(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006104
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】点滴流量制御装置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/168 20060101AFI20240110BHJP
A61M 5/172 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
A61M5/168 502
A61M5/168 532
A61M5/172
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106680
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 克哉
(72)【発明者】
【氏名】出水 俊
(72)【発明者】
【氏名】岡嶋 めい
(72)【発明者】
【氏名】小宮 和磨
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA07
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD01
4C066EE01
4C066FF04
4C066QQ02
4C066QQ03
4C066QQ22
4C066QQ25
4C066QQ45
4C066QQ52
4C066QQ75
4C066QQ85
(57)【要約】 (修正有)
【課題】支持部材に取り付けることなく、可撓性を有する医療用チューブを介して鉛直方向に吊り下げられる点滴筒に取り付けて使用する場合であっても、点滴筒の内部を落下する液体の検出精度の低下を抑制できる、点滴流量制御装置を提供する。
【解決手段】本開示に係る点滴流量制御装置100は、点滴筒200を装着可能な装着空間100aを区画している点滴流量制御装置であって、前記装着空間に装着されている状態の前記点滴筒の内部を落下する液滴を検出可能な液滴検出部2と、前記液滴検出部の検出情報に基づき前記点滴筒の下流側に連なる下流側チューブ201bの閉塞量を調整可能な閉塞調整部3と、を備え、前記装着空間に前記点滴筒が装着されている状態で前記点滴筒の中心軸方向を鉛直方向とした場合の点滴流量制御装置の鉛直姿勢において、点滴流量制御装置の装置重心を通過する鉛直線が、前記点滴筒を通過するように構成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
点滴筒を装着可能な装着空間を区画している点滴流量制御装置であって、
前記装着空間に装着されている状態の前記点滴筒の内部を落下する液滴を検出可能な液滴検出部と、
前記液滴検出部の検出情報に基づき前記点滴筒の下流側に連なる下流側チューブの閉塞量を調整可能な閉塞調整部と、を備え、
前記装着空間に前記点滴筒が装着されている状態で前記点滴筒の中心軸方向を鉛直方向とした場合の点滴流量制御装置の鉛直姿勢において、点滴流量制御装置の装置重心を通過する鉛直線が、前記点滴筒を通過するように構成されている、点滴流量制御装置。
【請求項2】
前記装着空間は、前記鉛直姿勢において鉛直方向に延在する溝部により区画されており、
前記鉛直姿勢で前記溝部の開口側から見た正面視において、前記装置重心は、点滴流量制御装置の最大幅の中間位置から、幅方向において、前記最大幅の15%以下の範囲に位置する、請求項1に記載の点滴流量制御装置。
【請求項3】
前記閉塞調整部は電動モータを備え、
前記電動モータに電力を供給可能な電池を備え、
前記鉛直線を第1鉛直線とした場合に、前記電動モータ及び前記電池は、前記鉛直姿勢において、前記電動モータの質量及び重心、並びに、前記電池の質量及び重心、のみから算出される部品重心を通過する第2鉛直線が、前記点滴筒を通過するように配置されている、請求項1又は2に記載の点滴流量制御装置。
【請求項4】
前記液滴検出部は、前記装着空間に装着されている状態の前記点滴筒に光を照射し、反射光又は透過光を受光する、発光部及び受光部を備え、
前記鉛直姿勢において、前記装置重心は、前記液滴検出部の前記発光部及び前記受光部より鉛直方向の下方に位置する、請求項1又は2に記載の点滴流量制御装置。
【請求項5】
前記鉛直姿勢において、前記装置重心は、点滴流量制御装置の最大高さの中間位置より鉛直方向の下方に位置する、請求項4に記載の点滴流量制御装置。
【請求項6】
