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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061018
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】焼成用ユニット積層体および焼成方法
(51)【国際特許分類】
   F27D 3/12 20060101AFI20240425BHJP
   C04B 35/64 20060101ALI20240425BHJP
   C04B 35/569 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
F27D3/12 S
C04B35/64
C04B35/569
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168660
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000219750
【氏名又は名称】東海高熱工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 和久
(72)【発明者】
【氏名】菅原 直人
【テーマコード(参考)】
4K055
【Fターム(参考)】
4K055AA05
4K055HA02
4K055HA12
4K055HA14
4K055HA16
4K055HA18
4K055HA20
4K055HA27
(57)【要約】      (修正有)
【課題】被焼成物を均質かつ効率的に焼成可能な焼成用ユニット積層体を提供する。
【解決手段】焼成用ユニットが複数積み重ねられてなる焼成用ユニット積層体であって、前記複数の焼成用ユニットは、各々、焼成用ラックrおよび当該焼成用ラック上に配置されたメッシュ状のセッターsを有し、前記焼成用ラックは、枠体fと、当該枠体内に設けられた架橋部とを有するものであって、隣り合う焼成用ユニットを構成する焼成用ラックのみを下部側から垂直上方向に観察したときに、架橋部面積重複割合が、0~80%となるように、各焼成用ユニットが積み重ねられてなることを特徴とする焼成用ユニット積層体である。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼成用ユニットが複数積み重ねられてなる焼成用ユニット積層体であって、
前記複数の焼成用ユニットは、各々、焼成用ラックおよび当該焼成用ラック上に配置されたメッシュ状のセッターを有し、
前記焼成用ラックは、枠体と、当該枠体内に設けられた架橋部とを有するものであって、
隣り合う焼成用ユニットを構成する焼成用ラックのみを下部側から垂直上方向に観察したときに、下記式(I)
架橋部面積重複割合(%)=(下側に位置する焼成用ラックの架橋部と上側に位置する焼成用ラックの架橋部および枠体とが重なり合う面積/下側に位置する焼成用ラックの架橋部の面積)×100 (I)
により算出される架橋部面積重複割合が、0~80%となるように、各焼成用ユニットが積み重ねられてなる
ことを特徴とする焼成用ユニット積層体。
【請求項2】
前記隣り合う焼成用ユニットの少なくとも一部において、前記焼成用ユニットを構成する焼成用ラックが、各々外形が矩形状の同一形状を有し、
前記焼成用ラックの枠体および架橋部により規定される開口部が、前記焼成用ラックの上面の中心を通る垂直軸を回転軸として時計回りに90°または180°回転させたときに回転対称とならない形状を有するものであり、
前記隣り合う焼成用ユニットにおいて、下部側に配置した焼成用ユニットを構成する焼成用ラックが、上部側に配置した焼成用ユニットを構成する焼成用ラックの上面の中心を通る垂直軸を回転軸として時計回りに90°または180°回転させた状態で配置されてなるものであることにより、
隣り合う焼成用ユニットを構成する焼成用ラックのみを下部側から垂直上方向に観察したときに、各焼成用ラックの架橋部が完全に重ならないように配設されている
請求項1に記載の焼成用ユニット積層体。
【請求項3】
前記隣り合う焼成用ユニットの少なくとも一部において、前記焼成用ユニットを構成する焼成用ラックが、各々外形が矩形状の同一形状を有し、
前記焼成用ラックの枠体および架橋部により規定される開口部が、裏返して表面および裏面を逆に配置したときに、異なるパターン形状を有するものであり、
前記隣り合う焼成用ユニットにおいて、下部側に配置した焼成用ユニットを構成する焼成用ラックが、上部側に配置した焼成用ユニットを構成する焼成用ラックを裏返した状態で配置されてなるものであることにより、
隣り合う焼成用ユニットを構成する焼成用ラックのみを下部側から垂直上方向に観察したときに、各焼成用ラックの架橋部が完全に重ならないように配設されている
請求項1に記載の焼成用ユニット積層体。
【請求項4】
前記焼成用ユニットを構成する焼成用ラックは、各々、下記式(II)
架橋部面積割合(%)=(焼成用ラックを構成する架橋部の面積/焼成用ラックを構成する枠体の内側の面積)×100 (II)
により算出される架橋部面積割合が、1~40%である
請求項1に記載の焼成用ユニット積層体。
【請求項5】
前記焼成用ユニットを構成する焼成用ラックは、各々、下記式(III)
架橋部幅割合(%)=(架橋部の平均幅/焼成用ラックの長手方向長さ)×100 (III)
により算出される架橋部幅割合が、1~10%である
請求項1に記載の焼成用ユニット積層体。
【請求項6】
前記焼成用ユニットを構成する焼成用ラックは、各々、前記架橋部の厚みが2mm~4mmであり、架橋部の幅が2mm~8mmである請求項1に記載の焼成用ユニット積層体。
【請求項7】
前記焼成用ユニットを構成する焼成用ラックは、各々、その構成材料が、
(i)SiC純度が99質量%以上の常圧焼結SiCからなること、
(ii)嵩比重が3.10以上、
(iii)開気孔率が1%以下、
(iv)JIS R 1601による三点曲げ強度が450MPa以上、および
(v)JIS R 1648:R2002による耐熱衝撃強度が400℃以上
から選ばれる一以上の条件を満たすものである請求項1に記載の焼成用ユニット積層体。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれかに記載の焼成用ユニット積層体を用い、焼成炉内で被焼成物を焼成処理することを特徴とする焼成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼成用ユニット積層体および焼成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体チップや積層セラミックコンデンサ(MLCC)等の被焼成物を焼成するために、焼成用ラック上に平板状のセッターを配置した状態で、当該セッター上に被焼成物を載置し、焼成する技術が知られている。
【0003】
また、上記被焼成物の焼成効率を高めるために、上記焼成用ラック及び平板状のセッターからなる焼成用ユニットを複数積み重ねた状態で焼成処理することにより、各焼成用ユニットのセッター上に配置した被焼成物を一度に焼成する技術が提案されるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1においては、図16に記載しているように、開口部を設けた板状の焼成用治具(焼成用ラック)1を採用し、かかる焼成用ラック1上に平板状のセッター20を配置した焼成用ユニットUが提案されており、図17に記載しているように、(各セッター上に被焼成物Aを配置した状態で)複数の焼成用ユニットUを積み重ね、焼成用ユニット積層体とした上で、窯炉(焼成炉)内で焼成処理する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開2015/008503号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図16および図17に記載しているように、特許文献1においては、焼成用ラック1として枠体11の下面に支持部(脚部)13を設けたものが提案され、この支持部13により、各焼成用ユニットU、U間に炉内ガスを流入させて、各セッター20上に配置した被焼成物A同士を離間させつつ、これ等を一度に焼成することができるとされている。
