(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061113
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】作業用車両
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20240425BHJP
B62D 25/10 20060101ALI20240425BHJP
B62D 25/12 20060101ALI20240425BHJP
B62D 21/18 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
E02F9/00 N
E02F9/00 Q
B62D25/10 B
B62D25/12 C
B62D21/18 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168839
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000150154
【氏名又は名称】株式会社竹内製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 洋平
【テーマコード(参考)】
2D015
3D004
3D203
【Fターム(参考)】
2D015CA03
3D004AA11
3D004BA04
3D004CA15
3D004CA16
3D004CA32
3D203AA27
3D203DA39
3D203DB17
(57)【要約】
【課題】上部体の外装部品の位置決めおよび組付け作業を容易且つ高精度に行うことが可能で、美しい外観に仕上げることが可能な作業用車両を提供する。
【解決手段】本発明に係る作業用車両1は、走行装置10が取付けられた下部体2と、下部体2の上に配設された上部体3と、油圧により作動する作業装置12、14と、操縦室15とを備え、上部体3は、下部に設けられるベースフレーム16と、後部に設けられる第1機器室21と、第1機器室21の上部を覆う第1カバー31と、第1カバー31を開閉可能もしくは着脱可能に支持する第1ステー33Aと、ベースフレーム16に取付けられて作動油を貯留する作動油タンク23と、を有し、作動油タンク23は、第1ステー33Aが固定される第1ステー固定支柱として兼用される構成である。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置が取付けられた下部体と、前記下部体の上に配設された上部体と、前記下部体もしくは前記上部体に取付けられて作動油の油圧により作動する作業装置と、前記走行装置および前記作業装置の操縦を行う操縦室と、を備える作業用車両であって、
前記上部体は、下部に設けられるベースフレームと、後部に設けられる第1機器室と、前記第1機器室の上部を覆う第1カバーと、前記第1カバーを開閉可能もしくは着脱可能に支持する第1ステーと、前記ベースフレームに取付けられて前記作動油を貯留する作動油タンクと、を有し、
前記作動油タンクは、前記第1ステーが固定される第1ステー固定支柱として兼用される構成であること
を特徴とする作業用車両。
【請求項2】
前記上部体は、前記第1機器室と前記操縦室との仕切を行う第1仕切板と、前記第1ステーと共に前記第1カバーを開閉可能もしくは着脱可能に支持する第2ステーと、を有し、
前記第1仕切板は、前記第2ステーが固定されており、
前記作動油タンクは、前記第1仕切板の一部が固定される第1仕切板固定支柱として兼用される構成であること
を特徴とする請求項1に記載の作業用車両。
【請求項3】
前記ベースフレームは、前記作動油タンクの取付けを行う複数のタンク取付け台座を有し、
前記タンク取付け台座は、少なくとも一つが前記ベースフレームと別体に形成されて前記ベースフレームに固定されていること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の作業用車両。
【請求項4】
前記上部体は、前記第1機器室に隣接して設けられる第2機器室と、前記第2機器室の上部を覆う第2カバーと、前記第2カバーを開閉可能もしくは着脱可能に支持する第3ステーと、を有し、
前記作動油タンクは、前記第3ステーが固定される第3ステー固定支柱として兼用される構成であること
