IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-エアバッグ装置 図1
  • 特開-エアバッグ装置 図2
  • 特開-エアバッグ装置 図3
  • 特開-エアバッグ装置 図4
  • 特開-エアバッグ装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061008
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/207 20060101AFI20240425BHJP
   B60R 21/233 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
B60R21/207
B60R21/233
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168646
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】長澤 勇
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA02
3D054AA03
3D054AA07
3D054AA23
3D054CC04
3D054EE20
(57)【要約】
【課題】車両の側面衝突および前面衝突において、乗員の挙動を適切に制御する。
【解決手段】車両前席のシートバックレスト21のセンターコンソール側に設けられ、1つの円柱状の基布材からなり、外周部は環状となっており、内周部に展開状態で乗員の肩部を保護する縦長筒状に展開する肩部背面気室と肩部側面気室と肩部前面気室を含む肩部保護気室11と、展開時に半円状で、シートに着座する乗員CRR、CRL側に倒れ込む形態で展開し、乗員の頭部を保護する頭部保護気室12と、肩部背面気室に隣接する非膨張部15と、を有するファーサイドエアバッグ10と、ファーサイドエアバッグの展開を制御する展開制御部120と、を備え、非膨張部には、筒14に覆われ上下方向に排気口EPU、EPDを有するインフレータ13を収納する筒が設けられ、排気口から排出される高圧ガスを肩部保護気室および頭部保護気室送るガス流路が形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前席のシートバックレストのセンターコンソール側に設けられ、1つの円柱状の基布材からなり、外周部は環状となっており、内周部に展開状態で乗員の肩部を保護する縦長筒状に展開する肩部背面気室と肩部側面気室と肩部前面気室を含む肩部保護気室と、展開時に半円状で、シートに着座する前記乗員側に倒れ込む形態で展開し、前記乗員の頭部を保護する頭部保護気室と、肩部背面気室に隣接する非膨張部と、を有するファーサイドエアバッグと、
前記ファーサイドエアバッグの展開を制御する展開制御部と、
を備え、
前記非膨張部には、筒に覆われたインフレータが収納され、
前記筒の排気口から排出される高圧ガスを前記肩部保護気室および前記頭部保護気室に送るガス流路が形成されていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
前記筒の排気口から排出される高圧ガスにより、外周部内側、前記肩部背面気室、前記肩部側面気室の順に、膨張展開し、その後、前記肩部前面気室、前記頭部保護気室が膨張展開することを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記筒がJ字状であることを特徴とする請求項2に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記ファーサイドエアバッグには、前記筒の内面と前記インフレータの外形とによって形成された空洞部が設けられ、展開後に、前記乗員の肩部背面が前記肩部背面気室に当接すると、前記肩部保護気室が前記乗員の肩部に巻き付くように展開形態を変化させることを特徴とする請求項3に記載のエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、車両衝突時における乗員を保護する安全装置として、エアバッグ装置が既に広く実用化され、普及している。
上記エアバッグ装置の1つとして、自車両に対する側面衝突が発生した時に側面衝突により発生する乗員の挙動を抑制するように、乗員を保護するファーサイドエアバッグ装置も実用化されている。
【0003】
