(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061077
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02P 15/00 20060101AFI20240425BHJP
H02P 4/00 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
H02P15/00 K
H02P4/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168782
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】間々田 卓
(72)【発明者】
【氏名】松井 雅広
(72)【発明者】
【氏名】橋本 量太
(72)【発明者】
【氏名】若田 知也
(72)【発明者】
【氏名】海老沢 大樹
【テーマコード(参考)】
5H501
【Fターム(参考)】
5H501AA20
5H501BB08
5H501CC04
5H501DD04
5H501DD06
5H501HA06
5H501HB07
5H501JJ03
5H501KK05
5H501LL23
5H501LL52
5H501MM03
(57)【要約】
【課題】下段駆動素子のON故障と正常とを判別する。
【解決手段】所定の負荷に駆動電流を通電する駆動装置であって、電源と負荷の一端との間に設けられた上段駆動素子と、アースと負荷の他端との間に設けられた下段駆動素子と、上段駆動パルスを供給することにより上段駆動素子を駆動するとともに下段駆動パルスを供給することにより下段駆動素子を制御する制御回路と、他端における電圧に基づいて下段駆動素子の故障を検知する故障検知手段とを備え、制御回路は、遷移タイミングが所定時間だけずれた故障診断用の上段駆動パルス及び下段駆動パルスを生成し、故障検知手段は、故障診断用の上段駆動パルスが上段駆動素子に供給されるとともに故障診断用の下段駆動パルスが下段駆動素子に供給された状態の上記電圧に基づいて下段駆動素子の故障を検知する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の負荷に駆動電流を通電する駆動装置であって、
電源と前記負荷の一端との間に設けられた上段駆動素子と、
アースと前記負荷の他端との間に設けられた下段駆動素子と、
上段駆動パルスを供給することにより前記上段駆動素子を駆動するとともに下段駆動パルスを供給することにより前記下段駆動素子を制御する制御回路と、
前記他端における電圧に基づいて前記下段駆動素子の故障を検知する故障検知手段とを備え、
前記制御回路は、遷移タイミングが所定時間だけずれた故障診断用の前記上段駆動パルス及び前記下段駆動パルスを生成し、
前記故障検知手段は、故障診断用の前記上段駆動パルスが前記上段駆動素子に供給されるとともに故障診断用の前記下段駆動パルスが前記下段駆動素子に供給された状態の前記電圧に基づいて前記下段駆動素子の故障を検知する駆動装置。
【請求項2】
前記一端における電圧に基づいて前記上段駆動素子の故障を検知する第2の故障検知手段をさらに備え、
前記制御回路は、前記遷移タイミングが同期した故障診断用の前記上段駆動パルス及び前記下段駆動パルスを生成し、
前記第2の故障検知手段は、前記遷移タイミングが同期した故障診断用の前記上段駆動パルスが前記上段駆動素子に供給されるとともに故障診断用の前記下段駆動パルスが前記下段駆動素子に供給された状態の前記一端における電圧に基づいて前記上段駆動素子の故障を検知する請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記故障検知手段は、時間軸上で離散的に取得した前記電圧が所定回数に亘って連続して所定の電圧しきい値を超える場合に変化したと判定する請求項1又は2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記上段駆動素子は、前記上段駆動パルスがLo(ロー)レベルからHi(ハイ)レベルに遷移することによって、OFF状態からON状態に変化するスイッチングトランジスタであり、