を特徴とする請求項3に記載の作業用車両。
【請求項5】
前記上部体は、前記第1カバーと前記第2カバーとの境界に形成される隙間の下方位置に設けられて、上方から浸入する雨滴を排出させる雨樋が取付けられた第3仕切板を有し、前記作動油タンクは、前記第3仕切板が固定される第3仕切板固定支柱として兼用される構成であること
を特徴とする請求項4に記載の作業用車両。
【請求項6】
前記上部体は、前記下部体に対して旋回可能に構成されており、後部に設けられて旋回時のバランスをとるカウンターウェイトを有し、
前記カウンターウェイトは、下端部が前記ベースフレームに固定され、上端部が前記第1ステーおよび前記第2ステーに固定されていること
を特徴とする請求項2に記載の作業用車両。
【請求項7】
前記上部体は、前記第1機器室と前記操縦室もしくは前記操縦室側の機器室との仕切を行う第2仕切板を有し、
前記第2仕切板は、下端部が前記ベースフレームに固定され、
前記第1仕切板は、下端部が前記第2仕切板に固定されていること
を特徴とする請求項2または請求項6に記載の作業用車両。
【請求項8】
前記ベースフレームは、前記第2仕切板の取付けを行う複数の仕切板取付け台座を有し、
前記仕切板取付け台座は、少なくとも一つが前記ベースフレームと別体に形成されて前記ベースフレームに固定されていること
を特徴とする請求項7に記載の作業用車両。
【請求項9】
前記カウンターウェイトは、側壁前端部が前記ベースフレームの側壁後端部の内側に入り込む重なり部を有すること
を特徴とする請求項6に記載の作業用車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧により作動する作業装置を備える作業用車両に関する。
【背景技術】
【0002】
作業用車両の例として、走行用のタイヤもしくはクローラが取付けられた下部体と、下部体の上に配設された上部体と、下部体もしくは上部体に取付けられて油圧により作動する作業装置を備えるエクスカベータ、ローダ等が従来より知られている(特許文献1:特開2020-045731号公報参照)。
【0003】
従来の作業用車両においては、上部体のベースフレーム上に複数の機器室が設けられており、各機器室の上部にはメンテナンス等の際に開閉や着脱を行うカバーが取付けられている。
【0004】
また、エクスカベータ等に例示されるような作業用車両においては、作業時(例えば、掘削時)における車体のバランスをとるため、作業装置と逆側の位置にカウンターウェイトが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の作業用車両は、製造工程において、上部体の外装を構成する主要な部品(以下、単に「外装部品」と称する場合がある)となる、ベースフレームと、機器室を覆うカバーと、さらに作業時(例えば、掘削時)における車体のバランスをとる構成の場合であればカウンターウェイトと、を組付ける作業が発生する。しかしながら、組付ける部品点数が多く、それぞれが複雑な立体形状であると共に寸法誤差(公差)が含まれるために、設計通りに組付けができない、あるいは、組付けができたとしても外装部品相互の境界に形成される隙間の幅が均等にならないといった不具合が生じ易い課題があった。そのため、上記の組付け作業は、手間と時間がかかるばかりでなく、外装部品相互の隙間が均等になるように外観を美しく仕上げるためには、熟練度すなわち作業者の経験や勘に基づく高度の技術力を要するものであった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、上部体の外装を構成する複数の部品を組付ける際に、作業者の経験や技術力に大きく影響されずに各部品の位置決めおよび組付け作業を容易且つ高精度に行うことが可能で、組付けられた各部品相互の隙間が均等になる美しい外観に仕上げることが可能な作業用車両を提供することを目的とする。
【0008】
本発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0009】
