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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061153
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 5/00 20060101AFI20240425BHJP
   B60C 9/08 20060101ALI20240425BHJP
   B60C 9/18 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
B60C5/00 F
B60C9/08 L
B60C9/18 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168899
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】アクセル・ヴィルトグルーベ
(72)【発明者】
【氏名】ニクラス・ディーツ
(72)【発明者】
【氏名】ティム・マッケンロス
(72)【発明者】
【氏名】末野 順也
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA23
3D131AA25
3D131AA28
3D131BB01
3D131BB03
3D131BB06
3D131BC02
3D131BC44
3D131BC51
3D131CB03
3D131CB11
3D131DA17
3D131DA34
3D131KA05
3D131KA07
3D131LA28
(57)【要約】
【課題】 騒音を低減することができる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】 空気入りタイヤ1であって、トレッド部2と、一対のビード部4と、一対のサイドウォール部3と、ビード部4の一方から他方に延びるカーカス6と、カーカス6のタイヤ半径方向の外側に配されたベルト層7と、タイヤ内腔10を画定する内腔面9とを含む。サイドウォール部3のそれぞれは、カーカス6のタイヤ半径方向内側に配された中間層11を含む。中間層11のそれぞれは、ベルト層7に重なるタイヤ半径方向の外側端1aと、サイドウォール部3又はビード部4に配置されたタイヤ半径方向の内側端11bとを備える。タイヤ1は、さらに、トレッド部2のタイヤ半径方向の内側に配され、かつ、カーカス6と内腔面9とで規定されるタイヤ半径方向の厚さを有する内側層12を備える。内側層12の厚さTは、カーカス6とサイドウォール部3の内腔面9との間の厚さtよりも大きい。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入りタイヤであって、
トレッド部と、
一対のビード部と、
前記トレッド部とそれぞれのビード部との間に延在する一対のサイドウォール部と、
前記一対のサイドウォール部及び前記トレッド部を通って、前記一対のビード部の一方から前記一対のビード部の他方に延びるカーカスと、
前記カーカスのタイヤ半径方向の外側に配され、かつ、タイヤ軸方向に延びる1又は複数のベルトプライを含むベルト層と、
タイヤ内腔を画定する内腔面とを含み、
前記一対のサイドウォール部のそれぞれは、前記カーカスのタイヤ半径方向内側に配された中間層を含み、
前記中間層のそれぞれは、前記ベルト層に重なるタイヤ半径方向の外側端と、前記サイドウォール部又は前記ビード部に配置されたタイヤ半径方向の内側端とを備えており、
前記タイヤは、さらに、前記トレッド部のタイヤ半径方向の内側に配され、かつ、前記カーカスと前記内腔面とで規定されるタイヤ半径方向の厚さを有する内側層を備え、
前記内側層の厚さは、前記カーカスと前記サイドウォール部の前記内腔面との間の厚さよりも大きい、
空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記1又は複数のベルトプライ、及び、前記内側層のそれぞれは、タイヤ軸方向に幅を有し、
前記内側層の前記幅は、前記1又は複数のベルトプライのそれぞれの幅以下である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記内側層の前記幅は、前記1又は複数のベルトプライの中で最小の幅に対する比が0.8~1.0の範囲である、請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記内側層が前記各中間層の前記外側端に重なっている、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記内側層の厚さは、2.0~4.5mmである、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記内側層の厚さは、2.5~3.5mmである、請求項