(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024061158
(43)【公開日】2024-05-07
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 17/00 20060101AFI20240425BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20240425BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
H01F17/00 B
H01F17/04 A
H01F27/29 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168913
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】江田 北斗
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 政太郎
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 耕平
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 隆将
(72)【発明者】
【氏名】浅房 大貴
(72)【発明者】
【氏名】根本 隆弘
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB01
5E070AB03
5E070BA11
5E070BB03
5E070CB12
5E070CB17
5E070DA13
5E070EA01
5E070EB04
(57)【要約】
【課題】特性向上が図られたコイル部品を提供する。
【解決手段】 コイル部品1のコイル体40は、素体10の一対の主面10a、10bの対面方向から見て一方向に沿って順に並ぶ第1のコイル50、第2のコイル60および第3のコイル70を含み、第1のコイル50、第2のコイル60および第3のコイル70は巻き線方向が交互になっており、かつ、第2のコイル60の巻き数が相対的に少なくなっていることで、コイル部品1の特性向上が図られている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対面する一対の主面と、該一対の主面をつなぐとともに互いに平行な第1端面および第2端面とを有する素体と、
前記素体内に設けられ、前記素体の主面に対して平行に延在するとともに、前記素体の主面に対して平行な第1主面および第2主面を有する基板と、
前記素体内に設けられ、前記基板の第1主面に設けられた渦巻状の第1コイル部と前記基板の第2主面に設けられた渦巻状の第2コイル部と前記基板に貫設されて前記第1コイル部と前記第2コイル部とを電気的に接続するスルーホール導体とを含むコイルを複数有し、複数の前記コイルが直列接続され、かつ、一方の端部が前記素体の前記第1端面から露出するとともに他方の端部が前記素体の前記第2端面から露出するコイル体と、
前記素体の前記第1端面に設けられて前記コイル体の一方の端部に接続された第1の外部端子と、
前記素体の前記第2端面に設けられて前記コイル体の他方の端部に接続された第2の外部端子と
を備え、
前記一対の主面の対面方向から見て、前記コイル体の複数のコイルは一方向に沿って並んでいるとともに前記コイルの巻き線方向が交互になっており、
前記コイル体の複数のコイルは、前記第1端面側に位置し、前記コイル体の一方の端部に接続された第1のコイルと、該第1のコイルよりも前記第1端面から離れた側に位置し、前記第1のコイルよりも巻数が少ない第2のコイルと、前記第2端面側に位置し、前記コイル体の他方の端部に接続された第3のコイルとを含む、コイル部品。
【請求項2】
