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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060993
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】スライド式切換弁及び接続構造
(51)【国際特許分類】
   F16K 27/00 20060101AFI20240425BHJP
   F16K 11/065 20060101ALI20240425BHJP
   F25B 41/26 20210101ALI20240425BHJP
【FI】
F16K27/00 C
F16K11/065 Z
F25B41/26 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168622
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100213757
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 詩人
(72)【発明者】
【氏名】高田 裕正
【テーマコード(参考)】
3H051
3H067
【Fターム(参考)】
3H051AA03
3H051BB02
3H051CC15
3H051DD02
3H051FF08
3H067AA15
3H067CC33
3H067CC34
3H067DD05
3H067DD12
3H067DD32
3H067DD49
3H067EA16
3H067EC25
3H067FF12
3H067GG23
3H067GG24
(57)【要約】
【課題】配管を容易に接続することができるとともに低コスト化することができるスライド式切換弁及び接続構造を提供する。
【解決手段】弁本体2が薄板によって形成されていることで低コスト化することができる。組付手段6が接続部材20と係合する係合部としての面613Aを有することで、接続部材20によって、継手部材61、挿入部としてのコネクタ10と、をZ方向において挟み込み、弁本体2に対して配管12~14が接続され、接続部材20を用いた接続が可能となり、配管を容易に接続することができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板によって中空状に形成されることで内側に弁室を有する弁本体と、
複数の弁ポートが形成された弁座面を有するとともに前記弁室内に設けられる弁座部材と、
前記弁ポートを弁室に対して開閉する弁体と、
前記弁本体に接続される継手部材を有し、該弁本体に配管を接続するための組付手段と、を備え、
前記継手部材は、前記配管又は該配管に接続されたコネクタが挿入部として挿入されるとともに、該挿入部との間をシールするためのシール面を有し、
前記組付手段は、前記継手部材に対する前記挿入部の挿入方向において前記継手部材又は前記弁本体と前記挿入部とを挟み込む接続部材と係合する係合部を有し、
前記係合部は、前記挿入方向において、前記弁本体を基準として前記配管に向かう側とは反対側を向いていることを特徴とするスライド式切換弁。
【請求項2】
前記係合部は、前記弁本体の外周面のうち前記反対側を向いた領域に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のスライド式切換弁。
【請求項3】
前記継手部材は、薄板により形成されるとともに、前記弁本体に挿入される小径部と、前記挿入部が挿入される大径部と、前記小径部と前記大径部との間において径方向に沿って延びる径方向延在部と、を有し、
前記係合部は、前記径方向延在部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のスライド式切換弁。
【請求項4】
前記係合部は、前記弁本体の外周面に対して隙間をあけて配置されていることを特徴とする請求項3に記載のスライド式切換弁。
【請求項5】
前記係合部は、前記挿入方向との直交面に沿って延びる部分を有することを特徴とする請求項3又は4に記載のスライド式切換弁。
【請求項6】
前記組付手段は、前記弁体のスライド方向に沿って並んだ3つ以上の前記継手部材を有することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のスライド式切換弁。
【請求項7】
前記継手部材の内周面は、その開口側の端部に、先端側に向かうにしたがって内径が大きくなる傾斜面を有することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のスライド式切換弁。
【請求項8】
前記弁座部材は、前記弁座面に沿った所定のスライド方向に沿って前記弁体をガイドするガイド部を有し、
前記ガイド部は、前記弁座面に沿った平面において前記スライド方向と直交する方向から前記弁体を挟み込むとともに、前記スライド方向に沿って延びていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のスライド式切換弁。
【請求項9】
前記弁体には、前記弁座面と前記ガイド部との間の角部と対向する位置に、凹部が形成されていることを特徴とする請求項8に記載のスライド式切換弁。
【請求項10】
前記弁座部材には、前記弁座面とは反対側から前記継手部材が挿入される挿入孔が形成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のスライド式切換弁。
【請求項11】
前記弁本体、前記弁座部材及び前記継手部材がステンレス製であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のスライド式切換弁。
【請求項12】
請求項1~4のいずれか1項に記載のスライド式切換弁において、前記接続部材によって前記継手部材又は前記弁本体と前記挿入部とを挟み込むことにより、前記弁本体に前記配管を接続することを特徴とする接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライド式切換弁及び接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、冷凍サイクル等に設けられて冷媒の流れの方向を切り換えるスライド式切換弁が知られている。このようなスライド式切換弁では、冷媒が通過する配管を直接的又は間接的に接続する必要がある。そこで、スライド式切換弁としての四方弁において配管をろう付けする方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、ろう付け作業には作業者の技能が要求され、より簡便な取付方法が望まれていた。また、他の形態のスライド式切換弁として、ブロック本体にピストン弁室が形成された四方弁が提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載されたようなブロック本体は、所定の厚さを有することから、ボルトの締結によって配管を接続することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-50637号公報
