(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061089
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】物品識別システム、物品識別装置、プログラム
(51)【国際特許分類】
G06K 7/10 20060101AFI20240425BHJP
G07G 1/00 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
G06K7/10 144
G07G1/00 311D
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168804
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(72)【発明者】
【氏名】伴野 貴昭
(72)【発明者】
【氏名】吉村 千里
【テーマコード(参考)】
3E142
【Fターム(参考)】
3E142DA07
3E142GA01
3E142GA35
(57)【要約】
【課題】ピントがずれることを抑制する物品識別システム、物品識別装置、及びプログラムを提供する。
【解決手段】物品識別システム1Aの制御部は、撮影装置3Aに指示を出し、撮影部30による撮影を開始する。制御部は、撮影部30が撮影した画像データに基づき、表示部の撮影画像領域に撮影画像を表示する。制御部は、撮影画像から検出したARマーカに対応する商品名を示す商品名表示を撮影画像領域に表示された撮影画像に重畳して表示する。制御部は、第一調整処理を実行し、レンズ31を上下方向に移動させることで、ARマーカに対するピントを調整する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品、及び前記商品に付された1又は複数のARマーカを撮影する撮影部と、
表示部と、
レジスターと通信する通信部と、
制御部とを備え、
前記制御部は、
前記撮影部において、前記ARマーカに対してピントを調整する調整処理と、
前記調整処理によりピントが調整された前記撮影部により撮影された画像を、前記表示部に表示する第一表示処理と、
前記調整処理によりピントが調整された前記撮影部により撮影された前記画像内の前記商品の情報を、前記表示部に表示する第二表示処理と
を実行することを特徴とする物品識別システム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記通信部を介して、前記商品の価格の情報を前記レジスターに出力する出力処理と、
前記出力処理の実行後に、計時を開始する計時処理と、
前記計時処理による前記計時が開始されてから所定時間が経過したかを判定する判定処理と
を実行し、
前記判定処理において前記所定時間が経過したと判定された場合、前記調整処理を実行すること
を特徴とする請求項1に記載の物品識別システム。
【請求項3】
前記制御部は、
会計の情報の入力を受け付ける会計受付処理と、
前記判定処理により前記所定時間が経過したと判定する前に、前記会計受付処理により前記入力を受け付けた場合、前記計時処理による前記計時を停止する停止処理と
を実行することを特徴とする請求項2に記載の物品識別システム。
【請求項4】
前記制御部は、
前記調整処理によるピントの調整の実行指示を受け付ける調整受付処理を実行し、
前記調整受付処理により前記実行指示を受け付けた場合、前記調整処理を実行すること
を特徴とする請求項1に記載の物品識別システム。
【請求項5】
前記調整処理は、前記商品以外の部材に付され、且つ前記ARマーカと異なる第2ARマーカを前記撮影部により撮影することにより、ピントを調整すること
を特徴とする請求項1に記載の物品識別システム。
【請求項6】
前記撮影部は、カメラを支持し、上下方向に延びるアームを備え、
前記部材は前記アームから前記撮影部による撮影範囲内に向けて延び、
前記第2ARマーカは、前記商品の高さに基づく位置に配置されること
を特徴とする請求項5に記載の物品識別システム。
【請求項7】
前記撮影部は、レンズと、前記レンズを所定方向及び前記所定方向に対して逆方向に移動させる移動部とを備え、
前記調整処理は、
前記移動部により、前記レンズを所定位置から前記所定方向に移動する第1移動処理と、
前記第1移動処理による前記レンズの移動中に前記ARマーカに対してピントを調整する移動調整処理と
を含むことを特徴とする請求項1に記載の物品識別システム。
【請求項8】
前記調整処理は、
前記移動部により、前記第1移動処理において前記ARマーカに対してピントが合った第1位置から、前記所定方向に所定の移動量だけ前記レンズを移動する第2移動処理と、
前記第2移動処理において移動した結果、前記ARマーカと異なる第2ARマーカに対してピントが合っているか否かを判定するピント判定処理とを実行し、
前記ピント判定処理において前記第2ARマーカに対してピントが合っていないと判定した場合、再度第2移動処理とを実行することを特徴とする。
を実行することを特徴とする請求項7に記載の物品識別システム。
【請求項9】
前記調整処理は、
前記第1位置で前記撮影部により撮影された第1画像を取得する第1取得処理と、
前記ピント判定処理において前記第2ARマーカに対してピントが合ったと判定された場合に、前記撮影部により撮影された第2画像を取得する第2取得処理と、
前記第1取得処理で取得された前記第1画像と、前記第2取得処理で取得された前記第2画像とを合成した合成画像を生成する合成処理と
を実行することを特徴とする請求項8に記載の物品識別システム。
【請求項10】
前記合成処理により生成された前記合成画像から前記商品に付された前記ARマーカを検出する検出処理を実行すること
を特徴とする請求項9に記載の物品識別システム。
【請求項11】
前記調整処理は、
前記所定位置から前記第1位置までの距離に基づき、前記第2移動処理における前記移動量を決定する移動量決定処理を実行すること
を特徴とする請求項8に記載の物品識別システム。
【請求項12】
前記レンズは、前記商品の上方に位置し、
前記移動部は、前記レンズを上下方向に移動させ、
前記制御部は、前記調整処理における前記第1移動処理において、前記レンズを下方に移動すること
を特徴とする請求項7に記載の物品識別システム。
【請求項13】
前記第一表示処理により表示される前記画像と、前記第二表示処理により表示される前記商品の前記情報とは、前記表示部において重畳して表示されることを特徴とする請求項1に記載の物品識別システム。
【請求項14】
前記ARマーカと、前記商品と、前記商品の情報との関係、及び前記第2ARマーカと、前記第2ARマーカの情報との関係を記憶する記憶部を備え、
前記制御部は、
前記撮影部が撮影した画像内の前記ARマーカ及び前記第2ARマーカを検出する検出処理を実行し、
前記第二表示処理において、前記検出処理により検出された前記ARマーカと関連する前記商品の情報を前記表示部に表示し、前記検出処理により検出された前記第2ARマーカと関連する前記第2ARマーカの情報を前記表示部に表示しないこと