【0007】
しかしながら、本発明者等が検討したところ、特許文献1記載の方法では、被焼成物を均質に焼成処理し難いことが判明した。
【0008】
これは、上記焼成炉においては、焼成時に炉内ガスが炉の下部側から上部側に上昇する気流を生じるが、複数の焼成用ユニットUを積み重ねた状態で焼成処理した場合、焼成用ユニットUを構成する平板状のセッター20が上記炉内ガスの流通を妨げるため、各焼成用ユニットUにおいて均質な焼成処理を行い難くなるためと考えられた。
【0009】
そこで、本発明者は、上記焼成用ユニットを構成するセッターとして平板状のものに代えてメッシュ状のものを採用することにより、各焼成用ユニットの下部側から上部側への炉内ガスの流通性を向上させることを着想した。
【0010】
しかしながら、本発明者等がさらに検討したところ、上記のとおり開口部を設けた板状の焼成用治具(焼成用ラック)とともに、メッシュ状のセッターを有する焼成用ユニットを採用した場合においても、必ずしも均質な焼成処理物を効率的に得られないことが判明した。
【0011】
本発明者等の検討によれば、これは、図18(a)に示すように、焼成用ユニットを構成する焼成用ラックrとして、通常、同一の開口パターンを有する同一形状を有するものを同一の向きに複数配設して使用するために、各焼成用ユニットを積み重ねた状態で焼成処理した場合に、焼成用ラックrのみを観察すると、図18(b)に斜視図で示すとともに、図18(c)に側部の断面図(図18(b)におけるZ-Z’線で垂直方向に切断したときにおける側部の断面図)で示すように、焼成炉内で炉内ガス流Fが炉の下部側から上部側に上昇する際に、各焼成用ラックrの開口パターンを規定する架橋部が設けられた箇所には、いずれも(図中矢印で示す)炉内ガス流Fが接触することなく炉内ガスが上昇するため、特に上部側に積み重ねた焼成用ユニットにおいて通気性が低下して、炉内ガス流Fと被焼成物との接触効率が低下するためと考えられた。
【0012】
このような状況下、本発明は、被焼成物を均質かつ効率的に焼成可能な焼成用ユニット積層体および焼成方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記技術課題を解決するために本願発明者等が鋭意検討したところ、焼成用ユニットが複数積み重ねられてなる焼成用ユニット積層体であって、前記複数の焼成用ユニットは、各々、焼成用ラックおよび当該焼成用ラック上に配置されたメッシュ状のセッターを有し、前記焼成用ラックは、枠体と、当該枠体内に設けられた架橋部とを有するものであって、前記複数積み重ねられた焼成用ユニットにおいて、隣り合う焼成用ユニットを構成する焼成用ラックのみを下部側から垂直上方向に観察したときに、(下側に位置する焼成用ラックの架橋部と上側に位置する焼成用ラックの架橋部および枠体とが重なり合う面積/下側に位置する焼成用ラックの架橋部の面積)×100により算出される架橋部面積重複割合が、0~80%となるように、各焼成用ユニットが積み重ねられてなる焼成用ユニット積層体により、上記目的を達成し得ることを見出し、本知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、
(1)焼成用ユニットが複数積み重ねられてなる焼成用ユニット積層体であって、
前記複数の焼成用ユニットは、各々、焼成用ラックおよび当該焼成用ラック上に配置されたメッシュ状のセッターを有し、
前記焼成用ラックは、枠体と、当該枠体内に設けられた架橋部とを有するものであって、
隣り合う焼成用ユニットを構成する焼成用ラックのみを下部側から垂直上方向に観察したときに、下記式(I)
架橋部面積重複割合(%)=(下側に位置する焼成用ラックの架橋部と上側に位置する焼成用ラックの架橋部および枠体とが重なり合う面積/下側に位置する焼成用ラックの架橋部の面積)×100 (I)
により算出される架橋部面積重複割合が、0~80%となるように、各焼成用ユニットが積み重ねられてなる
ことを特徴とする焼成用ユニット積層体、
(2)前記隣り合う焼成用ユニットの少なくとも一部において、前記焼成用ユニットを構成する焼成用ラックが、各々外形が矩形状の同一形状を有し、
前記焼成用ラックの枠体および架橋部により規定される開口部が、前記焼成用ラックの上面の中心を通る垂直軸を回転軸として時計回りに90°または180°回転させたときに回転対称とならない形状を有するものであり、
前記隣り合う焼成用ユニットにおいて、下部側に配置した焼成用ユニットを構成する焼成用ラックが、上部側に配置した焼成用ユニットを構成する焼成用ラックの上面の中心を通る垂直軸を回転軸として時計回りに90°または180°回転させた状態で配置されてなるものであることにより、
隣り合う焼成用ユニットを構成する焼成用ラックのみを下部側から垂直上方向に観察したときに、各焼成用ラックの架橋部が完全に重ならないように配設されている
上記(1)に記載の焼成用ユニット積層体、
(3)前記隣り合う焼成用ユニットの少なくとも一部において、前記焼成用ユニットを構成する焼成用ラックが、各々外形が矩形状の同一形状を有し、
前記焼成用ラックの枠体および架橋部により規定される開口部が、裏返して表面および裏面を逆に配置したときに、異なるパターン形状を有するものであり、
前記隣り合う焼成用ユニットにおいて、下部側に配置した焼成用ユニットを構成する焼成用ラックが、上部側に配置した焼成用ユニットを構成する焼成用ラックを裏返した状態で配置されてなるものであることにより、
隣り合う焼成用ユニットを構成する焼成用ラックのみを下部側から垂直上方向に観察したときに、各焼成用ラックの架橋部が完全に重ならないように配設されている
上記(1)に記載の焼成用ユニット積層体、
(4)前記焼成用ユニットを構成する焼成用ラックは、各々、下記式(II)
架橋部面積割合(%)=(焼成用ラックを構成する架橋部の面積/焼成用ラックを構成する枠体の内側の面積)×100 (II)
により算出される架橋部面積割合が、1~40%である
上記(1)~(3)のいずれかに記載の焼成用ユニット積層体、
(5)前記焼成用ユニットを構成する焼成用ラックは、各々、下記式(III)
架橋部幅割合(%)=(架橋部の平均幅/焼成用ラックの長手方向長さ)×100 (III)
により算出される架橋部幅割合が、1~10%である
上記(1)~(4)のいずれかに記載の焼成用ユニット積層体、
(6)前記焼成用ユニットを構成する焼成用ラックは、各々、前記架橋部の厚みが2mm~4mmであり、架橋部の幅が2mm~8mmである上記(1)~(5)のいずれかに記載の焼成用ユニット積層体、
(7)前記焼成用ユニットを構成する焼成用ラックは、各々、その構成材料が、
(i)SiC純度が99質量%以上の常圧焼結SiCからなること、
(ii)嵩比重が3.10以上、
(iii)開気孔率が1%以下、
(iv)JIS R 1601による三点曲げ強度が450MPa以上、および
(v)JIS R 1648:R2002による耐熱衝撃強度が400℃以上
から選ばれる一以上の条件を満たすものである上記(1)~(6)のいずれかに記載の焼成用ユニット積層体、
(8)上記(1)~(7)のいずれかに記載の焼成用ユニット積層体を用い、焼成炉内で被焼成物を焼成処理することを特徴とする焼成方法
を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数積み重ねられた焼成用ユニットにおいて、隣り合う焼成用ユニットを構成する焼成用ラックを下部側から垂直上方向に観察したときに、焼成用ラックに設けられた架橋部の重なりの程度の指標となる架橋部面積重複割合が低減されてなるものであることにより、焼成時に生成する炉の下部側から上部側に上昇する炉内ガスの流通を促進することができ、このために、被焼成物を均質かつ効率的に焼成可能な焼成用ユニット積層体を提供し得るとともに、係る焼成用ユニット積層体を用いた焼成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る焼成用ユニット積層体を構成する焼成用ユニットの形態例を示す図である。
図2】本発明で使用し得る焼成用ラックの形態例を模式的に示す図(上面図)である。
図3】本発明で使用し得る焼成用ラックの形態例を模式的に示す図(上面図)である。
