(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061096
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】車両の制御方法及び車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/14 20060101AFI20240425BHJP
F02D 29/02 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
B60W30/14
F02D29/02 301C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168815
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】森田 哲庸
(72)【発明者】
【氏名】下山 広樹
(72)【発明者】
【氏名】芦沢 裕之
(72)【発明者】
【氏名】榊原 健太
(72)【発明者】
【氏名】小暮 祐也
(72)【発明者】
【氏名】小野 雅司
(72)【発明者】
【氏名】川島 英樹
(72)【発明者】
【氏名】有田 寛志
【テーマコード(参考)】
3D241
3G093
【Fターム(参考)】
3D241BA01
3D241BA51
3D241BC01
3D241CC02
3D241CC08
3D241DA04Z
3D241DB02Z
3D241DC02Z
3D241DC45Z
3G093AA01
3G093AB02
3G093BA02
3G093CB10
3G093DA01
3G093DA09
3G093DB05
3G093DB11
3G093EA02
3G093FA04
(57)【要約】
【課題】車両の駆動力の目標駆動力に対するオーバーシュートを抑制する。
【解決手段】車両1は、過給機を備えた内燃機関を駆動源として搭載している。車両1の走行支援コントロールユニット60は、車速を目標車速に制御するクルーズコントロールの実施中に車両1に作用する外乱を推定する外乱推定部74と、外乱を用いて車両の目標駆動力をフィードバック制御するフィードバック制御部75と、を有している。外乱推定部74は、目標駆動力に過給機の応答遅れを考慮して補正した補正目標駆動力を用いて外乱を推定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過給機を備えた内燃機関を駆動源として搭載する車両の制御方法において、
車速を目標車速に制御するクルーズコントロールの実施中に車両に作用する外乱を推定し、
上記外乱を用いて車両の目標駆動力をフィードバック制御し、
上記外乱は、上記目標駆動力に上記過給機の応答遅れを考慮して補正した補正目標駆動力を用いて推定することを特徴とする車両の制御方法。
【請求項2】
上記外乱は、上記過給機の応答遅れを考慮した車両の推定モデルの駆動力である上記補正目標駆動力と、現在車速から推定される車両の実モデルにおける実際の駆動力である実駆動力との差分と、に基づいて推定することを特徴とする請求項1に記載の車両の制御方法。
【請求項3】
上記補正目標駆動力は、現在の吸入空気量を用いて算出された制限駆動力によって制限されていることを特徴とする請求項2に記載の車両の制御方法。
【請求項4】
上記制限駆動力は、現在の吸入空気量を用いて算出された第1トルクと現在の車両のギヤ比とを用いて算出されていることを特徴とする請求項3に記載の車両の制御方法。
【請求項5】
上記第1トルクは、上記内燃機関の現在の機関回転数に対応した非過給領域における第1最大トルクと現在の吸入空気量から算出された第2最大トルクとの大小関係を比較して、大きい方のトルクであることを特徴とする請求項4に記載の車両の制御方法。
【請求項6】
上記補正目標駆動力は、非過給領域では上記制限駆動力による制限を行わず、過給領域では上記制限駆動力による制限を行うことを特徴とする請求項5に記載の車両の制御方法。
【請求項7】
過給機を備えた内燃機関を駆動源として搭載する車両の制御方法において、
車速を目標車速に制御するクルーズコントロールの実施中に車両に作用する外乱を推定し、
上記外乱を用いて車両の目標駆動力をフィードバック制御し、