本実施形態に係る作業用車両は、走行装置が取付けられた下部体と、前記下部体の上に配設された上部体と、前記下部体もしくは前記上部体に取付けられて作動油の油圧により作動する作業装置と、前記走行装置および前記作業装置の操縦を行う操縦室と、を備える作業用車両であって、前記上部体は、下部に設けられるベースフレームと、後部に設けられる第1機器室と、前記第1機器室の上部を覆う第1カバーと、前記第1カバーを開閉可能もしくは着脱可能に支持する第1ステーと、前記ベースフレームに取付けられて前記作動油を貯留する作動油タンクと、を有し、前記作動油タンクは、前記第1ステーが固定される第1ステー固定支柱として兼用される構成であることを要件とする。
【0010】
上記の構成によれば、作動油タンクおよびベースフレームの公差を考慮して、作動油タンクを基準位置(設計上の所定位置)に正確に配置することができる。このように配置された作動油タンクを、上部体の他の外装部品を取付けるための部品を固定させる支柱として兼用することによって、上部体の外装部品を取付けるための部品および当該外装部品の位置決めおよび組付け作業を容易且つ高精度に行うことが可能となる。また、組付けられた外装部品相互の隙間が均等になる美しい外観に仕上げることが可能となる。さらに、専用部品としての支柱を設ける必要がないため、部品点数の削減とそれに伴うコストダウンおよび組付け工程簡素化を図ることができる。
【0011】
また、前記上部体は、前記第1機器室と前記操縦室もしくは前記操縦室側の機器室との仕切を行う第1仕切板と、前記第1ステーと共に前記第1カバーを開閉可能もしくは着脱可能に支持する第2ステーと、を有し、前記第1仕切板は、前記第2ステーが固定されており、前記作動油タンクは、前記第1仕切板の一部が固定される第1仕切板固定支柱として兼用される構成であることが好ましい。
【0012】
また、前記ベースフレームは、前記作動油タンクの取付けを行う複数のタンク取付け台座を有し、前記タンク取付け台座は、少なくとも一つが前記ベースフレームと別体に形成されて前記ベースフレームに固定されていることが好ましい。
【0013】
また、前記上部体は、前記第1機器室に隣接して設けられる第2機器室と、前記第2機器室の上部を覆う第2カバーと、前記第2カバーを開閉可能もしくは着脱可能に支持する第3ステーと、を有し、前記作動油タンクは、前記第3ステーが固定される第3ステー固定支柱として兼用される構成であることが好ましい。
【0014】
また、前記上部体は、前記第1カバーと前記第2カバーとの境界に形成される隙間の下方位置に設けられて、上方から浸入する雨滴を排出させる雨樋が取付けられた第3仕切板を有し、前記作動油タンクは、前記第3仕切板が固定される第3仕切板固定支柱として兼用される構成であることが好ましい。
【0015】
また、前記上部体は、前記下部体に対して旋回可能に構成されており、後部に設けられて作業時(例えば、掘削時)における車体のバランスをとるカウンターウェイトを有し、前記カウンターウェイトは、下端部が前記ベースフレームに固定され、上端部が前記第1ステーおよび前記第2ステーに固定されていることが好ましい。
【0016】
また、前記上部体は、前記第1機器室と前記操縦室との仕切を行う第2仕切板を有し、前記第2仕切板は、下端部が前記ベースフレームに固定され、前記第1仕切板は、下端部が前記第2仕切板に固定されていることが好ましい。
【0017】
また、前記ベースフレームは、前記第2仕切板の取付けを行う複数の仕切板取付け台座を有し、前記仕切板取付け台座は、少なくとも一つが前記ベースフレームと別体に形成されて前記ベースフレームに固定されていることが好ましい。
【0018】
また、前記カウンターウェイトは、側壁前端部が前記ベースフレームの側壁後端部の内側に入り込む重なり部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、上部体の外装を構成する複数の部品を組付ける際に、作業者の経験や技術力に大きく影響されずに各部品の位置決めおよび組付け作業を容易且つ高精度に行うことが可能で、組付けられた各部品相互の隙間が均等になる美しい外観に仕上げることが可能な作業用車両を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る作業用車両の例を示す前部側斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る作業用車両の例を示す後部側斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す作業用車両の上部体の斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す上部体の第1カバーおよび第2カバーを開いた状態の斜視図である。