図4】本発明で使用し得る焼成用ラックの形態例を模式的に示す図である。
図5】本発明で使用し得る焼成用ラックの形態例を模式的に示す図である。
図6】焼成用ラックの架橋部面積割合(%)の算出方法を説明するための図である。
図7】焼成用ラックの架橋部の形態例について説明するための図である。
図8】焼成用ラックの支持部の形態例について説明するための図である。
図9】本発明で使用し得るメッシュ状のセッターの形態例について説明するための図である。
図10】本発明に係る焼成用ユニット積層体の形態例を示す図である。
図11】隣り合う焼成用ユニットを構成する焼成用ラックのみを下部側から垂直上方向に観察したときにおける、架橋部面積重複割合の算出方法を説明するための図である。
図12】本発明に係る焼成用ユニット積層体を用いた焼成機構について説明するための図である。
図13-1】本発明の実施例で使用した焼成用ラックの形態および隣り合う焼成用ユニットを構成する焼成用ラックのみを下部側から垂直上方向に観察したときの形態を模式的に示す図である。
図13-2】本発明の実施例で作製した焼成用ユニット積層体において、各焼成用ユニットを構成する焼成用ラックrのみを斜め上から観察したときの斜視図である。
図14-1】本発明の実施例で使用した焼成用ラックの形態および隣り合う焼成用ユニットを構成する焼成用ラックのみを下部側から垂直上方向に観察したときの形態を模式的に示す図である。
図14-2】本発明の実施例で作製した焼成用ユニット積層体において、各焼成用ユニットを構成する焼成用ラックrのみを斜め上から観察したときの斜視図である。
図15】本発明の比較例で使用した焼成用ラックの形態および隣り合う焼成用ユニットを構成する焼成用ラックのみを観察したときの形態を模式的に示す図である。
図16】従来の焼成用ユニット積層体を構成する焼成用ユニットの形態例を示す図である。
図17】従来の焼成用ユニット積層体の形態例を示す図である。
図18】従来の焼成用ユニット積層体を用いた焼成機構について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
先ず、本発明に係る焼成用ユニット積層体について説明する。
本発明に係る焼成用ユニット積層体は、焼成用ユニットが複数積み重ねられてなるものであって、
前記複数の焼成用ユニットは、各々、焼成用ラックおよび当該焼成用ラック上に配置されたメッシュ状のセッターを有し、
前記焼成用ラックは、枠体と、当該枠体内に設けられた架橋部とを有するものであって、
隣り合う焼成用ユニットを構成する焼成用ラックのみを下部側から垂直上方向に観察したときに、下記式(I)
架橋部面積重複割合(%)=(下側に位置する焼成用ラックの架橋部と上側に位置する焼成用ラックの架橋部および枠体とが重なり合う面積/下側に位置する焼成用ラックの架橋部の面積)×100 (I)
により算出される架橋部面積重複割合が、0~80%となるように、各焼成用ユニットが積み重ねられてなる
ことを特徴とするものである。
【0018】
図1は、本発明に係る焼成用ユニット積層体を構成する焼成ユニットの例を模式的に示す図である。
図1に示すように、本発明に係る焼成用ユニット積層体を構成する焼成用ユニットUは、焼成用ラックrおよび当該焼成用ラックr上に配置されたメッシュ状のセッターsを有している。
【0019】
図2は、図1に例示する焼成用ラックrの上面図である。
図2に例示するように、本発明に係る焼成用ユニット積層体において、焼成用ラックrは、枠体fと、当該枠体f内部に設けられた架橋部bとを有するものである。
【0020】
図2に例示するように、本発明に係る焼成用ユニット積層体において、枠体fは、焼成用ラックrの外周形状を規定するものであり、架橋部bは、枠体fを構成する枠材間を繋ぐように枠体内に設けられ、枠体内に所定の開口パターンを規定するものである。
【0021】
図2に例示する焼成用ラックrにおいて、枠体fの外形の形状は概略四角形状であり、枠体fの外形の形状は、四角形状、特に概略正方形状または概略長方形状等の矩形状であることが好ましいが、楕円形状や円形状等であってもよく、その形状は特に制限されない。
【0022】
図3(a)~図3(e)は、本発明に係る焼成用ユニット積層体において使用し得る、焼成用ラックrのその他の例を、各々上面図により示すものである。
図3(a)~図3(e)に例示する各焼成用ラックrも、概略四角形状の枠体fと、当該枠体f内部に設けられた架橋部bとを有し、この架橋部bにより、枠体f内に所定の開口パターンが規定される。
【0023】
図2図3(a)~図3(e)に例示するように、本発明に係る焼成用ユニット積層体において使用される焼成用ラックrは、枠体f内に開口部を有するものであることにより、被焼成物の焼成時に炉内ガスが上記開口部を容易に流通することができることから、被焼成物を効果的に焼成処理することができる。
【0024】
図2図3(a)~図3(e)に例示するように、本発明に係る焼成用ユニット積層体において採用される焼成用ラックは、架橋部が三叉状に交差して略T字状の交差部を成すものが好ましい。
本発明に係る焼成用ユニット積層体において、焼成用ラックとして、架橋部が三叉状に交差して交差部を成すものを採用することにより、被焼成物を焼成処理したときに、炉内ガスが上記交差部で拡散し易くなり、このために被焼成物を均一に焼成処理し易くなる。
【0025】
本発明に係る焼成用ユニット積層体において、各焼成用ユニットを構成する焼成用ラックは、枠体および架橋部により規定される形状が、各々、異なるものであってもよいし、同一のものであってもよい。
【0026】
本発明に係る焼成用ユニット積層体を構成する隣り合う焼成用ユニットの少なくとも一部において、各焼成用ユニットを構成する焼成用ラックが同一の外形形状を有するものである場合、焼成用ラックとしては、外形が矩形状(すなわち、長方形状または正方形状)の同一形状を有し、上記焼成用ラックの上面の中心を通る垂直軸を回転軸として時計回りに90°または180°回転させたときに回転対称とならない形状を有するものが好ましい。
【0027】
図4(a)は、図2に対応する図であって、図1に例示する矩形状の焼成用ラックrの上面図を示すものである。
一方、図4(b)は、図4(a)に示す、焼成用ラックrの上面の中心cを通る垂直軸を回転軸として時計回りに90°回転したときの焼成用ラックrの上面図を示すものである。
図4(a)に示す焼成用ラックおよび図4(b)に示す焼成用ラックrは同一のものであるが、このように焼成用ラックrの上面の中心cを通る垂直軸を回転軸として時計回りに90°回転させたときに焼成用ラックの枠体fおよび架橋部bにより規定される開口部形状が回転前後で一致せず、このために図4に示す焼成用ラックは、図4(a)に示す状態と図4(b)に示す状態とで回転対称の関係にない。
【0028】
図5(a)は、本発明に係る焼成用ユニット積層体で採用し得る焼成用ラックの他の例として、矩形状の焼成用ラックrの上面図を示すものである。
また、図5(b)は、図5(a)に示す、焼成用ラックrの上面の中心cを通る垂直軸を回転軸として時計回りに90°回転したときの焼成用ラックrの上面図を示すものである。
図5(a)に示す焼成用ラックおよび図5(b)に示す焼成用ラックrは同のものであるが、このように焼成用ラックrの上面の中心cを通る垂直軸を回転軸として時計回りに90°回転させたときに焼成用ラックの枠体fおよび架橋部bにより規定される開口部形状が回転前後で一致せず、このために図5に示す焼成用ラックは、図5(a)に示す状態と図5(b)に示す状態とで回転対称の関係にない。
同様に、図5(c)は、図5(a)に示す、焼成用ラックrの上面の中心cを通る垂直軸を回転軸として180°時計回りに回転したときの焼成用ラックrの上面図を示すものである。
図5(a)に示す焼成用ラックおよび図5(c)に示す焼成用ラックrは同一のものであるが、このように焼成用ラックrの上面の中心cを通る垂直軸を回転軸として時計回りに180°回転させたときに焼成用ラックの枠体fおよび架橋部bにより規定される開口部形状が回転前後で一致せず、このために図5に示す焼成用ラックは、図5(a)に示す状態と図5(c)に示す状態とで回転対称の関係にない。
【0029】