を特徴とする請求項5に記載の物品識別システム。
【請求項15】
商品、及び前記商品に付された1又は複数のARマーカを撮影する撮影部と、表示部と、レジスターと通信する通信部とを制御する制御部を備える物品識別装置であって、
前記制御部は、
前記撮影部において、前記ARマーカに対してピントを調整する調整処理と、
前記調整処理によりピントが調整された前記撮影部により撮影された画像を、前記表示部に表示する第一表示処理と、
前記調整処理によりピントが調整された前記撮影部により撮影された前記画像内の前記商品の情報を、前記表示部に表示する第二表示処理と
を実行することを特徴とする物品識別装置。
【請求項16】
商品、及び前記商品に付された1又は複数のARマーカを撮影する撮影部と、表示部と、レジスターと通信する通信部とを制御するコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記撮影部において、前記ARマーカに対してピントを調整する調整ステップと、
前記調整ステップによりピントが調整された前記撮影部により撮影された画像を、前記表示部に表示する第一表示ステップと、
前記調整ステップによりピントが調整された前記撮影部により撮影された前記画像内の前記商品の情報を、前記表示部に表示する第二表示ステップと
を前記コンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品識別システム、物品識別装置、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の商品の情報を一括で認識できる装置が知られている。特許文献1に記載の商品登録装置は、トレー上の複数の商品を撮影装置により撮影し、撮影画像中の商品のバーコードを一括で読み取ることで、複数の商品をまとめて認識することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
商品の撮影を行う撮影装置において、例えば発熱により、バーコードに対してピントがずれる場合がある。この場合、撮影画像がぼけて、商品登録装置は商品を認識できない可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、ピントがずれることを抑制する物品識別システム、物品識別装置、及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一態様に係る物品識別システムは、商品、及び前記商品に付された1又は複数のARマーカを撮影する撮影部と、表示部と、レジスターと通信する通信部と、制御部とを備え、前記制御部は、前記撮影部において、前記ARマーカに対してピントを調整する調整処理と、前記調整処理によりピントが調整された前記撮影部により撮影された画像を、前記表示部に表示する第一表示処理と、前記調整処理によりピントが調整された前記撮影部により撮影された前記画像内の前記商品の情報を、前記表示部に表示する第二表示処理とを実行することを特徴とする。
【0007】
第一態様によれば、物品識別システムは、調整処理により撮影部におけるARマーカに対するピントを調整する。これにより、物品識別システムは、ARマーカに対してピントがずれることを抑制できる。
【0008】
本発明の第二態様に係る物品識別装置は、商品、及び前記商品に付された1又は複数のARマーカを撮影する撮影部と、表示部と、レジスターと通信する通信部とを制御する制御部を備える物品識別装置であって、前記制御部は、前記撮影部において、前記ARマーカに対してピントを調整する調整処理と、前記調整処理によりピントが調整された前記撮影部により撮影された画像を、前記表示部に表示する第一表示処理と、前記調整処理によりピントが調整された前記撮影部により撮影された前記画像内の前記商品の情報を、前記表示部に表示する第二表示処理とを実行することを特徴とする。
【0009】
本発明の第三態様に係るプログラムは、商品、及び前記商品に付された1又は複数のARマーカを撮影する撮影部と、表示部と、レジスターと通信する通信部とを制御するコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記撮影部において、前記ARマーカに対してピントを調整する調整ステップと、前記調整ステップによりピントが調整された前記撮影部により撮影された画像を、前記表示部に表示する第一表示ステップと、前記調整ステップによりピントが調整された前記撮影部により撮影された前記画像内の前記商品の情報を、前記表示部に表示する第二表示ステップとを前記コンピュータに実行させることを特徴とする。
【0010】
第二態様及び第三態様は、第一態様と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】物品識別システム1Aの電気的構成を示すブロック図である。
【
図5】撮影画像を表示する物品識別画面50を示す図である。
【
図6】商品名表示を行う物品識別画面50を示す図である。
【
図7】会計画面80を表示する物品識別画面50を示す図である。
【
図9】
図8の続きを示す物品識別処理のフローチャートである。
【
図13】物品識別システム1Bにおける物品識別処理のフローチャートである。
【
図15】第1画像52A、第2画像52B、第3画像52C、合成画像52Dを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照し、本発明の第一実施形態に係る物品識別システム1Aを説明する。
図1に示す物品識別システム1Aは、複数の物品を撮影し、撮影画像内の情報に基づき物品の価格を清算し、公知のレジスター7に出力するシステムである。夫々の物品には、物品を識別する為のARマーカ28(
図6参照)が設けられる。物品識別システム1Aは、例えば物品を商品として販売する店舗において、会計時に複数の商品を一括して識別し、会計するシステムとして用いられる。
【0013】
<物品識別システム1Aの構成>
図1に示すように、物品識別システム1Aは、撮影台2、撮影装置3A、及び識別端末4を有する。撮影台2は、前後方向及び左右方向に延びる板状であり、撮影対象の複数の商品を配置するための台である。撮影台2の上面には、撮影装置3Aによる撮影範囲Sが設定されている。複数の商品を載せたトレー25が撮影台2の上面に配置されると、複数の商品は撮影範囲S内に配置される。
【0014】
夫々の商品は、袋に包装されている。商品を包装する袋の夫々には、ARマーカ28が印刷されたラベル26が貼り付けられる。ARマーカ28は、正方形状であり、其の内側に白色又は黒色の正方形のモジュールが9×9のマトリクス状に配置される。
【0015】
