(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061149
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 9/08 20060101AFI20240425BHJP
B60C 5/00 20060101ALI20240425BHJP
B60C 5/14 20060101ALI20240425BHJP
B60C 11/00 20060101ALI20240425BHJP
B60C 3/04 20060101ALI20240425BHJP
B60C 13/00 20060101ALI20240425BHJP
B60C 9/18 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
B60C9/08 M
B60C5/00 F
B60C5/14 Z
B60C11/00 F
B60C3/04 B
B60C11/00 Z
B60C13/00 C
B60C9/18 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168895
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】仲山 裕之
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA08
3D131AA28
3D131BB01
3D131BB02
3D131BB03
3D131BB06
3D131BC02
3D131BC19
3D131BC34
3D131BC44
3D131BC47
3D131CA03
3D131CB03
3D131CB06
3D131CB11
3D131CB12
3D131DA33
3D131DA34
3D131EA08U
3D131EB11V
3D131EB11X
3D131EC22U
3D131GA04
3D131KA05
3D131KA07
(57)【要約】
【課題】 外観性能とノイズ性能とを両立し得る空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】 接地面2sを有するトレッド部2と、外側面3sを有する一対のサイドウォール部3と、一対のビード部4と、一対のビード部4の間を延びるカーカス6と、カーカス6の内側で一対のビード部4の間を延びる内側ゴム10とを含む空気入りタイヤ1である。内側ゴム10は、トレッド部2を第1厚さt1で延びる第1部分11と、一対のサイドウォール部3を第2厚さt2で延びる第2部分12とを含んでいる。第1厚さt1は、第2厚さt2よりも大きい。正規状態におけるタイヤ子午線断面において、第1基準点Pb1と、第2基準点Pb2と、基準線分Lbと、ショルダー基準点Psと、ショルダー線分Lsとが規定されたとき、ショルダー線分Lsの長さL1は、基準線分Lbの長さL2の85.9%~89.3%である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入りタイヤであって、
トレッド部と、
一対のサイドウォール部と、
一対のビード部と、
前記一対のビード部の間を延びるカーカスと、
前記カーカスの内側で前記一対のビード部の間を延びる内側ゴムとを含み、
前記内側ゴムは、前記トレッド部を第1厚さで延びる第1部分と、前記一対のサイドウォール部を第2厚さで延びる第2部分とを含み、
前記第1厚さは、前記第2厚さよりも大きく、
前記トレッド部は、第1トレッド端と第2トレッド端との間に延びる接地面を有し、
前記一対のサイドウォール部は、それぞれ、前記第1トレッド端及び前記第2トレッド端からタイヤ半径方向の内側に延びる外側面を有し、
前記接地面は、前記第1トレッド端と前記第2トレッド端とのタイヤ軸方向の中央位置であるタイヤ赤道を有し、
前記外側面は、最もタイヤ軸方向の外側の位置であるタイヤ最大幅位置を有し、
正規リムにリム組みされ、かつ、正規内圧に調整された無負荷の正規状態におけるタイヤ子午線断面において、
前記タイヤ赤道を通るタイヤ半径方向線とビードベースラインとの交点である第1基準点と、
前記タイヤ赤道を通るタイヤ軸方向線と前記タイヤ最大幅位置を通るタイヤ半径方向線との交点である第2基準点と、
前記第1基準点と前記第2基準点とを結ぶ基準線分と、
前記基準線分と前記接地面又は前記外側面との交点であるショルダー基準点と、
前記第1基準点と前記ショルダー基準点とを結ぶショルダー線分とが規定されたとき、
前記ショルダー線分の長さは、前記基準線分の長さの85.9%~89.3%である、
空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第1厚さは、前記第2厚さの1.5~3.5倍である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第1厚さは、2.0~4.5mmである、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記タイヤ子午線断面において、
前記接地面は、曲率半径が互いに異なる複数の円弧で構成されており、