前記コイル体の複数のコイルは前記基板に設けられた複数の貫通孔周りにそれぞれ巻回されている、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記貫通孔が、前記第1端面と前記第2端面との対面方向に対して交差する方向に延びる長軸を有する楕円形状である、請求項2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記一対の主面の対面方向から見て、前記第2のコイルの内芯面積が前記第1のコイルの内芯面積より大きい、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記一対の主面の対面方向から見て、前記コイル同士を接続する接続部が両コイルの軸を結ぶ仮想線を交差して延びている、請求項1に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電源回路に用いられる薄膜コイルを含むコイル部品が知られている。下記特許文献1には、基板の一方面において渦巻状に巻回された第1コイル部と他方面において渦巻状に巻回された第2コイル部とが、基板に貫設されたスルーホール導体を介して接続された構成を有する薄膜コイルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術に係るコイル部品は、一部品の中に一つの薄膜コイルが含まれる構成であるが、発明者らは一部品の中に直列接続した複数のコイルを1列に並べた構成について検討を重ね、その結果、複数コイルの構成において特性向上を図ることができる技術を新たに見出した。
【0005】
本発明の一側面は、特性向上が図られたコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係るコイル部品は、対面する一対の主面と、該一対の主面をつなぐとともに互いに平行な第1端面および第2端面とを有する素体と、素体内に設けられ、素体の主面に対して平行に延在するとともに、素体の主面に対して平行な第1主面および第2主面を有する基板と、素体内に設けられ、基板の第1主面に設けられた渦巻状の第1コイル部と基板の第2主面に設けられた渦巻状の第2コイル部と基板に貫設されて第1コイル部と第2コイル部とを電気的に接続するスルーホール導体とを含むコイルを複数有し、複数のコイルが直列接続され、かつ、一方の端部が素体の第1端面から露出するとともに他方の端部が素体の第2端面から露出するコイル体と、素体の第1端面に設けられてコイル体の一方の端部に接続された第1の外部端子と、素体の第2端面に設けられてコイル体の他方の端部に接続された第2の外部端子とを備え、一対の主面の対面方向から見て、コイル体の複数のコイルは一方向に沿って並んでいるとともにコイルの巻き線方向が交互になっており、コイル体の複数のコイルは、第1端面側に位置し、コイル体の一方の端部に接続された第1のコイルと、該第1のコイルよりも第1端面から離れた側に位置し、第1のコイルよりも巻数が少ない第2のコイルと、第2端面側に位置し、コイル体の他方の端部に接続された第3のコイルとを含む。
【0007】
上記コイル部品においては、第2のコイルがその両側に位置する第1のコイルおよび第3のコイルと磁束を共有する。発明者らは、磁束を共有する第2のコイルの巻き数を相対的に少なくすることで、コイル1の特性が向上することを新たに見出した。
【0008】
他の側面に係るコイル部品では、コイル体の複数のコイルは基板に設けられた複数の貫通孔周りにそれぞれ巻回されている。
【0009】
他の側面に係るコイル部品では、貫通孔が、第1端面と第2端面との対面方向に対して交差する方向に延びる長軸を有する楕円形状である。
【0010】
他の側面に係るコイル部品では、一対の主面の対面方向から見て、第2のコイルの内芯面積が第1のコイルの内芯面積より大きい。
【0011】
他の側面に係るコイル部品では、一対の主面の対面方向から見て、コイル同士を接続する接続部が両コイルの軸を結ぶ仮想線を交差して延びている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の種々の側面によれば、特性向上が図られたコイル部品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係るコイル部品を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示したコイル部品の分解斜視図である。
【
図3】
図2に示した素体内に設けられたコイル体を示した分解斜視図である。
【
図4】
図3に示したコイルの構成を示した断面図である。
【
図5】
図3に示した各コイルの第1コイル部を示した平面図である。
【
図6】
図3に示した各コイルの第2コイル部を示した平面図である。
【
図7】検証に用いたコイル部品のコイル体の分解斜視図である。
【
図8】
図7に示した各コイルの第1コイル部を示した平面図である。
【
図9】
図7に示した各コイルの第2コイル部を示した平面図である。
【
図10】
図7~9の構成を有するコイル部品の検証結果を示した図である。
【
