(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061157
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 17/00 20060101AFI20240425BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20240425BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
H01F17/00 B
H01F17/04 A
H01F27/29 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168911
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】江田 北斗
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 政太郎
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 耕平
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 隆将
(72)【発明者】
【氏名】浅房 大貴
(72)【発明者】
【氏名】根本 隆弘
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB01
5E070AB07
5E070BA11
5E070BB03
5E070CB12
5E070CB17
5E070CB18
5E070DA13
5E070EA01
5E070EB04
(57)【要約】
【課題】浮遊容量の低減が図られたコイル部品を提供する。
【解決手段】 コイル部品1のコイル体40は複数のコイル50、60を含んでおり、第1のコイル50はコイル体40に含まれる複数のコイルの中の一つであることから、第1の外部端子20Aから浮遊容量が生じる第2コイル部52の外周ターンまでの電流ルートの長さは、一対の外部端子20A、20B間を流れる電流ルート長さに比べて顕著に短く、第2コイル部52の外周ターンにおける電圧降下は比較的小さくなっているため、第2コイル部52と第1の外部端子20Aとの間に生じる浮遊容量は小さくなっている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対面する一対の主面と、該一対の主面をつなぐとともに互いに平行な第1端面および第2端面とを有する素体と、
前記素体内に設けられ、前記素体の主面に対して平行に延在するとともに、前記素体の主面に対して平行な第1主面および第2主面を有する基板と、
前記素体内に設けられ、前記基板の第1主面に設けられた渦巻状の第1コイル部と前記基板の第2主面に設けられた渦巻状の第2コイル部と前記基板に貫設されて前記第1コイル部と前記第2コイル部とを電気的に接続するスルーホール導体とを含むコイルを複数有し、複数の前記コイルが直列接続され、かつ、一方の端部が前記素体の前記第1端面から露出するとともに他方の端部が前記素体の前記第2端面から露出するコイル体と、
前記素体の前記第1端面に設けられて前記コイル体の一方の端部に接続された第1の外部端子と、
前記素体の前記第2端面に設けられて前記コイル体の他方の端部に接続された第2の外部端子と
を備え、
前記コイル体の複数のコイルが、前記第1端面側に位置し、前記コイル体の一方の端部に接続された第1のコイル、および、前記第2端面側に位置し、前記コイル体の他方の端部に接続された第2のコイルを含む、コイル部品。
【請求項2】
前記コイル体の複数のコイルは前記基板に設けられた複数の貫通孔周りにそれぞれ巻回されている、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記一対の主面の対面方向から見て、前記複数の貫通孔が、前記素体の端面に対して平行な基準線に関して線対称である、請求項2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記一対の主面の対面方向から見て、前記第1のコイルの巻回方向と前記第2のコイルの巻回方向とが逆である、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記一対の主面の対面方向から見て、前記コイル同士を接続する接続部が両コイルの軸を結ぶ仮想線を交差して延びている、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記一対の主面の対面方向から見て、前記コイル体が、前記素体の中心に関して点対称である、