【特許文献2】特開2004-92734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2に記載されたように弁室を形成する部材がブロック状である構成では、当該部材の体積が大きくなりやすく、重量増加に伴って輸送コストが増加したり、材料費が増加したりすることにより、高コスト化する可能性がある。このように、配管を接続する上での組立性の確保と低コスト化とを両立させることは困難であった。
【0005】
本発明の目的は、配管を容易に接続することができるとともに低コスト化することができるスライド式切換弁及び接続構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のスライド式切換弁は、薄板によって中空状に形成されることで内側に弁室を有する弁本体と、複数の弁ポートが形成された弁座面を有するとともに前記弁室内に設けられる弁座部材と、前記弁ポートを弁室に対して開閉する弁体と、前記弁本体に接続される継手部材を有し、該弁本体に配管を接続するための組付手段と、を備え、前記継手部材は、前記配管又は該配管に接続されたコネクタが挿入部として挿入されるとともに、該挿入部との間をシールするためのシール面を有し、前記組付手段は、前記継手部材に対する前記挿入部の挿入方向において前記継手部材又は前記弁本体と前記挿入部とを挟み込む接続部材と係合する係合部を有し、前記係合部は、前記挿入方向において、前記弁本体を基準として前記配管に向かう側とは反対側を向いていることを特徴とする。
【0007】
以上のような本発明によれば、弁本体が薄板によって形成されていることで低コスト化することができる。このとき、組付手段が接続部材と係合する係合部を有することで、接続部材によって、継手部材又は弁本体と、挿入部(配管又はコネクタ)と、を挿入方向において挟み込み、弁本体に対して配管を接続することができる。即ち、接続部材は、弁本体及び継手部材を含む弁本体側のユニットと、配管(及びコネクタ)を含む配管側のユニットと、のそれぞれに係合し、各ユニットの一部が接続部材によって挿入方向において挟み込まれ、これらのユニットが挿入方向において離れるような相対移動が規制されて接続が維持される。このように、接続部材を用いた接続が可能となり、配管を容易に接続することができる。
【0008】
このとき、挿入方向及び弁体のスライド方向の両方と交差する(好ましくは直交する)交差方向から係合部を見た際に、係合部に対して交差方向の少なくとも一方側に、他の部材が設けられていないことが好ましい。このような構成によれば、接続部材を弁本体に対して交差方向に沿って移動させる際に、他の部材との干渉を抑制することができ、配管を容易に接続することができる。
【0009】
この際、本発明のスライド式切換弁では、前記係合部は、前記弁本体の外周面のうち前記反対側を向いた領域に設けられていてもよい。このような構成によれば、薄板によって中空状に形成された弁本体のうち外側に凸の曲面部に係合部が設けられる場合には、例えば接続部材の凹状の部分と係合させることができる。また、弁本体の平面部に係合部が設けられる場合には、接続部材との接触面積を確保することができる。このように、いずれの場合においても、接続部材との係合を保持しやすくすることができる。
【0010】
また、本発明のスライド式切換弁では、前記継手部材は、薄板により形成されるとともに、前記弁本体に挿入される小径部と、前記挿入部が挿入される大径部と、前記小径部と前記大径部との間において径方向に沿って延びる径方向延在部と、を有し、前記係合部は、前記径方向延在部に設けられていてもよい。このような構成によれば、係合部が配管の近傍に位置し、接続部材を小型化することができ、低コスト化することができる。また、継手部材を薄板によって形成することで軽量化することができる。
【0011】
さらに、本発明のスライド式切換弁では、前記係合部は、前記弁本体の外周面に対して隙間をあけて配置されていることが好ましい。このような構成によれば、この隙間に接続部材の一部を配置して、係合部と係合させやすくすることができる。
【0012】
また、本発明のスライド式切換弁では、前記係合部は、前記挿入方向との直交面に沿って延びる部分を有することが好ましい。このような構成によれば、上記の両ユニットが挿入方向において離れようとした際に、係合部が接続部材に当接することで、離れようとする力を接続部材に伝達し、接続を維持しやすくすることができる。
【0013】
また、本発明のスライド式切換弁では、前記組付手段は、前記弁体のスライド方向に沿って並んだ3つ以上の前記継手部材を有することが好ましい。このような構成によれば、上記の両ユニットに対し、挿入方向及び弁体のスライド方向の両方と交差する(好ましくは直交する)交差方向に沿って接続部材を移動させることで、3つ以上の配管を同時に接続することができる。
【0014】
また、本発明のスライド式切換弁では、前記継手部材の内周面は、その開口側の端部に、先端側に向かうにしたがって内径が大きくなる傾斜面を有することが好ましい。このような構成によれば、継手部材に挿入部を挿入する際に、傾斜面によって挿入部を案内することができる。
【0015】
また、本発明のスライド式切換弁では、前記弁座部材は、前記弁座面に沿った所定のスライド方向に沿って前記弁体をガイドするガイド部を有し、前記ガイド部は、前記弁座面に沿った平面において前記スライド方向と直交する方向から前記弁体を挟み込むとともに、前記スライド方向に沿って延びていることが好ましい。このような構成によれば、スライド方向と直交する方向において弁体と弁ポートとの位置ずれを抑制することができる。また、厚肉の弁本体であればガイド部を設けることは比較的容易であるのに対し、弁本体を薄板に形成した場合、弁本体2にガイド部を設けようとすると形状が複雑化しやすく、ガイド部を設けることは困難である。このとき、弁座部材によって弁体をガイドすれば、低コスト化と位置精度の確保とを両立させることができる。
【0016】
さらに、本発明のスライド式切換弁では、前記弁体には、前記弁座面と前記ガイド部との間の角部と対向する位置に、凹部が形成されていることが好ましい。このような構成によれば、弁体や弁座面の摩耗によって生じる粉やその他の異物を凹部内に逃がすことができ、異物等の噛み込みによる傷を抑制し、流体の漏れを抑制することができる。
【0017】
また、本発明のスライド式切換弁では、前記弁座部材には、前記弁座面とは反対側から前記継手部材が挿入される挿入孔が形成されていることが好ましい。このような構成によれば、薄板によって形成された弁本体において継手部材が挿通される部分の長さは板厚程度となるものの、継手部材は弁座部材の挿入孔にも挿通されることから、継手部材のうち挿通される部分の合計長さを確保することができる。これにより、弁ポートと配管との芯ずれを抑制し、配管から弁体に向かう(又はその逆に向かう)流体の流れをスムーズにし、圧力損失を低減することができる。尚、継手部材が、全周に亘って挿入孔に挿入される部分を有するように、挿入孔の深さが設定されていることが好ましい。