【
図5】
図5は、
図2に示す作業用車両の上部体の斜視図である。
【
図6】
図6は、
図5に示す上部体の第1カバーおよび第2カバーを開いた状態の斜視図である。
【
図8】
図8は、
図7に示す上部体のベースフレームの拡大図である。
【
図11】
図11Aは、ベースフレームおよびカウンターウェイトの側面図である。
図11Bは、ベースフレームおよびカウンターウェイトの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本実施形態に係る作業用車両1の例を示す概略図(右前部上方からの斜視図)である。
図2は、作業用車両1の例を示す概略図(右後部上方からの斜視図)である。なお、説明の便宜上、図中において矢印により上下、左右、前後の方向を示す場合がある。また、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0022】
はじめに、作業用車両1の全体構成について説明する。作業用車両1として、エクスカベータを例に挙げて説明する。ただし、作業用車両1は、エクスカベータに限定されるものではない。
【0023】
図1に示すように、作業用車両1は、走行装置10が取付けられた下部体2を備えている。作業用車両1は、下部体2の上に旋回ベアリング(不図示)を介して旋回可能に配設された上部体3を備えている。上部体3は、旋回油圧モータ(不図示)によって駆動(旋回)される。作業用車両1は、下部体2や上部体3に取付けられて油圧(所定圧力の作動油)により作動する作業装置12、14を備えている。
【0024】
上部体3は、前部にオペレータが乗車して走行や作業の操作を行う操縦室(キャビンもしくはキャノピー)15を備えている。上部体3は、オペレータの操作に応じて走行装置10および作業装置12、14の制御を行う制御装置(不図示)を備えている。上部体3の詳細構成については後述する。
【0025】
走行装置10の例として、前後に二輪ずつ配置された四輪の走行輪58を備えている。走行輪58は、ホイール58Aの外周にタイヤ58Bが嵌設されている(シングル式、ダブル式の両方の場合がある)。ただし、走行装置10は、走行輪58に限定されるものではない。変形例として、作業用車両1は、走行輪58に代えて無限軌道(クローラ)を備える構成としてもよい(不図示)。走行輪58は、走行油圧モータ(不図示)によって駆動(走行)される。
【0026】
作業装置12の例として、排土板28を備えている。排土板28は、上下(前後成分を含む)に揺動可能に下部体2に取付けられている。排土板28は、油圧シリンダ38によって駆動される。ただし、作業装置12は、上記の構成に限定されるものではない。
【0027】
作業装置14の例として、ブーム42、アーム44、およびアタッチメント(本実施形態においては、バケット)46を備えている。ただし、アタッチメント46はバケットに限定されるものではない。ブーム42は、上下(前後成分を含む)に揺動可能に上部体3に取付けられている。ただし、ブーム42は、上記の構成に限定されるものではない。本実施形態においては、上部体3とブーム42との間にブームブラケット48が設けられている。ブームブラケット48によって、ブーム42は上部体3に対して左右(前後成分を含む)に揺動可能となる。なお、ブームブラケット48は省略されてもよい。アーム44は、上下(前後成分を含む)に揺動可能にブーム42に取付けられている。アタッチメント46は、上下(前後成分を含む)に揺動可能にアーム44に取付けられている。ブーム42は、油圧シリンダ52によって駆動される。アーム44は、油圧シリンダ54によって駆動される。アタッチメント46は、油圧シリンダ56によって駆動される。ただし、作業装置14は、上記の構成に限定されるものではない。
【0028】
ここで、ブームブラケット48は、下面に補強板49が固定(本実施形態においては、溶接固定)されている(
