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特開2024-61147ナノバブル濃度測定方法、及びナノバブル濃度測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061147
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】ナノバブル濃度測定方法、及びナノバブル濃度測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/075 20240101AFI20240425BHJP
【FI】
G01N15/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168892
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】318014588
【氏名又は名称】株式会社超微細科学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100171941
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 忠行
(72)【発明者】
【氏名】切石 壮
(72)【発明者】
【氏名】藤田 勇仁
(57)【要約】      (修正有)
【課題】経済的で測定精度の高いナノバブル濃度測定装置を提供する。
【解決手段】本発明のナノバブル濃度測定方法は、標準粒子を所定濃度に分散させた標準粒子分散液を形成する工程と、標準粒子分散液にレーザー光を照射して標準粒子による散乱光をデジタルカメラで撮影し、得られた画像データ上の光点の数を標準粒子みかけ個数b′個としてカウントする工程と、標準粒子分散液について、補正比r1=標準粒子みかけ個数b′/(標準粒子濃度A×撮影範囲の体積v)を算出する工程と、ナノバブル分散液で満たした計測セルにレーザー光を照射して、その散乱光をデジタルカメラで撮影し、得られた画像データ上の光点の数をナノバブルみかけ個数c′個としてカウントする工程と、ナノバブルみかけ個数c′個を、撮影範囲の体積vで除してナノバブル見かけ濃度を求め、これを標準粒子濃度Aで除してナノバブル濃度を算出する工程を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノバブルを分散したナノバブル分散液の気泡濃度を測定するナノバブル濃度測定方法であって、
標準粒子を純水で希釈して標準粒子濃度がA(個/単位体積)である標準粒子分散液を形成する標準粒子分散液形成工程と、
前記標準粒子分散液で満たした計測セルにレーザー光を照射して標準粒子による散乱光をデジタルカメラで撮影し、得られた画像データ上の光点の数を標準粒子みかけ個数b′個としてカウントする標準粒子分散液みかけ個数計測工程と、
前記標準粒子分散液について、補正比r1={標準粒子みかけ個数b′/(標準粒子濃度A×撮影範囲の体積v)}を算出する補正比算出工程と、
ナノバブル分散液で満たした計測セルにレーザー光を照射して、その散乱光をデジタルカメラで撮影し、得られた画像データ上の光点の数をナノバブルみかけ個数c′個としてカウントするナノバブルみかけ個数算出工程と、
前記ナノバブル分散液について、ナノバブル濃度D1(個/単位体積)=(ナノバブルみかけ個数c′個)/(撮影範囲の体積v×補正比r1)を算出するナノバブル濃度算出工程とを備えることを特徴とするナノバブル濃度測定方法。
【請求項2】
前記補正比算出工程に先がけて、計測セルを純水で満たし、該純水を前記デジタルカメラで撮影して得られた画像データ上の光点の数をノイズ光点数e個としてカウントするノイズ計測工程を有し、前記補正比算出工程において、補正比r1に代わって、補正比r2=(標準粒子みかけ個数b′-ノイズ光点数e)/(標準粒子濃度A×撮影範囲の体積v)を算出し、前記ナノバブル濃度算出工程に先がけて、前記ナノバブル分散液の溶媒液で満たした計測セルにレーザー光を照射し、該溶媒液を前記デジタルカメラで撮影して得られた画像データ上の光点の数からなるノイズ・固体粒子数f個をカウンする溶媒ノイズ・固体粒子数計測工程を有し、前記ナノバブル濃度算出工程において、前記ナノバブルみかけ個数c′個に代わって、(ナノバブルみかけ個数c′-ノイズ・固体粒子数f)を前記撮影範囲の体積v、及び補正比r2で除してナノバブル濃度D2(個/単位体積)を算出する請求項1に記載のナノバブル濃度測定方法。