前記下段駆動素子は、前記下段駆動パルスがLo(ロー)レベルからHi(ハイ)レベルに遷移することによって、OFF状態からON状態に変化するスイッチングトランジスタであり、
前記遷移タイミングは、Lo(ロー)レベルからHi(ハイ)レベルへの遷移である請求項1又は2に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記負荷は電磁ブレーキである請求項1又は2に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1にはブレーキ駆動制御回路が開示されている。このブレーキ駆動制御回路は、ブレーキの両端に設けられたスイッチングトランジスタをON/OFFすることによってブレーキへの駆動電流の供給/遮断を行うものである。すなわち、このブレーキ駆動制御回路は、ブレーキの上段側つまりブレーキの一端と24V電源VBとの間に一方のスイッチングトランジスタを設けるとともにブレーキの下段側つまりブレーキの他端とアースとの間に他方のスイッチングトランジスタを設け、ブレーキの一端と24V電源VBとの接続を一方のスイッチングトランジスタによって導通/遮断するとともにブレーキの他端とアースとの接続を他方のスイッチングトランジスタによって導通/遮断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記背景技術では、ブレーキ(負荷)と並列に接続された電圧検出手段によって負荷に印加される電圧の有無を検出することにより、各スイッチングトランジスタ(駆動素子)の故障を検出する。しかしながら、このような故障検出手法では、他方のスイッチングトランジスタ(下段駆動素子)のON故障と正常とを判別することができないという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、下段駆動素子のON故障と正常とを判別することが可能な駆動装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の態様1は、所定の負荷に駆動電流を通電する駆動装置であって、電源と前記負荷の一端との間に設けられた上段駆動素子と、アースと前記負荷の他端との間に設けられた下段駆動素子と、上段駆動パルスを供給することにより前記上段駆動素子を駆動するとともに下段駆動パルスを供給することにより前記下段駆動素子を制御する制御回路と、前記他端における電圧に基づいて前記下段駆動素子の故障を検知する故障検知手段とを備え、前記制御回路は、遷移タイミングが所定時間だけずれた故障診断用の前記上段駆動パルス及び前記下段駆動パルスを生成し、前記故障検知手段は、故障診断用の前記上段駆動パルスが前記上段駆動素子に供給されるとともに故障診断用の前記下段駆動パルスが前記下段駆動素子に供給された状態の前記電圧に基づいて前記下段駆動素子の故障を検知する、という手段を採用する。
【0007】
このような態様1の駆動装置によれば、負荷を駆動する下段駆動素子のON故障と正常とを判別することが可能な駆動装置を提供することが可能である。
【0008】
本発明の態様2は、態様1の駆動装置において、前記一端における電圧に基づいて前記上段駆動素子の故障を検知する第2の故障検知手段をさらに備え、前記制御回路は、前記遷移タイミングが同期した故障診断用の前記上段駆動パルス及び前記下段駆動パルスを生成し、前記第2の故障検知手段は、前記遷移タイミングが同期した故障診断用の前記上段駆動パルスが前記上段駆動素子に供給されるとともに故障診断用の前記下段駆動パルスが前記下段駆動素子に供給された状態の前記一端における電圧に基づいて前記上段駆動素子の故障を検知する、という手段を採用する。
【0009】
このような態様2の駆動装置によれば、負荷を駆動する下段駆動素子のON故障と正常との判別に加えて、下段駆動素子とともに負荷を駆動する上段駆動素子のON故障と正常とを判別することができる。
【0010】
本発明の態様3は、態様1又は態様2の駆動装置において、前記故障検知手段は、時間軸上で離散的に取得した前記電圧が所定回数に亘って連続して所定の電圧しきい値を超える場合に変化したと判定する、という手段を採用する。
