(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061000
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】コンクリート型枠及びコンクリート製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B28B 7/16 20060101AFI20240425BHJP
B28B 7/36 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
B28B7/16 Z
B28B7/36
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168629
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142572
【弁理士】
【氏名又は名称】水内 龍介
(72)【発明者】
【氏名】岸本 和樹
(72)【発明者】
【氏名】津野 禎一郎
【テーマコード(参考)】
4G053
【Fターム(参考)】
4G053BB13
4G053DA01
4G053EA26
(57)【要約】
【課題】 1つの型枠本体で複数の異なる凹凸模様のコンクリート製品を形成することができ、意匠マットの取り外しを容易にすることができるコンクリート型枠及びコンクリート製品の製造方法を提供する。
【解決手段】コンクリート型枠1は、表面に設けられる凹凸模様26が異なる複数のコンクリート製品2を形成可能なコンクリート型枠1であって、型枠本体3と、前記型枠本体3の内側に接着され、前記複数のコンクリート製品2に共通の凹凸模様26を形成する共通意匠マット4と、前記型枠本体3の内側に磁力で固定され、前記コンクリート製品2毎に異なる凹凸模様26を形成する可変意匠マット5と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に設けられる凹凸模様が異なる複数のコンクリート製品を形成可能なコンクリート型枠であって、
型枠本体と、
前記型枠本体の内側に接着され、前記複数のコンクリート製品に共通の凹凸模様を形成する共通意匠マットと、
前記型枠本体の内側に磁力で固定され、前記コンクリート製品毎に異なる凹凸模様を形成する可変意匠マットと、
を備えることを特徴とするコンクリート型枠。
【請求項2】
前記型枠本体は、前記可変マットを固定する位置に磁石が設けられるとともに、
前記可変意匠マットは、前記凹凸模様を形成する模様形成層と、前記磁石に引き付けられる磁性体の金属平板層と、を有することを特徴とする請求項1に記載のコンクリート型枠。
【請求項3】
前記金属平板層は、前記型枠本体と当接する面の全体に形成されることを特徴とする請求項2に記載のコンクリート型枠。
【請求項4】
前記磁石はネオジム磁石であることを特徴とする請求項3に記載のコンクリート型枠。
【請求項5】
前記金属平板層は、前記型枠本体と当接する面の側縁に、前記型枠本体から離反するように傾斜する面取部が形成されることを特徴とする請求項4に記載のコンクリート型枠。
【請求項6】
前記可変意匠マットは平板状であることを特徴とする請求項5に記載のコンクリート型枠。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載のコンクリート型枠を用いて前記コンクリート製品を形成するコンクリート製品の製造方法であって、
前記共通意匠マットが接着された前記型枠本体に、必要な前記コンクリート製品の凹凸模様に応じた前記可変意匠マットを磁力で固定する工程と、
前記コンクリート型枠にコンクリートを打設し、養生し、脱型して、必要な前記コンクリート製品を得る工程と、
前記コンクリート型枠から前記可変意匠マットを取り外す工程と、
を繰り返すことで、
表面に設けられる凹凸模様が異なる複数の前記コンクリート製品を形成することを特徴とするコンクリート製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に凹凸模様が形成されるコンクリート製品を形成するコンクリート型枠、及び当該コンクリート型枠を用いたコンクリート製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、型枠に生コンクリートを打設してコンクリート製品を形成する際に、当該コンクリート製品の表面に凹凸模様を付与するために、当該凹凸模様を転写した合成樹脂の意匠マットを型枠本体の内面に貼り付けることが行われている(特許文献1参照)。