【請求項3】
前記標準粒子分散液形成工程において、粒径が100nmの標準粒子を用いる請求項1、又は請求項2に記載のナノバブル濃度測定方法。
【請求項4】
前記標準粒子みかけ個数計測工程、及び前記ナノバブルみかけ個数算出工程において、画像データ上で隣接するn(nは2以上の自然数)個未満のセルにのみ跨る光点を、カウントしない請求項1、又は請求項2に記載のナノバブル濃度測定方法。
【請求項5】
前記標準粒子みかけ個数計測工程、及び前記ナノバブルみかけ個数計測工程において、画像データ上で隣接するm(mは2以上の自然数)個以上のセルに跨る光点を、カウントしない請求項4に記載のナノバブル濃度測定方法。
【請求項6】
前記標準粒子分散液形成工程において、標準粒子濃度の異なる複数種の標準粒子分散液を形成し、前記補正比算出工程において、当該複数種の標準粒子分散液について補正比r2を算出し、前記標準粒子みかけ個数b′からノイズ光点数eを差し引いて映出標準粒子数bを算出し、当該複数種の標準粒子分散液の補正比r2と映出標準粒子数bとの関係を補間する補正関数を求める補正関数導出工程を備える請求項2に記載のナノバブル濃度測定方法。
【請求項7】
請求項1に記載のナノバブル濃度測定方法を用いてナノバブル分散液の気泡濃度を測定するナノバブル濃度測定装置であって、
測定対象の被検液を保持する計測セルと、
前記計測セル内にレーザー光を照射するレーザー光照射装置と、
前記被検液を撮影するデジタルカメラと、
前記デジタルカメラで撮影された被検液の画像データを処理する演算装置と
を備え、
前記演算装置は、
前記標準粒子濃度A、前記撮影範囲の体積v、前記デジタルカメラで撮影された前記標準粒子分散液の画像データ、及び前記ナノバブル分散液の画像データを記憶するとともに、前記標準粒子分散液の画像データから前記標準粒子みかけ個数b′個をカウントし、前記標準粒子分散液について、補正比r1=標準粒子みかけ個数b′/(標準粒子濃度A×撮影範囲の体積v)を算出するとともに、前記ナノバブル分散液の画像データから前記ナノバブルみかけ個数c′個をカウントし、前記ナノバブル分散液について、前記ナノバブル分散液について、ナノバブル濃度D1(個/単位体積)=(ナノバブルみかけ個数c′個)/(撮影範囲の体積v×補正比r1)を算出するよう構成されているナノバブル濃度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体中に分散された微細気泡の濃度を測定する技術に関し、特に、ナノバブルやウルトラファインバブルと称される直径が1μm以下の微細気泡の濃度を測定する方法、及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体中のナノバブルの濃度測定方法として、動的光散乱法や粒子軌跡追跡法が広く用いられている。これらの測定方法は、ナノバブルが分散した液体中にレーザー光を照射し、微細気泡によるレイリー散乱光を検知することでナノバブルの濃度や粒径分布等を測定するものである。
【0003】
これらレーザー光を用いる方法では、固体粒子も粒径により散乱光を生じるため、計測した粒子数から固体粒子の数を減じる手法が各種提案されている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
例えば、特許文献1では、ファインバブルを含有しない原液と、該原液にファインバブルを含有させたファインバブル含有媒体の両方についてレーザー光を照射して、それぞれの光強度分布を測定し、原液の光強度分布からファインバブル含有媒体の光強度分布を差し引いたデータを用いることによりファインバブルのみの気泡分布を測定するようにした気泡分布測定方法が提案されている。