撮影装置3Aは、撮影範囲Sを撮影台2の上方から撮影する装置である。撮影装置3Aは、柱部32、腕部33、撮影部30、及び延出部34を有する。柱部32は、撮影台2の左後端部に固定されて上方に延びる。腕部33は、柱部32の上端に固定されて撮影台2の中央上方に向けて延びる。撮影部30は、腕部33の先端部に固定され、撮影範囲Sを撮影するためのレンズ31を有する。撮影部30は、下方に位置する撮影台2の撮影範囲Sを撮影するように、撮影方向及び画角が調整されている。撮影部30は、撮影範囲Sの静止画又は動画を撮影する。以下説明では、静止画と動画とを特に区別しない場合、撮影画像という。撮影装置3Aは、モータ38(
図2参照)の駆動によりレンズ31を上下方向に移動させることで、撮影画像のピントを調整できる。
【0016】
延出部34は、柱部32において、腕部33の下方、及び撮影台2から高さHだけ上方となる位置に固定される。高さHは、撮影台2に配置された商品の高さに基づく長さである。延出部34は、撮影範囲Sに向けて延びる板状である。延出部34の先端部の上面には、調整ARマーカ35が付されている。調整ARマーカ35は、撮影範囲S内に配置され、撮影部30により撮影される。調整ARマーカ35は、ARマーカ28よりも小さい正方形状であり、其の内側に白色又は黒色の正方形のモジュールが6×6のマトリクス状に配置される。なお、調整ARマーカ35の大きさは適宜変更してもよく、ARマーカ28よりも小さくてもよいし、ARマーカ28と同じ大きさでもよい。調整ARマーカ35のモジュールの数は適宜変更してもよく、例えばARマーカ28と同数でもよい。
【0017】
識別端末4は、例えば周知のタブレット端末であり、物品識別システム1Aを統括制御する。識別端末4は、例えば公知のUSB(Universal Serial Bus)ケーブルにより、撮影装置3A、及びレジスター7と接続する。識別端末4に対する、撮影装置3A、レジスター7の接続は適宜変更してもよい。例えば、識別端末4とレジスター7とは、公知のCOMポートにより接続されてもよい。識別端末4に対する、撮影装置3A、レジスター7の接続は、同じでもよいし、互いに異なっていてもよい。識別端末4は、図示しない販売時点情報管理(POS)システムの端末として使用してもよい。
【0018】
<物品識別システム1Aの電気的構成>
図2に示すように、識別端末4は、制御部41、記憶部42、タッチパネル43、及びUSBインターフェース(以下、USBI/F)47を有する。制御部41は、CPU、ROM、RAMを有する。CPUは、識別端末4の制御を司る。ROMには、ブートプログラム、初期設定情報等が記憶される。RAMには、CPUが演算したデータが一時的に記憶される。記憶部42は、例えばフラッシュメモリであり、後述の物品識別プログラム、識別テーブル91、調整用テーブル92等が記憶される。
【0019】
タッチパネル43は、表示部44及び入力部45を有する。表示部44は、液晶ディスプレイである。入力部45は、表示部44の表面に設けられたタッチパネルである。USBI/F47は、撮影装置3A及びレジスター7との間でUSB規格によるデータ通信を行う。
【0020】
撮影装置3Aは、撮影部30、制御部36、USBI/F37、モータ38、及びエンコーダ39を有する。撮影部30は、公知のCCDイメージセンサ又はCMOSイメージセンサを有する。制御部36は、撮影部30が撮影した撮影画像の画像データを生成する。USBI/F33は、識別端末4との間でUSB規格によるデータ通信を行う。
【0021】
モータ38は、正逆回転可能なステッピングモータであり、レンズ31(
図1参照)を上下方向に移動させる。エンコーダ39は、モータ38の駆動量に応じた値を制御部36に入力する。
【0022】
<識別テーブル91>
図3を参照し、記憶部42に記憶される識別テーブル91について説明する。識別テーブル91には、ARマーカ28(
図3では、便宜上、ARマーカ28の外観図を示す。)の夫々に対して、商品名、定価、及びID(識別子)が個別に対応付けられる。IDは「9999」を除く4桁の数字である。
【0023】
<調整用テーブル92>
図4を参照し、記憶部42に記憶される調整用テーブル92について説明する。調整用テーブル92には、調整ARマーカ35(
図4では、便宜上、調整ARマーカ35の外観図を示す。)に対して、名前及びIDが対応付けられる。IDは4桁の数字「9999」である。
【0024】
図5、
図6を参照し、表示部44に表示される物品識別画面50について説明する。物品識別画面50は、後述する物品識別処理において表示される。物品識別画面50には、点数領域51、撮影画像領域52、商品リスト領域53、OKボタン54、NGボタン55、及びピント調整ボタン56が含まれる。
【0025】
点数領域51には、撮影台2に配置された商品の点数の入力の操作を受け付ける操作項目が表示される。撮影画像領域52には、撮影装置3Aが撮影した撮影画像が表示される。撮影画像には、撮影台2に配置された複数の商品と、商品に付されたARマーカ28が表示される。商品リスト領域53には、撮影画像に表示された複数の商品の情報として、夫々の商品名、個数、単価及び商品の合計数が表示される。OKボタン54、NGボタン55には、店舗のユーザの操作を受け付ける領域が表示される。ピント調整ボタン56は、後述する第一調整処理においてピントの調整を指示するための、店舗のユーザの操作を受け付ける領域である。
【0026】
図7を参照し、表示部44に表示される会計画面80について説明する。会計画面80は、後述する物品識別処理において表示される。会計画面80には、商品リスト領域81、合計領域82、OKボタン84、及びNGボタン85が含まれる。
【0027】
商品リスト領域81には、複数の商品の情報として、夫々の商品名、定価、個数、及び価格が表示される。合計領域82には、複数の商品の合計数、及び合計金額が表示される。OKボタン84、NGボタン85には、店舗のユーザの操作を受け付ける領域が表示される。
【0028】
<物品識別処理>
図8、
図9を参照し、物品識別処理について説明する。店舗のユーザによって物品識別処理を実行するための操作が入力部45を介して行われた場合、制御部41が記憶部42に記憶された物品識別プログラムを読み出し、物品識別処理が開始される。物品識別処理の開始時、商品を載せたトレー25が撮影台2に配置されている。また、物品識別処理の開始時、表示部44には、物品識別画面50(
図5参照)が表示されている。
【0029】
物品識別処理において使用されるフラグについて説明する。記憶部42には、調整フラグが記憶されている。調整フラグは、後述する第一調整処理において撮影部30におけるピントの調整が可能である場合に値が1に設定され、撮影部30におけるピントの調整が可能でない場合に値が0に設定される。物品識別処理の実行中、調整フラグの値は0に設定される。このため、物品識別処理の実行中に、撮影部30におけるピントの調整は行われない。
【0030】
図8に示すように、制御部41は、撮影台2に配置された商品の点数が入力されたか否かを判定する(S1)。ユーザは、点数領域51を確認しながら入力部45を操作し、撮影台2に配置された商品の点数を制御部41に入力する。撮影台2に配置された商品の点数が入力されていないと判定した場合(S1:NO)、制御部41は処理をS1に戻す。
