(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061119
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】換気装置
(51)【国際特許分類】
E06B 7/084 20060101AFI20240425BHJP
F24F 13/10 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
E06B7/084
F24F13/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168848
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】504254770
【氏名又は名称】株式会社佐原
(74)【代理人】
【識別番号】110003340
【氏名又は名称】弁理士法人湧泉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】石川 亜門
【テーマコード(参考)】
2E036
3L081
【Fターム(参考)】
2E036JA04
2E036LA06
2E036LB04
2E036LB06
2E036LB09
2E036NA01
2E036NB01
3L081AA03
3L081AB06
3L081DA01
(57)【要約】
【課題】 1つのダンパーを有し、風圧により閉じる機能と手動操作により強制的に閉じる機能を備えた換気装置を提供する。
【解決手段】
サッシ窓5に組み込まれる換気装置1は、換気通路14を有する細長い装置本体10と、換気通路14の長手方向両端の開口を塞ぐ一対の端部キャップ20と、端部キャップ20に回転可能に支持されて換気通路14を開閉するダンパー30と、ダンパー30を開き位置に向けて付勢する付勢部材55と、を備えている。ダンパー30は、室外からの風圧を受けて閉じられる。操作部材70は室外方向に突出する作用部76を有している。操作部材70が第1操作位置にある時には、作用部76がダンパー30の開閉動作を妨げない上方位置にある。操作部材70が第1操作位置から第2操作位置へと操作されると、作用部76がダンパー30の室内側の部分30bを下方に押して、ダンパー30を付勢部材55に抗して強制的に閉じ位置にする。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サッシ窓に組み込まれる換気装置であって、
換気通路を有する細長い装置本体と、
前記換気通路の長手方向両端の開口を塞ぐ一対の端部キャップと、
前記換気通路内に配置されて前記装置本体の長手方向に延び、前記装置本体または前記端部キャップに開き位置と閉じ位置との間で回転可能に支持されたダンパーと、
前記ダンパーを開き位置に向けて付勢する付勢部材と、
を備え、前記ダンパーが、室外からの風圧を受けることにより前記付勢部材に抗して閉じ位置に向かって回転するように配置され、
さらに、前記装置本体に第1操作位置と第2操作位置との間で操作可能に設けられた操作部材を備え、前記操作部材は室外方向に突出する作用部を有し、前記作用部は、前記操作部材の操作に伴い、前記装置本体の長手方向および室内外方向と交差する方向に移動するようになっており、
前記操作部材が前記第1操作位置にある時には、前記作用部が前記ダンパーの開閉動作を妨げない位置にあり、前記操作部材が前記第1操作位置から前記第2操作位置へと操作されると、前記作用部が前記ダンパーに直接作用して前記ダンパーに前記付勢部材に抗する回転トルクを付与し、これにより前記ダンパーを強制的に閉じ位置にすることを特徴とする換気装置。
【請求項2】
前記ダンパーは、その幅方向中間部を回転軸線として前記一対の端部キャップに回転可能に支持され、前記回転軸線より室外側に位置する第1部分と室内側に位置する第2部分とを有しており、
前記操作部材の作用部は、前記第2部分に作用して前記ダンパーを強制的に閉じるようになっており、前記ダンパーの閉じ位置では、前記第1部分と前記第2部分が、前記装置本体に前記換気通路を挟んで配置された一対のダンパー受部にそれぞれ当たることを特徴とする請求項1に記載の換気装置。
【請求項3】
前記ダンパーの長手方向両端には、前記ダンパーの一部として提供される一対のダンパーホルダが取り付けられ、前記ダンパーホルダが前記端部キャップに回転可能に支持され、前記ダンパーホルダと前記端部キャップとの間には、前記付勢部材としてのトーションバネが配置され、前記トーションバネが前記ダンパーホルダを付勢しひいては前記ダンパーを付勢することを特徴とする請求項2に記載の換気装置。