5に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記内側層の厚さと、前記各サイドウォール部における、前記カーカスと前記内腔面との間の厚さとの比が1.75~3.5である、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記内側層は、実質的に一定の厚さでタイヤ軸方向にのびる領域を含む、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記内側層は、中央領域の両側に配置されたテーパー領域を含む、請求項8に記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記一対のビード部のそれぞれは、ビードコアを含み、
前記カーカスは、それぞれの前記ビードコアの周りで折り返された2つの折返し部を含み、
前記各中間層の前記内側端は、前記カーカスの対応する前記折返し部と重なる、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記一対のビード部のそれぞれは、ビードコアと、前記ビードコアのタイヤ半径方向の外面上に配置されたビードエーペックスとを含み、
前記カーカスは、それぞれの前記ビードコアの周りで折り返された2つの折返し部を含み、
前記各中間層の前記内側端は前記ビードエーペックスに重なる、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項12】
前記内側層は、前記カーカスと直接接触するブチルゴムで形成されている、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項13】
前記内側層は、タイヤ回転軸の周りに巻きつけられた1又は複数のブチルゴムからなるストリップで形成されている、請求項12に記載の空気入りタイヤ。
【請求項14】
前記1又は複数のブチルゴムのストリップは、前記各サイドウォール部において前記タイヤ回転軸の周りに巻き付けられて、タイヤ半径方向において、前記中間層からタイヤ半径方向の内側に配置されたブチルゴムの層を形成する、請求項13に記載の空気入りタイヤ。
【請求項15】
前記各中間層は、押出ゴムの一体成形体から構成されている、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の設計では、騒音レベルは、車内と車外の両方で評価される。例えば、通過騒音は、一般的に、走行中の車外音、すなわち、車両が "通過 "する際に知覚される騒音のことを指す。通過騒音は、騒音公害の原因となり、規制の対象とされる(例:ISO362)。通過騒音は、車両レベルで評価されるところ、車両の多くの部品が通過騒音に寄与している。タイヤは、そのような自動車部品の一つである。タイヤの設計では、トレッドパターン、サイドウォール部、構造などを工夫することで、通過騒音を抑制することができる。また、車室内の騒音(車内騒音)に対応するために、タイヤの形状を変更することもある。上述の変更により、タイヤの騒音が低減される場合もあるが、製造工程が長くなる、及び/又は、複雑になる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-170968号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上のような実情に鑑み案出なされたもので、騒音を低減させることができる空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、空気入りタイヤであって、
トレッド部と、
一対のビード部と、
前記トレッド部とそれぞれのビード部との間に延在する一対のサイドウォール部と、
前記一対のサイドウォール部及び前記トレッド部を通って、前記一対のビード部の一方から前記一対のビード部の他方に延びるカーカスと、
前記カーカスのタイヤ半径方向の外側に配され、かつ、タイヤ軸方向に延びる1又は複数のベルトプライを含むベルト層と、
タイヤ内腔を画定する内腔面とを含み、
前記一対のサイドウォール部のそれぞれは、前記カーカスのタイヤ半径方向内側に配された中間層を含み、
前記中間層のそれぞれは、前記ベルト層に重なるタイヤ半径方向の外側端と、前記サイドウォール部又は前記ビード部に配置されたタイヤ半径方向の内側端とを備えており、
前記タイヤは、さらに、前記トレッド部のタイヤ半径方向の内側に配され、かつ、前記カーカスと前記内腔面とで規定されるタイヤ半径方向の厚さを有する内側層を備え、
前記内側層の厚さは、前記カーカスと前記サイドウォール部の前記内腔面との間の厚さよりも大きい、
空気入りタイヤである。
【0006】
前記空気入りタイヤの実施例は、任意に、以下のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0007】
