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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061004
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】浴室暖房システム
(51)【国際特許分類】
   F24D 15/00 20220101AFI20240425BHJP
   F24H 15/176 20220101ALI20240425BHJP
   F24H 15/254 20220101ALI20240425BHJP
   F24H 15/395 20220101ALI20240425BHJP
   F24H 15/14 20220101ALI20240425BHJP
   F24H 15/20 20220101ALI20240425BHJP
【FI】
F24D15/00 B
F24H15/176
F24H15/254
F24H15/395
F24H15/14
F24H15/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168635
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【弁理士】
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】荒川 耕朋
【テーマコード(参考)】
3L072
【Fターム(参考)】
3L072AB06
3L072AE10
3L072AF01
(57)【要約】
【課題】浴室暖房システムで暖房運転における浴室の扉の開放を制限することなく、暖房運転よりも高温の加熱運転における機能の低下を抑制する。
【解決手段】浴室を暖房する暖房運転に加えて、暖房運転よりも高温に浴室を加熱する加熱運転(カビ抑制運転)の実行を運転制御手段で制御すると共に、浴室の扉の開放を扉開放検知手段によって検知可能とする。また、使用者に対して報知を実行可能な報知手段を備える。そして、加熱運転の実行中に扉の開放が検知されると、扉が開放状態である旨を表す扉開報知を報知手段で行う。一方、暖房運転の実行中は、扉の開放の検知の有無にかかわらず、報知手段で扉開報知を行わない。こうすれば、加熱運転の実行中は、扉の開放を検知して扉開報知を行うことで使用者に扉の閉鎖を促し、機能を維持することができ、暖房運転の実行中は、扉開報知を行わないことで使用者に対して扉の開放を制限するような誤報を回避できる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室を暖房する暖房運転に加えて、該暖房運転よりも高温に前記浴室を加熱する加熱運転を実行可能な浴室暖房システムにおいて、
前記暖房運転および前記加熱運転の実行を制御する運転制御手段と、
前記浴室の扉の開放を検知可能な扉開放検知手段と、
使用者に対する報知を実行可能な報知手段と
を備え、
前記加熱運転の実行中に前記扉の開放が検知されると、該扉が開放状態である旨を表す扉開報知を前記報知手段で行うのに対して、
前記暖房運転の実行中は、前記扉の開放の検知の有無にかかわらず、前記報知手段で前記扉開報知を行わない
ことを特徴とする浴室暖房システム。
【請求項2】
請求項1に記載の浴室暖房システムにおいて、
前記浴室の温度を計測する温度センサを備え、
前記扉開放検知手段は、前記温度センサの計測温度を周期的に取得することによって基準温度を更新しながら、直近に取得した前記温度センサの計測温度が前記基準温度に対して所定温度以上低下したことに基づいて、前記扉の開放を検知する
ことを特徴とする浴室暖房システム。
【請求項3】
請求項2に記載の浴室暖房システムにおいて、
前記暖房運転の実行中は、前記扉開放検知手段による前記扉の開放の検知を行わない
ことを特徴とする浴室暖房システム。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の浴室暖房システムにおいて、
前記報知手段で前記扉開報知を行った後、所定時間が経過するまでは、前記扉開放検知手段による前記扉の開放の検知を休止する
ことを特徴とする浴室暖房システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室を暖房する暖房運転に加えて、暖房運転よりも高温に浴室を加熱する加熱運転を実行可能な浴室暖房システムに関する。