前記点滴筒の上流側に連なる薬液容器に接続可能な接続部を備える、請求項1又は2に記載の点滴流量制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は点滴流量制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、点滴筒の内部を落下する液体の検出情報に基づき、点滴筒の下流側に連なる医療用チューブの閉塞量を制御することにより、点滴流量を制御する点滴流量制御装置が知られている。特許文献1には、この種の点滴流量制御装置としての点滴コントローラ端末が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の点滴コントローラ端末は、グリップを用いて支柱に取り付けられることにより使用される。これにより、点滴コントローラ端末に装着される点滴筒の姿勢を、その中心軸方向が鉛直方向に沿うように、維持することができる。そのため、点滴筒が傾斜することを防ぎ、例えば点滴筒の周壁の内面への薬液の付着等による、点滴筒の内部を落下する液体の検出精度の低下、を抑制できる。これにより、点滴流量の制御精度を高めることができる。
【0005】
しかしながら、例えば在宅環境での使用等、点滴流量制御装置を取り付けるための支柱等の支持部材を配置できない場合がある。
【0006】
本開示は、支持部材に取り付けることなく、可撓性を有する医療用チューブを介して鉛直方向に吊り下げられる点滴筒に取り付けて使用する場合であっても、点滴筒の内部を落下する液体の検出精度の低下を抑制できる、点滴流量制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様としての点滴流量制御装置は、
(1)
点滴筒を装着可能な装着空間を区画している点滴流量制御装置であって、
前記装着空間に装着されている状態の前記点滴筒の内部を落下する液滴を検出可能な液滴検出部と、
前記液滴検出部の検出情報に基づき前記点滴筒の下流側に連なる下流側チューブの閉塞量を調整可能な閉塞調整部と、を備え、
前記装着空間に前記点滴筒が装着されている状態で前記点滴筒の中心軸方向を鉛直方向とした場合の点滴流量制御装置の鉛直姿勢において、点滴流量制御装置の装置重心を通過する鉛直線が、前記点滴筒を通過するように構成されている、点滴流量制御装置、である。
【0008】
本開示の1つの実施形態としての点滴流量制御装置は、
(2)
前記装着空間は、前記鉛直姿勢において鉛直方向に延在する溝部により区画されており、
前記鉛直姿勢で前記溝部の開口側から見た正面視において、前記装置重心は、点滴流量制御装置の最大幅の中間位置から、幅方向において、前記最大幅の15%以下の範囲に位置する、上記(1)に記載の点滴流量制御装置、である。
【0009】
本開示の1つの実施形態としての点滴流量制御装置は、
(3)
前記閉塞調整部は電動モータを備え、
前記電動モータに電力を供給可能な電池を備え、
前記鉛直線を第1鉛直線とした場合に、前記電動モータ及び前記電池は、前記鉛直姿勢において、前記電動モータの質量及び重心、並びに、前記電池の質量及び重心、のみから算出される部品重心を通過する第2鉛直線が、前記点滴筒を通過するように配置されている、上記(1)又は(2)に記載の点滴流量制御装置、である。
【0010】
本開示の1つの実施形態としての点滴流量制御装置は、
(4)
前記液滴検出部は、前記装着空間に装着されている状態の前記点滴筒に光を照射し、反射光又は透過光を受光する、発光部及び受光部を備え、
前記鉛直姿勢において、前記装置重心は、前記液滴検出部の前記発光部及び前記受光部より鉛直方向の下方に位置する、上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の点滴流量制御装置、である。
【0011】
本開示の1つの実施形態としての点滴流量制御装置は、
(5)
前記鉛直姿勢において、前記装置重心は、点滴流量制御装置の最大高さの中間位置より鉛直方向の下方に位置する、上記(4)に記載の点滴流量制御装置、である。
【0012】
本開示の1つの実施形態としての点滴流量制御装置は、
(6)
前記点滴筒の上流側に連なる薬液容器に接続可能な接続部を備える、上記(1)から(5)のいずれか1つに記載の点滴流量制御装置、である。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、支持部材に取り付けることなく、可撓性を有する医療用チューブを介して鉛直方向に吊り下げられる点滴筒に取り付けて使用する場合であっても、点滴筒の内部を落下する液体の検出精度の低下を抑制できる、点滴流量制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の一実施形態としての点滴流量制御装置、並びに、点滴筒及び下流側チューブを示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す点滴筒及び下流側チューブが装着されている状態の、