いくつかの実施例では、前記1又は複数のベルトプライ及び前記内側層の各々は、タイヤ軸方向の幅を有し、前記内側層の幅は、前記1又は複数のベルトプライの各々の幅以下で構成されても良い。例えば、前記内側層の幅と、前記1又は複数のベルトプライのうちの最小の幅との間の比は、約0.8~1.0の範囲とすることができる。
【0008】
いくつかの実施例では、前記外側層は、各中間層の内側端に重なっても良い。
【0009】
前記内側層の厚さは、約2.0~4.5mm、より具体的には、約2.5~3.5mmの範囲とすることができる。
【0010】
いくつかの実施例では、前記内側層の厚さと、各サイドウォール部における前記カーカスと前記内腔面との間の厚さとの間の比は、約1.75~3.5の範囲とすることができる。
【0011】
前記内側層は、任意に、タイヤ軸方向に沿って実質的に一定の厚さを有する領域を含むことができる。前記内側層は、さらに、中央領域の両側に配されたテーパー領域を含むことができる。
【0012】
各中間層の内側端の位置は、様々であってよい。例えば、各ビード部は、ビードコアを含むことができ、前記カーカスは、それぞれのビードコアの周りに巻き付けられた2つの折返し部を含むことができ、各中間層の内側端は前記カーカスの対応する折返し部と重なっても良い。
【0013】
いくつかの実施例では、各ビード部は、ビードコアと、前記ビードコアのタイヤ半径方向の外面上に配置されたビードエーペックスとを含むことができ、前記カーカスは、それぞれのビードコアの周りに巻き付けられた2つの折返し部を含むことができ、各中間層の前記内側端は前記ビードエーペックスに重なっても良い。
【0014】
前記内側層は、種々の材料によって形成することができる。例えば、前記内側層は、前記複数のベルトプライと重なる領域で、前記カーカスと直接接触するように配置されたブチルゴムで形成することができる。より具体的には、前記内側層は、タイヤ回転軸を中心に巻かれた1つ以上のブチルゴムのストリップを含むことができる。いくつかの実施例では、ブチルゴムの同じ1つ又は複数のストリップが、各サイドウォール部においてタイヤ回転軸を中心に巻かれ、前記中間層からタイヤ半径方向内側に配置されたブチルゴムの層を形成することができる。さらに、各中間層は、任意に、押出しゴムの一体成形体を含むことができる。
【0015】
本明細書に記載された主題は、以下の利点の1つ以上を実現するように、特定の実施例で実施することができる。
【0016】
一般に、前記内側層は、前記トレッド部の内方で、2つの前記中間層の前記外側端の間に形成される空間を占める。この配置により、前記ベルト層の最小軸方向幅に対して比較的広い軸方向幅を有する前記内側層を、的を絞って正確に配置することができる場合がある。したがって、転がり抵抗を犠牲にすることなく、騒音低減を向上させることができる。
【0017】
いくつかの実施例では、前記内側層をタイヤの他の構成要素と一体的にタイヤ成形ドラム上に構築することができ、これは製造効率と完成したタイヤの構造的完全性の改善につながる可能性がある。
【0018】
いくつかの実施例の詳細は、添付の図面及び以下の説明に記載されている。他の特徴及び利点は、説明及び図面、ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。なお、様々な図面における同様の参照数字は、同様の要素を示すことに注意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】タイヤの模式的な断面図である。
図2図1のトレッド部の拡大図である。
図3図1のサイドウォール部及びビード部の拡大図である。
図4】異なるサイドウォール部及びビード部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のいくつかの実施例が図面に基づき説明される。
図1は、タイヤ回転軸(図示せず)を含む平面に沿った空気入りタイヤ1の模式的な断面を示す。以下の説明において、「軸方向」及び「半径方向」という表現は、タイヤ回転軸を基準として定義され、「タイヤ軸方向」は、タイヤ回転軸と平行な方向であり、「タイヤ半径方向」は、「タイヤ軸方向」と直交する方向である。
【0021】
図示されるように、タイヤ1は、トレッド部2と、一対のサイドウォール部3と、一対のビード部4とを含む。各サイドウォール部3は、トレッド部2と一対のビード部4のうちの一方との間に延在している。各ビード部4は、典型的にはワイヤ(図示せず)の束によって形成されたリング状の補強要素であるビードコア5を含む。また、タイヤ1は、一方のビード部4から、サイドウォール部3及びトレッド部2を介して、他方のビード部4に延びるカーカス6と、カーカス6のタイヤ半径方向の外側に配置されたベルト層7とを含む。図1のタイヤ1は、トレッド部2と各サイドウォール部3との間の角が顕著に描かれているが、多くの場合、両者の間の移行はもっと滑らかであり、カーカス6には、もっと丸みを帯びた形状が与えられる。