【0011】
このような態様3の駆動装置によれば、少なくとも下段駆動素子のON故障と正常とを判別するに際して、負荷を駆動する下段駆動素子のON故障と正常とをより正確に判別することができる。
【0012】
本発明の態様4は、態様1~態様3のいずれか1つの駆動装置において、前記上段駆動素子は、前記上段駆動パルスがLo(ロー)レベルからHi(ハイ)レベルに遷移することによって、OFF状態からON状態に変化するスイッチングトランジスタであり、前記下段駆動素子は、前記下段駆動パルスがLo(ロー)レベルからHi(ハイ)レベルに遷移することによって、OFF状態からON状態に変化するスイッチングトランジスタであり、前記遷移タイミングは、Lo(ロー)レベルからHi(ハイ)レベルへの遷移である、という手段を採用する。
【0013】
このような態様4の駆動装置によれば、遷移タイミングがLo(ロー)レベルからHi(ハイ)レベルへの遷移である場合において、負荷を駆動する下段駆動素子のON故障と正常とを判別することができる。
【0014】
本発明の態様5は、態様1~態様4のいずれか1つの駆動装置において、前記負荷は電磁ブレーキである、という手段を採用する。
【0015】
このような態様5の駆動装置によれば、電磁ブレーキを負荷とする場合について下段駆動素子のON故障と正常とを判別することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、下段駆動素子のON故障と正常とを判別することが可能な駆動装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る駆動装置Aの構成を示す回路図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る駆動装置Aの動作を示す第1のタイミングチャートである。
【
図3】本発明の一実施形態における参照タイミングチャートである。
【
図4】本発明の一実施形態に係る駆動装置Aの動作を示す第2タイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る駆動装置Aは、
図1に示すように駆動モータM及び電磁ブレーキLを駆動対象とする。この駆動装置Aは、電動搬送台車等の電動車両に備えられ、駆動モータM及び電磁ブレーキLを駆動する。
【0019】
駆動モータMは、駆動装置Aにおける第1の駆動対象であり、駆動装置Aによって回転駆動されることによって電動車両の走行動力を発生させる。すなわち、この駆動モータMは、電動車両の動力源である。これに対して、電磁ブレーキLは、駆動装置Aにおける第2の駆動対象であり、電動車両を減速又は停止(停車)させる制動装置である。この電磁ブレーキLは、図示するように誘導性負荷(コイル)であり、本発明の負荷に相当する。
【0020】
駆動装置Aは、実際には多数の電子部品が実装されたプリント配線板として構成されており、駆動モータM及び電磁ブレーキL等の外部部品と電気的に接続するための複数の接続端子を備えている。すなわち、駆動装置Aは、接続端子を介して駆動モータM、電磁ブレーキL、上位ECU(Electronic Control Unit)及びLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)等の外部部品と接続されている。
【0021】
このような駆動装置Aは、図示するように上段スイッチ1、下段スイッチ2、保護ダイオード3、上段電圧検出回路4、下段電圧検出回路5、CPU6、上段駆動回路7、下段駆動回路8、インバータ9及びLED駆動回路10を備えている。
【0022】
上段スイッチ1は、一方の入出力端が駆動源電VBに接続され、他方の入出力端が電磁ブレーキLの一端、保護ダイオード3のカソード端子及び上段電圧検出回路4の入力端に接続され、制御端が上段駆動回路7の出力端に接続されている。この上段スイッチ1は、上段駆動回路7の出力端から制御端に入力される上段駆動パルスによって一方の入出力端と他方の入出力端との導通/非導通(つまりON/OFF)が設定されるスイッチングトランジスタである。なお、上段スイッチ1は、本発明の上段駆動素子に相当する。
【0023】