前記複数の円弧は、前記タイヤ赤道を通る第1円弧と、前記第1円弧のタイヤ軸方向の外側に隣接する第2円弧と、前記第2円弧のタイヤ軸方向の外側に隣接する第3円弧とを含む、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記第1円弧の曲率半径R1は、前記第2円弧の曲率半径R2の1.85~2.00倍である、請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記第2円弧の曲率半径R2は、前記第3円弧の曲率半径R3の2.08~2.74倍である、請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記第1トレッド端と前記第2トレッド端とのタイヤ軸方向の距離であるトレッド幅は、前記タイヤ最大幅位置におけるタイヤ軸方向の距離である最大幅の74%~84%である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記正規状態の空気入りタイヤに正規荷重の70%が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときの接地面形状において、
前記タイヤ赤道におけるタイヤ周方向長さL3と、前記タイヤ赤道から前記第1トレッド端までの距離の80%の位置におけるタイヤ周方向長さL4との比である接地面形状指数F(L3/L4)が、1.05~1.35である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記サイドウォール部は、前記タイヤ最大幅位置よりもタイヤ半径方向の外側の前記外側面に、タイヤ半径方向に延びるリッジがタイヤ周方向に並列されたセレーション部を有する、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記トレッド部には、前記カーカスのタイヤ半径方向の外側に、ベルト層が配されており、
前記ベルト層は、第1ベルトプライと、前記第1ベルトプライのタイヤ半径方向の外側に配された第2ベルトプライとを含み、
前記第1トレッド端側において、前記第2ベルトプライのタイヤ軸方向の外端は、前記第1ベルトプライのタイヤ軸方向の外端よりもタイヤ軸方向の内側に位置し、
前記内側ゴムの前記第1部分のタイヤ軸方向の外端は、前記第2ベルトプライの前記外端とタイヤ軸方向で同じ位置にあるか、又は、前記第2ベルトプライの前記外端よりもタイヤ軸方向の内側で、かつ、タイヤ軸方向に10mm以内に位置する、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転軸を含むタイヤ子午線断面におけるプロファイルを改善した空気入りタイヤが種々提案されている。例えば、下記特許文献1は、トレッド面が3つの円弧を含むことで、操縦安定性と偏摩耗の抑制とを両立した空気入りタイヤを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年、特に乗用車用タイヤにおいて、車両とタイヤとの一体感として認識される外観性能に対する要望が高まり、また、電気自動車等の普及に伴い、ノイズ性能に対する要望も高まっていた。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、外観性能とノイズ性能とを両立し得る空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、空気入りタイヤであって、トレッド部と、一対のサイドウォール部と、一対のビード部と、前記一対のビード部の間を延びるカーカスと、前記カーカスの内側で前記一対のビード部の間を延びる内側ゴムとを含み、前記内側ゴムは、前記トレッド部を第1厚さで延びる第1部分と、前記一対のサイドウォール部を第2厚さで延びる第2部分とを含み、前記第1厚さは、前記第2厚さよりも大きく、前記トレッド部は、第1トレッド端と第2トレッド端との間に延びる接地面を有し、前記一対のサイドウォール部は、それぞれ、前記第1トレッド端及び前記第2トレッド端からタイヤ半径方向の内側に延びる外側面を有し、前記接地面は、前記第1トレッド端と前記第2トレッド端とのタイヤ軸方向の中央位置であるタイヤ赤道を有し、前記外側面は、最もタイヤ軸方向の外側の位置であるタイヤ最大幅位置を有し、正規リムにリム組みされ、かつ、正規内圧に調整された無負荷の正規状態におけるタイヤ子午線断面において、前記タイヤ赤道を通るタイヤ半径方向線とビードベースラインとの交点である第1基準点と、前記タイヤ赤道を通るタイヤ軸方向線と前記タイヤ最大幅位置を通るタイヤ半径方向線との交点である第2基準点と、前記第1基準点と前記第2基準点とを結ぶ基準線分と、前記基準線分と前記接地面又は前記外側面との交点であるショルダー基準点と、前記第1基準点と前記ショルダー基準点とを結ぶショルダー線分とが規定されたとき、前記ショルダー線分の長さは、前記基準線分の長さの85.9%~89.3%である、空気入りタイヤである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の空気入りタイヤは、上述の構成を備えることにより、外観性能とノイズ性能とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の空気入りタイヤの一実施形態を示す断面図である。
【
図2】接地面及び外側面の断面形状の説明図である。
【
図3】空気入りタイヤの接地面形状を示す模式図である。
【
図7】第2の実施形態の内側ゴムの拡大断面図である。
【
図8】第3の実施形態の内側ゴムの拡大断面図である。
【
図9】第4の実施形態の内側ゴムの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき詳細に説明される。
図1は、本実施形態の空気入りタイヤ1を示す正規状態における回転軸を含むタイヤ子午線断面図である。ここで、「正規状態」とは、空気入りタイヤ1が正規リムにリム組みされ、かつ、正規内圧に調整された無負荷の状態である。以下、特に言及しない場合、空気入りタイヤ1の各部の寸法等は、この正規状態で測定された値である。