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記第1のコイルの前記第1コイル部のコイル端部が前記コイル体の一方の端部を構成しており、前記一対の主面の対面方向から見て、前記第1のコイルの前記第2コイル部の軸が前記第1コイル部の軸より前記第1端面から離れている、または、前記第2のコイルの前記第1コイル部のコイル端部が前記コイル体の他方の端部を構成しており、前記一対の主面の対面方向から見て、前記第2のコイルの前記第2コイル部の軸が前記第1コイル部の軸より前記第2端面から離れている、請求項1に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電源回路に用いられる薄膜コイルを含むコイル部品が知られている。下記特許文献1には、基板の一方面において渦巻状に巻回された第1コイル部と、基板の他方面上において渦巻状に巻回された第2コイル部とが、基板に貫設されたスルーホール導体を介して接続された構成を有する薄膜コイルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、1本の同軸ケーブルに電源と信号とを重畳させる技術(PoC:Power over Coax)の開発が進められているとともに、この技術に用いるコイル部品には、高い信号伝達特性を実現するため低帯域から高帯域にわたり高いインピーダンスが求められる。
【0005】
発明者らは、低帯域から高帯域にわたり高いインピーダンスを実現するためには、コイル部品の浮遊容量を低減して、自己共振周波数(SRF)を高めることが有効であるとの知見を得た。
【0006】
本発明の一側面は、浮遊容量の低減が図られたコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係るコイル部品は、対面する一対の主面と、該一対の主面をつなぐとともに互いに平行な第1端面および第2端面とを有する素体と、素体内に設けられ、素体の主面に対して平行に延在するとともに、素体の主面に対して平行な第1主面および第2主面を有する基板と、素体内に設けられ、基板の第1主面に設けられた渦巻状の第1コイル部と基板の第2主面に設けられた渦巻状の第2コイル部と基板に貫設されて第1コイル部と第2コイル部とを電気的に接続するスルーホール導体とを含むコイルを複数有し、複数のコイルが直列接続され、かつ、一方の端部が素体の第1端面から露出するとともに他方の端部が素体の第2端面から露出するコイル体と、素体の第1端面に設けられてコイル体の一方の端部に接続された第1の外部端子と、素体の第2端面に設けられてコイル体の他方の端部に接続された第2の外部端子とを備え、コイル体の複数のコイルが、第1端面側に位置し、コイル体の一方の端部に接続された第1のコイル、および、第2端面側に位置し、コイル体の他方の端部に接続された第2のコイルを含む。
【0008】
上記コイル部品において、コイル体は、素体の第1端面に設けられた第1の外部端子と接続されるコイル体の端部に接続された第1のコイル、および、素体の第2端面に設けられた第2の外部端子と接続されるコイル体の端部に接続された第2のコイルを含む複数のコイルを有する。たとえば、コイル体の端部を介して第1のコイルの第1コイル部が第1の外部端子に接続されている場合、基板の第2主面に設けられた第1のコイルの第2コイル部では、第1の外部端子に対して電圧が降下するため第1の外部端子との間に浮遊容量が生じ得る。ただし、第1のコイルは、コイル体に含まれる複数のコイルの中の一つであることから、第1のコイルにおける電圧降下は、コイル体が単一コイルを含む構造における電圧降下に比べて小さくなっており、そのため、第1のコイルの第2コイル部と第1の外部端子との間に生じる浮遊容量は小さくなっている。同様に、第2のコイルの第2の外部端子に対する電圧降下も、コイル体が単一コイルを含む構造における電圧降下に比べて小さくなっており、そのため、第2のコイルの第2コイル部と第2の外部端子との間に生じる浮遊容量は小さくなっている。
【0009】
他の側面に係るコイル部品では、コイル体の複数のコイルは基板に設けられた複数の貫通孔周りにそれぞれ巻回されている。
【0010】
他の側面に係るコイル部品では、一対の主面の対面方向から見て、複数の貫通孔が、素体の端面に対して平行な基準線に関して線対称である。
【0011】
他の側面に係るコイル部品では、一対の主面の対面方向から見て、第1のコイルの巻回方向と第2のコイルの巻回方向とが逆である。
【0012】
他の側面に係るコイル部品では、一対の主面の対面方向から見て、コイル同士を接続する接続部が両コイルの軸を結ぶ仮想線を交差して延びている。
【0013】
他の側面に係るコイル部品では、一対の主面の対面方向から見て、コイル体が、素体の中心に関して点対称である。
【0014】