このように、焼成用ラックとして、外形が矩形状のものであって、焼成用ラックの上面の中心を通る垂直軸を回転軸として時計回りに90°または180°回転させたときに回転対称性を示さないものを採用し、上記回転前および回転後の状態で、隣り合う焼成用ユニットの焼成用ラックとして各々配設することにより、同一形状を有する焼成用ラックを使用しているにも拘わらず、後述するように、隣り合う焼成用ユニットを構成する焼成用ラックのみを下部側から垂直上方向に観察したときに、各焼成用ラックの架橋部が完全に重なり合わないように設置することが可能となる。
【0030】
一方、例えば、図18(a)に示す従来の焼成用ラックrは、外形が矩形状を有するものであるが、焼成用ラックの枠体および架橋部により規定される開口部が、焼成用ラックrの上面の中心cを通る垂直軸を回転軸として、時計回りに90°回転させた場合においても、時計回りに180°回転させた場合においても、回転前の形状と同一の形状となる、回転対称性を示す。
このため、焼成用ユニット積層体を構成する各焼成用ラックとして、図18(a)に示す従来の焼成用ラックrを採用した場合、上記回転前および回転後の状態で、隣り合う焼成用ユニットの焼成用ラックとして各々配設したとしても、隣り合う焼成用ユニットを構成する焼成用ラックのみを下部側から垂直上方向に観察したときに、各焼成用ラックの架橋部が完全に重なり合うために、本発明に係る焼成用ユニット積層体を形成し得ない。
【0031】
本発明に係る焼成用ユニット積層体を構成する隣り合う焼成用ユニットの少なくとも一部において、各焼成用ユニットを構成する焼成用ラックが同一形状を有するものである場合、焼成用ラックとしては、外形が矩形状の同一形状を有し、前記焼成用ラックの枠体および架橋部により規定される開口部が、裏返して表面および裏面を逆に配置したときに、異なるパターン形状(異なる開口部形状)を有するものであることが好ましい。
【0032】
図4(c)は、図4(a)に示す矩形状の焼成用ラックrを裏返して表面および裏面を逆に配置したときの焼成用ラックrの上面図を示すものである。
図4(a)に示す焼成用ラックおよび図4(c)に示す焼成用ラックrは同一のものであるが、このように焼成用ラックrを裏返す前の状態(図4(a))および裏返した後の状態(図4(c))で、隣り合う焼成用ユニットの焼成用ラックとして各々配設することにより、後述するように、隣り合う焼成用ユニットを構成する焼成用ラックのみを下部側から垂直上方向に観察したときに、各焼成用ラックの架橋部b同士が完全に重なり合わないように設置することが可能となる。
【0033】
一方、例えば、図18(a)に示す従来の焼成用ラックrは、裏返して表面および裏面を逆に配置しても、裏返す前後において、焼成用ラックの枠体および架橋部により規定される開口部が同一のパターン形状(同一の開口部形状)となる。
このため、焼成用ユニット積層体を構成する各焼成用ラックとして、図18(a)に示す従来の焼成用ラックrを採用した場合、裏返す前および裏返した後の状態で、隣り合う焼成用ユニットの焼成用ラックとして各々配設したとしても、隣り合う焼成用ユニットを構成する焼成用ラックのみを下部側から垂直上方向に観察したときに、各焼成用ラックの架橋部同士が完全に重なり合うために、本発明に係る焼成用ユニット積層体を形成し得ない。
【0034】
本発明に係る焼成用ユニット積層体において、各焼成用ユニットを構成する焼成用ラックは、各々、下記式(II)
架橋部面積割合(%)=(焼成用ラックを構成する架橋部の面積/焼成用ラックを構成する枠体の内側の面積)×100 (II)
により算出される架橋部面積割合が、1~40%であるものが好ましく、1~30%であるものがより好ましく、1~20%であるものがさらに好ましい。
【0035】
図6は、図2に対応する焼成用ラックrの上面図を示すものであって、図6(a)に斜線で示す部分の面積が、架橋部bの面積Sであり、図6(b)に斜線で示す部分の面積が焼成用ラックrを構成する枠体fの内側の面積Sに相当する。
このため、図6に示す焼成用ラックrにおいて、架橋部面積割合(%)は、(S/S)×100により算出される。
【0036】
本出願書類において、架橋部面積割合を算出する際に使用する、焼成用ラックを構成する枠体の内側の面積は、焼成用ラックが架橋部を有さないと仮定して枠体に外装線を引いたときに規定される開口部の外形の内側の面積を意味する。
図6に示す例において、焼成用ラックrを構成する枠体fの内側の面積は、図6(a)に示す焼成用ラックrが架橋部bを有さないと仮定して枠体fに(図中太線で示す)外装線Lを引いたときに規定される、図6(b)に示す開口部の外形の内側の面積Sに相当する。
【0037】
また、本出願書類において、架橋部面積割合を算出する際に使用する、焼成用ラックを構成する架橋部の面積は、枠体内に上記外装線を引いたときに、枠体内に規定される架橋部の面積を意味する。
図6に示す例において、焼成用ラックrを構成する架橋部bの面積は、図6(a)に示す焼成用ラックrに(図中太線で示す)外挿線Lを引いたときに、枠体f内に規定される架橋部bの面積Sに相当する。
【0038】
本発明に係る焼成用ユニット積層体において、各焼成用ユニットを構成する焼成用ラックにおける架橋部面積割合が上記範囲内にあることにより、焼成時における炉内ガスの流通を妨げることなく、被焼成物を均質かつ効率的に容易に焼成することができる。
【0039】
本発明に係る焼成用ユニット積層体において、各焼成用ユニットを構成する焼成用ラックは、各々、下記式(III)
架橋部幅割合(%)=(架橋部の平均幅/焼成用ラックの長手方向長さ)×100 (III)
により算出される架橋部幅割合が、1~10%であるものが好ましく、2~8%であるものがより好ましく、2~6%であるものがさらに好ましい。
【0040】
図7(a)は、図2に対応する焼成用ラックrの上面図を示すものであり、図7(a)において、架橋部の幅Wは架橋部の長さ方向に均一とみなし得ることから、これを架橋部の平均幅とすることができ、また、図7(a)において、焼成用ラックの縦方向および横方向の長さは同一であることから、横方向の長さを焼成用ラックの長手方向長さWallとすることができる。
このため、図7(a)に示す焼成用ラックrにおいて、架橋部幅割合(%)は、(W/Wall)×100により算出される。
【0041】
本発明に係る焼成用ユニット積層体において、各焼成用ユニットを構成する焼成用ラックにおける架橋部幅割合が上記範囲内にあることによっても、焼成時における炉内ガスの流通を妨げることなく、被焼成物を均質かつ効率的に容易に焼成することができる。
【0042】
本発明に係る焼成用ユニット積層体において、各焼成用ユニットを構成する焼成用ラックは、架橋部の幅が、2mm~8mmであることが好ましく、2mm~6mmであることがより好ましく、2mm~4mmであることがさらに好ましい。
図7(a)に示す例においては、幅Wが架橋部bの幅に相当する。
【0043】
本発明に係る焼成用ユニット積層体において、各焼成用ユニットを構成する焼成用ラックにおける架橋部の幅が上記範囲内にあることによっても、焼成時における炉内ガスの流通を妨げることなく、被焼成物を均質かつ効率的に容易に焼成することができる。
【0044】
本発明に係る焼成用ユニット積層体において、各焼成用ユニットを構成する焼成用ラックは、架橋部の厚みが、2mm~8mmであることが好ましく、2mm~6mmであることがより好ましく、2mm~4mmであることがさらに好ましい。
【0045】
本発明に係る焼成用ユニット積層体において、各焼成用ユニットを構成する焼成用ラックは、架橋部の厚みが上記範囲内にあることにより、焼成時および焼成後においても十分な取扱い強度を有するとともに、焼成時の熱効率を効果的に向上させることができる。
【0046】
図7(b)は、図7(a)に示す焼成用ラックrをY-Y’線で切断したときの切断面を示す図であり、図中幅Tが架橋部bの厚さに相当する。
【0047】
本発明に係る焼成用ユニット積層体において、各焼成用ユニットを構成する焼成用ラックは、架橋部の長手方向に垂直な断面の断面形状が概略小判形状であることが好ましい。
【0048】
図7(c)は、図7(a)に示す焼成用ラックrにおいて、架橋部bをX-X’線で切断したときの切断面を拡大した図である。