【0010】
「正規リム」は、空気入りタイヤ1が基づいている規格を含む規格体系が有る場合、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。「正規リム」は、空気入りタイヤ1が基づいている規格を含む規格体系が無い場合、リム組み可能であって、エア漏れを生じさせないリムのうち、最もリム径が小さく、その中で最もリム幅が小さいリムである。
【0011】
「正規内圧」は、空気入りタイヤ1が基づいている規格を含む規格体系が有る場合、各規格がタイヤ毎に定める空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。「正規内圧」は、空気入りタイヤ1が基づいている規格を含む規格体系が無い場合、メーカー等がタイヤ毎に定める空気圧である。
【0012】
図1に示されるように、本実施形態の空気入りタイヤ1は、トレッド部2と、一対のサイドウォール部3と、一対のビード部4とを含んでいる。ビード部4は、例えば、環状に延びるビードコア5を有している。ビードコア5は、例えば、スチールワイヤから形成されている。本実施形態の空気入りタイヤ1は、乗用車用タイヤとして好適に用いられる。空気入りタイヤ1は、乗用車用タイヤに限定されるものではなく、例えば、重荷重用タイヤ、二輪車用タイヤ、産業車両用タイヤ等、種々のタイヤに適用され得る。
【0013】
本実施形態の空気入りタイヤ1は、一対のビード部4の間を延びるカーカス6と、カーカス6の内側で一対のビード部4の間を延びる内側ゴム10とを含んでいる。本実施形態の内側ゴム10は、タイヤ内腔面1iを構成している。
【0014】
本実施形態の内側ゴム10は、トレッド部2を第1厚さt1で延びる第1部分11と、一対のサイドウォール部3を第2厚さt2で延びる第2部分12とを含んでいる。ここで、第1厚さt1及び第2厚さt2は、カーカス6の内面6iからタイヤ内腔面1iまでの厚さを意味し、後述するカーカスプライ6Aのトッピングゴムを含まない厚さである。
【0015】
本実施形態の第1厚さt1は、第2厚さt2よりも大きい。第1厚さt1は、タイヤ全周に亘って第2厚さt2よりも大きいのが望ましい。このような内側ゴム10は、後述するトレッドゴム2Gの厚さを大きくすることと同様の振動低減効果を小さい重量増加で発揮することができる。また、カーカス6の内側の重量増加は、転がり抵抗への影響が小さいことから、本実施形態の空気入りタイヤ1は、良好な低燃費性能を維持しつつ、ノイズ性能を向上することができる。
【0016】
ここで、第1厚さt1が第2厚さt2よりも大きいとは、第1厚さt1の平均値が、第2厚さt2の平均値よりも大きいことを意味する。第1厚さt1の平均値とは、タイヤ子午線断面における第1部分11の断面積を、第1部分11のタイヤ内腔面1iに沿った長さで除した値に相当する。第2厚さt2の平均値も同様である。
【0017】
本実施形態のトレッド部2は、第1トレッド端Te1と第2トレッド端Te2との間に延びる接地面2sを有している。ここで、第1トレッド端Te1及び第2トレッド端Te2は、それぞれ、正規状態の空気入りタイヤ1に正規荷重の70%が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置である。
【0018】
「正規荷重」は、空気入りタイヤ1が基づいている規格を含む規格体系が有る場合、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。「正規荷重」は、空気入りタイヤ1が基づいている規格を含む規格体系が無い場合、空気入りタイヤ1を使用する上で適用可能な最大の荷重としてメーカー等がタイヤ毎に定める荷重である。
【0019】
接地面2sは、第1トレッド端Te1と第2トレッド端Te2とのタイヤ軸方向の中央位置であるタイヤ赤道Cを有している。すなわち、タイヤ赤道Cは、接地面2sにおける第1トレッド端Te1と第2トレッド端Te2とのタイヤ軸方向の中央位置である。
【0020】
トレッド部2は、接地面2sを構成するトレッドゴム2Gを含むのが望ましい。トレッド部2は、例えば、接地面2sを構成するキャップゴム2Aと、キャップゴム2Aのタイヤ半径方向の内側に配されたベースゴム2Bとを含んでいてもよい。この場合のトレッドゴム2Gは、キャップゴム2Aである。トレッド部2は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、1層のゴム層で構成されていてもよく、3層以上のゴム層で構成されていてもよい。
【0021】
本実施形態の一対のサイドウォール部3は、それぞれ、第1トレッド端Te1及び第2トレッド端Te2からタイヤ半径方向の内側に延びる外側面3sを有している。外側面3sは、最もタイヤ軸方向の外側の位置であるタイヤ最大幅位置Pmを有している。ここで、タイヤ最大幅位置Pmは、局所的に突出する部分を除く外側面3sにおいて、タイヤ軸方向の距離が最大幅Wmとなる位置である。
【0022】
図2は、接地面2s及び外側面3sの断面形状の説明図である。
図2に示されるように、正規状態におけるタイヤ子午線断面において、本実施形態の空気入りタイヤ1には、第1基準点Pb1と、第2基準点Pb2と、基準線分Lbと、ショルダー基準点Psと、ショルダー線分Lsとが規定される。
【0023】
第1基準点Pb1は、タイヤ赤道Cを通るタイヤ半径方向線とビードベースラインBLとの交点である。ここで、ビードベースラインBLは、正規状態の空気入りタイヤ1において、正規リムのリム径位置を通るタイヤ軸方向線である。第2基準点Pb2は、タイヤ赤道Cを通るタイヤ軸方向線とタイヤ最大幅位置Pmを通るタイヤ半径方向線との交点である。基準線分Lbは、第1基準点Pb1と第2基準点Pb2とを結ぶ線分である。
