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  • 特開-植物体洗浄方法および門型噴霧機 図1
  • 特開-植物体洗浄方法および門型噴霧機 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061042
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】植物体洗浄方法および門型噴霧機
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20240425BHJP
   A01G 22/05 20180101ALI20240425BHJP
【FI】
A01G7/00 604Z
A01G22/05 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168705
(22)【出願日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】520373729
【氏名又は名称】KS.EP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】倉本 泰志
【テーマコード(参考)】
2B022
【Fターム(参考)】
2B022AA01
2B022AB15
2B022DA19
(57)【要約】
【課題】葉の生い茂った時期においても茂みの中に隠れた葉の裏側、茎、株元に、洗浄液の噴霧気流を十分に接触させることのできる植物体洗浄用の門型噴霧機を提供すること。
【解決手段】植物洗浄用の牽引式の門型噴霧機1には、イチゴ61等の植物体の列62を跨ぐ状態で当該列62に沿って移動する門型枠体2に、イチゴ61等の植物体の株元に液体を散布するための株元噴霧ノズル41が搭載され、株元噴霧ノズル41の上下あるいは左右方向の位置を調整できるようになっている。イチゴ61等の植物体の株元、葉の茂みに隠された葉の表裏、茎等に対して、十分な量の洗浄液を確実に散布できるので、効率よくイチゴ61等の植物体の各部分の洗浄、消毒等を行うことが可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
門型噴霧機を用いて列状に植えられている植物体の洗浄を行う植物体洗浄方法であって、
前記門型噴霧機は、
天井壁、左側壁、右側壁、ならびに前記左側壁および前記右側壁の下端にそれぞれ取り付けた車輪を備え、前後方向および下方に開口した自立式の門型枠体と、
前記左側壁に取り付けた左噴霧ノズルおよび前記右側壁に取り付けた右噴霧ノズルと、
前記門型枠体に取り付けた株元噴霧ノズルと、
を備え、
前記天井壁、前記左側壁および前記右側壁によって三方が囲まれた枠体内部空間において、前記左噴霧ノズルおよび前記右噴霧ノズルのそれぞれの噴口から噴射される洗浄液の噴霧が渦巻流を形成するように、前記左噴霧ノズルおよび前記右噴霧ノズルの噴口の位置および向きが設定されており、
前記植物体の洗浄作業においては、
前記門型噴霧機を洗浄対象の植物体の列を跨ぐ状態に配置し、前記門型枠体の前記枠体内部空間に位置する植物体の株元に洗浄液の噴霧が当たるように、前記株元噴霧ノズルの噴口の位置あるいは向きを設定し、
前記門型噴霧機を、前記植物体の列に沿って移動させながら、前記左噴霧ノズル、前記右噴霧ノズルおよび前記株元噴霧ノズルから洗浄液を噴射して、前記枠体内部空間に位置する前記植物体の洗浄を行うことを特徴とする門型噴霧機を用いた植物体洗浄方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記門型枠体に取り付けたノズル支持機構によって、前記株元噴霧ノズルの上下方向の位置、あるいは左右方向の位置を調整できるように、前記株元噴霧ノズルを支持させておき、
前記植物体の洗浄作業においては、前記株元噴霧ノズルの高さ位置あるいは左右方向の位置を調整することで、前記株元噴霧ノズルの噴口の位置を設定する植物体洗浄方法。
【請求項3】
請求項1において、
前記門型枠体に取り付けたノズル支持機構によって、洗浄対象の植物体の培地あるいは栽培用のベンチの上面に沿って上下動するように、前記株元噴霧ノズルを支持させておき、