【0003】
このような型枠に貼り付ける意匠マットには例えば永久磁石のシートを意匠マットに積層して、鉄又は鋼製の型枠に固定する意匠マットも提案されている(特許文献2、特許文献3参照)。このような磁石を用いた意匠マットは、鉄、鋼等の既存型枠への設置が極めて容易となり、かつ製造終了後の型枠からの取り外しも容易であるので、意匠マットごとコンクリート製品を脱型することで、脱型後の型枠を直ちに次の製造に使用することが可能となり、製造サイクルの向上につなげることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-146626号公報
【特許文献2】特開平11-19913号公報
【特許文献2】特開2000-334718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、コンクリート製品の中には、設置場所の都合やデザイン上の都合で一部のみ凹凸模様が変更され他の部分の凹凸模様が同じ複数のコンクリート製品を必要とする場合がある。従来のコンクリート型枠は、このような場合であっても、それぞれの意匠に対応したコンクリート型枠が準備されていた。
【0006】
また、精度よく凹凸模様を形成するためには、意匠マットは型枠本体に十分な強度で固定されている必要があり、意匠マットを型枠本体から取り外す際に大きな力が必要となる。
【0007】
そこで、本発明は、1つの型枠本体で複数の異なる凹凸模様のコンクリート製品を形成することができ、意匠マットの取り外しを容易にすることができるコンクリート型枠及びコンクリート製品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一のコンクリート型枠は、表面に設けられる凹凸模様が異なる複数のコンクリート製品を形成可能なコンクリート型枠であって、型枠本体と、前記型枠本体の内側に接着され、前記複数のコンクリート製品に共通の凹凸模様を形成する共通意匠マットと、前記型枠本体の内側に磁力で固定され、前記コンクリート製品毎に異なる凹凸模様を形成する可変意匠マットと、を備えることを特徴としている。
【0009】
本発明の第二のコンクリート型枠は、第一のコンクリート型枠の特徴に加えて、前記型枠本体は、前記可変マットを固定する位置に磁石が設けられるとともに、前記可変意匠マットは、前記凹凸模様を形成する模様形成層と、前記磁石に引き付けられる磁性体の金属平板層と、を有することを特徴としている。
【0010】
本発明の第三のコンクリート型枠は、第一又は第二のコンクリート型枠の特徴に加えて、前記金属平板層は、前記型枠本体と当接する面の全体に形成されることを特徴としている。
【0011】
本発明の第四のコンクリート型枠は、第一から第三のいずれかのコンクリート型枠の特徴に加えて、前記磁石はネオジム磁石であることを特徴としている。
【0012】
本発明の第五のコンクリート型枠は、第一から第四のいずれかのコンクリート型枠の特徴に加えて、前記金属平板層は、前記型枠本体と当接する面の側縁に、前記型枠本体から離反するように傾斜する面取部が形成されることを特徴としている。
【0013】
本発明の第六のコンクリート型枠は、第一から第五のいずれかのコンクリート型枠の特徴に加えて、前記可変意匠マットは平板状であることを特徴としている。
【0014】
本発明のコンクリート製品の製造方法は、上記の第一から第六の特徴を備えたコンクリート型枠を用いて前記コンクリート製品を形成するコンクリート製品の製造方法であって、前記共通意匠マットが接着された前記型枠本体に、必要な前記コンクリート製品の凹凸模様に応じた前記可変意匠マットを磁力で固定する工程と、前記コンクリート型枠にコンクリートを打設し、養生し、脱型して、必要な前記コンクリート製品を得る工程と、前記コンクリート型枠から前記可変意匠マットを取り外す工程と、を繰り返すことで、表面に設けられる凹凸模様が異なる複数の前記コンクリート製品を形成することを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第一のコンクリート型枠によると、複数のコンクリート製品に共通する凹凸模様と、複数のコンクリート製品毎に異なる凹凸模様とがそれぞれ形成される複数のコンクリート製品を成形するコンクリート型枠であり、共通の凹凸模様を形成する共通意匠マットが型枠本体の内側に接着され、製品毎に異なる凹凸模様を形成する可変意匠マットが型枠本体の内側に磁力で固定されている。