【0018】
また、本発明のスライド式切換弁では、前記弁本体、前記弁座部材及び前記継手部材がステンレス製であることが好ましい。このような構成によれば、各流体同士又は外気との間の熱移動を抑制し、高効率化することができる。
【0019】
一方、本発明の接続構造は、上記いずれかに記載のスライド式切換弁において、前記接続部材によって前記継手部材又は前記弁本体と前記挿入部とを挟み込むことにより、前記弁本体に前記配管を接続することを特徴とする。本発明の接続構造によれば、接続部材を用いることで、上記のように配管を容易に接続することができるとともに低コスト化することができる。
【0020】
また、本発明のスライド式切換弁は、薄板によって中空状に形成されることで内側に弁室を有する弁本体と、複数の弁ポートが形成された弁座面を有するとともに前記弁室内に設けられる弁座部材と、前記弁ポートを弁室に対して開閉する弁体と、を備え、前記弁座部材は、前記弁座面に沿った所定のスライド方向に沿って前記弁体をガイドするガイド部を有し、前記ガイド部は、前記弁座面に沿った平面において前記スライド方向と直交する方向から前記弁体を挟み込むとともに、前記スライド方向に沿って延びていることを特徴とする。本発明のスライド式切換弁によれば、上記のように低コスト化と位置精度の確保とを両立させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のスライド式切換弁及び接続構造によれば、配管を容易に接続することができるとともに低コスト化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態にかかるスライド式切換弁が設けられた冷凍サイクルの概略構成図である。
図2】前記スライド式切換弁を示す断面図である。
図3】前記スライド式切換弁に配管が接続された様子を示す断面図である。
図4】前記スライド式切換弁に配管が接続された様子を示す他の断面図である。
図5図4の拡大図である。
図6】前記スライド式切換弁に前記配管を接続するための接続部材を示す一方の側面図である。
図7】前記接続部材を示す他方の側面図である。
図8】前記接続部材を示す平面図である。
図9】前記接続部材を示す正面図である。
図10】前記接続部材によって前記スライド式切換弁に前記配管を接続した際の要部を示す断面図である。
図11】本発明の第2実施形態のスライド式切換弁の要部を示す断面図である。
図12】前記スライド式切換弁の要部を示す他の断面図である。
図13】本発明の第3実施形態のスライド式切換弁の要部を示す断面図である。
図14】前記スライド式切換弁の要部を示す他の断面図である。
図15】本発明の第4実施形態のスライド式切換弁の要部を示す断面図である。
図16】前記スライド式切換弁の要部を示す他の断面図である。
図17】前記スライド式切換弁に前記配管を接続するための接続部材を示す一方の側面図である。
図18】前記接続部材を示す平面図である。
図19】前記接続部材を示す正面図である。
図20】本発明の第5実施形態のスライド式切換弁を示す断面図である。
図21】前記スライド式切換弁を示す他の断面図である。
図22】本発明の変形例1のスライド式切換弁を示す断面図である。
図23】本発明の変形例2のスライド式切換弁を示す断面図である。
図24】本発明の他のスライド式切換弁を示す断面図である。
図25】前記スライド式切換弁の弁座部材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。第2実施形態以降では、第1実施形態との共通部分には共通の符号を付すものとする。
【0024】
[第1実施形態]
本実施形態の四方切換弁(スライド式切換弁)1は、図1に示すように、例えば冷凍サイクル100に設けられるものである。冷凍サイクル100は、空気調和機に利用されるものであって、流体としての冷媒を圧縮する圧縮機200と、冷却モード時に凝縮器として機能する第一熱交換器としての室外熱交換器300と、冷却モード時に蒸発器として機能する第二熱交換器としての室内熱交換器400と、室外熱交換器300と室内熱交換器400との間にて冷媒を膨張させて減圧する膨張手段としての膨張弁500と、四方切換弁1と、を備え、これらが冷媒配管によって連結されている。なお、膨張手段としては、膨張弁500に限らず、キャピラリでもよい。尚、上記のように循環する冷媒には、圧縮機200の動作を潤滑なものにするための潤滑油(冷凍機油)が含まれていてもよい。
【0025】
この冷凍サイクル100は、図1に示す冷却モード(冷房運転)において、圧縮機200、四方切換弁1、室外熱交換器300、膨張弁500、室内熱交換器400、四方切換弁1及び圧縮機200の順に冷媒が流れる冷房サイクルを構成する。一方、加温モード(暖房運転)において、圧縮機200、四方切換弁1、室内熱交換器400、膨張弁500、室外熱交換器300、四方切換弁1及び圧縮機200の順に冷媒が流れる暖房サイクルを構成する。この暖房サイクルと冷房サイクルとの切換えは、四方切換弁1における駆動部5を作動させることによって行われる。
【0026】
本発明の実施形態に係る四方切換弁1は、図2,3に示すように、円筒状の弁本体2と、この弁本体2の内部に設けられる弁座部材3と、弁座部材3に対してスライド自在に設けられる弁体4と、弁体4を移動させる駆動部5と、弁本体2に配管11~14を接続するための組付手段6と、を備えている。以下では、弁体4のスライド方向をX方向とし、X方向に直交するとともに互いに直交する2方向をY方向及びZ方向とし、Z方向における上下は図2,3を基準とし、図2における左側をX方向の一方側とするとともに右側を他方側とする。四方切換弁1には、後述するように、圧縮機200の吐出口に連通する高圧側の配管11と、圧縮機200の吸込口に連通する低圧側の配管12と、室内熱交換器400に連通する室内側の配管13と、室外熱交換器300に連通する室外側の配管14と、が接続されるようになっている。
【0027】
円筒状の弁本体2は、例えばステンレス製の薄板によって中空状に形成されたものであって、X方向に沿って円筒状に延び、他方側の端部22が蓋部24及びケース7によって開口が塞がれることにより、全体に密閉されて弁室R1を形成する。弁本体2には、一方側の端部21に開口した弁ポート(流入ポート)2Aと、側面部23に開口した開口部2B~2Dと、が形成されている。即ち、高圧側の配管11が接続されて弁本体2の内部に冷媒を流入させる弁ポート2Aと、配管12~14が接続される開口部2B~2Dと、が設けられている。開口部2Bは、X方向略中央に設けられ、開口部2Cは、開口部2Bに対してX方向一方側に隣り合って設けられ、開口部2Dは、開口部2Bに対してX方向他方側に設けられている。即ち、3つの開口部2B~2Dは、X方向に沿って直線状に並ぶように設けられている。
【0028】
弁本体2は、プレス加工により且つ上記のような薄板により形成されており、即ちブロック状とはなっていない。尚、薄板により形成されているとは、全体として肉厚が略一定であることを意味し、開口部や端部等において多少肉厚が変更されていてもよい。