下段スイッチ2は、一方の入出力端が電磁ブレーキLの他端、保護ダイオード3のアノード端子及び下段電圧検出回路5の入力端に接続され、他方の入出力端がアースに接続(接地)され、制御端が下段駆動回路8の出力端に接続されている。この下段スイッチ2は、下段駆動回路8の出力端から制御端に入力される下段駆動パルスによって一方の入出力端と他方の入出力端との導通/非導通(つまりON/OFF)が設定されるスイッチングトランジスタである。なお、下段スイッチ2は、本発明の下段駆動素子に相当する。
【0024】
保護ダイオード3は、カソード端子が電磁ブレーキLの一端に接続され、アノード端子が電磁ブレーキLの一端に接続されている。すなわち、保護ダイオード3は、電磁ブレーキLに並列接続されており、外乱等に起因した過電圧が電磁ブレーキLに印加されるのを防止することにより、電磁ブレーキLを過電圧から保護する。
【0025】
上段電圧検出回路4は、入力端が上段スイッチ1の他方の入出力端、電磁ブレーキLの一端及び保護ダイオード3のカソード端子に接続され、出力端がCPU6の第1入力端に接続されている。上段電圧検出回路4は、駆動源電VBから上段スイッチ1を介して電磁ブレーキLの一端に印加される電圧を検出し、当該一端の電圧を上段検出電圧としてCPU6に出力する。
【0026】
下段電圧検出回路5は、入力端が下段スイッチ1の一方の入出力端、電磁ブレーキLの他端及び保護ダイオード3のアノード端子に接続され、出力端がCPU6の第2入力端に接続されている。下段電圧検出回路5は、駆動源電VBから上段スイッチ1及び電磁ブレーキLを介して電磁ブレーキLの他端に印加される電圧を検出し、下段検出電圧としてCPU6に出力する。
【0027】
CPU6は、内部メモリに予め記憶された制御プログラム、上段電圧検出回路4から入力される上段検出電圧、下段電圧検出回路5から入力される下段検出電圧、また上位ECUから入力される制御指令に基づいて上段駆動回路7、下段駆動回路8、インバータ9及びLED駆動回路10を制御するソフトウエア制御装置である。
【0028】
すなわち、このCPU6は、内部メモリ、制御プログラムを実行する演算部、また上段電圧検出回路4、下段電圧検出回路5、上位ECU、上段駆動回路7、下段駆動回路8、インバータ9及びLED駆動回路10と信号の授受を行う入出力回路をハードウエア資源として少なくとも備えており、当該ハードウエア資源とソフトウエア資源である制御プログラムとの協働によって所望の制御機能を発揮する。
【0029】
上段駆動回路7は、入力端がCPU6の第1出力端と接続され、出力端が上段スイッチ1の制御端に接続されている。上段駆動回路7は、CPU6から入力される上段制御信号に基づいて上段駆動パルスを生成し、当該上段駆動パルスを上段スイッチ1の制御端に出力する。
【0030】
下段駆動回路8は、入力端がCPU6の第2出力端と接続され、出力端が下段スイッチ2の制御端に接続されている。下段駆動回路8は、CPU6から入力される上下段御信号に基づいて下段駆動パルスを生成し、当該下段駆動パルスを下段スイッチ2の制御端に出力する。
【0031】
ここで、上述したCPU6、上段駆動回路7及び下段駆動回路8は、本発明の制御回路に相当する。すなわち、CPU6、上段駆動回路7及び下段駆動回路8は、上段制御信号に基づく上段駆動パルスを供給することにより上段スイッチ1(上段駆動素子)を駆動するとともに、下段制御信号に基づく下段駆動パルスを供給することにより下段スイッチ2(下段駆動素子)を制御するものである。
【0032】
また、CPU6、上段駆動回路7及び下段駆動回路8は、下段スイッチ2(下段駆動素子)の故障を検知する際に、遷移タイミングが所定時間tdだけずれた故障診断用の上段駆動パルス及び下段駆動パルスを生成し、故障診断用の上段駆動パルスを上段スイッチ1に出力するとともに下段駆動パルスを下段スイッチ2に出力する。
【0033】
一方、上述した下段電圧検出回路5及びCPU6は、本発明の故障検知手段に相当する。詳細については後述するが、下段電圧検出回路5及びCPU6は、電磁ブレーキL(負荷)の他端における電圧(下段検出電圧)に基づいて下段スイッチ2(下段駆動素子)のON故障を検知(判定)する。
【0034】