【0022】
カーカス6は、トッピングゴムによって被覆された複数のカーカスコードを有するカーカスプライ6Aを含むことができる。カーカスコードは、数例を挙げると、スチール、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、アラミド繊維などの有機繊維を含むことができる。いくつかの実施例では、カーカスコードは、タイヤ赤道Cに対して約80~90度の角度で延びており、カーカス6にラジアル構造を提供する。しかしながら、本明細書に記載される概念は、このような配向に限定されない。いくつかの実施態様において、カーカス6は、1又は複数のカーカスプライ6Aを含むことができる。
【0023】
図3にも示されるように、カーカスプライ6Aは、一方のビードコア5から他方に延びる本体部6aと、ビードコア5の周囲を包む一対の折返し部6bとを含むことができる。いくつかの実施例では、ビード部4は、本体部6aと一対の折返し部6bの一方との間に配置されるビードエーペックス8(「ビードフィラー」とも称される)を含む。
【0024】
ビードエーペックス8は、硬質のゴムからなり、ビードコア5からタイヤ半径方向外側に延びるテーパー形状を有することが多い。なお、図1では、ビードエーペックス8は単一の部品として示されているが、場合によっては、ビードエーペックス8は複数(例えば、2つ)の部品によって形成されても良い。
【0025】
ベルト層7は、タイヤ軸方向に延在する複数のベルトプライ7A、7Bを含む。各ベルトプライ7A、7Bは、タイヤ赤道Cに対して、例えば、約10~60度の角度で延びる複数のスチールコードを含む。図1のタイヤ1は、2つのベルトプライ7A、7Bを備えて示されているが、他の態様のタイヤ1では、2つよりも多い(例えば、4つの)ベルトプライを含むことができる。一般に、ベルト層7は、トレッド部2の剛性を高め、カーカス6がタイヤ半径方向外側に膨らむ、いわゆる「フープ効果」を打ち消すことができる。
【0026】
また、タイヤ1は、車両ホイール又はリム(図示せず)と共にタイヤ内腔10を画定する内腔面9を含む。内腔面9は、空気に対して不透過性であるゴム層によって形成され、より詳細に後述するように、タイヤ1を所定の圧力に膨張させることができる。例えば、内腔面9のゴムとしては、天然ゴム、合成ジエン系ゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、クロロブチルゴム、ブロモブチルゴム等を例示することができる。多くの場合、内腔面9は、通気性が低いことが知られているブチル系ゴムで作られる。
【0027】
各サイドウォール部3は、カーカス6よりもタイヤ半径方向内側に配置される中間層11を含む。すなわち、中間層11は、内腔面9とカーカス6との間に配置される。各中間層11は、ベルト層7に重なるタイヤ半径方向の外側端11aと、サイドウォール部3又はビード部4(図4)に配置されるタイヤ半径方向の内側端11bとを含む。中間層11は、例えば、カーカスプライのトッピングゴム配合又はサイドウォール配合のシートによって形成することができる。
【0028】
また、タイヤ1は、トレッド部2よりもタイヤ半径方向内側に配置される内側層12を含む。内側層12は、カーカス6と内腔面9とによって規定される厚さ(T、半径方向で測定される)を有する。内側層12の厚さTは、サイドウォール部3の各々におけるカーカス6と内腔面9との間の厚さtよりも大きい。したがって、内側層12は、カーカス6からタイヤ内腔10内へ、タイヤ半径方向内側に突出する一体型のベルト状体又は板を形成している。多くの場合、内側層12は、タイヤの全周に沿って延びている。しかしながら、内側層12は、タイヤ周方向に沿って、隙間、又は、部分的な1又は複数の中断部を含むように構成されても良い。
【0029】
内側層12は、タイヤ1の、他の部分に対するトレッド部2の重量を増加させるために用いることができる。重量の増加により、トレッド部2の慣性モーメントを増加させ、通過騒音や車内騒音につながるトレッド部の振動を抑制することができる。同時に、車内騒音の原因となる振動の周波数も低下する可能性がある。詳しくは後述するが、中間層11は、互いに区別されており、すなわち、2つの中間層11の外側端11aの間には、軸方向の空間又は幅Wが存在する。一般に、内側層12は、この空間を占めるか、又は、埋める。このようなタイヤ1を製造する場合、2つの中間層11の外側端11aの間の空間は、場合によっては、比較的大きな内側層12を正確に配置することができる基準点として機能することができる。
【0030】
