが加わった際に、増厚部の柱部材側の縁部に圧縮力が集中しても圧縮抵抗部が破壊されることはなく、圧縮力は、圧縮抵抗部からその側方や下方の増厚部のコンクリートに伝達される。このように、圧縮力は増厚部のコンクリートに分散して伝達されるため、増厚部のコンクリートが破壊されることもない。結果、増厚部による所望の補強効果が得られ、柱部材の塑性化を事前の設計通りに制御可能になる。
【0009】
前記圧縮抵抗部が、超高強度繊維補強コンクリートによって形成されることが望ましい。
超高強度繊維補強コンクリートを用いることにより、圧縮抵抗部の圧縮強度を高めることができる。
【0010】
前記圧縮抵抗部は、例えば現場打ちコンクリートによって形成される。あるいは、前記圧縮抵抗部が、プレキャストコンクリート部材によって形成されてもよい。
前者の場合、柱部材の外周面の不陸に圧縮抵抗部の形状を追従させることができ、後者の場合、高品質の圧縮抵抗部を短工期で施工できる。
【0011】
前記柱部材は、例えば橋脚である。
これにより、既存の橋脚を補強構造により補強することが可能になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、所望の補強効果が得られる橋脚などの補強構造等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】補強構造2を示す図。
図2】増厚部5を示す図。
図3】橋脚3の基部近傍を拡大して示す図。
図4】補強構造2の施工方法を示す図。
図5】圧縮抵抗部6の形状や配置の異なる例。
図6】補強構造2aの施工方法を示す図。
図7】圧縮抵抗部6aの形状や配置の異なる例。
図8】フーチング102の増厚部103を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る補強構造2を示す図である。本実施形態の補強構造2は、基部にフーチング4を有する既設の橋脚3を補強するものであり、橋梁の上部工の拡幅等に伴う荷重増に対応して設けられる。
【0016】
橋脚3は、コンクリートによって形成された柱部材である。フーチング4は、橋脚3の基部を拡幅したものであり、コンクリートによって橋脚3と一体に形成される。
【0017】
本実施形態の補強構造2は、フーチング4を上方に増厚して橋脚3の補強を行うものであり、増厚部5、圧縮抵抗部6等を有する。
【0018】
増厚部5は、フーチング4の上方において、橋脚3の周囲にコンクリートを打設することで形成される。当該コンクリートは、例えば橋脚3およびフーチング4のコンクリートと略同等の圧縮強度を有するが、これに限ることはない。
【0019】
この増厚部5により、フーチング4が上方に増厚される。図2(a)は増厚部5の鉛直方向の断面を示す図であり、図2(b)は増厚部5を上から見た図である。
【0020】
増厚部5の上面の橋脚3側の縁部には、圧縮抵抗部6が設けられる。圧縮抵抗部6は、コンクリートにより橋脚3の外周面に沿って形成される。当該コンクリートは、橋脚3および増厚部5のコンクリートよりも大きな圧縮強度を有し、本実施形態では、繊維補強コンクリート、特にUFC(超高強度繊維補強コンクリート)が用いられる。
【0021】
圧縮抵抗部6は、橋脚3の全周を囲むように配置される。また図2(a)に示すように圧縮抵抗部6の鉛直方向の断面は矩形状であり、橋脚3側の辺の長さと、その反対側の辺の長さが同等である。
【0022】
圧縮抵抗部6は、挿し筋7により増厚部5と一体化される。また、橋脚3から挿し筋7によって一体化されてもよい。
【0023】
フーチング4と増厚部5は、せん断補強筋8により一体化される。せん断補強筋8は、フーチング4と増厚部5に跨るように、これらの部材内に埋設される。
【0024】
増厚部5の上部には補強筋9が埋設される。本実施形態では、図2(b)に示すように、橋脚3および増厚部5(フーチング4)の平面が矩形状であり、補強筋9は、橋脚3を囲むように増厚部5の各辺の方向に沿って配置される。当該方向と直交する方向(橋脚3から外側に向かう方向)については、補強筋9の配置が省略されている。
【0025】
図3は、橋脚3の基部近傍を拡大して示したものである。本実施形態では、地震などにより橋脚3に鉛直面内の曲げモーメントMが加わった際に、増厚部5の橋脚3側の縁部に圧縮力が集中しても圧縮抵抗部6が破壊されることはなく、圧縮力は、矢印Cに示すように、圧縮抵抗部6からその側方や下方の増厚部5のコンクリートに伝達される。このように、圧縮力は増厚部5のコンクリートに分散して伝達されるため、増厚部5のコンクリートが破壊されることもない。
【0026】
図4は、補強構造2の施工方法を示す図である。補強構造2の施工時は、例えば図4(a)に示すように、まず、橋脚3の外周面に挿し筋7を挿入して固定するとともに、橋脚3の外側に圧縮抵抗部6を形成するための型枠61を設置する。また、フーチング4の上面にせん断補強筋8を挿入して固定する。
【0027】
その後、フーチング4の上方で補強筋9の配筋を行い、型枠61の内側を除く橋脚3の周囲にコンクリートを打設することで、図4(b)に示すように増厚部5を形成する。この後、型枠61を撤去し、型枠61によって箱抜きされた空間にUFC等のコンクリートを打設することで、図2(a)に示すように圧縮抵抗部6が形成され、補強構造2が構築される。