図7(c)に示す焼成用ラックrの架橋部bにおいては、その長手方向に垂直な断面の断面形状が概略小判形状を有していることが分かる。
【0049】
本発明に係る焼成用ユニット積層体において、焼成用ラックの架橋部の断面形状が概略小判形状であることにより、図7(c)に例示するように、両端がR状となっていることから、焼成用ラック上にメッシュ状のセッターを載置したときに、断面形状が四角形状の架橋部に比較して架橋部とセッターとが接触する面積を低減させることができ、このために、焼成時における炉内ガスの流通を妨げることなく、被焼成物を均質かつ効率的に容易に焼成することができる。
【0050】
本発明に係る焼成用ユニット積層体において、焼成用ラックは、
(i)SiC純度が99質量%以上の常圧焼結SiCからなること、
(ii)嵩比重が3.10以上、
(iii)開気孔率が1%以下、
(iv)JIS R 1601による三点曲げ強度が450MPa以上、および
(v)JIS R 1648:R2002による耐熱衝撃強度が400℃以上
から選ばれる一以上の条件を満たすものであることが好ましい。
【0051】
本発明に係る焼成用ユニット積層体において、焼成用ラックが、上記(i)、(iv)、(v)から選ばれる一以上の条件を満たすものであることにより、被処理物を焼成する際に焼成用ラックにおける熱衝撃による破損を容易に抑制することができる。
【0052】
また、本発明に係る焼成用ユニット積層体において、焼成用ラックが、上記(i)、(ii)、(iii)から選ばれる一以上の条件を満たすものであることにより、焼成用ラックの質量が軽くなったり熱容量が小さくなって、省エネルギー化を図りつつ被処理物を容易に焼成処理することができる。
【0053】
本発明に係る焼成用ユニット積層体において、焼成用ラックが、上記(i)~(v)から選ばれる一以上の条件を満たすものであることにより、特に、生産性の向上が求められ、急昇温処理や急冷却処理が求められたり、被焼成物の積載量の増加等が要求される連続式熱処理炉における焼成処理時において、従来使用されていたセラミック質の焼成用ラックに代えて好適に使用することができる。
【0054】
本発明に係る焼成用ユニット積層体において、焼成用ラックは支持部を有するものであることが好ましい。
上記支持部の形態としては、各焼成用ラックの枠体同士を離間し得るものであれば特に制限されない。
【0055】
図8(a)~図8(d)は、各々、支持部lを有する焼成用ラックrの形態例を示すものである。
【0056】
図8(a)は、枠体fの下面側に支持部(脚部)lを設けた焼成用ラックrの形態例を示す図であり、図8(b)は、枠体fの上面側に支持部(腕部)lを設けた焼成用ラックrの形態例を示す図であり、図8(c)は、枠体fの下面側にリブ状の支持部lを設けた焼成用ラックrの形態例を示す図であり、図8(d)は、枠体fの上面側にリブ状の支持部lを設けた焼成用ラックrの形態例を示す図である。
【0057】
本発明に係る焼成用ユニット積層体において、焼成用ラックが支持部を有するものであることにより、各焼成用ユニットを構成する焼成用ラックrの枠体f同士を離間させ、焼成用ユニットを積み重ねて積層体としたときに各焼成用ユニット間に炉内ガスを効果的に流通させることができる。
【0058】
本発明に係る焼成用ユニット積層体において、焼成用ユニットは、各々、焼成用ラックおよび当該焼成用ラック上に配置されたメッシュ状のセッターを有している。
【0059】
本発明に係る焼成用ユニット積層体において、セッターは、メッシュ状物、すなわち複数の線状部材が交差する網目状物からなる。
【0060】
本出願書類において、複数の線状部材が交差する網目状物とは、一方向に向けて複数並行して配置された第一の線状部材と、係る第一の線状部材と交差する方向に複数並行して配置された第二の線状部材とにより形成されてなる、格子状の部材を意味する。
本発明に係る焼成用ユニット積層体において、網目状物は、上記第一の線状部材と第二の線状部材の交差部において、両線状部材が固定され一体化されたものであってもよいし、両線状部材が交互に上下しつつ網状に織り込まれたのであってもよい。
【0061】
線状部材が交互に上下しつつ網状に織り込まれた網目状物の例としては、図9(a)や図9(b)に示すように、各々線状部材からなる縦線と横線とを一定の間隔を保ちつつ交互に上下するように交わらせて網状に織ったものを挙げることができる。
図9(a)は、平織(縦線と横線とを一定の間隔を保ちつつ1本づつ交互に上下するように交わらせて網状に織り込んだもの)の例を示し、図9(b)は、綾織(縦線と横線とを一定の間隔を保ちつつ複数本づつ交互に上下するように交わらせて網状に織り込んだもの)の例を示すものである。
【0062】
上記線状部材を交差することにより形成される格子形状パターンとしては、(図9(a)や図9(b)に例示するような)正方形状の他、長方形状、菱形状等の四角形状を挙げることができ、正方形状であることが好ましい。
【0063】
本発明に係る焼成用ユニット積層体において、上記編目状物を構成する線状部材や、編目状物における線状部材の配置間隔、編目状物のサイズ等は、本発明の目的を達成し得る範囲において適宜選定することができる。
【0064】
本発明に係る焼成用ユニット積層体において、メッシュ状のセッターは、少なくともその表面が、焼成処理時に溶融して被焼成物に付着したり被焼成物との反応を抑制し得る耐熱性材料により形成されていることが好ましい。
【0065】
本発明に焼成用ユニット積層体において、メッシュ状のセッターは、全体が耐熱性材料で形成されてなるものであってもよいし、基材の表面に耐熱性材料のコート層が形成されてなるものであってもよい。
【0066】
本発明に係る焼成用ユニット積層体によれば、セッターが網目状物からなることから、従来の板状のセッターに比較して、焼成時に生成する炉の下部側から上部側に上昇する炉内ガスの流通を効果的に促進することができる。
また、被焼成物との接触面積が低減して両者間の融着や反応等を抑制することができるとともに、熱容量が低減し焼成室内で焼成処理する際に使用されるエネルギー量を低減することができる。
【0067】
図1に示すように、本発明に係る焼成用ユニット積層体において、焼成用ユニットUは、焼成用ラックrおよび当該焼成用ラックr上に配置されたメッシュ状のセッターsを有している。
そして、図10に示すように、本発明に係る焼成用ユニット積層体は、上記焼成用ラックrおよび当該焼成用ラックr上に配置されたメッシュ状のセッターsを有する焼成用ユニットが複数積み重ねてなるものである。
【0068】
本発明に係る焼成用ユニット積層体は、隣り合う焼成用ユニットを構成する焼成用ラックのみを下部側から垂直上方向に観察したときに、下記式(I)
架橋部面積重複割合(%)=(下側に位置する焼成用ラックの架橋部と上側に位置する焼成用ラックの架橋部および枠体とが重なり合う面積/下側に位置する焼成用ラックの架橋部の面積)×100 (I)
により算出される架橋部面積重複割合が、0~80%となるように、各焼成用ユニットが積み重ねられてなるものである。
【0069】
図11は、隣り合う焼成用ユニットを構成する焼成用ラックのみを下部側から垂直上方向に観察したときにおける、架橋部面積重複割合の算出方法を説明するための図である。
【0070】
図11(a)および図11(b)は、本発明に係る焼成用ユニット積層体の形態例において、隣り合う焼成用ユニットを構成する焼成用ラックのみを下部側から垂直上方向に観察したときにおける、上側に位置する焼成用ラックrの下面図を示すもの(図11(a))および下側に位置する焼成用ラックr’の下面図を示すもの(図11(b))である。
この場合、上記二つの焼成用ラックr、r’のみを下部側から垂直上方向に観察すると、図11(c)に示すように、両者の架橋部b、b’が部分的に重なり合うように観察される。
【0071】
この場合、図11(d)に斜線で示す部分の面積Aが、下側に位置する焼成用ラックr’の架橋部b’の面積に相当する。
また、図11(e)に斜線で示す部分の面積Aが、下側に位置する焼成用ラックr’の架橋部b’と上側に位置する焼成用ラックrの架橋部bおよび枠体とが重なり合う部分の面積を示す(図11に示す例においては、下側に位置する焼成用ラックr’の架橋部b’および上側に位置する焼成用ラックrの架橋部bのみが重なり合っていることから、面積Aは、両架橋部が重なり合う部分の面積を示す)。