【0005】
また、特許文献2には、被検液にレーザー光を照射するとともに時間変動する変動磁場を印加し、固体粒子と微細気泡の変動磁場による自転のし易さの違いによる散乱光の輝度の違いをデジタルマイクロスコープにより検知して、固体粒子と微細気泡を区別するようにした微細気泡分散液の測定方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-48185号公報
【特許文献2】特開2021-101153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、ナノ粒子にレーザー光を照射して得られる散乱光は、ナノ粒子のブラウン運動によりその強度が増減する(図1参照)ところ、特許文献1や特許文献2に係るナノバブル濃度測定方法では、デジタルカメラに写る下限8を上回るもの(図1の符号91参照)のみが撮影され、当該下限8より散乱光の強度が下回るもの(図1の符号92参照)は撮影されいという問題があり、また、散乱光の強度が弱いものまで感知可能な撮影装置を設けると、測定装置が高価になるという問題がある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、高価な撮影装置を用いることなく、十分にナノバブル濃度を測定可能な測定装置、及び測定方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、ナノバブルを分散したナノバブル分散液の気泡濃度を測定するナノバブル濃度測定方法であって、標準粒子を純水で希釈して標準粒子濃度がA(個/単位体積)である標準粒子分散液を形成する標準粒子分散液形成工程と、前記標準粒子分散液で満たした計測セルにレーザー光を照射して標準粒子による散乱光をデジタルカメラで撮影し、得られた画像データ上の光点の数を標準粒子みかけ個数b′個としてカウントする標準粒子みかけ個数計測工程と、前記標準粒子分散液について、補正比r1={標準粒子みかけ個数b/(標準粒子濃度A×撮影範囲の体積v)}を算出する補正比算出工程と、ナノバブル分散液で満たした計測セルにレーザー光を照射して、その散乱光をデジタルカメラで撮影し、得られた画像データ上の光点の数をナノバブルみかけ個数c′個としてカウントするナノバブルみかけ個数算出工程と、前記ナノバブルみかけ個数c′個を前記撮影範囲の体積v、及び前記補正比r1で除してナノバブル濃度D1(個/単位体積)を算出するナノバブル濃度算出工程とを備えることを特徴とする。
ここで、「デジタルカメラ」とは、CCDセンサーやCMOSセンサーによって捉えた画像をデジタルデータとして記録・出力可能なカメラであって、静止画像を主として撮影するもの、及びビデオ画像を主として撮影するものの両方が含まれるものとする。
【0009】
このように、ナノバブルみかけ個数c′個を撮影範囲の体積vで除することで、ナノバブル分散液の見かけ濃度C(個/単位体積)を求めることができ、これを標準粒子分散液から求めた補正比r1で除することで、画像データに映出されないナノバブルを含めたナノバブル濃度D1を算出できる。
あるいは、ナノバブルみかけ個数c′個を補正比r1で除することで、撮影範囲中に実存する実ナノバブル数d個を求めることができ、これをさらに撮影範囲の体積vで除することで、ナノバブル濃度D1を求めることができる。
【0010】
本発明のナノバブル濃度測定方法は、前記補正比算出工程に先がけて、計測セルを純水で満たし、該純水を前記デジタルカメラで撮影して得られた画像データ上の光点の数をノイズ光点数e個としてカウントするノイズ計測工程を有し、前記補正比算出工程において、補正比r1に代わって、補正比r2=(標準粒子みかけ個数b′-ノイズ光点数e)/(標準粒子濃度A×撮影範囲の体積v)を算出し、前記ナノバブル濃度算出工程に先がけて、前記ナノバブル分散液の溶媒液で満たした計測セルにレーザー光を照射し、該溶媒液を前記デジタルカメラで撮影して得られた画像データ上の光点の数からなるノイズ・固体粒子数f個をカウンする溶媒ノイズ・固体粒子数計測工程を有し、 前記ナノバブル濃度算出工程において、前記ナノバブルみかけ個数c′個に代わって、(ナノバブルみかけ個数c′-ノイズ・固体粒子数f)を前記撮影範囲の体積v、及び補正比r2で除してナノバブル濃度D2を(個/単位体積)を算出することが好ましい。