前記門型噴霧機の移動中における前記株元噴霧ノズルの噴口の高さ位置を、前記枠体内部空間に位置する植物体の株元の高さ位置に維持する門型噴霧機を用いた植物体洗浄方法。
【請求項4】
請求項3において、
前記ノズル支持機構に、洗浄対象の植物体の培地あるいは栽培用のベンチの上面に沿って転動する転動体を配置し、
前記株元噴霧ノズルを、その噴口が前記転動体の半径方向の外方を向むように前記転動体に取付け、
前記植物体の洗浄作業においては、前記株元噴霧ノズルの噴口が少なくとも上方を向く状態において、当該株元噴霧ノズルの噴口から洗浄液を噴射する門型噴霧機を用いた植物体洗浄方法。
【請求項5】
請求項1に記載の植物体洗浄方法に用いる門型噴霧機であって、
天井壁、左側壁、右側壁、ならびに前記左側壁および前記右側壁の下端にそれぞれ取り付けた車輪を備え、前後方向および下方に開口した自立式の門型枠体と、
前記門型枠体の前記左側壁に取り付けた左噴霧ノズルおよび前記右側壁に取り付けた右噴霧ノズルと、
前記門型枠体に取り付けたノズル支持機構と、
前記ノズル支持機構によって支持された株元噴霧ノズルと、
を備えており、
前記天井壁、前記左側壁および前記右側壁によって三方が囲まれた枠内空間において、前記左噴霧ノズルおよび前記右噴霧ノズルのそれぞれの噴口から噴射される洗浄液の噴霧が渦巻流を形成するように、前記左噴霧ノズルおよび前記右噴霧ノズルの噴口の位置および向きが設定されており、
前記ノズル支持機構は、前記門型枠体の前記枠体内部空間に位置する洗浄対象の植物体の株元に洗浄液の噴霧が当たるように、前記株元噴霧ノズルの噴口の位置あるいは向きを設定可能であることを特徴とする門型噴霧機。
【請求項6】
請求項5において、
前記ノズル支持機構は、撓み性の洗浄液供給用ホースと、ホース接続管とを備えており、
前記ホース接続管は、前記門型枠体に取り付けられており、
前記洗浄液供給用ホースは、そのホース上端が前記ホース接続管に接続され、当該ホース接続管から前記門型枠体の下方および後方に向けて湾曲した状態で垂れ下がり、そのホース下端に前記株元噴霧ノズルが接続されている門型噴霧機。
【請求項7】
請求項6において、
長さの異なる前記洗浄液供給用ホースを備えており、
前記洗浄液供給用ホースの一つが選択的に前記ホース接続管と前記株元噴霧ノズルの間に接続される門型噴霧機。
【請求項8】
請求項6において、
前記ノズル支持機構は、
前記門型枠体に対して左右方向に水平に取り付けた横架材と、
前記横架材に対して、前記左右方向にスライド可能に取り付けたスライド金具と、
前記スライド金具を前記横架材に固定するクランプ金具と、
を備えており、
前記ホース接続管は、前記スライド金具に搭載されている門型噴霧機。
【請求項9】
請求項5において、
前記ノズル支持機構は、
左右方向に水平な中心軸線を中心として転動可能な転動体と、
前記転動体を前記中心軸線回りに転動自在に支持し、前記転動体の中心を前記中心軸線の方向に延びる接続配管と、
前記接続配管を上下方向に揺動可能な状態で前記門型枠体に取り付けている配管支持部材と、
前記接続配管の一端に接続した洗浄液供給用のホースと、
前記接続配管の他端に取り付けた切換弁機構と、
を備えており、
前記株元噴霧ノズルは、その噴口が、前記転動体の前記中心軸線を中心とする半径方向の外方を向くように、当該転動体に取り付けられており、
前記株元噴霧ノズルの後端は、前記切換弁機構を介して前記接続配管に接続されており、
前記切換弁機構は、
前記株元噴霧ノズルの噴口が真上を向く位置から、前記転動体の転動方向の前後に所定の角度だけ倒れた位置までの角度範囲においては、前記接続配管と前記株元噴霧ノズルとの間を連通状態にし、それ以外の角度範囲では前記連通状態を遮断する門型噴霧機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、イチゴ等の植物体の生産における病害虫対応のための洗浄機として用いるのに適した門型噴霧機および当該門型噴霧機を用いた植物体洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、特許文献1において、洗浄農法によるイチゴ等の農作物の栽培方法を提案している。洗浄農法は、農作物の生育に合わせて、換言すると、農作物の周辺の菌密度、付着した菌が農作物を侵食するのに要する時間などに応じて、定期洗浄の頻度を管理して、農作物の病気感染を防止するものである。農薬による消毒工程に代えて、農作物の生育に合わせた定期洗浄工程管理を行うことで病気感染を防止できる。