【0031】
制御部41は、撮影台2に配置された商品の点数が入力されたと判定した場合(S1:YES)、調整フラグの値を0に設定する(S2)。制御部41は、後述するS25(
図9参照)で開始される計時を終了する(S3)。
【0032】
制御部41は、入力された商品の点数を記憶部42に記憶する(S4)。制御部41は、撮影装置3Aの制御部36に指示を出し、撮影部30による撮影を開始する(S5)。制御部36は、撮影された撮影画像の画像データを生成し、制御部41に出力する。制御部41は、画像データを取得し、撮影画像領域52に撮影画像を表示する(S6、
図6参照)。
【0033】
制御部41は、取得した画像データからARマーカ(ARマーカ28及び調整ARマーカ35)を検出する(S7)。制御部41は、S7において画像解析を行い、撮影画像におけるARマーカとしての特徴部を有するオブジェクトをARマーカとして検出する。
【0034】
制御部41は、識別テーブル91に基づき、検出したARマーカ28のIDを確認し、確認されたIDを記憶部42に記憶する(S8)。S8では、S7において検出された全てのARマーカに対してIDの確認が行われる。
【0035】
制御部41は、識別テーブル91に基づき、検出したARマーカ28に対応する商品名を確認する(S9)。制御部41は、撮影画像領域52に表示された撮影画像において、ARマーカ28の近傍にS9で確認した商品名を示す商品名表示29を重畳して表示する(S10、
図6参照)。なお、制御部41は、S7において取得した画像データから調整ARマーカ35も検出するが、S8でIDの確認が行われることで調整ARマーカ35を識別できる。制御部41は、S10において調整ARマーカ35に関する情報を撮影画像領域52に表示された撮影画像に表示しない。物品識別システム1Aは、物品識別処理において、会計と関係のないARマーカである調整ARマーカ35に関する情報を表示しない。これにより、ユーザは調整ARマーカ35を撮影画像領域52に表示する場合と比較して、より正確に会計時における商品名を把握できる。
【0036】
制御部41は、S7で検出したARマーカ28に基づき、商品を計数する(S11)。制御部41は、S9で確認した商品名、個数、単価、及びS11で計数した商品の合計数を商品リスト領域53に表示する(S12)。
【0037】
制御部41は、S4で記憶した商品の点数と、S11で計数した商品の合計数とが一致するか否かを判定する(S13)。制御部41は、記憶した商品の点数と、計数した商品の合計数とが一致しないと判定した場合(S13:NO)、NGボタン55に文字列「NG」を表示して(S15)、処理をS1に戻す。制御部41は、記憶した商品の点数と、計数した商品の合計数とが一致すると判定した場合(S13:YES)、処理をS17(
図9参照)に移行する。
【0038】
図9に示すように、制御部41は、OKボタン54に文字列「OK」を表示する(S17)。制御部41は、OKボタン54の操作を受け付けたか否かを判定する(S18)。ユーザは、S17で表示された文字列「OK」を確認し、OKボタン54を操作する。制御部41は、OKボタン54の操作を受け付けていないと判定した場合(S18:NO)、処理をS18に戻す。
【0039】
制御部41は、OKボタン54の操作を受け付けたと判定した場合(S18:YES)、表示部44に表示する画面を、物品識別画面50から会計画面80(
図7参照)に切り替える(S19)。制御部41は、会計処理を実行する(S20)。制御部41は、S20において、ARマーカ28に基づき、商品の価格を決定する。制御部41は、商品リスト領域81に、夫々の商品名、定価、個数、及び決定した価格を表示する。制御部41は、S11で計数された商品の合計数と、決定した価格の合計金額とを、合計領域82に表示する(
図7参照)。
【0040】
制御部41は、会計画面80に表示されたOKボタン84又はNGボタン85の操作を受け付けたか否かを判定する(S21)。ユーザは、表示部44において表示されたOKボタン84又はNGボタン85を操作する。制御部41は、OKボタン84及びNGボタン85の何れの操作も受け付けていないと判定した場合(S21:NO)、処理をS21に戻す。
【0041】
制御部41は、OKボタン84又はNGボタン85の操作を受け付けたと判定した場合(S21:YES)、受け付けた操作がOKボタン84の操作であるか否かを判定する(S22)。制御部41は、受け付けた操作がNGボタン85の操作であると判定した場合(S22:NO)、処理をS1に戻す。
【0042】
制御部41は、受け付けた操作がOKボタン84の操作であると判定した場合(S22:YES)、レジスター7に商品の情報、及び商品の価格の情報を出力する出力処理を実行する(S23)。レジスター7は、受信した商品の情報、及び商品の価格の情報に基づき、商品の会計を行う。制御部41は、計時を開始する(S25)。制御部41は、調整フラグの値を1に設定する(S26)。制御部41は、表示部44に表示する画面を、会計画面80から物品識別画面50に切り替える(S27)。制御部41は、処理をS1に戻す。
【0043】
<第一調整処理>
図10を参照し、第一調整処理について説明する。第一調整処理は、撮影画像におけるARマーカ28に対するピントを調整するための処理である。撮影装置3Aにおいて、例えば発熱により、撮影画像におけるARマーカ28に対するピントが経時的に変化することがある。制御部41は、第一調整処理を実行することでARマーカ28に対するピントを調整する。第一調整処理は、識別端末4の電源が投入されると開始される。
【0044】
制御部41は、調整フラグの値が1に設定されているか否かを判定する(S31)。制御部41は、物品識別処理の実行中であり、S2(
図8参照)で調整フラグの値が0に設定されている場合、処理をS31に戻す。
【0045】
制御部41は、物品識別処理の終了のタイミングであり、S26(
図9参照)で調整フラグの値が1に設定されている場合、S25(
図9参照)で計時を開始してから所定時間が経過したか否かを判定する(S32)。所定時間は、例えば10分であるが、適宜変更してもよい。制御部41は、所定時間が経過したと判定した場合(S32:YES)、処理をS35に移行する。
【0046】
制御部41は、所定時間が経過していないと判定した場合(S32:NO)、調整指示を受け付けたか否かを判定する(S33)。ユーザは、物品識別処理の実行中ではないタイミングでピント調整ボタン56を操作することで、調整指示を制御部41に入力する。制御部41は、調整指示の入力を受け付けていないと判定した場合(S33:NO)、処理をS32に戻す。制御部41は、調整指示の入力を受け付けたと判定した場合(S33:YES)、処理をS35に移行する。
【0047】
制御部41は、S25で開始した計時を終了する(S35)。制御部41は、撮影装置3Aの制御部36に指示を出し、レンズ31を上下方向の移動範囲における上死点に移動させる(S36)。制御部41から指示を受信した制御部36は、モータ38を駆動し、レンズ31を上死点に移動する。