【0024】
ショルダー基準点Psは、基準線分Lbと接地面2s又は外側面3sとの交点である。基準線分Lbが第1トレッド端Te1と第2トレッド端Te2とのタイヤ軸方向の内側を通る場合、ショルダー基準点Psは、基準線分Lbと接地面2sとの交点である。一方、基準線分Lbが第1トレッド端Te1と第2トレッド端Te2とのタイヤ軸方向の内側を通る場合、ショルダー基準点Psは、基準線分Lbと外側面3sとの交点である。ショルダー線分Lsは、第1基準点Pb1とショルダー基準点Psとを結ぶ線分である。
【0025】
本実施形態のショルダー線分Lsの長さL1は、基準線分Lbの長さL2の85.9%~89.3%である。このような空気入りタイヤ1は、車両に装着したときの空気入りタイヤ1とホイールハウスとの距離を小さくすることができ、車両と空気入りタイヤ1との一体感を高めることができる。
【0026】
また、このような空気入りタイヤ1は、プロファイルの変更に伴うトレッド部2の振動増加分を、第1部分11の第1厚さt1が大きいことで抑制することができ、ノイズ性能にも優れている。このため、本実施形態の空気入りタイヤ1は、外観性能とノイズ性能とを両立することができる。
【0027】
より好ましい態様として、接地面2sは、曲率半径が互いに異なる複数の円弧2aで構成されている。複数の円弧2aは、例えば、タイヤ赤道Cを通る第1円弧2bと、第1円弧2bのタイヤ軸方向の外側に隣接する第2円弧2cと、第2円弧2cのタイヤ軸方向の外側に隣接する第3円弧2dとを含んでいる。このような接地面2sは、偏摩耗を抑制しつつ、空気入りタイヤ1の外観性能を向上させることに適している。
【0028】
第1円弧2bの曲率半径R1は、好ましくは、第2円弧2cの曲率半径R2の1.85~2.00倍である。第1円弧2bの曲率半径R1が第2円弧2cの曲率半径R2の1.85倍以上であることで、車両に装着したときの空気入りタイヤ1とホイールハウスとの距離を小さくすることができ、空気入りタイヤ1の外観性能を向上させることに役立つ。このような観点から、第1円弧2bの曲率半径R1は、より好ましくは、第2円弧2cの曲率半径R2の1.90倍以上である。
【0029】
第1円弧2bの曲率半径R1が第2円弧2cの曲率半径R2の2.00倍以下であることで、接地面圧分布が不均一となることを抑制し、空気入りタイヤ1の耐偏摩耗性能を向上させることに役立つ。このような観点から、第1円弧2bの曲率半径R1は、より好ましくは、第2円弧2cの曲率半径R2の1.95倍以下である。
【0030】
第2円弧2cの曲率半径R2は、好ましくは、第3円弧2dの曲率半径R3の2.08~2.74倍である。第2円弧2cの曲率半径R2が第3円弧2dの曲率半径R3の2.08倍以上であることで、車両に装着したときの空気入りタイヤ1とホイールハウスとの距離を小さくすることができ、空気入りタイヤ1の外観性能を向上させることに役立つ。このような観点から、第2円弧2cの曲率半径R2は、より好ましくは、第3円弧2dの曲率半径R3の2.30倍以上である。
【0031】
第2円弧2cの曲率半径R2が第3円弧2dの曲率半径R3の2.74倍以下であることで、接地面圧分布が不均一となることを抑制し、空気入りタイヤ1の耐偏摩耗性能を向上させることに役立つ。このような観点から、第2円弧2cの曲率半径R2は、より好ましくは、第3円弧2dの曲率半径R3の2.50倍以下である。
【0032】
図1に示されるように、第1トレッド端Te1と第2トレッド端Te2とのタイヤ軸方向の距離であるトレッド幅TWは、好ましくは、タイヤ最大幅位置Pmにおけるタイヤ軸方向の距離である最大幅Wmの74%~84%である。
【0033】
トレッド幅TWが最大幅Wmの74%以上であることで、接地面圧を低減させ、ノイズの発生を抑制することができ、空気入りタイヤ1のノイズ性能を向上させることができる。このような観点から、トレッド幅TWは、より好ましくは、最大幅Wmの79%以上である。
【0034】
トレッド幅TWが最大幅Wmの84%以下であることで、ショルダー領域における滑りの発生を抑制することができ、空気入りタイヤ1の耐偏摩耗性能を向上させることができる。このような観点から、トレッド幅TWは、より好ましくは、最大幅Wmの81%以下である。
【0035】
空気入りタイヤ1は、例えば、車両への装着の向きが指定されている。空気入りタイヤ1は、車両装着時に第1トレッド端T1が車両外側に位置し、第2トレッド端T2が車両内側に位置するように装着されるのが望ましい。車両への装着の向きは、例えば、サイドウォール部3の外側面3s等に、文字又は記号で表示される。但し、空気入りタイヤ1は、このような態様に限定されず、例えば、車両の装着の向きが指定されないものでもよい。
【0036】
トレッド部2は、第1トレッド端T1と第2トレッド端T2との間でタイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝20を含むのが望ましい。複数の周方向溝20は、例えば、第1ショルダー周方向溝21、第2ショルダー周方向溝22、第1クラウン周方向溝23及び第2クラウン周方向溝24を含んでいる。トレッド部2は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、3本以下の周方向溝20を含んでいてもよく、5本以上の周方向溝20を含んでいてもよい。
【0037】