【0072】
なお、本出願書類において、下側に位置する焼成用ラックの架橋部の面積(図11(d)に示す例における面積A)は、上述した、架橋部面積割合を算出する際における、焼成用ラックを構成する架橋部の面積の算出方法と同様に算出することができる。
また、本出願書類において、下側に位置する焼成用ラックの架橋部と上側に位置する焼成用ラックの架橋部および枠体とが重なり合う面積(図11(e)に示す例における面積A)は、上記方法により求められる下側に位置する焼成用ラックの架橋部の面積のうち、上側に位置する焼成用ラックの架橋部および枠体と重なり合う部分の面積を求めることにより算出することができる。
【0073】
図11に示す例において、架橋部面積重複割合(%)は、
(下側に位置する焼成用ラックr’の架橋部b’および上側に位置する焼成用ラックの架橋部bが重なり合う面積A/下側に位置する焼成用ラックの架橋部b’の面積A)×100
により算出される。
【0074】
本発明に係る焼成用ユニット積層体において、隣り合う焼成用ユニットを構成する焼成用ラックのみを下部側から垂直上方向に観察したときに上記式(I)により求められる架橋部面積重複割合は、0~80%であり、1~45%であることが好ましく、1~10%であることがより好ましい。
【0075】
本発明に係る焼成用ユニット積層体を構成する各焼成用ユニットにおいては、隣り合う焼成用ユニットとの関係において架橋部面積重複割合が上記規定範囲内にあればよく、上記規定範囲内にある限り、各焼成用ユニットが隣り合う焼成用ユニットとの関係において算出される架橋部面積重複割合は、同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0076】
上述したように、従来の焼成用ユニット積層体においては、隣り合う焼成用ユニットを構成する焼成用ラックのみを下部側から垂直上方向に観察したときに、各焼成用ラックが、その枠体および架橋部同士が完全に重なり合うように配設されたものであるために、隣り合う焼成用ラックのみを観察すると、焼成炉内で炉内ガス流が炉の下部側から上部側に上昇する際に、各焼成用ラックの開口パターンを規定する架橋部が設けられた箇所には、いずれも炉内ガス流が接触することなく炉内ガスが上昇するため、特に上部側に積み重ねた焼成用ユニットにおいて通気性が低下して、炉内ガス流と被焼成物との接触効率が低下してしまう。
【0077】
一方、本発明に係る焼成用ユニット積層体においては、隣り合う焼成用ユニットにおいて、焼成用ラック同士を下部側から垂直上方向に観察したときに、各焼成用ラックの開口パターンを規定する架橋部同士が完全に重なり合わないように、各焼成用ラックを選択し、配設することにより、焼成時に生成する炉の下部側から上部側に上昇する炉内ガスの流通を促進することができる。
【0078】
本発明に係る焼成用ユニット積層体においては、隣り合う焼成用ユニットの少なくとも一部において、当該隣り合う焼成用ユニットを構成する焼成用ラックとして、以下に示すような焼成用ラックを選択し、各々配設することが好ましい。
(1)異なる開口パターンを有する焼成用ラックを、隣り合う焼成用ユニットの焼成用ラックとして各々配置する。
(2)(図4(a)および図4(b)に例示するように)上面の中心を通る垂直軸を回転軸として時計回りに90°または180°回転させたときに回転対称とならない形状を有する外形が矩形状の焼成用ラックを採用し、上記回転前後における状態で隣り合う焼成用ユニットの焼成用ラックとして各々配置する。
(3)(図4(a)および図4(c)に例示するように)、裏返して表面および裏面を逆に配置したときに、枠体内に架橋部により形成されるパターン形状が、異なるものとなる外形が矩形状の焼成用ラックを採用し、隣り合う焼成用ユニットの焼成用ラックとして上記裏返す前後における状態で各々配置する。
【0079】
図12(a)は、図4(a)に示す図に対応する、本発明に係る焼成用ユニット積層体で採用し得る焼成用ラックrの一例を示す図である。
図12(a)に示す焼成用ラックrは、(図4(c)に示すように)裏返して表面および裏面を逆に配置したときに、枠体内に架橋部により形成されるパターン形状が、異なる架橋部パターン形状となるものである。
本発明に係る焼成用ユニット積層体の一例においては、隣り合う焼成用ユニットの焼成用ラックとして、図12(a)に示す形状を有するものを採用し、図12(b)に示すように、隣り合う焼成用ユニットにおいて、裏返したものと裏返していないものを交互に配設する。
この場合、隣り合う焼成用ユニットを構成する焼成用ラックrのみを観察したときに、図12(b)に斜視図、図12(c)に側部の断面図(図12(b)におけるZ-Z’線で垂直方向に切断したときにおける側部の断面図)で示すように、隣り合う焼成用ラックの架橋部が完全に重なり合うことがなく、焼成用ラックに設けられた架橋部の重なりの程度を示す架橋部面積重複割合が低減されてなるものであることにより、(図中矢印で示す)焼成時に生成する炉の下部側から上部側に上昇する炉内ガス流Fの流通を促進することができる。
【0080】
本発明に係る焼成用ユニット積層体を焼成処理する窯炉(焼成炉)としては、特に制限されないが、ローラーハース炉やトンネル炉等を挙げることができる。
本発明に係る焼成用ユニット積層体を焼成処理する窯炉(焼成炉)として、ローラーハース炉やトンネル炉を採用することにより、複数の焼成用ユニット積層体を、炉内に設けられた複数のローラー上を各々移動させたり、各々台板上に載置した状態で炉内を移動させることにより、多数の被焼成物(焼成対象物)を同時に焼成処理することができる。
【0081】
本発明によれば、被焼成物を均質かつ効率的に焼成可能な焼成用ユニット積層体を提供することができる。
【0082】
次に、本発明に係る焼成方法について説明する。
本発明に係る焼成方法は、本発明に係る焼成用ユニット積層体を用い、焼成炉内で被焼成物を焼成処理することを特徴とするものである。
【0083】
本発明に係る焼成用ユニット積層体の詳細は、上述したとおりである。
【0084】
本発明に係る焼成方法において、被焼成物を焼成する際の温度は、被焼成物に応じて適宜設定すればよく、特に制限されないが、800~1400℃が適当であり、1000~1300℃がより適当である。
【0085】
本発明に係る焼成方法において、被焼成物を焼成する際の焼成時間は、被焼成物に応じて適宜設定すればよく、特に制限されないが、0.5~20時間が適当であり、2~5時間がより適当である。
【0086】
本発明によれば、本発明に係る焼成用ユニット積層体を用いることにより、被焼成物を均質かつ効率的に焼成することができる。
【0087】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明は以下の例により何ら限定されるものではない。
【0088】
(実施例1)<隣り合う焼成用ユニットにおいて焼成用ラックを交互に裏返して配置した例>
(1)焼成用ラック
焼成用ラックとして、図13-1(a)に下面図を示す、縦170mm、横170mmの外形が矩形状(正方形状)のものを用意した。
図13-1(a)に示すように、本実施例で使用した焼成用ラックrは、枠体fと、枠体f内に設けられた架橋部bとを有している。
図13-1(b)は、図13-1(a)に示す矩形状の焼成用ラックrを裏返して表面および裏面を逆に配置したときの焼成用ラックrの下面図を示すものである。
図13-1(a)および図13-1(b)に示すように、本実施例で使用した焼成用ラックrは、焼成用ラックの枠体fおよび架橋部bにより規定される開口部が、裏返して表面および裏面を逆に配置したときに、異なるパターン形状を有するものである。
本実施例で使用した焼成用ラックrは、(i)SiC純度が99質量%以上の常圧焼結SiC製板材からなり、この常圧焼結SiC製板材は、(ii)嵩比重が3.10、(iii)開気孔率が1%以下、(iv)JIS R 1601による三点曲げ強度が450MPa、(v)JIS R 1648:R2002による耐熱衝撃強度が400℃であるものであった。
また、本実施例で使用した焼成用ラックrは、架橋部の幅が5mm、枠体の幅が14mmと各々均一の幅を有し、式(II)により算出される架橋部面積割合が11%、式(III)により算出される架橋部幅割合が3%、架橋部の厚みが3mm、枠体の厚みが3mmであるものであった。