図12参照)。補強板49は、金属の板材からなり、左右方向における中央部分が後部から前部に向かう方向に凸となる凸状(なだらかな曲線による凸状)に形成されている。研究開発の過程において比較例として検討を行った別の補強板は、金属の板材からなり、左右方向における中央部分が前部から後部に向かう方向に凹となる凹状に形成されたものであった(不図示)。当該比較例に係る補強板は、有限要素解析の結果、ブームブラケット48の支持部材でもある縦リブ17の直下の位置に応力が集中し易い課題があることが究明された。当該課題に対して、本実施形態に係る補強板49の構成によれば、応力の集中を低減できる解析結果が得られた。すなわち、比較例に係る補強板と比べてブームブラケット48の補強効果を高めることが可能となる。
【0029】
次に、前述の旋回油圧モータ、走行油圧モータ、および各油圧シリンダの駆動を行うための機構は、一例として駆動源により駆動される油圧ポンプ、制御バルブ等から構成されている(いずれも不図示)。オペレータの操作に応じて制御バルブを作動させて、油圧ポンプから送出される所定圧力の作動油を旋回油圧モータ、走行油圧モータ、および各油圧シリンダに供給する制御が行われる。これにより、上部体3の旋回、走行装置10による走行、および作業装置12、14による作業を行うことができる。
【0030】
本実施形態において、作業用車両1は、駆動源としてエンジンを備えている(不図示)。ただし、駆動源はエンジンに限定されるものではない。変形例として、作業用車両1は、エンジンに代えて、もしくは、エンジンと共に、バッテリー駆動の電気モータを備える構成としてもよい(不図示)。
【0031】
なお、本実施形態に係る作業用車両1における走行および作業のためのその他の機構については、公知の作業用車両(エクスカベータ)と同様であるため、詳細の説明を省略する。
【0032】
次に、上部体3の構成について詳しく説明する(
図3~
図11参照)。上部体3は、下部に強度部材であり搭載機器の支持部材であるベースフレーム16を備えている。上部体3は、ベースフレーム16に取付けられて作動油を貯留する作動油タンク23を備えている。上部体3は、後部に上部体3の旋回動作を安定させるカウンターウェイト18を備えている。なお、ベースフレーム16は、所定形状に加工された梁材および板材等が溶接されて一体に形成されている。
【0033】
上部体3は、後部に駆動源が収容される第1機器室21を備えている。上部体3は、第1機器室21の上部を覆う第1カバー31を備えている。上部体3は、第1カバー31を開閉可能(もしくは着脱可能)に支持する第1ステー33Aおよび第2ステー33Bを備えている。一例として、第1ステー33Aは、回動リンク33Aaおよびガススプリング33Abを備えている。一例として、第2ステー33Bは、回動リンク33Baおよびガススプリング33Bbを備えている。ただし、上記の構成に限定されるものではない。
【0034】
前述の通り、作業用車両1は、製造工程において、上部体3の外装を構成する外装部品として、少なくとも、ベースフレーム16と、カウンターウェイト18と、複数のカバー(第1カバー31および後述の第2カバー32)と、を組付ける作業が発生する。しかしながら、組付ける部品が複数あり、且つ、それぞれが複雑な立体形状であると共に寸法誤差(公差)が含まれるために、設計通りに組付けができない、あるいは、組付けができたとしても外装部品相互の境界に形成される隙間の幅が均等にならないといった不具合が生じ易い課題があった。そのため、上記の組付け作業は、手間と時間がかかるばかりでなく、外装部品相互の隙間が均等になるように外観を美しく仕上げるためには、熟練度すなわち作業者の経験や勘に基づく高度の技術力を要するものであった。
【0035】
本実施形態に係る作業用車両1は、上記課題を解決するため、以下の構成を備える。
【0036】
作動油タンク23は、第1ステー33Aが固定される第1ステー固定支柱として兼用される構成である。
【0037】
本実施形態においては、作動油タンク23およびベースフレーム16の公差を考慮して(例えば、現物の寸法を計測したうえで調整して)、作動油タンク23を基準位置(設計上の所定位置)に正確に配置することができる。このようにしてベースフレーム16に配置される作動油タンク23を、上部体3の他の外装部品を取付けるための部品を固定させる支柱として兼用する構成を実現している。したがって、上部体3の外装部品(第1カバー31)を取付けるための部品(第1ステー33A)の位置決めおよび組付け作業を容易且つ高精度に行うことが可能となる。さらに、第1ステー33Aを固定するための専用部品としての支柱を設ける必要がないため、部品点数の削減とそれに伴うコストダウンおよび組付け工程簡素化を図ることができる。なお、一般的に、作動油タンク23の形状精度(寸法精度、加工精度、溶接精度等)は、ベースフレーム16の形状精度(寸法精度、加工精度、溶接精度等)よりも高精度に形成されている。