例えば、騒音低減と転がり抵抗との間のバランスは、内側層12をできるだけ広くするが、その軸方向外側の端部がベルトプライの外端を越えて延びるほど広くしないことによって得ることができる。より具体的には、ベルト層7は、タイヤ半径方向内側のベルトプライ7Bと、その上に積層されるタイヤ半径方向外側のベルトプライ7Aとを含むことができる。タイヤ半径方向外側のベルトプライ7Aは、タイヤ軸方向の幅Wを有し、タイヤ半径方向内側のベルトプライ7Bは、タイヤ軸方向の幅Wを有する。軸方向の幅W、Wは、ベルトプライ7A、7Bの一方の端部から他方の端部まで測定される。内側層12は、両方の軸方向の幅W及びWよりも小さい軸方向の幅W、すなわち、全てのベルトプライのうちで最小の軸方向の幅と同じか、それよりも小さい軸方向の幅を有する。いくつかの実施例では、ベルト層7において、最小の軸方向の幅は、最も外側のベルトプライ、図示の例ではタイヤ半径方向外側のベルトプライ7Aの軸方向の幅である。
【0031】
内側層12の幅Wと、全てのベルトプライ7A、7Bの最小の軸方向の幅との間の比は、約0.8~1.0の範囲とすることができる。例えば、前記比は、0.90~0.99の範囲であっても良い。言い換えれば、内側層12は、最も幅の狭いベルトプライ7Aの軸方向の両方の端部を越えて延びることなく、ほぼその端部まで延びることができる。比較例として、トレッド領域よりも下方の内面に薄いゴム層を付着させた空気入りタイヤが考えられる。内側層12と同様に、このような薄いゴム層は、トレッド部の重量を増加させ、通過騒音や車内音をある程度低減させることができる。薄いゴム層は、構築された(あるいは加硫された)タイヤに適用されるので、ベルト層の端部に対するゴム層の配置を目標とすることは困難である。ゴム層をベルト層の外端内に確実に配置する最も簡単な方法は、ゴム層の軸方向の幅をベルト層の軸方向の幅よりも実質的に小さくすることであるが、軸方向の幅が大きいと、一般にゴム層による騒音低減が改善される場合がある。これに対して、内側層12は、タイヤの構築プロセスの一部として、タイヤの残りの部分と一体的に形成することができ、これにより、比較的広い内側層12であっても正確に配置することができる場合がある。
【0032】
トレッド部2は、タイヤ周方向に連続的に延びる1つ以上の周方向溝13を含むことができる。いくつかの実施例では、内側層12は、周方向溝13の全てに重なっている。言い換えれば、周方向溝13の全ては、内側層12の軸方向の幅W内に配置されている。しかしながら、全てのタイヤが連続した周方向溝を持つわけではない。タイヤによっては、多数のブロックからなる「ラギー(luggy)」パターンを有するものもある。本明細書で説明する原理は、連続した周方向溝を有するタイヤと、連続した周方向溝を有しないタイヤの両方に適用することができる。
【0033】
いくつかの実施態様では、内側層12の厚さTは、約2.0~4.5mm、より具体的には、2.5~3.5mmの範囲とすることができる。追加的又は代替的に、内側層12の厚さTと、サイドウォール部3のそれぞれにおけるカーカス6と内腔面9との間の厚さtとの間の比(T/t)は、約1.75~3.5の範囲とすることができる。例えば、前記比 (T/t)は 1.9~2.7の範囲であっても良い。いくつかの実施例では、厚さT、及び/又は、厚さtは、実質的に一定であってもよい。例えば、内側層12は、一定の厚さT(図示せず)を有する実質的に長方形の断面を有していてもよい。いくつかの実施例では、サイドウォール部3は、タイヤ1の両側で同じ厚さtを有する。
【0034】
他の実施例では、厚さT、及び/又は、厚さtは、変化してもよい。この場合、前述の比及び寸法は、最大厚さに関連する。例えば、内側層12は、実質的に一定の厚さTを有する中央領域12aと、中央領域12aの両側に配されたテーパー領域12bとを含むことができる。なお、前述の比や寸法は、本実施例では、中央領域12aの厚さTを基準としている。他の実施例では、内側層12の厚さTは、タイヤ軸方向に沿って連続的に変化していてもよい。この場合も、前述の比及び寸法は、最大厚さに基づいている。このような場合、内側層12の幅Wは、カーカス6と内腔面9との間の厚さが、サイドウォール部3における厚さtよりも大きくなる位置で測定される。例えば、軸方向の幅Wは、図2におけるテーパー領域12bを含む。
【0035】
さらに図2を参照すると、内側層12は、複数のベルトプライと重なる領域で、カーカス6と直接接触して配置されるブチルゴムから形成される。すなわち、内側層12は、ブチルゴムとカーカスプライ6Aとの間に配置される他の層又は材料なしに形成することができる。例えば、このような内側層12は、ブチルゴムの1つ又は複数のストリップがタイヤ回転軸を中心にして巻かれ、図1及び図2に描かれた断面を形成する、公知のストリップ巻き付け技術を使用して形成することができる。いくつかの実施例では、ブチルゴムの同様の1つ又は複数のストリップをタイヤ回転軸に関して、サイドウォール部3の各々に沿って巻き付けて内腔面9を形成することができる。したがって、タイヤ成形期間又はステップ数を実質的に増加させることなく、タイヤ成形ドラム上に一体型の内側層12を構築することが可能である。このような実施態様は、任意に、押出ゴムの一体成形体によって形成された中間層11、すなわち、ストリップ巻き付け技術を使用して形成されていない中間層11をさらに含むことができる。押出ゴムからなる中間層11は、ストリップ巻きのブチルゴムに比較的迅速に適用することができる。しかしながら、本明細書に記載された原理は、ストリップ巻きの技術によって形成された中間層11にも、ゴムの押出成形体によって形成された内側層12にも適用することが可能である。