これにより、凹凸模様を形成する意匠マットの全体ではなく、一部である可変意匠マットのみを交換可能となる。したがって、凹凸模様毎に型枠を用意する場合に比べて、生産効率を上げることができるとともに、可変意匠マットのみを複数種類用意すればよいので、意匠マット全体を複数種類用意する場合に比べて、コストを下げることができる。また、接着よりも磁力による固定のほうが固定作業、及び取り外し作業が容易であるとともに、短い時間で固定することができるので、コンクリート型枠を効率的に使用することができる。また、意匠マットの一部である可変意匠マットのみを交換するので、全体を交換する場合に比べて、小さい力及び短い時間で交換することができる。さらに、共通意匠マットは接着によって固定されるので、寸法変化やマットの浮きの発生を抑制することができる。
【0016】
本発明の第二のコンクリート型枠によると、型枠本体に磁石が設けられ、可変意匠マットに模様形成層と金属平板層とを有するので、可変意匠マットには磁石が設けられておらず、可変意匠マットを保管する際に、不要な金属等に引き付けられることや不要な金属を引き付けることがなく、保管作業を容易にすることができる。また、可変意匠マットを固定するためのコストの高い磁石は、型枠本体側に設けられているので、種類の多い可変意匠マット側に磁石が設けられるよりも低コストとすることができる。また、型枠本体の一部のみを可変意匠マットとして交換可能とすることで、その他の凹凸模様は共通意匠マットを接着して用いているので、金属平板層や磁石を全体に設ける場合に比べて安価に形成することができる。
【0017】
本発明の第三のコンクリート型枠によると、可変意匠マットの金属平板層が、型枠本体と当接する面の全体に形成されることで、型枠本体の磁石に確実に固定することができるとともに、金属平板層によって補強されることで、経年劣化による可変意匠マットが縮みや反りを抑制することができる。
【0018】
本発明の第四のコンクリート型枠によると、ネオジム磁石を用いて可変意匠マットが固定されるので、より強力に固定されることとなり、コンクリートを締固める際の振動によって可変意匠マットが型枠本体から離れることを抑制できる。
【0019】
本発明の第五のコンクリート型枠によると、金属平板層の型枠本体と当接する面の側縁に、型枠本体から離反するように傾斜する面取部が形成されているので、当該面取部に工具などを差し込んでより容易に可変意匠マットを型枠本体から取り外すことができる。
【0020】
本発明の第六のコンクリート型枠によると、可変意匠マットは平板状であるので、意匠マットの製造コストを低くすることができる。
【0021】
本発明のコンクリート製品の製造方法によると、可変意匠マットのみを交換して、型枠を繰り返し利用することで、凹凸模様の異なる複数のコンクリート製品を効率的に生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】コンクリート型枠の突出形成部及び可変意匠マットを説明する
図1のα部分拡大図。
【
図3】コンクリート型枠の上枠を立てて開いた状態を説明する斜視図。
【
図5】コンクリート製品の製造方法を説明するフローチャート。
【
図6】可変意匠マットを取り付ける状態のコンクリート型枠を説明する図。
【
図7】レール及び鉄筋を取り付けた状態のコンクリート型枠を説明する図。
【
図8】コンクリート型枠の上枠を回転させて下枠の上に倒した状態を説明する図。
【
図9】コンクリート型枠に生コンクリートを打設した状態を説明する図。
【
図10】コンクリート型枠の上枠を回転させて立てた状態を説明する図。
【
図11】コンクリート製品をコンクリート型枠から脱型した状態を説明する図。
【
図12】可変意匠マットを取り外すために面取部に治具を差し入れた状態を説明する図。
【
図13】治具に力を加えて、可変意匠マットを型枠本体の突出形成部の底面から取り外した状態を説明する図。
【