【背景技術】
【0002】
浴室に温風を送るなどして暖房する暖房運転を実行可能な浴室暖房システムが知られている。浴室の温度が低くなる寒い時期に起こり易いヒートショックの対策として、入浴前から予め暖房運転を開始することにより、入浴時の浴室の温度を設定温度に調整することが可能である。
【0003】
こうした浴室暖房システムでは、暖房運転だけでなく、暖房運転の設定温度よりも高温に浴室を加熱する加熱運転を実行可能としたものが提案されている(例えば、特許文献1)。加熱運転を実行することによって、例えば、浴室におけるカビの発生を抑制することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-183590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述のように暖房運転と加熱運転とを実行可能な浴室暖房システムでは、入浴を前提としている暖房運転の実行中に浴室の扉が開けられても特に支障はないのに対して、高温を必要とする加熱運転の実行中に浴室の扉が開けられると、熱が漏れ出てしまい加熱運転の機能を十分に発揮できないことがあるという問題があった。
【0006】
この発明は従来の技術における上述した課題に対応してなされたものであり、浴室暖房システムで暖房運転における浴室の扉の開放を制限することなく、暖房運転よりも高温の加熱運転における機能の低下を抑制することが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の浴室暖房システムは次の構成を採用した。すなわち、
浴室を暖房する暖房運転に加えて、該暖房運転よりも高温に前記浴室を加熱する加熱運転を実行可能な浴室暖房システムにおいて、
前記暖房運転および前記加熱運転の実行を制御する運転制御手段と、
前記浴室の扉の開放を検知可能な扉開放検知手段と、
使用者に対する報知を実行可能な報知手段と
を備え、
前記加熱運転の実行中に前記扉の開放が検知されると、該扉が開放状態である旨を表す扉開報知を前記報知手段で行うのに対して、
前記暖房運転の実行中は、前記扉の開放の検知の有無にかかわらず、前記報知手段で前記扉開報知を行わない
ことを特徴とする。
【0008】
このような本発明の浴室暖房システムでは、加熱運転の実行中に扉が開放されると、浴室から熱が漏れ出てしまい加熱運転の機能を十分に発揮できなくなるため、扉の開放を検知して扉開報知を行うことによって、使用者に扉の閉鎖を促し、加熱運転の機能を維持することが可能となる。一方、暖房運転の実行中は、もともと入浴を前提としているため扉が開放されても支障はなく、扉開報知を行わないことで、使用者に対して扉の開放を制限するような誤報を回避することができる。
【0009】
上述した本発明の浴室暖房システムでは、浴室の温度を計測する温度センサを備えることとして、扉開放検知手段は、温度センサの計測温度を周期的に取得することによって基準温度を更新しながら、直近に取得した温度センサの計測温度が基準温度に対して所定温度以上低下したことに基づいて、扉の開放を検知してもよい。
【0010】
浴室暖房システムでは、浴室の温度を把握するために温度センサを備えていることが多く、この温度センサを利用して扉の開放を検知できるので、扉の開放を検知する専用センサの追加が不要となり、浴室暖房システムの製品コストを低減することが可能となる。
【0011】
また、上述した本発明の浴室暖房システムでは、暖房運転の実行中は、扉開放検知手段による扉の開放の検知を行わないようにしてもよい。
【0012】
このようにすれば、暖房運転の実行中における扉開放検知手段の処理負荷を軽減することが可能となる。
【0013】
こうした本発明の浴室暖房システムでは、報知手段で扉開報知を行った後、所定時間が経過するまでは、扉開放検知手段による扉の開放の検知を休止するようにしてもよい。
【0014】
このようにすれば、扉開報知に従って扉が閉鎖されるか暫く様子を見る時間を確保し、扉開報知が連続で繰り返し行われることを回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施例の浴室暖房システム1の設置態様を示した斜視図である。
図2】本実施例の浴室暖房システム1の構成を示した説明図である。
図3】本実施例の脱衣室リモコン13を拡大して示した説明図である。