図1に示す点滴流量制御装置を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示す点滴筒及び下流側チューブが装着されている状態の、
図1に示す点滴流量制御装置の正面図であり、点滴流量制御装置の鉛直姿勢を示す図である。
【
図4】
図1に示す点滴筒及び下流側チューブが装着されている状態の、
図1に示す点滴流量制御装置の側面図であり、点滴流量制御装置の鉛直姿勢を示す図である。
【
図5】
図1に示す点滴流量制御装置が、点滴ラインを構成する点滴筒及び下流側チューブに対して装着されている、
図1に示す点滴流量制御装置の使用状態を示す図である。
【
図6】
図1に示す点滴流量制御装置の変形例としての点滴流量制御装置が、点滴ラインを構成する点滴筒及び下流側チューブに対して装着されている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示に係る点滴流量制御装置の実施形態について図面を参照して例示説明する。各図において同一の構成には同一の符号を付している。
【0016】
図1は、本開示に係る点滴流量制御装置の一実施形態としての点滴流量制御装置100を示す斜視図である。
図1では、点滴流量制御装置100に加えて、この点滴流量制御装置100に装着可能な、点滴筒200及び下流側チューブ201bを併せて示している。
図2は、
図1に示す点滴筒200及び下流側チューブ201bが装着されている状態の点滴流量制御装置100を示す斜視図である。
図2では、説明の便宜上、点滴流量制御装置100の内部の一部の位置を破線により示している。
図3は、点滴筒200及び下流側チューブ201bが装着されている状態の点滴流量制御装置100の正面図である。
図4は、点滴筒200及び下流側チューブ201bが装着されている状態の点滴流量制御装置100の側面図である。
図5は、点滴ライン300を構成する点滴筒200及び下流側チューブ201bに対して点滴流量制御装置100を装着した、点滴流量制御装置100の使用状態を示す図である。
【0017】
まず、
図5を参照して、点滴流量制御装置100が使用される点滴ラインの一例としての点滴ライン300について説明する。
【0018】
点滴ライン300は、薬液を収容する薬液容器301と、点滴筒200と、生体に穿刺されて留置される留置針302と、可撓性を有する2つの医療用チューブ201と、を備える。点滴ライン300は、薬液容器301から留置針302に至る薬液の流路を形成している。2つの医療用チューブ201は、上流側チューブ201a及び下流側チューブ201bである。上流側チューブ201aは、点滴筒200に対して点滴ライン300の流路の上流側に連なっている。本実施形態の上流側チューブ201aは、薬液容器301及び点滴筒200を接続している。下流側チューブ201bは、点滴筒200に対して点滴ライン300の流路の下流側に連なっている。本実施形態の下流側チューブ201bは、点滴筒200及び留置針302を接続している。
【0019】
本実施形態の上流側チューブ201aは、薬液容器301及び点滴筒200を接続しているが、この構成に限られない。上流側チューブ201aは、点滴筒200と、この点滴筒200に対して上流側に配置される、点滴ライン300の別の構成要素と、を接続していてもよい。また、実施形態の下流側チューブ201bは、点滴筒200及び留置針302を接続しているが、この構成に限られない。下流側チューブ201bは、点滴筒200と、この点滴筒200に対して下流側に配置される、点滴ライン300の別の構成要素と、を接続していてもよい。
【0020】
点滴ライン300は、例えば、薬液容器301を吊り下げ可能な点滴スタンドを用いて使用されてもよい。但し、
図5に示すように、点滴ライン300は、薬液容器301を、S字フック等の係留部材303を用いて、壁掛けフック、鴨居、ピクチャーレール等の建築要素304に引っ掛けることで、簡易的に使用されてもよい。
【0021】
図5に示す点滴流量制御装置100は、上述の点滴スタンド等の支持部材に支持されることなく、上流側チューブ201aを介して鉛直方向Bの上方から下方に吊り下げられている点滴筒200に対して取り付けられている。詳細は後述するが、点滴流量制御装置100は、このような態様で使用されても、点滴筒200の中心軸方向Aが鉛直方向Bに沿うように、点滴筒200の姿勢を維持することができる。
【0022】
次に、
図1~
図4を参照して、点滴流量制御装置100について説明する。
【0023】
