(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061076
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】車両後部構造
(51)【国際特許分類】
B60D 1/04 20060101AFI20240425BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
B60D1/04 A
B62D25/20 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168781
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000157083
【氏名又は名称】トヨタ自動車東日本株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐武 晃
(72)【発明者】
【氏名】服部 翔平
(72)【発明者】
【氏名】石田 貴久
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伸宏
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA01
3D203BB24
3D203CA26
3D203CA37
3D203CB09
3D203DB03
(57)【要約】
【課題】後突時にリアサイドメンバの変形を抑制することができる車両後部構造を提供する。
【解決手段】一対のリアサイドメンバ20のそれぞれの後端部にトーイングヒッチ30が装着された車両後部構造10であって、車幅方向の内側に設けられるインナ側壁20Aと、車幅方向の外側に設けられるアウタ側壁20Bと、を有し、トーイングヒッチ30は、クロスチューブ33の車幅方向の両端部に設けられると共に車両前後方向に沿って延びる一対のサイドアーム34を有し、サイドアーム34は、リアサイドメンバ20のアウタ側壁20Bに固定され、クロスチューブ33とリアサイドメンバ20のインナ側壁20Aとの間には、クロスチューブ33からインナ側壁20Aの後端に向かって突出する第1隙詰め部材41、およびインナ側壁20Aの後端からクロスチューブ33に向かって突出する第2隙詰め部材42のうちの少なくとも一つが設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のリアサイドメンバのそれぞれの後端部にトーイングヒッチが装着された車両後部構造であって、
前記リアサイドメンバは、車幅方向の左右側において車両前後方向に沿って延び、車両前後方向に垂直な断面視において中空の矩形状であって、車幅方向の内側に設けられるインナ側壁と、車幅方向の外側に設けられるアウタ側壁と、を有し、
前記トーイングヒッチは、車幅方向に沿って延びるクロスチューブと、前記クロスチューブの車幅方向の両端部に設けられると共に車両前後方向に沿って延びる一対のサイドアームと、を有し、
前記サイドアームは、前記リアサイドメンバの前記アウタ側壁に固定され、
前記クロスチューブと前記リアサイドメンバの前記インナ側壁との間には、前記クロスチューブから前記インナ側壁の後端に向かって突出する第1隙詰め部材、および前記インナ側壁の後端から前記クロスチューブに向かって突出する第2隙詰め部材のうちの少なくとも一つが設けられる、
車両後部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対のリアサイドメンバのそれぞれの後端部にトーイングヒッチが装着された車両後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両後部構造では、トーイングヒッチが装着される場合がある。トーイングヒッチは、ボート積載車またはキャンピングカー等の被牽引車を車両に連結して牽引するための連結部材である。トーイングヒッチは、一対のリアサイドメンバのそれぞれの後端部に装着される(例えば、特許文献1)。
【0003】
リアサイドメンバは、車両の車幅方向の左右側において車両前後方向に沿って延び、車両前後方向に垂直な断面視において中空の矩形状であって、車幅方向のインナ側壁と、車幅方向のアウタ側壁とを有している。また、トーイングヒッチは、車幅方向に沿って延びるクロスチューブと、クロスチューブの車両方向の両端部に設けられると共に車両前後方向に沿って延びる一対のサイドアームとを有している。
【0004】