【0003】
洗浄農法においては頻繁に農作物の洗浄が行われるので、効率よく農作物の洗浄を行うことのできる洗浄機が必要とされる。木本性植物とは異なり、草本性植物、例えば、イチゴの場合には、一般的な噴霧機から噴射される液体の噴霧気流の風圧によって、葉や茎が噴霧気流に流されて葉裏に霧が良くかからない。このため、効率良くイチゴ等の農作物を洗浄できない。本発明者は、特許文献2において、高設栽培あるいは土耕栽培されるイチゴ等の農作物に対して農薬、肥料、その他の液体を散布するのに適した門形対流噴霧機を提案している。
【0004】
この噴霧機では、車輪付きの自立式の門型構造の本体を、イチゴ等の農作物の列を跨ぐ状態で当該列に沿って移動させながら、その門型構造の枠体内部空間に噴霧気流を渦巻き状に形成することで、枠体内部空間に位置する農作物の葉裏等にも液体が良くかかるようにしている。同時に、門型構造の本体の天面の中央上部から下方に向けて噴霧するようにしている。この門型構造の噴霧機を用いることで、薬液等の散布液体の使用量を1/3程度に減らすことができ、作業効率も上がり、生産性が向上する等の効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5866147号公報
【特許文献2】特許第3864935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、イチゴ等の株は成長に伴って大きく繁茂して葉の茂みが形成される。葉が茂るにつれて、噴霧機から噴射される散布液体の噴霧は、葉の茂みの中に入り難くなり、茂み内の各葉の表裏、葉によって覆い隠されている茎、株元などの洗浄、消毒を確実に行うことが困難になる。
【0007】
本発明の目的は、葉の生い茂った時期においても茂みの中に隠れた葉の裏側、茎、株元に、洗浄液の噴霧気流を十分に接触させることのできる門型噴霧機、および当該門型噴霧機を用いた植物体洗浄方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、
門型噴霧機を用いて列状に植えられている植物体の洗浄を行う植物体洗浄方法であって、
前記門型噴霧機は、
天井壁、左側壁、右側壁、ならびに前記左側壁および前記右側壁の下端にそれぞれ取り付けた車輪を備え、前後方向および下方に開口した自立式の門型枠体と、
前記門型枠体の前記左側壁に取り付けた左噴霧ノズルおよび前記右側壁に取り付けた右噴霧ノズルと、
前記門型枠体に取り付けた株元噴霧ノズルと、
を備え、
前記天井壁、前記左側壁および前記右側壁によって三方が囲まれた枠体内部空間において、前記左噴霧ノズルおよび前記右噴霧ノズルのそれぞれの噴口から噴射される洗浄液の噴霧が渦巻流を形成するように、前記左噴霧ノズルおよび前記右噴霧ノズルの噴口の位置および向きが設定されており、
前記植物体の洗浄作業においては、
前記門型噴霧機を洗浄対象の植物体の列を跨ぐ状態に配置し、前記門型枠体の前記枠体内部に位置する植物体の株元に対して、直接に洗浄液の噴霧が当たるように、前記株元噴霧ノズルの噴口の位置あるいは向きを設定し、
前記門型噴霧機を、前記植物体の列に沿って移動させながら、前記左噴霧ノズル、前記右噴霧ノズルおよび前記株元噴霧ノズルから洗浄液を噴射して、前記枠体内部空間に位置する前記植物体の洗浄を行うことを特徴としている。
【0009】
また、本発明は、
上記の植物体洗浄方法に用いる門型噴霧機であって、
天井壁、左側壁、右側壁、ならびに、これら左側壁および右側壁の下端に取り付けた車輪を備え、前後方向および下方に開口した自立式の門型枠体と、
前記左側壁に取り付けた左噴霧ノズルおよび前記右側壁に取り付けた右噴霧ノズルと、
前記門型枠体に取り付けたノズル支持機構と、
前記ノズル支持機構によって支持された株元噴霧ノズルと、
を備えており、
前記天井壁、前記左側壁および前記右側壁によって三方が囲まれた枠内空間において、前記左噴霧ノズルおよび前記右噴霧ノズルのそれぞれの噴口から噴射される洗浄液の噴霧が渦巻流を形成するように、前記左噴霧ノズルおよび前記右噴霧ノズルの噴口の位置および向きが設定されており、