点滴流量制御装置100は、点滴筒200、及び、この点滴筒200の下流側に連なる下流側チューブ201b、を装着可能な装着空間100aを区画している。より具体的に、装着空間100aは、点滴筒200を装着可能な第1装着空間100a1と、下流側チューブ201bを装着可能な第2装着空間100a2と、を含む。点滴流量制御装置100は、装着空間100aに装着される点滴筒200及び下流側チューブ201bの内部に流れる輸液剤、栄養剤等の液体としての薬液の流量を制御可能に構成されている。
【0024】
具体的に、点滴流量制御装置100は、液滴検出部2と、閉塞調整部3と、を備える。液滴検出部2は、装着空間100aの第1装着空間100a1に装着されている状態の点滴筒200の内部を落下する液滴を検出可能に構成されている。閉塞調整部3は、液滴検出部2の検出情報に基づき点滴筒200の下流側に連なる下流側チューブ201bの閉塞量を調整可能に構成されている。
【0025】
ここで、
図3、
図4は、点滴流量制御装置100の鉛直姿勢を示す。点滴流量制御装置100の鉛直姿勢とは、装着空間100aに点滴筒200が装着されている状態で点滴筒200の中心軸方向Aを鉛直方向Bとした場合の点滴流量制御装置100の姿勢を意味する。
図3、
図4に示すように、点滴流量制御装置100は、鉛直姿勢において、点滴流量制御装置100の装置重心G1を通過する第1鉛直線L1が、点滴筒200を通過するように構成されている。そのため、点滴流量制御装置100を、例えば点滴スタンド等の支持部材に取り付けることなく、可撓性を有する医療用チューブ201としての上流側チューブ201a(
図5参照)を介して鉛直方向Bに吊り下げられる点滴筒200に取り付けて使用(以下、「吊り下げ使用」と記載する。
図5では吊り下げ使用されている点滴流量制御装置100を示している。)しても、点滴流量制御装置100が鉛直姿勢を維持し易くなる。そのため、点滴流量制御装置100が鉛直方向Bに対して傾斜することが抑制される。これにより、点滴流量制御装置100に装着されている点滴筒200の姿勢も、その中心軸方向Aが鉛直方向Bに沿うように維持され易い。そのため、点滴筒200の周壁の内面への薬液の付着等を抑制でき、点滴筒200の内部を落下する液体の検出精度の低下を抑制できる。
【0026】
更に、点滴流量制御装置100は、上述のように吊り下げ使用(
図5参照)されても鉛直方向Bに対して傾斜し難いため、吊り下げ使用されている点滴流量制御装置100が、上流側チューブ201a(
図5参照)の中心軸線周り(点滴筒200の中心軸線O周りと略等しい)に回動することをも抑制できる。つまり、点滴流量制御装置100が上流側チューブ201aの中心軸線周りに回動することで、上流側チューブ201aにねじれが発生すること、を抑制できる。また、点滴流量制御装置100は、上述のように吊り下げ使用(
図5参照)されても鉛直方向Bに対して傾斜し難いため、上流側チューブ201a(
図5参照)が折れ曲がるキンクが発生することも抑制できる。
【0027】
以下、本実施形態の点滴流量制御装置100の更なる詳細について説明する。
【0028】
図1~
図4に示すように、本実施形態の点滴流量制御装置100は、上述の液滴検出部2及び閉塞調整部3に加えて、電池4と、筐体5と、を備えている。
【0029】
液滴検出部2は、第1装着空間100a1に装着されている点滴筒200の内部で落下する液体を監視可能に構成されている。
【0030】
図1~
図4に示すように、点滴筒200は、点滴ライン(例えば
図5の点滴ライン300)の上流から輸送される薬液を内部の滴下室内に導入する滴下部211と、滴下室内の薬液を点滴ラインの下流に排出する排出部212と、滴下室の周壁を構成する周壁部213と、を備えている。周壁部213は、光透過性の素材で形成された光透過部を少なくとも一部に備えている。具体的には、周壁部213の光透過部は、少なくとも、後述する貯留液体214(
図3参照)の液面よりも上方の位置に備えられている。
【0031】
点滴筒200に輸送された薬液等の液体は、滴下部211の液滴排出口から液滴として落下し、滴下室内に貯留液体214として貯留される。排出部212は貯留液体214の一部を排出する。これにより、貯留液体214は適量に保たれる。
【0032】
本実施形態の液滴検出部2は、第1装着空間100a1に装着されている点滴筒200の滴下室の内部を落下する液体を監視可能に構成されている。
【0033】
より具体的には、
図2に示すように、本実施形態の液滴検出部2は、発光部10と、受光部11と、制御部12と、を備える。
【0034】