この種のエアバッグ装置としては、例えば、乗員の肩部側方で膨張展開する第1膨張部と、これよりも前方及び後方で膨張展開する第2膨張部及び第3膨張部と、第2膨張部と第3膨張部との間に形成された凹部と、を有し、テザーが、凹部を橋渡すように第2膨張部及びシートフレームに取り付けられ、凹部を介して第1膨張部に対向し、エアバッグの展開時に、テザーが乗員の肩部を受け、それにより第2膨張部が乗員の前部に近づく方向に変形するエアバッグ装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2020/036048号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1に記載のエアバッグ装置は、テザーが反力となって、車両の側面衝突時に乗員の肩部を拘束することにより、乗員の挙動を抑制するものである。
しかしながら、助手席にも乗員が搭乗している場合、衝突衝撃の伝達差によって、運転席の乗員と助手席の乗員とでは、異なった挙動となり、運転席の乗員と助手席の乗員とが衝突する虞があった。
【0006】
また、上記の特許文献1に記載のエアバッグ装置は、車両の側面衝突時に乗員の肩部を拘束することにより、乗員の挙動を抑制するものであるが、車両の前面衝突時における乗員の挙動制御においては、十分な効果が期待できないという課題がある。
【0007】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、車両の側面衝突および前面衝突において、乗員の挙動を適切に制御するエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
形態1;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、車両前席のシートバックレストのセンターコンソール側に設けられ、1つの円柱状の基布材からなり、外周部は環状となっており、内周部に展開状態で乗員の肩部を保護する縦長筒状に展開する肩部背面気室と肩部側面気室と肩部前面気室を含む肩部保護気室と、展開時に半円状で、シートに着座する前記乗員側に倒れ込む形態で展開し、前記乗員の頭部を保護する頭部保護気室と、肩部背面気室に隣接する非膨張部と、を有するファーサイドエアバッグと、前記ファーサイドエアバッグの展開を制御する展開制御部と、を備え、前記非膨張部には、筒に覆われたインフレータが収納され、前記筒の排気口から排出される高圧ガスを前記肩部保護気室および前記頭部保護気室に送るガス流路が形成されていることを特徴とするエアバッグ装置を提案している。
【0009】
形態2;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記筒の排気口から排出される高圧ガスにより、外周部内側、前記肩部背面気室、前記肩部側面気室の順に、膨張展開し、その後、前記肩部前面気室、前記頭部保護気室が膨張展開することを特徴とするエアバッグ装置を提案している。
【0010】
形態3;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記筒がJ字状であることを特徴とするエアバッグ装置を提案している。
【0011】
形態4;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記ファーサイドエアバッグには、前記筒の内面と前記インフレータの外形とによって形成された空洞部が設けられ、展開後に、前記乗員の肩部背面が前記肩部背面気室に当接すると、前記肩部保護気室が前記乗員の肩部に巻き付くように展開形態を変化させることを特徴とするエアバッグ装置を提案している。
【発明の効果】
【0012】
本発明の1またはそれ以上の実施形態によれば、車両の側面衝突および前面衝突において、乗員の挙動を適切に制御するエアバッグ装置を提供することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係るエアバッグ装置を搭載した車両の平面図である。
図2】本発明の実施形態に係るエアバッグ装置の拡大斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係るエアバッグ装置の構成を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係るエアバッグ装置の処理フロー図である。
図5】本発明の実施形態に係るエアバッグ装置の展開形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態>
図1から図5を用いて、本実施形態に係るエアバッグ装置1について説明する。
なお、図1図2図5の図面では、車両の前方側を矢印FRで、車両の後方側を矢印BKで、車両の上方側を矢印UPで、車両の下方側を矢印DNで、車両正面視で、車両幅方向の左方側を矢印LH、車両幅方向の右方側を矢印RHで示している。
また、以下の説明において、上下、前後、左右の方向を用いて説明するときには、特に断りのない限り、車両正面視で、車両上下方向、車両前後方向、車両左右方向を示すものとする。
【0015】
図1は、本実施形態に係るエアバッグ装置1を装備した自車両MVを示している。