上記目標駆動力は、上記過給機の応答遅れを考慮して算出し、
上記外乱は、上記目標駆動力を用いて推定することを特徴とする車両の制御方法。
【請求項8】
過給機を備えた内燃機関を駆動源として搭載する車両の制御装置において、
車速を目標車速に制御するクルーズコントロールの実施中に車両に作用する外乱を推定する外乱推定部と、
上記外乱を用いて車両の目標駆動力をフィードバック制御するフィードバック制御部と、を有し、
上記外乱推定部は、上記目標駆動力に上記過給機の応答遅れを考慮して補正した補正目標駆動力を用いて上記外乱を推定することを特徴とする車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御方法及び車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、目標加速度と実加速度との偏差に基づき加速度フィードバック量を算出するものにおいて、過給機の作動状態と非作動状態とが切り替わる付近に要求トルクがあるとき、加速度フィードバック量の演算を禁止し、目標駆動力の変動を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1においては、過給機の応答遅れを考慮せずに加速度フィードバック補正量を算出しているため、過給機の応答遅れによって出力トルクに応答遅れが生じると、加速度フィードバック補正量がその分大きくなる虞がある。すなわち、特許文献1においては、過給機の応答遅れに起因して加速度フィードバック補正量が過大となって目標駆動力がオーバーシュートしてしまう虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明における車両は、過給機を備えた内燃機関を駆動源として搭載するものであって、車速を目標車速に制御するクルーズコントロールの実施中に車両に作用する外乱を推定し、上記外乱を用いて車両の目標駆動力をフィードバック制御し、上記外乱は、上記目標駆動力に上記過給機の応答遅れを考慮して補正した補正目標駆動力を用いて推定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明の車両は、クルーズコントロールの実施中に外乱を推定する際、予め過給機の応答遅れを考慮することで、車両の駆動力の目標駆動力に対するオーバーシュートを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明が適用される車両に搭載された内燃機関のシステム構成を模式的に示した説明図。
【
図2】第1実施例におけるクルーズコントロール中の車両の制御の流れを模式的に示した説明図。
【
図3】制限駆動力の算出過程を模式的に示した説明図。
【
図5】非過給領域の最大トルクと過給領域の最大トルクとを模式的に示した説明図。
【
図6】目標車速に対する現在車速の追従性の違いを模式的に示した説明図。
【
図7】第2実施例におけるクルーズコントロール中の車両の制御の流れを模式的に示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0009】
図1は、本発明が適用される車両1(後述)に搭載された内燃機関10のシステム構成を模式的に示した説明図である。
【0010】
内燃機関10は、ピストン20の往復直線運動をクランクシャフト21の回転運動に変換して動力として取り出すいわゆるレシプロ式の内燃機関である。
【0011】
内燃機関10は、吸気通路22と排気通路23とを有している。吸気通路22は、吸気弁24を介して燃焼室25に接続されている。排気通路23は、排気弁26を介して燃焼室25に接続されている。
【0012】
内燃機関10は、燃焼室25内に燃料(ガソリン)を直接噴射する燃料噴射弁27を有している。燃料噴射弁27から噴射された燃料は、燃焼室25内で点火プラグ28により点火される。なお、内燃機関10は、各気筒の吸気ポートに燃料を噴射するものであってもよい。
【0013】
吸気通路22には、吸気中の異物を捕集するエアクリーナ30と、吸入空気量を検出するエアフローメータ31と、コントロールユニット50からの制御信号によって開度が制御される電動のスロットル弁32と、が設けられている。
【0014】