他の側面に係るコイル部品では、第1のコイルの第1コイル部のコイル端部がコイル体の一方の端部を構成しており、一対の主面の対面方向から見て、第1のコイルの第2コイル部の軸が第1コイル部の軸より第1端面から離れている、または、第2のコイルの第1コイル部のコイル端部がコイル体の他方の端部を構成しており、一対の主面の対面方向から見て、第2のコイルの第2コイル部の軸が第1コイル部の軸より第2端面から離れている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の種々の側面によれば、浮遊容量の低減が図られたコイル部品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に係るコイル部品を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示したコイル部品の分解斜視図である。
【
図3】
図2に示した素体内に設けられたコイル体を示した分解斜視図である。
【
図4】
図3に示したコイルの構成を示した断面図である。
【
図5】
図3に示した各コイルの第1コイル部を示した平面図である。
【
図6】
図3に示した各コイルの第2コイル部を示した平面図である。
【
図7】
図5とは異なる態様の各コイルの第1コイル部を示した平面図である。
【
図8】
図6とは異なる態様の各コイルの第2コイル部を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しつつ本発明を実施するための形態を説明する。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0018】
一実施形態にコイル部品1について、
図1~6を参照しつつ説明する。コイル部品1は、
図1、2に示すように、素体10と、素体10の表面に設けられた一対の外部端子20A、20Bとを備えて構成されている。
【0019】
素体10は、略直方体形状の外形を有し、対面する一対の主面10a、10bと、対面する一対の端面10c、10dと、対面する一対の側面10e、10fを有する。一対の端面10c、10dおよび一対の側面10e、10fは、一対の主面10a、10bをつないでいる。本実施形態において、一対の主面10a、10bの対面方向が素体10の高さ方向、一対の端面10c、10dの対面方向が素体10の長辺方向、一対の側面10e、10fの対面方向が素体10の短辺方向となっている。本実施形態においては、主面10bが、コイル部品1が実装される基材と面する実装面となっている。コイル部品1は、一例として、長辺2.0mm、短辺1.25mm、高さ1.0mmの寸法で設計される。
【0020】
一対の外部端子20A、20Bのうち、第1の外部端子20Aは、素体10の端面10c側に設けられている。第1の外部端子20Aは、端面10cを覆う部分20aと端面10c側の主面10bの一部を覆う部分20bとを含み、端面10cと主面10bとを連続的に覆うL字状断面を有する。一対の外部端子20A、20Bのうち、第2の外部端子20Bは、素体10の端面10d側に設けられている。第2の外部端子20Bは、第1の外部端子20A同様、端面10dを覆う部分20aと端面10d側の主面10bの一部を覆う部分20bとを含み、端面10dと主面10bとを連続的に覆うL字状断面を有する。
【0021】
素体10は、磁性材料12の内部に、
図3に示したコイル構造体14が設けられた構成を有する。素体10を構成する磁性材料12には磁性粉含有樹脂を用いることができる。磁性粉含有樹脂は、金属磁性粉やフェライト粉等の磁性粉が樹脂中に分散された構成を有する。磁性粉含有樹脂に、磁性粉として金属磁性粉およびフェライト粉の両方が含まれていてもよい。金属磁性粉は、たとえば鉄ニッケル合金(パーマロイ合金)、カルボニル鉄、アモルファス、非晶質または結晶質のFeSiCr系合金、センダスト等で構成され得る。磁性粉含有樹脂に用いられる樹脂は、たとえば熱硬化性のエポキシ樹脂である。磁性粉含有樹脂に含まれる磁性粉の含有量は、一例として、90~99wt%である。本実施形態においては、素体10の主面10bのみ、磁性粉含有樹脂に代えて、絶縁樹脂(たとえばエポキシ樹脂)等の絶縁材料で構成された絶縁層16で構成されている。主面10bでは一対の外部端子20A、20Bの部分20b同士が近づいているが、絶縁層16により、主面10bにおける一対の外部端子20A、20B間の耐電圧向上が図られている。また、主面10bにおいては、各外部端子20A、20Bと磁性粉含有樹脂との間に絶縁層16の絶縁材料が介在する(すなわち、各外部端子20A、20Bが磁性粉含有樹脂に直接接しない)ことで、浮遊容量の低減も図られている。素体10は、絶縁層16を含まない構成であってもよく、磁性粉含有樹脂のみで構成された態様であってもよい。