【0089】
(2)セッター
セッターとして、縦150mm、横150mmのメッシュ状のセッターを用意した。
上記メッシュ状のセッターは、ニッケル製線材を第一の線状部材として一方向に向けて複数並行して配置するとともに、係る第一の線状部材と直交する方向に、ニッケル製線材を第二の線状部材として複数並行して配置したものであり、上記第一の線状部材と第二の線状部材の交差部において両線状部材が交互に上下しつつ網状に織り込まれた平織状物からなる。
【0090】
(3)焼成用ユニット積層体
上記焼成用ラック上に上記メッシュ状のセッターを各々載置することにより焼成用ユニットを10組形成した。
このとき、図13-1(a)に示す焼成用ラックrの上面側に上記メッシュ状のセッターを配置したもの(焼成用ユニットa)を5組形成するとともに、
図13-1(b)に示す焼成用ラックrの上面側に上記メッシュ状のセッターを配置したもの(図13-1(a)に示す焼成用ラックrを裏返した状態でその主表面上に上記メッシュ状のセッターを配置したもの(焼成用ユニットb))を5組形成した。
その上で、上記焼成用ユニットaと焼成ユニットbとが交互に隣り合うように各焼成用ユニットを垂直に積み重ねることにより(隣り合う焼成用ユニットを構成する焼成用ラックのみを下部側から垂直上方向に観察したときに、各焼成用ラックの架橋部が完全に重ならないように配置することにより)、焼成用ユニット積層体を形成した。
このとき、各焼成用ユニットの四隅において、直径8mm、高さ10mmの サイズを有し、(i)SiC純度が99質量%以上の常圧焼結SiCからなり、(ii)嵩比重が3.10以上、(iii)開気孔率が1%以下、(iv)JIS R 1601による三点曲げ強度が450MPa以上、および(v)JIS R 1648:R2002による耐熱衝撃強度が400℃以上であるSiC製円柱状スペーサーを配置することにより、各焼成用ユニット同士を10mm離間させた。
図13-2は、本実施例で作製した、焼成用ユニットaと焼成ユニットbとが交互に隣り合うように垂直に積み重ねた焼成用ユニット積層体において、各焼成用ユニットを構成する焼成用ラックrのみを斜め上から観察したときの斜視図である。
図13-2に示すように、隣り合う焼成用ユニットを構成する焼成用ラックのみを下部側から垂直上方向に観察したときに、隣り合う焼成用ラックrの架橋部が完全に重なり合うことがなく、焼成用ラックに設けられた架橋部の重なりの程度を示す架橋部面積重複割合が低減されてなるものであることにより、(図中矢印で示す)焼成時に生成する炉の下部側から上部側に上昇する炉内ガス流Fの流通を促進することができる。
この場合、上記焼成用ユニット積層体において、隣り合う焼成用ユニットaを構成する焼成用ラックrと、焼成用ユニットbを構成する焼成用ラックrのみを下部側から垂直上方向に観察すると、図13-1(c)に示すように、両者の架橋部b、bが部分的に重なり合うように観察される。このとき、図13-1(c)に着色部で示す部分の面積が、下側に位置する焼成用ユニットbを構成する焼成用ラックrの架橋部bと上側に位置する焼成用ユニットaを構成する焼成用ラックrの架橋部bおよび枠体とが重なり合う部分の面積を示す(図13に示す例においては、下側に位置する焼成用ラックrの架橋部bおよび上側に位置する焼成用ラックrの架橋部bのみが重なり合っていることから、図13-1(c)における着色部は、上記隣り合う焼成用ユニットaおよび焼成用ユニットbを構成する焼成用ラックr、rの架橋部同士が重なり合う部分の面積に対応する)。
上記焼成用ユニット積層体において、隣り合う焼成用ユニットを構成する焼成用ラックのみを下部側から垂直上方向に観察したときに、下記式(I)
架橋部面積重複割合(%)=(下側に位置する焼成用ラックの架橋部と上側に位置する焼成用ラックの架橋部および枠体とが重なり合う面積/下側に位置する焼成用ラックの架橋部の面積)×100 (I)
により算出される各架橋部面積重複割合は、全て67%であった(一段目と二段目との架橋部面積重複割合、二段目と三段目の架橋部面積重複割合等の下段と上段間で規定される架橋部面積重複割合は全て「67%」であった)。
【0091】
(4)焼成処理
上記(3)で得られた焼成用ユニット積層体において、各焼成用ユニットのセッター上に被焼成物として、各々、200個の積層セラミックコンデンサを配置した。
上記被焼成物を配置した焼成用ユニット積層体を台板上に載置し、トンネル炉内を(図13―2に示す炉内進行方向に)移動させながら1200℃で2時間焼成処理した。
このとき、焼成用ユニット積層体を構成する一段目、五段目および十段目の焼成用ユニット積層体における、被焼成物の良品率を下記式により算出した。結果を表1に示す。
良品率(%)={(一段当たりの良品数)/(一段当たりに配置した被焼成物数)}×100
なお、良品および不良品は、下記基準により判断した。
良品 :目視観察したときに、外観的にクラックや変色が確認されない。
不良品:目視観察したときに、外観的にクラックや変色が確認される。
【0092】
(実施例2)<隣り合う焼成用ユニットにおいて焼成用ラックがその上面の中心を通る垂直軸を回転軸として時計回りに90°回転した状態で配置した例>
(1)焼成用ラック
焼成用ラックとして、図14-1(a)に下面図を示す、縦170mm、横170mmの外形が矩形状(正方形状)のものを用意した。
図14-1(a)に示すように、本実施例で使用した焼成用ラックrは、枠体fと、枠体f内に設けられた架橋部bとを有している。
図14-1(b)は、図14-1(a)に示す矩形状の焼成用ラックrの上面の中心を通る垂直軸を回転軸として時計回りに90°回転させた状態の下面図を示すものである。
図14-1(a)および図14-1(b)に示すように、本実施例で使用した焼成用ラックrは、焼成用ラックの枠体fおよび架橋部bにより規定される開口部が、焼成用ラックrの上面の中心を通る垂直軸を回転軸として時計回りに90°回転して配置したときに、異なるパターン形状を有するものである。
本実施例で使用した焼成用ラックrは、(i)SiC純度が99質量%以上の常圧焼結SiC製板材からなり、この常圧焼結SiC製板材は、(ii)嵩比重が3.10、(iii)開気孔率が1%以下、(iv)JIS R 1601による三点曲げ強度が450MPa、(v)JIS R 1648:R2002による耐熱衝撃強度が400℃であるものであった。
また、本実施例で使用した焼成用ラックrは、架橋部の幅が5mm、枠体の幅が14mmと各々均一の幅を有し、式(II)により算出される架橋部面積割合が11%、式(III)により算出される架橋部幅割合が3%、架橋部の厚みが3mm、枠体の厚みが3mmであるものであった。
【0093】
(2)セッター
セッターとして、実施例1で使用したものと同一のセッターを用意した。
【0094】
(3)焼成用ユニット積層体
上記焼成用ラック上に上記メッシュ状のセッターを各々載置することにより焼成用ユニットを10組形成した。
このとき、図14-1(a)に示す焼成用ラックrの上面側に上記メッシュ状のセッターを配置したもの(焼成用ユニットa)を5組形成するとともに、図14(b)に示す焼成用ラックrの上面側に上記メッシュ状のセッターを配置したもの(図14-1(a)に示す焼成用ラックrをその上面の中心を通る垂直軸を回転軸として時計回りに90°回転した状態で配置したもの(焼成用ユニットb))を5組形成した。
その上で、上記焼成用ユニットaと焼成ユニットbとが交互に隣り合うように各焼成用ユニットを垂直に積み重ねることにより(隣り合う焼成用ユニットを構成する焼成用ラックのみを下部側から垂直上方向に観察したときに、各焼成用ラックがその上面の中心を通る垂直軸を回転軸として90°回転した状態で配置して、各焼成用ラックの架橋部が完全に重ならないように配置することにより)、焼成用ユニット積層体を形成した。
このとき、各焼成用ユニットの四隅において、直径8mm、高さ10mmのサイズを有する、(i)SiC純度が99質量%以上の常圧焼結SiCからなり、(ii)嵩比重が3.10以上、(iii)開気孔率が1%以下、(iv)JIS R 1601による三点曲げ強度が450MPa以上、および(v)JIS R 1648:R2002による耐熱衝撃強度が400℃以上であるSiC製円柱状スペーサーを配置することにより、各焼成用ユニット同士を10mm離間させた。