図4】本実施例の制御ユニット6が浴室暖房システム1における各種運転を制御するために実行する運転制御処理のフローチャートである。
図5】運転制御処理の中で実行される本実施例の扉開放検知処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本実施例の浴室暖房システム1の設置態様を示した斜視図である。図示されるように本実施例の浴室暖房システム1は、浴室10の天井に埋め込まれた状態で設置されている。詳しくは後述するが、本実施例の浴室暖房システム1は、浴室10を暖房する暖房機能に加えて、浴室10にミストを噴射するミスト機能や、浴室10を換気する換気機能や、浴室10をミストで高湿に保ちながら暖房よりも高温に加熱することでカビの発生を抑制するカビ抑制機能などを備えている。このことと対応して、浴室暖房システム1は、浴室10に温風を送る暖房ユニット2や、ミストとして噴射する温水を生成するミストユニット3や、排気ダクト5を通じて浴室10の空気を屋外に排出する換気ユニット4や、各機能に対応する運転を制御する制御ユニット6などで構成されている。
【0017】
暖房ユニット2は、屋外に設置された熱源機7と温水循環配管8によって接続されている。本実施例の熱源機7は、燃料ガスを燃焼させた熱で温水を生成し、温水循環配管8を通じて温水を循環させることで暖房ユニット2に熱を供給する。尚、熱源機7は、暖房ユニット2に熱を供給することが可能であれば、ガス燃焼式に限られず、電熱式であってもよい。加えて、熱源機7に上水を供給する給水配管9の途中からミスト給水配管9aが分岐しており、このミスト給水配管9aがミストユニット3に導入されている。
【0018】
図1では、浴室10に隣接する脱衣室11を透過させて表しており、浴室10と脱衣室11との間を開閉する扉12が設けられている。図示した扉12の下部には、複数の細長い羽板をブラインド状に傾斜させて並べた通気口(いわゆるガラリ)12aが設けられている。このため、扉12を閉めた状態でも、浴室10が密閉されるわけではなく、ガラリ12aによって適度な通気が確保されている。
【0019】
脱衣室11の内壁には、使用者が脱衣室11から浴室暖房システム1を操作するための各種スイッチを有する脱衣室リモコン13が設置されている。尚、脱衣室リモコン13については別図を用いて後述する。同様に、浴室10の内壁には、使用者が浴室10から浴室暖房システム1を操作するための浴室リモコン14が設置されている。そして、脱衣室リモコン13、浴室リモコン14、および熱源機7は、制御ユニット6と電気的に接続されている。
【0020】
図2は、本実施例の浴室暖房システム1の構成を示した説明図である。前述したように本実施例の浴室暖房システム1は、暖房ユニット2、ミストユニット3、換気ユニット4、および制御ユニット6などで構成されている。以下では、各ユニットの構成について説明する。
【0021】
まず、暖房ユニット2は、浴室10の天井に開口した吸込口および吹出口(図示省略)を有すると共に、浴室10の空気を吸込口から吸い込んで吹出口から浴室10へと吹き出す循環気流を発生させる循環ファン20を備えている。循環ファン20には、いわゆるクロスフローファンが採用されており、これを回転駆動するための循環ファンモータ21が設けられている。
【0022】
また、暖房ユニット2における循環ファン20よりも気流の上流側(吸込口側)には、温水コイル式の暖房熱交換器22が搭載されている。前述したように暖房ユニット2は、温水循環配管8によって熱源機7と接続されており、温水循環配管8は、暖房ユニット2側へ温水を導く温水往き配管8aと、熱源機7側へ温水を導く温水戻り配管8cとを備えている。このうち温水往き配管8aが暖房熱交換器22に接続されており、温水往き配管8aには、熱源機7から暖房熱交換器22に供給される温水の温度(温水往き温度)を計測する往き温度センサ23が設けられている。循環ファン20を回転させると、吸込口から吸い込まれた浴室10の空気が暖房熱交換器22で温水との熱交換によって加熱され、温風となって吹出口から浴室10に吹き出す。
【0023】
吹出口には、浴室10への温風の吹き出し方向を変更するルーバ24が設置されている。ルーバ24は、細長い羽板が長手方向の軸回りに回転可能となっており、この羽板を駆動して回転角度を変化させるためのステッピングモータ25が設けられている。
【0024】