【0022】
コイル構造体14は、基板30とコイル体40とを備えて構成されている。
【0023】
基板30は、素体10の一対の端面10c、10dの間にわたって延在しており、各端面10c、10dから露出する端部30a、30bを有する。基板30は、素体10の主面10a、10bに対して平行に延在する平板状の形状を有し、主面10a側に位置する上面(第1主面)30cおよび主面10b側に位置する下面(第2主面)30dを有する。基板30は、後述する第1のコイル50に対応する第1部分32および第2のコイル60に対応する第2部分34を有し、第1部分32および第2部分34にはそれぞれ貫通孔32a、34aが設けられている。本実施形態では、基板30は、素体10の主面10a側から見て8字状の形状を有し、素体10の端面10c、10dに対して平行な基準線L1に関して線対称の形状を有する。複数の貫通孔32a、34aの形状および寸法についても、基準線L1に関して線対称の関係を有する。
【0024】
基板30は、非磁性の絶縁材料で構成されている。基板30には、ガラスクロスにシアネート樹脂(BT(ビスマレイミド・トリアジン)レジン:登録商標)が含浸された基板を用いることができる。なお、BTレジンのほか、ポリイミド、アラミド等を用いることもできる。基板30の材料としては、セラミックやガラスを用いることもできる。基板30の材料としては、大量生産されているプリント基板材料を用いることができ、BTプリント基板、FR4プリント基板、またはFR5プリント基板に用いられる樹脂材料を用いることができる。
【0025】
コイル体40は、素体10の長辺方向に並ぶ複数のコイルを含んでおり、本実施形態においては第1のコイル50および第2のコイル60の2つのコイルを含んでいる。コイル体40に含まれる複数のコイルは直列接続されており、本実施形態においては第1のコイル50と第2のコイル60とが直列接続されている。コイル体40の一方の端部40aは、基板30の上面30c上において素体10の端面10cに露出して、第1の外部端子20Aに接続されている。コイル体40の他方の端部40bは、基板30の上面30c上において素体10の端面10dに露出して、第2の外部端子20Bに接続されている。
【0026】
コイル体40に含まれる各コイル50、60は、基板30の上面30cに設けられた渦巻状の第1コイル部51、61と、基板30の下面30dに設けられた渦巻状の第2コイル部52、62と、基板30に貫設されて第1コイル部51、61と第2コイル部52、62とを電気的に接続するスルーホール導体33、35とを有する。
【0027】
図4に示すように、基板30の上面30cおよび下面30dには樹脂体41、42がそれぞれ設けられており、樹脂体41、42の樹脂壁43によってコイル体40を構成する導体44の領域が画定されている。各樹脂体41、42は、非磁性の樹脂材料で構成されており、公知のフォトリソグラフィーによってパターニングされた厚膜レジストである。樹脂壁43の寸法に関しては、たとえば最外に位置する樹脂壁43の幅を20μmに設定することができる。コイル体40の導体44は、各樹脂体41、42の樹脂壁43により成長領域が画定された状態でめっき形成することができる。本実施形態において、コイル体40を構成する導体44の断面寸法(たとえば、矩形状断面における幅や高さ)は、コイル体の全長にわたって略均一となっている。導体44の断面寸法は、一例として、175μm高さ、90μm幅である。導体44の表面には絶縁被覆45が設けられており、導体44と素体10を構成する磁性粉含有樹脂との絶縁が図られている。
【0028】
続いて、第1のコイル50および第2のコイル60の構成について、
図5、6を参照しつつより詳しく説明する。
図5および
図6はいずれも、素体10の主面10a側から見たときの基板30、第1のコイル50および第2のコイル60の位置関係を示している。
【0029】
第1のコイル50は、素体10の端面10c(第1端面)側に位置しており、コイル体40の一方の端部40aに接続されている。
図5に示すように、第1のコイル50の第1コイル部51は、コイル軸Z
51周りに2ターンほど巻回された一層構造の平面渦巻状の導体パターンである。第1コイル部51は、外周ターンから内周ターンに向けて右回りに巻回されている。第1コイル部51の外側端部はコイル体40の端部40aに接続され、第1コイル部51の内側端部51aは内側端部51aに重畳する部分の基板30に貫設されたスルーホール導体33に接続されている。第1コイル部51と重なる基板30の第1部分32は、略円環状を呈し、第1コイル部51のコイル軸Z
51周辺が貫通された貫通孔32aを有する。第1コイル部51の内側端部51aは、第1部分32の貫通孔32aの縁に位置している。
【0030】