すなわち、下段電圧検出回路5及びCPU6は、下段スイッチ2の故障を検知に際して、故障診断用の上段駆動パルスが上段スイッチ1に供給されるとともに故障診断用の下段駆動パルスが下段スイッチ2に供給された状態の下段検出電圧に基づいて下段スイッチ2のON故障を検知する。
【0035】
また、本実施形態における上段電圧検出回路4及びCPU6は、本発明における第2の故障検知手段に相当する。すなわち、上段電圧検出回路4及びCPU6は、上段スイッチ1(上段駆動素子)のON故障を検知する。詳細については後述するが、上段電圧検出回路4及びCPU6は、電磁ブレーキL(負荷)の一端における電圧(上段検出電圧)に基づいて、上段スイッチ1(上段駆動素子)のON故障を検知(判定)する。
【0036】
インバータ9は、一対のU相入力端、一対のV相入力端及び一対のW相入力端、またU相出力端、V相出力端及びW相出力端、またU相、V相及びW相に対応した3つのスイッチングレグ(U相スイッチングレグ、V相スイッチングレグ及びW相スイッチングレグ)を備える三相インバータである。
【0037】
インバータ9は、U相入力端がCPU6のU相出力に接続され、V相入力端がCPU6のV相出力に接続され、W相入力端がCPU6のW相出力に接続されている。また、インバータ9は、U相出力端が駆動モータMのU相巻線に接続され、V相出力端が駆動モータMのV相巻線に接続され、W相出力端が駆動モータMのW相巻線に接続されている。
【0038】
このようなインバータ9は、CPU6から一対のU相入力端、一対のV相入力端及び一対のW相入力端に入力される一対のU相制御信号、一対のV相制御信号及び一対のW相制御信号に基づいてU相スイッチングレグ、V相スイッチングレグ及びW相スイッチングレグが制御されることにより駆動源電VBから入力される直流電力を三相交流電力に変換し、当該三相交流電力をU相出力端、V相出力端及びW相出力端から駆動モータMに出力する。
【0039】
LED駆動回路10は、入力端がCPU6の第3出力端に接続され、出力端がLEDのアノード端子に接続されている。LED駆動回路10は、CPU6から入力される報知信号を電流増幅してLEDに供給する。報知信号は、上段スイッチ1及び下段スイッチ2の故障等、駆動装置Aの動作状態を示すパルス信号である。LEDは、LED駆動回路10から入力される報知電流に基づいて発光することにより、駆動装置Aの動作状態を外部に報知する。
【0040】
なお、上位ECUは、出力端がCPU6に設けられた一対の上位入力端に接続されている。上位ECUは、電動車両を包括的に制御する上記制御装置であり、ハードウエア資源とソフトウエア資源とが協働するソフトウエア制御装置である。この上位ECUは、電動車両の運転指示等の上位制御指令をCPU6に出力する。
【0041】
次に、本実施形態に係る駆動装置Aの動作について、
図2及び
図3を参照して詳しく説明する。
【0042】
この駆動装置Aは、上述したように駆動モータM及び電磁ブレーキLを駆動対象とするものであり、通常動作として以下のように駆動モータM及び電磁ブレーキLを駆動する。すなわち、駆動装置Aは、上位ECUから入力される走行指令に基づいて駆動モータMを駆動することによって電動車両を走行させる。また、駆動装置Aは、上位ECUから入力される制動指令に基づいて電磁ブレーキLを駆動することによって電動車両を減速又は停止(停車)させる。
【0043】
駆動装置Aは、このような通常動作に対して、定期的あるいは所定の条件が満足すると、上段電圧検出回路4及び下段電圧検出回路5を用いた上段スイッチ1及び下段スイッチ2の故障診断を行う。すなわち、CPU6は、電動車両が少なくとも停車している状態において、故障診断用の上段制御信号を生成して上段駆動回路7に出力するとともに下段制御信号を生成して下段駆動回路8に出力する。
【0044】
図2(a)は、上段スイッチ1及び下段スイッチ2がいずれも正常な場合における駆動装置Aのタイミングチャートである。上段駆動回路7は、この
図2(a)に示すように、上段制御信号に基づいて上段駆動パルスを生成して上段スイッチ1に出力する。一方、下段駆動回路8は、
図2(a)に示すように、下段制御信号に基づいて下段駆動パルスを生成して下段スイッチ2に出力する。