こうすることで、ナノバブル分散液のナノバブル濃度から、固体粒子と、デジタルカメラのノイズによる増加分を減じることができるので、より正確にナノバブル濃度を算出できる。
【0011】
前記標準粒子分散液形成工程において、粒径が100nmの標準粒子を用いることが好ましい。ナノバブルは、直径がφ100nm程度に収束するため、粒径が100nmの標準粒子を用いることで、補正比r1,r2を、ナノバブル分散液中の実際のナノバブル数に対する当該デジタルカメラで映出されるナノバブル数の割合に、より近づけることができる。
【0012】
本発明のナノバブル濃度測定方法は、前記標準粒子みかけ個数計測工程、及び前記ナノバブルみかけ個数算出工程において、画像データ上で隣接するn(nは2以上の自然数)個未満のセルにのみ跨る光点を、カウントしないことが好ましい。
画像上でごく少数(n個未満)のセルにのみ跨る小さい光点は、ノイズや、非常に小さな固体粒子などの映像が含まれる。これをカウントしないことにより、より正確に標準粒子やナノバブルを表示する光点をカウントできるため、より正確にナノバブル濃度を測定できる。
【0013】
本発明のナノバブル濃度測定方法は、前記標準粒子みかけ個数計測工程、及び前記ナノバブルみかけ個数計測工程において、画像データ上で隣接するm(mは2以上の自然数)個以上のセルに跨る光点を、カウントしないことが好ましい。
画像上で極端に大きな光点(m個以上のセルに跨る大きい光点)は、ナノバブルではなく、大きな固体粒子の映像である可能性が高い。これをカウントしないことにより、より正確に標準粒子やナノバブルを表示する光点をカウントできるため、より正確にナノバブル濃度を測定できる。
【0014】
本発明のナノバブル濃度測定方法は、前記標準粒子分散液形成工程において、標準粒子濃度の異なる複数種の標準粒子分散液を形成し、前記補正比算出工程において、当該複数種の標準粒子分散液について補正比r2を算出し、前記標準粒子みかけ個数b′からノイズ光点数eを差し引いて映出標準粒子数bを算出し、当該複数種の標準粒子分散液の補正比r2と映出標準粒子数bとの関係を補間する補正関数を求める補正関数導出工程を備えることが好ましい。
例えば、補正比r1,r2は、映出標準粒子数bにより異なる場合がある。映出標準粒子数bと補正比の関係を近似する補正関数fr=F(b)を求めることで、ナノバブル分散液のナノバブル濃度D1,D2が、標準粒子分散液の標準粒子濃度Aと異なる場合も補正比を利用できるので、より正確なナノバブル濃度を算出できる。
【0015】
本発明は、請求項1に記載のナノバブル濃度測定方法を用いてナノバブル分散液の気泡濃度を測定するナノバブル濃度測定装置であって、測定対象の被検液を保持する計測セルと、前記計測セル内にレーザー光を照射するレーザー光照射装置と、前記被検液を撮影するデジタルカメラと、前記デジタルカメラで撮影された被検液の画像データを処理する演算装置とを備え、前記演算装置は、前記標準粒子濃度A、前記撮影範囲の体積v、前記デジタルカメラで撮影された前記標準粒子分散液の画像データ、及び前記ナノバブル分散液の画像データを記憶するとともに、前記標準粒子分散液の画像データから前記標準粒子みかけ個数b′個をカウントし、前記標準粒子分散液について、補正比r1=標準粒子みかけ個数b′/(標準粒子濃度A×撮影範囲の体積v)を算出するとともに、前記ナノバブル分散液の画像データから前記ナノバブルみかけ個数c′個をカウントし、前記ナノバブル分散液について、前記ナノバブル分散液について、ナノバブル濃度D1(個/単位体積)=(ナノバブルみかけ個数c′個)/(撮影範囲の体積v×補正比r1)を算出するよう構成されているナノバブル濃度測定装置を含む。
【発明の効果】
【0016】