第1ショルダー周方向溝21は、第1トレッド端T1とタイヤ赤道Cとの間に設けられており、本実施形態では、複数の周方向溝20のうち、最も第1トレッド端T1側に配されている。第2ショルダー周方向溝22は、第2トレッド端T2とタイヤ赤道Cとの間に設けられており、本実施形態では、複数の周方向溝20のうち、最も第2トレッド端T2側に配されている。
【0038】
本実施形態の第1クラウン周方向溝23は、第1ショルダー周方向溝21とタイヤ赤道Cとの間に設けられている。本実施形態の第2クラウン周方向溝24は、第2ショルダー周方向溝22とタイヤ赤道Cとの間に設けられている。複数の周方向溝20のそれぞれは、例えば、タイヤ周方向に直線状に延びている。複数の周方向溝20は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、複タイヤ周方向に波状に延びるものであってもよく、複数の周方向溝20の一部が直線状に延び、一部が波状に延びるものであってもよい。
【0039】
複数の周方向溝20の溝幅は、それぞれ、3mm以上であるのが望ましい。本実施形態の第1クラウン周方向溝23の溝幅は、複数の周方向溝20の溝幅の中で最も小さい。このような周方向溝20は、車両装着時の車両外側におけるノイズの発生を抑制することができ、空気入りタイヤ1の良好なウェット性能を維持しつつ、ノイズ性能を向上させることができる。
【0040】
図3は、空気入りタイヤ1の接地面形状2Sを示す模式図である。
図3に示されるように、本実施形態の接地面形状2Sは、正規状態の空気入りタイヤ1に正規荷重の70%が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときの形状である。
【0041】
接地面形状2Sは、例えば、タイヤ赤道Cにおけるタイヤ周方向長さL3と、第1トレッド端Te1側のショルダー領域におけるタイヤ周方向長さL4との比である接地面形状指数F(L3/L4)で示すことができる。
【0042】
ここで、タイヤ周方向長さL4は、タイヤ赤道Cから第1トレッド端Te1までの距離(TW/2)の80%(0.8TW/2)の位置における接地面形状2Sのタイヤ周方向の長さである。なお、タイヤ周方向長さL4は、例えば、第2トレッド端Te2側のショルダー領域における長さであってもよい。
【0043】
本実施形態の接地面形状指数Fは、1.05~1.35である。接地面形状指数Fが1.05以上であることで、ショルダー領域における滑りの発生を抑制することができ、空気入りタイヤ1の耐偏摩耗性能を向上させることができる。接地面形状指数Fが1.35以下であることで、接地面圧を低減させ、ノイズの発生を抑制することができ、空気入りタイヤ1のノイズ性能を向上させることができる。
【0044】
図1に示されるように、カーカス6は、少なくとも1枚、本実施形態では1枚のカーカスプライ6Aで構成されている。カーカスプライ6Aは、例えば、本体部6aと折返し部6bとを含んでいる。本体部6aは、例えば、2つのビード部4の間を延びている。折返し部6bは、例えば、本体部6aに連なりビードコア5の廻りでタイヤ軸方向内側から外側に折り返されている。
【0045】
図示は省略されるが、カーカスプライ6Aは、複数のカーカスコードと、これらを被覆するトッピングゴムとを含んでいる。カーカスコードは、例えば、アラミド、レーヨン等の有機繊維コードが採用される。カーカスコードは、タイヤ赤道Cに対して70~90°の角度で配列されるのが望ましい。
【0046】
図4は、トレッド部2の拡大断面図である。
図4に示されるように、トレッド部2には、カーカス6のタイヤ半径方向の外側に、ベルト層7が配されるのが望ましい。本実施形態のトレッド部2には、ベルト層7のタイヤ半径方向の外側に、バンド層8が配されている。
【0047】
ベルト層7は、例えば、カーカス6に隣接する第1ベルトプライ7Aと、第1ベルトプライ7Aのタイヤ半径方向の外側に配された第2ベルトプライ7Bとを含んでいる。本実施形態の第1ベルトプライ7A及び第2ベルトプライ7Bのそれぞれは、タイヤ周方向に対して15~45°の角度で配列された複数のベルトコードと、これらを被覆するトッピングゴムとを含んでいる。
【0048】
第1ベルトプライ7Aのベルトコードと第2ベルトプライ7Bのベルトコードとは、タイヤ周方向に対して互いに逆向きに傾斜しているのが望ましい。このようなベルト層7は、トレッド部2を効果的に補強することができる。
【0049】
本実施形態の第2ベルトプライ7Bのタイヤ軸方向の外端7bは、第1ベルトプライ7Aのタイヤ軸方向の外端7aよりもタイヤ軸方向の内側に位置している。これにより、第2ベルトプライ7Bのタイヤ軸方向の長さは、第1ベルトプライ7Aのタイヤ軸方向の長さよりも小さい。このようなベルト層7は、第2ベルトプライ7Bが過度に大きくなることを抑制しつつ、トレッド部2を補強することができるので、空気入りタイヤ1の低燃費性能とノイズ性能とを両立することに役立つ。
【0050】
バンド層8は、少なくとも1枚、本実施形態では1枚のバンドプライ8Aで構成されている。バンドプライ8Aは、例えば、タイヤ周方向に対して5°以下の角度で配されたバンドコードと、バンドコードを被覆するトッピングゴムとを含む。本実施形態のバンド層8は、ベルト層7の全体を覆うように配置されている。
【0051】
内側ゴム10は、空気非透過性を有するゴム材料で形成されるのが望ましい。ゴム材料としては、例えば、ブチル系又はハロゲン化ブチル系のゴム材料が挙げられる。本実施形態の内側ゴム10は、第1部分11と第2部分12とが同じゴム材料で形成されている。
【0052】