【請求項4】
前記一対のダンパーホルダの一方には、前記回転軸線より室内側に位置し前記ダンパーの前記第2部分の一部として提供される操作受部を有し、強制閉じ操作の際に前記操作部材の前記作用部が前記操作受部に当たることを特徴とする請求項3に記載の換気装置。
【請求項5】
前記装置本体が水平に延び、前記装置本体と前記端部キャップが、サッシ窓から室外に突出した室外突出部を有し、
前記換気通路が前記装置本体の前記室外突出部まで延びており、前記装置本体の前記室外突出部は、前記換気通路の下方に配置され下端が開放された室外側空間部を有し、前記換気通路と前記室外側空間部との間に多数の換気口が形成された水平壁が配置され、
前記ダンパーは、前記室外側空間部からの風圧を受けた時に、前記第1部分が上方に第2部分が下方に向かうように回動して閉じ位置になり、強制閉じ操作時には、前記作用部が下方に移動することを特徴とする請求項2~4のいずれかに記載の換気装置。
【請求項6】
前記操作部材が室内外方向に延びる他の回転軸線を中心に回転可能に支持され、前記作用部が前記他の回転軸線から離間した位置に配置されていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の換気装置。
【請求項7】
前記操作部材が直線的にスライドすることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の換気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サッシ窓に組み込まれ、風が強い時に換気通路を閉じ、手動操作によっても強制的に閉じることができる換気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された換気装置は、換気口が形成された仕切壁を有する細長い装置本体と、仕切壁の室内側において装置本体にスライド可能に支持され換気口を開閉する第1作動板と、この第1作動板を手動で開閉操作する手動操作機構とを備えている。さらにこの換気装置は、仕切壁の室外側において装置本体に回動可能に支持されたダンパーとしての第2作動板と、この第2作動板を仕切壁から離れた開き位置に保持するスプリングとを備えている。手動操作機構により第1作動板を開き状態にして留守にしている時に、風雨が激しくなった場合には、第2作動板が風圧により押されスプリングの力に抗して仕切壁に接し換気口を塞ぐので、風雨が室内に進入するのを防ぐことができる。
【0003】
特許文献2の換気装置は、細長い装置本体に回動可能に支持されたダンパーとしての作動板は、スプリングの力により装置本体のカムに当たって、開き状態となっており、風圧を受けた時に閉じるようになっている。さらにこの換気装置は、手動操作機構を備えており、作動板を装置本体の長手方向にスライドさせることにより、作動板をカムの作用によって強制的に閉じるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2015/198416号公報
【特許文献2】特開2021ー36121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の換気装置では、作動板を風圧により閉じる機能と手動操作により作動板を強制的に閉じる機能を備えているが、2つの作動板を必要とする。
特許文献2の換気装置は、単一の作動板を用いて、風圧により閉じる機能と手動操作により強制的に閉じる機能を発揮することができるが、カム部材を装置本体に設置すること、作動板のスライドを許容しながらバネの力を作動板に作用させる必要があること等のため、構成が複雑でコスト高となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、サッシ窓に組み込まれる換気装置であって、換気通路を有する細長い装置本体と、前記換気通路の長手方向両端の開口を塞ぐ一対の端部キャップと、前記換気通路内に配置されて前記装置本体の長手方向に延び、前記装置本体または前記端部キャップに開き位置と閉じ位置との間で回転可能に支持されたダンパーと、前記ダンパーを開き位置に向けて付勢する付勢部材と、を備え、前記ダンパーが、室外からの風圧を受けることにより前記付勢部材に抗して閉じ位置に向かって回転するように配置され、さらに、前記装置本体に第1操作位置と第2操作位置との間で操作可能に設けられた操作部材を備え、前記操作部材は室外方向に突出する作用部を有し、前記作用部は、前記操作部材の操作に伴い、前記装置本体の長手方向および室内外方向と交差する方向に移動するようになっており、前記操作部材が前記第1操作位置にある時には、前記作用部が前記ダンパーの開閉動作を妨げない位置にあり、前記操作部材が前記第1操作位置から前記第2操作位置へと操作されると、前記作用部が前記ダンパーに直接作用して前記ダンパーに前記付勢部材に抗する回転トルクを付与し、これにより前記ダンパーを強制的に閉じ位置にすることを特徴とする。