図1には、シートバックレスト21、ヘッドレスト22を含むシート2に着座する乗員CRと、車幅方向左側面からの衝突、車幅方向右側面あるいは車両前方からの衝突が発生した場合に、展開されるシートバックレスト21のセンターコンソール側に設けられたエアバッグ装置1におけるファーサイドエアバッグ10とが示されている。
【0016】
<ファーサイドエアバッグ10の構成>
図2図5に示すように、本実施形態に係るファーサイドエアバッグ10は、例えば、1つの円柱状の基布材からなっている。
ファーサイドエアバッグ10は、上記1つの円柱状の基布材に対して、テザーによって、その外周部は環状となっており、内周部に展開状態で乗員CRR、CRLの肩部を保護する縦長筒状に展開する肩部背面気室11SBと肩部側面気室11SSと肩部前面気室11SFを含む肩部保護気室11と、展開時に半円状で、シート2に着座する乗員CRR、CRL側に倒れ込む形態で展開し、乗員CRR、CRLの頭部を保護する頭部保護気室12と、肩部背面気室11SBに隣接する非膨張部15とを含んで構成されている。
非膨張部15には、筒14に覆われ上下方向に排気口EPU、EPDを有するインフレータ13を収納する収納ケース16が設けられている。
また、ファーサイドエアバッグ10には、排気口EPU、EPDから排出される高圧ガスを肩部保護気室11および頭部保護気室12に送る、テザーによって形成された開口部APA、APB、APCを含むガス流路が形成されている。
なお、図2において、矢印を付けた一点鎖線の曲線は、排気口EPUからの高圧ガスの流れを示し、矢印を付けた二点鎖線の曲線は、排気口EPDからの高圧ガスの流れを示している。
また、ファーサイドエアバッグ10は、排気口EPU、EPDから排出される高圧ガスにより、頭部保護気室12、肩部背面気室11SB、肩部側面気室11SS、肩部前面気室11SFの順に、膨張展開する。
また、筒14は、上部から下部に延びるJ字状であり、その上端部および下端部は、排気口EPU、EPDとなっている。
また、筒14の内部には、筒14の内面とインフレータ3の外形とによって空洞部14A、14Bが形成されている。
そして、ファーサイドエアバッグ10は、展開後に筒14の空洞部14A、14Bにより、高圧ガスの圧力が均一化され、乗員CRR、CRLの肩部背面が肩部背面気室11SBに当接すると、肩部前面気室11SFが乗員CRR、CRLの肩部に巻き付くように展開形態を変化させる。
【0017】
<エアバッグ装置1の電気的構成>
図3を用いて、本実施形態に係るエアバッグ装置1の電気的構成について説明する。
図3に示すように、本実施形態に係るエアバッグ装置1は、検知部110と、展開制御部120と、インフレータ13と、を含んで構成されている。
【0018】
検知部110は、自車両への衝突方向を検知する。
検知部110は、例えば、センサであり、車両右側方向からの衝突を検知するセンサと、車両左側方向からの衝突を検知するセンサと、車両前方からの衝突を検知するセンサとを含んで構成されている。
検知部110は、上記各センサのセンサ情報を展開制御部に出力する。
検知部110としては、具体的に、自車両に加わる衝撃や振動を加速度として検出する加速度センサ等を例示することができる。
また、加速度センサとしては、半導体の電気抵抗の変化を利用したピエゾ抵抗型あるいは、くし歯電極の可動部と固定部との間のギャップ変化を静電容量として検出する静電容量型のいずれであってもよい。
また、衝突を検知する加速度センサとフロアの加速度を検知する別の加速度センサとを備え、双方の加速度センサからの加速度の値から衝突の判断、衝突の判定を行うようにしてもよい。
【0019】
展開制御部120は、ファーサイドエアバッグ10の展開を制御する。
具体的には、展開制御部120は、検知部110から得られるセンサ情報に基づいて、後述するインフレータ13の起動を制御する。
本実施形態においては、展開制御部120は、検知部110からのセンサ情報により、車両右側方向からの衝突を検知した旨のセンサ情報、車両左側方向からの衝突を検知した旨のセンサ情報、車両前方からの衝突を検知した旨のセンサ情報のいずれかを受信すると、後述するインフレータ13の起動制御を実行する。
【0020】
インフレータ13は、展開制御部120からの起動信号を受信すると、ファーサイドエアバッグ10に高圧ガスを供給して、ファーサイドエアバッグ10を膨張展開させる。
インフレータ13は、高圧ガスを筐体の長手方向両端から外部に排出する。
【0021】
<エアバッグ装置1の処理>
図4図5を用いて、本実施形態に係るエアバッグ装置1の処理について説明する。
【0022】
図4に示すように、展開制御部120は、検知部110からの検知信号(センサ信号)に基づいて、自車両MVへの衝突が発生したか否かについて判定する(ステップS100)。
そして、展開制御部120は、自車両MVへの衝突が発生していないと判定した場合(ステップS100の「NO」)には、待機モードに移行する。