【0029】
弁座部材3は、例えばステンレスによって弁本体2とは別体に構成され、全体としてXY平面に沿って延びる長方形板状に形成され、弁室R1内に設けられる。弁座部材3は、弁本体2の内面のうち開口部2B~2Dが形成された領域に重ねられる。板状の弁座部材3のうち弁室R1の内側を向いた面が弁座面31となり、即ち弁体4をスライド案内する案内面となる。
【0030】
弁座部材3の弁座面31には、3つの弁ポート3B~3Dが形成されており、弁ポート3B~3Dは弁座部材3を板厚方向(弁座面31との直交方向でありZ方向)に貫通する。3つの弁ポート3B~3Dは、3つの開口部2B~2Dのそれぞれと重なるように配置される。即ち、3つの弁ポート3B~3DがX方向に沿って直線状に並ぶように設けられている。
【0031】
弁ポート3B~3Dは、弁座面31に連続する小径部32と、その反対側の面33に連通する大径部34と、小径部32と大径部34との間に形成された段差部35と、を有する。大径部34は、後述する継手部材61が弁座面31とは反対側から挿入されて挿入孔として機能し、段差部35によって継手部材61の過挿入が規制される(挿入深さが管理される)ようになっている。また、大径部34の内径は、開口部2B~2Dの内径と略等しい。面33は、円筒状の弁本体2の内周面に沿った曲面状となっており、且つ、弁ポート3B~3Dが円形であることから、弁ポート3B~3Dは、その周方向位置によって深さ(Z方向寸法)が異なる。このとき、小径部32の深さは周方向によらず略一定であり、大径部34の深さが変化する。大径部34は、周方向の全体に亘って所定値以上の深さを有しており、継手部材61が、全周に亘って挿入孔としての大径部34に挿入される部分を有するように、大径部34の深さが設定されている。
【0032】
弁ポート3Bに連通した開口部2Bには、継手部材61を介して低圧側の配管12が接続され、弁ポート(第一ポート)3Cに連通した開口部2Cには、継手部材61を介して室内側の配管13が接続されることで、弁ポート3Cが室内側ポートを構成し、弁ポート(第二ポート)3Dに連通した開口部2Dには、継手部材61を介して室外側の配管14が接続されることで、弁ポート3Dが室外側ポートを構成する。
【0033】
弁座部材3は、図4,5に示すように、Y方向の両端縁に、X方向に沿って延びる一対のガイド部36を有する。一対のガイド部36は、弁座面31から弁室R1内に向かって突出しており、弁体4の後述する弁部材41をY方向から挟み込むように配置されている。
【0034】
弁体4は、椀状の弁部材41と、弁部材41を弁座面31に向けて付勢する板ばね42と、駆動部5と連結される連結部43と、を備える。
【0035】
弁部材41は、合成樹脂製の一体成形部材であって、弁座部材3に向かって凹状に開口するとともに、平面視で長円形状を有したドーム状に形成されている。弁部材41の内部には、弁ポート3Bと弁ポート3Cとを連通させて弁ポート3Dを連通させないか、又は、弁ポート3Bと弁ポート3Dとを連通させて弁ポート3Cを連通させないような連通空間R2が形成されている。連結部43は、弁部材41からX方向他方側に突出しており、ピン部材を係止可能なフック状の部分を有する。
【0036】
弁部材41には、弁座面31とガイド部36との間の角部37と対向する位置に、凹部411が形成されている。即ち、弁部材41のうち、弁座面31と摺接する面の外側端部に凹部411が形成され、凹部411において角部37と接触せず、隙間をあけるようになっている。弁部材41のX方向の全体に亘って凹部411が形成されていることが好ましいが、部分的に形成されていてもよい。
【0037】
角部37は、弁座面31との境界である第1端部371と、ガイド部36の内面との境界である第2端部372と、の間に亘ってテーパ状(断面円弧状)に形成されている。凹部411は、XY平面に沿うとともに弁座面31から離隔するように配置された面411Aと、ZX平面に沿うとともにガイド部36の内面から離隔するように配置された面411Bと、を有している。面411AのY方向寸法は、Y方向における第1端部371と第2端部372との間の距離以上であることが好ましい。また、面411BのZ方向寸法は、Z方向における第1端部371と第2端部372との間の距離以上であることが好ましい。
【0038】
また、凹部の形状は、上記のような2つの平面411A,411Bによって形成されるものに限定されない。例えば、凹部を構成する平面がXY平面又はZX平面に対して傾斜していてもよいし、凹部が曲面(テーパ面)を含んでいてもよいし、凹部が1つの平面(例えばXY平面及びZX平面の両方に対して傾斜した平面)又は1つの曲面によって形成されていてもよいし、上記の形状が適宜に組み合わされていてもよい。また、凹部の寸法(特に角部37との関係)は、上記に限定されず、後述するように発生した異物等を逃がすことができる大きさを有していればよい。即ち、凹部は、発生し得る異物等の量に応じた大きさを有し、異物等を充分に収容可能なものであればよい。
【0039】
駆動部5は、弁体4の弁部材41をX方向に移動させるものであって、ステッピングモータ51と、変換機構52と、を有する。
【0040】
ステッピングモータ51は、ケース7の内部に回転可能に配設されたマグネットロータ512と、ケース7の外周においてマグネットロータ512に対して対向配置されたステータコイル513と、その他、図示しないヨークや外装部材等により構成されている。
【0041】
変換機構52は、雄ねじ部材521と、雌ねじ部材522と、軸受部材523と、2本の連結腕部524と、を有する。雄ねじ部材521は、ロータ軸であって、ブッシュを介してマグネットロータ512の中心に取り付けられ、その外周には雄ねじ部521aが形成されている。雌ねじ部材522は、円筒状に形成されるとともに内周面に雌ねじ部522aを有し、雄ねじ部521aと雌ねじ部522aとが螺合される。ガイド部材8は、X方向に沿って筒状に延びる内周面を有するとともにX方向他方側に開口しており、ガイド部材8の内側に雌ねじ部材522が配置され、ガイド部材8の内周面によって雌ねじ部材522がX方向に沿って案内されるようになっている。雄ねじ部材521の雄ねじ部521aと、雌ねじ部材522の雌ねじ部522aと、がねじ送り機構を構成し、ステッピングモータ51によって生じるX方向に沿った中心軸周りの回転が、変換機構52によってX方向に沿った直進運動に変換される。
【0042】
軸受部材523は、ロータ軸である雄ねじ部材521を、X方向他方側の端部において回転可能に支持する部材である。連結腕部524は、雌ねじ部材522と弁体4とを連結するための部材であって、雌ねじ部材522からX方向一方側に向かって延びるとともにガイド部材8の底部82を貫通し、連結ピン525によって弁体4の連結部43に連結される。2本の連結腕部524が底部82を貫通することにより、雌ねじ部材522がX方向に沿った軸を中心として回転することが規制されており、即ち、雌ねじ部材522が雄ねじ部材521に連れ回らず、回転運動が直進運動に変換可能となっている。
【0043】