図11】
図1~6の構成を有するコイル部品の検証結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しつつ本発明を実施するための形態を説明する。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0015】
一実施形態にコイル部品1について、
図1~6を参照しつつ説明する。コイル部品1は、
図1、2に示すように、素体10と、素体10の表面に設けられた一対の外部端子20A、20Bとを備えて構成されている。
【0016】
素体10は、略直方体形状の外形を有し、対面する一対の主面10a、10bと、対面する一対の端面10c、10dと、対面する一対の側面10e、10fを有する。一対の端面10c、10dおよび一対の側面10e、10fは、一対の主面10a、10bをつないでいる。本実施形態において、一対の主面10a、10bの対面方向が素体10の高さ方向、一対の端面10c、10dの対面方向が素体10の長辺方向、一対の側面10e、10fの対面方向が素体10の短辺方向となっている。本実施形態においては、主面10bが、コイル部品1が実装される基材と面する実装面となっている。コイル部品1は、一例として、長辺2.0mm、短辺1.25mm、高さ1.0mmの寸法で設計される。
【0017】
一対の外部端子20A、20Bのうち、第1の外部端子20Aは、素体10の端面10c側に設けられている。第1の外部端子20Aは、端面10cを覆う部分20aと端面10c側の主面10bの一部を覆う部分20bとを含み、端面10cと主面10bとを連続的に覆うL字状断面を有する。一対の外部端子20A、20Bのうち、第2の外部端子20Bは、素体10の端面10d側に設けられている。第2の外部端子20Bは、第1の外部端子20A同様、端面10dを覆う部分20aと端面10d側の主面10bの一部を覆う部分20bとを含み、端面10dと主面10bとを連続的に覆うL字状断面を有する。
【0018】
素体10は、磁性材料12の内部に、
図3に示したコイル構造体14が設けられた構成を有する。素体10を構成する磁性材料12には磁性粉含有樹脂を用いることができる。磁性粉含有樹脂は、金属磁性粉やフェライト粉等の磁性粉が樹脂中に分散された構成を有する。磁性粉含有樹脂に、磁性粉として金属磁性粉およびフェライト粉の両方が含まれていてもよい。金属磁性粉は、たとえば鉄ニッケル合金(パーマロイ合金)、カルボニル鉄、アモルファス、非晶質または結晶質のFeSiCr系合金、センダスト等で構成され得る。磁性粉含有樹脂に用いられる樹脂は、たとえば熱硬化性のエポキシ樹脂である。磁性粉含有樹脂に含まれる磁性粉の含有量は、一例として、90~99wt%である。本実施形態においては、素体10の主面10bのみ、磁性粉含有樹脂に代えて、絶縁樹脂(たとえばエポキシ樹脂)等の絶縁材料で構成された絶縁層16で構成されている。主面10bでは一対の外部端子20A、20Bの部分20b同士が近づいているが、絶縁層16により、主面10bにおける一対の外部端子20A、20B間の耐電圧向上が図られている。また、主面10bにおいては、各外部端子20A、20Bと磁性粉含有樹脂との間に絶縁層16の絶縁材料が介在する(すなわち、各外部端子20A、20Bが磁性粉含有樹脂に直接接しない)ことで、浮遊容量の低減も図られている。素体10は、絶縁層16を含まない構成であってもよく、磁性粉含有樹脂のみで構成された態様であってもよい。
【0019】
コイル構造体14は、基板30とコイル体40とを備えて構成されている。
【0020】
基板30は、素体10の一対の端面10c、10dの間にわたって延在しており、各端面10c、10dから露出する端部30a、30bを有する。基板30は、素体10の主面10a、10bに対して平行に延在する平板状の形状を有し、主面10a側に位置する上面(第1主面)30cおよび主面10b側に位置する下面(第2主面)30dを有する。基板30は、後述する第1のコイル50に対応する第1部分32および第2のコイル60に対応する第2部分34および第3のコイル70に対応する第3部分36を有し、第1部分32、第2部分34および第3部分36にはそれぞれ貫通孔32a、34a、36aが設けられている。各貫通孔32a、34a、36aは、楕円形状を有し、より詳しくは、素体10の短辺方向(すなわち、端面10c、10dの対面方向に対して直交する方向)に沿って延びる長軸を有する楕円形状を有する。本実施形態では、基板30は、素体10の主面10a側から見て鎖状の形状を有する。