エアフローメータ31は、スロットル弁32の上流側に配置されている。エアフローメータ31は、温度センサを内蔵したものであって、吸気導入口の吸気温度を検出可能となっている。エアクリーナ30は、エアフローメータ31の上流側に配置されている。
【0015】
排気通路23には、マニホールド触媒33と床下触媒34が設けられている。マニホールド触媒33及び床下触媒34は、例えば三元触媒等からなる排気浄化用の触媒である。
【0016】
また、この内燃機関10は、吸気通路22に設けられたコンプレッサ35と排気通路23に設けられた排気タービン36とを同軸上に備えた排気タービン式の過給機(ターボ過給機)37を有している。コンプレッサ35は、スロットル弁32の上流側で、かつエアフローメータ31よりも下流側に配置されている。排気タービン36は、マニホールド触媒33の下流側に配置されている。
【0017】
吸気通路22には、リサーキュレーション通路38が接続されている。リサーキュレーション通路38には、コンプレッサ35の下流側からコンプレッサ35の上流側へ過給圧を解放可能な電動のリサーキュレーション弁39が配置されている。
【0018】
また、吸気通路22には、コンプレッサ35の下流側に、コンプレッサ35により圧縮(加圧)された吸気を冷却して充填効率を良くするインタクーラ40が設けられている。
【0019】
排気通路23には、排気タービン36を迂回して排気タービン36の上流側と下流側とを接続する排気バイパス通路42が接続されている。排気バイパス通路42には、排気バイパス通路42内の排気流量を制御する電動のウエストゲート弁43が配置されている。ウエストゲート弁43は、排気タービン36に導かれる排気ガスの一部を排気タービン36の下流側にバイパスさせることが可能であり、内燃機関10の過給圧を制御可能なものである。
【0020】
なお、
図1中の符号44は、吸気通路22のコレクタ部である。吸気通路22は、内燃機関10が多気筒内燃機関であれば、コレクタ部44よりも下流側が吸気マニホールドとして気筒毎に分岐する。
【0021】
コントロールユニット50は、CPU、ROM、RAM及び入出力インターフェースを備えた周知のデジタルコンピュータである。
【0022】
コントロールユニット50には、上述したエアフローメータ31の検出信号のほか、車両1の車速を検出する車速センサ51、クランクシャフト21のクランク角を検出するクランク角センサ52等の各種センサ類の検出信号が入力されている。クランク角センサ52は、内燃機関10の機関回転速度を検出可能なものである。
【0023】
そして、コントロールユニット50は、各種センサ類の検出信号等に基づいて、燃料噴射弁27から噴射される燃料の噴射量や噴射時期、内燃機関10(点火プラグ28)の点火時期、吸入空気量等を最適に制御する。
【0024】
また、内燃機関10を駆動源として搭載する車両1は、車速を目標車速に制御するクルーズコントロールが実施可能となっている。クルーズコントロールは、車速を目標車速に制御することで、例えば、当該車両1の前方を走行する前走車との車間距離を予め設定された所期の車間距離に維持したり、車速を目標車速に維持したりすることが可能なものである。
【0025】
クルーズコントロールは、車両1の目標車速、車両1の現在車速、前走車との目標車間距離、及び前走車との現在の車間距離に基づいた走行支援コントロールユニット60からの指令に基づいて実施される。
【0026】
走行支援コントロールユニット60は、CAN(Controller Area Network)通信線61を介してコントロールユニット50と情報の遣り取り(通信)を行っている。
【0027】
車両1の目標車速は、例えば、前走車との車間距離や、車両1の運転者によって設定された目標速度に応じて設定される。
【0028】
詳述すると、車両1の目標車速は、例えば、予め設定された所期の車間距離に対して前走車との現在の車間距離が大きくなれば速く(高く)なるように設定され、予め設定された所期の車間距離に対して前走車との現在の車間距離が小さくなれば遅く(低く)なるように設定される。
【0029】
また、車両1の目標車速は、例えば、運転者によって設定された目標速度に対して現在の車速が速く(高く)なれば遅く(低く)なるよう設定され、運転者によって設定された目標速度に対して現在の車速が遅く(低く)なれば速く(高く)なるよう設定される。
