(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000611
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】引戸装置
(51)【国際特許分類】
E05D 15/06 20060101AFI20231226BHJP
【FI】
E05D15/06 125C
E05D15/06 119
E05D15/06 117
E05D15/06 124Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099376
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000107572
【氏名又は名称】スガツネ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112140
【弁理士】
【氏名又は名称】塩島 利之
(74)【代理人】
【識別番号】100119297
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 正男
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 聖宏
【テーマコード(参考)】
2E034
【Fターム(参考)】
2E034BA01
2E034CA01
2E034DA01
(57)【要約】
【課題】上レール、下レール、下ローラを目立たないようにすることができる引戸装置を提供する。
【解決手段】開口部4の上枠10の下面に上レール7を取り付ける。上レール7を走行するローラ走行体にアウトセットブラケット11を介して引戸2の戸先側の上部を取り付ける。引戸2の上部にガイドレール14を取り付ける。壁体3に、ガイドレール14に係合して引戸2の前後の振れを防止するガイド部を取り付ける。壁面収容部5の床面に下レール8を取り付ける。下レール8は、開き位置にある引戸2よりも開口部4側に延びていない。引戸2の戸尻側の下部に、下レール8を走行する下ローラを取り付ける。引戸2の戸先側の下部には、下レール8を走行する下ローラが設けられてない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
引戸を開口部と前記開口部の側方の壁面収容部との間でスライドさせる引戸装置において、
前記開口部の上枠の下面に取り付けられる上レールと、
前記上レールを走行し、前記引戸の戸先側の上部にアウトセットブラケットを介して取り付けられるローラ走行体と、
前記引戸の上部に取り付けられるガイドレールと、
壁体に取り付けられ、前記ガイドレールに係合して前記引戸の前後の振れを防止するガイド部と、
前記壁面収容部の床面に取り付けられる下レールと、
前記引戸の戸尻側の下部に取り付けられ、前記下レールを走行する下ローラと、を備え、
前記下レールは、開き位置にある前記引戸よりも前記開口部側に延びておらず、
前記引戸の戸先側の下部には、前記下レールを走行する下ローラが設けられていない引戸装置。
【請求項2】
前記ローラ走行体は、複数の上ローラを有することを特徴とする請求項1に記載の引戸装置。
【請求項3】
前記上レールは、前記上枠の凹所に埋まっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の引戸装置。
【請求項4】
前記ガイド部は、水平軸を中心に回転するガイドローラであり、
前記引戸の上部の背面側には、前記ガイドレールが取り付けられる切欠きが形成され、
前記ガイドローラは、前記引戸の背面よりも前方において前記ガイドレールに係合することを特徴とする請求項1又は2に記載の引戸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸をスライドさせる引戸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
引戸には、壁体の開口部の内側に配置されるインセット引戸と、開口部の外側に配置されるアウトセット引戸とがある。アウトセット引戸は、開口部と開口部の側方の壁面収容部との間をスライドして、開口部を開閉する。
【0003】
アウトセット引戸をスライドさせる引戸装置として、特許文献1には、壁体の開口部の上部に上レールを突出するように取り付け、開口部の下部に下レールを取り付け、上レールと下レールとの間に引戸をスライド自在に配置した引戸装置が開示されている。引戸の下部の戸先側と戸尻側には、下レールを走行する下ローラが取り付けられる。引戸の上部には、上レールに係合して引戸の前後の振れを防止するガイドローラが取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の引戸装置においては、上レール、下レール、下ローラが目立つので、見栄え悪いという課題がある。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するもので、上レール、下レール、下ローラを目立たないようにすることができる引戸装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、引戸を開口部と前記開口部の側方の壁面収容部との間でスライドさせる引戸装置において、前記開口部の上枠の下面に取り付けられる上レールと、前記上レールを走行し、前記引戸の戸先側の上部にアウトセットブラケットを介して取り付けられるローラ走行体と、前記引戸の上部に取り付けられるガイドレールと、壁体に取り付けられ、前記ガイドレールに係合して前記引戸の前後の振れを防止するガイド部と、前記壁面収容部の床面に取り付けられる下レールと、前記引戸の戸尻側の下部に取り付けられ、前記下レールを走行する下ローラと、を備え、前記下レールは、開き位置にある前記引戸よりも開口部側に延びておらず、前記引戸の戸先側の下部には、前記下レールを走行する下ローラが設けられていない引戸装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、上レール、下レール、下ローラを目立たないようにすることができる。また、引戸は対角線の2箇所(戸先側上部のローラ走行体と戸尻側下部の下ローラの2箇所)で支持されていて、引戸がスライドするとき、ローラ走行体と下ローラのスライド方向の間隔は常に一定である。このため、引戸がスライドするときの安定性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態の引戸装置の斜視図である。