【0048】
制御部41は、制御部36に指示を出し、レンズ31を上死点から下降させる(S37)。制御部41から指示を受信した制御部36は、モータ38を駆動し、レンズ31を上死点から下降する。制御部41は、制御部36に指示を出し、定期的に撮影部30により撮影範囲S内の調整ARマーカ35を撮影する(S38)。制御部36は、撮影部30により撮影された調整ARマーカ35のコントラストに基づき、ピントが合っているか否かを判定する。
【0049】
制御部41は、調整ARマーカ35に対してピントが合っているか否かを判定する(S39)。制御部41は、S39において、制御部36から調整信号を受信したか否かに基づき判定する。制御部36は、調整ARマーカ35に対してピントが合っていると判定した場合、制御部41に調整信号を入力する。制御部41は、制御部36から調整信号を受信していないと判定した場合、調整ARマーカ35に対してピントが合っていないと判定し(S39:NO)、処理をS39に戻す。
【0050】
制御部41は、制御部36から調整信号を受信したと判定した場合、調整ARマーカ35に対してピントが合っていると判定し(S39:YES)、制御部36に指示を出し、S37で開始したレンズ31の下降、及びS38で開始した撮影部30の撮影によるピントの調整を停止させる(S40)。制御部41は、エンコーダ39から制御部36へ入力されるモータ38の駆動量を取得し、撮影画像のピントが合うレンズ31の位置を特定し、記憶部42に記憶する(S41)。制御部41は、処理をS31に戻す。
【0051】
<第一実施形態の作用、効果>
以上説明したように、物品識別システム1Aの制御部41は、撮影装置3Aに指示を出し、撮影部30による撮影を開始する。制御部36は、撮影された撮影画像の画像データを生成し、制御部41に出力する。制御部41は、取得した画像データに基づき、撮影画像領域52に撮影画像を表示する(S5)。制御部41は、検出したARマーカ28に対応する商品名を示す商品名表示29を撮影画像領域52に表示された撮影画像に重畳して表示する(S11)。制御部41は、第一調整処理を実行し、ARマーカ28に対するピントを調整する(S38)。これにより、物品識別システム1Aは、ARマーカ28に対してピントがずれることを抑制できる。
【0052】
制御部41は、物品識別処理において、レジスター7に商品の情報、及び商品の価格の情報を出力する出力処理を実行する(S23)。制御部41は、計時を開始する(S25)。制御部41は、第一調整処理において、S25で計時を開始してから所定時間が経過したか否かを判定する(S32)。制御部41は、所定時間が経過したと判定した場合(S32:YES)、ARマーカ28に対するピントを調整する(S38)。これにより、物品識別システム1Aは、ARマーカ28に対するピントが経時的にずれることを抑制できる。
【0053】
制御部41は、撮影台2に配置された商品の点数が入力されたか否かを判定する(S1)。制御部41は、撮影台2に配置された商品の点数が入力されたと判定した場合(S1:YES)、S25で開始される計時を終了する(S3)。物品識別システム1Aは、商品の会計時に第一調整処理を実行せず、会計と会計の間に第一調整処理を実行するので、会計の混雑時を避けて、ARマーカ28に対するピントを調整できる。
【0054】
制御部41は、調整指示を受け付けたか否かを判定する(S33)。ユーザは、物品識別処理の実行中ではないタイミングでピント調整ボタン56を操作することで、調整指示を制御部41に入力する。制御部41は、調整指示の入力を受け付けたと判定した場合(S33:YES)、ARマーカ28に対するピントを調整する(S38)。物品識別システム1Aは、物品識別処理の実行中ではない任意のタイミングで、ARマーカ28に対するピントを調整できる。
【0055】
制御部41は、制御部36に指示を出し、レンズ31を上死点から下降させる(S37)。制御部36は、レンズ31を下降しながら、定期的に撮影部30により撮影範囲S内の調整ARマーカ35を撮影する(S38)。制御部36は、撮影部30により撮影された調整ARマーカ35のコントラストに基づき、ピントを調整する。物品識別システム1Aは、商品に付されたARマーカ28と異なる調整ARマーカ35を撮影することで、ARマーカ28に対するピントを調整する。これにより、物品識別システム1Aは、ピント調整の際に、商品に付されたARマーカ28と誤認し、会計することを抑制できる。
【0056】
調整ARマーカ35は、延出部34の先端部に付される。延出部34は、柱部32において、撮影台2から高さHだけ上方となる位置に固定される。高さHは、撮影台2に配置された商品の高さに基づく長さである。物品識別システム1Aにおいて、調整ARマーカ35の位置はARマーカ28を付した商品の高さに基づく位置である。これにより、物品識別システム1Aは、調整ARマーカ35に合わせてピントを調整することで、商品に付されたARマーカ28に合わせたピントに調整できる。
【0057】
制御部41は、撮影画像領域52に、撮影装置3Aにより撮影された撮影画像と、ARマーカ28に対応する商品名とを重畳して表示する。これにより、物品識別システム1Aは、店舗のユーザがより正確に清算することを可能にする。
【0058】
制御部41は、撮影画像領域52に、撮影装置3Aにより撮影された撮影画像において、ARマーカ28に対応する商品名を表示し、調整ARマーカ35に関する情報を表示しない。物品識別システム1Aは、物品識別処理において、会計と関係のないARマーカである調整ARマーカ35に関する情報を表示しない。これにより、ユーザは調整ARマーカ35を撮影画像領域52に表示する場合と比較して、より正確に会計時における商品名を把握できる。
【0059】
<第一実施形態の変形例>
本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。識別端末4は、タブレット端末としたが、パーソナルコンピュータ、スマートフォン等、他のデバイスを用いてもよい。例えば、識別端末4を公知のパーソナルコンピュータとした場合、パーソナルコンピュータが制御部41、記憶部42、及びUSBI/F47を有し、パーソナルコンピュータと、パーソナルコンピュータに対して外付けされるタッチパネル43との組み合わせも本発明の識別端末4に含まれる。識別端末4は、タッチパネル43の代わりに、表示部44として例えばモニタ、入力部45として例えばキーボード、マウスを有してもよい。また、タブレット端末に搭載されたカメラ機能を、撮影装置3Aとして用いてもよい。この場合、カメラ機能を有するタブレット端末は、物品識別装置として動作し、上記実施形態の物品識別システム1Aとして単体で機能することができる。
【0060】
ARマーカ28、調整ARマーカ35の大きさ又は形状は適宜変更してもよい。ARマーカ28と、調整ARマーカ35とは、大きさ、モジュールの数が同じであってもよい。
【0061】