ガイド部材8は、弁座部材3の弁座面31に対して当接する当接部81を有する。即ち、弁座部材3が、X方向の他方側において、弁本体2とガイド部材8とによってZ方向から挟み込まれている。当接部81は、筒状のガイド部材8における外周面の他の部分よりもZ方向において弁座面31側に突出している。
【0044】
組付手段6は、弁本体2に配管11~14を接続するためのものであって、側面部23に設けられる3つの継手部材61と、端部21に設けられる1つの継手部材62と、を有する。継手部材61は、例えばステンレスの薄板によって形成され、小径部611と、大径部612と、これらの間に形成された径方向延在部613と、を一体に有する。
【0045】
小径部611の外径は、開口部2B~2Dおよび大径部34の内径と等しいか又は若干小さく、且つ、小径部32の内径よりも大きい。これにより、小径部611が開口部2B~2Dおよび大径部34に挿入され、小径部32には挿入されないようになっている。また、小径部611の延在長さは、開口部2B~2Dおよび大径部34の合計厚さ(Z方向寸法)よりも大きく、小径部611が段差部35に到達して挿入が規制されている状態において、小径部611の一部が弁本体2の外側に露出するように位置する。継手部材61は、例えば溶接やろう付け等によって弁本体2に固定されればよい。
【0046】
大径部612の外径は、開口部2B~2Dおよび大径部34の内径よりも大きい。径方向延在部613は、小径部611から大径部612に向かって、XY平面に沿って延びる部分である。尚、径方向延在部613と小径部611との間、及び、径方向延在部613と大径部612との間のいずれにおいても、加工に伴う曲面部が形成されているものの、径方向延在部613は、少なくとも弁本体2を向いた側に、XY平面に沿った平坦な部分を有している。小径部611の一部が弁本体2の外側に位置することで、径方向延在部613は、弁本体2の側面部23の外周面に対して隙間をあけて配置されている。
【0047】
大径部612は、先端側(弁本体2とは反対側)の端部に、他の部分よりも拡径されたフランジ部612Aを有し、フランジ部612Aの内周面が、先端側に向かうにしたがって内径が大きくなる傾斜面612Bとなっている。
【0048】
継手部材62は、弁ポート2Aに接続される。継手部材62は、弁ポート2AからX方向の一方側に向かって順に、弁ポート2Aと略同径の第1大径部621と、くびれ部622と、第2大径部623と、を有する。継手部材62の肉厚は略一定であり、第1大径部621は第2大径部623よりも外径が大きく、第2大径部623はくびれ部622よりも外径が大きい。継手部材62は、例えば溶接やろう付け等によって弁本体2に固定されればよい。第2大径部623は、先端側(弁本体2とは反対側)の端部に、他の部分よりも拡径されたフランジ部623Aを有し、フランジ部623Aの内周面が、先端側に向かうにしたがって内径が大きくなる傾斜面623Bとなっている。
【0049】
以上の四方切換弁1では、ステッピングモータ51の駆動によってマグネットロータ512及び雄ねじ部材521が回転すると、ねじ送り機構である変換機構52によって、連結腕部524がX方向に沿って移動する。これにより、弁体4がX方向に沿ってスライドし、図1,3に示す第一位置と図2に示す第二位置との間で移動する。
【0050】
弁体4が第二位置にある状態において、弁部材41は、その連通空間R2によって弁ポート3Bと弁ポート3Dとを連通させる。また、弁部材41が弁ポート3CよりもX方向他方側に位置することから、この弁ポート3Cは、弁本体2の内部(高圧室である弁室R1)を介して弁ポート2Aと連通する。すなわち、弁体4が第二位置にある状態は、弁ポート2Aと弁ポート3Cとが連通し、弁ポート3Bと弁ポート3Dとが連通した加温モード(暖房運転)となる。
【0051】
この加温モードでは、圧縮機200から吐出された高圧冷媒が高圧側の配管11及び弁ポート2Aを介して高圧室R1に導入され、この高圧室R1を通過した高圧冷媒が弁ポート3C及び室内側の配管13を介して室内熱交換器400に供給される。また、室外熱交換器300から室外側の配管14及び弁ポート3Dを介して低圧冷媒が弁部材41の連通空間R2に導入され、この連通空間R2を通過した低圧冷媒が弁ポート3B及び低圧側の配管12を介して圧縮機200に還流される。
【0052】
一方、弁体4が第一位置にある状態において、弁部材41は、その連通空間R2によって弁ポート3Bと弁ポート3Cとを連通させる。また、弁部材41が弁ポート3DよりもX方向一方側に位置することから、この弁ポート3Dは、弁本体2の内部(高圧室R1)を介して弁ポート2Aと連通する。すなわち、弁体4が第一位置にある状態は、弁ポート2Aと弁ポート3Dとが連通し、弁ポート3Bと弁ポート3Cとが連通した冷却モード(冷房運転)となる。
【0053】
ここで、四方切換弁1に対する配管11~14の接続構造の詳細について説明する。配管11~14は、例えば空気調和機を構成する他の機器から延びるものであり、これらの配管11~14がコネクタ10を介して且つ接続部材20,30を用いて四方切換弁1に接続されるようになっている。本実施形態では、配管11~14にコネクタ10が接続されており、このコネクタ10が、継手部材に対して挿入される挿入部として機能する。また、コネクタ10の挿入方向はZ方向となっている。
【0054】
コネクタ10は、一端部に配管11~14が挿通されるとともに他端部が大径部612又は第2大径部623に挿通される筒状の本体部101と、本体部101の外周側に取り付けられるシール部材としてのOリング102と、を有する。本体部101は、他端部側から順に、大径部612又は第2大径部623内に配置される挿入部101Aと、挿入部101Aよりも大径に形成されて継手部材61,62の端縁に係止される係止凸部101Bと、後述する配管側壁部203,303を係止する係止凹部101Cと、を有する。Oリング102は、挿入部101Aの外周面に形成された凹部に装着され、大径部612又は第2大径部623の内周面に接触する。即ち、大径部612の内周面612Dが、継手部材61とコネクタ10との間をシールするためのシール面となる。
【0055】
接続部材20は、図6~9に示すように、3つの配管12~14を同時に弁本体2に接続するためのものであって、ZX平面に沿って延びる底部201と、底部201のZ方向一方側の端縁から立設されてXY平面に沿って延びる本体側壁部202と、他方側の端縁から立設されてXY平面に沿って延びる配管側壁部203と、を一体に有する。底部201は、継手部材61に対してY方向に並ぶように配置される。
【0056】
本体側壁部202は、底部が半円状に形成された3つの切り欠き部202Aと、切り欠き部202A同士の間に形成される凸部202Bと、X方向端部に形成される凸部202Cと、を有する。切り欠き部202Aの内面は、継手部材61の小径部611の外周面に沿った形状を有しており、切り欠き部202A内に小径部611が配置されるようになっている。
【0057】