以上、本発明のナノバブル濃度測定方法、及びナノバブル濃度測定装置によれば、経済的なデジタルカメラを用いて、十分に正確なナノバブル濃度を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】ナノサイズの微小粒子にレーザー光を照射した際に生じる散乱光の強度が、微小粒子のブラウン運動により、増減する様子を示した模式的グラフである。
図2】本発明の第1実施形態に係るナノバブル濃度測定装置の模式図である。
図3図1に示した演算装置の構成図である。
図4】本発明の第1実施形態に係るナノバブル濃度測定方法のフロー図である。
図5】本発明の第2実施形態に係るナノバブル濃度測定方法のフロー図である。
図6】補正関数により補正比rを求める方法を示した説明図である。
図7】(a)は、標準粒子分散液における標準粒子みかけ個数、及び実標準粒子数の内訳を示す説明図であり、(b)は、ナノバブル分散液におけるナノバブルみかけ個数と実ナノバブル数の内訳を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限られるものではない。
【0019】
<第1実施形態>
(ナノバブル濃度測定装置100)
第1実施形態に係るナノバブル濃度測定方法は、図2に示すナノバブル濃度測定装置100を用いて行う。ナノバブル濃度測定装置100は、測定対象の被検液Sを保持する計測セル1と、計測セル1内にレーザー光LBを照射するレーザー光照射装置2と、被検液Sを撮影するデジタルカメラ3と、被検液Sから得られるイメージを光学的に拡大する拡大レンズ4と、デジタルカメラで3撮影された被検液Sの画像データを処理する演算装置5とを主に備えている。被検液Sには、後述する標準粒子分散液や、純水、ナノバブル分散液、ナノバブル分散液の溶媒液が該当する。
【0020】
計測セル1は、ガラスやアクリル樹脂等の透明材料から形成された容器からなり、被検液を流入、排出させる流入口と排出口を有している。
【0021】
レーザー光照射装置2は、半導体レーザーからなる。半導体レーザーは、直径が100nm程度の微細粒子に効率よくレイリー散乱光を発散させるような波長のレーザー光を発するものが用いられる。
【0022】
デジタルカメラ3は、カラー動画の撮影ができるCCDカメラやCMOSカメラを用いることができ、CCDカメラが好ましく用いられる。拡大レンズ4は、計測セル1を満たした被検液Sのイメージを光学的に拡大してデジタルカメラ3に伝達する。デジタルカメラ3、及び拡大レンズ4は、レーザー光の照射方向に垂直な方向から散乱光の撮影を行うよう配設されている。デジタルカメラ3は、計測セル1内の体積vからなる撮影範囲1aを撮影するよう構成されている。
【0023】
演算装置5は、図3に示すように、キーボードやマウス等からなる入力部51と、ハードディスクドライブやROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)からなる記憶部52と、CPU(Central Processing Unit)等からなる演算部53と、液晶モニター等からなる出力部54とを備えている。
【0024】
<ナノバブル濃度測定方法>
第1実施形態に係るナノバブル濃度測定方法は、図4に示すように、標準粒子分散液形成工程S1と、標準粒子みかけ個数計測工程S2と、ノイズ計測工程S3と、補正比算出工程S4と、補正関数導出工程S5と、溶媒ノイズ・固体粒子数計測工程S6と、ナノバブルみかけ個数計測工程S7と、ナノバブル濃度算出工程S8とを有している。
【0025】
(標準粒子分散液形成工程S1)
標準粒子分散液形成工程S1は、標準粒子を純水で希釈して標準粒子濃度がA(個/mL)である標準粒子分散液を形成する工程である。
【0026】
標準粒子は、市販のポリスチレンラテックス(PSL)粒子が好ましく用いられ、特に100nmのPSL粒子が好ましく用いられる。液体中に形成された直径600nm以下のナノバブルは、経時により直径100nm程度に収束するため、PSL粒子の粒子径を100nmとすることで、よりナノバブル分散液に近い標準粒子分散液を形成することができる。
【0027】