本実施形態の内側ゴム10の第1部分11は、第1トレッド端Te1側のタイヤ軸方向の外側の第1端部11Aと、第2トレッド端Te2側のタイヤ軸方向の外側の第2端部11Bとを含んでいる。第1端部11Aは、第1部分11のタイヤ軸方向の外端11aに向かって第1厚さt1が連続的に減少するのが望ましい。同様に、第2端部11Bは、第1部分11のタイヤ軸方向の外端11bに向かって第1厚さt1が連続的に減少している。
【0053】
すなわち、第1厚さt1の減少が終了している位置が、本実施形態の第1部分11のタイヤ軸方向の外端11a、11bに相当する。このような第1部分11は、外端11a、11bにおける応力集中を抑制し、空気入りタイヤ1の耐久性能を向上させることに役立つ。
【0054】
第1トレッド端Te1側において、内側ゴム10の第1部分11のタイヤ軸方向の外端11aは、第2ベルトプライ7Bの外端7bとタイヤ軸方向で同じ位置にあるのが望ましい。第1部分11の外端11aは、例えば、第2ベルトプライ7Bの外端7bよりもタイヤ軸方向の内側で、かつ、タイヤ軸方向に10mm以内に位置していてもよい。
【0055】
このような内側ゴム10は、第1部分11の第1端部11Aが第2ベルトプライ7Bのタイヤ半径方向の内側に位置するので、第1端部11Aにおける剛性の変化をベルト層7により吸収することができる。
【0056】
第2トレッド端Te2側においても同様に、第1部分11のタイヤ軸方向の外端11bは、第2ベルトプライ7Bの外端7bとタイヤ軸方向で同じ位置にあるのが望ましい。第1部分11の外端11bは、上述の外端11aと同様、例えば、第2ベルトプライ7Bの外端7bよりもタイヤ軸方向の内側で、かつ、タイヤ軸方向に10mm以内に位置していてもよい。
【0057】
このような内側ゴム10は、第1部分11の第2端部11Bが第2ベルトプライ7Bのタイヤ半径方向の内側に位置するので、第2端部11Bにおける剛性の変化をベルト層7により吸収することができる。
【0058】
第1部分11の第1トレッド端Te1側の外端11aは、例えば、第1クラウン周方向溝23よりも第1トレッド端Te1側に位置している。第1部分11の外端11aは、第1ショルダー周方向溝21よりも第1トレッド端Te1側に位置するのが望ましい。第1部分11の外端11aは、接地面2sの第3円弧2d(
図2に示す)とタイヤ軸方向で重複する位置にあるのが望ましい。
【0059】
本実施形態の第1部分11は、第1端部11Aの全体が第1ショルダー周方向溝21よりも第1トレッド端Te1側に位置している。このような内側ゴム10は、周方向溝20が設けられている部分が第1部分11であるので、周方向溝20に伴うトレッド部2の振動を効率よく抑制することができる。
【0060】
第1部分11の第2トレッド端Te2側の外端11bは、例えば、第2クラウン周方向溝24よりも第2トレッド端Te2側に位置している。第1部分11の外端11bは、第2ショルダー周方向溝22よりも第2トレッド端Te2側に位置するのが望ましい。第1部分11の外端11bは、接地面2sの第3円弧2d(
図2に示す)とタイヤ軸方向で重複する位置にあるのが望ましい。
【0061】
本実施形態の第1部分11は、第2端部11Bの全体が第2ショルダー周方向溝22よりも第2トレッド端Te2側に位置している。このような内側ゴム10は、周方向溝20が設けられている部分が第1部分11であるので、周方向溝20に伴うトレッド部2の振動を効率よく抑制することができる。
【0062】
第1部分11は、第1端部11Aと第2端部11Bとの間において、一定の第1厚さt1で延びている。このような第1部分11は、過度な重量増加を抑制しつつ、トレッド部2の振動を抑制することができ、空気入りタイヤ1の低燃費性能とノイズ性能とを両立することができる。ここで、一定の第1厚さt1とは、厚さの最大値と最小値との差が、最大値の5%以下であることを意味する。
【0063】
第1部分11の一定の第1厚さt1を有する部分のタイヤ軸方向の長さL5は、好ましくは、トレッド幅TWの82%~106%である。一定の第1厚さt1を有する部分の長さL5がトレッド幅TWの82%以上であることで、トレッド部2の振動を効果的に抑制することができる。このような観点から、一定の第1厚さt1を有する部分の長さL5は、より好ましくは、トレッド幅TWの85%以上であり、更に好ましくは、トレッド幅TWの88%以上である。
【0064】
一定の第1厚さt1を有する部分の長さL5がトレッド幅TWの106%以下であることで、過度な重量増加を確実に抑制することができる。このような観点から、一定の第1厚さt1を有する部分の長さL5は、より好ましくは、トレッド幅TWの103%以下であり、更に好ましくは、トレッド幅TWの100%以下である。なお、一定の第1厚さt1を有する部分の長さL5は、第1端部11Aと第2端部11Bとの間のタイヤ軸方向の距離に相当する。
【0065】
第1厚さt1の平均値は、好ましくは、第2厚さt2の平均値の1.5~3.5倍である。第1厚さt1の平均値が第2厚さt2の平均値の1.5倍以上であることで、トレッド部2の振動を効果的に抑制することができ、空気入りタイヤ1のノイズ性能を向上させることができる。このような観点から、第1厚さt1の平均値は、より好ましくは、第2厚さt2の平均値の1.75倍以上であり、更に好ましくは、1.9倍以上である。
【0066】
第1厚さt1の平均値が第2厚さt2の平均値の3.5倍以下であることで、過度な重量増加を抑制することができ、空気入りタイヤ1の良好な低燃費性能を維持することができる。このような観点から、第1厚さt1の平均値は、より好ましくは、第2厚さt2の平均値の2.7倍以下であり、更に好ましくは、2.2倍以下である。
【0067】