【0021】
基板30は、非磁性の絶縁材料で構成されている。基板30には、ガラスクロスにシアネート樹脂(BT(ビスマレイミド・トリアジン)レジン:登録商標)が含浸された基板を用いることができる。なお、BTレジンのほか、ポリイミド、アラミド等を用いることもできる。基板30の材料としては、セラミックやガラスを用いることもできる。基板30の材料としては、大量生産されているプリント基板材料を用いることができ、BTプリント基板、FR4プリント基板、またはFR5プリント基板に用いられる樹脂材料を用いることができる。
【0022】
コイル体40は、素体10の長辺方向に並ぶ複数のコイルを含んでおり、本実施形態においては第1のコイル50、第2のコイル60および第3のコイル70の3つのコイルを含んでいる。コイル体40に含まれる複数のコイルは直列接続されており、本実施形態においては第1のコイル50と第2のコイル60と第3のコイル70とがこの順で直列接続されている。コイル体40の一方の端部40aは、基板30の下面30d上において素体10の端面10cに露出して、第1の外部端子20Aに接続されている。コイル体40の他方の端部40bは、基板30の上面30c上において素体10の端面10dに露出して、第2の外部端子20Bに接続されている。
【0023】
コイル体40に含まれる各コイル50、60、70は、基板30の上面30cに設けられた渦巻状の第1コイル部51、61、71と、基板30の下面30dに設けられた渦巻状の第2コイル部52、62、72と、基板30に貫設されて第1コイル部51、61、71と第2コイル部52、62、72とを電気的に接続するスルーホール導体33、35、37とを有する。
【0024】
図4に示すように、基板30の上面30cおよび下面30dには樹脂体41、42がそれぞれ設けられており、樹脂体41、42の樹脂壁43によってコイル体40を構成する導体44の領域が画定されている。各樹脂体41、42は、非磁性の樹脂材料で構成されており、公知のフォトリソグラフィーによってパターニングされた厚膜レジストである。樹脂壁43の寸法に関しては、たとえば最外に位置する樹脂壁43の幅を20μmに設定することができる。コイル体40の導体44は、各樹脂体41、42の樹脂壁43により成長領域が画定された状態でめっき形成することができる。本実施形態において、コイル体40を構成する導体44の断面寸法(たとえば、矩形状断面における幅や高さ)は、コイル体の全長にわたって略均一となっている。導体44の断面寸法は、一例として、175μm高さ、80μm幅である。導体44の表面には絶縁被覆45が設けられており、導体44と素体10を構成する磁性粉含有樹脂との絶縁が図られている。
【0025】
続いて、第1のコイル50、第2のコイル60および第3のコイル70の構成について、
図5、6を参照しつつより詳しく説明する。
図5および
図6はいずれも、素体10の主面10a側から見たときの基板30、第1のコイル50、第2のコイル60および第3のコイル70の位置関係を示している。
【0026】
第1のコイル50は、素体10の端面10c(第1端面)側に位置しており、コイル体40の一方の端部40aに接続されている。
図5に示すように、第1のコイル50の第1コイル部51は、コイル軸Z
51周りに5/4ターンほど巻回された一層構造の平面渦巻状の導体パターンである。第1コイル部51は、内周ターンから外周ターンに向けて左回りに巻回されている。第1コイル部51の内側端部51aは内側端部51aに重畳する部分の基板30に貫設されたスルーホール導体33に接続されている。第1コイル部51の外側端部は、素体10の端面10d側に向かって延びて、第2のコイル60の第1コイル部61に接続されている。第1コイル部51と重なる基板30の第1部分32は、略円環状を呈し、第1コイル部51のコイル軸Z
51周辺が貫通された貫通孔32aを有する。第1コイル部51の内側端部51aは、第1部分32の貫通孔32aの縁に位置している。
【0027】
第2のコイル60は、第1のコイル50と第3のコイル70の間に位置している。
図5に示すように、第2のコイル60の第1コイル部61は、コイル軸Z
61周りに3/4ターンほど巻回された一層構造の平面渦巻状の導体パターンである。第1コイル部61は、第1のコイル50の第1コイル部51とは逆向き(すなわち、右回り)に巻回されている。第1コイル部61の一端部は、素体10の端面10c側に向かって延びて、第1のコイル50の第1コイル部51に接続されている。第1コイル部51と第1コイル部61とが接続された接続部48は、両コイル軸Z