図14】コンクリート製品が矩形平板状の外壁板である場合のコンクリート型枠の変形例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のコンクリート型枠1及びコンクリート製品の製造方法の実施形態について、各図を参照しつつ説明する。コンクリート型枠1は、一部が上方に開口しており、当該開口10から生コンクリートを打設養生して、所望の固さまで凝結させて脱型することで、例えば建築物の外装材などのコンクリート製品2を得るものである。コンクリート型枠1は、コンクリート製品2を製造するラインに設けられたコンベア上に載置される搬送台に載せられた状態で、生コンクリートを打設され、1次養生を行う養生装置に型枠ごとそのまま搬送される。なお、本実施形態において、コンクリート型枠1の説明における上下方向は、コンクリート型枠1を搬送台に載せた状態での上下方向を指し、コンクリート製品2の説明における上下方向は、当該コンクリート製品2を建築物に取り付けた状態での上下方向を指す。
【0024】
コンクリート製品2は、
図4に示すように、本実施形態においては、例えば片持ちバルコニーやオーバーハングの下面の外周縁を形成し、水平部22と鉛直部21とが組み合わされて形成されている断面L字の役物建材である。コンクリート製品2の鉛直部21の屋外側を向く面には、タイルなどの化粧材が貼り付けられてコンクリート製品2の意匠性を高めており、当該鉛直部21の屋外側を向く面の下端には、屋外方向に突出する突出部23が形成されている。突出部23は、その上側に貼り付けられた化粧材の下端を見切っている。突出部23の突出端面24には凹凸模様26が形成されている。また、水平部22の屋外側を向く面である下面にも凹凸模様26が形成されている。本実施形態におけるコンクリート型枠1を用いて製造されるコンクリート製品2は、複数種類が設定されており、他の外装材や軒樋などとの干渉を避けるため、当該コンクリート製品2が設置される位置によって突出部23の突出端面24の凹凸模様26が形成されていない無模様部25が設けられて、製品の種類毎に凹凸模様26が異なっているとともに、水平部22の下面の凹凸模様26は、全ての製品に共通している。
【0025】
なお、コンクリート型枠1によって形成されるコンクリート製品2は、上述の建材に限定されるものではなく、例えば矩形平板状の外壁材であってもよく、コンクリート型枠1で形成可能な様々なコンクリート製品2に用いることができる。
【0026】
コンクリート型枠1は、
図1に示すように、内部に生コンクリートを打設可能な空間を有する鋼製の型枠本体3と、型枠本体3の内面に接着されてコンクリート製品2の凹凸模様26を形成する共通意匠マット4と、型枠本体3の内面に磁力で固定されてコンクリート製品2の凹凸模様26を形成する可変意匠マット5と、を備える。
【0027】
型枠本体3は、
図1及び
図3に示すように、その内部に形成されるコンクリート製品2の鉛直部21の屋外面が下側を向き、屋内面が上を向くように配置され、コンクリート製品2の水平部22が鉛直に立ち上がるように配置されている。型枠本体3は、コンクリート製品2の屋外側の面を形成する下枠6と、コンクリート製品2の屋内側の面を形成する上枠7と、上枠7及び下枠6の両端に形成され、型枠本体3の側部を閉じる側枠8と、上枠7を下枠6に回転可能に取り付けるヒンジ9と、を備えている。
【0028】
下枠6は、
図1及び
図2に示すように、搬送台に載置されて形成されており、水平な状態に配置され、コンクリート製品2の鉛直部21の屋外側を向いて化粧材が貼り付けられる面を形成する平坦部60と、平坦部60の一端部から下方に突出して溝状に形成されコンクリート製品2の突出部23を形成する突出形成部61と、突出形成部61の端部から立ち上がって配置されコンクリート製品2の下面を形成する下面形成部62と、を有する。また、上枠7は、ヒンジ9に固定されて鉛直部21の平坦部60に当接するヒンジ固定部70と、ヒンジ固定部70から立ち上がりコンクリート製品2の上端を形成する上端形成部71と、平坦部60に対して平行に形成される鉛直裏面形成部72と、下面形成部62に対して平行に形成される水平裏面形成部73と、を有する。
【0029】
下枠6の下面形成部62及び上枠7の水平裏面形成部73は、互いに平行に間隔を開けて配置されており、上方に向けて開口し、当該開口10から生コンクリートを打設可能となっている。上枠7の鉛直裏面形成部72には、C形鋼の2本のレール11をコンクリート型枠1の内部に保持するレール保持部74が形成されている。2本のレール11には鉄筋12が溶接されており、当該鉄筋12がコンクリート製品2の内部に埋設されることで当該コンクリート製品2を補強している。また、下枠6の溝状に形成された突出形成部61の底面にはネオジム磁石63がネジ止めされており、突出形成部61の底面に磁性体を吸着可能となっている。