【0007】
上述の構成によれば、操作部材が第1操作位置にある時にはダンパーは風圧に応じて開閉可能であり、操作部材を第1操作位置から第2操作位置へと操作した時には、操作部材の作用部が直接ダンパーに作用してダンパーを強制的に閉じる構成であるので、単一のダンパーを有する簡単な構造でありながら、強風時に閉じる機能と手動操作により強制的に閉じる機能とを備えることができる。
【0008】
好ましくは、前記ダンパーは、その幅方向中間部を回転軸線として前記一対の端部キャップに回転可能に支持され、前記回転軸線より室外側に位置する第1部分と室内側に位置する第2部分とを有しており、前記操作部材の作用部は、前記第2部分に作用して前記ダンパーを強制的に閉じるようになっており、前記ダンパーの閉じ位置では、前記第1部分と前記第2部分が、前記装置本体に前記換気通路を挟んで配置された一対のダンパー受部にそれぞれ当たる。
この構成によれば、ダンパーの室内側の第2部分に操作部材の作用部が作用するので、円滑な強制閉じ動作を行うことができる。
【0009】
好ましくは、前記ダンパーの長手方向両端には、前記ダンパーの一部として提供される一対のダンパーホルダが取り付けられ、前記ダンパーホルダが前記端部キャップに回転可能に支持され、前記ダンパーホルダと前記端部キャップとの間には、前記付勢部材としてのトーションバネが配置され、前記トーションバネが前記ダンパーホルダを付勢しひいては前記ダンパーを付勢する。
この構成によれば、付勢部材としてのトーションバネをダンパーホルダと端部キャップとの間に隠すことができる。
【0010】
好ましくは、前記一対のダンパーホルダの一方には、前記回転軸線より室内側に位置し前記ダンパーの前記第2部分の一部として提供される操作受部を有し、強制閉じ操作の際に前記操作部材の前記作用部が前記操作受部に当たる。
この構成によれば、ダンパーの断面形状とは関係なく、操作部材の作用部が当たる部位を最適形状にすることができる。
【0011】
好ましくは、前記装置本体が水平に延び、前記装置本体と前記端部キャップが、サッシ窓から室外に突出した室外突出部を有し、前記換気通路が前記装置本体の前記室外突出部まで延びており、前記装置本体の前記室外突出部は、前記換気通路の下方に配置され下端が開放された室外側空間部を有し、前記換気通路と前記室外側空間部との間に多数の換気口が形成された水平壁が配置され、前記ダンパーは、前記室外側空間部からの風圧を受けた時に、前記第1部分が上方に第2部分が下方に向かうように回動して閉じ位置になり、強制閉じ操作時には、前記作用部が下方に移動する。
この構成によれば、風雨が室外側空間部を経て吹き上がる過程で、換気通路に吹き込む風雨を弱めることができる。
【0012】
一態様では、前記操作部材が室内外方向に延びる他の回転軸線を中心に回転可能に支持され、前記作用部が前記他の回転軸線から離間した位置に配置されている。
他の態様では、前記操作部材が直線的にスライドする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、単一のダンパーを有する簡単な構造でありながら、風圧により閉じる機能と手動操作により強制的に閉じる機能とを備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る換気装置を示す斜視図であり、その長さを実際より短くして示す。
【
図3A】
図2のIII-III矢視断面図であり、ダンパーが開いた状態を示す。
【
図3B】
図2のIII-III矢視断面図であり、ダンパーが風圧により閉じられた状態を示す。
【
図3C】
図2のIII-III矢視断面図であり、ダンパーが操作部材の操作により強制的に閉じられた状態を示す。
【
図4】ダンパーと、このダンパーの右端部に取り付けられたダンパーホルダを示す正面図である。
【
図5】ダンパーホルダと端部キャップと軸ピンとトーションバネを示す分解斜視図である。
【
図6A】端部キャップを内側から見た側面図であり、ダンパーが開き位置にある時のダンパーホルダのバネ受部の位置を示す。
【
図6B】端部キャップを内側から見た側面図であり、ダンパーが閉じ位置にある時のダンパーホルダのバネ受部の位置を示す。
【
図7】同換気装置の操作部材と操作部材ホルダを室内側から見た斜視図であり、(a)は両者を組付ける前の状態、(b)は組付けた状態をそれぞれ示す。