ここで、トーイングヒッチが一対のリアサイドメンバのそれぞれの後端部に装着される際には、トーイングヒッチサイドアームがリアサイドメンバのアウタ側壁に固定される場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した車両後部構造の後突時には、衝突入力がリアサイドメンバのアウタ側壁に集中し、アウタ側壁とインナ側壁との変形タイミングに差が生じるため、リアサイドメンバが平面視折れしてキック部(屈曲部)での変形が増加する。キック部での変形が増加すると、キック部付近に搭載されたバッテリに負荷が作用してバッテリに悪影響を及ぼすことになる。
【0007】
そこで、本発明は、車両の後突時にリアサイドメンバのアウタ側壁とインナ側壁との変形タイミングの差を少なくすることによってリアサイドメンバの変形を抑制することができる車両後部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る車両後部構造は、一対のリアサイドメンバのそれぞれの後端部にトーイングヒッチが装着された車両後部構造であって、リアサイドメンバは、車幅方向の左右側において車両前後方向に沿って延び、車両前後方向に垂直な断面視において中空の矩形状であって、車幅方向の内側に設けられるインナ側壁と、車幅方向の外側に設けられるアウタ側壁と、を有し、トーイングヒッチは、車幅方向に沿って延びるクロスチューブと、クロスチューブの車幅方向の両端部に設けられると共に車両前後方向に沿って延びる一対のサイドアームと、を有し、サイドアームは、リアサイドメンバのアウタ側壁に固定され、クロスチューブとリアサイドメンバのインナ側壁との間には、クロスチューブからインナ側壁の後端に向かって突出する第1隙詰め部材、およびインナ側壁の後端からクロスチューブに向かって突出する第2隙詰め部材のうちの少なくとも一つが設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車両後部構造によれば、車両の後突時にリアサイドメンバのアウタ側壁とインナ側壁とが同時に変形し、リアサイドメンバを軸圧縮させることによってリアサイドメンバの変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態の一例であるリアサイドメンバおよびトーイングヒッチを示す斜視図である。
【
図2】
図1のA部詳細図であってリアサイドメンバへのサイドプレートの固定を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。以下の説明において、具体的な形状、材料、方向、数値等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等に合わせて適宜変更することができる。
【0012】
車両後部構造10では、トーイングヒッチ30が装着される場合がある。車両後部構造10によれば、詳細は後述するが、車両の後突時にリアサイドメンバ20のインナ側壁20Aとアウタ側壁20Bとが同時に変形し、リアサイドメンバ20を軸圧縮させることによってリアサイドメンバ20の変形を抑制することができる。
【0013】
[車両]
車両は、ガソリンエンジンおよびモータを駆動して走行するHEV(Hybrid Electric Vehicle)である。ただし、車両は、バッテリの電力のみによってモータを駆動して走行するBEV(Battery Electric Vehicle)であってもよい。また、HEVのバッテリに給電設備から充電できるPHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)であってもよい。
【0014】
図1を用いて、実施形態の一例であるリアサイドメンバ20およびトーイングヒッチ30について説明する。
【0015】
[リアサイドメンバ]
リアサイドメンバ20は、車両の車幅方向の左右側にそれぞれ配置され、車両前後方向に沿って延びる骨格部材である。リアサイドメンバ20は、車両前後方向に垂直な断面視において中空の矩形状であって、車幅方向の内側に設けられるインナ側壁20Aと、車幅方向の外側に設けられるアウタ側壁20Bとを有している。リアサイドメンバ20の車両前後方向の中途部には、車両後側かつ上方(
図1に例示するように後方から見た場合には、車両前側かつ下方)に傾斜して延びるキック部21が形成されている。キック部21には、バッテリ等が搭載される。
【0016】
[トーイングヒッチ]
トーイングヒッチ30は、ボート積載車またはキャンピングカー等の被牽引車を車両に連結して牽引するための連結部材である。トーイングヒッチ30は、一対のリアサイドメンバ20のそれぞれの後端部に装着される。
【0017】
トーイングヒッチ30は、被牽引車両を係止するヒッチボール31が先端に設けられたフック部32と、車幅方向に沿って延びると共にフック部32が長手方向の略中央部に設けられたクロスチューブ33と、クロスチューブ33の両端部に設けられると共に車両前後方向(クロスチューブ33の長手方向と略直交する方向)に延びる一対のサイドアーム34とを有している。