本実施形態では、標準粒子分散液は、標準粒子濃度Aが、例えば、1×106個/mL、1×107個/mL、1×108個/mL、1×109個/mL等と複数種のものを形成しておき、それぞれについて、後述する補正比r2を算出する。
【0028】
(標準粒子みかけ個数計測工程S2)
標準粒子みかけ個数計測工程S2は、標準粒子分散液で満たした計測セル1にレーザー光LBを照射して標準粒子による散乱光をデジタルカメラ3で撮影し、得られた画像データ上の光点の数からなる標準粒子みかけ個数b′個をカウントする工程である。
標準粒子みかけ個数計測工程S2では、まず、純水で洗浄・乾燥させた計測セル1に、標準粒子分散液形成工程S1で作製した標準粒子分散液を充填する。計測セル1に充填した標準粒子分散液にレーザー光照射装置2でレーザー光を照射しながら、デジタルカメラ3で、標準粒子が発するレイリー散乱光からなる赤色光点を動画で撮影する。本実施形態では、濃度の異なる複数種の標準粒子分散液について、順次動画を撮影する。
【0029】
デジタルカメラ3で得られた動画の画像データは、演算装置5の記憶部52に送られて記憶され、記憶部52に予め記憶された光点カウント用のプログラムを演算部53が実行して、画像データ上の光点の数をカウントする。光点は、例えば、画像データ上のRGBデータを換算して得た輝度値が所定値以上のセルが、n(nは2以上の整数)個以上(例えば4個以上)隣接するものとして定義され、標準粒子による散乱光が映出されたものと、デジタルカメラが拾ったノイズが映出されたものが含まれる。動画の撮影は、所定の時間(フレーム数)以上(例えば、50フレーム以上)撮影され、複数のフレーム(例えば、50フレーム)についてカウントした光点の数b1,b2,…を、順次出力部54に表示するとともに、これらの平均値を標準粒子みかけ個数b′個として、出力部54に表示する。
【0030】
ここで、標準粒子みかけ個数b′個を撮影範囲1aの体積vで除して標準粒子みかけ濃度B個/mLを算出し、出力部54に表示してもよい。この場合、複数種の標準サンプルについて、それぞれ、標準粒子みかけ濃度B個/mLを算出する。
【0031】
(ノイズ計測工程S3)
ノイズ計測工程S3は、純水で計測セル1を満たし、これにレーザー光LBを照射しながらデジタルカメラ3により動画撮影し、得られた画像データ上の光点の数をノイズ光点数e個としてカウントする工程である。動画は、標準粒子みかけ個数計測工程S2と同様に、所定の時間(フレーム数)以上(例えば、50フレーム以上)撮影され、複数のフレーム(例えば、50フレーム)についてカウントした光点の数e1,e2,…を、順次出力部54に表示するとともに、これらの平均をノイズ光点数e個とする。本実施形態では、ノイズ光点数e個を撮影範囲1aの体積v(mL)で除して、ノイズ濃度E個/mLを算出し、出力部54に表示する。ただし、純水へレーザー光照射を行わずに、純水の動画撮影を行ってもよい。
【0032】
(補正比算出工程S4)
補正比算出工程S4は、ナノバブル分散液をデジタルカメラで撮影した際に、画像データ中に光点として映出される光点の数を、実際にナノバブル分散液中に存在するナノバブルの数に補正するための補正比r2を求める工程である。ここで、「映出される」は、演算部により、光点とみなされてカウントされるという意味である。
図7(a)は、標準粒子分散液を撮影した画像データ上に映出される光点からなる標準粒子みかけ個数b′個、及び撮影範囲1aに存する実際の標準粒子の数(実標準粒子数)a個の内訳を示している。実標準粒子数a個には、当該画像データ上に映出される映出標準粒子数b個と映出されない非映出標準粒子数g個が含まれる。また、当該画像データ上で映出される光点の数からなる標準粒子みかけ個数b′には、映出標準粒子数b個と、デジタルカメラが拾ったノイズが光点として現れたノイズ光点数e個が含まれる。
一方、 図7(b)は、ナノバブル分散液を撮影した画像データ上に映出される光点からなるナノバブルみかけ個数c′個、及び撮影範囲1aに存する実際のナノバブル数(実ナノバブル数)d個の内訳を示している。実ナノバブル数d個には、当該画像データ上に映出される映出ナノバブル数c個と映出されない非映出ナノバブル数h個が含まれる。また、当該画像データ上で映出される光点の数からなるナノバブルみかけ個数c′には、映出ナノバブル数c個と、デジタルカメラが拾ったノイズが光点として現れたノイズの光点と固体粒子による光点の合計数(ノイズ・固体粒子数)f個が含まれる。