第2のコイル60は、素体10の端面10d(第2端面)側に位置しており、コイル体40の他方の端部40bに接続されている。
図5に示すように、第2のコイル60の第1コイル部61は、コイル軸Z
61周りに2ターンほど巻回された一層構造の平面渦巻状の導体パターンである。第1コイル部61は、内周ターンから外周ターンに向けて左回りに巻回されている。第1コイル部61の外側端部はコイル体40の端部40bに接続され、第1コイル部61の内側端部61aは内側端部61aに重畳する部分の基板30に貫設されたスルーホール導体35に接続されている。第1コイル部61と重なる基板30の第2部分34は、略円環状を呈し、第1コイル部61のコイル軸Z
61周辺が貫通された貫通孔34aを有する。第1コイル部61の内側端部61aは、第2部分34の貫通孔34aの縁に位置している。
【0031】
基板30の上面30c上において、第1のコイル50の第1コイル部51と第2のコイル60の第1コイル部61とは離間している。また、第1のコイル50の第1コイル部51と第2のコイル60の第1コイル部61とは、対称性を有し、特に素体10の中心(または基板30の中心)に関して点対称の関係を有する。第1のコイル50の第1コイル部51と第2のコイル60の第1コイル部61とは、ターン数(巻き数)および導体幅が同じになるように設計されている。本実施形態において、第1コイル部51のコイル軸Z51と第1コイル部61のコイル軸Z61とは素体10の長辺方向(すなわち、端面10c、10dの対面方向)に並んでいる。
【0032】
図6に示すように、第1のコイル50の第2コイル部52は、コイル軸Z
52周りに2ターンほど巻回された一層構造の平面渦巻状の導体パターンである。本実施形態において、第2コイル部52のコイル軸Z
52は、第1コイル部51のコイル軸Z
51と一致している。第2コイル部52は、内周ターンから外周ターンに向けて右回りに巻回されている。そのため、第1のコイル50の第1コイル部51と第2コイル部52では、素体10の主面10a側から見ると、電流が流れた際に同じ巻回方向に電流が流れる。第2コイル部52の内側端部52aは、基板30の下面30dにおけるスルーホール導体33と重なる位置にあり、スルーホール導体33に接続されている。第2コイル部52の外側端部は、素体10の端面10d側に向かって延びて、第2のコイル60の第2コイル部62に接続されている。
【0033】
第2のコイル60の第2コイル部62は、コイル軸Z62周りに2ターンほど巻回された一層構造の平面渦巻状の導体パターンである。本実施形態において、第2コイル部62のコイル軸Z62は、第1コイル部61のコイル軸Z61と一致している。第2コイル部62は、外周ターンから内周ターンに向けて左回りに巻回されている。そのため、第2のコイル60の第1コイル部61と第2コイル部62では、素体10の主面10a側から見ると、電流が流れた際に同じ巻回方向に電流が流れる。第2コイル部62の内側端部62aは、基板30の下面30dにおけるスルーホール導体35と重なる位置にあり、スルーホール導体35に接続されている。第1コイル部61の外側端部は、素体10の端面10c側に向かって延びて、第1のコイル50の第2コイル部52の外側端部に接続されている。
【0034】
基板30の下面30d上において、第1のコイル50の第2コイル部52と第2のコイル60の第2コイル部62とは接続されている。第2コイル部52と第2コイル部62とが接続された接続部48は、両コイル軸Z52、Z62を結ぶ仮想線L2を交差するように延びている。また、第1のコイル50の第2コイル部52と第2のコイル60の第2コイル部62とは、対称性を有し、特に素体10の中心(または基板30の中心)に関して点対称の関係を有する。第1のコイル50の第2コイル部52と第2のコイル60の第2コイル部62とは、ターン数(巻き数)および導体幅が同じになるように設計されている。本実施形態において、第2コイル部52のコイル軸Z52と第2コイル部62のコイル軸Z62とは素体10の長辺方向(すなわち、端面10c、10dの対面方向)に並んでいる。
【0035】
コイル体40が上記構成を有するため、一対の外部端子20A、20B間に電圧が印加され、たとえば第1の外部端子20Aから第2の外部端子20Bまで電流が流れる場合、第1の外部端子20Aからの電流はコイル体40の第1のコイル50を流れた後に第2のコイル60を流れて第2の外部端子20Bに至る。このように電流が流れる場合、素体10の主面10a側から見て、第1のコイル50の巻回方向と第2のコイル60の巻回方向とは逆になっているため、第1のコイル50では右回りに電流が流れるのに対し、第2のコイル60では左回りに電流が流れる。その結果、第1のコイル50の内側(内芯)には主面10aから主面10bに向かう向きの磁束が生じ、第2のコイル60の内側(内芯)には主面10bから主面10aに向かう向きの磁束が生じる。このとき、第1のコイル50の第2コイル部52において第1の外部端子20Aと近接する外周ターンでは、第1の外部端子20Aに対して電圧が降下しているため、