【
図2】本実施形態の引戸装置の正面図である(
図2(a)は引戸が閉じた状態、
図2(b)は引戸が開いた状態を示す)。
【
図3】本実施形態の引戸装置の上レール、ガイドローラの斜視図である。
【
図4】本実施形態の引戸装置の上レール、走行体、ガイドレールの斜視図である。
【
図5】本実施形態の引戸装置の上レール、走行体の斜視図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態の引戸装置の正面図である(引戸が閉じた状態)。
【
図8】本発明の第2の実施形態の引戸装置の正面図である(引戸が開いた状態)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の引戸装置を説明する。ただし、本発明の引戸装置は、種々の形態で具体化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されるものではない。本実施形態は、明細書の開示を十分にすることによって、当業者が発明を十分に理解できるようにする意図をもって提供されるものである。
(第1の実施形態)
【0011】
図1は、本発明の第1の実施形態の引戸装置1の斜視図を示す。引戸2は、アウトセット引戸であり、壁体3の開口部4の外側にアウトセットされる。引戸2は、開口部4と開口部4の側方(
図1の右方)の壁面収容部5との間をスライドする。なお、以下の説明において、引戸2を正面視したときの各方向、すなわち
図1の上下、左右、前後の各方向を用いて引戸装置1の構成を説明する。
【0012】
図2(a)は引戸2の閉じ位置を示し、
図2(b)は引戸2の開き位置を示す。
図2(a)の破線は開口部4を表し、
図2(b)の2点鎖線(想像線)は閉じ位置にある引戸2を表す。壁体3には、引戸2が閉じた状態でも開いた状態でも、引戸2と重なる被せ部分6(
図2(b)の斜線部分)が存在する。
【0013】
図1に示すように、開口部4の上枠10の下面には、上レール7が取り付けられる。壁面収容部5の床面には、下レール8が取り付けられる。引戸2は、上レール7と下レール8との間に配置される。
【0014】
図4に示すように、上レール7には、ローラ走行体9が組み込まれる。ローラ走行体9には、アウトセットブラケット11を介して引戸2の戸先側の上部が取り付けられる。
【0015】
図2(a)(b)に示すように、引戸2の戸尻側の下部には、下レール8を走行する下ローラ12が取り付けられる。
【0016】
引戸2は、対角線の2箇所(戸先側上部のローラ走行体9と戸尻側下部の下ローラ12の2箇所)で支持されながら、開口部4と壁面収容部5との間をスライドする。引戸2がスライドするとき、ローラ走行体9と下ローラ12のスライド方向の間隔は常に一定である。
【0017】
図4に示すように、引戸2の背面側の上部には、ガイドレール14が取り付けられる。
図3に示すように、被せ部分6(
図2(b)参照)の上部には、ガイド部としてのガイドローラ15が取り付けられる。
図6に示すように、ガイドローラ15は、ガイドレール14に係合して引戸2の前後の振れを防止する。
【0018】
以下に、引戸装置1の各部の構成を説明する。
図6に示すように、上枠10には、凹所10aが形成される。凹所10aには、上レール7が埋まっている。このため、上レール7は、前方からも後方からも見えない。上レール7は、断面がチャンネル状であり、上壁7a、一対の側壁7b、側壁7bの下部から突出する一対の底壁7cと、を有する。底壁7cの上面には、ローラ9bが走行するローラ走行部7c1が形成される。
【0019】
図4に示すように、ローラ走行体9は、上レール7の内部に組み込まれて、上レール7のローラ走行部7c1上を走行する。ローラ走行体9は、本体9aと、本体9aに回転可能に取り付けられる複数の上ローラ9bと、を有する。上ローラ9bは、本体9aの前後及び左右に4つ以上設けられる。上ローラ9bは、水平軸を中心に回転可能である。
【0020】
本体9aには、垂直軸9c(
図6も参照)が取り付けられる。垂直軸9cの下端部には、アウトセットブラケット11が取り付けられる。アウトセットブラケット11は、断面L字状であり、垂直軸9cに取り付けられる水平片11aと、水平片11aから上方に90度曲がっている垂直片11bと、を有する。水平片11aは、カバー17で覆われる。これにより、
図5に示すように、下から見上げたときのアウトセットブラケット11の外観を向上させることができる。垂直片11bは、上枠10よりも前方に配置される(
図6参照)。垂直片11bには、アウトセットされた引戸2を取り付けるための取付け穴11b1が形成される。
【0021】
図1に示すように、壁面収容部5の床面には、下レール8が取り付けられる。下レール8は左右方向に延びる。
図2(b)に示すように、下レール8は、開き位置にある引戸2よりも開口部4側(
図2(b)の左方)に延びていない。言い換えれば、下レール8は、開き位置にある引戸2の戸先側の端部よりも戸尻側に配置される。ただし、引戸2を取り外した状態では、下レール8は開口部4まで延びている。開口部4の床面は、フラットに形成される。