発光部10及び受光部11は、装着空間100aに装着されている状態の点滴筒200に光を照射し透過光を受光可能に構成されている。具体的に、発光部10は、第1装着空間100a1に装着されている点滴筒200の内部を落下する薬液等の液体に向けて光を照射可能に構成されている。受光部11は、発光部10が照射した光を受光可能に構成されている。受光部11は、発光部10から点滴筒200の内部に照射され、点滴筒200の内部で落下する液体により吸収及び/又は屈折されて生じる減衰された透過光を受光可能に構成されている。
【0035】
本実施形態の発光部10及び受光部11は、点滴筒200が第1装着空間100a1に装着されている状態で、点滴筒200の周壁部213を径方向で挟むように、対向して配置されている。より具体的に、本実施形態の発光部10及び受光部11は、点滴筒200が第1装着空間100a1に装着されている状態で、点滴筒200の周壁部213のうち、貯留液体214の液面よりも上方に位置する光透過部の位置で、周壁部213を径方向で挟むように対向して配置されている。つまり、本実施形態の発光部10及び受光部11は、鉛直姿勢の点滴流量制御装置100において、概ね同一平面である水平面内に位置している。
【0036】
発光部10は、周壁部213の光透過部を通じて、点滴筒200の滴下室内を落下する液体に向けて入射光を照射可能である。発光部10は、例えば、1つ又は複数のLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)又はLD(Laser Diode:レーザダイオード)等の光を出射する発光素子で構成される。出射される光は、例えば、赤外光であってよい。
【0037】
受光部11は、発光部10が照射した光を受光可能である。本実施形態では、受光部11は、発光部10からの入射光が落下する液体により吸収及び/又は屈折されて生じる減衰された透過光を受光可能である。但し、受光部11は、発光部10からの入射光が落下する液体により反射されて生じる反射光を検出するように構成されてもよい。受光部11は、例えば、1つ又は複数のPT(Photo Transistor:フォトトランジスタ)又はPD(Photo Diode:フォトダイオード)等の受光素子で構成される。
【0038】
受光部11は、透過光を含む受光した光に基づく受光信号を、制御部12に出力する。
【0039】
制御部12は、液滴検出部2の各機能部を制御及び管理する。制御部12は、少なくとも1つのプロセッサを含んで構成される。制御部12は、制御手順を規定したプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)等の汎用プロセッサ又は各機能の処理に特化した専用のプロセッサで構成される。このようなプログラムは、点滴流量制御装置100の内部又は外部の記憶部に記憶されていてよい。
【0040】
制御部12は、受光部11からの受光信号に基づいて、点滴ラインを通じて患者に投与される薬液等の液体の流量を算出する。制御部12は、例えば、算出された流量が、点滴流量制御装置100において予め設定されている設定流量と合致しているか否か判定してよい。制御部12は、例えば、算出された流量と設定流量とが合致しない場合に、その判定結果を、後述する閉塞調整部3に出力する。また、制御部12は、受光部11からの受光信号に基づいて、点滴筒200の内部を落下する液体が、液滴であるか否かについても検出可能である。
【0041】
液滴検出部2は、上述した発光部10、受光部11及び制御部12の他に、例えば、半導体メモリ又は磁気メモリ等で構成される記憶部を更に備えてよい。また、液滴検出部2は、例えば、増幅回路等で構成され、受光部11からの受光信号を増幅して制御部12に出力する増幅部を更に備えてもよい。更に、液滴検出部2は、制御部12の判定結果を外部に報知する報知部を更に備えてもよい。報知部は、外部に報知可能な態様であればその構成は特に限定されず、例えば、光等により視覚を利用して外部に報知する構成であってもよく、音等により聴覚を利用して外部に報知する構成であってもよい。
【0042】
本実施形態の閉塞調整部3は、第2装着空間100a2に装着されている下流側チューブ201bを押圧し、下流側チューブ201b内の流路の閉塞量を調整することにより、点滴流量を調整する。
【0043】
より具体的には、
図2に示すように、本実施形態の閉塞調整部3は、押圧部材20と、可動機構21と、電動モータ22と、制御部23と、を備える。
【0044】
押圧部材20は、第2装着空間100a2に装着されている下流側チューブ201bを押圧可能に構成されている。押圧部材20は、後述する可動機構21により、第2装着空間100a2に装着されている下流側チューブ201bに近づく近接方向、及び、遠ざかる離間方向、に移動可能に構成されている。押圧部材20は、近接方向に移動することで、第2装着空間100a2に装着されている下流側チューブ201bを押圧し、下流側チューブ201bを径方向に圧縮して、下流側チューブ201b内の流路の閉塞度合いを高めることができる。逆に、押圧部材20は、離間方向に移動することで、第2装着空間100a2に装着されている下流側チューブ201bを押圧状態から解放し、下流側チューブ201b内の流路の閉塞度合いを緩めることができる。このように、本実施形態の閉塞調整部3は、押圧部材20を近接方向及び離間方向に移動させ、下流側チューブ201bの閉塞量を調整できる。