【
図8】同換気装置の操作部材と操作部材ホルダを室外側から見た斜視図であり、(a)は両者を組付ける前の状態、(b)は組付けた状態をそれぞれ示す。
【
図9】端部キャップを外側から見た側面図であり、カバーを省いて排水路と貯水槽を露出させた状態を示す。
【
図10】端部キャップとカバーの分解斜視図である。
【
図11】本発明の他の実施形態に係る換気装置におけるスライド式の操作部材を示し、(a)は室内側から見た斜視図であり、(b)は室外側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<換気装置の概略構成>
以下、本発明の第1実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1、
図2に示すように換気装置1は、細長い装置本体10と、その長手方向両端に取り付けられた同一形状の一対の端部キャップ20とを備えている。
【0016】
<換気装置とサッシ窓>
図3Aに示すように、換気装置1が組み込まれるサッシ窓5は、上框5aと下框(図示しない)と左右の縦框5bにより、縦長の矩形の枠を備えている。本実施形態の換気装置1は上框5aに沿って水平に延び、上框5aの下部に組みつけられている。ガラス板6は、その上縁を換気装置1に嵌め込まれ、その下縁を下框に嵌め込まれ、その左右両側縁を縦框5bに嵌め込まれている。後述するように、本実施形態の換気装置1はサッシ窓5より室外方向に突出している。
【0017】
<装置本体について>
図3Aに示すように、装置本体10はアルミ合金製または樹脂製の3つの押出型材11,12,13を組み立てることにより構成されている。室外側の型材11が、装置本体10におけるサッシ窓5の縦框5bよりも室外側に突出する室外突出部10aを構成している。
室外側の型材11の下側の水平壁11aには換気口11bが形成されており、中間型材12の室内側に位置する垂直壁12aにも換気口12bが形成されている。室外側型材11の水平壁11aと中間型材12の垂直壁12aの間の内部空間は、換気通路14として提供される。換気装置14は装置本体10の室外突出部10aまで延びている。
【0018】
室内側型材13は、中間型材12の垂直壁12aに隣接した垂直壁13aを有しており、この垂直壁13aにも換気口13bが形成されている。室内側型材13は、上下に対峙した一対の保持片13cを有する。これら一対の保持片13cの対向面には三角形状の係合凸部が形成されている。これら一対の保持片13c間には、図示しないフィルタを保持するためのフィルタホルダ15が収容されている。このフィルタホルダ15の垂直壁15aにも換気口15bが形成されている。フィルタホルダ15は、上下に屈曲形状の弾性係合片15cを有しており、この弾性係合片15cを室内側型材13の保持片13cの係合凸部に嵌めることにより、フィルタホルダ15が室内側型材13に着脱可能に保持されている。
【0019】
上記室外側型材11の換気口11bは室内外方向に細長い形状を有し、装置本体10の長手方向に多数並べて形成されている。また、他の換気口12b、13b、15bは上下方向に細長い形状を有し、装置本体10の長手方向に多数並べて形成されている。
【0020】
中間型材12の上下の水平壁には後述の作用をなすダンパー受部16,17が形成されている。これらダンパー受部16,17は換気通路14を挟んで上下に配置されている。上側のダンパー受部16は下方に傾斜して突出し、その室外側の面にはパッキン16aが取り付けられている。下側のダンパー受部17は上方に傾斜して突出し、その室内側の面にはパッキン17aが取り付けられている。
【0021】
中間型材12には上方に突出する起立壁が形成されており、この起立壁が上框5aの凹部に嵌め込まれている。型材11~13はそれぞれ垂下壁を有しており、中間型材12の垂下壁と室内側型材13の垂下壁との間に形成された凹部にはガラス戸の上縁部が嵌められている。室外側型材11の垂下壁と中間型材12の垂下壁との間には、下端が開放された室外側空間部18が形成されている。この室外側空間部18は換気通路14の室外側端部の下方に配置されており、換気通路14と室外側空間部18の間に上述した水平壁11aが介在されている。
【0022】
<端部キャップについて>
端部キャップ20は樹脂の射出成形品であり、装置本体10の断面形状に対応した形状を有している。具体的には、
図5、
図6A、
図9、
図10に示すように、装置本体10の室外突出部10aに対応してサッシ窓5から室外に突出する室外突出部20aと、装置本体10の中間型材12の起立壁に対応して上方に突出して上框5aの凹部に差し込まれる凸部20bと、ガラス戸6が差し込まれる凹部20cを有している。さらに端部キャップ20は、装置本体10の長手方向外側に突出して縦框5bに差し込まれる凸部20dを有している。