【0030】
クルーズコントロールは、例えば、車速が運転者によって設定された目標速度以下であれば、予め設定された所期の車間距離に対して前走車との現在の車間距離が大きくなれば速く(高く)なるように設定され、予め設定された所期の車間距離に対して前走車との現在の車間距離が小さくなれば遅く(低く)なるように設定される。
【0031】
前走車との車間距離は、例えば、車載のレーダーやカメラ等の車間測定ユニット62を用いて検出する。
【0032】
ここで、車両1は、クルーズコントロールの実施中、車両1に作用する外乱を推定し、この外乱を用いて車両1の目標駆動力をフィードバック制御し、車速が目標車速あるいは車間距離が目標車間距離となるように制御している。
【0033】
図2は、第1実施例におけるクルーズコントロール中の車両1の制御の流れを模式的に示した説明図である。
【0034】
クルーズコントロール制御部71は、目標車速、現在の車速、目標車間距離、現在の車間距離を用いて、車両1の基本駆動力を算出する。
【0035】
パワートレイン駆動力制御部72は、クルーズコントロール制御部71で算出された基本駆動力を後述する外乱推定部74で推定された外乱を用いて補正した目標駆動力に基づいてパワートレインを制御する。パワートレインは、内燃機関10に発生した回転エネルギを駆動輪に伝えるための装置類の総称であり、内燃機関10、内燃機関10に連結された変速機(図示せず)等を含むものである。
【0036】
車両1は、パワートレインの出力軸(例えば、変速機の出力軸)の駆動力であるパワートレイン駆動力で駆動輪が駆動される。パワートレイン駆動力で駆動輪が駆動された結果が、車両1の現在車速となる。パワートレイン駆動力は、過給機37に応答遅れがある場合、目標駆動力よりも小さい値となる。また、車両1の現在車速は、路面の傾斜等による走行抵抗等の外乱がある場合、パワートレイン駆動力に見合った車速とはならない。つまり、車両1の現在車速は、車両1の現在車速は、車両1に作用する外乱に加え、過給機37の応答遅れの影響を受けた結果を表すものとなっている。
【0037】
過給遅れ処理部73は、パワートレイン駆動力制御部72に入力される目標駆動力に過給機37の応答遅れを考慮した補正を行い補正目標駆動力として出力する。詳述すると、過給遅れ処理部73は、目標駆動力に対して制限駆動力で上限を制限した補正目標駆動力を出力する。
【0038】
制限駆動力は、
図3に示すように、現在の機関回転数に対応した非過給領域(NA領域)における非過給領域最大トルクと、現在の空気量から算出される出力可能最大トルクと、を用いて算出される。
図3は、制限駆動力の算出過程を模式的に示した説明図である。
【0039】
非過給領域最大トルクは、第1最大トルクに相当するものである。出力可能最大トルクは、第2最大トルクに相当するものである。なお、非過給領域最大トルク及び出力可能最大トルクは、例えば機関回転数に対応させて割り付けたマップ値として設定してもよい。
【0040】
制限駆動力は、非過給領域最大トルクと出力可能最大トルクとの大小関係を比較して大きい方の値である制限トルクを駆動力に変換したものである。つまり、制限駆動力は、第1トルクに相当する制限トルクに変速機の現在選択されているギヤ比を乗算して駆動力に変換したものである。制限トルクは、制限駆動力のトルク換算値である。制限駆動力は、制限トルクの駆動力換算値である。
【0041】
補正目標駆動力のトルク換算値である補正目標駆動トルクは、
図4に示すように、制限トルクによって上限が制限されている。すなわち、補正目標駆動力は、制限駆動力によって上限が制限されている。
図4は、制限トルクの特性を模式的に示した説明図である。
【0042】
図4中に太実線で示す特性線Qは制限トルクである。
図4中に破線で示す特性線Q1は、非過給領域における内燃機関10(パワートレイン)の出力トルクの最大トルクである。
図4中に細実線で示す特性線Tは、補正目標駆動力を変換(ギヤ比で除した)した補正目標駆動トルクの一例である。
図4においては、便宜上、特性線Qが特性線Q1及び特性線Tと重ならないように図示している。すなわち、特性線Qは、実際は、横軸と平行な部分が特性線Q1と重なり、横軸と平行でない部分が特性線Tと重なっている。
【0043】