51、Z
61を結ぶ仮想線L1を交差するように延びている。第1コイル部61の他端部61aは他端部61aに重畳する部分の基板30に貫設されたスルーホール導体35に接続されている。第1コイル部61と重なる基板30の第2部分34は、略円環状を呈し、第1コイル部61のコイル軸Z
61周辺が貫通された貫通孔34aを有する。第1コイル部61の他端部61aは、第2部分34の貫通孔34aの縁に位置している。
【0028】
第3のコイル70は、素体10の端面10d(第2端面)側に位置しており、コイル体40の他方の端部40bに接続されている。
図5に示すように、第2のコイル60の第1コイル部61は、コイル軸Z
61周りに5/4ターンほど巻回された一層構造の平面渦巻状の導体パターンである。第1コイル部71は、内周ターンから外周ターンに向けて左回りに巻回されている。第1コイル部71の外側端部はコイル体40の端部40bに接続され、第1コイル部71の内側端部71aは内側端部71aに重畳する部分の基板30に貫設されたスルーホール導体37に接続されている。第1コイル部71と重なる基板30の第3部分36は、略円環状を呈し、第1コイル部61のコイル軸Z
71周辺が貫通された貫通孔36aを有する。第1コイル部71の内側端部71aは、第3部分36の貫通孔36aの縁に位置している。
【0029】
基板30の上面30c上において、第1のコイル50の第1コイル部51と第2のコイル60の第1コイル部61とは接続されており、第3のコイル70の第1コイル部71は離間している。第2のコイル60の第1コイル部61の巻き数は、第1のコイル50の第1コイル部51の巻き数より少なく、かつ、第3のコイル70の第1コイル部71の巻き数より少ない。第1のコイル50の第1コイル部51の巻き数と第3のコイル70の第1コイル部71の巻き数とは同じであってもよく、異なっていてもよい。第1のコイル50の第1コイル部51、第2のコイル60の第1コイル部61、および、第3のコイル70の第1コイル部71は、導体幅が同じになるように設計されている。本実施形態において、第1コイル部51のコイル軸Z51と第1コイル部61のコイル軸Z61と第1コイル部71のコイル軸Z71とは素体10の長辺方向(すなわち、端面10c、10dの対面方向)に並んでいる。
【0030】
図6に示すように、第1のコイル50の第2コイル部52は、コイル軸Z
52周りに5/4ターンほど巻回された一層構造の平面渦巻状の導体パターンである。本実施形態において、第2コイル部52のコイル軸Z
52は、第1コイル部51のコイル軸Z
51と一致している。第2コイル部52は、外周ターンから内周ターンに向けて左回りに巻回されている。そのため、第1のコイル50の第1コイル部51と第2コイル部52では、素体10の主面10a側から見ると、電流が流れた際に同じ巻回方向に電流が流れる。第2コイル部52の外側端部はコイル体40の端部40aに接続され、第2コイル部52の内側端部52aは、基板30の下面30dにおけるスルーホール導体33と重なる位置にあり、スルーホール導体33に接続されている。
【0031】
第2のコイル60の第2コイル部62は、コイル軸Z62周りに3/4ターンほど巻回された一層構造の平面渦巻状の導体パターンである。本実施形態において、第2コイル部62のコイル軸Z62は、第1コイル部61のコイル軸Z61と一致している。第2コイル部62は、第1のコイル50の第2コイル部52とは逆向き(すなわち、右回り)に巻回されている。そのため、第2のコイル60の第1コイル部61と第2コイル部62では、素体10の主面10a側から見ると、電流が流れた際に同じ巻回方向に電流が流れる。第2コイル部62の一端部62aは、基板30の下面30dにおけるスルーホール導体35と重なる位置にあり、スルーホール導体35に接続されている。第2コイル部62の他端部は、素体10の端面10d側に向かって延びて、第3のコイル70の第2コイル部72に接続されている。
【0032】
第3のコイル70の第2コイル部72は、コイル軸Z72周りに5/4ターンほど巻回された一層構造の平面渦巻状の導体パターンである。本実施形態において、第2コイル部72のコイル軸Z72は、第1コイル部71のコイル軸Z71と一致している。第2コイル部72は、外周ターンから内周ターンに向けて左回りに巻回されている。そのため、第3のコイル70の第1コイル部71と第2コイル部72では、素体10の主面10a側から見ると、電流が流れた際に同じ巻回方向に電流が流れる。第2コイル部72の内側端部72aは、基板30の下面30dにおけるスルーホール導体37と重なる位置にあり、スルーホール導体37に接続されている。第2コイル部72の外側端部は、素体10の端面10c側に向かって延びて、第2のコイル60の第2コイル部62の外側端部に接続されている。第2コイル部62と第2コイル部72とが接続された接続部48は、両コイル軸Z62、Z72を結ぶ仮想線L2を交差するように延びている。