【0038】
次に、上部体3は、第1機器室21と操縦室15(操縦室15の後方に機器類の収容空間が設けられる場合には当該領域を含む)との仕切を行う第1仕切板61を備えている。第2ステー33Bは、第1仕切板61に固定されている。作動油タンク23は、第1仕切板61の一部(側端部61b)が固定される第1仕切板固定支柱として兼用される構成である。
【0039】
上記の構成によれば、ベースフレーム16に配置される作動油タンク23を共通の基準として第1ステー33Aおよび第2ステー33Bの位置決めを行うことができる。したがって、第1ステー33Aおよび第2ステー33Bによって支持される第1カバー31の位置決めおよび組付けを容易且つ高精度に行うことができる。すなわち、ベースフレーム16に対する第1カバー31の組付けに関して、作業の容易化および高精度化を図ることができる。また、第1仕切板61を固定するための専用部品としての支柱を設ける必要がないため、部品点数の削減とそれに伴うコストダウンおよび組付け工程簡素化を図ることができる。
【0040】
次に、ベースフレーム16は、作動油タンク23の取付けを行う複数のタンク取付け台座24A、24Bを備えている。複数のタンク取付け台座24A、24Bは、少なくとも一つの(全部でもよい)タンク取付け台座24A、24Bがベースフレーム16と別体に形成されている。別体のタンク取付け台座24A、24Bは、ベースフレーム16が溶接によって組立てられた状態で、ベースフレーム16の所定位置に位置決めされて固定される。用語の定義として、「別体」とは、ベースフレーム16が溶接によって組立てられる前の状態で、溶接する部材に予めタンク取付け台座が設けられていない状態をいう。その対語として、「一体」とは、ベースフレーム16が溶接によって組立てられる前の状態で、溶接する部材に予めタンク取付け台座が設けられている状態をいう。
【0041】
作動油タンク23は、ベースフレーム16上の複数のタンク取付け台座24A、24Bに固定されることにより、ベースフレーム16に取付けられる。一例として、タンク取付け台座24Aは、二箇所の取付け孔(ネジ孔)24Aa、24Abを有する。タンク取付け台座24Bは、二箇所の取付け孔(ネジ孔)24Ba、24Bbを有する。
【0042】
ベースフレーム16は、溶接によって組立てられる際に歪みが生じる。そのため、溶接する部材に予めタンク取付け台座の全部を設けておくと(すなわち、「一体」に形成されると)、ベースフレーム16が組立てられた状態で、タンク取付け台座の位置が設計上の位置からずれた状態となる。しかし、本実施形態の構成によれば、ベースフレーム16が溶接によって組立てられた状態で(組立てられた後に)、別体のタンク取付け台座24A、24Bを固定できる。別体のタンク取付け台座24A、24Bをベースフレーム16に固定する際に、作動油タンク23がベースフレーム16における正確な位置に位置決めされ且つ正確な直立状態となるように、別体のタンク取付け台座24A、24Bの固定位置を調整することができる。したがって、作動油タンク23をベースフレーム16に取付ける際に、位置決めの精度と、前後・左右方向の傾きの精度(直立性)との両方を高精度化することができる。作動油タンク23を位置基準として用いる有効性をさらに高められる。
【0043】
次に、上部体3は、第1機器室21と隣接する位置(第1機器室21の前方の右側部)に油圧ポンプ(不図示)等が収容される第2機器室22を備えている。上部体3は、第2機器室22の上部を覆う第2カバー32を備えている。上部体3は、第2カバー32を開閉可能(もしくは着脱可能)に支持する第3ステー34Aを備えている。一例として、第3ステー34Aに二つのヒンジ(不図示)の一端が固定(例えば、ボルト固定)され、第2カバー32に当該ヒンジの他端が固定(例えば、溶接固定)される構成により開閉可能となっている。なお、変形例として、第1ステー33Aおよび第2ステー33Bと同様の二つのステーを備える構成としてもよい(不図示)。
【0044】
ただし、機器室の個数、位置は、上記の構成に限定されるものではない。
【0045】
作動油タンク23は、第3ステー34Aが固定される第3ステー固定支柱として兼用される構成である。