なお、内燃機関10の運転領域が非過給領域にあるときの機関回転数に応じた最大トルク(非過給領域最大トルク)は、
図5に示すように、内燃機関10の運転領域が過給領域にあるときの機関回転数に応じた最大トルク(過給領域最大トルク)よりも小さい値となっている。
【0044】
図5は、非過給領域での最大トルク(非過給領域最大トルク)と過給領域での最大トルク(過給領域最大トルク)を模式的に示した説明図である。
図5中の特性線Q1は、非過給領域における内燃機関10の出力トルクの最大トルク(非過給領域最大トルク)の一例を示している。
図5中の特性線Q2は、過給領域における内燃機関10の出力トルクの最大トルク(過給領域最大トルク)の一例を示している。
【0045】
内燃機関10の出力トルクの最大値は、
図5に示すように、非過給領域及び過給領域ともに、機関回転数に対する依存性がある。
【0046】
外乱推定部74は、パワートレイン駆動力で駆動された車両1の車速(現在車速)と、過給遅れ処理部73で算出された補正目標駆動力と、を用いて車両1に作用する外乱を推定する。詳述すると、外乱推定部74は、現在車速から推定される駆動力と、補正目標駆動力と、を用いて車両1に作用する外乱を推定する。換言すると、外乱推定部74は、過給機37の応答遅れを考慮した車両1の推定モデルの駆動力である補正目標駆動力と、現在車速から推定される車両1の実モデルにおける実際の駆動力である実駆動力との差分と、に基づいて外乱を推定する。
【0047】
外乱推定部74は、推定された外乱を駆動力相当に変換してフィードバック制御部75へ出力する。
【0048】
フィードバック制御部75は、クルーズコントロール制御部71から出力された基本駆動力に外乱推定部74から出力された外乱を加算して目標駆動力として出力する。すなわち、目標駆動力は、外乱を用いてフィードバック制御されている。フィードバック制御部75は、目標駆動力をパワートレイン駆動力制御部72及び過給遅れ処理部73に出力する。
【0049】
第1実施例においては、クルーズコントロール制御部71、外乱推定部74及びフィードバック制御部75が走行支援コントロールユニット60に属する機能である。第1実施例においては、パワートレイン駆動力制御部72及び過給遅れ処理部73がコントロールユニット50に属する機能である。
【0050】
上述したように、目標駆動力と現在車速とから推定された外乱には、路面の傾斜等の走行抵抗に起因する本来の外乱に対して過給機37の応答遅れに起因する要素が上乗せされたものとなる。
【0051】
そのため、車両1は、過給機37の応答遅れに起因する要素が上乗せされた外乱を用いて目標駆動力をフィードバック制御すると、
図6に破線で示す特性線P2に示すように、車両1の目標車速に対して車両1の実際の車速(現在車速)がオーバーシュートしてしまう。
図6は、目標車速に対する現在車速の追従性の違いを模式的に示した説明図である。
【0052】
それに対して、車両1の目標駆動力をフィードバック制御する際に、過給機37の応答遅れを考慮すれば、外乱推定部74で推定される外乱が過給機37の応答遅れを考慮したものとなるため、車両1の駆動力の目標駆動力に対するオーバーシュートを抑制することができ、ひいては
図6中に実線で示す特性線P1のように、車両1の目標車速に対して車両1の実際の車速(現在車速)がオーバーシュートしてしまうことを抑制することができる。
【0053】
また、制限トルクは、
図4に示すように、非過給領域では非過給領域における内燃機関10の最大トルク(非過給領域最大トルク)となっている。すなわち、補正目標駆動トルクは、非過給領域では制限トルクによる制限を行わず、過給領域では制限トルクによる制限を行っている。換言すると、補正目標駆動力は、非過給領域では制限駆動力による制限を行わず、過給領域では制限駆動力による制限を行っている。
【0054】
そのため、上述した実施例の車両1は、非過給領域では制限駆動力により不必要な制限が加えられないため、初期の駆動力応答(トルク応答)を実現することができる。
【0055】
なお、制限トルクは、過給領域では現在の吸入空気量を用いて算出された出力可能最大トルクとなっている。つまり、補正目標駆動トルクは、過給領域では現在の吸入空気量を用いて算出された制限トルクによって上限値が制限されている。換言すると、補正目標駆動力は、過給領域では現在の吸入空気量を用いて算出された制限駆動力によって上限値が制限されている。