【0045】
可動機構21は、後述する電動モータ22により駆動され、押圧部材20を近接方向及び離間方向に移動可能に構成されている。可動機構21は、例えば、電動モータ22の動力を伝達する歯車機構と、この歯車機構により回動し、押圧部材20の位置を変動させるカムと、を備えてよい。但し、可動機構21は、電動モータ22により駆動され、押圧部材20を近接方向及び離間方向に移動させることが可能な構成であれば特に限定されない。したがって、可動機構21は、例えば、リンク機構、ラック・ピニオン、送りねじ機構等により構成されていてもよい。
【0046】
電動モータ22は、可動機構21を駆動可能に構成されている。電動モータ22は、例えば出力軸を備え、この出力軸を回転させることにより、可動機構21を駆動する。
【0047】
制御部23は、押圧部材20による、第2装着空間100a2に装着されている下流側チューブ201bの閉塞量を制御する。制御部23は、例えば、液滴検出部2の検出情報に基づき電動モータ22の駆動を制御することにより、押圧部材20による、第2装着空間100a2に装着されている下流側チューブ201bの閉塞量を制御してよい。制御部23は、例えば、液滴検出部2の制御部12が算出した流量と、点滴流量制御装置100において予め設定されている設定流量とが合致しない場合に、これらが合致するように押圧部材20による下流側チューブ201bの閉塞量を制御してよい。また、制御部23は、例えば、液滴検出部2の制御部12が、点滴筒200の内部を落下する液体が液滴状態ではなく、連なって落下し続ける液柱状態と判定した場合に、下流側チューブ201bを押圧部材20により完全に閉塞するように、押圧部材20による下流側チューブ201bの閉塞量を制御してもよい。
【0048】
制御部23は、少なくとも1つのプロセッサを含んで構成される。制御部23は、制御手順を規定したプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)等の汎用プロセッサ又は各機能の処理に特化した専用のプロセッサで構成される。このようなプログラムは、点滴流量制御装置100の内部又は外部の記憶部に記憶されていてよい。また、本実施形態では、液滴検出部2及び閉塞調整部3が別々の制御部(制御部12及び23)を備える構成としているが、この構成に限られない。液滴検出部2及び閉塞調整部3が共通の制御部を備える構成であってもよい。
【0049】
電池4は、点滴流量制御装置100の各部に電力を供給可能に構成されている。
【0050】
筐体5は、点滴流量制御装置100の外装部材である。本実施形態の点滴流量制御装置100の装着空間100aは、筐体5により区画されている。
【0051】
具体的に、本実施形態の筐体5は、略直方体状の外形を有している。本実施形態の筐体5の外面には、略直線状に延在する溝部5aが形成されている。そして、本実施形態の装着空間100aは、筐体5の溝部5aにより構成されている。
【0052】
上述した本実施形態の液滴検出部2の発光部10、受光部11及び制御部12は、筐体5内に収容されている。発光部10及び受光部11は、筐体5の溝部5aの溝幅方向に対抗して配置されている。発光部10から発光される照射光は、溝部5aの一方の溝壁を通じて、溝部5a内の装着空間100aに装着される点滴筒200に向かって照射される。そして、この照射光が点滴筒200の内部で落下する液体により吸収及び/又は屈折されて生じる、減衰された透過光は、溝部5aの他方の溝壁を通じて受光部11により受光される。
【0053】
また、溝部5aは、点滴筒200を挟持する挟持部5a1を備える。本実施形態の挟持部5a1は、溝壁から突出する凸部により構成され、溝部5aに収容された点滴筒200の周壁部213を挟持可能に構成されている。本開示において、「点滴筒が装着空間に装着されている状態」とは、点滴筒が、点滴流量制御装置の装着空間において適切に保持されている状態を意味する。そして、本実施形態では、点滴筒200の周壁部213が、筐体5の溝部5aの挟持部5a1としての凸部により挟持されている状態を意味している。
【0054】