【0046】
上記の構成によれば、隣接する二つの機器室(第1機器室21および第2機器室22)をそれぞれ覆う第1カバー31および第2カバー32を備える場合にも、ベースフレーム16に配置される作動油タンク23を共通の基準として第1カバー31を取付けるためのステー(第1ステー33Aおよび第2ステー33B)と、第2カバー32を取付けるためのステー(第3ステー34A)との両方の位置決めを行うことができる。したがって、第1カバー31および第2カバー32の位置決めおよび組付けを容易且つ高精度に行うことができる。特に、第1カバー31と第2カバー32との境界に形成される隙間の幅を容易且つ高精度に均等化することができるため、外観の美しい作業用車両1を実現することができる。また、第3ステー34Aを固定するための専用部品としての支柱を設ける必要がないため、部品点数の削減を図ることができる。
【0047】
次に、上部体3は、第1カバー31と第2カバー32との境界に形成される隙間の下方位置に設けられて、上方から浸入する雨滴を排出させる雨樋63が取付けられた第3仕切板65を備えている。
【0048】
作動油タンク23は、第3仕切板65が固定される第3仕切板固定支柱として兼用される構成である。
【0049】
第1カバー31および第2カバー32は、ベースフレーム16に配置される作動油タンク23を共通の基準として位置決めおよび組付けが高精度に行われた状態となる。上記の構成によれば、第1カバー31と第2カバー32との境界に形成される隙間から浸入する雨滴を排出させる雨樋63が取付けられた第3仕切板65を、第1カバー31および第2カバー32と共に作動油タンク23を共通の基準として位置決めすることができる。したがって、雨樋63が取付けられた第3仕切板65を、高精度に当該隙間の下方における所定位置に配置することができ、確実に雨滴を排出することができる。
【0050】
次に、カウンターウェイト18は、下端部がベースフレーム16に固定(連結)され、上端部が第1ステー33Aおよび第2ステー33Bに固定(連結)されている。なお、カウンターウェイト18は、作動油タンク23と同様に、ベースフレーム16が溶接によって組立てられた状態で、複数の取付け台座(不図示)を用いてベースフレーム16の所定位置に位置決めされて固定される。
【0051】
上記の構成によれば、カウンターウェイト18をベースフレーム16に取付ける際に、位置決めの精度と、前後・左右方向の傾きの精度(直立性)との両方を高精度化することができる。したがって、第1ステー33Aおよび第2ステー33Bを、カウンターウェイト18における狙った位置(設計上の所定位置)に確実に連結することができる。
【0052】
隣接する二つの機器室(第1機器室21および第2機器室22)をそれぞれ覆う第1カバー31および第2カバー32に加えて、さらにカウンターウェイト18を備える場合には、ベースフレーム16を含めた四つの外装部品の位置決めと組付けが必要となるため、特に、熟練度を要する作業となる。しかし、本実施形態の構成によれば、ベースフレーム16に対する、第1カバー31、第2カバー32、およびカウンターウェイト18の位置決めおよび組付けを容易且つ高精度に行うことができる。
【0053】
特に、四つの外装部品において隣接する部品同士の境界に形成される隙間の幅を容易且つ高精度に均等化することができるため、外観の美しい作業用車両1を実現することができる。また、ベースフレーム16にカウンターウェイト18を取付ける際に、従来はシムを用いて傾きを調整する工程を実施する必要があったが、当該工程を省略して効率化を図ることができる。
【0054】
次に、上部体3は、第1機器室21と操縦室15(もしくは操縦室15側の機器室)との仕切を行う第2仕切板62を備えている。第2仕切板62は、下端部62aがベースフレーム16に固定されている。前述の第1仕切板61は、下端部61aが第2仕切板62に固定されている。
【0055】
上記の構成によれば、第1機器室21と、操縦室15(もしくは操縦室15側の機器室)と、の仕切を行う仕切板を、複数(すなわち、第1仕切板61および第2仕切板62)の分割構造とすることができる。したがって、メンテナンス時に、必要箇所の仕切板のみを取外せばよいため、作業性を向上させることができる。
【0056】