さらに、暖房ユニット2は、浴室10の温度を計測する浴室温度センサ26や、浴室10の湿度を計測する湿度センサ27を備えている。尚、本実施例の浴室暖房システム1に設置された各種温度センサには、温度の変化に応じて電気抵抗が変化するサーミスタを用いている。また、本実施例の浴室温度センサ26は、本発明の「温度センサ」に相当している。
【0025】
ミストユニット3は、プレート式の液-液熱交換器を用いたミスト熱交換器30を備えている。ミスト熱交換器30には、暖房ユニット2の暖房熱交換器22を通過した温水をミストユニット3へ導く温水連結配管8bが接続されていると共に、熱源機7へ温水を導く前述した温水戻り配管8cが接続されている。すなわち、熱源機7から供給される温水は、温水往き配管8aに導かれて暖房熱交換器22を通過すると、続いて、温水連結配管8bに導かれてミスト熱交換器30を通過した後、温水戻り配管8cに導かれて再び熱源機7へと戻ることで循環する。温水連結配管8bには、ミスト熱交換器30に供給される温水の温度(温水中間温度)を計測する中間温度センサ31が設けられており、温水戻り配管8cには、循環する温水の流量を調節する流量制御弁32が設けられている。
【0026】
また、ミスト熱交換器30には、給水配管9から分岐したミスト給水配管9aが接続されており、このミスト給水配管9aには、ミスト熱交換器30側から給水配管9側への逆流を防止する逆止弁33や、ミスト給水配管9aを開閉する給水電磁弁34が設けられている。給水電磁弁34を開弁すると、ミスト給水配管9aを通って供給される上水がミスト熱交換器30で循環する温水との熱交換によって加熱される。
【0027】
こうして加熱された温水は、ミスト熱交換器30に接続されたミスト温水配管35を通ってミストノズル36に導かれる。図示した例では、暖房ユニット2のルーバ24の近傍に2つのミストノズル36が設置されている。ミスト温水配管35には、ミストノズル36に供給される温水の温度(ミスト温度)を計測するミスト温度センサ37や、ミスト温水配管35を開閉するミスト電磁弁38が設けられている。ミスト電磁弁38を開弁することで、ミストノズル36から浴室10にミストが噴射される。
【0028】
換気ユニット4は、暖房ユニット2と連通していると共に、暖房ユニット2側から吸い込んだ空気を、ダクトアダプタ41を介して接続された排気ダクト5に向けて送り出す換気ファン40を備えている。換気ファン40には、いわゆるシロッコファンが採用されており、図示しないモータの駆動で換気ファン40を回転させると、暖房ユニット2の吸込口から取り込まれた浴室10の空気が排気ダクト5を通って屋外に排出される。また、ダクトアダプタ41の内部には、浴室10側から屋外側への空気の流通を許容しながら、屋外側から浴室10側への逆流を防止する逆流防止板42が設けられている。
【0029】
制御ユニット6には、前述した暖房ユニット2における循環ファンモータ21、往き温度センサ23、ステッピングモータ25、浴室温度センサ26、湿度センサ27、ミストユニット3における中間温度センサ31、流量制御弁32、給水電磁弁34、ミスト温度センサ37、ミスト電磁弁38、換気ユニット4における換気ファン40のモータが電気的に接続されている。制御ユニット6は、各種スイッチや各種センサからの信号に基づいて、各種アクチュエータを駆動することにより、各種運転の実行を制御している。
【0030】
図3は、本実施例の脱衣室リモコン13を拡大して示した説明図である。図示されるように本実施例の脱衣室リモコン13は、浴室10を暖房する暖房運転の実行を指示する暖房スイッチ50と、浴室10にミストを噴射するミスト運転の実行を指示するミストスイッチ51と、浴室10を換気する換気運転の実行を指示する換気スイッチ52と、浴室10のカビの発生を抑制するカビ抑制運転の実行を指示するカビ抑制スイッチ53に加えて、実行中の運転の停止を指示する停止スイッチ54など使用者が操作可能な各種スイッチを備えている。
【0031】
また、脱衣室リモコン13には、浴室暖房システム1の運転状況や使用者に対する報知事項を表示可能な表示部55や、使用者に対する報知事項を音声で出力可能なスピーカ56が搭載されている。
【0032】
尚、浴室リモコン14も、基本的には脱衣室リモコン13と同様であるものの、浴室暖房システム1で実行可能な各種運転のうち、カビ抑制運転については入浴していない状態で実行することを前提としているため、浴室リモコン14にはカビ抑制スイッチ53が設けられていない。
【0033】