配管側壁部203は、底部が半円状に形成された3つの切り欠き部203Aと、切り欠き部203A同士の間に形成される凸部203Bと、X方向端部に形成される凸部203Cと、を有する。切り欠き部203Aの内面は、コネクタ10の係止凹部101Cの外周面に沿った形状を有しており、切り欠き部203A内に係止凹部101Cが配置されるようになっている。
【0058】
図10にも示すように本体側壁部202の凸部202B,202Cに対して配管12~14側に継手部材61の径方向延在部613が配置され、配管側壁部203の凸部203B,203Cに対して弁本体2側に係止凸部101Bが配置されている。これにより、継手部材61からコネクタ10を引き抜くことが規制される。即ち、径方向延在部613のうち、Z方向において弁本体2を基準として配管12~14に向かう側とは反対側を向いた面613Aが、接続部材20と係合する係合部として機能する。また、係止凸部101Bも接続部材20と係合する第2の係合部として機能する。このとき、面613Aは、挿入方向との直交面であるXY平面に沿った部分を有している。
【0059】
ここで、Z方向において弁本体2を基準として配管12~14に向かう側とは、図2,3において下側に向かう方向を意味し、その反対側とは、図2,3において上側に向かう方向を意味する。また、面613Aが、Z方向において弁本体2を基準として配管12~14に向かう側とは反対側を向いているとは、面613Aの向きを特定するものであり、面613Aと配管12~14との相対位置を特定するものではない。本実施形態では、係合部としての面613Aが上側を向くとともに配管12~14に対して上側に配置されているが、係合部は上側を向いていればよく、係合部そのものが配管の一部よりも下側に位置していてもよい。
【0060】
四方切換弁1では、面613AをY方向の一方側(図2,3の紙面奥側)に仮想的に延長した際に、他の部材が設けられていない。これにより、接続部材20を弁本体2に対してY方向に沿って移動させる際に、接続部材20が他の部材との干渉しないようになっている。
【0061】
このような接続部材20は、弁本体2に対してY方向に相対移動することで組み付け可能となっている。また、本体側壁部202と配管側壁部203との間隔は、大径部612と係止凸部101Bとの合計のZ方向寸法と等しくてもよいし、若干大きくてもよい。即ち、継手部材61に対してコネクタ10がZ方向において多少移動可能であってもよく、このような場合でも、Oリング102が大径部612の内周面に接触していれば、密封性が維持される。また、接続部材20の少なくとも一部をばね材等の弾性部材により構成するとともに、本体側壁部202と配管側壁部203との間隔を、大径部612と係止凸部101Bとの合計のZ方向寸法よりも小さくすることにより、組み付けによって本体側壁部202と配管側壁部203とが遠ざかるような変形を生じさせ、弾性力を利用して組み付け状態を維持するような構成としてもよい。
【0062】
接続部材30は、配管11を弁本体2に接続するためのものであって、ZX平面に沿って延びる底部301と、底部301のX方向他方側の端縁から立設されてYZ平面に沿って延びる本体側壁部302と、他方側の端縁から立設されてYZ平面に沿って延びる配管側壁部303と、を一体に有する。底部301は、継手部材62に対してY方向に並ぶように配置される。
【0063】
本体側壁部302は、底部が半円状に形成された切り欠き部302Aと、切り欠き部302Aの両側の凸部302Bと、を有する。切り欠き部302Aの内面は、継手部材62のくびれ部622の外周面に沿った形状を有しており、切り欠き部302A内にくびれ部622が配置されるようになっている。
【0064】
配管側壁部303は、底部が半円状に形成された切り欠き部303Aと、切り欠き部303Aの両側の凸部303Bと、を有する。切り欠き部303Aの内面は、コネクタ10の係止凹部101Cの外周面に沿った形状を有しており、切り欠き部303A内に係止凹部101Cが配置されるようになっている。
【0065】
接続部材30は、切り欠き部302A,303Aの個数と、切り欠き部302Aにくびれ部622が配置される点と、において接続部材20と相違するものの、接続部材20と同様に、継手部材62とコネクタ10との接続を維持する。
【0066】
以上の本実施形態によれば、弁本体2が薄板によって形成されていることで低コスト化することができる。このとき、組付手段6が接続部材20と係合する係合部としての面613Aを有することで、接続部材20によって、継手部材61、挿入部としてのコネクタ10と、をZ方向において挟み込み、弁本体2に対して配管12~14を接続することができる。即ち、接続部材20は、弁本体2及び継手部材61を含む弁本体側のユニットと、配管12~14及びコネクタ10を含む配管側のユニットと、のそれぞれに係合し、各ユニットの一部が接続部材20によってZ方向において挟み込まれ、これらのユニットがZ方向において離れるような相対移動が規制されて接続が維持される。このように、接続部材20を用いた接続が可能となり、配管を容易に接続することができる。
【0067】
また、径方向延在部613の面613Aが係合部として機能することで、係合部が配管12~14の近傍に位置し、接続部材20における本体側壁部202と配管側壁部203との間隔を小さくして接続部材20を小型化することができ、低コスト化することができる。また、継手部材61が薄板によって形成されていることで、軽量化することができる。
【0068】
また、係合部としての面613Aを有する径方向延在部613が、弁本体2の側面部23の外周面に対して隙間をあけて配置されていることで、この隙間に接続部材20の本体側壁部202を配置して、係合部としての面613Aと係合させやすくすることができる。
【0069】
また、係合部としての面613Aが、XY平面に沿って延びる部分を有することで、弁本体2及び継手部材61を含む弁本体側のユニットと、配管12~14及びコネクタ10を含む配管側のユニットと、がZ方向において離れようとした際に、面613Aが接続部材20に当接することで、離れようとする力を接続部材20に伝達し、接続を維持しやすくすることができる。
【0070】
また、組付手段6が、弁体4のスライド方向であるX方向に沿って並んだ3つの継手部材61を有し、且つ、接続部材20が本体側及び配管側のそれぞれに3つの切り欠き部202A,203Aを有することで、Y方向に沿って接続部材20を移動させることにより3つの配管12~14を同時に接続することができる。
【0071】
また、継手部材61が、先端側に向かうにしたがって内径が大きくなる傾斜面612Bを有することで、継手部材61にコネクタ10を挿入する際に、傾斜面612Bによってコネクタ10を案内することができる。
【0072】
また、弁座部材3がガイド部36を有することで、Y方向において弁体4の弁部材41と弁ポート3B~3Dとの位置ずれを抑制することができる。また、厚肉の弁本体であればガイド部を設けることは比較的容易であるのに対し、弁本体2を薄板に形成した場合、弁本体2にガイド部を設けようとすると形状が複雑化しやすく、ガイド部を設けることは困難である。このとき、弁座部材3によって弁部材41をガイドすることで、低コスト化と位置精度の確保とを両立させることができる。