前記ノズル支持機構は、前記門型枠体の前記枠体内部空間に位置する洗浄対象の植物体の株元に対して、直接に洗浄液の噴霧が当たるように、前記株元噴霧ノズルの噴口の位置あるいは向きを設定可能であることを特徴としている。
【0010】
ここで、本発明において、「洗浄液」とは、洗浄水に限定されるものではなく、液体肥料、殺虫液、消毒液などの各種の薬液を含む広い意味で用いている。
【0011】
植物体の洗浄作業においては、門型噴霧機の門型枠体を、散布対象の植物体の列を跨ぐ状態に配置し、ノズル支持機構によって支持されている株元噴霧ノズルの上下方向あるいは左右方向の位置を調整して、植物体の株元あるいは葉の茂みの中に、当該株元噴霧ノズルの噴口が位置するように設定する。植物体の列を跨ぐ状態に設置されている門型噴霧機を、作業員が牽引する等して、植物体の列に沿って移動させながら、門型枠体の左噴霧ノズル、右噴霧ノズルの噴口から洗浄液を噴射して噴霧の渦巻流を形成して植物体を洗浄する。同時に、植物体の株元あるいは葉の茂みの中に差し込まれた状態で移動する株元噴霧ノズルの噴口から洗浄液を噴射して、植物体を株元の側から洗浄する。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、植物体の列を跨ぐ状態で当該列に沿って移動する門型噴霧機に、植物体の株元に洗浄液を散布するための株元噴霧ノズルを搭載し、この株元噴霧ノズルの上下あるいは左右方向の位置を調整できるようにしている。本発明によれば、葉の茂った時期においても、植物体の株元、葉の茂みに隠された葉の表裏、茎等に対して、十分な量の洗浄液を確実に接触させることができ、効率よく植物体の各部分の洗浄、消毒等を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(A)は植物体洗浄方法に用いる牽引式の門型噴霧機の一例を示す概略正面図、(B)はそのB-B線で切断した場合の概略縦断面図、(C)はそのC-C線で切断した場合の概略横断面図である。
図2】(A)は株元噴口ノズルを支持するノズル支持機構の別の例を示す説明図、(B)はノズル支持機構における株元噴霧ノズルが取り付けられた転動体の部分を示す説明図、(C)および(D)は転動体の転動に伴って株元噴霧ノズルから洗浄液が噴射される角度範囲の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下に述べる実施の形態は本発明の門型噴霧機および植物体洗浄方法の一例を示すものであり、本発明を実施の形態の構成に限定することを意図したものではない。
【0015】
図1(A)、(B)、(C)には、植物体洗浄方法に用いる牽引式の門型噴霧機の一例を示してある。これらの図においては、園芸ハウス内において高設ベンチ栽培されるイチゴの洗浄に使用した状態を示してある。牽引式の門型噴霧機1は、自立式の門型枠体2を備えており、門型枠体2は、天井壁3、左側壁4および右側壁5から構成される。門型枠体2は、金属製のパイプ、板材によって枠体骨組みが形成され、枠体骨組みにプラスチック板などのパネルを張り付けた構成とされ、前後および下方に開口している。門型枠体2の内側には、天面および左右の側面の三方が囲まれた枠体内部空間Sが形成される。
【0016】
門型枠体2の天井壁3の後端縁には、柔軟性のあるプラスチックシート等のシートからなる巻上式の後方覆い6が取り付けられている。後方覆い6を垂らすことで門型枠体2の後方側の上側部分を覆うことができる。例えば、洗浄対象のイチゴの生長度合、繁茂の状態等に応じて、後方覆い6の垂れ下がり長さを調節して、洗浄液の噴霧時に、その下端縁をイチゴの上端付近に接触するように垂らすことで、後方への洗浄液の飛散を防ぐことができる。なお、後方覆い6を用いずに噴霧を行うこともでき、後方覆い6を省略することもできる。
【0017】
門型枠体2の左側壁4の下端には、前車輪7および後車輪8が転動自在に取り付けられ、右側壁5の下端には、前後方向の中央に、単一の車輪9が転動自在に取り付けられている。これら3つの車輪7、8、9によって、門型枠体2は移動可能な自立式の枠体となっている。本例では、門型枠体2を牽引式とするために、牽引棒10が、左側壁4の中央より下寄りの位置に取り付けられている。牽引棒10は、左側壁4の外側面に沿って門型枠体2から前方に水平に突出している。