補正比r2は、映出ナノバブル数c個から実ナノバブル数d個を求めるための補正比であり、ナノバブル分散液における(映出ナノバブル数c個)/(実ナノバブル数d個)の比が、標準粒子分散液における(映出標準粒子数b個)/(実標準粒子数a個)の比に近似するものとして、この比を補正比r2とするものである。
ここで、映出標準粒子数b個=(標準粒子みかけ個数b′個-ノイズ光点数e個)であるから、
補正比r2=(標準粒子みかけ個数b′個-ノイズ光点数e個)/(実粒子数a個)
として算出されるところ、
実粒子数a個=標準粒子濃度A(個/mL)×撮影範囲の体積v(mL)であるから、
補正比r2=(標準粒子みかけ個数b′個-ノイズ光点数e個)/(標準粒子濃度A(個/mL)×撮影範囲の体積v(mL))
と請求項2の式になる。
【0033】
また、補正比r2は、映出標準粒子数b個と実標準粒子数aの比を同じ体積の溶媒中の数(体積濃度)に変換してから求めることもできる。
つまり、補正比r2を(標準粒子みかけ濃度B個/mL-ノイズ濃度E個/mL)の標準粒子濃度A個に対する比と考えて、
補正比r2=(標準粒子みかけ濃度B個/mL-ノイズ濃度E個/mL)/(標準粒子濃度A個)として算出することもできる。
標準粒子みかけ濃度B個=標準粒子数みかけ個数b′個/撮影範囲の体積v
ノイズ粒子濃度E個=ノイズ光点数e個/撮影範囲の体積v
であるから、
補正比r2=(標準粒子みかけ濃度B個/mL-ノイズ濃度E個/mL)/(標準粒子濃度A個)
=(標準粒子みかけ個数b′個-ノイズ光点数e個)/(標準粒子濃度A(個/mL)×撮影範囲の体積v(mL))
と、この場合も請求項2の式になる。
補正比r2は、上述した複数種の標準粒子分散液について、それぞれ算出する。
【0034】
(補正関数導出工程S5)
補正関数導出工程S5は、複数種の標準粒子分散液の補正比r2と映出標準粒子数bとの関係を補間する補正関数を求める工程である。図6は、横軸に映出粒子数b個、縦軸に補正比r2を取った座標平面に、上述した濃度の異なる複数種の標準粒子分散液について求めた(映出標準粒子数b、補正比r2)をプロットした様子を模式的に示すものである。これらのプロット間の映出標準粒子数b個と補正比r2の関係を補間する補正関数fr2=F2(b)を、例えば、最小二乗法などにより算出する。補正関数は、1次関数であってもよいし、2次以上の高次関数や、対数関数、指数関数であってもよい。
【0035】
(溶媒ノイズ・固体粒子数計測工程S6)
溶媒ノイズ・固体粒子数計測工程S6は、ナノバブル分散液の溶媒液で満たした計測セル1にレーザー光LBを照射し、溶媒液をデジタルカメラ3で撮影して、得られた画像データ上の光点の数からなる溶媒ノイズ・固体粒子数f個をカウントする工程である。溶媒液を撮影した画像データ上の光点の数f個には、撮影範囲に存する固体粒子による光点の数の他、デジタルカメラ3が拾ったノイズによる光点の数が含まれる。溶媒ノイズ・固体粒子数計測工程S6は、ナノバブル濃度算出工程S8でナノバブル濃度の算出を行うまでに行われる。
【0036】
(ナノバブルみかけ個数計測工程S7)
ナノバブルみかけ個数計測工程S7は、ナノバブル分散液で満たした計測セル1にレーザー光LBを照射して、その散乱光をデジタルカメラ3で撮影し、得られた画像データ上の光点の数からなるナノバブルみかけ個数c′個をカウントする工程である。撮影は動画で行い、標準粒子みかけ個数計測工程S2と同様に所定の時間(フレーム数)以上(例えば、50フレーム以上)撮影され、複数のフレーム(例えば、50フレーム)についてカウントした光点の数c′1,c′2,…を、順次出力部に表示する。本工程は、ナノバブル濃度算出工程S8で、ナノバブル濃度の算出が行われるまでに実施されればよく、溶媒ノイズ・固体粒子数計測工程S6より先に実施してもよい。