【0045】
ここで、上段駆動パルスは、図示するように時刻t1においてLo(ロー)レベルからHi(ハイ)レベルに遷移するパルス信号である。これに対して、下段駆動パルスは、図示するように上記時刻t1から時間幅td(所定時間)だけ遅延した時刻t2においてLo(ロー)レベルからHi(ハイ)レベルに遷移するパルス信号である。
【0046】
上段スイッチ1は、図示するように、時刻t1においてOFF状態(遮断状態)からON状態(導通状態)に状態変化する。すなわち、上段スイッチ1は、故障することなく正常な状態において、上段駆動パルスのLo(ロー)レベルからHi(ハイ)レベルへの遷移に同期してOFF状態(遮断状態)からON状態(導通状態)に状態変化する。
【0047】
これに対して、下段スイッチ2は、上記時刻t1から時間幅tdだけ遅延した時刻t2においてOFF状態(遮断状態)からON状態(導通状態)に状態変化する。すなわち、下段スイッチ2は、故障することなく正常な状態において、下段駆動パルスのLo(ロー)レベルからHi(ハイ)レベルへの遷移に同期してOFF状態(遮断状態)からON状態(導通状態)に状態変化する。
【0048】
このような上段スイッチ1及び下段スイッチ2の正常時において、下段電圧検出回路5の下段検出電圧は、時刻t1においてLo(ロー)レベルからHi(ハイ)レベルに遷移し、また時刻t2においてHi(ハイ)レベルからLo(ロー)レベルに遷移する。すなわち、このような時刻t1及び時刻t2における下段検出電圧の変化は、上段スイッチ1及び下段スイッチ2の正常性を示すものである。
【0049】
CPU6は、上段制御信号を上段駆動回路7に出力するとともに下段制御信号を下段駆動回路8に出力した場合における下段検出電圧の変化に基づいて上段スイッチ1及び下段スイッチ2の正常性を判定する。なお、
図2(a)に示すように、上段スイッチ1及び下段スイッチ2の両方がON状態(導通状態)となる時刻t2において電磁ブレーキLに駆動電流が通電される。
【0050】
すなわち、CPU6は、時刻t1においてLo(ロー)レベルからHi(ハイ)レベルに遷移する上段駆動パルスを上段スイッチ1に出力するように上段駆動回路7を制御するとともに、時刻t2においてLo(ロー)レベルからHi(ハイ)レベルに遷移する下段駆動パルスを下段スイッチ2に出力するように下段駆動回路8を制御した際に下段電圧検出回路5から入力される下段検出電圧の変化を評価することによって、上段スイッチ1及び下段スイッチ2の正常性を判定する。
【0051】
図2(b)は、上段スイッチ1は正常であるものの下段スイッチ2がON故障した場合における駆動装置Aのタイミングチャートである。この場合、上段駆動回路7は上段制御信号に基づいて上段駆動パルスを生成して上段スイッチ1に出力し、また下段駆動回路8は、下段制御信号に基づいて下段駆動パルスを生成して下段スイッチ2に出力する。
【0052】
上段スイッチ1は、図示するように、上段駆動パルスに同期して時刻t1においてOFF状態(遮断状態)からON状態(導通状態)に状態変化する。これに対して、下段スイッチ2は、ON故障しているので、下段駆動パルスによって状態変化することなく常時ON状態である。
【0053】
この結果、下段電圧検出回路5の下段検出電圧は、Lo(ロー)レベルからHi(ハイ)レベルに遷移することなく、Lo(ロー)レベルを維持する。このような下段検出電圧は、上段スイッチ1及び下段スイッチ2が正常な場合の変化とは明確に異なるものである。
【0054】
すなわち、CPU6は、時刻t1においてLo(ロー)レベルからHi(ハイ)レベルに遷移する上段駆動パルスを上段スイッチ1に出力するように上段駆動回路7を制御するとともに、時刻t2においてLo(ロー)レベルからHi(ハイ)レベルに遷移する下段駆動パルスを下段スイッチ2に出力するように下段駆動回路8を制御した際の下段検出電圧がLo(ロー)レベルのまま変化しない場合、下段スイッチ2がON故障していると判定する。
【0055】