第1厚さt1の平均値は、好ましくは、2.0~4.5mmである。第1厚さt1の平均値が2.0mm以上であることで、トレッド部2の振動を効果的に抑制することができ、空気入りタイヤ1のノイズ性能を向上させることができる。このような観点から、第1厚さt1の平均値は、より好ましくは、2.5mm以上である。
【0068】
第1厚さt1の平均値が4.5mm以下であることで、過度な重量増加を抑制することができ、空気入りタイヤ1の良好な低燃費性能を維持することができる。このような観点から、第1厚さt1の平均値は、より好ましくは、4.0mm以下であり、更に好ましくは、3.5mm以下である。
【0069】
第2厚さt2の平均値は、好ましくは、0.5~2.0mmである。第2厚さt2の平均値が0.5mm以上であることで、良好な空気非透過性を維持することができ、空気入りタイヤ1の耐久性能を向上させることに役立つ。このような観点から、第2厚さt2の平均値は、より好ましくは、1.0mm以上である。
【0070】
第2厚さt2の平均値が2.0mm以下であることで、過度な重量増加を抑制することができ、空気入りタイヤ1の良好な低燃費性能を維持することができる。このような観点から、第2厚さt2の平均値は、より好ましくは、1.5mm以下である。
【0071】
図5は、サイドウォール部3の拡大斜視図である。
図5に示されるように、本実施形態のサイドウォール部3は、タイヤ最大幅位置Pmよりもタイヤ半径方向の外側の外側面3sにセレーション部30を有している。
【0072】
セレーション部30は、空気入りタイヤ1を加硫成形するときの成形型の分割線31と重複する位置に設けられるのが望ましい。このようなセレーション部30は、分割線31やバルジ、デントといった凹凸形状を目立ちにくくすることができ、空気入りタイヤ1の外観性能をより向上させることができる。
【0073】
図6は、セレーション部30の拡大斜視図である。
図6に示されるように、本実施形態のセレーション部30は、タイヤ半径方向に延びる複数のリッジ32がタイヤ周方向に並列されている。リッジ32の高さhの最大値は、好ましくは、0.1~1.0mmである。
【0074】
リッジ32の高さhが0.1mm以上であることで、凹凸形状を目立ちにくくする効果を確実に奏することができ、空気入りタイヤ1の外観性能を向上させることに役立つ。リッジ32の高さhが1.0mm以下であることで、セレーション部30によるノイズの発生を抑制し、空気入りタイヤ1の良好なノイズ性能を維持することができる。
【0075】
上述の実施形態では、内側ゴム10の第1部分11と第2部分12とが単一のゴム材料で形成されている態様が示されたが、内側ゴム10は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、複数のゴム材料から形成されていてもよい。
【0076】
図7は、第2の実施形態の内側ゴム10の拡大断面図である。上述の実施形態と同一の要素には、同一の符号が付され、その説明が省略される。
図7に示されるように、第2の実施形態の内側ゴム10の第1部分11は、空気非透過性を有するゴム材料からなるインナーライナ層16と、インナーライナ層16とカーカス6との間に配された追加層17とを含んでいる。
【0077】
第2の実施形態の追加層17は、インナーライナ層16とは異なるゴム材料で構成されている。追加層17は、例えば、空気透過性を有するゴム材料から形成されていてもよい。このような内側ゴム10は、追加層17の材料選択の種類が豊富であり、種々の性能を低コストで実現することに適している。
【0078】
図8は、第3の実施形態の内側ゴム10の拡大断面図である。上述の実施形態と同一の要素には、同一の符号が付され、その説明が省略される。
図8に示されるように、追加層17は、例えば、インナーライナ層16のタイヤ半径方向内側に配されていてもよい。この場合の追加層17は、タイヤ内腔面1iの一部を構成している。第3の実施形態の内側ゴム10も、第2の実施形態の内側ゴム10と同様、追加層17の材料選択の種類が豊富であり、種々の性能を低コストで実現することに適している。
【0079】
図7及び
図8に示されるように、内側ゴム10の第1部分11に追加層17が含まれる場合も、第1厚さt1は、トレッド部2におけるカーカス6の内面6iからタイヤ内腔面1iまでの厚さであり、カーカスプライ6Aのトッピングゴムを含まない厚さである。
【0080】
図9は、第4に実施形態の内側ゴム10の拡大断面図である。上述の実施形態と同一の要素には、同一の符号が付され、その説明が省略される。
図9に示されるように、第4の実施形態の内側ゴム10の第2部分12は、空気非透過性を有するゴム材料からなるインナーライナ層16と、インナーライナ層16とカーカス6との間に配された中間層18とを含んでいる。
【0081】
第4の実施形態の中間層18は、インナーライナ層16とは異なるゴム材料で構成されている。中間層18は、例えば、追加層17(
図7、
図8に示す)と同じゴム材料で構成されていてもよく、追加層17とも異なるゴム材料で構成されていてもよい。このような内側ゴム10は、中間層18の材料選択の種類が豊富であり、種々の性能を低コストで実現することに適している。
【0082】
中間層18は、例えば、バンド層8とタイヤ軸方向で重複している。第4の実施形態の中間層18は、ベルト層7とタイヤ軸方向で重複している。中間層18は、例えば、内側ゴム10の第1部分11に連なるものであってもよい。中間層18は、カーカス6の折返し部6bとタイヤ半径方向で重複するのが望ましい。このような中間層18は、サイドウォール部3の振動を抑制することに役立ち、空気入りタイヤ1のノイズ性能を向上させることができる。
【0083】