【0030】
側枠8は、
図3に示すように、下枠6の側端部の上に配置されており、上枠7を回転させて、下枠6の上に配置したときに、上枠7及び下枠6の側方を閉じるように形成されている。側枠8は下枠6に対して図示しないヒンジで当該下枠6の側方に向かって開くように回転可能であり、コンクリート製品2を脱型する際や可変意匠マット5を取り外す際に、側枠8を開いて作業を容易にすることができる。
【0031】
共通意匠マット4は、可撓性を有する例えば樹脂製であり、コンクリート製品2の表面に凹凸模様26を形成するものである。共通意匠マット4は本実施形態においては、コンクリート製品2の水平部22の下面の凹凸模様26を形成するものであり、型枠本体3の下枠6の下面形成部62に接着剤によって接着されている。
【0032】
可変意匠マット5は、
図2に示すように、可撓性を有する例えば樹脂製で形成され、コンクリート型枠1の内側に露出して凹凸模様26を形成する模様形成層50と、型枠本体3の突出形成部61の底面に当接して、磁力で固定される鉄製の平らな金属平板層51と、を有している。金属平板層51は、型枠本体3と当接する面の全体に平板状に形成されており、模様形成層50を金属平板層51によって補強し、経年劣化による可変意匠マット5の縮みや反りを抑制できるものである。したがって、金属平板層51は縮みや反りを抑制できる厚みを有する。なお、金属平板層51は鉄板に限られるものではなく、磁石63に引き付けられる磁性体の金属製であれば材料は限定されない。可変意匠マット5の金属平板層51は、側枠8に接近する側縁に型枠本体3の突出端面24から離反するように傾斜する面取部52が形成されている。なお、本実施形態の可変意匠マット5は平板状に形成されており、例えば山形アングル状に形成される場合に比べて、意匠マットの製造コストを低くすることができる。
【0033】
このように、コンクリート製品2の凹凸模様26を形成する意匠マットが全体ではなく、一部の可変意匠マット5のみ簡単に交換できるので、1つの型枠本体3で複数の凹凸模様26を形成することができる。そして、可変意匠マット5のみ交換すればよいので、交換作業の効率化を図ることができるとともに、共通意匠マット4は交換しないでよいので、全体での意匠マットの製造コストも下げることができる。また、交換が必要な可変意匠マット5は、型枠本体3の突出形成部61の底面に設けられたネオジム磁石63に吸着されており、接着固定に比べて着脱が容易である一方、共通意匠マット4は接着によってより強力に固定されることで寸法変化やマットの浮きの発生をより確実に抑制することができる。
【0034】
次に、以上のように構成されるコンクリート型枠1を用いたコンクリート製品の製造方法について
図5を参照しつつ説明する。本実施形態におけるコンクリート製品2はコンクリート外装材の役物建材であり、例えば、大きさの異なる外壁パネル、開口部が設けられる箇所の外壁パネル、出隅部や入隅部の外壁パネル、本実施形態におけるコンクリート製品2である役物建材などの多品種のコンクリート外装材が同一の製造ライン上で順次製造されている。
【0035】
本実施形態におけるコンクリート製品2を製造すべきオーダー情報が入ると、まず、各種の型枠が保管されている保管スペースから本実施形態におけるコンクリート型枠1の型枠本体3を製造ラインに運び入れる。このとき型枠本体3には、共通意匠マット4が接着され、可変意匠マット5は固定されていない。さらに、製造されるコンクリート製品2の種類に応じて可変意匠マット5が保管スペースから運び入れられる。そして、
図6に示すように、型枠本体3の上枠7を回転させるとともに側枠8を倒すように回転させて、型枠本体3を開き、当該型枠本体3の突出形成部61の底面に可変意匠マット5を磁力によって固定する(S1)。
【0036】
次に、
図7に示すように、メッシュ状の鉄筋12が溶接されたレール11を上枠7の鉛直裏面形成部72のレール保持部74に固定する。そして、
図8に示すように、上枠7を下枠6の上側に配置されるように回転させるとともに、側枠8を起き上がるように回転させてコンクリート型枠1を閉じる(S2)。
【0037】
次に、
図9に示すように、計量して練り混ぜられた生コンクリートをコンクリート型枠1内に打設する(S3)。生コンクリートは、コンクリート型枠1の開口10から打設されて、コンクリート製品2を形成するように、コンクリート型枠1内に充填される。その後、コンクリート型枠1を振動させて内部のコンクリートを締め固める。そして、コンクリート型枠1ごと、所望の温度及び湿度に管理された1次養生装置に搬送し1次養生を行う(S4)。