図6に示すように、第2コイル部52の外周ターンと第1の外部端子20Aとの間の素体領域Sに浮遊容量が生じる。第2コイル部52の外周ターンと第1の外部端子20Aとの距離d(絶縁距離)が短いほど、より大きな浮遊容量が生じる。本実施形態では、第2コイル部52の外周ターンと第1の外部端子20Aとの間の素体領域Sは上述した樹脂体42で構成されている。
【0036】
上記コイル部品1のコイル体40は複数のコイル50、60を含んでおり、第1のコイル50はコイル体40に含まれる複数のコイルの中の一つであることから、第1の外部端子20Aから浮遊容量が生じる第2コイル部52の外周ターンまでの電流ルートの長さ(コイル導体の長さ)は、一対の外部端子20A、20B間を流れる電流ルート長さに比べて顕著に短く(電流ルート長さの半分にも満たず)、第2コイル部52の外周ターンにおける電圧降下は比較的小さくなっているため、第2コイル部52と第1の外部端子20Aとの間に生じる浮遊容量は小さくなっている。それに対し、コイル体が一つのコイルしか含まない場合には、外部端子から基板下面のコイル部の外周ターンまでの電流ルートの長さは一対の外部端子間を流れる電流ルート長さの半分を超えるため、外周ターンにおける電圧降下は大きくなり、外周ターンと外部端子との間に大きな浮遊容量が生じ得る。
【0037】
上記コイル部品1では、第2のコイル60に関しても、第1のコイル50同様、第2コイル部62において第2の外部端子20Bと近接する外周ターンと第2の外部端子20Bとの間の素体領域Sに浮遊容量が生じる。本実施形態では、第2コイル部62の外周ターンと第2の外部端子20Bとの間の素体領域Sは上述した樹脂体42で構成されている。第2のコイル60においても、第2の外部端子20Bから浮遊容量が生じる第2コイル部52の外周ターンまでの電流ルートの長さは、一対の外部端子20A、20B間を流れる電流ルート長さの半分にも満たないため、第2コイル部62の外周ターンと第2の外部端子20Bとの間の電位差は小さく、第2コイル部62と第2の外部端子20Bとの間に生じる浮遊容量は小さくなっている。
【0038】
このように浮遊容量の低減が図られたコイル部品1では自己共振周波数が高められて低帯域から高帯域にわたり高いインピーダンスを実現することができるため、コイル部品1をPoC技術に適用することで高い信号伝達特性を実現することができる。
【0039】
なお、素体10の主面10a側から見て、第2コイル部52、62のコイル軸Z52、Z62は、第1コイル部51、61のコイル軸Z51、Z61からズレていてもよい。たとえば、第1のコイル50の第2コイル部52のコイル軸Z52を第1コイル部51のコイル軸Z51より端面10cから離すことで、第2コイル部52の外周ターンと第1の外部端子20Aとの距離dが伸びて、浮遊容量の低減を図ることができる。同様に、第2のコイル60の第2コイル部62のコイル軸Z62を第1コイル部61のコイル軸Z61より端面10dから離すことで、第2コイル部62の外周ターンと第2の外部端子20Bとの距離dが伸びて、浮遊容量の低減を図ることができる。
【0040】
上述した実施形態では、素体10の主面10a側から見て、第1のコイル50の巻回方向と第2のコイル60の巻回方向とは逆になっていたが、
図7、8に示す形態のように、第1のコイル50の巻回方向と第2のコイル60の巻回方向は同じであってもよい。
【0041】
この場合、
図7に示すように、素体10の主面10a側から見て、第1のコイル50の第1コイル部51は、外周ターンから内周ターンに向けて左回りに巻回されている。同じく、第2のコイル60の第1コイル部61も、素体10の主面10a側から見て、内周ターンから外周ターンに向けて左回りに巻回されている。第1のコイル50の第1コイル部51と第2のコイル60の第1コイル部61とは、対称性を有し、特に端面10c、10dに平行で素体10の中心(または基板30の中心)を通る線に関して線対称の関係を有する。
【0042】
また、
図8に示すように、第1のコイル50の第2コイル部52は、素体10の主面10a側から見て、内周ターンから外周ターンに向けて左回りに巻回されている。第2のコイル60の第2コイル部62は、素体10の主面10a側から見て、外周ターンから内周ターンに向けて左回りに巻回されている。第1のコイル50の第2コイル部52と第2のコイル60の第2コイル部62とは、対称性を有し、特に端面10c、10dに平行で素体10の中心(または基板30の中心)を通る線に関して線対称の関係を有する。