【0023】
一方で、展開制御部120は、自車両MVへの衝突が発生したと判定した場合(ステップS200の「YES」)には、インフレータ13を起動させて、処理を終了する(ステップS300)。
【0024】
展開制御部120からの起動信号により、インフレータ13が起動すると、高圧ガスは、インフレータ13の筐体の長手方向両端から外部に排出される。
インフレータ13は、上部から下部に延びるJ字状の筒14内に収納され、筒14の上端部および下端部は、排気口EPU、EPDとなっており、排気口EPUは、上部の頭部保護気室12の方向を向くように開口され、排気口EPDは、先端部が肩部保護気室11の平面に沿うように湾曲した方向を向くように開口されている。
【0025】
インフレータ13が起動すると、高圧ガスは、図5に示すように、ファーサイドエアバッグ10の上方(図5の矢印(1))からファーサイドエアバッグ10の外周方向に流れこみ、肩部背面気室11SBを展開させ、次いで、ファーサイドエアバッグ10の外周内側前方(図5の矢印(2))に流れ込み、ファーサイドエアバッグ10の外周内側下方(図5の矢印(3))に向きを変え、肩部側面気室11SS、肩部前面気室11SFを展開させる。
【0026】
より詳細には、図2に示すように、インフレータ13の端部から排出された高圧ガス(図2の一点鎖線の矢印)は、筒14の上端部の排気口EPUから、ファーサイドエアバッグ10の上部外周方向に流れ込む。
【0027】
一方で、インフレータ13のもう一方の端部から排出された高圧ガス(図2の二点鎖線の矢印)は、筒14の上端部の排気口EPDから、肩部保護気室11の底部から肩部前面気室11SFへと流れ、上方に向きを変える。
【0028】
そして、インフレータ13の端部から排出された高圧ガス(図2の一点鎖線の矢印)とインフレータ13のもう一方の端部から排出された高圧ガス(図2の二点鎖線の矢印)とは、頭部保護気室12と肩部保護気室11との間に設けられた開口部APAで合流し、開口部APBを介して、肩部背面気室11SBに流れ込んで、肩部背面気室11SBを展開させる。
【0029】
次いで、合流した高圧ガスは、開口部APCを介して、肩部側面気室11SSに流れ込んで、肩部側面気室11SSを展開させる。
その後、頭部保護気室12と肩部前面気室11SFとが展開して、ファーサイドエアバッグ10全体の展開が完了する。
【0030】
さらに、車両への衝突が発生し、乗員CRR、CRLの肩部が、図5に示すように、肩部背面気室11SBに押し付けられると、インフレータ13の収納ケース側面17が支点となって、肩部保護気室11が前方に回転して、乗員の肩全体に巻き付くように変形する。
【0031】
<作用・効果>
以上、説明したように、本実施形態に係るエアバッグ装置1は、車両前席のシートバックレスト21のセンターコンソール側に設けられ、1つの円柱状の基布材からなり、外周部は環状となっており、内周部に展開状態で乗員の肩部を保護する縦長筒状に展開する肩部背面気室11SBと肩部側面気室11SSと肩部前面気室11SFと、を含む肩部保護気室11と、展開時に半円状で、シート2に着座する乗員CRR、CRL側に倒れ込む形態で展開し、乗員CRR、CRLの頭部を保護する頭部保護気室12と、肩部背面気室11SBに隣接する非膨張部15と、を有するファーサイドエアバッグ10と、ファーサイドエアバッグ10の展開を制御する展開制御部120と、を備え、非膨張部15には、筒14に覆われたインフレータ13が収納され、筒14の排気口EPU、EPDから排出される高圧ガスを肩部保護気室11および頭部保護気室12に送るガス流路が形成されている。
つまり、ファーサイドエアバッグ10は、1つの円柱状の基布材からテザーの縫い込みにより、展開時に縦長筒状となる肩部背面気室11SBと肩部側面気室11SSと肩部前面気室11SFを含む肩部保護気室11と、展開時に半円状となり、シート2に着座する乗員CRR、CRL側に倒れ込む形態で展開し、乗員CRR、CRLの頭部を保護する頭部保護気室12と、肩部背面気室11SBに隣接する非膨張部15と、を有している。
そのため、インフレータ13から排出され、ファーサイドエアバッグ10の内部に滞留する高圧ガスの密封度を高く維持することができる。
また、ファーサイドエアバッグ10は、展開時に縦長筒状となる肩部背面気室11SBと肩部側面気室11SSと肩部前面気室11SFを含む肩部保護気室11と、展開時に半円状となり、シート2に着座する乗員CRR、CRL側に倒れ込む形態で展開し、乗員CRR、CRLの頭部を保護する頭部保護気室12と、を有している。
そのため、車両右側方向からの衝突、車両左側方向からの衝突、車両前面からの衝突に対して、乗員CRR、CRLの肩部および頭部を衝突の衝撃から適切に保護することができる。