図4は、本実施例の制御ユニット6が浴室暖房システム1における各種運転を制御するために実行する運転制御処理のフローチャートである。この運転制御処理は、浴室暖房システム1の電源を入れると、所定の周期で繰り返し実行される。運転制御処理では、まず、浴室暖房システム1で何れかの運転を実行中であるか否かを判断する(STEP1)。前述したように本実施例の浴室暖房システム1では、暖房運転だけでなく、ミスト運転、換気運転、カビ抑制運転などを実行可能である。尚、本実施例の制御ユニット6は、本発明の「運転制御手段」に相当する機能を有している。
【0034】
何れの運転も実行中ではない場合は(STEP1:no)、次に、何れかの運転の開始指示があったか否かを判断する(STEP2)。本実施例の浴室暖房システム1では、脱衣室リモコン13または浴室リモコン14で各種運転の実行を指示するスイッチ(暖房スイッチ50、ミストスイッチ51、換気スイッチ52、カビ抑制スイッチ53)の何れかが操作されるか、各種運転についてのタイマ予約が設定されている場合に予約時間になると、開始指示があったものと判断する。そして、何れの運転についても未だ開始指示がない場合は(STEP2:no)、そのまま図4の運転制御処理を一旦終了し、所定の周期で再び図4の運転制御処理を実行する。
【0035】
これに対して、何れかの運転の開始指示があった場合は(STEP2:yes)、指示に従って何れかの運転を開始する(STEP3)。例えば、暖房スイッチ50が操作されると、浴室10に温風を送って暖房する暖房運転を開始し、ミストスイッチ51が操作されると、浴室10にミストを噴射するミスト運転を開始し、換気スイッチ52が操作されると、浴室10の空気を屋外に排出して換気する換気運転を開始し、カビ抑制スイッチ53が操作されると、浴室10をミストで高湿に保ちながら暖房運転よりも高温の温風を送って加熱するカビ抑制運転を開始する。尚、本実施例のカビ抑制運転は、本発明の「加熱運転」に相当している。
【0036】
こうして何れかの運転を開始すると、続いて、カビ抑制運転を実行中であるか否かを判断する(STEP4)。また、STEP1の判断において、既に何れかの運転を実行中である場合は(STEP1:yes)、STEP2およびSTEP3の処理を省略して、実行中の運転がカビ抑制運転であるか否かを判断する(STEP4)。そして、カビ抑制運転を実行中である場合は(STEP4:yes)、浴室10の扉12の開放を検知する処理(以下、扉開放検知処理)を実行する(STEP5)。一方、実行中の運転がカビ抑制運転ではなく、暖房運転などの他の運転である場合は(STEP4:no)、STEP5の処理を省略する(扉開放検知処理を行わない)。尚、扉開放検知処理の詳細については、別図を用いて後述する。また、本実施例の制御ユニット6は、本発明の「扉開放検知手段」に相当する機能を有している。
【0037】
運転制御処理では、扉開放検知処理(STEP5)から復帰するか、あるいは扉開放検知処理(STEP5)を省略すると、実行中の運転について運転状況を管理する(STEP6)。例えば、暖房運転を実行中であれば、浴室10の温度(浴室温度センサ26の計測温度)が設定された暖房温度となるように流量制御弁32の開度や循環ファンモータ21の回転数を調節する。また、カビ抑制運転を実行中であれば、浴室10の温度が暖房温度よりも高温である所定の加熱温度となるように流量制御弁32の開度や循環ファンモータ21の回転数を調節する。
【0038】
運転状況の管理に続いて、実行中の運転の停止条件が成立したか否かを判断する(STEP7)。本実施例の浴室暖房システム1では、脱衣室リモコン13または浴室リモコン14で運転の停止を指示する停止スイッチ54が操作されるか、各種運転について予め設定された運転時間が経過すると、停止条件が成立したものと判断する。そして、停止条件が成立した場合は(STEP7:yes)、実行中の運転を停止して(STEP8)、図4の運転制御処理を一旦終了する。
【0039】
これに対して、未だ停止条件が成立していない場合は(STEP7:no)、STEP8の処理を省略し、実行中の運転を継続したまま、図4の運転制御処理を一旦終了する。その後、所定の周期で再び図4の運転制御処理を実行する。
【0040】