【0023】
図2に示すように端部キャップ20は凸部20d(第1部位)だけが縦框5bに差し込まれており、他の部位(第2部位)は縦框5b外に配置されており、室内と室外に露出している。この室外側の露出部が、上記室外側突出部20aとなっている。
【0024】
図3A,
図5、
図6Aに示すように、端部キャップ20は装置本体10の端に当接する平坦な閉塞壁21を有している。閉塞壁21は、装置本体10の断面形状に対応した形状を有しており、換気通路14と室外側空間部18の長手方向の両端開口を塞いでいる。
【0025】
端部キャップ20は、ネジ挿通穴29を有しており、タッピングネジ(図示しない)を外側からネジ挿通穴29に通し、装置本体10の中間型材12に形成されたタッピング穴19にねじ込むことにより、装置本体10の左右端に固定されている。
【0026】
<ダンパーおよびそれに付属する部材について>
図3Aに示すように、装置本体10の換気通路14には、装置本体10の長手方向に延びる押出型材からなるダンパー30(開閉部材)が配置されている。ダンパー30は、その長手方向両端に取り付けられた一対の同一形状のダンパーホルダ40を介して、左右の端部キャップ20に回転可能に支持されている。ダンパーホルダ40はダンパー30と一体に運動する付属部材であり、ダンパー30の一部として提供される。
【0027】
ダンパー30は、
図3Aに示す略水平姿勢の開き位置と、
図3Bに示す傾斜姿勢の閉じ位置との間で、長手方向に延びる回転軸線Lを中心として回転可能である。
ダンパー30の断面形状は種々採用可能であるが、本実施形態のダンパー30は、扁平菱形の中空断面形状のダンパー本体31を有しており、その中心を回転軸線Lが通るようになっている。ダンパー本体31の室外側の一端には、風受フィン32が形成されている。これにより、ダンパー本体31の回転軸線Lより室外側の半分と風受フィン32からなる第1部分30aの受圧面積は、ダンパー本体31の回転軸線Lより室内側の半分からなる第2部分30bの受圧面積より大となっている。
【0028】
ダンパー30が閉じ位置にある時、ダンパー本体31の第1部分30aが装置本体10の上側のダンパー受部16のパッキン16aに当たり、第2部分30bが下側のダンパー受部17のパッキン17aに当たり、換気通路14を閉じるようになっている。
【0029】
図3A、
図4、
図5に示すように、ダンパーホルダ40は、鍔付きの円盤形状の基部41と、この基部41の内面(換気通路14に臨む面)に装置本体10の長手方向に突出するようにして形成された一対の支持部42と、基部41の外面にその中心から外れた位置に形成されたバネ受部44とを有している。
【0030】
ダンパーホルダ40は、一対の支持部42がダンパー30の端部を挟むようにして、ダンパー30に取り付けられている。なお、一対の支持部42の対向面はダンパー30の凸形状に係合する凹形状をなしており、これによりダンパーホルダ40はダンパー30を安定して支持することができる。
【0031】
一方のダンパーホルダ40(本実施形態では右側のダンパーホルダ40)の上側の支持部42の室内側の端部上面は、後述の作用をなす操作受部42x(ダンパー30の第2部分30bの一部)として提供される。
【0032】
図5、
図6Aに示すように、左右の端部キャップ20の閉塞壁21の内側の面(換気通路14に臨む面)には円形の収容凹部22が形成されており、この収容凹部22に左右のダンパーホルダ40の基部41がそれぞれ収容されている。基部41の中央と収容凹部22の奥面の中央にはそれぞれ軸受穴(図示しない)が形成されており、これら軸受穴には軸ピン50が挿入されている。この軸ピン50によりダンパーホルダ40ひいてはダンパー30が、端部キャップ20に回転可能に支持されている。
【0033】
端部キャップ20の収容凹部22の奥面には、回転軸線Lを中心として円弧を描く溝23が形成されており、この溝23にダンパーホルダ40のバネ受部44が挿入されている。
【0034】
左右の端部キャップ20の収容凹部22と左右のダンパーホルダ40の基部41との間には、ダンパー30を上述した水平姿勢の開き位置に向けて付勢するためのトーションバネ55(付勢部材)が、それぞれ配置されている。トーションバネ55の中央の巻き部分に上述した軸ピン50が挿入されている。トーションバネ55の一端部55aは、収容凹部22の奥面に形成されたスリット24に挿入固定されており、他端部55bが上述したダンパーホルダ40のバネ受部44に当たりこのバネ受部44を下方に押圧している。これにより、ダンパー30はトーションバネ55により