【0028】
このように、本実施形態によれば、橋脚3のフーチング4を増厚する増厚部5において、橋脚3側の縁部に圧縮強度の高い圧縮抵抗部6を設けることにより、地震などにより橋脚3に鉛直面内の曲げモーメントMが加わった際に、増厚部5の橋脚3側の縁部に圧縮力が集中しても圧縮抵抗部6が破壊されることはなく、圧縮力は、圧縮抵抗部6からその側方や下方の増厚部5のコンクリートに伝達される。このように、圧縮力は増厚部5のコンクリートに分散して伝達されるため、増厚部5のコンクリートが破壊されることもない。結果、増厚部5による所望の補強効果が得られ、橋脚3の塑性化を事前の設計通りに制御可能になる。
【0029】
また、圧縮抵抗部6は現場打ちコンクリートによって形成されるので、橋脚3の外周面の不陸に圧縮抵抗部6の形状を追従させることができる。本実施形態では上記コンクリートとしてUFCを用いることで、圧縮抵抗部6の圧縮強度を高めることができる。
【0030】
しかしながら、本発明は以上の実施形態に限定されない。例えば、圧縮抵抗部6の鉛直方向の断面形状は矩形に限らず、図5(a)に示すように台形としてもよい。この例では、橋脚3側の辺の長さより、その反対側の辺の長さを大きくすることで、増厚部5のコンクリートのより広い範囲に橋脚3からの圧縮力を伝達でき、増厚部5のコンクリートの破壊をさらに抑制できる。また橋脚3や増厚部5、フーチング4の平面も矩形状に限らず、これらの平面を円形としてもよい。
【0031】
また圧縮抵抗部6の配置も特に限定されず、例えば図5(b)に示すように増厚部5が比較的薄い場合には、フーチング4の上面と圧縮抵抗部6の下面が接触してもよい。
【0032】
また、補強構造2の施工方法も前記に限らず、例えば図4(a)の型枠61内にコンクリートを打設して圧縮抵抗部6を形成した後、型枠61を撤去して増厚部5のコンクリートを圧縮抵抗部6の上面まで打設してもよい。さらに、本実施形態では圧縮抵抗部6を現場打ちコンクリートによって形成したが、これに替えてプレキャストコンクリート部材(以下、PCa部材という)を用いてもよい。これにより、高品質の圧縮抵抗部を短工期で施工できる。
【0033】
この場合の補強構造の施工方法としては、まず図6(a)に示すように橋脚3の外周面に挿し筋7を固定した後、当該外周面に沿ってPCa部材による圧縮抵抗部6aを設置し、フーチング4の上面にせん断補強筋8を固定する。
【0034】
その後、フーチング4の上方で補強筋9の配筋を行い、橋脚3の周囲に圧縮抵抗部6aの天端の高さまでコンクリートを打設することで図6(b)に示すように増厚部5が形成され、補強構造2aが構築される。
【0035】
図7(a)は上記の増厚部5を上から見た図である。圧縮抵抗部6aとしてのPCa部材は、前記と同様、橋脚3および増厚部5のコンクリートよりも大きな圧縮強度を有するコンクリートを用いて製作され、当該コンクリートとしては、繊維補強コンクリート、特にUFCを用いることができる。
【0036】
また図7(a)の例では、PCa部材が平面視で直線状であり、橋脚3の各辺に沿って配置したPCa部材の端部同士が、橋脚3の角部に当たる位置で、ボルト等の連結具63により連結される。
【0037】
ただしPCa部材の形状や配置はこれに限ることはなく、例えば図7(b)に示すように、圧縮抵抗部6aとして平面視でL字状のPCa部材を用い、2つのPCa部材を、橋脚3を囲むように配置し、PCa部材の端部同士を橋脚3の角部に当たる位置で連結具63により連結してもよい。また図7(c)に示すように、平面視で直線状のPCa部材を橋脚3の各辺に沿って配置するが、各PCa部材の端部同士は連結しない構成とすることも可能である。PCa部材の形状や配置をどうするかは、圧縮抵抗部6aに必要な強度や耐久性、施工の容易さ等を考慮して定めることができる。また橋脚3の平面が円形の場合は、平面視で円弧状のPCa部材を圧縮抵抗部6aとして用い、橋脚3を囲むように複数のPCa部材を配置すればよい。
【0038】
また上記の補強構造2aでは、増厚部5等と圧縮抵抗部6aを一体化するための部材として挿し筋7を用いているが、その代わりにボルトを用いてもよい。
【0039】
また本実施形態の補強構造2、2aは既存の橋脚3を補強するものであるが、その他の柱部材、例えば索道を支持する柱部材を補強するものであってもよい。この場合も、当該柱部材のフーチング4を増厚部5によって増厚し、圧縮抵抗部6、6aを前記したように設ければよい。
【0040】
また本実施形態では圧縮抵抗部6、6aをコンクリートにより形成したが、金属や樹脂などその他の材料を用いて圧縮抵抗部を形成してもよい。この場合も、圧縮抵抗部を形成する材料は、橋脚3および増厚部5のコンクリートよりも大きな圧縮強度を有するものとする。
【0041】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0042】
2、2a:補強構造
3、101:橋脚
4、102:フーチング
5、103:増厚部
6、6a:圧縮抵抗部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8