図5は、運転制御処理の中で実行される本実施例の扉開放検知処理のフローチャートである。前述したように扉開放検知処理(STEP5)は、実行中の運転がカビ抑制運転であることを条件に行われ、暖房運転などの他の運転であれば行われない。扉開放検知処理では、まず、カビ抑制運転の開始から1分以上が経過したか否かを判断する(STEP10)。前述したようにカビ抑制運転では、浴室10をミストで高湿に保ちながら暖房運転よりも高温に加熱することでカビの発生を抑制するようになっている。また、後述するように本実施例の浴室暖房システム1では、浴室10の温度(浴室温度センサ26の計測温度)の変化に基づいて、扉12の開放を検知するようになっている。カビ抑制運転の開始直後は、ミストの噴射に伴う気化熱の奪取で浴室10の温度が低下する傾向にあるため、扉12の開放を正常に検知することが困難である。そこで、カビ抑制運転の開始から1分未満である場合は(STEP10:no)、そのまま図5の扉開放検知処理を終了し、図4の運転制御処理に復帰する。
【0041】
その後、所定の周期で図4の運転制御処理を繰り返しながら、カビ抑制運転の開始から1分以上が経過した場合は(STEP10:yes)、次に、基準温度を記憶しているか否かを判断する(STEP11)。本実施例の制御ユニット6は記憶部(図示省略)を備えており、この記憶部に基準温度を記憶することが可能であると共に、カビ抑制運転を停止する際に基準温度の記憶をリセット(消去)するようになっている。そして、基準温度を記憶していない場合は(STEP11:no)、浴室温度センサ26の計測温度を取得し、取得した計測温度を基準温度として記憶する(STEP12)。こうして基準温度を記憶すると、図5の扉開放検知処理を一旦終了し、図4の運転制御処理に復帰する。
【0042】
一方、既に基準温度を記憶している場合は(STEP11:yes)、続いて、扉開報知フラグがONに設定されているか否かを判断する(STEP13)。後述するように扉開報知フラグは、扉12の開放を検知して使用者に報知したことを示すフラグであり、制御ユニット6の記憶部に扉開報知フラグの記憶領域が確保されている。そして、扉開報知フラグがOFFに設定されている場合は(STEP13:no)、浴室温度センサ26の計測温度を取得する(STEP14)。
【0043】
また、取得した計測温度(浴室10の温度)と、記憶している基準温度とを比較して、計測温度が基準温度よりも4度以上低下し、且つ1秒が経過したか否かを判断する(STEP15)。計測温度が基準温度よりも4度以上低下していれば、扉12の開放によって浴室10の熱が漏れ出てしまい温度が急激に低下した可能性が高い。ただし、浴室温度センサ26の計測温度に突発的な異常が生じた可能性もあるため、計測温度が低下した状態が1秒継続することを確認している。こうすることで、扉12の開放の検知精度を高めることができる。尚、扉12の開放を検知するための基準温度と計測温度との温度差の基準値は、4度に限られず、浴室暖房システム1の仕様に応じて適宜設定することができる。
【0044】
そして、計測温度が基準温度よりも4度以上低下した状態で1秒が経過した場合は(STEP15:yes)、使用者に対して扉12が開放状態である旨を表す報知(以下、扉開報知)を実行する(STEP16)。本実施例の扉開報知は、脱衣室リモコン13および浴室リモコン14に内蔵のスピーカ56から音声(例えば、「扉を開けないでください」)を出力して行うようになっている。尚、本実施例のスピーカ56は、本発明の「報知手段」に相当している。また、扉開報知の態様はこれに限られず、脱衣室リモコン13および浴室リモコン14に搭載の表示部55に表示して行ってもよい。
【0045】
こうして扉開報知を実行すると、扉開報知の実行を示す扉開報知フラグをONに設定した後(STEP17)、図5の扉開放検知処理を一旦終了し、図4の運転制御処理に復帰する。
【0046】
一方、STEP15の判断において、計測温度が基準温度よりも4度以上低下していない場合や、計測温度が基準温度よりも4度以上低下した状態で1秒が経過していない場合は(STEP15:no)、次に、計測温度が基準温度よりも高いか否かを判断する(STEP18)。計測温度が基準温度よりも高くなっていれば、浴室10の温度が未だ所定の加熱温度に到達しておらず、昇温の途中である可能性が高い。そこで、計測温度が基準温度よりも高い場合は(STEP18:yes)、記憶している基準温度を、取得した計測温度で更新する(STEP19)。こうして基準温度をこまめに上方修正しておけば、扉12の開放によって浴室10の温度(浴室温度センサ26の計測温度)が低下した際に、基準温度に対して4度以上の温度差となって表れ易くなるため、速やかに扉12の開放を検知することが可能となる。基準温度を更新すると、図5の扉開放検知処理を一旦終了し、図4の運転制御処理に復帰する。