図3Aにおいて反時計回り方向に付勢されている。
図6Aに示すように溝23の一端はストッパ23aとして提供され、バネ受部44がこのストッパ23aに当たることにより、ダンパー30は
図3Aに示す水平姿勢の開き位置を維持されるようになっている。
トーションバネ55はダンパーホルダ40により隠され、換気通路14から隔離されている。
【0035】
<ダンパーの開閉動作>
ダンパー30が
図3Aに示す開き位置にある時には、室外の空気は室外側空間部18、換気口11b、換気通路14、換気口12b、13b、15bを経て室内に導かれる。
【0036】
風雨が激しい時には、ダンパー30は室外側空間部18から吹き上がる風を受ける。この際、ダンパー30の回転軸線Lより室外側の第1部分30aでの風圧が室内側の第2部分30bでの風圧より強いこと、および第1部分30aの受圧面積が第2部分30bの受圧面積より大きいことにより、ダンパー30はトーションバネ55の弾性に抗して時計回り方向に回転し、
図3Bに示すように第1部分30aと第2部分30bが装置本体10のダンパー受部16,17にそれぞれ当たり、換気通路14を遮断する。その結果、居住者が留守の時でも風雨が室内に吹き込むのを防止することができる。また、強風時の過剰な換気も防止できる。なお、ダンパー30の上記第1部分30aの受圧面積が上記第2部分30bの受圧面積より大きいため、ダンパー30は風圧による閉じ位置を維持することができる。
【0037】
なお、風雨は室外側空間部18から吹き上げられる過程で水平壁12aにより弱められ、雨水の換気通路14内への入り込みを抑制することができる。
【0038】
ダンパー30が上述のように閉じ位置まで回転すると、
図6Bに示すようにダンパーホルダ40のバネ受部44がストッパ23aから離れる。風雨が収まればトーションバネ55の力でバネ受部44は元のストッパ23aまで戻り、ダンパー30が
図3Aの開き位置に戻る。
【0039】
<強制閉じ操作構造>
換気装置1は、例えば冷暖房効率を高めるために、ダンパー30を手動操作により強制的に閉じる構造を備えている。
図1に示すように、この強制閉じ操作構造は、装置本体10の左右端部の一方(本実施形態で右端部)において端部キャップ20に隣接して設けられている。
【0040】
強制閉じ操作構造は、ホルダ60(操作部材ホルダ)と、このホルダ60に回転可能に支持された回転式操作部材70とを備えている。
図7、
図8に示すように、ホルダ60は、矩形のブロック形状を有しており、その上下縁部に溝61が形成されている。フィルタホルダ15と同様に、ホルダ60を室内側型材13の一対の保持片13c間に配置することにより、装置本体10組み付けられる。ホルダ60の溝61が保持片13cの係合凸部と係合する。
【0041】
操作部材70は、円盤形状の基部71と、基部71の室内側の面に形成されたつまみ部72と、基部71の室外側の面の中央に突設された軸部73と、軸部73から離間して突設された支持筒部74および係合突起75と、を有している。支持筒部74には作用ロッド76(作用部;
図3A~
図3Cにのみ示す)が挿入固定されている。
【0042】
ホルダ60の室内側の面には円形の収容凹部62が形成されており、この収容凹部62に操作部材70の基部71が収容される。ホルダ60の室外側の面の中央には筒部が突設しており、この筒部の内部空間が軸受穴63として提供される。軸受穴63は収容凹部62の奥面に開口しており、この軸受穴63に操作部材70の軸部73が挿入されることにより、操作部材70はホルダ60に、室内外方向に延びる回転軸線を中心として回転可能に支持されている。
【0043】
さらにホルダ60は、収容凹部62の奥壁を貫通するとともに操作部材70の回転軸線を中心とする円弧を描く2つの穴64,65を有している。一方の穴64には、操作部材70の支持筒部74が挿入されており、その円弧形状により操作部材70の回転を許容する。
【0044】
他方の穴65の両端には、この穴65に沿う円弧形状の弾性片66の両端が、一体をなして連なっている。この弾性片66の一端近傍と他端近傍の室内側の面には、それぞれ係合凹部66a,66bが形成されている。操作部材70の係合突起75(
図8参照)は、操作部材70が第1操作位置にある時には、ホルダ60の係合凹部66aに係合され、これにより操作部材70の第1操作位置を維持する。また操作部材70が第2操作位置にある時には、係合突起75は係合凹部66bに係合され、これにより操作部材70の第2操作位置を維持する。操作部材70が第1操作位置と第2操作位置との間を回る時には、係合突起75は弾性片66を押しながら移動し、この弾性片66を弾性変形させる。