【0036】
さらに、図面は、内側層12を単一の材料(例えば、ブチルゴム)によって形成された一体型部品として描いているが、内側層12は、2つ以上の層(図示せず)を含むことも可能である。いずれにしても、内側層12の内腔面9は、空気に対して不透過性である材料を含む。
【0037】
図3は、図1におけるサイドウォール部3及びビード部4の拡大図である。より具体的には、図3は、カーカスプライ6Aの本体部6aと折返し部6bとが連続し得ることを示す。本体部6aは、トレッド部2から、サイドウォール部3に沿ってタイヤ半径方向内側に、ビードコア5に向かって延びている。カーカスプライ6Aは、ビードコア5及びビードエーペックス8の表面に沿って、タイヤ軸方向外側に延び、折返し部6bに滑らかに移行している。折返し部6bは、タイヤ半径方向外側に延び、折返し端6cで終端している。折返し端6cは、中間層11と折返し部6bとが重なるように、中間層11の内側端11bのタイヤ半径方向外側に配置されている(参照符号14)。
【0038】
図3に示される重複領域14は比較的小さいが、場合によっては、中間層11は、さらに拡張し、より大きな重複領域14が形成されても良い。例えば、中間層11の内側端11bは、図3に示されるものと同様の方法で、ビードエーペックス8の外端8aを越えてタイヤ半径方向内側に延びてもよい。 この場合、中間層11は、サイドウォール部3の全体に沿って、すなわちトレッド部2からビード部4まで延びる。このような設計は、タイヤ製造プロセス中にタイヤ1がより大きな圧力に耐えるのを助けることができる。
【0039】
図3は、カーカス6の「ハイターンアップ」配置であるのに対し、図4は、カーカス6の「ローターンアップ」配置であり、折返し部6bは、ビードエーペックス8へ折り返されている。したがって、折返し端6cは、ビードエーペックス8の外端8aのタイヤ半径方向内側に配置される。図1図3及び図4のビードエーペックス8は、比較的小さなタイヤ半径方向の高さを有するが、他のタイヤでは、ビードエーペックス8はより高くすることができる。いずれにしても、中間層11の内側端11bは、ビードエーペックス8の外端8aを越えて、タイヤ半径方向内側に延びている。したがって、中間層11とビードエーペックス8とは重なり合う(参照符号14)。
【0040】
いくつかの実施態様では、タイヤは、図面には示されていないが当業者には馴染みのある追加の構成要素、例えば、ベルト層のタイヤ半径方向外側に配置されているキャッププライを含んでもよい。
【0041】
他に定義されない限り、上述し図面に示された概念及び特徴は、「正規状態」のタイヤに適用される。様々な規格の対象となる空気入りタイヤでは、「正規状態」とは、タイヤが正規リムに装着され、正規内圧まで膨張し、タイヤに荷重がかかっていない状態である。「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば"Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。また、「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。なお、このような規格に該当しないタイヤについては、「正規状態」とは、タイヤを車両に装着しておらず、荷重がかかっていない状態をいう。なお、本明細書に開示されるタイヤの構成部材の寸法等は、特に断りのない限り、正規状態での測定値である。
【0042】
図面は、乗用車用タイヤの概略図を参照して説明されてきたが、本明細書に記載された原理は、いくつかの例を挙げると、自動二輪車用タイヤ、商用車用タイヤ、トラック用タイヤ、及び、任意の他のタイプの重荷重用タイヤなどの他のタイプのタイヤにも適用することが可能である。
【0043】
以上、説明のために多数の実施例を記載したが、本開示は、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0044】
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
3 サイドウォール部
4 ビード部
5 ビードコア
6 カーカス
7 ベルト層
7A ベルトプライ
7B ベルトプライ
8 ビードエーペックス
9 内腔面
10 タイヤ内腔
11 中間層
11a 外側端
11b 内側端
12 内側層
12a 中央領域
12b テーパー領域
図1
図2
図3
図4