【0033】
基板30の下面30d上において、第1のコイル50の第2コイル部52と第2のコイル60の第2コイル部62とは離間しており、第2のコイル60の第2コイル部62と第3のコイル70の第2コイル部72とは接続されている。第2のコイル60の第2コイル部62の巻き数は、第1のコイル50の第2コイル部52の巻き数より少なく、かつ、第3のコイル70の第2コイル部72の巻き数より少ない。第1のコイル50の第2コイル部52の巻き数と第3のコイル70の第2コイル部72の巻き数とは同じであってもよく、異なっていてもよい。第1のコイル50の第2コイル部52、第2のコイル60の第2コイル部62、および、第3のコイル70の第2コイル部72は、導体幅が同じになるように設計されている。本実施形態において、第2コイル部52のコイル軸Z52と第2コイル部62のコイル軸Z62と第2コイル部72のコイル軸Z72とは素体10の長辺方向(すなわち、端面10c、10dの対面方向)に並んでいる。
【0034】
コイル体40が上記構成を有するため、一対の外部端子20A、20B間に電圧が印加され、たとえば第1の外部端子20Aから第2の外部端子20Bまで電流が流れる場合、第1の外部端子20Aからの電流はコイル体40の第1のコイル50、第2のコイル60、第3のコイル70の順に流れて第2の外部端子20Bに至る。このように電流が流れる場合、素体10の主面10a側から見て、第1のコイル50、第2のコイル60および第3のコイル70の巻き線方向は交互になっているため、中間に位置する第2のコイル60では、その両側の第1のコイル50および第3のコイル70と磁束を共有する。すなわち、素体10の主面10a、10bの対面方向における磁束の向きに関し、第2のコイル60の内側(内芯)における磁束の向きと、第1のコイル50および第3のコイル70の外側(外芯)の磁束の向きが揃う。その結果、第2のコイル60の内芯の磁束が、第1のコイル50および第3のコイル70のそれぞれの内芯の磁束に比べて大きくなる傾向がある。
【0035】
ここで、第2のコイル60の巻き数は、第1コイル部61の巻き数(3/4ターン)と第2コイル部62の巻き数(3/4ターン)とを合わせて3/2ターンほどであり、第1のコイル50の巻き数(5/2、すなわち、第1コイル部51の巻き数(5/4ターン)と第2コイル部52の巻き数(5/4ターン)との和)よりも少ない。同様に、第2のコイル60の巻き数は、第3のコイル70の巻き数(5/2、すなわち、第1コイル部71の巻き数(5/4ターン)と第2コイル部72の巻き数(5/4ターン)との和)よりも少ない。なお、第1のコイル50の巻き数と第3のコイル70の巻き数とは同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0036】
発明者らは、両端の第1のコイル50および第3のコイル70と磁束を共有する第2のコイル60の巻き数を相対的に少なくすると、以下の検証試験のとおり、コイル部品1の特性が向上するとの知見を得た。
【0037】
図7~9は、検証試験に用いたコイル部品の構成を示している。
図7~9に示したコイル部品は、上述したコイル部品とは、主に各コイル50、60、70の巻き数が異なり、その他は要素については同一または同等である。具体的には、第2のコイル60の巻き数が、第1コイル部61の巻き数(3/4ターン)と第2コイル部62の巻き数(3/4ターン)とを合わせて3/2ターンほどであり、第1のコイル50の巻き数(3/2、すなわち、第1コイル部51の巻き数(3/4ターン)と第2コイル部52の巻き数(3/4ターン)との和)と同じになっている。同様に、第2のコイル60の巻き数は、第3のコイル70の巻き数(3/2、すなわち、第1コイル部71の巻き数(3/4ターン)と第2コイル部72の巻き数(3/4ターン)との和)とも同じになっている。
【0038】
図7~9に示した形態のコイル部品について磁束密度分布を確認したところ、その結果は