【0047】
これに対して、計測温度が基準温度よりも高くない場合は(STEP18:no)、続いて、計測温度が基準温度よりも1度以上低下し、且つ1分が経過したか否かを判断する(STEP20)。浴室10の温度は、扉12の開放だけでなく、別の要因によっても低下することがある。例えば、浴室10の温度が所定の加熱温度に到達すると、過熱を防ぐために暖房ユニット2の作動(浴室10への温風の供給)と停止とを繰り返す断続制御を行うことがあり、暖房ユニット2の停止状態では浴室10の温度が徐々に低下する。また、温水循環配管8を通じて温水を循環させることで暖房ユニット2に熱を供給する熱源機7では、加熱量を調節するために燃料ガスの燃焼と消火とを繰り返す断続燃焼制御を行うことがあり、熱源機7の消火状態では温水往き温度の低下に伴い、暖房ユニット2が作動状態であっても浴室10の温度が低下することがある。さらに、前述したように扉12の下部にはガラリ12aが設けられており、浴室10とは別の部屋で換気設備が作動するなどによって脱衣室11側の圧力が低下すると、浴室10の空気がガラリ12aを通って脱衣室11に流出するのに伴い、浴室10の温度が低下することがある。これらの要因によって浴室10の温度が1分あたり1度程度低下することがあるものの、扉12の開放時のように4度以上低下することはない。
【0048】
そして、計測温度が基準温度よりも1度以上低下した状態で1分が経過した場合は(STEP20:yes)、記憶している基準温度を、取得した計測温度で更新する(STEP19)。こうして扉12の開放以外の要因を反映して基準温度を下方修正しておけば、扉12が開放されていないのに基準温度に対する計測温度の低下が4度以上となることが生じ難くなるため、扉12の開放の誤検知を抑制することができる。基準温度を更新すると、図5の扉開放検知処理を一旦終了し、図4の運転制御処理に復帰する。
【0049】
一方、計測温度が基準温度よりも1度以上低下していない場合や、計測温度が基準温度よりも1度以上低下した状態で1分が経過していない場合は(STEP20:no)、STEP19の処理を省略して(基準温度を更新することなく)、図5の扉開放検知処理を一旦終了し、図4の運転制御処理に復帰する。
【0050】
また、STEP13の判断において、扉開報知フラグがONに設定されている場合は(STEP13:yes)、扉開報知の実行から所定時間(本実施例では1分)が経過したか否かを判断する(STEP21)。そして、未だ所定時間が経過していない場合は(STEP21:no)、そのまま図5の扉開放検知処理を一旦終了し、図4の運転制御処理に復帰する。こうして扉開報知の実行から所定時間が経過するまでは、扉12の開放の検知を行わないことにより、扉開報知を連続で繰り返すことを回避できる。
【0051】
その後、扉開報知の実行から所定時間が経過した場合は(STEP21:yes)、浴室温度センサ26の計測温度を取得し、記憶している基準温度を、取得した計測温度で更新する(STEP22)。そして、扉開報知フラグをOFFに設定すると(STEP23)、図5の扉開放検知処理を一旦終了し、図4の運転制御処理に復帰する。
【0052】
以上に説明したように本実施例の浴室暖房システム1では、浴室10を暖房する暖房運転に加えて、暖房運転よりも高温に浴室10を加熱するカビ抑制運転を実行可能であり、カビ抑制運転の実行中は扉開放検知処理を行うこととして、扉12の開放が検知されると、使用者に対して扉開報知を行うのに対し、暖房運転の実行中は扉開放検知処理を省略することとして、扉開報知を行わないようになっている。
【0053】
カビ抑制運転の実行中に扉12が開放されると、浴室10から熱が漏れ出てしまいカビ抑制運転の機能を十分に発揮できなくなるため、扉12の開放を検知して扉開報知を行うことによって、使用者に扉12の閉鎖を促し、カビ抑制運転の機能を維持することが可能となる。一方、暖房運転の実行中は、入浴を前提としているため浴室10の扉12が開放されても支障はなく、扉開報知を行わないことで、使用者に対して扉12の開放を制限するような誤報を回避することができる。
【0054】