また、本実施形態の溝部5aは、点滴筒200の滴下部211に設けられるフランジ部を収容可能な収容部5a2としての凹部を備える。そして、この収容部5a2としての凹部は、点滴筒200の周壁部213が、筐体5の溝部5aの挟持部5a1としての凸部により挟持されている状態で、点滴筒200の滴下部211に設けられるフランジ部を収容可能に構成されている。このように、点滴流量制御装置100は、点滴筒200が装着空間100aにおいて適切に保持されるために、複数の位置決め部(本実施形態では挟持部5a1及び収容部5a2)を備えてもよい。
【0055】
更に、上述した本実施形態の閉塞調整部3の押圧部材20、可動機構21、電動モータ22及び制御部23は、筐体5内に収容されている。押圧部材20の一部は、溝部5aの溝壁の開口から、溝部5aにより区画される装着空間100aの第2装着空間100a2に向かって突出可能である。これにより、押圧部材20は、第2装着空間100a2に収容される下流側チューブ201bに対して近接方向及び離間方向に移動でき、下流側チューブ201bとの接触状態、すなわち下流側チューブ201bの閉塞量、を調整できる。
【0056】
また、電池4についても筐体5内に収容されている。
【0057】
ここで、本実施形態では、鉛直姿勢(
図3、
図4参照)の点滴流量制御装置100において、閉塞調整部3の電動モータ22及び電池4は、液滴検出部2の発光部10及び受光部11よりも、鉛直方向Bの下方に位置している。点滴流量制御装置100の全重量において、電動モータ22及び電池4の重量が占める割合は大きい。そのため、鉛直姿勢(
図3、
図4参照)の点滴流量制御装置100において、電動モータ22及び電池4が、点滴筒200が保持される鉛直方向Bの位置に配置される、液滴検出部2の発光部10及び受光部11より、鉛直方向Bの下方に配置されることが好ましい。このようにすることで、鉛直姿勢(
図3、
図4参照)の点滴流量制御装置100において、点滴流量制御装置100の装置重心G1が、液滴検出部2の発光部10及び受光部11より、鉛直方向Bの下方に位置し易くなる。これにより、点滴流量制御装置100が吊り下げ使用(
図5参照)されても、点滴流量制御装置100が鉛直方向Bに対して傾斜することが、より抑制される。その結果、点滴流量制御装置100が吊り下げ使用されても、点滴筒200の中心軸方向Aが鉛直方向Bに沿うように、より維持され易くなる。
【0058】
本実施形態の点滴流量制御装置100は、上述した液滴検出部2、閉塞調整部3、電池4及び筐体5を備える構成であるが、この構成に限られない。点滴流量制御装置100は、例えば、装着空間100aの第2装着空間100a2に下流側チューブ201bが装着されている状態か否かを検出可能なセット検知部を更に備えてもよい。セット検知部としては、例えば、溝部5aに設けられた超音波センサであってよい。また、点滴流量制御装置100は、例えば後述する接続部(
図6参照)等、他の構成を更に備えてもよい。
【0059】
次に、本実施形態の点滴流量制御装置100の装置重心G1、及び、本実施形態の点滴流量制御装置100の電動モータ22及び電池4のみから算出される部品重心G2、の詳細について説明する。
【0060】
上述したように、点滴流量制御装置100は、鉛直姿勢(
図3、
図4参照)において、装置重心G1を通過する第1鉛直線L1が、点滴筒200を通過するように構成されている。より具体的に、本実施形態の第1鉛直線L1は、鉛直姿勢(
図3、
図4参照)において、点滴筒200の滴下室内である周壁部213内を通過する。このようにすることで、点滴流量制御装置100は、吊り下げ使用(
図5参照)されても、鉛直方向Bに対して傾斜し難い。そのため、点滴筒200の鉛直方向Bに対する傾斜を抑制でき、点滴筒200の内部を落下する液体の検出精度の低下を抑制できる。
【0061】
更に、点滴流量制御装置100は、鉛直姿勢(
図3、
図4参照)において、装置重心G1を通過する第1鉛直線L1が、点滴筒200の中心軸線Oと一致するように構成されていることが好ましい。このようにすることで、点滴筒200の鉛直方向Bに対する傾斜を、より抑制できる。
【0062】
また、上述したように、本実施形態の装置重心G1は、鉛直姿勢(
図3、
図4参照)において、液滴検出部2の発光部10及び受光部11より鉛直方向Bの下方に位置する。このようにすることで、点滴筒200の鉛直方向Bに対する傾斜を、より抑制できる。
【0063】
更に、装置重心G1は、鉛直姿勢(
図3、
図4参照)において、点滴筒200の滴下室内に貯留される貯留液体214の水面より鉛直方向Bの下方に位置することが好ましい。点滴筒200の滴下室内に貯留される貯留液体214の水面は、通常、滴下室の1/3~1/2の高さとなるように設定される。したがって、装置重心G1は、鉛直姿勢(
図3、