【0045】
<強制閉じ操作>
操作部材70が第1操作位置にある時、上述したように操作部材70の係合突起75がホルダ60の弾性片66係合凹部66aに係合され、支持筒部74は穴64の上端部に位置しており、作用ロッド76はダンパー30の開閉動作を妨げない上方の位置にある。
図3Aに示すようにダンパー30が水平姿勢の開き位置にある時には、ダンパーホルダ40の支持部42の操作受部42xは操作部材70の作用ロッド76と接しているか、わずかに離れている。風圧が強い時には、上述したようにダンパー30は閉じられる(
図3B参照)。この閉じ状態では、操作受部42xが作用ロッド76から離れる。このように、作用ロッド76が上方位置にある時には、ダンパー30の開閉動作が許容される。
【0046】
操作部材70を室内側から見て時計回り方向に回して第1操作位置から第2操作位置にすると、作用ロッド76は円弧を描きながら下方に移動する。ダンパー30が
図3Aに示す水平姿勢の開き位置にある場合には作用ロッド76がダンパーホルダ40の操作受部42xを下方に押すため、ダンパー30はトーションバネ55に抗して
図3Aにおいて時計回りに回転し、
図3Cに示す閉じ位置に至り、換気通路14を遮断する。このようにして、居住者は、空調装置を稼働して室温を調節する場合や暴風時に、手動操作により意図的にダンパー30を強制的に閉じることができる。
【0047】
図3Cに示すようにダンパー30が強制的に閉じられた状態では、
図6Bに示すようにトーションバネ55がダンパーホルダ40のバネ受部44を下方に付勢するため、ダンパー30には
図3Cにおいて反時計回り方向のトルクが作用し、作用ロッド76を押し上げようとする。しかし、操作部材70の係合突起75がホルダ60の弾性片66の係合凹部65bに係合しているため、作用ロッド76は
図3Cの強制閉じ位置を維持でき、ひいてはダンパー30の強制閉じ状態を維持することができる。
【0048】
上述したように、換気装置1は、1枚のダンパー30を有する簡単な構造でありながら、強風時の自動閉じ動作機能と手動操作により強制閉じ機能を有する。しかも、操作部材70を回転操作することにより作用ロッド76を上下方向に移動させダンパー30の室内側の第2部分30bを押圧することにより、ダンパー30の強制閉じを円滑に行うことができる。
【0049】
<排水構造>
上述したように、風雨が激しい時にダンパー30が閉じ動作して換気通路14を遮断するが、この閉じ動作の初期に雨水が換気通路14の室内側に侵入することがある。また、風圧の変動が激しい時にダンパー30が一時的に開いて雨水が浸入することもある。そのため、一対の端部キャップ20は
図9、
図10に示すように、換気通路14の水を室外へ排水する排水経路80を備えている。以下、詳述する。
【0050】
排水経路80は、端部キャップ20の閉塞壁21に形成された排水口81と、閉塞壁21の外側(装置本体10の長手方向外側)に形成された貯水槽82と、排水口81と貯水槽82を連ねる排水路83を備えている。前述したように、端部キャップ20はサッシ窓5の縦框5bに挿入される凸部20d(第1部位)を除く部位(第2部位)が縦框5bから突出しており、この部位に貯水槽82および排水路83が形成されている。
【0051】
排水口81は、
図3A~
図3Cに示すように、ダンパー受部17(閉じ状態のダンパー30)より室内側に位置し、その下縁は換気通路14の底面と略等しい高さにあり、換気通路14の室内側の底部と連なっている。
【0052】
端部キャップ20は、閉塞壁21から装置本体10の長手方向に突出した周囲壁と隔壁を有し、これら壁により区分けされた多数の小空間を有している。これら小空間は装置本体10の長手方向外側が開放されている。端部キャップ20の小空間のうち、最も下側に位置し室内外方向の中間から室外突出部20aに至る小空間20xが排水経路80の貯水槽82と排水路83として提供される。
【0053】
貯水槽82は端部キャップ20の室外突出部20aの下部、すなわち装置本体10の室外側空間部18と略一致した位置に形成されており、排水口81より室外側かつ下位に配置されている。排水路83は室内外方向にほぼ水平に延びており、排水口81と貯水槽82を連ねる。
【0054】
図10に示すように、貯水槽82と排水路83は、長手方向外側をカバー86により覆われている。カバー86は、貯水槽82を覆う板状部86aと、排水路83を覆うブロック部86bを有している。
【0055】