図6に示すように、下レール8の上面の中央部には、下ローラ12が走行するローラ溝8aが形成される。
【0022】
図2(a)(b)に示すように、引戸2の戸尻側の下部には、下ローラ12が取り付けられる。下ローラ12は、水平軸を中心に回転可能である。
図6に示すように、引戸2の底面に形成した凹所2aには、下ローラ12を回転可能に支持するハウジング18が埋まっている。下ローラ12は、その下部が引戸2よりも下方に突出し、下レール8のローラ溝8a上を走行する。
【0023】
図2(a)(b)に示すように、引戸2の戸先側の下部には、下ローラ12が設けられていない。引戸2は、その下部が戸尻側の下ローラ12のみによって支持される。
【0024】
図4に示すように、引戸2の背面側の上部には、切欠き2bが形成される。切欠き2bには、ガイドレール14が取り付けられる。ガイドレール14は、断面コ字状である。ガイドレール14は、切欠き2bに取り付けられる側壁14aと、側壁14aの上端部に曲がって形成される上壁14bと、側壁14aの下端部に曲がって形成される底壁14cと、を有する。
図6に示すように、上壁14bの下面には、ガイドローラ15が走行するローラ溝14b1が形成される。
【0025】
図4に示すように、ガイドレール14には、閉じ用クローザ19と開き用クローザ20が取り付けられてもよい。閉じ用クローザ19は、壁体3に取り付けられる図示しないトリガを捕捉して、閉じ位置近傍まで移動した引戸2を自動的に閉じ位置まで移動させる。開き用クローザ20は、壁体3に取り付けられる図示しないトリガを捕捉して、開き位置近傍まで移動した引戸2を自動的に開き位置まで移動させる。
【0026】
図3に示すように、ガイドローラ15は、壁体3の被せ部分6の上部に配置される。ガイドローラ15は、左右に2つ設けられていて、壁体3に取り付けられるブラケット21に回転可能に支持される。
図6に示すように、ブラケット21は、断面がクランク状に形成される。ブラケット21の上部には、ガイドローラ15が水平軸を中心に回転可能に取り付けられる。ガイドローラ15は、引戸2の背面2cよりも前方においてガイドレール14と係合する。
【0027】
以上に本実施形態の引戸装置1の構成を説明した。本実施形態の引戸装置1によれば、以下の効果を奏する。
【0028】
上レール7を上枠10の下面に取り付けるので、上レール7を目立たなくすることができる。下レール8は、壁面収容部5の床面に取り付けられるが、開口部4までは延びていない。このため、下レール8を目立たなくすることができる。下ローラ12は、引戸2の戸尻側の下部にのみ設けられていて、戸先側の下部に設けられていない。このため、下ローラ12を目立たなくすることができる。
【0029】
引戸2は対角線位置の2箇所(戸先側上部のローラ走行体9と戸尻側下部の下ローラ12の2箇所)で支持されていて、引戸2がスライドするとき、ローラ走行体9と下ローラ12のスライド方向の間隔は常に一定である。このため、引戸2がスライドするときの安定性を確保することができる。
【0030】
ローラ走行体9が複数の上ローラ9bを有するので、アウトセットされた引戸2を安定的に支持することができる。
【0031】
上レール7が上枠10の凹所10aに埋まっているので、上レール7を隠すことができる。
【0032】
引戸2の背面側の上部に、ガイドレール14が取り付けられる切欠き2bを形成するので、壁体3と引戸2との前後方向の間隔を狭めることができる。また、ガイドローラ15が水平軸を中心に回転可能であり、ガイドローラ15が引戸2の背面2cよりも前方においてガイドレール14に係合するので、引戸2に左右軸を中心にしたモーメントが発生するのを抑制することができる。
(第2の実施形態)
【0033】
図7及び
図8は、本発明の第2の実施形態の引戸装置31を示す。
図7は引戸2の閉じ位置を示し、
図8は引戸2の開き位置を示す。3は壁体、2は引戸、4は開口部である。開口部4は、上枠32aと左右一対の縦枠32bとによって画定される。
【0034】
図9に示すように、上枠32aには、上レール7が埋め込まれる。上レール7には、ローラ走行体9が組み込まれる。ローラ走行体9には、アウトセットブラケット11を介して引戸2が取り付けられる。
図7に示すように、壁面収容部5の床面には、下レール8が取り付けられる。引戸2の戸尻側の下部には、下レール8を走行する下ローラ12が取り付けられる。上レール7、ローラ走行体9、下レール8、下ローラ12の構成は、第1の実施形態の引戸装置1と略同一であるから、同一の符号を附してその説明を省略する。
【0035】
第1の実施形態では、ガイド部が水平軸を中心に回転するガイドローラ15であるのに対し、第2の実施形態では、
図9に示すように、ガイド部が垂直方向を向くガイド軸34である。ガイド軸34は、壁体3に取り付けられるブラケット35に支持される。
【0036】
引戸2の上面には、凹所2dが形成される。凹所2dには、上部が開放しているガイドレール36が埋まっている。ガイド軸34は、ガイドレール36の上部に差し込まれる。ガイド軸34とガイドレール36は、引戸2の前後の振れを防止する。この実施形態のように、ガイドローラ15の代わりにガイド軸34を用いてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1…引戸装置
2…引戸
2b…切欠き
3…壁体
4…開口部
5…壁面収容部
7…上レール
8…下レール
9…ローラ走行体
9b…上ローラ
10…上枠
10a…凹所
11…アウトセットブラケット
12…下ローラ
14…ガイドレール
15…ガイドローラ(ガイド部)
31…引戸装置
32a…上枠
34…ガイド軸(ガイド部)
36…ガイドレール