【0043】
基板30の下面30d上において、第1のコイル50の第2コイル部52と第2のコイル60の第2コイル部62とが接続された接続部49は、U字状またはV字状に屈曲している。接続部49は、両コイル軸Z52、Z62を結ぶ仮想線L2に重なるように設計してもよく、重ならないように設計してもよい。
【0044】
図7、8に示す形態では、一対の外部端子20A、20B間に電圧が印加され、たとえば第1の外部端子20Aから第2の外部端子20Bまで電流が流れる場合、素体10の主面10a側から見て、第1のコイル50の巻回方向と第2のコイル60の巻回方向とは同じになっているため、第1のコイル50および第2のコイル60では左回りに電流が流れる。その結果、第1のコイル50および第2のコイル60のいずれの内側(内芯)にも主面10bから主面10aに向かう向きの磁束が生じる。このような形態においても、第1の外部端子20Aから浮遊容量が生じる第2コイル部52の外周ターンまでの電流ルートの長さ、および、第2の外部端子20Bから浮遊容量が生じる第2コイル部52の外周ターンまでの電流ルートの長さは、一対の外部端子20A、20B間を流れる電流ルート長さに比べて顕著に短くなっているため、上述した実施形態同様、浮遊容量の低減が図られる。
【0045】
本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。たとえば、コイル体に含まれるコイルの数は、2つに限らず、3つ以上でもよい。コイル体に含まれるコイル同士は、必ずしも対称性を有する必要はなく、コイルごとにターン数や線幅が異なっていてもよい。また、各コイルの第1コイル部と第2コイル部との間でもターン数や線幅が異なっていてもよい。
【0046】
上述の記載から把握されるとおり、本明細書は下記を開示している。
[付記1]
対面する一対の主面と、該一対の主面をつなぐとともに互いに平行な第1端面および第2端面とを有する素体と、
前記素体内に設けられ、前記素体の主面に対して平行に延在するとともに、前記素体の主面に対して平行な第1主面および第2主面を有する基板と、
前記素体内に設けられ、前記基板の第1主面に設けられた渦巻状の第1コイル部と前記基板の第2主面に設けられた渦巻状の第2コイル部と前記基板に貫設されて前記第1コイル部と前記第2コイル部とを電気的に接続するスルーホール導体とを含むコイルを複数有し、複数の前記コイルが直列接続され、かつ、一方の端部が前記素体の前記第1端面から露出するとともに他方の端部が前記素体の前記第2端面から露出するコイル体と、
前記素体の前記第1端面に設けられて前記コイル体の一方の端部に接続された第1の外部端子と、
前記素体の前記第2端面に設けられて前記コイル体の他方の端部に接続された第2の外部端子と
を備え、
前記コイル体の複数のコイルが、前記第1端面側に位置し、前記コイル体の一方の端部に接続された第1のコイル、および、前記第2端面側に位置し、前記コイル体の他方の端部に接続された第2のコイルを含む、コイル部品。
[付記2]
前記コイル体の複数のコイルは前記基板に設けられた複数の貫通孔周りにそれぞれ巻回されている、付記1に記載のコイル部品。
[付記3]
前記一対の主面の対面方向から見て、前記複数の貫通孔が、前記素体の端面に対して平行な基準線に関して線対称である、付記2に記載のコイル部品。
[付記4]
前記一対の主面の対面方向から見て、前記第1のコイルの巻回方向と前記第2のコイルの巻回方向とが逆である、付記1~3のいずれか一つに記載のコイル部品。
[付記5]
前記一対の主面の対面方向から見て、前記コイル同士を接続する接続部が両コイルの軸を結ぶ仮想線を交差して延びている、付記1~4のいずれか一つに記載のコイル部品。
[付記6]
前記一対の主面の対面方向から見て、前記コイル体が、前記素体の中心に関して点対称である、付記1~5のいずれか一つに記載のコイル部品。
[付記7]
前記第1のコイルの前記第1コイル部のコイル端部が前記コイル体の一方の端部を構成しており、前記一対の主面の対面方向から見て、前記第1のコイルの前記第2コイル部の軸が前記第1コイル部の軸より前記第1端面から離れている、または、前記第2のコイルの前記第1コイル部のコイル端部が前記コイル体の他方の端部を構成しており、前記一対の主面の対面方向から見て、前記第2のコイルの前記第2コイル部の軸が前記第1コイル部の軸より前記第2端面から離れている、付記1~6のいずれか一つに記載のコイル部品。
【符号の説明】
【0047】
1…コイル部品、10…素体、20A、20B…外部端子、30…基板、32a、34a…貫通孔、40…コイル体、、48、49…接続部、50…第1のコイル、51…第1コイル部、52…第2コイル部、60…第2のコイル、61…第1コイル部、62…第2コイル部、Z51、Z52、Z61、Z62…コイル軸。