【0018】
[リアサイドメンバへのサイドプレートの固定]
図2を用いて、リアサイドメンバ20へのサイドアーム34の固定について説明する。
【0019】
トーイングヒッチ30が一対のリアサイドメンバ20のそれぞれの後端部に装着される際には、トーイングヒッチ30のそれぞれのサイドアーム34がそれぞれのリアサイドメンバ20のアウタ側壁20Bに固定される。サイドアーム34は、ボルト35によって車幅方向の内側に向けられたカバープレート36と共にリアサイドメンバ20のアウタ側壁20Bに締結固定される。
【0020】
また、一対のリアサイドメンバ20のそれぞれの後端部には、位置決めプレート22が設けられている。位置決めプレート22は、製造時に中空の矩形状のリアサイドメンバ20の内部においてサイドアーム34の位置決めをするための部材である。
【0021】
[隙詰め部材]
車両前後方向においてクロスチューブ33とリアサイドメンバ20のインナ側壁20Aとの間には、クロスチューブ33からインナ側壁20Aの後端部に向かって突出する第1隙詰め部材41が設けられている。第1隙詰め部材41は、車両前後方向においてクロスチューブ33とリアサイドメンバ20のインナ側壁20Aとの隙間を詰める部材である。第1隙詰め部材41は、車両前後方向に沿って延びるプレート状の部材である。第1隙詰め部材41によれば、車両の後突時の衝撃入力をインナ側壁20Aに作用させることができる。
【0022】
また、車両前後方向においてクロスチューブ33とリアサイドメンバ20のインナ側壁20Aとの間には、位置決めプレート22(インナ側壁20Aの後端部)からクロスチューブ33に向かって突出する第2隙詰め部材42が設けられている。第2隙詰め部材42は、車両前後方向においてクロスチューブ33とリアサイドメンバ20のインナ側壁20Aとの隙間を詰める部材である。第2隙詰め部材42は、車両前後方向に沿って延びるプレート状の部材である。第2隙詰め部材42によれば、車両の後突時の衝撃入力をインナ側壁20Aに作用させることができる。
【0023】
車両後部構造10では、第1隙詰め部材41および第2隙詰め部材42が設けられる構成であってもよく、第1隙詰め部材41および第2隙詰め部材42のうちのどちらか一方のみが設けられる構成でもあってもよい。第1隙詰め部材41および第2隙詰め部材42が設けられる構成では、車幅方向において第1隙詰め部材41および第2隙詰め部材42が略同位置に設けられることが好ましい。
【0024】
[効果]
図3を用いて、車両後部構造10の効果について車両後部構造10と従来の車両後部構造110とを比較して説明する。
図3(A)は、従来の車両後部構造110のサイドアーム134の変形直後およびリアサイドメンバ120が変形後の状態を示している。
図3(B)は、本実施形態の車両後部構造10のサイドアーム34の変形直後およびリアサイドメンバ20が変形後の状態を示している。
【0025】
図3(A)に示すように、従来の車両後部構造110の後突時には、衝突入力がリアサイドメンバ120のアウタ側壁120Bに集中し、インナ側壁120Aとアウタ側壁120Bとの変形タイミングに差が生じるため、リアサイドメンバ120が平面視折れしてキック部121での変形が増加する。キック部121での変形が増加すると、キック部121の付近に搭載されたバッテリに負荷が作用してバッテリに悪影響を及ぼすことになる。
【0026】
図3(B)に示すように、例えば第1隙詰め部材41が設けられた車両後部構造10の後突時には、衝突入力が第1隙詰め部材41を介してリアサイドメンバ20のインナ側壁20Aと、リアサイドメンバ20のアウタ側壁20Bとにそれぞれ作用し、インナ側壁120Aとアウタ側壁120Bとの変形タイミングに差が生じないため、リアサイドメンバ20が車両前後方向に軸圧縮することで、キック部21での変形が抑制される。これにより、キック部21の付近に搭載されたバッテリに負荷が作用することを防止することができる。
【0027】
なお、本発明は上述した実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において種々の変更や改良が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0028】
10 車両後部構造、20 リアサイドメンバ、20A インナ側壁、20B アウタ側壁、21 キック部、22 カバープレート、30 トーイングヒッチ、31 ヒッチボール、32 フック部、33 クロスチューブ、34 サイドアーム、35 ボルト、36 カバープレート、41 第1隙詰め部材、42 第2隙詰め部材、110 車両後部構造(従来)、120 リアサイドメンバ、120A インナ側壁、120B アウタ側壁、121 キック部