【0018】
門型枠体2において、左側壁4および右側壁5の内側の側面には、それぞれ、複数個の噴霧ノズルが取り付けられている。図1(A)、(C)から分かるように、左側壁4においては、その前側縁近くの位置において、等間隔で上下方向の異なる高さ位置に3個の噴霧ノズル11、12、13が取り付けられている。右側壁5では、その前後方向のほぼ中央の位置において、等間隔で上下方向の異なる高さ位置に3個の噴霧ノズル21、22、23が取り付けられている。左側の噴霧ノズル11の噴口と右側の噴霧ノズル21の噴口とは同一高さ位置にあり、同様に、噴霧ノズル12と22は同一高さ位置にあり、噴霧ノズル13と23は同一の高さ位置にある。また、門型枠体2の天井壁3の下面には、その前後方向および左右方向の中央に、1個の噴霧ノズル31が取り付けられている。
【0019】
左側の3個の噴霧ノズル11~13の噴口の向き(噴射方向)は、後向き内方の水平方向とされている。右側の3個の噴霧ノズル21~23の噴口の向きも、後向き内方の水平方向とされている。同一高さ位置にある左右の一対の噴霧ノズル11と21;12と22;13と23のそれぞれの噴口から洗浄液を同時に噴射すると、門型枠体2の枠体内部空間Sにおいて、図1(C)に矢印で示すように、噴霧の渦巻流が形成される。なお、噴霧ノズル11~13、21~23の取付け高さ、噴口の向きは、枠体内部空間Sにおいて噴霧の渦巻流が形成されればよく、本例の配置関係、向きに限定されるものではない。また、天井壁3の噴霧ノズル31の噴口の向き(噴射方向)は、後向き下方向とされている。各噴霧ノズル11~13、21~23、31には、外部より、ホース(図示せず)を通じて、散布用の洗浄液が圧送される。
【0020】
門型枠体2には、更に、株元噴霧ノズル41が取り付けられている。門型枠体2の天井壁3の下面には、噴霧ノズル31よりも前側の位置において左右方向に架け渡した横架材51が水平に取り付けられている。横架材51にはスライド式のクランプ金具52が取り付けられている。クランプ金具52は、横架材51に沿って左右方向にスライド可能であり、所定の位置において横架材51に固定可能である。クランプ金具52には、ホース継手管53が取り付けられている。ホース継手管53の一端には、内側ホース54の上端が連結されている。内側ホース54は、ホース継手管53から、下側後方に向かって垂れ下がっている。内側ホース54はゴム製等の撓み可能な素材からなるホースであり、その下端に、株元噴霧ノズル41が接続されている。本例では、横架材51、クランプ金具52、ホース継手管53および内側ホース54によって、門型枠体2に対する株元噴霧ノズル41の左右方向の位置を変更可能で、高設栽培用のベンチ60の上面に沿って株元噴霧ノズル41をスライドさせることのできる倣い機能を備えたノズル支持機構が構成されている。なお、ホース継手管53の他方の端には、外部の散布用液体の供給源(図示せず)から散布用液体を供給する外部側ホース55が接続される。
【0021】
門型噴霧機1を用いて、高設栽培されているイチゴに洗浄液を散布する作業においては、まず、高設栽培用のベンチ60の列端から、その列方向に門型噴霧機1を移動させて、門型枠体2がベンチ60(したがって、ベンチ60で栽培されているイチゴ61の列62)を跨ぎ、その両側において、床上に左右の車輪7~9が位置するようにする。後方覆い6を、その下端がイチゴ61の上端付近に接触するように垂らし、イチゴ61の列62を、上、左右および後方の四方向から覆う状態を形成する。また、株元噴霧ノズル41が、イチゴ61の列62において、ベンチ60の培地の上面に載った状態が形成されるように、内側ホース54の左右方向の位置を調整する。また、内側ホース54の長さが短かすぎる場合、長すぎる場合には、適切な長さのものに交換することで、株元噴霧ノズル41が適切な高さ位置となるように調整できる。
【0022】
洗浄対象のイチゴ61に対して適切な高さ位置にある左右の噴霧ノズル、例えば、中程の高さ位置にある左右の噴霧ノズル12、22と、天井壁3にある噴霧ノズル31を開く。前方および下方を除き、四方向が囲まれた門型枠体2の枠体内部空間Sにおいて、左右の噴霧ノズル12、22の噴口から、主たる噴射方向がいずれも後側内向きで洗浄液が噴射されて、渦巻状の噴霧流が形成される。また、天井壁3の噴霧ノズル31の噴口から下方の後方に向けて洗浄液が噴射される。さらに、ベンチ培地に載った状態の株元噴霧ノズル41から洗浄液が噴射される。株元噴霧ノズル41の噴口の向き、噴霧形態は、例えば、後向きで、扇形状とされる。