内側ゴム10の第2部分12に中間層18が含まれる場合も、第2厚さt2は、サイドウォール部3におけるカーカス6の内面6iからタイヤ内腔面1iまでの厚さであり、カーカスプライ6Aのトッピングゴムを含まない厚さである。
【0084】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施され得る。
【0085】
[付記]
本発明は、次のとおりである。
【0086】
[本発明1]
空気入りタイヤであって、
トレッド部と、
一対のサイドウォール部と、
一対のビード部と、
前記一対のビード部の間を延びるカーカスと、
前記カーカスの内側で前記一対のビード部の間を延びる内側ゴムとを含み、
前記内側ゴムは、前記トレッド部を第1厚さで延びる第1部分と、前記一対のサイドウォール部を第2厚さで延びる第2部分とを含み、
前記第1厚さは、前記第2厚さよりも大きく、
前記トレッド部は、第1トレッド端と第2トレッド端との間に延びる接地面を有し、
前記一対のサイドウォール部は、それぞれ、前記第1トレッド端及び前記第2トレッド端からタイヤ半径方向の内側に延びる外側面を有し、
前記接地面は、前記第1トレッド端と前記第2トレッド端とのタイヤ軸方向の中央位置であるタイヤ赤道を有し、
前記外側面は、最もタイヤ軸方向の外側の位置であるタイヤ最大幅位置を有し、
正規リムにリム組みされ、かつ、正規内圧に調整された無負荷の正規状態におけるタイヤ子午線断面において、
前記タイヤ赤道を通るタイヤ半径方向線とビードベースラインとの交点である第1基準点と、
前記タイヤ赤道を通るタイヤ軸方向線と前記タイヤ最大幅位置を通るタイヤ半径方向線との交点である第2基準点と、
前記第1基準点と前記第2基準点とを結ぶ基準線分と、
前記基準線分と前記接地面又は前記外側面との交点であるショルダー基準点と、
前記第1基準点と前記ショルダー基準点とを結ぶショルダー線分とが規定されたとき、
前記ショルダー線分の長さは、前記基準線分の長さの85.9%~89.3%である、
空気入りタイヤ。
【0087】
[本発明2]
前記第1厚さは、前記第2厚さの1.5~3.5倍である、本発明1に記載の空気入りタイヤ。
【0088】
[本発明3]
前記第1厚さは、2.0~4.5mmである、本発明1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【0089】
[本発明4]
前記タイヤ子午線断面において、
前記接地面は、曲率半径が互いに異なる複数の円弧で構成されており、
前記複数の円弧は、前記タイヤ赤道を通る第1円弧と、前記第1円弧のタイヤ軸方向の外側に隣接する第2円弧と、前記第2円弧のタイヤ軸方向の外側に隣接する第3円弧とを含む、本発明1ないし3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【0090】
[本発明5]
前記第1円弧の曲率半径R1は、前記第2円弧の曲率半径R2の1.85~2.00倍である、本発明4に記載の空気入りタイヤ。
【0091】
[本発明6]
前記第2円弧の曲率半径R2は、前記第3円弧の曲率半径R3の2.08~2.74倍である、本発明4又は5に記載の空気入りタイヤ。
【0092】
[本発明7]
前記第1トレッド端と前記第2トレッド端とのタイヤ軸方向の距離であるトレッド幅は、前記タイヤ最大幅位置におけるタイヤ軸方向の距離である最大幅の74%~84%である、本発明1ないし6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【0093】
[本発明8]
前記正規状態の空気入りタイヤに正規荷重の70%が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときの接地面形状において、
前記タイヤ赤道におけるタイヤ周方向長さL3と、前記タイヤ赤道から前記第1トレッド端までの距離の80%の位置におけるタイヤ周方向長さL4との比である接地面形状指数F(L3/L4)が、1.05~1.35である、本発明1ないし7のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【0094】
[本発明9]
前記サイドウォール部は、前記タイヤ最大幅位置よりもタイヤ半径方向の外側の前記外側面に、タイヤ半径方向に延びるリッジがタイヤ周方向に並列されたセレーション部を有する、本発明1ないし8のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【0095】
[本発明10]
前記トレッド部には、前記カーカスのタイヤ半径方向の外側に、ベルト層が配されており、
前記ベルト層は、第1ベルトプライと、前記第1ベルトプライのタイヤ半径方向の外側に配された第2ベルトプライとを含み、
前記第1トレッド端側において、前記第2ベルトプライのタイヤ軸方向の外端は、前記第1ベルトプライのタイヤ軸方向の外端よりもタイヤ軸方向の内側に位置し、
前記内側ゴムの前記第1部分のタイヤ軸方向の外端は、前記第2ベルトプライの前記外端とタイヤ軸方向で同じ位置にあるか、又は、前記第2ベルトプライの前記外端よりもタイヤ軸方向の内側で、かつ、タイヤ軸方向に10mm以内に位置する、本発明1ないし9のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【符号の説明】
【0096】
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
2s 接地面
3 サイドウォール部
3s 外側面
4 ビード部
6 カーカス
10 内側ゴム
11 第1部分
12 第2部分