物品識別処理を実行させるための指令を含むプログラムは、制御部41が、対応するプログラムを実行するまでに、記憶部42等に記憶されればよい。従って、プログラムの取得方法、取得経路及びプログラムを記憶する機器の各々は、適宜変更してもよい。制御部41が実行するプログラムは、ケーブル又は無線通信を介して他の装置から受信し、記憶部42に記憶されてもよい。他の装置は、例えば、PC、及びネットワーク網を介して接続されるサーバを含む。
【0062】
物品識別処理は、識別端末4とは別体に設けられる、専用又は汎用の装置により実行されてもよい。例えば、識別端末4の代わりに、レジスター7又はPOSシステムの端末装置に撮影装置3Aを接続し、レジスター7の制御部又はPOSシステムの端末装置が物品識別処理を実行してもよい。
【0063】
物品識別処理の各ステップは、制御部41によって実行される例に限定されず、一部又は全部が他の電子機器(例えば、ASIC)によって実行されてもよい。物品識別処理の各ステップは、複数の電子機器(例えば、複数のCPU)によって分散処理されてもよい。物品識別処理の各ステップは、必要に応じて順序の変更、ステップの省略、及び追加が可能である。
【0064】
制御部41は、S12において、撮影画像領域52に表示された撮影画像と、商品名表示29とを重畳して表示しなくてもよい。制御部41は、S9において、商品名以外の商品の情報(例えば、価格、製造年月日、アレルギー情報等)を表示してもよい。
【0065】
物品識別処理において、商品の点数の確認のための処理(S1、S4、S11、S13)を省略してもよい。
【0066】
制御部41は、S5において撮影装置3Aに動画の撮影を指示してもよい。この場合、制御部41は、S6において撮影装置3Aが撮影した動画の映像を表示してもよい。
【0067】
制御部41は、S19の処理を省略してもよい。この場合、制御部41は、表示部44に会計画面80を表示せず、S23においてレジスター7に商品の価格を出力する。制御部41は、S21、S22の処理を省略してもよい。この場合、制御部41は、処理を簡略化できる。
【0068】
制御部41は、物品識別処理において、S25、S26の処理の順番を入れ替えてもよい。制御部41は、例えば、S23の前にS25、S26の処理を実行してもよい。制御部41は、物品識別処理において、S2、S3の処理の順番を入れ替えてもよい。制御部41は、例えば、S17の後にS25、S26の処理を実行してもよい。制御部41は、S2、S3、S25、S26の処理を省略してもよい。この場合、物品識別処理の実行時を含む時機にピント調整ボタン56が操作されることで、第一調整処理においてピントの調整が行われる。
【0069】
制御部41は、第一調整処理において、S32、S33の何れか一方の処理を省略してもよい。制御部41は、S32を省略した場合、ピント調整ボタン56が操作されることで、ピントの調整を行う。制御部41は、S33を省略した場合、S25で計時が開始されてから所定時間が経過することで、ピントの調整を行う。この場合、物品識別画面50に、ピント調整ボタン56が含まれなくてもよい。制御部41は、S25で計時が開始されてから所定時間が経過し、且つピント調整ボタン56が操作された場合に、ピントの調整を行ってもよい。
【0070】
上記実施形態において、制御部41は、第一調整処理において、撮影部30により撮影された撮影画像のコントラストに基づきピントの調整を行ったが、ピントの調整方法はこの方法に限定されない。撮影装置3Bは赤外線の発光部と受光部を有し、制御部41は受光部が発光部から発せられ、調整ARマーカ35で反射した赤外線を受光することで、レンズ31と調整ARマーカ35の距離を測り、ピントを調整してもよい。
【0071】
制御部41は、調整ARマーカ35ではなく、商品に付されたARマーカ28に対してピントを調整してもよい。調整ARマーカ35は、延出部34と異なる部材に付されてもよい。調整ARマーカ35は、例えばトレー25に付されてもよい。また、調整ARマーカ35は、例えば商品の高さに基づき大きさが決められたブロックに付されてもよい。延出部34の高さHは適宜変更してもよい。
【0072】
商品には、ARマーカ28及び調整ARマーカ35の代わりに、公知のコード(例えば、バーコード、QRコード(登録商標)等)、又は独自のマーカが付帯されてもよい。商品には、商品の価格以外の情報(例えば、製造年月日、アレルギー情報等)を識別するための、ARマーカ28及び調整ARマーカ35と異なるコードまたはマーカが付帯されてもよい。
【0073】
識別端末4にARマーカ28及び調整ARマーカ35を登録可能にするアプリケーションソフトをインストールしてもよい。
【0074】
<第二実施形態>
図11~
図15を参照し、本発明の第二実施形態に係る物品識別システム1Bを説明する。第二実施形態に係る物品識別システム1Bは、撮影装置3Aに代わり撮影装置3Bを有する点、及び第一調整処理の代わりに物品識別処理において第二調整処理が実行される点において、第一実施形態の物品識別システム1Aと異なる。物品識別システム1Bのその他の構成は、物品識別システム1Aと同じである。以下の説明において、物品識別システム1Bの物品識別システム1Aと共通する構成に、物品識別システム1Aと同一の符号を付し、説明を省略する。
【0075】
<撮影装置3Bの構成>
図11、
図12を参照し、撮影装置3Bについて説明する。撮影装置3Bは、延出部34、及び調整ARマーカ35を有さない点で、撮影装置3Aと異なる。物品識別システム1Bのその他の構成は、物品識別システム1Aと同じである。
【0076】
図12に示すように、複数の商品が撮影台2に配置された場合、其の高さが互いに異なることがある。そのため、商品に付されたARマーカ28のレンズ31からの距離は、商品の高さに基づき変動する。
図12では、ARマーカ28A、28Dが同じ高さに位置する。ARマーカ28BはARマーカ28A、28Dよりも下方に位置する。ARマーカ28CはARマーカ28A、28Dよりも上方に位置する。
【0077】
<物品識別システム1Bにおける物品識別処理>
図13を参照し、物品識別システム1Bにおける物品識別処理について説明する。物品識別システム1Bにおける物品識別処理は、S2、S3、S5、S6(
図8参照)、S25、S26(
図9参照)の処理が省略され、第二調整処理が実行される点で、物品識別システム1Aにおける物品識別処理と異なる。制御部41は、入力された商品の点数を記憶部42に記憶した後(S4)、第二調整処理を実行する(S50)。
【0078】
図14を参照し、第二調整処理について説明する。第二調整処理は、レンズ31の上下方向の移動範囲における上死点から下死点まで移動し、撮影範囲S内の複数のARマーカ28に対してピントを合わせる処理である。
【0079】
制御部41は、変数Nの値を1に設定する(S51)。制御部41は、撮影装置3Bの制御部36に指示を出し、レンズ31を上下方向の移動範囲における上死点に移動させる(S52)。制御部41から指示を受信した制御部36は、モータ38を駆動し、レンズ31を上死点に移動する。