また、本実施例の浴室暖房システム1では、浴室10の温度を計測する浴室温度センサ26を備えており、扉開放検知処理では、浴室温度センサ26の計測温度を周期的に取得することによって基準温度を更新しながら、直近に取得した計測温度が基準温度に対して所定温度(本実施例では4度)以上低下したことに基づいて、扉12の開放を検知するようになっている。
【0055】
浴室暖房システム1では、浴室10の温度を把握するために浴室温度センサ26を備えていることが多く、この浴室温度センサ26を利用して扉12の開放を検知できるので、扉12の開放を検知する専用センサの追加が不要となり、浴室暖房システム1の製品コストを低減することが可能となる。
【0056】
加えて、本実施例の暖房運転の実行中は、扉開放検知処理自体を行わないようになっている。これにより、暖房運転の実行中における制御ユニット6の処理負荷を軽減することが可能となる。
【0057】
さらに、本実施例の浴室暖房システム1では、扉開報知を行った後、所定時間(本実施例では1分)が経過するまでは、扉12の開放の検知を行わない(休止する)ようになっている。このようにすれば、扉開報知に従って扉12が閉鎖されるか暫く様子を見る時間を確保し、扉開報知が連続で繰り返し行われることを回避することが可能となる。
【0058】
以上、本実施例の浴室暖房システム1について説明したが、本発明は上記の実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0059】
例えば、前述した実施例では、暖房運転(カビ抑制運転以外)を実行中であれば、図5の扉開放検知処理を行わないようになっていた(図4のSTEP4:no)。しかし、暖房運転を実行中においても扉開放検知処理を行うようにしてもよい。この場合は、暖房運転の実行中に扉12の開放を検知したとしても、扉開報知を行わないこととすればよい。ただし、本実施例のように暖房運転の実行中は扉開放検知処理を省略することとすれば、制御ユニット6の処理負荷を軽減することができる。
【0060】
また、前述した実施例では、浴室10の温度(浴室温度センサ26の計測温度)の変化に基づいて、間接的に扉12の開放を検知するようになっていた。しかし、扉12の開放を検知する手法は、これに限られず、専用のセンサ(スイッチ)を用いて直接的に扉12の開放を検知してもよい。例えば、接触式のリミットスイッチを扉枠に設置しておき、アクチュエータの動作による接点の開閉に基づいて、扉12の開放を検知してもよい。あるいは、非接触式の近接センサとして、磁石を扉12に設置すると共に、リードスイッチを扉枠に設置しておき、磁気の変化によるリードスイッチの接点の開閉に基づいて、扉12の開放を検知してもよい。これらの場合のリミットスイッチや近接センサは、本発明の「扉開放検知手段」に相当している。
【0061】
さらに、前述した実施例では、暖房運転よりも高温に浴室10を加熱する加熱運転として、カビ抑制運転を例に説明した。しかし、加熱運転は、カビ抑制運転に限られず、例えば、換気ファン40の作動で浴室10を換気しながら暖房運転よりも高温の温風を送って加熱することで浴室10を乾燥させる乾燥運転でもよい。乾燥運転の実行中に扉12が開放されると、浴室10から熱が漏れ出てしまい乾燥運転の機能を十分に発揮できなくなるため、扉12の開放を検知して扉開報知を行うことによって、使用者に扉12の閉鎖を促し、乾燥運転の機能を維持することが可能となる。
【符号の説明】
【0062】
1…浴室暖房システム、 2…暖房ユニット、 3…ミストユニット、
4…換気ユニット、 5…排気ダクト、 6…制御ユニット、
7…熱源機、 8…温水循環配管、 8a…温水往き配管、
8b…温水連結配管、 8c…温水戻り配管、 9…給水配管、
9a…ミスト給水配管、 10…浴室、 11…脱衣室、
12…扉、 12a…ガラリ、 13…脱衣室リモコン、
14…浴室リモコン、 20…循環ファン、 21…循環ファンモータ、
22…暖房熱交換器、 23…往き温度センサ、 24…ルーバ、
25…ステッピングモータ、 26…浴室温度センサ、 27…湿度センサ、
30…ミスト熱交換器、 31…中間温度センサ、 32…流量制御弁、
33…逆止弁、 34…給水電磁弁、 35…ミスト温水配管、
36…ミストノズル、 37…ミスト温度センサ、 38…ミスト電磁弁、
40…換気ファン、 41…ダクトアダプタ、 42…逆流防止板、
50…暖房スイッチ、 51…ミストスイッチ、 52…換気スイッチ、
53…カビ抑制スイッチ、 54…停止スイッチ、 55…表示部、
56…スピーカ。
図1
図2
図3
図4
図5