【0056】
以下、本発明の他の実施例について説明する。なお、上述した実施例と同一の構成要素には同一の符号を付し重複する説明を省略する。
【0057】
図7を用いて本発明の第2実施例について説明する。第2実施例の車両1は、上述した第1実施例の車両1と同様に、クルーズコントロールの実施中、車両1に作用する外乱を用いて車両1の目標駆動力をフィードバック制御しているが、過給機37の応答遅れの考慮の仕方が異なっている。すなわち、第2実施例では、クルーズコントロール制御部71で算出された基本駆動力に過給機37の応答遅れを考慮した補正を実施している。上述した第1実施例では、外乱推定部74に入力される補正目標駆動力が目標駆動力に過給機37の応答遅れを考慮した補正を実施している。
【0058】
図7は、第2実施例におけるクルーズコントロール中の車両1の制御の流れを模式的に示した説明図である。
【0059】
クルーズコントロール制御部71は、目標車速、現在の車速、目標車間距離、現在の車間距離を用いて、車両1の基本駆動力を算出する。
【0060】
クルーズコントロール制御部71は、算出した基本駆動力を過給遅れ処理部73に出力する。
【0061】
過給遅れ処理部73は、基本駆動力に過給機37の応答遅れを考慮した補正を行い補正基本駆動力として出力する。詳述すると、過給遅れ処理部73は、基本駆動力に対して制限駆動力で上限を制限した補正基本駆動力を出力する。
【0062】
パワートレイン駆動力制御部72は、過給遅れ処理部73で算出された補正基本駆動力を後述する外乱推定部74で推定された外乱を用いて補正した目標駆動力に基づいてパワートレインを制御する。
【0063】
車両1は、パワートレインの出力軸(例えば、変速機の出力軸)の駆動力であるパワートレイン駆動力で駆動輪が駆動される。
【0064】
外乱推定部74は、パワートレイン駆動力で駆動された車両1の車速(現在車速)と、パワートレイン駆動力制御部72に入力される目標駆動力と、を用いて車両1に作用する外乱を推定する。詳述すると、外乱推定部74は、現在車速から推定される駆動力と、目標駆動力と、を用いて車両1に作用する外乱を推定する。換言すると、外乱推定部74は、過給機37の応答遅れを考慮した車両1の推定モデルの駆動力である目標駆動力と、現在車速から推定される車両1の実モデルにおける実際の駆動力である実駆動力との差分と、に基づいて外乱を推定する。
【0065】
外乱推定部74は、推定された外乱を駆動力相当に変換してフィードバック制御部75へ出力する。
【0066】
フィードバック制御部75は、過給遅れ処理部73から出力された補正基本駆動力に外乱推定部74から出力された外乱を加算して目標駆動力として出力する。すなわち、目標駆動力は、外乱を用いてフィードバック制御されている。フィードバック制御部75は、目標駆動力をパワートレイン駆動力制御部72及び外乱推定部74に出力する。
【0067】
この第2実施例においては、クルーズコントロール制御部71、過給遅れ処理部73、外乱推定部74及びフィードバック制御部75が、走行支援コントロールユニット60に属する機能となる。また、第2実施例においては、パワートレイン駆動力制御部72がコントロールユニット50に属する機能となる。
【0068】
このような第2実施例においても、上述した第1実施例と略同様の作用効果を奏することができる。
【0069】
以上、本発明の具体的な実施例を説明してきたが、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0070】
例えば、吸入空気量は、コレクタ部44の吸気圧から推定してもよい。
【0071】
上述した各実施例は、車両の制御方法及び車両の制御装置に関するものである。
【符号の説明】
【0072】
1…車両
10…内燃機関
31…エアフローメータ
37…過給機
50…コントロールユニット
51…車速センサ
52…クランク角センサ
60…走行支援コントロールユニット
61…CAN通信線
62…車間距離測定ユニット
71…クルーズコントロール制御部
72…パワートレイン駆動力制御部
73…過給遅れ処理部
74…外乱推定部
75…フィードバック制御部