図10に示すとおりであった。磁束密度分布は、電磁場解析ソフト(Ansys社製Ansys Electronics Desktop Maxwell 3D)を用いた周波数応答磁場解析により、周波数1MHz、電流0.1Aの条件下において確認した。
図10では、磁束密度が低いほど濃度が高く、磁束密度が高くなるにつれて濃度が低くなっている(すなわち、白色に近づく)。
図10の結果から、第2のコイル60の内芯における磁束密度は、第1のコイル50および第3のコイル70のそれぞれの内芯の磁束密度に比べて高くなることが確認された。
【0039】
図1~6に示した構成を有するコイル部品1についても同様に磁束密度分布を確認したところ、その結果は
図11に示すとおりであった。
図11の結果から、第2のコイル60の内芯における磁束密度は、第1のコイル50および第3のコイル70のそれぞれの内芯の磁束密度とほぼ同等であることが確認された。
【0040】
このように、コイル体40を構成する複数のコイル50、60、70間において磁束密度の局所的な集中(または偏り)が抑制されることで、たとえば直流重畳特性等のコイル特性の向上が図られる。
【0041】
なお、相対的に巻き数が少ない第2のコイル60については内芯面積(主面10a、10bの対面方向から見たときのコイル内側の面積)が、第1のコイル50および第3のコイル70の内芯面積より大きい態様であってもよい。コイル50、60、70の内芯面積は同一であってもよい。
【0042】
本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。たとえば、コイル体に含まれるコイルの数は、3つに限らず、4つ以上でもよい。また、各コイルの第1コイル部と第2コイル部との間でターン数や線幅が異なっていてもよい。基板に設けられた貫通孔は、基板の短辺方向に対して傾いて延びる長軸を有する楕円形状であってもよい。
【0043】
上述の記載から把握されるとおり、本明細書は下記を開示している。
[付記1]
対面する一対の主面と、該一対の主面をつなぐとともに互いに平行な第1端面および第2端面とを有する素体と、
前記素体内に設けられ、前記素体の主面に対して平行に延在するとともに、前記素体の主面に対して平行な第1主面および第2主面を有する基板と、
前記素体内に設けられ、前記基板の第1主面に設けられた渦巻状の第1コイル部と前記基板の第2主面に設けられた渦巻状の第2コイル部と前記基板に貫設されて前記第1コイル部と前記第2コイル部とを電気的に接続するスルーホール導体とを含むコイルを複数有し、複数の前記コイルが直列接続され、かつ、一方の端部が前記素体の前記第1端面から露出するとともに他方の端部が前記素体の前記第2端面から露出するコイル体と、
前記素体の前記第1端面に設けられて前記コイル体の一方の端部に接続された第1の外部端子と、
前記素体の前記第2端面に設けられて前記コイル体の他方の端部に接続された第2の外部端子と
を備え、
前記一対の主面の対面方向から見て、前記コイル体の複数のコイルは一方向に沿って並んでいるとともに前記コイルの巻き線方向が交互になっており、
前記コイル体の複数のコイルは、前記第1端面側に位置し、前記コイル体の一方の端部に接続された第1のコイルと、該第1のコイルよりも前記第1端面から離れた側に位置し、前記第1のコイルよりも巻数が少ない第2のコイルと、前記第2端面側に位置し、前記コイル体の他方の端部に接続された第3のコイルとを含む、コイル部品。
[付記2]
前記コイル体の複数のコイルは前記基板に設けられた複数の貫通孔周りにそれぞれ巻回されている、付記1に記載のコイル部品。
[付記3]
前記貫通孔が、前記第1端面と前記第2端面との対面方向に対して交差する方向に延びる長軸を有する楕円形状である、付記2に記載のコイル部品。
[付記4]
前記一対の主面の対面方向から見て、前記第2のコイルの内芯面積が前記第1のコイルの内芯面積より大きい、付記1~3のいずれか一つに記載のコイル部品。
[付記5]
前記一対の主面の対面方向から見て、前記コイル同士を接続する接続部が両コイルの軸を結ぶ仮想線を交差して延びている、付記1~4のいずれか一つに記載のコイル部品。
【符号の説明】
【0044】
1…コイル部品、10…素体、20A、20B…外部端子、30…基板、32a、34a、36a…貫通孔、40…コイル体、48…接続部、50…第1のコイル、51…第1コイル部、52…第2コイル部、60…第2のコイル、61…第1コイル部、62…第2コイル部、70…第3のコイル、71…第1コイル部、72…第2コイル部、Z51、Z52、Z61、Z62、Z71、Z72…コイル軸。