次に、ベースフレーム16は、第2仕切板62の取付けを行う複数の仕切板取付け台座64A、64B、64Cを備えている。複数の仕切板取付け台座64A、64B、64Cは、少なくとも一つの(全部でもよい)仕切板取付け台座64A、64B、64Cがベースフレーム16と別体に形成されている。別体の仕切板取付け台座64A、64B、64Cは、ベースフレーム16が溶接によって組立てられた状態で、ベースフレーム16の所定位置に位置決めされて固定される。用語の定義として、「別体」とは、ベースフレーム16が溶接によって組立てられる前の状態で、溶接する部材に予め仕切板取付け台座が設けられていない状態をいう。その対語として、「一体」とは、ベースフレーム16が溶接によって組立てられる前の状態で、溶接する部材に予め仕切板取付け台座が設けられている状態をいう。
【0057】
第2仕切板62は、ベースフレーム16上の複数の仕切板取付け台座64A、64B、64Cに固定されることにより、ベースフレーム16に取付けられる。一例として、仕切板取付け台座64Aは、一箇所の取付け孔(ネジ孔)64Aaを有する。仕切板取付け台座64Bは、四箇所の取付け孔(ネジ孔)64Ba、64Bb、64Bc、64Bdを有する。仕切板取付け台座64Cは、一箇所の取付け孔(ネジ孔)64Caを有する。
【0058】
ベースフレーム16は、溶接によって組立てられる際に歪みが生じる。そのため、溶接する部材に予め仕切板取付け台座の全部を設けておくと(すなわち、「一体」に形成されると)、ベースフレーム16が組立てられた状態で、仕切板取付け台座の位置が設計上の位置からずれた状態となる。しかし、本実施形態の構成によれば、ベースフレーム16が溶接によって組立てられた状態で(組立てられた後に)、別体の仕切板取付け台座64A、64B、64Cを固定できる。別体の仕切板取付け台座64A、64B、64Cをベースフレーム16に固定する際に、第2仕切板62がベースフレーム16における正確な位置に位置決めされ且つ正確な直立状態となるように、別体の仕切板取付け台座64A、64B、64Cの固定位置を調整することができる。したがって、第2仕切板62をベースフレーム16に取付ける際に、位置決めの精度と、前後・左右方向の傾きの精度(直立性)との両方を高精度化することができる。
【0059】
次に、カウンターウェイト18は、側壁前端部18aがベースフレーム16の側壁後端部16aの内側に入り込む重なり部18Aを有する。
図11は、作業用車両1のベースフレーム16とカウンターウェイト18とを示す概略図であり、
図11Aは側面図、
図11Bは斜視拡大図である。
【0060】
従来の作業用車両において、カウンターウェイト18と、ベースフレーム16との境界に形成される隙間は、上部体3の外装部品の中でも、均等な幅となるように位置決めおよび組付けを行うことが難しく、且つ、幅の不均等が目立ち易い箇所であった。しかし、上記の構成によれば、万一、カウンターウェイト18と、ベースフレーム16との境界において、隙間の幅が不均等となってしまった場合であっても、重なり部18Aが存在することによって当該不均等を目立たないようにする視覚的効果を得ることができる。
【0061】
以上説明した通り、上記の作業用車両によれば、上部体の外装を構成する複数の部品を組付ける際に、作業者の経験や技術力に大きく影響されずに各部品の位置決めおよび組付け作業を容易且つ高精度に行うことが可能で、組付けられた各部品相互の隙間が均等になる美しい外観に仕上げることが可能な作業用車両を実現することができる。
【0062】
上記の作業用車両によれば、部品点数の削減とそれに伴うコストダウンおよび組付け工程簡素化を図ることができる。
【0063】
本発明は、上記の実施形態(エクスカベータ)に限定されるものではない。本発明は、上部体が旋回する作業用車両(クレーン、高所作業車等)に対して同様に適用できる。本発明は、上部体が旋回しない作業用車両(ローダ、キャリア等)に対して同様に適用できる。
【符号の説明】
【0064】
1 作業用車両
2 下部体
3 上部体
10 走行装置
12、14 作業装置
15 操縦室
16 ベースフレーム
18 カウンターウェイト
18A 重なり部
21 第1機器室
22 第2機器室
23 作動油タンク
24A、24B タンク取付け台座
31 第1カバー
32 第2カバー
33A 第1ステー
33B 第2ステー
61 第1仕切板
62 第2仕切板
63 雨樋
64A、64B、64C 仕切板取付け台座
65 第3仕切板