本実施形態に係る駆動装置Aは、電磁ブレーキL(負荷)に駆動電流を通電するものであって、電源と電磁ブレーキL(負荷)の一端との間に設けられた上段スイッチ1(上段駆動素子)と、アースと電磁ブレーキL(負荷)の他端との間に設けられた下段スイッチ2(下段駆動素子)と、上段駆動パルスを供給することにより上段スイッチ1(上段駆動素子)を駆動するとともに下段駆動パルスを供給することにより下段スイッチ2(下段駆動素子)を制御する制御回路(上段電圧検出回路4、下段電圧検出回路5及びCPU6)と、少なくとも上記他端における電圧に基づいて少なくとも下段スイッチ2(下段駆動素子)の故障を検知する故障検知手段(下段電圧検出回路5及びCPU6)とを備える。
【0056】
また、上記制御回路は、遷移タイミングが所定時間だけずれた故障診断用の上段駆動パルス及び下段駆動パルスを生成し、上記故障検知手段は、故障診断用の上段駆動パルスが上段駆動素子に供給されるとともに故障診断用の下段駆動パルスが下段駆動素子に供給された状態の上記電圧に基づいて下段スイッチ2(下段駆動素子)の故障を検知する。このような本実施形態によれば、下段スイッチ2(下段駆動素子)のON故障と正常とを判別することが可能な駆動装置Aを提供することが可能である。
【0057】
ここで、
図3を参照して本実施形態に係る駆動装置Aの参照動作について説明する。この参照動作は、上段駆動パルス及び下段駆動パルスが同一タイミングでLo(ロー)レベルからHi(ハイ)レベルに遷移するものであり、下段スイッチ2(下段駆動素子)のON故障と正常とを判別することができない動作例である。
【0058】
すなわち、上段駆動パルス及び下段駆動パルスが同期してLo(ロー)レベルからHi(ハイ)レベルに遷移した場合、
図3(a)に示す上段スイッチ1及び下段スイッチ2の正常時と
図3(b)に示す下段スイッチ2のON故障時とにおいて下段検出電圧の差異が発生しない。したがって、この参照動作では、下段スイッチ2(下段駆動素子)のON故障と正常とを判別することができない。
【0059】
続いて、
図4を参照して駆動装置Aにおける上段スイッチ1(上段駆動素子)のON故障の検知(判定)動作について説明する。
図4(a)は上段スイッチ1及び下段スイッチ2がいずれも正常な場合における検知(判定)動作であり、
図4(b)は上段スイッチ1がON故障している場合の検知(判定)動作である。
【0060】
上段スイッチ1のON故障を検知する場合、CPU6は、上段制御信号を上段駆動回路7に出力するとともに下段制御信号を下段駆動回路8に出力するが、この場合の上段制御信号及び下段制御信号は、Lo(ロー)レベルからHi(ハイ)レベルに遷移する遷移タイミングが同期した上段駆動パルス及び下段駆動パルスを生成させるものである。
【0061】
すなわち、上段駆動回路7は、図示するように上段制御信号に基づいて時刻t3でLo(ロー)レベルからHi(ハイ)レベルに遷移する上段駆動パルスを生成して上段スイッチ1に出力する。一方、下段駆動回路8は、下段制御信号に基づいて上段駆動パルスに同期してLo(ロー)レベルからHi(ハイ)レベルに遷移する下段駆動パルスを生成して下段スイッチ2に出力する。
【0062】
上段スイッチ1は、ON故障することなく正常な場合、図示するように上段駆動パルスに同期して時刻t3においてOFF状態(遮断状態)からON状態(導通状態)に状態変化する。また、下段スイッチ2は、ON故障することなく正常な場合、図示するように下段駆動パルスに同期して時刻t3においてOFF状態(遮断状態)からON状態(導通状態)に状態変化する。
【0063】
この結果、上段電圧検出回路4の上段検出電圧は、時刻t3においてLo(ロー)レベルからHi(ハイ)レベルに変化する。これに対して、下段電圧検出回路5の下段検出電圧は、上段スイッチ1及び下段スイッチ2が正常な場合には変化することなくLo(ロー)レベルを維持する。
【0064】
このような正常動作に対して、上段スイッチ1がON故障している場合、上段スイッチ1は、
図4(b)に示すように上段駆動パルスとは無関係にON状態を維持する。したがって、上段電圧検出回路4の上段検出電圧は、上段駆動パルスとは無関係にHi(ハイ)レベルを維持する。このような上段検出電圧は、上段スイッチ1及び下段スイッチ2が正常な場合とは明確に異なるものである。
【0065】