【0073】
また、弁部材41のうち弁座面31とガイド部36との間の角部37と対向する位置に凹部411が形成されていることで、弁部材41や弁座面31の摩耗によって生じる粉やその他の異物を凹部411内に逃がすことができ、異物等の噛み込みによる傷を抑制し、流体の漏れを抑制することができる。
【0074】
また、弁座部材3の弁ポート3B~3Dに弁座面31とは反対側から継手部材61が挿入されることで、薄板によって形成された弁本体2において、継手部材61が挿通される部分の合計長さを確保することができる。これにより、弁ポート3B~3Dと配管12~14との芯ずれを抑制し、配管12~14から弁本体2に向かう(又はその逆に向かう)流体の流れをスムーズにし、圧力損失を低減することができ、流量確保のために四方切換弁1全体を大型化する必要がない。また、このとき、芯ずれ抑制のためにブロック状の固定部材を用いる必要がなく、四方切換弁1全体を小型化することができる。
【0075】
また、弁本体2と弁座部材3と継手部材61とがステンレス製であることで、各流体同士又は外気との間の熱移動を抑制し、高効率化することができる。また、これらの一部又は全部を黄銅によって形成する場合と比較して、薄肉化しても強度を確保しやすく、四方切換弁1全体を小型化しやすい。
【0076】
[第2実施形態]
本実施形態の四方切換弁(スライド式切換弁)は、図11,12に示すように、継手部材61とコネクタ10とを接続するための接続部材40のみが第1実施形態と異なっており、その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0077】
接続部材40は、ZX平面に沿って延びる底部401と、底部401のZ方向一方側の端縁から立設されてXY平面に沿って延びる本体側壁部402と、他方側の端縁から立設されてXY平面に沿って延びる配管側壁部403と、を一体に有する。
【0078】
本体側壁部402は、第1実施形態の接続部材20の本体側壁部202と同様に、底部が半円状に形成された3つの切り欠き部402Aが形成されているものの、切り欠き部402Aの内面が、大径部612の外周面に沿った形状となっている点で第1実施形態と相違する。即ち、切り欠き部402Aには、大径部612が配置される。このとき、本体側壁部402に対して配管12~14側にフランジ部612Aが配置されており、フランジ部612Aのうち配管12~14とは反対側を向いた部分が、接続部材40と係合する係合部として機能するようになっている。
【0079】
本実施形態の四方切換弁によっても、第1実施形態同様の効果が得られる。また、フランジ部612Aに係合部が設けられていることで、本体側壁部402と配管側壁部403との間隔を狭くし、接続部材40をさらに小型化することができる。
【0080】
[第3実施形態]
本実施形態の四方切換弁(スライド式切換弁)は、図13,14に示すように、継手部材61の形状と、継手部材61とコネクタ10とを接続するための接続部材50と、が第1実施形態と異なっており、その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0081】
本実施形態では、継手部材61が、大径部612の外周面から突出した凸部612Cを有する。凸部612Cは、周方向の全体に亘って設けられていてもよいし、部分的に設けられていてもよい。
【0082】
接続部材50は、ZX平面に沿って延びる底部501と、底部501のZ方向一方側の端縁から立設されてXY平面に沿って延びる本体側壁部502と、他方側の端縁から立設されてXY平面に沿って延びる配管側壁部503と、を一体に有する。
【0083】
本体側壁部502は、第1実施形態の接続部材20の本体側壁部202と同様に、底部が半円状に形成された3つの切り欠き部502Aが形成されているものの、切り欠き部502Aの内面が、大径部612の外周面に沿った形状となっている点で第1実施形態と相違する。また、本体側壁部502と配管側壁部503との間隔が、第2実施形態における本体側壁部402と配管側壁部403との間隔と相違する。切り欠き部502Aには、大径部612が配置される。このとき、本体側壁部502に対して配管12~14側に凸部612Cが配置されており、凸部612Cのうち配管12~14とは反対側を向いた部分が、接続部材50と係合する係合部として機能するようになっている。
【0084】
本実施形態の四方切換弁によっても、第1実施形態同様の効果が得られる。また、凸部612Cに係合部が設けられていることで、本体側壁部502と配管側壁部503との間隔を狭くし、接続部材50を小型化することができる。
【0085】
[第4実施形態]
本実施形態の四方切換弁(スライド式切換弁)は、図15~19に示すように、継手部材61とコネクタ10とを接続するための接続部材60のみが第1実施形態と異なっており、その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0086】
本実施形態の四方切換弁では、3つの接続部材60が用いられる。即ち、各々の接続部材60が、ZX平面に沿って延びる底部601と、底部601のZ方向一方側の端縁から立設されてXY平面に沿って延びる本体側壁部602と、他方側の端縁から立設されてXY平面に沿って延びる配管側壁部603と、を一体に有する。
【0087】
本体側壁部602が切り欠き部602Aを有して切り欠き部602Aに小径部611が配置され、配管側壁部603が切り欠き部603Aを有して切り欠き部603Aに係止凹部101Cが配置される。即ち、四方切換弁において接続部材60と係合する位置は、第1実施形態と同様である。
【0088】
本実施形態の四方切換弁によっても、第1実施形態同様の効果が得られる。また、3つの接続部材60によって3つの配管12~14が個別に接続されることで、複数の配管を同時に接続する構成と比較して、各部に多少の寸法の誤差が生じても組み付けが容易となる。
【0089】
[第5実施形態]
本実施形態の四方切換弁(スライド式切換弁)1Eは、図20,21に示すように、継手部材61とコネクタ10とを接続するための接続部材70のみが第1実施形態と異なっており、その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0090】
接続部材70は、3つの配管12~14を同時に弁本体2に接続するためのものであって、ZX平面に沿って延びる底部701と、底部701のZ方向一方側の端縁から立設されてXY平面に沿って延びる本体側壁部702と、他方側の端縁から立設されてXY平面に沿って延びる配管側壁部703と、を一体に有する。底部701は、継手部材61に対してY方向に並ぶように配置される。
【0091】
本体側壁部702は、弁本体2に対して配管12~14とは反対側に配置され、側面部23の外周面のうち配管12~14とは反対側の頂点部23Aと接触する。即ち頂点部23Aが、接続部材70と係合する係合部として機能する。頂点部23Aは、側面部23の外周面のうち配管12~14とは反対側を向いた領域に設けられている。
【0092】