【0038】
そして、1次養生が完了すると、次に脱型の準備を行う。具体的には、
図10に示すように、コンクリート型枠1の上枠7を持ち上げるように回転させるとともに、側枠8を倒すように回転させて、コンクリート型枠1を開く。このとき、上枠7の鉛直裏面形成部72のレール保持部74からレール11の固定を解除し、レール11及び鉄筋12をコンクリート製品2に埋設された状態で残存させる。1次養生が完了したコンクリート製品2は、
図11に示すように、レール11に図示しない係止具をひっかけて、コンクリート製品2をクレーンで持ち上げ、コンクリート型枠1からコンクリート製品2を取り外す(S5)。
【0039】
脱型したコンクリート製品2は、高温高圧のオートクレーブ窯に搬入して2次養生を行い(S6)、その後、各種コーティング剤などを塗装して、コンクリート製品2を完成させ、建築現場へ出荷する。
【0040】
一方、脱型後のコンクリート型枠1は、まず、
図12及び
図13に示すように、可変意匠マット5を取り外す(S7)。このとき、可変意匠マット5の面取部52にバール状の治具13を差し入れて、可変意匠マット5が型枠本体3の突出端面24から離反させて、可変意匠マット5を取り外す。そして、可変意匠マット5を取り外した型枠本体3及び可変意匠マット5を図示しない保管スペースに搬入する(S8、S9)。可変意匠マット5は金属平板層51を有するものであり、可変意匠マット5側には磁石63は固定されていないので、当該可変意匠マット5を保管する際に、不要な金属等に引き付けられることや不要な金属を引き付けることがなく、保管作業を容易にすることができる。そして、新たに、本実施形態のコンクリート型枠1を用いたコンクリート製品2を製造すべきオーダー情報が入ると、再度、型枠本体3及び所望の可変意匠マット5を製造ラインに運び入れ、上述の工程を繰り返し、必要な数量及び種類のコンクリート製品2を製造する。
【0041】
以上のように、本実施形態のコンクリート製品の製造方法によると、可変意匠マット5のみを交換して、型枠本体3及び共通意匠マット4を繰り返し利用することで、凹凸模様26の異なる複数のコンクリート製品2を効率的に生産することができる。
【0042】
なお、本実施形態のコンクリート型枠1は、可変意匠マット5が型枠本体3の突出形成部61の底面に磁力で固定される形態に限定されるものではない。例えばコンクリート製品2は、
図14に示すように、矩形平板状の外壁材であってもよい。コンクリート製品2が平板上の外壁材である場合でも、一部の凹凸模様26が異なるとともにその他の部分の凹凸模様26が共通する複数のコンクリート製品2を製造する場合には、コンクリート型枠1の凹凸模様26が異なる部分に対応する位置に可変意匠マット5を磁力で固定するとともに、他の位置に共通意匠マット4を接着することで、一部の凹凸模様26が異なる外壁材を形成することができる。
【0043】
本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【0044】
<第一の特徴>
本実施形態の第一の特徴のコンクリート型枠は、表面に設けられる凹凸模様が異なる複数のコンクリート製品を形成可能なコンクリート型枠であって、型枠本体と、前記型枠本体の内側に接着され、前記複数のコンクリート製品に共通の凹凸模様を形成する共通意匠マットと、前記型枠本体の内側に磁力で固定され、前記コンクリート製品毎に異なる凹凸模様を形成する可変意匠マットと、を備えることを特徴としている。
【0045】
これによると、凹凸模様を形成する意匠マットの全体ではなく、一部である可変意匠マットのみを交換可能となるので、このコンクリート型枠を用いて複数種類の凹凸模様のコンクリート製品を形成することができる。したがって、凹凸模様毎に型枠を用意する場合に比べて、生産効率を上げることができるとともに、可変意匠マットのみを複数種類用意すればよいので、意匠マット全体を複数種類用意する場合に比べて、コストを下げることができる。また、接着よりも磁力による固定のほうが固定作業、及び取り外し作業が容易であるとともに、短い時間で固定することができるので、コンクリート型枠を効率的に運用することができ、意匠マットの一部である可変意匠マットのみを交換するので、全体を交換する場合に比べて、小さい力及び短い時間で交換することができる。さらに、共通意匠マットの部分は接着によって固定されるので、寸法変化やマットの浮きの発生を抑制することができる。