【0080】
制御部41は、制御部36に指示を出し、レンズ31を上死点から下降させる(S53)。制御部41から指示を受信した制御部36は、モータ38を駆動し、レンズ31を上死点から下降する。制御部41は、制御部36に指示を出し、定期的に撮影部30により撮影範囲S内を撮影する(S54)。制御部36は、撮影された撮影範囲S内のARマーカ28のコントラストに基づき、ピントが合っているか否かを判定する。
【0081】
制御部41は、撮影範囲S内の何れかのARマーカ28とピントが合っているか否かを判定する(S55)。制御部41は、S55において、制御部36から調整信号を受信したか否かに基づき判定する。制御部36は、撮影範囲SのARマーカ28のコントラストに基づき、撮影範囲S内の何れかのARマーカ28にピントが合っているか否かを判定する。
図12のように商品が撮影台2に配置された場合、レンズ31が上死点から下降するので、複数のARマーカ28のうちレンズ31に最も近いARマーカ28Cに対してピントが合う。
【0082】
制御部36は、ピントが合っていると判定した場合、制御部41に調整信号を入力する。制御部41は、制御部36から調整信号を受信していないと判定した場合、撮影範囲S内の全てのARマーカ28に対してピントが合っていないと判定し(S55:NO)、処理をS55に戻す。
【0083】
制御部41は、制御部36から調整信号を受信したと判定した場合、撮影範囲S内の何れかのARマーカ28(
図12の場合、ARマーカ28C)に対してピントが合っていると判定し(S55:YES)、制御部36に指示を出し、レンズ31の下降を停止させる(S56)。以下、S56で停止したレンズ31の位置を第1位置という。制御部41は、ARマーカ28Cに対してピントが合う第1位置にて第1画像52A(
図15(A)参照)を撮影するよう制御部36に指示を出し、撮影された第1画像52Aを取得する(S57)。なお、
図15では、商品及びARマーカ28を模式的に示し、説明の便宜上、ピントが合っている商品及びARマーカ28について網掛けする。
【0084】
制御部41は、レンズ31の上死点から第1位置までの移動距離に基づき、分割移動量及び分割数を決定する(S58)。制御部41は、レンズ31の上死点から下死点までの移動において、移動距離を複数回に分割してレンズ31を下降させる。分割移動量は、分割された1回の移動でレンズ31が下降する距離である。分割数は、レンズ31の上死点から下死点までの移動を分割した数である。レンズ31の上死点から下死点までの距離をL、レンズ31の上死点から第1位置までの移動距離をK、分割移動量をJ、分割数をMとすると、L=K+J(M-1)で表される。
【0085】
制御部41は、変数Nの値に1を加える(S59)。制御部41は、制御部36に指示を出し、レンズ31を分割移動させる(S60)。制御部36は、分割移動において、モータ38を駆動し、分割移動量Jだけレンズ31を下降する。制御部41は、制御部36に指示を出し、レンズ31の分割移動後の位置において、複数のARマーカ28の何れかとピントが合っているか否かを判定させる(S61)。
【0086】
図12のように商品が撮影台2に配置された場合、レンズ31がARマーカ28Cにピントが合う第1位置から下降すると、ARマーカ28Cの下方に位置するARマーカ28A、28Dに対してピントが合う。制御部36は、ARマーカ28Cと異なるARマーカ28(ARマーカ28A、28D)に対してピントが合った場合、調整信号を制御部41に入力する。
【0087】
制御部41は、レンズ31の分割移動後の位置において、撮影範囲S内の何れかのARマーカ28とピントが合っているか否かを判定する(S62)。制御部41は、S62において、制御部36から調整信号を受信したか否かに基づき判定する。制御部41は、制御部36から調整信号を受信していないと判定した場合、撮影範囲S内の全てのARマーカ28とピントが合っていないと判定して(S62:NO)、処理をS65に移行する。制御部41は、制御部36から調整信号を受信したと判定した場合、撮影範囲S内の何れかのARマーカ28(
図12の場合、ARマーカ28A、28D)とピントが合っていると判定して(S62:YES)、ARマーカ28(
図12の場合、ARマーカ28A、28D)に対してピントが合った状態の第2画像52B(
図15(B)参照)を撮影するよう制御部36に指示を出し、撮影された第2画像52Bを取得する(S63)。制御部41は、処理をS65に移行する。
【0088】
制御部41は、変数Nが分割数Mに到達したか否かを判定する(S65)。制御部41は、変数Nが分割数Mに到達していないと判定した場合(S65:NO)、処理をS59に戻す。制御部41は、変数Nが分割数Mに到達するまでS59~S65の処理を繰り返す。撮影範囲S内の全てのARマーカ28とピントが合っていない判定した場合(S62:NO)、レンズ31の分割移動を繰り返し実行させる(S60)。
図12のように商品が撮影台2に配置された場合、ARマーカ28A、28Dにピントが合う位置からレンズ31が下降されると、ARマーカ28A、28Dの下方に位置するARマーカ28Bに対してピントが合う。制御部41は、ARマーカ28Bに対してピントが合った状態の第3画像52C(
図15(C)参照)を撮影するよう制御部36に指示を出し、撮影された第3画像52Cを取得する(S63)。
【0089】
制御部41は、変数Nが分割数Mに到達したと判定した場合(S65:YES)、合成処理を実行する(S66)。制御部41は、S65において第二調整処理で撮影された画像(第1画像52A、第2画像52B、第3画像52C)を合成した合成画像52D(
図15(D)参照)を生成する。合成画像52Dでは、全てのARマーカ28に対してピントが合っている。
【0090】
制御部41は、S66で生成した合成画像52Dを撮影画像領域52(
図6参照)に表示する(S67)。制御部41は、処理を物品識別処理に戻す。制御部41は、物品識別処理(
図13参照)において、S66で生成した合成画像52DからARマーカ28を検出する(S7)。
【0091】
<第二実施形態の作用、効果>
撮影装置3Bは、モータ38の駆動により、レンズ31を上下方向に移動する。制御部41は、第二調整処理において、撮影装置3Bの制御部36に指示を出し、レンズ31を上死点から下降させる(S53)。制御部41は、制御部36に指示を出し、レンズ31の下降中、定期的に撮影部30により撮影範囲S内を撮影する(S54)。制御部36は、撮影された撮影範囲S内のARマーカ28のコントラストに基づき、ピントが合っているか否かを判定する。物品識別システム1Bは、レンズ31を移動して商品に付されたARマーカ28に対して自動でピントを調整できる。これにより、物品識別システム1Bは、ARマーカ28に対してピントがずれることを抑制できる。
【0092】