また、ファーサイドエアバッグ10の非膨張部15には、筒14に覆われたインフレータ13が収納され、筒14の排気口EPU、EPDから排出される高圧ガスを肩部保護気室11および頭部保護気室12に送るガス流路が形成されている。
つまり、非膨張部15は、シートバックレスト21の内部に固定されて配設されており、インフレータ13の両端から排出される高圧ガスは、排気口EPU、EPDを介して、ファーサイドエアバッグ10の内部に送り込まれ、予め形成されているガス流路に沿って、肩部保護気室11および頭部保護気室12に流れ込む。
そのため、予め形成されているガス流路の形態により、車両右側方向からの衝突、車両左側方向からの衝突、車両前面からの衝突に対して、肩部保護気室11を形成する肩部背面気室11SB、肩部側面気室11SS、肩部前面気室11SF、頭部保護気室12を適切なタイミングで、速やかに展開することができる。
【0032】
また、本実施形態に係るエアバッグ装置1は、筒14の排気口EPU、EPDから排出される高圧ガスにより、外周部内側、肩部背面気室11SB、肩部側面気室11SSの順に、膨張展開し、その後、肩部前面気室11SF、頭部保護気室12が膨張展開する。
つまり、車両への側面衝突が発生した場合には、乗員CRR、CRLの肩部は、まず、肩部背面気室11SB側に押し出された後、肩部側面気室11SS側に押し出され、さらに、乗員CRR、CRLの頭部が頭部保護気室12側に傾く。
また、車両への前面衝突が発生した場合には、乗員CRR、CRLの肩部は、まず、肩部背面気室11SB側に押し出された後、肩部前面気室11SF側に押し出される。
そのため、本実施形態に係るエアバッグ装置1の展開順序であれば、車両への側面衝突および前面衝突のいずれが発生した場合であっても、乗員の挙動を適切に制御することができる。
【0033】
また、本実施形態に係るエアバッグ装置1は、筒14の形状がJ字状である。
具体的には、筒14は、上部から下部に延びるJ字状であり、その上端部および下端部は、排気口EPU、EPDとなっている。
つまり、インフレータ13の両端から排出される高圧ガスは、筒14の形状に沿って、排気口EPU、EPDを介して、ファーサイドエアバッグ10の内部に送り込まれる。
そのため、筒14の形状および予め形成されているガス流路の形態により、車両右側方向からの衝突、車両左側方向からの衝突、車両前面からの衝突に対して、肩部保護気室11を形成する肩部背面気室11SB、肩部側面気室11SS、肩部前面気室11SF、頭部保護気室12を適切なタイミングで、速やかに展開することができる。
【0034】
また、本実施形態に係るエアバッグ装置1のファーサイドエアバッグ10には、筒14の内面とインフレータ13の外形とによって形成された空洞部14A、14Bが設けられ、展開後に、乗員の肩部背面が肩部背面気室11SBに当接すると、肩部保護気室11が乗員CRR、CRLの肩部に巻き付くように展開形態を変化させる。
つまり、ファーサイドエアバッグ10は、展開後に、乗員の肩部背面が肩部背面気室11SBに当接すると、筒14の内面とインフレータ13の外形とによって形成された空洞部14A、14Bによって、高圧ガスが均一になっているため、肩部背面気室11SBへの押圧力によって、肩部保護気室11が前方に回転して、乗員の肩全体に巻き付くように変形する。
【0035】
なお、展開制御部120の処理をコンピュータシステムが読み取り可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムを展開制御部120に読み込ませ、実行することによって本発明のエアバッグ装置1を実現することができる。ここでいうコンピュータシステムとは、OSや周辺装置等のハードウェアを含む。
【0036】
また、「コンピュータシステム」は、WWW(World Wide Web)システムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
【0037】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組合せで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0038】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0039】
1;エアバッグ装置
2;シート
10;ファーサイドエアバッグ
11;肩部保護気室
11SF;肩部前面気室
11SS;肩部側面気室
11SB;肩部背面気室
12;頭部保護気室
13;インフレータ
14;筒
14A;空洞部
14B;空洞部
15;非膨張部
16;収納ケース
17;収納ケース側面
21;シートバックレスト
22;ヘッドレスト
110;検知部
120;展開制御部
APA;開口部
APB;開口部
APC;開口部
CRR;乗員
CRL;乗員
EPU;排気口
EPD;排気口
MV;自車両
図1
図2
図3
図4
図5