【0023】
この状態で門型噴霧機1をベンチ60に沿って牽引することで、イチゴ61の洗浄が行われる。左右の噴霧ノズル12、22の噴口から噴射された洗浄液の噴霧により渦巻状の流れが形成され、外周側及びその内側に位置するイチゴの葉の裏面まで十分に洗浄液が行き渡る。また、ベンチ60の培地に載った状態に配置される株元噴霧ノズル41は、内側ホース54が撓むことで、培地の表面に倣って上下に移動しながらスライドする。株元噴霧ノズル41の噴口から後方および上方に噴射される洗浄液の噴霧が、直接に、イチゴ61の苗における茂った葉を、内側および下側から吹き付けられる。これにより、茂みの内部に隠れた葉の裏面、茎、株元に対して十分な量の洗浄液を確実に噴射できる。
【0024】
(その他の実施の形態)
上記の例では、撓み性のある内側ホース54の先に株元噴霧ノズル41を取り付けることで、ベンチ培地の表面あるいは、ベンチ構造体の表面の高さ位置を株元噴霧ノズル41の噴口が移動するようにしている。門型噴霧機1を、土耕栽培されるイチゴ等の植物体の列に沿って移動させることで、植物体の洗浄、消毒等を行うこともできる。この場合にも、培地の凹凸に倣って株元噴霧ノズル41の噴口を上下方向に移動させながら液体散布を行うためには、培地の表面に倣って移動する戸車、キャスタ等の付いた倣い機能を備えたノズル支持機構によって株元噴霧ノズル41を支持すればよい。
【0025】
株元噴霧ノズル41の噴口は、例えば、円筒状のノズル本体の先端面に形成されてノズル軸方向に開口するもの、円筒状のノズル本体の外周面に形成されてノズル半径方向に開口するものなどを用いることができる。また、噴口からの噴霧形態としては、所定の広がり角度で扇状あるいは円錐状の噴霧を形成するものを用いることができる。噴口の数は、単数あるいは複数のものを用いることができる。洗浄対象の植物体に応じて、各種の噴霧形態を採用できる。
【0026】
また、ノズル支持機構によって牽引されるロータリ式の株元噴霧ノズルを用いることもできる。例えば、図2(A)に示すように、門型噴霧機1の移動に伴って、栽培用のベンチ60の構造体の上面あるいは培地の表面に沿って転動する円盤状の転動体71を備えた倣い機構70(配管支持機構)を門型枠体2に取り付ける。転動体71には、図2(B)、(C)に示すように、株元噴霧ノズル41の先端の噴口が、転動体71の中心軸線72を中心として半径方向の外方を向くように、転動体71に取り付けておく。
【0027】
株元噴霧ノズル41の後端を、転動体71を、中心軸線72を中心として転動自在に支持している接続配管73に対して、直交する状態に接続する。接続配管73と株元噴霧ノズル41の接続部には、株元噴霧ノズル41が真上を向く姿勢から前後に所定の角度だけ倒れた状態まで、例えば、図2(C)、(D)に示すように、前後に水平になるまでの180°の回転角度範囲θにおいて、接続配管73と株元噴霧ノズル41との間を連通状態にし、それ以外の噴口が下方を向く回転角度範囲では双方の間の連通を遮断する切換弁機構74が組み込まれている。接続配管73には、洗浄液供給用の内側ホース54の下端が接続される。転動体71に取り付けた株元噴霧ノズル41は、噴口が、ベンチ60の培地側を向く下向き状態では洗浄液を噴射せず、上向き状態においてのみ噴霧動作を行う。この構成のノズル支持機構によって支持された株元噴霧ノズル41を用いることもできる。
【符号の説明】
【0028】
1 門型噴霧機
2 門型枠体
3 天井壁
4 左側壁
5 右側壁
6 後方覆い
7 前車輪
8 後車輪
9 車輪
10 牽引棒
11,12,13 噴霧ノズル
21,22,23 噴霧ノズル
31 噴霧ノズル
41 株元噴霧ノズル
51 横架材
52 クランプ金具
53 ホース継手管
54 内側ホース
55 外部側ホース
60 ベンチ
61 イチゴ
62 列
70 倣い機構
71 転動体
72 中心軸線
73 接続配管
74 切換弁機構
S 枠体内部空間
θ 回転角度範囲
図1
図2