排水経路80はさらに、端部キャップ20の閉塞壁21に形成された開口87と、この開口87を開閉する排水弁88を備えている。開口87は、貯水槽82に連なり、装置本体10の室外側空間部18に臨んでいる。排水弁88はその上端で閉塞壁21に回転可能に支持され、この閉塞壁21の内側の面に当たっている。そのため、排水弁88は逆止弁の機能を有し、貯水槽82から室外(室外側空間部18)への流れのみを許容し、室外から貯水槽82の流れを禁じている。上述した貯水槽82と開口87と排水弁88により、排水経路80の出口部80aが構成されている。
【0056】
さらに、閉塞壁21には、室外側の圧力を貯水槽82に導入するための圧力導入口89(圧力導入経路)が形成されている。この圧力導入口89は排水口81より小さい。
【0057】
<排水作用>
換気通路14の底部の室内側部分(ダンパ受部17より室内側の部分)に溜まった水は、端部キャップ20の閉塞壁21に形成された排水口81から排水路83を通り、貯水槽82に至る。貯水槽82に溜まった水は、室外の風圧がゼロか弱い場合には、排水弁88を押し開いて室外に排出されて下方に落下する。
【0058】
上記のように、端部キャップ20に形成された排水経路80を介して換気通路14の底部に溜まった水を室外に円滑に排出することができる。排水経路80がサッシ窓5の内部を通過しないので、サッシ窓5の劣化を防ぐことができる。
【0059】
排水弁88は逆止弁であるので、装置本体10の室外側空間部18に吹き込んだ風雨が貯水槽82、排水路83、排水口81から室内へと吹き込むのを禁じている。風圧が強いと排水弁88を閉じる力が強いため排水弁88が開かず、貯水槽82に溜まった水の水位が高くなる可能性がある。本実施形態では、閉塞壁21に形成された圧力導入口89により貯水槽82と室外(室外側空間部18)を連通させているので、室外側の風圧を貯水槽82に導入することができ、貯水槽82と室外の気圧差を減じることができる。そのため、貯水槽82からの排水を促し、貯水槽82の水位を許容高さ以下に抑えることができる。
排水弁88が装置本体10の室外側空間部18に配置されているので、損傷のリスクを軽減できる。
【0060】
<他の実施形態>
図11は、本発明の他の実施形態を示す。この実施形態では回転式の操作部材70の代わりに、スライド式の操作部材90が用いられている。第1実施形態と同様に、ホルダ95(操作部材ホルダ)が装置本体10に取り付けられており、このホルダ95に操作部材90が上下方向にスライド可能に支持されている。操作部材90は、室内側につまみ部91を有し、室外側に作用突起92(作用部)を有している。他の構成は第1実施形態と同様である。
【0061】
操作部材90が図示のように上方の第1操作位置にある時、作用突起92も上方位置にあり、ダンパー30の開閉動作を妨げない。操作部材が下方の第2操作位置へスライドすると、作用突起92がダンパーホルダ40の操作受部42x(
図3A参照)を押圧し、ダンパー30を
図3Cに示すように強制的に閉じ位置にする。
【0062】
本発明は上記実施形態に制約されず種々の態様が可能である。
上記実施形態では、強制閉じ操作時において、操作部材の作用部をダンパーの付属部材であるダンパーホルダに当てて押圧したが、作用部をダンパーに当てて押圧してもよい。
上記実施形態では、強制閉じ状態を維持する維持手段は、操作部材70の係合突起75とホルダ60の弾性片66の係合凹部66bにより構成したが、種々の構成を採用可能である。
操作部材の操作により作用部を上方へ移動させることによりダンパーを強制的に閉じてもよい。ダンパーを装置本体に回動可能に支持してもよい。
本発明の換気装置はサッシ窓の上框として機能するようにすなわち上框一体型として構成してもよい。また、本発明の換気装置は、観音開き式のサッシ窓、スライド式サッシ窓、嵌め殺しのサッシ窓のいずれに組み込んでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、強風時に自動的に閉じることができ、手動でも強制的に閉じることができる換気装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 換気装置
5 サッシ窓
10 装置本体
10a 室外突出部
12a 水平壁
12b 換気口
14 換気通路
16,17 ダンパー受部
18 室外側空間部
20 端部キャップ
20a 室外突出部
21 閉塞壁
30 ダンパー(開閉部材)
30a 第1部分
30b 第2部分
31 ダンパー本体
32 風受フィン
40 ダンパーホルダ
42x 操作受部
55 トーションバネ(付勢部材)
70 回転式操作部材
76 作用ロッド(作用部)
90 スライド式操作部材
92 作用突起(作用部)
L ダンパーの回転軸線