すなわち、CPU6は、時刻t0において、上段検出電圧がHiレベルに遷移していることに基づいて上段スイッチ1のON故障を検知(判定)する。
【0066】
ここで、CPU6は、時間軸上で離散的に取得した上段検出電圧が所定回数nに亘って連続して所定の電圧しきい値を超える場合に上段検出電圧が変化したと判定する。例えば、CPU6は、上段検出電圧(アナログ信号)を所定のサンプリング周期tcpuでサンプリングし、上段検出電圧をA/D変換した上段検出データ(デジタル信号)として取り込む。
【0067】
CPU6は、上位ECUから入力される電磁ブレーキ指令信号が制動から解除に遷移した時刻t0以降において、上段検出データが所定回数n(例えば4回)に亘って連続して所定の電圧しきい値Vrを超えた場合に上段スイッチ1のON故障を検知(判定)する。
【0068】
上記所定回数nは固定値ではなく、上段検出データの取得状態に応じて可変設定される。例えば外乱の作用によって4回目の検出データが電圧しきい値Vrを超えなかった場合、CPU6は、所定回数nを4回から例えば8回(2倍)に設定変更し、検出データが5回目から12回目に亘って8回連続して電圧しきい値Vrを超えるか否かを判定する。そして、CPU6は、検出データが8回連続して電圧しきい値Vrを超えた場合に上段スイッチ1のON故障を検知(判定)する。
【0069】
また、上述した所定時間tdは、例えばサンプリング周期tcpu、所定回数n及び定数aからなる下記式(1)に基づいて設定される。定数aは、CPU6におけるA/D変換時間の最大値(CPU6のカタログ固有値)であり、サンプリング周期tcpuに比べて極めて小さな値である。
td=tcpu×n+a (1)
【0070】
本実施形態に係る駆動装置Aは、電磁ブレーキL(負荷)の一端における電圧(上段検出電圧)に基づいて上段スイッチ1(上段駆動素子)のON故障を検知する第2の故障検知手段(上段電圧検出回路4及びCPU6)をさらに備え、制御回路(上段電圧検出回路4、下段電圧検出回路5及びCPU6)は、遷移タイミングが同期した故障診断用の上段駆動パルス及び下段駆動パルスを生成し、第2の故障検知手段は、遷移タイミングが同期した故障診断用の上段駆動パルスが上段スイッチ1(上段駆動素子)に供給されるとともに故障診断用の下段駆動パルスが下段スイッチ2(下段駆動素子)に供給された状態の上記一端における電圧(上段検出電圧)に基づいて下段スイッチ2(下段駆動素子)のON故障を検知する。
【0071】
このような本実施形態によれば、下段スイッチ2(下段駆動素子)のON故障と正常とを判別することに加え、上段スイッチ1(上段駆動素子)のON故障と正常とを判別することが可能な駆動装置Aを提供することが可能である。
【0072】
また、このような本実施形態によれば、駆動装置や当該駆動装置を搭載した電動車両の技術分野において、カーボンフリー化の推進に寄与することが可能であり、以って国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)に貢献することが可能となる。
【0073】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、電磁ブレーキLを負荷としたが、本発明はこれに限定されない。本発明は、電磁ブレーキL以外の誘導性負荷又は誘導性負荷以外の負荷にも適用可能である。
【0074】
(2)上記実施形態では、上段駆動素子として上段スイッチ1(スイッチングトランジスタ)を採用し、下段駆動素子として下段スイッチ2(スイッチングトランジスタ)を採用したが、本発明はこれに限定されない。
【0075】
(3)上記実施形態では、上段電圧検出回路4、下段電圧検出回路5及びCPU6によって制御回路を構成したが、本発明はこれに限定されない。
【0076】
(4)上記実施形態では、下段電圧検出回路5及びCPU6によって故障検知手段を構成したが、本発明はこれに限定されない。
【符号の説明】
【0077】
A…駆動装置、L…電磁ブレーキ(負荷)、M…駆動モータ、1…上段スイッチ(上段駆動素子)、2…下段スイッチ(下段駆動素子)、3…保護ダイオード、4…上段電圧検出回路、5…下段電圧検出回路、6…CPU、7…上段駆動回路、8…下段駆動回路、9…インバータ、10…LED駆動回路