配管側壁部703は、第1実施形態の配管側壁部203と同様に、切り欠き部703Aを有し、切り欠き部703A内に係止凹部101Cが配置されるようになっている。
【0093】
本実施形態の四方切換弁によっても、第1実施形態同様の効果が得られる。また、弁本体2の側面部23の外周面の頂点部23Aが本体側壁部702と接触することで、弁本体2及び接続部材70のいずれにも、係合のための加工が施されておらず、構成を簡素化することができる。
【0094】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。例えば、前記第5実施形態では、弁本体2の側面部23の頂点部23Aが単に本体側壁部702と接触するものとしたが、このような係合態様に限定されず、以下に例示する変形例1,2のような係合態様が採用されてもよい。
【0095】
図22に示す変形例1では、頂点部23Aに凹部23Bが形成され、且つ、本体側壁部702から弁本体2側に突出するピン704が設けられており、ピン704が凹部23Bに係合するようになっている。即ち、凹部23Bが係合部として機能するようになっている。このような構成によれば、係合が意図せずに解除されることを抑制することができる。
【0096】
図23に示す変形例2では、本体側壁部702のうち弁本体2側の面に凹部705が形成されている。この凹部705は、側面部23の外周面の頂点部23A周囲の形状に沿った形状を有しており、凹部705内に頂点部23Aの周囲が配置されて係合する。即ち、側面部23の外周面のうち頂点部23Aを含む所定の領域が係合部として機能するようになっている。このような構成によれば、係合が意図せずに解除されることを抑制することができる。
【0097】
また、前記第5実施形態のように弁本体2の側面部23の外周面を係合部とする構成において、1つの接続部材によって複数の配管が同時に接続されなくてもよく、前記第4実施形態のように、複数の接続部材によって個々の配管が弁本体に接続される構成としてもよい。
【0098】
また、前記第1実施形態では、弁座部材3が1つの板状の部材によって構成されているものとしたが、弁座部材は複数の部材に分割されていてもよい。例えば図24,25に示すように、弁座部材9が、弁座面911を有する弁座面側部材91と、弁本体2の内周面に接触するように配置される台座部材92と、を別体に有する構成としてもよい。このような構成では、弁座面側部材91が一対のガイド部912を有していればよい。また、弁座面側部材91および台座部材92は、いずれも例えばステンレス等によって構成されていればよく、これらは例えばろう付けや接着等によって互いに固定されればよい。
【0099】
また、前記第1実施形態では、配管12~14に接続されたコネクタ10が継手部材61に挿入されるものとしたが、適宜な形状及び材質を有する配管が直接的に継手部材に挿入されて挿入部となってもよい。
【0100】
また、前記第1実施形態では、小径部611の一部が弁本体2の外側に位置することで径方向延在部613が側面部23の外周面に対して隙間をあけて配置されるものとしたが、継手部材に係合部が設けられる構成において、弁本体の外周面に凹部を形成することにより、係合部に対して配管とは反対側に空間を形成し、接続部材を係止可能な構成としてもよい。
【0101】
また、前記第1実施形態では、係合部としての面613Aが、挿入方向であるZ方向と直交するXY平面に沿って延びる部分を有するものとしたが、係合部は、接続部材と対応した形状を有していてもよい。例えば、接続部材に曲面状の部分が形成され、これと対応した曲面状の係合部とすることにより、両者を係合させる構成としてもよい。
【0102】
また、前記第1実施形態では、組付手段6が弁体4のスライド方向であるX方向に沿って並んだ3つの継手部材61を有するものとしたが、4つ以上の継手部材がスライド方向に並んでいてもよいし、スライド方向に並ぶ継手部材が2つ以下であってもよい。複数の継手部材が一方向に並んで設けられる場合、前記第1実施形態同様に、複数の配管を同時に接続してもよい。また、複数の継手部材が一方向に並んで設けられない場合、前記第4実施形態のように、複数の継手部材を個別に接続してもよい。また、複数の継手部材が一方向に並んで設けられない場合であっても、継手部材の配置に応じた接続部材を用いることにより、複数の配管を同時に接続してもよい。また、一方向に並んだ複数の継手部材のうち一部を共通の接続部材によって同時に接続し、残りを他の接続部材によって接続してもよい。
【0103】
また、前記第1実施形態では、継手部材61が傾斜面612Bを有するものとしたが、このような傾斜面は形成されていなくてもよい。例えばコネクタの先端部に先細り形状のテーパ部を設けてもよい。また、継手部材のうちコネクタが挿入される部分の内径と、コネクタの外径と、の差が大きければ(即ちシール部材の厚さが大きければ)、挿入初期においてコネクタと継手部材とが干渉しにくく、案内のための面を設けなくてもスムーズな挿入が可能となる。
【0104】
また、前記第1実施形態では、弁座部材3がガイド部36を有するものとしたが、弁体側に突起を設けるとともに、弁座部材にこの突起が配置されるとともにスライド方向に延びる溝部を形成することにより、弁体がガイドされる構成としてもよい。また、弁本体によって弁体をガイド可能な場合や、駆動部によって弁体が充分に直進運動する場合等には、ガイドのための機構を弁座部材に設けなくてもよい。
【0105】
また、前記第1実施形態では、弁部材41のうち弁座面31とガイド部36との間の角部37と対向する位置に凹部411が形成されているものとしたが、他の位置に凹部を形成し、異物を逃がすようにしてもよい。また、異物が生じにくい場合や、異物を除去可能な構成が設けられている場合等には、異物を逃がすための凹部を設けなくてもよい。
【0106】
また、前記第1実施形態では、弁座部材3の弁ポート3B~3Dに弁座面31とは反対側から継手部材61が挿入されるものとしたが、例えば弁本体に継手部材を接続する際に治具を用いることで芯ずれが生じにくい場合や、継手部材の外径が弁本体の肉厚に対して充分に小さいため芯ずれが生じにくい場合等には、継手部材が弁座部材には挿入されない構成としてもよい。
【0107】
また、弁本体2と弁座部材3と継手部材61とがステンレス製であるものとしたが、各部の材質は、コストや強度、重量、伝熱性能等に応じて適宜に選択されればよい。
【0108】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0109】
1…四方切換弁(スライド式切換弁)、2…弁本体、23…側面部、23A…頂点部(係合部)、3,9…弁座部材、31,911…弁座面、3B~3D…弁ポート(挿入孔)、36,912…ガイド部、4…弁体、6…組付手段、61…継手部材、611…小径部、612…大径部、612B…傾斜面、612D…内周面(シール面)、613…径方向延在部、613A…面(係合部)、10…コネクタ、12~14…配管、R1…弁室
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