図14-2は、本実施例で作製した、焼成用ユニットaと焼成ユニットbとが交互に隣り合うように垂直に積み重ねた焼成用ユニット積層体において、各焼成用ユニットを構成する焼成用ラックrのみを斜め上から観察したときの斜視図である。
図14-2に示すように、隣り合う焼成用ユニットを構成する焼成用ラックのみを下部側から垂直上方向に観察したときに、隣り合う焼成用ラックrの架橋部が完全に重なり合うことがなく、焼成用ラックに設けられた架橋部の重なりの程度を示す架橋部面積重複割合が低減されてなるものであることにより、(図中矢印で示す)焼成時に生成する炉の下部側から上部側に上昇する炉内ガス流Fの流通を促進することができる。
この場合、上記焼成用ユニット積層体において、隣り合う焼成用ユニットaを構成する焼成用ラックrと、焼成用ユニットbを構成する焼成用ラックrのみを下部側から垂直上方向に観察すると、図14-1(c)に示すように、両者の架橋部b、bが部分的に重なり合うように観察される。このとき、図14-1(c)に着色部で示す部分の面積が、下側に位置する焼成用ユニットbを構成する焼成用ラックrの架橋部bと上側に位置する焼成用ユニットaを構成する焼成用ラックrの架橋部bおよび枠体とが重なり合う部分の面積を示す(図14に示す例においては、下側に位置する焼成用ラックrの架橋部bおよび上側に位置する焼成用ラックrの架橋部bのみが重なり合っていることから、図14-1(c)における着色部は、上記隣り合う焼成用ユニットaおよび焼成用ユニットbを構成する焼成用ラックr、rの架橋部同士が重なり合う部分の面積に対応する)。
上記焼成用ユニット積層体において、隣り合う焼成用ユニットを構成する焼成用ラックのみを下部側から垂直上方向に観察したときに、下記式(I)
架橋部面積重複割合(%)=(下側に位置する焼成用ラックの架橋部と上側に位置する焼成用ラックの架橋部および枠体とが重なり合う面積/下側に位置する焼成用ラックの架橋部の面積)×100 (I)
により算出される各架橋部面積重複割合は、全て9%であった(一段目と二段目との架橋部面積重複割合、二段目と三段目の架橋部面積重複割合等の下段と上段間で規定される架橋部面積重複割合は全て「9%」であった)。
【0095】
(4)焼成処理
上記(3)で得られた焼成用ユニット積層体において、各焼成用ユニットのセッター上に被焼成物として、各々、200個の積層セラミックコンデンサを配置した。
上記被焼成物を配置した焼成用ユニット積層体を台板上に載置し、トンネル炉内を(図14-2に示す炉内進行方向に)移動させながら1200℃で2時間焼成処理した。
このとき、焼成用ユニット積層体を構成する一段目、五段目および十段目の焼成用ユニット積層体における、被焼成物の良品率を実施例1と同様にして算出した。結果を表1に示す。
【0096】
(比較例1)
<隣り合う焼成用ユニットを構成する焼成用ラックのみを下部側から垂直上方向に観察したときに、各焼成用ラックの架橋部が完全に重なるように配置した例>
(1)焼成用ラック
焼成用ラックとして、実施例1で使用したものと同一の焼成用ラックを用意した。
すなわち、焼成用ラックとして、図15(a)に下面図を示す、縦170mm、横170mmの外形が矩形状(正方形状)のものを用意した。
図15(a)に示すように、本実施例で使用した焼成用ラックrは、枠体fと、枠体f内に設けられた架橋部bとを有している。
【0097】
(2)セッター
セッターとして、実施例1で使用したものと同一のセッターを用意した。
【0098】
(3)焼成用ユニット積層体
上記焼成用ラック上に上記メッシュ状のセッターを各々載置することにより焼成用ユニットを10組形成した。
このとき、上記焼成用ラックの一方の主表面上に上記メッシュ状のセッターを配置したもの(焼成用ユニットa)のみを10組形成した。
その上で、上記焼成用ユニットaが隣り合うように各焼成用ユニットを垂直に積み重ねることにより(隣り合う焼成用ユニットを構成する焼成用ラックのみを下部側から垂直上方向に観察したときに、各焼成用ラックの架橋部が完全に重なるように配置することにより)、焼成用ユニット積層体を形成した。
このとき、各焼成用ユニットの四隅において、直径8mm、高さ10mmのサイズを有し、(i)SiC純度が99質量%以上の常圧焼結SiCからなり、(ii)嵩比重が3.10以上、(iii)開気孔率が1%以下、(iv)JIS R 1601による三点曲げ強度が450MPa以上、および(v)JIS R 1648:R2002による耐熱衝撃強度が400℃以上である炭化珪素製円柱状スペーサーを配置することにより、各焼成用ユニット同士を10mm離間させた。
図15(b)は、本比較例で作製した焼成用ユニット積層体において、各焼成用ユニットを構成する焼成用ラックrのみを斜め上から観察したときの斜視図である。
図15(b)に示すように、隣り合う焼成用ユニットを構成する焼成用ラックのみを下部側から垂直上方向に観察したときに、隣り合う焼成用ラックrの架橋部が完全に重なり合うことから、(図中矢印で示す)焼成時に生成する炉の下部側から上部側に上昇する炉内ガス流Fの流通を抑制することになる。
上記焼成用ユニット積層体において、隣り合う焼成用ユニットを構成する焼成用ラックのみを下部側から垂直上方向に観察したときに、下記式(I)
架橋部面積重複割合(%)=(下側に位置する焼成用ラックの架橋部と上側に位置する焼成用ラックの架橋部および枠体とが重なり合う面積/下側に位置する焼成用ラックの架橋部の面積)×100 (I)
により算出される各架橋部面積重複割合は、全て100%であった(一段目と二段目との架橋部面積重複割合、二段目と三段目の架橋部面積重複割合等の下段と上段間で規定される架橋部面積重複割合は全て「100%」であった)。
【0099】
(4)焼成処理
上記(3)で得られた焼成用ユニット積層体において、各焼成用ユニットのセッター上に被焼成物として、各々、200個の積層セラミックコンデンサを配置した。
上記被焼成物を配置した焼成用ユニット積層体を台板上に載置し、トンネル炉内を(図15(b)に示す炉内進行方向に)移動させながら1200℃で2時間焼成処理した。
このとき、焼成用ユニット積層体を構成する一段目、五段目および十段目の焼成用ユニット積層体における、被焼成物の良品率を実施例1と同様にして算出した。結果を表1に示す。
【0100】
【表1】
【0101】
表1より、実施例1および実施例2においては、複数積み重ねられた焼成用ユニットにおいて、隣り合う焼成用ユニットを構成する焼成用ラックを下部側から垂直上方向に観察したときに、焼成用ラックに設けられた架橋部の重なりの程度の指標となる架橋部面積重複割合が0~80%に抑制されてなるものであることにより、焼成時に生成する炉の下部側から上部側に上昇する炉内ガスの流通を促進することができ、このために、一段目~十段目における被焼成物を均質かつ効率的に焼成し得ることが分かる。
【0102】
表1より、比較例1においては、複数積み重ねられた焼成用ユニットにおいて、隣り合う焼成用ユニットを構成する焼成用ラックを下部側から垂直上方向に観察したときに、焼成用ラックに設けられた架橋部の重なりの程度の指標となる架橋部面積重複割合が0~80%の範囲外である(100%である)ことから、焼成時に生成する炉の下部側から上部側に上昇する炉内ガスの流通が遮られ、このために、特に十段目における被焼成物を均質かつ効率的に焼成し得ず、良品率に劣ることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明によれば、被焼成物を均質かつ効率的に焼成可能な焼成用ユニット積層体を提供し得るとともに、係る焼成用ユニット積層体を用いた焼成方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0104】
1:焼成用ユニット積層体
U:焼成用ユニット
r:焼成用ラック
f:枠体
b:架橋部
c:中心
l:支持部
s:セッター
F:炉内ガス流
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13-1】
図13-2】
図14-1】
図14-2】
図15
図16
図17
図18