【0037】
(ナノバブル濃度算出工程S8)
ナノバブル濃度算出工程S8は、デジタルカメラ3に映出されたナノバブルの数、又は濃度から、デジタルカメラでは映出されない非映出ナノバブルまで含めたナノバブル濃度を算出する工程である。
ナノバブルみかけ個数計測工程S7でカウントしたナノバブルみかけ個数c′個からノイズ・固体粒子数f個を差し引いて映出ナノバブル数c個を求め、補正関数fr2=F(b)において、b=cを代入して、補正比r2=F(b)を算出し、これで、映出ナノバブル数c個を除して、実ナノバブル数d個を算出し、さらにこれを撮影範囲の体積vmLで除して、ナノバブル濃度D2(個/mL)を算出する。
つまり、
ナノバブル濃度D2(個/mL)=(ナノバブルみかけ個数c′(個)-ノイズ・固体粒子数f(個)/(補正比F(b)×撮影範囲の体積v(mL))
となる。
【0038】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係るナノバブル濃度測定方法について説明する。第2実施形態のナノバブル濃度測定方法は、図5に示すように、標準粒子分散液形成工程S1と、標準粒子みかけ個数計測工程S2と、補正比算出工程S4と、ナノバブルみかけ個数計測工程S7と、ナノバブル濃度算出工程S8とを有する一方で、ノイズ計測工程S3、補正関数導出工程S5、及び溶媒ノイズ・固体粒子数計測工程S6は備えない。また、第2実施形態のナノバブル濃度測定方法の標準粒子分散液形成工程S1、標準粒子みかけ個数計測工程S2、及びナノバブルみかけ個数計測工程S7は、第1実施形態と同様であるため説明を省略する。第2実施形態において用いるナノバブル濃度測定装置100も第1実施形態と同様である。
【0039】
(補正比算出工程S4)
第2実施形態では、ノイズ計測工程S3を実施しないため、補正比として、補正比r2に代わって、
補正比r1=標準粒子みかけ個数b′/(標準粒子濃度A×撮影範囲の体積v)
を算出する。
つまり、第2実施形態に係るナノバブル濃度測定方法では、標準粒子みかけ個数b′個からデジタルカメラ3が拾うノイズ光点数e個を差し引かない。
画素データ上でナノバブルによる光点の大きさが一定の範囲に留まる場合には、光点が跨るセルの数によりナノバブルとしてカウントする光点の数を制限することで、ノイズの数を十分に削除できるので、本実施形態は、ノイズ計測工程を省略して、濃度測定の手間を省略したい場合に有効である。
例えば、ナノバブルの散乱光による光点が4個以上6個以下のセルに跨るものに限られる場合には、3個以下のセルに跨る光点や、7個以上のセルに跨る光点をカウントしないことにより、ノイズや固体粒子による光点の数を除いて、より正確なナノバブル濃度を測定できる。
また、本実施形態では、補正関数導出工程S5を有しないため、補正比r1は、複数の標準粒子分散液について求めたものの平均値を用いる。
【0040】
(ナノバブル濃度算出工程S8)
第2実施形態では、溶媒ノイズ・固体粒子数計測工程S6を有さないため、ナノバブル濃度算出工程S8では、ナノバブルみかけ個数c′個からノイズ・固体粒子数f個を差し引くことなく、
ナノバブル濃度D1(個/mL)=(ナノバブルみかけ個数c′個)/(撮影範囲の体積v×補正比r1)
又は、ナノバブル濃度D1(個/mL)=ナノバブル見かけ濃度C/補正比r1
のいずれかの式を用いて、ナノバブル濃度D1を算出する。
【0041】
以上、本発明のナノバブル濃度測定方法、及びナノバブル濃度測定装置は、上述した実施形態に限らず、例えば、画像データ中の光点は、輝度以外に基づいてカウントしてもよいし、所定の数のセルに跨る光点だけでなく、すべての光点をカウントするようにしてもよい。各工程の順序は、補正比や補正関数の導出、ナノバブル濃度の算出を行う時点でこれらに必要なデータが揃うようであれば、適宜に変更が可能である。
【符号の説明】
【0042】
ナノバブル濃度測定装置100
計測セル1
デジタルカメラ3
演算装置5
被検液S
レーザー光LB
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7