図4参照)において、滴下室の1/2の高さとなる位置P1より鉛直方向Bの下方に位置することが好ましく、滴下室の1/3の高さとなる位置P2より鉛直方向Bの下方に位置することが、より好ましい。
【0064】
また更に、
図3、
図4に示すように、本実施形態の装置重心G1は、鉛直姿勢において、点滴流量制御装置100の最大高さH1の中間位置M1より鉛直方向Bの下方に位置する。このようにすることで、点滴筒200の鉛直方向Bに対する傾斜を、より抑制できる。
【0065】
また、鉛直姿勢で溝部5aの開口側から見た点滴流量制御装置100の正面視(
図3参照)において、本実施形態の装置重心G1は、点滴流量制御装置100の最大幅W1の中間位置M2から、点滴流量制御装置100の幅方向Cにおいて、最大幅W1の15%以下の範囲に位置することが好ましく、10%以下の範囲に位置することが、より好ましい。そのため、本実施形態のように、点滴流量制御装置100が、全重量に対する重量割合が大きい電動モータ22及び電池4を備える場合は、電動モータ22及び電池4は、正面視(
図3参照)において、溝部5aを挟む位置に配置されていることが好ましい。このようにすることで、装置重心G1が、上記範囲に配置され易くなる。
【0066】
特に、本実施形態のように、点滴流量制御装置100が、全重量に対する重量割合が大きい電動モータ22及び電池4を備える場合は、電動モータ22及び電池4は、点滴流量制御装置100の鉛直姿勢(
図3、
図4参照)において、電動モータ22の質量及び重心、並びに、電池4の質量及び重心、のみから算出される部品重心G2を通過する第2鉛直線L2が、点滴筒200を通過するように配置されていることが好ましい。このようにすることで、点滴流量制御装置100は、鉛直姿勢で装置重心G1を通過する第1鉛直線L1が点滴筒200を通過するように構成され易くなる。
図3、
図4に示すように、本実施形態の第2鉛直線L2は、点滴筒200の滴下室内である周壁部213内を通過している。
【0067】
本開示に係る点滴流量制御装置は、上述した実施形態に示す具体的な構成に限られず、特許請求の範囲の記載を逸脱しない限り、種々の変形・変更・組み合わせが可能である。
図6は、
図5と同様、点滴ライン300を構成する点滴筒200及び下流側チューブ201bに対して点滴流量制御装置100を装着した、点滴流量制御装置100の使用状態を示す図である。
図6に示すように、点滴流量制御装置100は、例えば、点滴筒200の上流側に連なる薬液容器301に接続可能な接続部6を更に備えてもよい。接続部6は、例えば、筐体5に一端部が連結され、薬液容器301に他端部が連結される、可撓性を有する線状部材であってよい。接続部6としての線状部材の数、位置及び長さは、例えば、点滴流量制御装置100が吊り下げ使用されている状態で、点滴流量制御装置100を鉛直姿勢に維持するように、設定されていてよい。また、接続部6としての線状部材は、その長さが調整可能に構成されていてもよい。
【0068】
また、
図5、
図6では、点滴流量制御装置100が吊り下げ使用されている状態を示しているが、点滴流量制御装置100は、例えば、点滴スタンド等の支持部材に取り付け可能に構成されていてもよい。つまり、点滴流量制御装置100は、吊り下げ使用に限られず、点滴スタンド等の支持部材に取り付けられて使用されてもよい。かかる場合に、点滴流量制御装置100は、点滴スタンド等の支持部材に対して取り付け可能なクリップ等の取り付け部を更に備えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本開示は点滴流量制御装置に関する。
【符号の説明】
【0070】
2:液滴検出部
3:閉塞調整部
4:電池
5:筐体
5a:溝部
5a1:挟持部
5a2:収容部
6:接続部
10:発光部
11:受光部
12:制御部
20:押圧部材
21:可動機構
22:電動モータ
23:制御部
100:点滴流量制御装置
100a:装着空間
100a1:第1装着空間
100a2:第2装着空間
200:点滴筒
201:医療用チューブ
201a:上流側チューブ
201b:下流側チューブ
211:滴下部
212:排出部
213:周壁部
214:貯留液体
300:点滴ライン
301:薬液容器
302:留置針
303:係留部材
304:建築要素
A:点滴筒の中心軸方向
B:鉛直方向
C:点滴流量制御装置の正面視での幅方向
H1:鉛直姿勢の点滴流量制御装置の最大高さ
L1:第1鉛直線
L2:第2鉛直線
M1:鉛直姿勢の点滴流量制御装置の最大高さの中間位置
M2:鉛直姿勢の点滴流量制御装置の正面視での最大幅の中間位置
O:点滴筒の中心軸線
P1:点滴筒の滴下室の1/2の高さとなる位置
P2:点滴筒の滴下室の1/3の高さとなる位置
W1:鉛直姿勢の点滴流量制御装置の正面視での最大幅