【0046】
<第二の特徴>
本実施形態の第二の特徴のコンクリート型枠は、第一の特徴に加えて、前記型枠本体は、前記可変マットを固定する位置に磁石が設けられるとともに、前記可変意匠マットは、前記凹凸模様を形成する模様形成層と、前記磁石に引き付けられる磁性体の金属平板層と、を有することを特徴としている。
【0047】
これよると、型枠本体に磁石が設けられ、可変意匠マットに金属平板層を有するので、可変意匠マットには磁石が設けられておらず、可変意匠マットを保管する際に、不要な金属等に引き付けられることや不要な金属を引き付けることがなく、保管作業を容易にすることができる。また、可変意匠マットを協力に固定するためには、コストの高い磁石を用いる必要があるが、型枠本体側に設けられていることで、各凹凸模様ごとに用意する必要がある可変意匠マット側に磁石を設けるよりも低コストとすることができる。また、型枠本体の一部のみを可変意匠マットとして交換可能とすることで、その他の凹凸模様は共通意匠マットを接着して用いているので、全体に金属平板層や磁石を設ける場合に比べて安価に形成することができる。
【0048】
<第三の特徴>
本実施形態の第三の特徴のコンクリート型枠は、第二の特徴に加えて、前記金属平板層は、前記型枠本体と当接する面の全体に形成されることを特徴としている。
【0049】
これによると、可変意匠マットの金属平板層が、型枠本体と当接する面の全体に形成されることで、型枠本体の磁石に確実に固定できるとともに、金属平板層によって可変意匠マットが補強されることで、経年劣化による可変意匠マットが縮みや反りを抑制することができる。
【0050】
<第四の特徴>
本実施形態の第四の特徴のコンクリート型枠は、第三の特徴に加えて、前記磁石はネオジム磁石であることを特徴としている。
【0051】
これによると、ネオジム磁石を用いて可変意匠マットが固定されるので、より強力に固定されることとなり、コンクリートを締固める際の振動によって可変意匠マットが型枠本体から離れることを抑制できる。
【0052】
<第五の特徴>
本実施形態の第五の特徴のコンクリート型枠は、第四の特徴に加えて、前記金属平板層は、前記型枠本体と当接する面の側縁に、前記型枠本体から離反するように傾斜する面取部が形成されることを特徴としている。
【0053】
これによると、金属平板層の型枠本体と当接する面の側縁に、型枠本体から離反するように傾斜する面取部が形成されているので、当該面取部に工具などを差し込んでより容易に可変意匠マットを型枠本体から取り外すことができる。
【0054】
<第六の特徴>
本実施形態の第六の特徴のコンクリート型枠は、第五の特徴に加えて、前記可変意匠マットは平板状であることを特徴としている。
【0055】
これによると、可変意匠マットは平板状であるので、意匠マットの製造コストを低くすることができる。
【0056】
<第七の特徴>
本実施形態の第七の特徴のコンクリート製品の製造方法は、第一から第六のいずれかの特徴のコンクリート型枠を用いて前記コンクリート製品を形成するコンクリート製品の製造方法であって、前記共通意匠マットが接着された前記型枠本体に、必要な前記コンクリート製品の凹凸模様に応じた前記可変意匠マットを磁力で固定する工程と、前記コンクリート型枠にコンクリートを打設し、養生し、脱型して、必要な前記コンクリート製品を得る工程と、前記コンクリート型枠から前記可変意匠マットを取り外す工程と、を繰り返すことで、表面に設けられる凹凸模様が異なる複数の前記コンクリート製品を形成することを特徴としている。
【0057】
これによると、可変意匠マットのみを交換して、型枠を繰り返し利用することで、凹凸模様の異なる複数のコンクリート製品を効率的に生産することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係るコンクリート型枠及びコンクリート製品の製造方法は、1つのラインで複数種類のコンクリート外装材を製造する場合に用いるコンクリート型枠及びコンクリート製品の製造方法に好適である。
【符号の説明】
【0059】
1 コンクリート型枠
2 コンクリート製品
3 型枠本体
4 共通意匠マット
5 可変意匠マット
26 凹凸模様
50 模様形成層
51 金属平板層
52 面取部
63 磁石