制御部41は、制御部36に指示を出し、レンズ31を分割移動させる(S60)。制御部36は、分割移動において、モータ38を駆動し、分割移動量Jだけレンズ31を下降する。制御部41は、制御部36に指示を出し、レンズ31の分割移動後の位置において、複数のARマーカ28の何れかとピントが合っているか否かを判定させる(S61)。
図12のように商品が撮影台2に配置された場合、レンズ31がARマーカ28Cにピントが合う第1位置から分割移動量Jだけレンズ31を下降し、ARマーカ28C以外のARマーカ(ARマーカ28A、28B、28D)とピントが合わない場合(S62:NO)、再度、レンズ31を分割移動させる(S60)。この場合、物品識別システム1Bは、分割移動量Jだけレンズ31を下降した位置でピントが合っているか否かを判定するので、ARマーカ28C以外のARマーカとピントが合うまで、逐次ピントが合っているか否かを判定する場合と比較して、処理を簡略化できる。
【0093】
制御部41は、最初にARマーカ(ARマーカ28C)とピントが合った第1位置にて、第1画像52Aを撮影するよう制御部36に指示を出し、撮影された第1画像52Aを取得する(S57)。制御部41は、レンズ31の分割移動(S60)を実行した後において、撮影範囲S内の何れかのARマーカ28とピントが合っていると判定した場合(S62:YES)、ARマーカ28に対してピントが合った状態の第2画像52B、第3画像52Cを撮影するよう制御部36に指示を出し、撮影された第2画像52B、第3画像52Cを取得する(S63)。制御部41は、合成処理を実行し、第二調整処理で撮影された画像(第1画像52A、第2画像52B、第3画像52C)を合成した合成画像52Dを生成する(S65)。合成画像52Dでは、全てのARマーカ28に対してピントが合っている。よって、物品識別システム1Bは、高さの異なる複数の商品が撮影範囲S内にあった場合にも、商品に付された全てのARマーカ28に対してピントを調整できる。
【0094】
制御部41は、S66で生成した合成画像52DからARマーカ28を検出する(S7)。合成画像52Dでは、全てのARマーカ28に対してピントが合っている。よって、物品識別システム1Bは、商品に付された全てのARマーカ28に基づき、商品を正しく識別できる。
【0095】
制御部41は、レンズ31の上死点から第1位置までの移動距離Kに基づき、分割移動量Jを決定する(S58)。これにより、物品識別システム1Bは、ARマーカ28A、28B、28Dに対してピントを容易に調整できる。
【0096】
制御部41は、制御部36に指示を出し、レンズ31を上死点から下降させる(S53)。制御部41から指示を受信した制御部36は、モータ38を駆動し、レンズ31を上死点から下降する。仮に、レンズ31を下死点から上方に移動してピントを調整した場合、商品の高さが不明であるので、どこまでレンズ31を上方に移動すれば全てのARマーカ28に対してピントを調整できるかが不明である。例えば、所定の高さまで上方に移動すると設定された場合、一部の商品に付されたARマーカ28に対するピントを調整できない可能性がある。これに対し、物品識別システム1Bは、商品の上方に位置するレンズ31が上方から下方に移動してピントを調整するので、全ての商品に付されたARマーカ28に対してピントがずれることを、簡単な処理で抑制できる。
【0097】
<第二実施形態の変形例>
レンズ31の移動手段はモータ38に限らず適宜変更してもよい。撮影台2に対する撮影装置3Bの位置は適宜変更してもよい。撮影装置3Bは、例えば撮影台2の左方に位置してもよい。レンズ31の移動方向は上下方向に限らず、適宜変更してもよい。
【0098】
制御部41は、第二調整処理において、レンズ31の移動開始位置を上死点から適宜変更してもよい。レンズ31の移動範囲は、上死点から下死点までに限らず、適宜変更してもよい。
【0099】
制御部41は、S59~S67の処理を省略してもよい。この場合、制御部41は、撮影台2に配置された商品のうち最も高さが高い商品に付されたARマーカ28(28C)に対してピントの調整を行う。制御部41は、S65の処理を省略してもよい。この場合、制御部41は、撮影台2に配置された商品のうち最も高さが高い商品に付されたARマーカ28(28C)、及び2番目に高い商品に付されたARマーカ28(28A、28D)の夫々に対してピントの調整を行い、画像を合成する。
【0100】
制御部41は、S67の処理を省略してもよい。S67における合成画像52Dの生成は、全ての撮影画像(第1画像52A、第2画像52B、第3画像52C)の合成による生成に限定されない。合成画像52Dは、例えば第1画像52A及び第2画像52Bの合成により生成してもよい。
【0101】
制御部41は、S58において、分割移動量J、分割数Mを上死点から第1位置までの移動距離Kに基づかずに決定してもよい。分割移動量J、分割数Mは、予め記憶部42に記憶された所定値でもよい。
【0102】
商品には、ARマーカ28の代わりに、公知のコード(例えば、バーコード、QRコード(登録商標)等)、又は独自のマーカが付帯されてもよい。商品には、商品の価格以外の情報(例えば、製造年月日、アレルギー情報等)を識別するための、ARマーカ28と異なるコードまたはマーカが付帯されてもよい。
【0103】
<その他>
上記実施形態において、撮影装置3A、3Bは本発明の「撮影部」に相当する。USBI/F47が本発明の「通信部」に相当する。S38、S54、S61の処理は本発明の「調整処理」に相当する。S6の処理は本発明の「第一表示処理」に相当する。S10の処理は本発明の「第二表示処理」に相当する。S25の処理は本発明の「計時処理」に相当する。S32の処理は本発明の「判定処理」に相当する。S1の処理は本発明の「会計受付処理」に相当する。S3の処理は本発明の「停止処理」に相当する。調整指示は本発明の「実行指示」に相当する。S33の処理は本発明の「調整受付処理」に相当する。延出部34が本発明の「部材」に相当する。調整ARマーカ35は請求項5の発明の「第2ARマーカ」の一例である。柱部32は本発明の「アーム」に相当する。下方向は本発明の「所定方向」に相当する。上死点は本発明の「所定位置」に相当する。モータ38は本発明の「移動部」に相当する。S53の処理は本発明の「第1移動処理」に相当する。S54の処理は本発明の「移動調整処理」に相当する。S60の処理は本発明の「第2移動処理」に相当する。ARマーカ28A、28B、28Dは請求項8の発明の「第2ARマーカ」の一例である。S62の処理は本発明の「ピント判定処理」に相当する。S57の処理は本発明の「第1取得処理」に相当する。S63の処理は本発明の「第2取得処理」に相当する。S66の処理は本発明の「合成処理」に相当する。第二実施形態におけるS7の処理は本発明の「検出処理」に相当する。S58の処理は本発明の「移動量決定処理」に相当する。
【符号の説明】
【0104】
1A、1B 物品識別システム
3A、3B 撮影装置
4 識別端末
28、28A~28D ARマーカ
34 延出部
38 モータ
35 調整ARマーカ
41 制御部
52A 第1画像
52B 第2画像
52C 第3画像
52D 合成画像